JP7553221B2 - 管用ねじ継手及び管用ねじ継手の製造方法 - Google Patents
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管用ねじ継手は、ピン及びボックスを備える。図2は、本実施形態によるカップリング型の管用ねじ継手の構成を示す図である。図2を参照して、管用ねじ継手は、鋼管1とカップリング2とを備える。鋼管1の両端には、外面に雄ねじ部を有するピン3が形成される。カップリング2の両端には、内面に雌ねじ部を有するボックス4が形成される。ピン3とボックス4とをねじ締めすることによって、鋼管1の端に、カップリング2が取り付けられる。
Zn-Ni合金めっき層100は、ピン3の接触表面34上及びボックス4の接触表面44上の少なくとも一方に配置される。Zn-Ni合金めっき層100は、Zn-Ni合金、グラファイト及び不純物からなる。Zn-Ni合金は、亜鉛(Zn)及びニッケル(Ni)を含有する。Zn-Ni合金は不純物を含有する場合がある。ここで、Zn-Ni合金めっき層100の不純物、及び、Zn-Ni合金の不純物とは、Zn、Ni及びグラファイト以外の物質で、管用ねじ継手の製造中等にZn-Ni合金めっき層100又はZn-Ni合金に含有され、本発明の効果に影響を与えない範囲の含有量で含まれる物質を含む。
グラファイト(黒鉛)は、炭素原子が六角形の格子状に結合しているシート(グラフェン)が積層した物質である。グラファイトは、カーボン(C)を含有し、残部は不純物からなる。グラフェンの層間の結合力は弱いため、グラフェン同士はその層間から剥離しやすい。そのため、グラファイトは一般的には潤滑剤として使用される。しかしながら、本実施形態では、Zn-Ni合金めっき層100がグラファイトを含有すれば、高トルク維持特性が高まり、管用ねじ継手の緩みが抑制される。
Zn-Ni合金めっき層100におけるグラファイトの含有量は特に限定されない。しかしながら、Zn-Ni合金めっき層100の化学組成全体を100at%とした場合に、グラファイトの含有量が30at%以上であれば、Zn-Ni合金めっき層100の高トルク維持特性がさらに高まる。この場合、水平井戸に用いた場合にも管用ねじ継手の緩みがさらに抑制される。一方、Zn-Ni合金めっき層100の化学組成全体を100at%とした場合に、グラファイト含有量が60at%以下であれば、正常なZn-Ni合金めっき層100が安定して形成される。したがって、好ましくは、Zn-Ni合金めっき層100におけるグラファイト含有量は、Zn-Ni合金めっき層100の化学組成全体を100at%とした場合に、30~60at%である。Zn-Ni合金めっき層100におけるグラファイト含有量の下限は、より好ましくは40at%である。Zn-Ni合金めっき層100におけるグラファイト含有量の上限は、より好ましくは55at%である。
Zn-Ni合金めっき層100のNi含有量及びグラファイト含有量は次の方法で測定する。はじめに、Zn-Ni合金めっき層100が形成された管用ねじ継手のサンプルを準備する。サンプルのZn-Ni合金めっき層100の表面に対して、電子線マイクロアナライザー(FE-EPMA、日本電子株式会社製JXA-8530F)を用い、EDS(エネルギー分散型X線分光法)による元素分析を行う。測定倍率1500~5000倍で、加速電圧:15~30kV、照射電流:最大1nAの電子ビームを照射し、C-kα線、Zn-kα線及びNi-kα線の各X線強度を測定する。各元素のX線強度を基に、C含有量(at%)、Zn含有量(at%)及びNi含有量(at%)を算出する。Ni含有量を、C、Zn及びNiの合計含有量で除した値をNi含有量(at%)とする。C含有量を、C、Zn及びNiの合計含有量で除した値をグラファイト含有量(at%)とする。Zn-Ni合金めっき層100の表面の任意の3箇所を測定し、平均含有量を用いる。
Zn-Ni合金めっき層100の厚さは特に限定されない。Zn-Ni合金めっき層100の厚さはたとえば、1~50μmである。Zn-Ni合金めっき層100の厚さが1μm以上であれば、十分な耐焼付き性を安定して得ることができる。Zn-Ni合金めっき層100の厚さが50μmを超えても、上記効果は飽和する。厚さの上限は好ましくは20μmである。
Zn-Ni合金めっき層100の厚さは、次の方法で測定する。Zn-Ni合金めっき層100を形成した接触表面34又は44の4箇所に対して、Helmut Fischer GmbH製、渦電流位相式膜厚計PHASCOPE PMP910を用いて、Zn-Ni合金めっき層100の厚さを測定する。測定は、ISO(International Organization for Standardization)21968(2005)に準拠する方法で行う。測定箇所は、管用ねじ継手の管周方向の4箇所(0°、90°、180°、270°の4箇所)である。測定結果の算術平均を、Zn-Ni合金めっき層100の厚さとする。
Zn-Ni合金めっき層100の硬度が高ければ、管用ねじ継手の耐焼付き性がさらに高まる。したがって、好ましくは、Zn-Ni合金めっき層100のビッカース硬さHvの下限は150であり、さらに好ましくは250である。Zn-Ni合金めっき層100のビッカース硬さHvの上限は、高い程好ましい。Zn-Ni合金めっき層100のビッカース硬さHvの上限はたとえば、600である。
Zn-Ni合金めっき層100のビッカース硬さは次の方法で測定する。Zn-Ni合金めっき層100を備えるピン3又はボックス4を準備する。Zn-Ni合金めっき層100を備えるピン3又はボックス4を軸方向に垂直に切断する。現れたZn-Ni合金めっき層100の断面の任意の5点に対して、JIS Z2244(2009)に準拠した方法でビッカース硬さを測定する。測定には、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製微小硬度計Fischer scope HM2000を用いる。試験温度は常温(25℃)、試験力(F)は5~100mNとする。得られた測定結果5点の内、最大値及び最小値を除いた3点の算術平均を、Zn-Ni合金めっき層100のビッカース硬さHvとする。
Zn-Ni合金めっき層100は、ピン3の接触表面34上及びボックス4の接触表面44上の少なくとも一方に配置されればよい。図5では、Zn-Ni合金めっき層100は、ピン3の接触表面34上及びボックス4の接触表面44上の両方に配置されている。しかしながら、Zn-Ni合金めっき層100の配置は図5に限定されない。図6に示す様に、Zn-Ni合金めっき層100は、ボックス4の接触表面44上のみに配置されてもよい。また、図7に示す様に、Zn-Ni合金めっき層100は、ピン3の接触表面34上のみに配置されてもよい。
本実施形態の管用ねじ継手は、潤滑油無しでも、優れた耐焼付き性及び優れた高トルク維持特性を示し、緩みが抑制される。しかしながら、管用ねじ継手はさらに、ピン3の接触表面34上、ボックス4の接触表面44上、及び、Zn-Ni合金めっき層100上からなる群から選択される少なくとも1つに潤滑被膜200を備えてもよい。この場合、管用ねじ継手の潤滑性が高まる。潤滑被膜200は、図8に示すように、ピン3の接触表面34上のZn-Ni合金めっき層100上及びボックス4の接触表面44上のZn-Ni合金めっき層100上の両方に配置されてもよい。しかしながら、潤滑被膜200の配置は図8に限定されない。潤滑被膜200は、ピン3の接触表面34上のZn-Ni合金めっき層100上のみに配置されてもよいし、ボックス4の接触表面44上のZn-Ni合金めっき層100上のみに配置されてもよい。また、潤滑被膜200は、ピン3の接触表面34上又はボックス4の接触表面44上に直接配置されてもよい。たとえば、図9及び図10に示すとおり、ピン3の接触表面34上又はボックス4の接触表面44上にZn-Ni合金めっき層100が配置されない場合、潤滑被膜200は、ピン3の接触表面34上又はボックス4の接触表面44上に直接配置されてもよい。
ピン3の接触表面34上又はボックス4の接触表面44上の少なくとも一方にZn-Ni合金めっき層100が配置され、ピン3の接触表面34上、ボックス4の接触表面44上、及び、Zn-Ni合金めっき層100上からなる群から選択される少なくとも1つに潤滑被膜200が配置されれば、その組み合わせは特に限定されない。Zn-Ni合金めっき層100のみを備える場合をパターン1とする。Zn-Ni合金めっき層100を備えさらにその上に潤滑被膜200を備える場合をパターン2とする。潤滑被膜200のみを備える場合をパターン3とする。Zn-Ni合金めっき層100も、潤滑被膜200も備えない場合をパターン4とする。上記条件を満たせば、ピン3の接触表面34及びボックス4の接触表面44はパターン1~パターン4のいずれの場合も有り得る。具体的には、ピン3の接触表面34が、パターン1又はパターン2の場合、ボックス4の接触表面44はパターン1~パターン4のいずれでもよい。また、ピン3の接触表面34が、パターン3又はパターン4の場合、ボックス4の接触表面44はパターン1又はパターン2のいずれかである。反対に、ボックス4の接触表面44が、パターン1又はパターン2の場合、ピン3の接触表面34はパターン1~パターン4のいずれでもよい。また、ボックス4の接触表面44が、パターン3又はパターン4の場合、ピン3の接触表面34はパターン1又はパターン2のいずれかである。
管用ねじ継手の母材の化学組成は、特に限定されない。母材はたとえば、炭素鋼、ステンレス鋼及び合金鋼等である。合金鋼の中でも、Cr、Ni及びMo等の合金元素を含んだ二相ステンレス鋼及びNi合金等の高合金鋼は耐食性が高い。そのため、これらの高合金鋼を母材に使用すれば、管用ねじ継手の耐食性が高まる。
本実施形態の管用ねじ継手の製造方法は、上記管用ねじ継手の製造方法である。管用ねじ継手の製造方法は、準備工程と、めっき層形成工程とを備える。
準備工程では、ピン3、ボックス4及びめっき液を準備する。ピン3は、上述のとおり、ねじ部31、金属シール部32及びショルダー部33を含む接触表面34を有する。ボックス4は、上述のとおり、ねじ部41、金属シール部42及びショルダー部43を含む接触表面44を有する。ピン3の接触表面34及びボックス4の接触表面44の少なくとも一方に対して周知の前処理を実施してもよい。前処理はたとえば、脱脂である。脱脂により、接触表面34及び44の少なくとも一方の表面に付着している油及び油性の汚れ等を除去する。脱脂はたとえば、溶剤脱脂、アルカリ脱脂及び電解脱脂である。前処理としてさらに、酸洗を実施してもよい。酸洗により、接触表面34上及び44上の少なくとも一方の錆及び加工時に生じた酸化被膜等を除去できる。
好ましくは、めっき液はさらに分散剤を含有する。分散剤は、めっき液中においてグラファイトの分散性を向上させる。好ましくは、分散剤は、ポリアクリル酸及び塩化1ブチル‐1‐メチルピロリジニウムからなる群から選択される1種又は2種である。
めっき層形成工程では、ピン3の接触表面34又はボックス4の接触表面44の少なくとも一方を上述しためっき液に接触させて、電気めっきによりZn-Ni合金めっき層100を形成する。
上述のZn-Ni合金めっき層100をピン3の接触表面34及びボックス4の接触表面44上の少なくとも一方に形成した後に、成膜工程を実施してもよい。成膜工程では、ピン3の接触表面34上、ボックス4の接触表面44上、及び、Zn-Ni合金めっき層100上からなる群から選択される少なくとも1つに潤滑被膜200を形成する。
本実施例においては、ねじ継手の母材を想定して、市販の冷延鋼板を使用した。冷延鋼板は縦150mm×横100mm(めっき面は縦100mm×横100mm)であった。鋼種は、極低炭素鋼であった。鋼板の化学組成は、C:0.19%、Si:0.25%、Mn:0.8%、P:0.02%、S:0.01%、Cu:0.04%、Ni:0.1%、Cr:13%、Mo:0.04%、残部:Fe及び不純物であった。
・めっき液:ダインジンアロイ(大和化成株式会社製)
・グラファイト:TIMREX(商標)KS6(IMERYS・GRAPHITE&CARBON社製)1~10g/L、粒子径<100nm(D90)
・ポリアクリル酸(シグマ アルドリッチ社製)、2×10-5mol/L、分子量(Mw)1800
・塩化1ブチル‐1‐メチルピロリジニウム(メルク株式会社製) 2×10-5mol/L
・めっき液:硫酸銅五水和物200g/L、硫酸50g/L(キシダ化学株式会社製)
・グラファイト:TIMREX(商標)KS6(IMERYS・GRAPHITE&CARBON社製)1~10g/L、粒子径<100nm(D90)
・ポリアクリル酸(シグマ アルドリッチ社製)、2×10-5mol/L、分子量(Mw)1800
・塩化1ブチル‐1‐メチルピロリジニウム(メルク株式会社製) 2×10-5mol/L
以下の条件で、各試験番号の鋼板表面にめっき層を形成した。
・めっき浴温度:25℃
・めっき電流密度:2A/dm2
・めっき膜厚:5~10μm
・撹拌速度:0.4m/秒
・めっきアノード(対極):不溶性陽極(酸化イリジウムコーティングTi板)
めっき層を形成した各試験番号の鋼板に対して、上述の方法でNi含有量(at%)及びグラファイト含有量(at%)を測定した。試験番号6~試験番号8については、EDXによる組成分析を行い、Cu及びCの合計含有量を100at%とし、C含有量の割合をグラファイト含有量(at%)とした。結果を表1に示す。
めっき層を形成した各試験番号の鋼板に対して、上述の方法でめっき層の膜厚を測定した。結果を表1に示す。
めっき層を形成した各試験番号の鋼板に対して、上述の方法でめっき層のビッカース硬さ(Hv0.005)を測定した。結果を表1に示す。
めっき層を形成した各試験番号の鋼板に対して、以下の条件でバウデン摺動試験を行った。焼付きを生じることなく、摩擦係数(μ)が0.2~0.4を維持した回数を摺動回数として求めた。摺動回数を表1に示す。また、試験途中の摩擦係数の推移を図1に示す。
・鋼球:3/16”SUJ2
・荷重:3kgf(ヘルツ面圧:ave.1.5GPa)
・摺動幅:10mm
・摺動速度4mm/s
・潤滑油:なし(無塗油)
・試験温度:室温(25℃)
図11及び図12は、実施例におけるバウデン摺動試験の結果を示す図である。表1、図1、図11及び図12を参照して、グラファイトを含有するZn-Ni合金めっき層を備える試験番号2~試験番号5の鋼板は、焼付きを生じることなく、0.2~0.4の高い摩擦係数を維持した摺動回数が60回以上であり、優れた耐焼付き性を示し、さらに高トルク維持特性に優れた。そのため、管用ねじ継手は耐焼付き性に優れ、さらに、水平井戸に用いた場合であっても緩み難いといえる。
2 カップリング
3 ピン
4 ボックス
31、41 ねじ部
32、42 金属シール部
33、43 ショルダー部
34、44 接触表面
100 Zn-Ni合金めっき層
200 潤滑被膜
Claims (5)
- 管用ねじ継手であって、
ねじ部、金属シール部及びショルダー部を含む接触表面を有するピンと、
ねじ部、金属シール部及びショルダー部を含む接触表面を有するボックスと、
前記ピンの前記接触表面上又は前記ボックスの前記接触表面上の少なくとも一方に配置されるZn-Ni合金めっき層とを備え、
前記Zn-Ni合金めっき層はグラファイトを含有し、
前記Zn-Ni合金めっき層の化学組成全体を100at%とした場合に、前記Zn-Ni合金めっき層中のNi含有量が5~35at%であり、
前記Zn-Ni合金めっき層の化学組成全体を100at%とした場合に、前記Zn-Ni合金めっき層中のグラファイト含有量が60at%以下である、管用ねじ継手。 - 請求項1に記載の管用ねじ継手であって、
前記Zn-Ni合金めっき層は、前記Zn-Ni合金めっき層の化学組成全体を100at%とした場合に、グラファイトを30~60at%含有する、管用ねじ継手。 - 請求項1又は請求項2に記載の管用ねじ継手であって、
前記Zn-Ni合金めっき層の厚さは1~50μmである、管用ねじ継手。 - 請求項1~3のいずれか1項に記載の管用ねじ継手であってさらに、
前記ピンの前記接触表面上、前記ボックスの前記接触表面上、及び、前記Zn-Ni合金めっき層上からなる群から選択される少なくとも1つに潤滑被膜を備える、管用ねじ継手。 - 請求項1に記載の管用ねじ継手の製造方法であって、
ねじ部、金属シール部及びショルダー部を含む接触表面を有するピンと、ねじ部、金属シール部及びショルダー部を含む接触表面を有するボックスと、亜鉛イオン、ニッケルイオン及びグラファイトを含有するめっき液とを準備する工程と、
前記ピンの前記接触表面又は前記ボックスの前記接触表面の少なくとも一方を前記めっき液に接触させて、電気めっきにより前記ピンの前記接触表面上又は前記ボックスの前記接触表面上の少なくとも一方にZn-Ni合金めっき層を形成する工程を備える、管用ねじ継手の製造方法。
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