JP2022107487A - 白金電解めっき浴および白金めっき製品 - Google Patents

白金電解めっき浴および白金めっき製品 Download PDF

Info

Publication number
JP2022107487A
JP2022107487A JP2021024983A JP2021024983A JP2022107487A JP 2022107487 A JP2022107487 A JP 2022107487A JP 2021024983 A JP2021024983 A JP 2021024983A JP 2021024983 A JP2021024983 A JP 2021024983A JP 2022107487 A JP2022107487 A JP 2022107487A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
platinum
salt
electrolytic
plating bath
bath
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021024983A
Other languages
English (en)
Inventor
宏治 片倉
Koji Katakura
貴範 岸田
Takanori Kishida
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
EEJA Ltd
Original Assignee
EEJA Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by EEJA Ltd filed Critical EEJA Ltd
Priority to TW110123506A priority Critical patent/TWI784601B/zh
Priority to CN202110783978.XA priority patent/CN114752975A/zh
Priority to KR1020210105461A priority patent/KR102575117B1/ko
Publication of JP2022107487A publication Critical patent/JP2022107487A/ja
Priority to KR1020230079826A priority patent/KR20230095905A/ko
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electroplating And Plating Baths Therefor (AREA)

Abstract

【課題】極めて安定で、浴寿命の長く、不純物の蓄積が少ない高純度白金電解めっき液、および、耐食性が良好で厚めっき可能な高純度の白金めっき皮膜を有する白金めっき製品を提供する。【解決手段】DNSを白金として11g/L、硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で160g/Lにラウリル硫酸ナトリウムを60mg/L添加し、pHを0.4に調整した白金電解めっき浴。【選択図】図1

Description

本発明は、酸性白金電解めっき浴およびそのめっき浴から電気めっきされた低応力の白金電解析出物に関するものである。
2価の白金(II)錯体は、基本的に塩化白金酸塩を原料として様々な化合物が合成される。無機白金錯体としては、塩酸、硝酸、硫酸やリン酸などの化合物がある。代表的なものとしては、塩化白金(PtCl)、硝酸白金(Pt(NO)、ジアミンジクロロ白金(Pt(NHCl、トリクロロアミン白金酸(HPtCl(NH))またはその塩(MPtCl(NH))、テトラクロロ白金酸(HPtCl)またはその塩(MPtCl)、テトラニトロ白金酸(HPt(NO)またはその塩(MPt(NO)、テトラスルホ白金酸(HPt(SO)またはその塩(MPt(SO)、ヘキサヒドロキソ白金酸(HPt(OH))またはその塩(MPt(OH))などがある。ここで,Mはアルカリ金属、アルカリ土金属またはアンモニウムを表す。
電解めっき浴に好ましく用いられる2価の白金(II)錯体には、ジニトロジアンミン白金(Pt(NH(NO、いわゆるp-ソルト)、ジニトロジアクアジアンミン白金(Pt(NH(HO)(NO)、ニトラトヒドロキソアクアジアンミン白金(Pt(NH(HO)(OH)(NO))、ニトラトヒドロキソジアンミン白金(Pt(NH(OH)(NO))、ジニトラトジアンミン白金(Pt(NH(NO)、ジニトロ硫化白金(Pt(SO)(NO、いわゆるDNS塩)、ジクロロテトラアンミン白金(Pt(NHCl)、ジクロロジアンミン白金(Pt(NHCl)、りん酸水素テトラアンミン白金(Pt(NH(HPO)、いわゆるQ-ソルト)などが知られている。
これらの2価白金(II)錯体を用いた白金電解めっき浴は、古くから知られている。例えば、ジニトロジアミノ白金(II)(Pt(NH(NO)(p-ソルト)やジニトロスルファト白金(II)[Pt(NO(SO)] (DNS)を用いた白金電解めっき浴には次のようなものがある。
例えば、特公昭36-19658号公報(後述する特許文献1)には「スルファミン酸の水溶液中でジ亜硝酸ジアンモニウム白金を加熱して得た組成物を含む水溶液からなる白金メッキ用電解液」の発明が開示されている。この明細書には、「P塩[Pt(NH(NO]がスルファミン酸の水溶液中で熱せられると溶解することを発見したこと、又スルファミン酸と共にP塩を熱して得た溶液は稀釈すると応力のない白金を電気メッキする」ことを発見したことが記載されている。
しかし、この白金電解めっき浴を用いて70~80℃の温度で電気めっき作業をすると、スルファミン酸が分解して白金塩が沈殿するという欠点があった。また、特公昭36-19812号公報(後述する特許文献2)には「10~100ccの濃硫酸と10~100ccの濃燐酸との水溶混合物約200ccにジ亜硝酸ジアンモニウム白金を毎リットルにつき10~40gの割合で含んだ組成物を熱して得た溶液と水とから成る白金メッキ用電解液」の発明が開示されている。「この発明の目的は比較的厚い光沢のある白金をメッキするのに適した白金含有電解液を設けることにある」ことが明細書に記載されている。
しかし、この白金メッキ用電解液では、電解液中にリン酸が蓄積して白金の回収を阻害する欠点がある。また、一回のメッキ操作で強固な密着性を有する5μm以上のめっきを確実に得ることは困難であった。その後、特公昭49-21018号公報(後述する特許文献3)は、特定の「アンモニウム塩0.05~2moL/Lと硫酸0.06~1moL/Lとを含む溶液にジアミノジニトロ白金を溶解してなる電解白金メッキ浴」の発明が開示されている。この明細書には、「(1)浴の安定性が大きい。…(3)浴寿命が長い等工業用メッキ浴としての特性を有している。」ことが記載されている。
また、特開平08-319595号公報(後述する特許文献4)には、「ジアンミノジニトリト白金(II)1モルとアミド硫酸4~6モルとの反応に由来する生成物を使用するアンミンスルファマト-錯体としての白金5~30g/lを含有し、かつ1を下回るpH-値を有する電気メッキ用白金浴において、電解液が、高くても5g/lの遊離のアミド硫酸及び1を下回るpH-値を有する硫酸20~400g/lを含有し、フッ素界面活性剤0.01~0.2g/lを、湿潤剤として含有することを特徴とする、電気メッキ用白金浴」の発明が請求項4に開示されている。この発明は「100μmを上回る層厚でも、ヒビを有さず、滑らかで、かつ光沢を有して析出することができ、かつ使用していなくても安定である」ことが明細書に記載されている。なお、「アミド硫酸」とはスルファミン酸の別名である。
また、米国特許第3206382号明細書(後述する特許文献5)には、白金を電着させる方法であって、pH値が2未満であり、白金の所定のニトリト化合物錯体の水溶液から本質的になる電解質を電気分解する方法が開示されている。この実施例1には、テトラニトロ白金(II)酸カリウムを硫酸で反応させ、次式によってジニトロスルファト白金(II)酸カリウム(DNS塩)を調整する方法が開示されている。
Pt(NO + HSO → Pt(NOSO
他方、遊離のリン酸を含むアルカリ性の白金電解めっき液で厚めっきをすると、光沢のある緻密な高純度の白金析出物が得られることが知られている(特開平02-107794号公報)。この発明は「白金(II)錯塩のアルカリ性水溶液を含み、上記錯塩のアニオン成分が有機酸またはハロゲン化水素酸以外の無機酸から誘導された一種以上の群またはラジカルである、」一般的には、8.5より大きいpH値のアルカリ性白金電気めっき浴である。
このアニオン成分は、金属白金に対する化学的攻撃によってめっき処理過程を妨害しないものが選択され、乳酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、および酒石酸塩等が例示されている。すなわち、電解析出する白金イオンは陰極近傍でリンの作用を受け、新たな白金粒子の核となる。このため細かい白金粒子が多数電解析出され、白金被膜の応力が大きくなる問題を解決したものと推察される。
このアルカリ性白金電気めっき浴も高温で使用されるので、遊離のリン酸などがめっき浴中で濃縮される。このためめっき条件が変動し、白金めっき製品の不具合が発生するなどの課題が依然あった。また、このアルカリめっき液で電気めっきされた白金電解析出物は、有孔度の数値が大きくなり、耐食性が悪くなることがわかった。また、下地のニッケルや銅やパラジウムなどに酸性電解めっき浴を用いた場合、白金電解めっき浴も酸性の白金めっき液が用いられる。
特公昭36-19658号公報 特公昭36-19812号公報 特公昭49-21018号公報 特開平08-319595号公報 米国特許第3206382号明細書
上述したように、酸性の白金電解めっき液は高温で使用されるためめっき液の蒸発ロスが大きくなり、高純度の白金めっき液中に非電析物や不純物が濃縮されやすくなる。また、電気めっきによって白金に配位した配位子が高温の酸性浴中に遊離し、これらの配位子も白金めっき液中に濃縮される。このような酸性白金電解めっき液に外部から電気エネルギーが印加されると、濃縮された配位子や水分子などから新たな窒素酸化物(NOx)イオンやイオウ酸化物(SOx)イオンなどの不安定な化合物が遊離しうる。
例えば、テトラニトロ白金酸(HPt(NO)は、水溶液中でPt(NO(HO)、Pt(NO(HO)、Pt(NO)(HO) 、Pt(HO) 2+などの錯体を形成する。また、ニトロ基は水溶液中で、上記の化合物以外にも[Pt(NH(NO]等の窒素と酸素の複雑な化合物をつくりやすい性質がある。また、ハロゲンイオンが共存すると、すでに析出した白金粒子のうえに白金イオンが付着する傾向を強める。酸性白金電解めっき液では陰極近傍で電解析出する白金イオンはこれらの複雑な化合物や配位子によって様々な影響を受け、新たな白金粒子の核となって析出するのが妨げられていた。
その結果、これらの酸性白金電解めっき液から電気めっきされた高純度の白金電解析出物は引張り応力が高くなりやすく、アルカリめっき浴では有孔度の数値が高くなり耐食性が劣るという課題があった。また、酸性白金電解めっき液では電気めっきの作業中にめっき条件が変動し、めっき製品のめっき品質が不安定になることがしばしばあった。また、有機物や不純物が液中に蓄積したりすると、めっき条件が変動し、めっき製品の不具合が発生することがわかった。
要約すると、酸性白金電解めっき液では、電気めっき条件が変動しやすく新たな白金粒子の核形成が得られないため、電解析出物は応力が高く、クラックやピンホールの多い白金めっき製品しか得られないという課題があった。この原因の一つにケイ素の化合物が考えられていた。また、酸性白金電解めっき液では、ニトロ基などの配位子を含む白金(II)錯体が分解しやすく、電気めっきが安定しないことが多いこともこれらの課題の原因であると考えられていた。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、極めて安定で、浴寿命の長い酸性の白金電解めっき浴を提供することである。また、本発明はケイ素を含まない高純度白金電解めっき浴を提供することである。特にニトロ基のような分解しやすい配位子を含む白金(II)錯体の酸性白金電解めっき液であっても、アモルファス状態の白金析出物が得られる白金電解めっき浴を提供することである。
他方、本発明の目的は、応力が少なく、走査電子顕微鏡で白金粒子の粒界が観察されない白金皮膜を有する白金めっき製品を提供することである。また、本発明の目的は、X線回折によって結晶方位が観察されないアモルファス状態の白金皮膜を有する白金めっき製品を提供することである。また、本発明の目的とするところは、厚めっき可能な、ケイ素を含まない高純度の白金皮膜を有する白金めっき製品を提供することである。特に、耐食性が良好で機械的摩耗が少ない白金めっき製品を提供することである。
本発明者らは、めっき製品の不具合を検討したところ、不純物としてのケイ素が課題を不明確にしていることがわかった。すなわち、従来の酸性白金電解めっき浴中に不純物としてケイ素が含まれていると、析出物中で不規則に金属間化合物などを形成することがある。このようなケイ素の異物が原因で白金電解析出物の電気的特性に悪影響を及ぼすことがあった。
そこで、白金電解めっき浴中に含まれるケイ素の発生源を調べていくと、公称99.9%以上の白金地金にも数十ppmのオーダーで不純物としてケイ素が含まれる場合があることがわかった。また、蒸留水中にもケイ素は含まれていることがわかった。このため白金めっき浴を建浴したり、蒸発水を補充したりする際にもケイ素が蓄積されていくことがわかった。さらに、前処理めっき液としての金めっき浴やパラジウムめっき浴やニッケルめっき浴などにもケイ素は含まれていることがわかった。
本発明者はケイ素を取り除いて様々な酸性白金電解めっき浴を種々検討した。本発明者は、従来の2価白金(II)錯体の硫酸塩またはスルファミン酸塩、および、遊離の硫酸またはスルファミン酸を基本液とし、種々の添加剤を検討した。その結果、酸性白金電解めっき浴では高純度の白金析出物の結晶粒が大きいと耐汗性が悪くなることがわかった。
本発明者は、界面活性剤がひとつの分子の中に親水基と疎水基をあわせもち、金属の表面張力を低下させる性質に着目した。そして、酸性白金電解めっき液中に陰イオン界面活性剤を添加すると、陰極上で析出した白金粒子の形状を均質にすることを知得した。すなわち、白金錯体の場合、陰イオン界面活性剤は2価の白金イオンと配位子の周囲を取り囲んだまま、白金錯体を陰極表面に運ぶ。そして、陰極表面で水溶液中に析出した結晶粒子の周囲を陰イオン界面活性剤が取り囲むので、水溶液中の白金イオンが結晶粒子に付着して結晶粒が成長するのを阻害することに気がついた。
図1を用いてこの作用を説明する。図1は、陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを添加したp-ソルトの酸性白金電解めっき浴の模式図である。便宜的に白金イオンの配位子を硫酸イオンにした。電解めっき液中では、左上の図に示すように、硫酸白金(II)錯体の周囲を陰イオン界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムが取り囲んでいる。左下の図に示すように、陰極表面に運ばれた2価の白金錯体は陰極から電子1個をもらって1価の白金錯体を形成し、その周囲を陰イオン界面活性剤が取り囲む。
その後、この1価の白金錯体が更に陰極から電子1個をもらって中央の図に示す0価の白金、すなわち白金の金属原子となる。水溶液側では白金原子の周囲を陰イオン界面活性剤が取り囲んでいる。他方、陰極表面上の個々の白金原子は凝集力によって、右図に示すように、面心立方構造の白金の原子団を陰極表面上で自律的に形成しうる。こうして陰極上に白金微粒子の原子団が析出する。このように析出した白金粒子の原子団は熱エネルギーによって陰極表面の一部を形成するようになる。
他方、白金原子団の周囲は依然として陰イオン界面活性剤が取り囲んでいる。また、2価の白金錯体の周囲も陰イオン界面活性剤が取り囲んでいる。これらの陰イオン界面活性剤によって白金微粒子の原子団と白金錯体がより電気的に絶縁され、白金原子団と白金錯体の相互作用が抑制される。このため、白金微粒子の原子団が陰極表面の一部になるまでこの白金微粒子上に新たな白金イオンが付着するのを防止することができる。また、白金電解めっき浴の作業温度は高いので、図1に例示した白金粒子の析出反応は連続して進む。このように陰極表面で均質化した結晶粒子が積み重なると隙間なくめっき皮膜を形成するので、電気めっきされた白金製品はち密で非晶質の結晶構造となる。
前記課題を解決し得た本発明の白金電解めっき浴は、2価白金(II)錯体および遊離の硫酸またはスルファミン酸からなる酸性白金めっき浴において、陰イオン界面活性剤を含むことを要旨とする。
また、前記課題を解決し得た本発明の白金電解めっき浴は、2価白金(II)錯体および遊離の硫酸またはスルファミン酸からなる酸性白金めっき浴において、陰イオン界面活性剤、アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩を含むことを要旨とする。
前記課題を解決し得た本発明の白金電解析出物は、白金の純度が99重量%以上あり、ビッカース硬さが450~500Hvあり、応力が100Mpa以下であり、かつ、有孔度が30%以下であることを要旨とする。
本発明の白金電解めっき浴においてpHが2以下であることが好ましく、1.5以下がより好ましい。陰イオン界面活性剤を含むからである。また、電気めっきの作業中に2価白金(II)錯体の硫酸塩またはスルファミン酸塩が安定しているからである。通常のpHは0.2~1.0の範囲である。pHを所定範囲に制御するためpH緩衝剤を用いることができる。pH緩衝剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の白金電解めっき浴において、2価の白金(II)錯体には、従来の電解めっき浴に好ましく用いられる2価の白金(II)錯体を用いることができる。2価白金(II)錯体がニトロ基(NO2)、硝酸基(NO3)硫酸基(SO)またはスルホ基(SO)、並びに、アンミン基(NH3)、アコ基(H2O)または水酸基(OH)のうちの少なくとも1種以上の配位子を有している無機白金錯体が好ましい。電解めっき浴に特に好ましく用いられる2価の白金(II)錯体は、p-ソルト、DNS塩、Q-ソルトなどがある。これらの白金(II)錯体は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明の白金電解めっき浴においては2価の白金(II)錯体を遊離の硫酸またはスルファミン酸に溶解した水溶液を用いる。例えば、p-ソルトやDNS塩などの2価の白金錯体粉末を加熱した熱濃硫酸液または熱濃スルファミン酸液に溶解すると、褐色または淡黄色の液体になる。この2価の白金の溶解液に硫酸またはスルファミン酸を加えたものを濃縮液とする。本発明の白金電解めっき浴はこの濃縮液をそのまま用いてもよく、希釈して使用することもできる。
本発明の白金電解めっき浴において、アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩は、イオン化傾向が大きいので、電気めっきしてもこれらの金属塩が析出することはない。また、これらの金属塩が存在すると、陰イオン界面活性剤の含有量を少なくすることができることがわかった。ただし、これらの金属イオンは陰イオン界面活性剤のように白金粒子の成長を阻害する効果はない。
アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩にはハロゲン元素を含まない。ハロゲン元素は白金電解析出物に悪影響を及ぼすからである。また、これらの金属塩にはリン酸塩を含まない。リン酸塩を多量に含む白金電解めっき浴は白金電解析出物の耐汗性を悪くするからである。リンは白金析出物を緻密化する効果があるが、リン酸塩がは蒸発しにくいのでアルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩に用いると、濃縮されて白金電解析出物に悪影響を及ぼすリスクがある。
また、アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩が存在すると、白金電解めっき浴の白金濃度が薄くなってもより安定した電気めっきを行うことができる。白金電解めっき浴が遊離の硫酸またはスルファミン酸を含むので、アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩には一般的に安価な硫酸金属塩が使用される。
ここで、白金濃度(g/L)に対するアルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩濃度(g/L)の好ましい範囲、すなわち(金属塩濃度/白金濃度)の百分率は1%~30%である。下限値は、2.5%以上がより好ましく、5%以上が特に好ましい。上限値は、20%以下がより好ましく、15%以下が特に好ましい。
また、陰イオン界面活性剤の濃度(mg/L)に対する金属塩濃度(g/L)の好ましい範囲、すなわち(金属塩濃度/陰イオン界面活性剤の濃度)は10~500である。下限値は、10以上がより好ましく、25以上が特に好ましい。上限値は、300以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。
アルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩のなかではマグネシウム塩が特に好ましい。マグネシウム塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、ならびにこれらマグネシウム塩の水和物などがある。酢酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどを用いることもできる。
上記の陰イオン界面活性剤は、ステアリン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、スルファミン酸またはその塩、または、硫酸またはその塩が好ましい。2価白金(II)錯体の硫酸塩またはスルファミン酸塩に溶け込み、電解析出物を緻密にするからである。特にアルキル硫酸またはその塩およびアルキルベンゼンスルホン酸またはその塩がより好ましい。アルキル硫酸塩としてはラウリル硫酸のアルカリ金属塩、アルカリ土金属塩、アンモニウム塩などがある。陰イオン界面活性剤は、めっき液をポンプで循環させるため泡立たないことが望ましい。
本発明の白金電解析出物の表面および断面の走査電子顕微鏡像を、図2に示す。この図は純度99%以上の白金電解析出物の表面(白い横線で区分けした写真上部)および厚さ4μmの断面(同写真下部)を45度の斜め上方から撮影したものである。この図から白金電解析出物の結晶粒が非晶質状態のように緻密であることがわかる。
本発明の白金電解めっき浴は、陰イオン界面活性剤を含むことによって酸性の白金めっき浴であっても非晶質状態の白金電解析出物を得ることができる効果がある。すなわち、この白金電解析出物は、光沢があり、硬くて緻密であるにもかかわらず、応力が極めて低いという特徴がある。また、この白金電解析出物は、特定方向の結晶方位がみられず、300℃で180分間熱処理しても金属白金の結晶方位がみられなかった。
本発明の白金電解めっき浴は、陰イオン界面活性剤およびアルカリ金属またはアルカリ土金属の塩を含むことによって陰イオン界面活性剤の含有量を少なくすることができる効果がある。すなわち、陰イオン界面活性剤の使用量を少なくすることができるので、陰イオン界面活性剤が劣化しても本発明の白金電解めっき浴を長期間連続運転することができる効果がある。
また、本発明の白金電解めっき浴によれば、1μm以下の薄めっき皮膜であっても非晶質なので有孔度が低く、耐食性に優れためっき皮膜が得られるという効果がある。さらに、この白金電解析出物の白金の純度は99%以上ありケイ素が1ppm以下にすることができるので、白金皮膜の品質が安定している効果がある。また、本発明の白金電解めっき浴は、2価の白金(II)錯体の種類に応じて陰イオン界面活性剤を適宜選択することができる。また、陰イオン界面活性剤の含量が少ないので、長時間連続して電気めっきをしても陰イオン界面活性剤が蓄積することがない効果がある。
また、本発明の白金電解めっき浴は、浴温度を比較的低温に設定することができる効果がある。白金電解めっき浴の浴温度を低くすると、めっき液の管理が容易になる効果がある。また、本発明の白金電解めっき浴は不純物の蓄積がないので、めっき液の濾別分離などの高価な装置を設ける必要がない効果がある。
本発明の白金めっき製品は、白金皮膜の結晶粒は非晶質状態のように緻密なので耐汗性に優れている効果がある。特に1μm以下の薄めっきであっても耐汗性が高い白金めっき製品が得られるという効果がある。また、本発明の白金めっき製品は、硬くて緻密なので、コネクタなどの挿抜耐久性に耐え、機械的摩耗に優れている効果がある。また、この白金皮膜は応力が小さいので、この皮膜がはがれたりこの皮膜にクラックが入ったりすることがない効果がある。
また、白金の純度が99%以上あるもののケイ素が1ppm以下とすることができるので、抵抗温度係数は安定しており、本発明の白金めっき製品は均一な電気抵抗値を得ることができる効果がある。また、本発明の白金めっき製品は、低応力なので、金属基体との密着性が強いという効果がある。また、本発明の白金めっき製品は、高純度の白金電解析出物なので、ブレスレットやイアリング等の装身具に用いることができる効果がある。
図1は本発明の白金めっき浴の原理を説明する図である。 図2は本発明の白金電解析出物の走査電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
本発明の白金電解めっき浴において2価白金(II)は、p-ソルトを熱濃硫酸液または熱濃スルファミン酸液に溶解した基本液が好ましい。白金の濃度(2種以上の白金塩を併用する場合は合計含有量)は、白金(Pt)含有量として1~20g/Lが好ましく、2.5~15g/Lがより好ましい。
白金の濃度が1g/L未満では析出速度が遅くなる場合があるが、金属塩があると析出速度の遅延が緩和される。また、目視で観察したとき、めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。他方、白金の濃度20g/Lを超えても白金電解めっきの効果はほとんど変わらない。よって、白金(II)イオンの濃度が20g/Lを超えると、地金コストが高くなる。白金の濃度が2.5~15g/Lの範囲内であれば、連続めっきが安定して行えるようになる。
本発明の白金電解めっき浴においては遊離の硫酸またはスルファミン酸を、2種以上併用する場合は合計含有量で、30~600g/Lが好ましく、50~400g/L含有することがより好ましい。
遊離の硫酸またはスルファミン酸の合計含有量が30g/L未満では、他の補助電導塩の含有量などにもよるが、めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常が認められる場合がある。他方、遊離の硫酸またはスルファミン酸の合計含有量が600g/Lを超えると、めっき作業中の水分の蒸発ロスにより、遊離の硫酸塩の濃度が高くなりすぎ、白金電解めっき液のバランスを損なうリスクがある。
本発明の白金電解めっき浴においては陰イオン界面活性剤を5~500mg/L含むことが好ましい。陰イオン界面活性剤は少量で白金電解析出物に作用して結晶粒を非晶質状態にする。また、陰イオン界面活性剤は白金電解めっき浴から蒸発しにくいので、白金電解めっき浴で長期間安定的に白金電解析出物に作用する。陰イオン界面活性剤は1種の使用に限定されず2種以上を併用することもできる。
陰イオン界面活性剤の含有量が5mg/L未満では白金電解析出物の応力が高くなり、耐食性を向上させる効果が発揮できないことが多い。陰イオン界面活性剤の総量の下限値は20mg/Lが好ましく、50mg/Lがより好ましい。アルカリ金属またはアルカリ土金属の塩を含むと、50mg/Lは15mg/L未満まで低くすることができる。アルカリ金属またはアルカリ土金属の塩を含むと、5mg/Lは3mg/L未満まで低くすることができる。他方、陰イオン界面活性剤の含有量が500mg/Lを超えると、目視で観察したとき、めっき皮膜にヤケやムラといった析出異常がしばしば認められるようになる。また、上限値は300mg/Lが好ましく、200mg/Lがより好ましい。
本発明の白金電解めっき浴には、既知の補助電導塩を用いることができる。本発明の補助電導塩は、上述した金属塩と重複してもよい。具体的な補助電導塩としては、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩等が挙げられる。これらは、1種の使用に限定されず、2種以上を併用することができる。補助電導塩の中ではマグネシウム塩を含むことが特に好ましい。
このほか、本発明の白金電解めっき浴には、pH緩衝剤などの周知の添加剤を用いることができる。pH緩衝剤としては、公知のpH緩衝剤であれば特に限定はない。好ましいものとして、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの無機塩、あるいは、酢酸、ホウ酸、四ホウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グリシン、またはこれらの化合物(カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩など)等が挙げられる。これらのpH緩衝剤は、0.1~100g/Lの濃度範囲で添加することができる。
さらに、錯化剤、浴安定剤、速度調整剤、レベリング剤、結晶調整剤、応力緩和剤、物性向上剤等の機能性添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。ただし、白金電解析出物が純度99%以上の高純度を維持できなくなる機能性添加剤や有孔度を悪くするような機能性添加剤は除かれる。
本発明による白金電解めっき浴の温度は、めっき作業の周囲環境に応じて適宜定めることができる。好ましくは30~90℃の範囲、より好ましくは35~70℃の範囲、さらにより好ましくは40~60℃の範囲である。浴温度が高くなればなるほど、白金電解析出物の析出速度は速くなるが、めっき液の蒸発量が多くなる。用いる金属基体や白金製品の用途によって適宜定めることができる。
本発明による白金電解めっき浴の陰極電流密度はその適用範囲が広く、金属基体のめっき面積、浸漬・噴射めっき装置の選択、めっき液の流量などの条件に合わせて、最適な電流密度を選択することができる。
本発明の白金電解めっき浴は金属基体に適用される。金属基体は、その表面に本発明の白金電気めっきができるものであれば限定されない。金属基体は用途に応じて金属または合金が適宜選択される。コネクタ等の電気・電子部品の用途では、通常、銅金属や銅合金のほか鉄やニッケルやクロムなどの金属やこれらの合金が用いられる。さらに、金属基体にはニッケルやパラジウムや金などの無電解めっきや電気めっきをしたものを用いることもできる。
その他、電極の用途ではチタンやタンタル等の耐火性金属が用いられる。装身具や装飾品の用途ではステンレス鋼、ニッケル、銀合金、金合金などの金属が用いられる。また、厚めっきした白金電解析出物は装飾品や置物に用いることもできる。
本発明の白金電解析出物は、内部応力が低いので、10μm以上の厚めっきができる。また、本発明の白金電解析出物は、内部応力が低く、金属基体から剥離した後に、反りやカールがみられない。また、本発明の白金電解析出物は緻密であり、クラックやピンホールがみられない。また、本発明の白金電解析出物には、実施例に示すような耐汗性試験の一種である有孔度試験を行った。人工汗試験(JISB7285)や促進腐食試験(JIS H 8502)を行っても腐食の違いが評価しにくいからである。また、本発明の白金電解析出物は、内部応力が低く、金属基体から剥離した後に、反りやカールがみられない。
本発明の白金めっき製品においては、金属基体および白金電解析出物の2層構造であることが好ましい。高価な白金地金を節約することができるからである。金属基体は、上述したように、用途によって適宜選択される。金属基体は単一金属でもよく積層金属での良い。単一金属および積層金属にはプラスチックやセラミックスなどに被覆された金属も含まれる。
本発明の薄めっき皮膜の白金めっき製品はコネクタであることがより好ましい。本発明の白金電解析出物は、非晶質状態であり、有孔度が低く、硬度が高く耐食性がある。このため素手で薄い白金電解析出物の表面を触っても腐食しないからである。なお、有孔度は、めっき皮膜の膜厚にもよるが、25%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)
(実施例1)
実施例1の白金原液は、DNSを白金として11g/L含む硫酸液である。この白金原液に硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で160g/L加えて基本浴とした。この基本浴に陰イオン界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製「エマール(同社の登録商標)0」)を60mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例2)
実施例2の白金原液は、p-ソルトを白金として15g/L含むスルファミン酸液である。この白金原液に硫酸を70g/L加えて基本浴とした。この基本浴にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製「ネオペレックス(同社の登録商標)G-15」)を70mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例3)
実施例3の白金原液は、DNSを白金として17g/L含むスルファミン酸液である。この白金原液に硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で150g/L加えて基本浴とした。この基本浴にN-ラウロイルサルコシンナトリウム塩(純度95.5%以上)を180mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例4)
実施例4の白金原液は、DNSを白金として16g/L含む硫酸およびスルファミン酸の混合液である。この白金原液にスルファミン酸を60g/L加えて基本浴とした。この基本浴にアルキルアリルスルホン酸塩・アルキルアンモニウム塩(花王株式会社製「ビスコトップ(同社の登録商標) 200LS-2」)を400mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例5)
実施例5の白金原液は、DNSを白金として5g/L含む硫酸およびスルファミン酸の混合液である。この白金原液に硫酸を80g/L加えて基本浴とした。この基本浴にラウリル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「エマール(同社の登録商標) AD-25R」)を10mg/Lおよび硫酸マグネシウムを15g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例6)
実施例6の白金原液は、DNSを白金として3g/L含むスルファミン酸液である。この白金原液にスルファミン酸を180g/L加えて基本浴とした。この基本浴にステアリン酸ナトリウムを90mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例7)
実施例7の白金原液は、p-ソルトを白金として13g/L含む硫酸液である。この白金原液にスルファミン酸を110g/L加えて基本浴とした。この基本浴に直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(日油株式会社製「ニューレックス(同社の登録商標)ソフトタイプ30」)を160mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例8)
実施例8の白金原液は、DNSを白金として1g/L含む硫酸およびスルファミン酸の混合液である。この白金原液に硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で80g/L加えて基本浴とした。この基本浴にラウリル硫酸アンモニウム(花王株式会社製「エマール(同社の登録商標) AD-25R」)を500mg/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例9)
実施例9の白金原液は、p-ソルトを白金として18g/L含むスルファミン酸液である。この白金原液にスルファミン酸を190g/L加えて基本浴とした。この基本浴に東京化成工業株式会社製のラウリル硫酸カリウムを140mg/Lおよび硫酸マグネシウムを6g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例10)
実施例10の白金原液は、DNSを白金として8g/L含む硫酸液である。この白金原液に硫酸を130g/L加えて基本浴とした。この基本浴に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ネオゲン(同社の登録商標)AS-20」)を200mg/Lおよび硫酸マグネシウムを2g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例11)
実施例11の白金原液は、p-ソルトを白金として14g/L含む硫酸およびスルファミン酸の混合液である。この白金原液に硫酸を200g/L加えて基本浴とした。この基本浴にステアリン酸ナトリウムを300mg/Lおよび硫酸カルシウムを4g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例12)
実施例12の白金原液は、DNSを白金として6g/L含む硫酸およびスルファミン酸の混合液である。この白金原液に硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で140g/L加えて基本浴とした。この基本浴に東京化成工業株式会社製の「1-オクタデカンスルホン酸ナトリウム」を80mg/Lおよび硫酸マグネシウムを20g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例13)
実施例13の白金原液は、DNSを白金として7g/L含むスルファミン酸液である。この白金原液に硫酸を120g/L加えて基本浴とした。この基本浴に東京化成工業株式会社製の「5-スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム」)を5mg/Lおよび硫酸ナトリウムを1g/L添加し、pHを0.4に調整して白金電解めっき浴とした。
上記の実施例1~13の白金電解めっき浴は、p-ソルトまたはDNSを硫酸液またはスルファミン酸液へ溶解して2価の白金錯体を含む白金濃縮液を作成した。その後、この白金濃縮液に硫酸液、スルファミン酸液またはこれらの混合液を加えて白金の基本浴にした。そして、この基本浴に所定の界面活性剤を添加したものを実施例1~13の白金電解めっき浴とした。また、実施例8~13の白金電解めっき浴には、金属塩として一般的な硫酸金属塩を追加した。
これら実施例1~13の白金電解めっき浴の組成を抜粋して表1に示す。なお、いずれの白金電解めっき浴にも不純物としてのケイ素は0.1ppm以下である。
Figure 2022107487000002
電気めっきする金属基体には、すべて同一の銅製のテストピース(20mm×40mm×0.1mm厚の薄片にリード線を溶着したもの)を用いた。このテストピースを脱脂・酸洗浄の前処理をした。その後、実施例1~13の白金電解めっき浴を用いて、前処理したテストピースに浴温度55℃で電流を流し、それぞれの白金電解めっき浴からこのテストピース上に直接白金電解めっきをした。
このようにして実施例1~13の白金電解めっき浴から白金電解析出物を0.8μm析出させた。実施例1~13の白金電解析出物の白金の純度はすべて99%あり、これらの白金電解析出物はすべて光沢があった。さらに、実施例1~13の白金電解析出物の有孔度を測定し、あわせて、硬さおよび内部応力を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 2022107487000003
ここで、有孔度試験は通常の腐食試験では白金電解析出物が腐食しないため採用した試験である。この有孔度試験は、50℃の5%硫酸電解液に0.74Vの低電圧をかけ、実施品を陽極にして20分間電気分解した。白金電解析出物上に露呈した銅イオンの面積を整流器の電流値で測定し、全体の白金電解析出物に占める銅面積の割合を百分率で示し、有孔度とした。すなわち、有孔度100%は白金電解析出物の全面が銅に覆われた状態である。
上記の試験結果から明らかなとおり、本発明の実施品01~13の白金電解析出物は、膜厚が0.8μmと薄いにもかかわらず、光沢がある。また、本発明の実施品01~13の白金電解析出物は、ビッカース硬さが450~480Hvと硬く、有孔度も8.5~13.5%の範囲にあり、耐汗性が優れていることがわかる。しかも、白金の純度はいずれも99%である。また、本発明の実施品01~13の内部応力は20~80Mpaの範囲にあり、極めて低いことがわかる。
本発明の実施品09と実施品02の白金電解析出物の応力を比較すると、前者は20Mpaであるのに対し、後者は70Mpaである。また、本発明の実施品10と実施品01の白金電解析出物の応力を比較すると、前者は20Mpaであるのに対し、後者は40Mpaである。すなわち、白金化合物の種類にかかわらず、硫酸金属塩を含むめっき浴から得られた白金電解析出物の応力は硫酸金属塩を含まないめっき浴からのものよりも応力が低いことがわかる。しかも、本発明の実施品09と実施品02の白金電解析出物の有効度を比較すると、前者は9.5%であるのに対し、後者は10.5%である。マグネシウム塩の効果により白金電解析出物の有効度の数値が低くなり、耐汗性が高くなっていることがわかる。
他方、実施例1の白金電解めっき浴から白金電解析出物を4μm析出させた走査電子顕微鏡写真を図1に示す。図1の写真から明らかなように、白金電解析出物の粒子は、表面および断面の両方の結晶粒の大きさに差異がみられない。すなわち、実施例1の白金電解析出物の粒子は非晶質状態で非常に細かく緻密になっていることがわかる。このため本発明のめっき製品は耐汗性などの耐食性が優れているのである。なお、実施例1の白金電解めっき浴から白金電解析出物を10μm以上析出させた場合でも白金電解析出物の粒子は非晶質状態で非常に細かく緻密のままであった。
(実施例14)
実施例14の白金原液は、Qソルトを白金として4g/L含む硫酸液である。この白金原液に硫酸を70g/L加えて基本浴とした。この基本浴に陰イオン界面活性剤としてN-ラウロイル-N-メチル-β-アラニン(川研ファインケミカル株式会社製「アラノン ALA」)を250mg/L添加し、硫酸マグネシウムを5g/L添加し、pHを0.5に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例15)
実施例15の白金原液は、Qソルトを白金として8g/L含む硫酸液である。この白金原液にスルファミン酸を70g/L加えて基本浴とした。この基本浴に陰イオン界面活性剤としてポリカルボン酸塩(三洋化成工業株式会社製「キャリボン L-400」)を70mg/L添加し、pHを1.5に調整して白金電解めっき浴とした。
(実施例16)
実施例16の白金原液はQソルトを白金として10g/L含む硫酸液である。この白金原液にスルファミン酸を50g/L加えて基本浴とした。この基本浴に陰イオン界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウム塩(花王株式会社製、ペレックスOT-Pを100mg/L添加し、pHを1.5に調整して白金電解めっき浴とした。
これら実施例14~16の白金電解めっき浴の組成を抜粋して表3に示す。なお、いずれの白金電解めっき浴にも不純物としてのケイ素は0.1ppm以下である。
Figure 2022107487000004
実施例1と同様にして、同一の銅製のテストピース(20mm×40mm×0.1mm厚の薄片にリード線を溶着したもの)を用い、白金電解析出物を0.8μm析出させた。実施例14~16の白金電解析出物の白金の純度はすべて99%あり、これらの白金電解析出物はすべて光沢があった。さらに、実施品14~16の白金電解析出物の有孔度を測定し、あわせて、硬さおよび内部応力を測定した。
実施品14の有孔度、硬さおよび内部応力は、11.5%、470Hvおよび40Mpaであった。また、実施品15の有孔度、硬さおよび内部応力は、13.8%、465Hvおよび80Mpaであった。また、実施品16の有孔度、硬さおよび内部応力は、10.2%、480Hvおよび20Mpaであった。その結果を表4に示す。
Figure 2022107487000005

(比較例)
(比較例1)
比較例1は、陰イオン界面活性剤を含めなかった以外は実施例1と同様にし、DNSを白金として11g/L含み、硫酸およびスルファミン酸を等量ずつ合計で160g/L加えた白金電解めっき浴である。
(比較例2)
比較例2は、水素燐酸テトラアミン白金(II)(白金として5g/L)、二水二ナトリウム水素正燐酸塩5g/Lを添加し、水酸化ナトリウム溶液でpH10.5に調整した白金電解めっき浴である。
(比較例3)
比較例3は、ラウリル硫酸ナトリウム(花王株式会社製「エマール(同社の登録商標)0」)を600mg/L添加した以外は、実施例1と同一にした白金電解めっき浴である。
実施例1と同様にして、同一の銅製のテストピース(20mm×40mm×0.1mm厚の薄片にリード線を溶着したもの)を用い、白金電解析出物を0.8μm析出させた。比較品01~03の白金電解析出物の白金の純度はすべて99%あり、これらの白金電解析出物はすべて光沢があった。さらに、比較品01~03の白金電解析出物の有孔度を測定し、あわせて、硬さおよび内部応力を測定した。
比較品01の有孔度、硬さおよび内部応力は、30.6%、400Hvおよび450Mpaであった。また、比較品02の有孔度、硬さおよび内部応力は、35.1%、420Hvおよび550Mpaであった。また、比較品03の有孔度、硬さおよび内部応力は、33.5%、410Hvおよび510Mpaであった。
その結果を表3に示す。
上記の試験結果から明らかなとおり、本発明の実施品14~15の白金電解析出物は、膜厚が0.8μmと薄いにもかかわらず、光沢がある。また、本発明の実施品14~15の白金電解析出物は、ビッカース硬さが400~500Hvと硬く、有孔度も10~15%の範囲にあり、耐汗性が優れていることがわかる。しかも、白金の純度はいずれも99%である。また、本発明の実施品14~16の内部応力は10~100Mpaの範囲にあり、極めて低いことがわかる。
他方、比較品01の白金電解めっき浴は、有孔度が30%と極めて高いことがわかる。また、比較品02の白金電解めっき浴も有孔度が35%と高いことがわかる。また、比較品03の白金電解めっき浴も有孔度が34%と高いことがわかる。また、比較品01~03の白金電解析出物の内部応力は極めて高いことがわかった。他方、比較例3の白金電解めっき浴と実施例1の白金電解めっき浴についてハルセル試験を行った。ハルセル試験片の非晶質めっきをされた領域を観察したところ、比較例3の白金電解めっき浴は、実施例1の白金電解めっき浴に比べ高電流密度側で約50%劣っていた。
上述したとおり、本発明の白金電解めっき浴は、高純度の白金皮膜が得られるにもかかわらず、有孔度が優れて耐食性があることがわかる。また、本発明の白金めっき製品は、緻密で応力が低く光沢もあるので、コネクタなどの電気部品やプリント基板だけでなく、海水電解電極や電気めっき用の不溶性陽極、装身具など多方面の用途に適用することができる。

Claims (10)

  1. 2価白金(II)錯体および遊離の硫酸またはスルファミン酸からなる酸性白金めっき浴において、陰イオン界面活性剤を含むことを特徴とする白金電解めっき浴。
  2. 2価白金(II)錯体および遊離の硫酸またはスルファミン酸からなる酸性白金めっき浴において、陰イオン界面活性剤、およびアルカリ土金属の金属塩またはアルカリ金属の金属塩を含むことを特徴とする白金電解めっき浴。
  3. 前記の白金電解めっき浴のpHが2以下である請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  4. 上記2価白金(II)錯体がニトロ基(NO)、硝酸基(NO)、硫酸基(SO)またはスルホ基(SO)、並びに、アンミン基(NH)、アコ基(HO)または水酸基(OH)のうちの少なくとも1種以上の配位子を有している請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  5. 前記の陰イオン界面活性剤がステアリン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、スルファミン酸またはその塩、並びに、硫酸またはその塩のうちの少なくとも1種以上の化合物である請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  6. 前記の陰イオン界面活性剤が5~500mg/L含む請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  7. 前記の陰イオン界面活性剤がアルキル硫酸またはその塩、並びに、アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩のうちの少なくとも1種以上の化合物である請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  8. さらに、不純物としてのケイ素が1ppm以下である請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴。
  9. 請求項1または請求項2に記載の白金電解めっき浴を用いて製造される白金電解析出物は、白金の純度が99重量%以上あり、ビッカース硬さが450~500Hvあり、応力が100Mpa以下であり、かつ、有孔度が30%以下であることを特徴とする白金めっき製品。
  10. 前記の白金電解析出物はケイ素が1ppm以下である請求項9に記載の白金めっき製品。

JP2021024983A 2021-01-08 2021-02-19 白金電解めっき浴および白金めっき製品 Pending JP2022107487A (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
TW110123506A TWI784601B (zh) 2021-01-08 2021-06-28 鉑電鍍浴及鍍鉑製品
CN202110783978.XA CN114752975A (zh) 2021-01-08 2021-07-12 铂电解镀敷浴和镀铂产品
KR1020210105461A KR102575117B1 (ko) 2021-01-08 2021-08-10 백금 전해 도금욕 및 백금 도금 제품
KR1020230079826A KR20230095905A (ko) 2021-01-08 2023-06-21 백금 전해 도금욕 및 백금 도금 제품

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021001924 2021-01-08
JP2021001924 2021-01-08

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2022107487A true JP2022107487A (ja) 2022-07-21

Family

ID=82457613

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021024983A Pending JP2022107487A (ja) 2021-01-08 2021-02-19 白金電解めっき浴および白金めっき製品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2022107487A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114411215A (zh) * 2022-03-15 2022-04-29 深圳市顺信精细化工有限公司 一种铂电镀液及电镀方法
WO2024105359A1 (en) 2022-11-18 2024-05-23 Johnson Matthey Public Limited Company High efficiency platinum electroplating solutions

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114411215A (zh) * 2022-03-15 2022-04-29 深圳市顺信精细化工有限公司 一种铂电镀液及电镀方法
CN114411215B (zh) * 2022-03-15 2023-12-05 深圳市顺信精细化工有限公司 一种铂电镀液及电镀方法
WO2024105359A1 (en) 2022-11-18 2024-05-23 Johnson Matthey Public Limited Company High efficiency platinum electroplating solutions

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4904933B2 (ja) ニッケルめっき液とその製造方法、ニッケルめっき方法およびプリント配線板用銅箔
US5614003A (en) Method for producing electroless polyalloys
KR102575117B1 (ko) 백금 전해 도금욕 및 백금 도금 제품
JP2004502871A (ja) 無電解銀めっき
JP5887381B2 (ja) 有毒金属または半金属を使用することなく電気めっき法により黄色金合金析出物を得る方法
US4234631A (en) Method for immersion deposition of tin and tin-lead alloys
JP2022107487A (ja) 白金電解めっき浴および白金めっき製品
JP2019214747A (ja) ノンシアン系電解金めっき液
JP5336762B2 (ja) 銅‐亜鉛合金電気めっき浴およびこれを用いためっき方法
US20090038950A1 (en) High speed method for plating palladium and palladium alloys
JP2003530486A (ja) パラジウム又はその合金を電気化学的に析出させるための電解浴
US20130284605A1 (en) High speed method for plating palladium and palladium alloys
CN113463148A (zh) 一种在钛或钛合金基材表面电镀金的方法
JP5583896B2 (ja) パラジウムおよびパラジウム合金の高速めっき方法
US6706420B1 (en) Electroless platinum-rhodium alloy plating
EP0198355B1 (en) Electroplating bath and application thereof
US3892638A (en) Electrolyte and method for electrodepositing rhodium-ruthenium alloys
JP2008285732A (ja) ニッケルめっき液及びそのニッケルめっき液を用いた電気めっき方法並びにその電気めっき方法でニッケルめっき皮膜を形成したチップ部品
US5494710A (en) Electroless nickel baths for enhancing hardness
US20040031694A1 (en) Commercial process for electroplating nickel-phosphorus coatings
US4470886A (en) Gold alloy electroplating bath and process
CN111485262A (zh) 铟电镀组合物和在镍上电镀铟的方法
JP3282875B2 (ja) パラジウムメッキ液及び該メッキ液を用いたパラジウムメッキ方法
JP5318375B2 (ja) パラジウム−コバルト合金めっき液、パラジウム−コバルト合金被膜の形成方法及びパラジウム−コバルト合金硬質被膜の製造方法
Gamburg et al. Technologies for the electrodeposition of metals and alloys: electrolytes and processes

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230915

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240528

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240628