JP3023150U

JP3023150U - 抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製容器およびその蓋

Info

Publication number: JP3023150U
Application number: JP1995011072U
Authority: JP
Inventors: 口深司谷
Original assignee: 株式会社ダイアン総合研究所
Priority date: 1995-09-26
Filing date: 1995-09-26
Publication date: 1996-04-12
Anticipated expiration: 2001-09-26

Abstract

(57)【要約】【課題】本考案は、抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製
容器に関し、抗菌抗黴機能を有する樹脂層を設ける位置
を効果的な位置に限定することにより、簡単かつ安価に
製造でき、しかも空容器の保管時も貯水保管後も抗菌抗
黴機能を発揮できる合成樹脂製容器を提供することを目
的とする。【解決手段】水中に適量の銀イオンを溶出し得る溶解
性ガラスの粉末を含有させた樹脂層を、少なくとも容器
の底部及び側壁の底部にスプレー法や刷毛塗り法で形成
する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本考案は、抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製容器に関し、特に、水利の不便な地区の水貯蔵容器、災害時などの給水容器として容器自体に抗菌抗黴機能を付与することにより、水の汚染による中毒などの二次障害を防止するだけでなく、これらの容器の水充填前の空の容器の保管時の菌や黴の繁殖も防止できる抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製容器に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、水利の不便な地区では、日常生活において水を貯蔵しておく必要があり、水貯蔵容器としてガラス繊維強化ポリエステル樹脂タンク（以下ＦＲＰタンクと略称する）が使用されてきた。また、小型の水貯蔵用容器としてポリエチレン製ふた付き容器（以下ポリ容器と略称する）が使用されてきた。特にポリ容器は、水利の不便な地区だけでなく、不意の断水時や災害時などの給水貯蔵容器としても使用されることが多かった。これらＦＲＰタンク、ポリ容器とも水分による錆の発生がなく、また比較的軽量で、しかも強度的にも優れているために重宝されてきた。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、このような従来の水の貯蔵用合成樹脂製容器にあっては、容器自体に抗菌抗黴機能が備わっていないために、水の貯蔵期間が長引くと、水中に細菌が繁殖したり、水面付近の容器内面や蓋に黴が繁殖して衛生上問題であるばかりでなく、見た目に不潔な感じを与えるという問題点があった。

【０００４】このような問題に対処する手段として、例えば、特開平４−２２３６１号公報には、溶液中に適量の銀イオンを溶出し得る溶解性ガラスの粉末を含有させた樹脂製のコンタクトレンズ容器が開示されている。

【０００５】しかしながら、このような従来の抗菌抗黴機能を有する合成樹脂容器にあっては、容器全体を銀イオンを溶出し得るガラスの粉末を含有させた樹脂で構成していたため、コンタクトレンズ用容器のような小型の容器ならともかく、ポリ容器や、ましてＦＲＰタンクのような大型で肉厚の容器には経済的に到底適用不可能であるという問題点があった。

【０００６】本考案は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、抗菌抗黴機能を有する樹脂層の位置を効果的な位置に限定することにより、簡単な工程によって低コストで製造でき、しかも空容器の保管時も水を貯蔵保管後も細菌や黴の繁殖を防止できる合成樹脂製容器を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は、合成樹脂製容器本体と、該容器本体内周面の少くとも底部と側壁下部とに密着された溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂層とを有し、前記溶解性ガラスにはＡｇ₂Ｏが添加されていることを特徴とする。また、この合成樹脂製容器において、溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂層がスプレーコートによって合成樹脂容器本体に密着されていることを特徴とする。また、この合成樹脂製容器において、溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂層が刷毛塗りによって合成樹脂容器本体に密着されていることを特徴とする。また、蓋本体と、該蓋本体の内側凹部に挿入され、合成樹脂容器本体の蓋孔端面に当接する、溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂製シーリング材とを有し、前記溶解性ガラスにはＡｇ₂Ｏが添付されていることを特徴とする。

【０００８】本考案において使用される銀イオンを溶出し得る溶解性ガラスは、合成樹脂製容器に貯蔵された水や空気中の湿気に対して抑制された溶解速度を持つガラス組成物中に、優れた殺菌効果を持つ銀イオンを重量％で０．４〜１．６％（Ａｇ₂ Ｏ換算）含有させたもので、その粒度が５〜６０μｍとなるように粉砕したものが好ましい。ここでガラス中の銀イオンの含有量が０．４％以下であると、充分な抗菌性を与えるために合成樹脂中に多量の溶解性ガラスを添加する必要があり、合成樹脂の成形性や強度その他の機械的性質を損うばかりでなく、経済的にも高価になり不都合である。またガラス中の銀イオンの含有量が１．６％以上であると、溶解性ガラスを溶融する時に金属銀が析出して炉を損傷するだけでなく、不経済的でもある。さらにその粒度が５μｍ以下であると、樹脂からの銀の溶解速度が極端に遅くなるために多量の溶解性ガラスを添加する必要があり、また粒度が６０μｍ以上であると、合成樹脂に練り込むときに目詰まり等の工程トラブルを起こす可能性が生じるばかりでなく、容器の表面の滑らかさを損なうおそれがある。

【０００９】ポリ容器は、普通は、ブロー成形（中空成形、吹込成形とも言う）または射出成形法により成形される。後者は、特にバケツ形の容器の製造に使用される。その成形用樹脂としては、軟質容器に使用されているものであれば、どのような熱可塑性合成樹脂も使用できる。しかしながら、価格及び疎水性の点からポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。

【００１０】一方、ビルの屋上に据え付けるプラスチックの水タンクや大型の貯水タンクは、プラスチックだけでは強度不足となるので、樹脂に不飽和ポリエステル、繊維にガラス繊維を使用した繊維強度プラスチック（ＦＲＰ）で製造されている。このＦＲＰタンクの成形法は、手積み成形、マッチドダイ法、ＳＭＣ法、スプレーアップ法、フィラメントワインディング法、連続成形など多くの方法を必要に応じて使い分けできる。

【００１１】合成樹脂に対する溶解性ガラスの添加量は、その粒度、合成樹脂の種類及び期待する抗菌効果によって異なるが、一般的には０．３〜１０．０％（重量％）の添加で好結果が得られる。添加量が０．３％以下では、充分な抗菌性が得られず、一方１０．０％以上の添加では、樹脂の特性、特に成形性を損なうおそれがある。

【００１２】さらにまた、溶解性ガラスを添加した合成樹脂で作られた容器からの銀イオンの溶出量が、本考案の目的である抗菌抗黴性に最も大きく影響するので、その量を実験的に確認して、容器の内表面からの銀イオンの溶出速度を１〜５００ｎｇ／ｃｍ²／ｄａｙとすることが好ましいことを確認した。銀イオンの溶出速度がこの範囲よりも低いと充分な抗菌効果が得られず、逆にこの範囲を越えると必要以上の銀イオンが溶出するために効果の持続性が低下する。

【００１３】水道水のように塩素を含んだ水を容器に入れると、銀イオンの溶出速度を適正に選んでも銀と塩素との反応により水が若干にごったり、プラスチック瓶の内面が変色することがあるが、１％以内のハイドロタルサイト類化合物を樹脂中に併用して含有させることにより、プラスチック瓶の透明度の維持を一段と向上でき、飲料水のような食品に使用する際、水の透明性を損なうおそれがなくなり好都合である。

【００１４】本考案のおいて使用される溶解性ガラスの成分としては、ＳｉＯ ₂、Ｂ₂Ｏ₃、Ｐ₂Ｏ₅などの綱目形成酸化物、或いはＮａ₂Ｏ、Ｋ₂Ｏ、ＣａＯ、ＭｇＯ、ＢａＯ、Ａｌ₂Ｏ₃、ＴｉＯ₂、ＺｎＯなどの綱目修飾酸化物からなる、水と接触した場合に水によって溶解性ガラスが僅かずつ溶解し、ガラス組成中に含ませた銀イオンを溶出するものが特に制限されることなく使用できる。

【００１５】一般にポリ容器は、ねじ込み式ふた付き容器として使用される。その際、ふたの裏面の容器の口に接する面に上記のような銀イオンを溶出しうる溶解性ガラスの粉末を含有させた熱可塑性樹脂製シーリング材を付設すると、抗菌抗黴効果を更に効果的に発揮させることができる。またＦＲＰタンクにもねじ込み式蓋やかぶせ蓋を付けるが、その場合も上記と同様のことが言える。

【００１６】

【考案の実施の形態】以下、本考案を図面を参照して説明する。図面は、本考案になるポリ容器の一実施例を示し、ポリ容器１は、内容量１８リットルの低密度ポリエチレン製の容器本体２と、この容器本体２の蓋孔３にねじ込まれるねじ蓋４とを有する。容器本体２の内周面の底部と側壁には、溶解性ガラスの直径５〜２０μｍの粉末を１０重量％混ぜたアクリル系樹脂の有機溶媒溶液をスプレーして乾燥、密着させたスプレーコート層５が形成されている。上記溶解性ガラスは、Ｂ₂Ｏ₃ ８０モル％、ＳｉＯ ₂ １０モル％、Ｎａ₂Ｏ１０モル％の割合の組成からなり、これに、Ａｇ₂Ｏ１．０重量％を添加して溶融したものを使用した。また、ねじ蓋４の蓋本体６の内側凹部には、同様の溶解性ガラス粉末を５重量％混ぜたポリエチレン樹脂のシーリング材７が挿入されていて、ねじ蓋４を締めたとき、シーリング材７が蓋孔３の端面に当接するようになっている。

【００１７】上記スプレーコート層５は容器本体２の内面全体にあってもよいが、図のように底部と側壁下部にあれば内容物に対して有効で、次のように抗菌抗黴効果があった。このポリ容器に蒸留水を入れ、３０日経過後に銀イオン溶出量を測定した。３０日経過後の蒸留水中の銀イオンの溶出量は、５．１ｎｇ／ｃｍ²であった。抗菌試験として、大腸菌が１０，０００個／ｍｌ存在する蒸留水を入れ、２４時間後の生菌数を測定した。生菌数は、２４時間後１０個以下／ｍｌと著しく減少した。

【００１８】本考案の他の実施形態として、内容量２００リットルの円筒形のＦＲＰタンクに本考案を実施した。このＦＲＰタンクにはかぶせ蓋をかぶせる蓋穴を有し、かぶせ蓋は、上述のねじ蓋４と同構造になっていて、同じ材料のシーリング材が挿入されている。ＦＲＰタンク本体内周の底部と側壁の下部には、溶解性ガラスの直径１０〜４０μｍの粉末を１０重量％混ぜた不飽和ポリエステル樹脂のスチレン希釈液を刷毛塗りし、乾燥、密着させたオーバーコート層が形成されている。上記溶解性ガラスは、Ｐ₂Ｏ₂ ５０モル％、Ａｌ₂Ｏ₃ ３モル％、ＭｇＯ４０モル％、Ｎａ₂Ｏ５モル％、Ａｇ₂Ｏ２モル％の割合の組成のものを溶融したものを使用した。このＦＲＰタンクに水道水を入れ、１週間経過後に銀イオン溶出量を測定して、４．１ｎｇ／ｃｍ²という結果を得た。

【００１９】抗菌抗黴試験として、上記の銀イオン溶出量試験後の水道水を放出後の、水滴がＦＲＰタンク内壁面に多少付着した容器にふたをかぶせ、２ケ月放置した。ＦＲＰタンク内をリンスし、菌数を測定した。比較のために、同形の抗菌抗黴性カーバーコート層を形成しなかったＦＲＰタンクも、水道水をスプレー後過剰の水分を捨て去り、水滴が内壁面に多少付着した状態で、同様に２ケ月放置して、菌数を測定した。カーバーコート層を形成したＦＲＰタンクは、細菌数、黴、酵母数とも０であったが、未処理のものは細菌数が約５０個、黴、酵母数が約３０個であった。

【００２０】

【考案の効果】

この考案によれば、銀イオンを溶出し得る溶解性ガラスの粉末を含有させた抗菌抗黴機能を有する樹脂層を、合成樹脂製容器の底面や側壁下部に設けたので、抗菌抗黴性樹脂の抗菌抗黴機能を効果的に発揮する容器を低コストで製造でき、しかも空容器の保管時も貯水使用開始後も細菌や黴の繁殖を防止でき、長期間にわたって清潔な状態を保持することができる。

【００２１】抗菌抗黴機能を有する樹脂層をスプレーガンでスプレーし、あるいは刷毛塗りすることによって、簡単かつ低コストで抗菌抗黴機能を有するポリ容器やタンクを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案になるポリ容器の一実施形態を示す縦断
面図である。

【図２】図１の一部を切欠いた斜視図である。

【符号の説明】

１ポリ容器（合成樹脂製容器）２容器本体４蓋５樹脂層６蓋本体７樹脂製シーリング材

Claims

【実用新案登録請求の範囲】

【請求項１】合成樹脂製容器本体と、該容器本体内周
面の少くとも底部と側壁下部とに密着された溶解性ガラ
ス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂層とを有し、
前記溶解性ガラスにはＡｇ₂Ｏが添加されていることを
特徴とする抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製容器。
【請求項２】溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％
含有する樹脂層がスプレーコートによって合成樹脂容器
本体に密着されていることを特徴とする請求項１記載の
抗菌抗黴機能を有する合成樹脂製容器。
【請求項３】溶解性ガラス粉末を０．３〜１０重量％
含有する樹脂層が刷毛塗りによって合成樹脂容器本体に
密着されていることを特徴とする請求項１記載の抗菌抗
黴機能を有する合成樹脂製容器。
【請求項４】蓋本体と、該蓋本体の内側凹部に挿入さ
れ、合成樹脂容器本体の蓋孔端面に当接する、溶解性ガ
ラス粉末を０．３〜１０重量％含有する樹脂製シーリン
グ材とを有し、前記溶解性ガラスにはＡｇ₂Ｏが添付さ
れていることを特徴とする抗菌抗黴機能を有する合成樹
脂製容器の蓋。