JP3015954U - 構造物の振動減衰装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】製作が容易な、高粘性流体を用いた振動減衰装
置を提供する。 【構成】構造物における振動により水平方向の相対変位
が生じる上部構造と下部構造との間に介在させる、高粘
性流体すなわち粘性体を用いた振動減衰装置であって、
前記上部構造に対し固設する抵抗板と、前記下部構造に
対し固設して前記抵抗板の少なくとも一面に面対向させ
る外板と、これら抵抗板及び外板間にて前記高粘性流体
を収容する周辺部をシールして規定する接着性を有する
粘弾性体とから構成したことを特徴とし、以上の単層構
造のものを所望により積層して多層構造のものとするこ
とができる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は構造物の振動減衰装置、特に地震等による構造物の水平方向振動を高 粘性流体の粘性抵抗により吸収・減衰させるダンパーに関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、地震等による構造物の振動を減衰させるため、高粘性流体（粘性体）を 用いたダンパーが上下階層梁−梁間や免震構造の免震層に設置されている。かよ うなダンパーは、上部構造に抵抗板が下部構造に高粘性流体を収容する容器がそ れぞれ固設され、容器内に充填した高粘性流体内に抵抗板を容器壁と所定間隔を 置いて挿入するようにしたものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上記ダンパーでは、粘稠度の高い高粘性流体を容器内へ密に充 填したり容器壁と抵抗板との間隔を一定に保つのが容易ではなく製作が甚だ面倒 なものとなっていた。

【０００４】 本考案は以上の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、製作が容易な高 粘性流体を用いた構造物の振動減衰装置を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

本考案に係る構造物の振動減衰装置は、構造物における振動により水平方向の 相対変位が生じる上部構造と下部構造との間に介在させる、高粘性流体を用いた ものである。

【０００６】 ここで、構造物には免震建築の免震層あるいは一般的なビル以外の橋梁等も含 まれる。

【０００７】 また、上部構造と下部構造との間とは上下階層間や構造物−基礎間等である。

【０００８】 更に、高粘性流体は一般的に粘性体と称される粘稠度の高い流体である。具体 的には、ブタン系、エポキシ樹脂系、シリコン系の配合物等を挙げることができ る。

【０００９】 本考案は、製作容易化の手段として、前記上部構造に対し固設する第１の剛性 板と、前記下部構造に対し固設して前記第１の剛性板に面対向させる第２の剛性 板と、これら第１及び第２の剛性板間に充填される前記高粘性流体の周辺部をシ ールする接着性を有する粘弾性体とを備える。

【００１０】 ここで、上部構造及び下部構造に対する第１及び第２の剛性板の固設は直接又 は取付用部材等を用いた間接的な溶接やボルト締め等による。

【００１１】 また、接着性を有する粘弾性体とは接着性及び粘性を具備したゴム状物質であ り、具体的には、アクリル系、ゴムアスファルト系、シリコン系の配合物等を挙 げることができる。

【００１２】 更に、粘弾性体によるシールは振動により第１及び第２の剛性板から剥離しな い範囲で接着面積を小さして、高粘性流体の第１及び第２の剛性板に対する接触 面積を大きく取ることが望ましい。

【００１３】 更にまた、高粘性流体の周辺部のシールは第１及び第２の剛性板が立設される 場合、上方が開放するコの字状に途切れていてもよい。

【００１４】 本考案は、前記第２の剛性板を前記第１の剛性板の表裏両面に対するよう二枚 備えることができる。この場合、第１の剛性板の表裏両面にせん断抵抗が生じる ダブルシアー型となる。なお、第２の剛性板が第１の剛性板の片面に対してのみ 備わる場合はシングルシアー型となる。

【００１５】 また、本考案は前記第１の剛性板を複数備えることができ、この場合、単層の ダブルシアー型が複数積層されたものとなる。なお、各第１の剛性板間にて一枚 の第２の剛性板が共有される。

【００１６】 更に、本考案は、前記第１及び第２の剛性板間に前記上部構造及び下部構造の いずれにも固設されない一又は二以上の中間板を設け、これら第１，第２の剛性 板及び中間板間それぞれに前記高粘性流体及び粘弾性体を配設することができる 。 この場合、単層のシングルシアー型が複数積層されたものとなるかあるいは単 層又は複数層のシングルシアー型を組み込んだ単層又は複数層のダブルシアー型 となる。

【００１７】 このように構成することにより、同一相対変位に対する粘弾性体によるシール のせん断歪みが小さくなり、結果的に大きな相対変位に追従可能となる。

【００１８】

【作用】

本考案では、粘弾性体が第１の剛性板と第２の剛性板との間における高粘性流 体が充填される空隙の周辺部をシールすると共に第１の剛性板と第２の剛性板と の間隔を規定する。また、シールの粘弾性体もせん断変形するので、シールの粘 性抵抗も本考案の装置の抵抗力として寄与することになる。

【００１９】

【実施例】

以下、本考案の実施例を添付図面に基づいて説明する。

【００２０】 図１は、建築架構の階層間に設置した本考案に係る構造物の振動減衰装置とし てのダンパー１０を示す正面図であり、該図のＡ−Ａに沿う断面を図２にて示す 。

【００２１】 ダンパー１０は、上部構造の一部となる上階側梁１の下面に上端が固着された 第１の剛性板としての抵抗板１３と、下部構造の一部となる下階側梁２の上面に 下端が固着されて抵抗板１１の表裏両面それぞれに所定間隔を置いて面対向させ た第２の剛性板としての二枚の外板１４とを備えたダブルシアー型のものである 。

【００２２】 抵抗板１３及び外板１４は、接着性を有する粘弾性体１２を上方が開放するコの 字状に介在することのみにより一体化される。また、抵抗板１３、外板１４及び 粘弾性体１２にて包囲される空隙には高粘性流体１１が充填されている。よって 、粘弾性体１２は高粘性流体１４を抵抗板１３と外板１４の間に封じ込める周辺 部（１２）をシールして規定すると共に抵抗板１３と外板１４の間隔を肉厚にて 規定する。

【００２３】 ダンパー１０の製作に際しては、抵抗板１３上に粘弾性体１２を配設し、これ を略水平にして高粘性流体１１を粘弾性体１２が規定した周辺部の内側に流し込 み、上から外板１４を押しつけるようにする。また、抵抗板１３を裏返して同様 の工程を施す。なお、抵抗板１３と外板１４とを粘弾性体１２にて一体化した後 、空隙に高粘性流体を流し入れるようにしてもよい。

【００２４】 以上のダンパー１０では、地震等により上側階梁１と下側階梁２との間にせん 断力が生じると、図３及び図４にて示すように、抵抗板１３と外板１４に水平方 向の相対変位が生じ、この変位に追従して高粘性流体１１がせん断変形し、同時 に粘弾性体１２もシールを保ちながらせん断変形する。高粘性流体１１は接触を 通じて抵抗板１３に振動に対する粘性抵抗を付与し、振動に対する上部構造の応 答加速度を低減する。よって、せん断力の伝達が遮断されると共に振動が減衰さ れる。なお、粘弾性体１２の粘性も振動減衰力に寄与する。

【００２５】 図５（ａ）に示されるダンパー２０は、単層ダブルシアー型のダンパー１０を 積層した二層ダブルシアー型であり、二枚の抵抗板１３（便宜のためダンパー１ ０と同じ参照番号を付す。以下、同じ。）それぞれの表裏両面に外板１４が対向 し、中央の外板１４を各抵抗板１３が共有している。また、ダンパー２０では単 層のものに比べ抵抗力を高めることができ、図５（ｂ）に示すようにせん断変形 する。

【００２６】 図６は、免震構造の免震層に設置したダンパー３０を示す平面図であり、該図 のＢからの正面を図７にて示す。ダンパー３０は、上部構造の一部となる一階側 梁１’の下面から下方に延在させた支承部１”に両端が固着された抵抗板１３と 、抵抗板１３の表裏両面それぞれに所定間隔を置いて面対向させた二枚の外板１ ４と、抵抗板１３と各外板１４の間に設けた二枚の中間板１５とを備える。下方 の外板１４は下部構造の一部となる基礎側梁２’の上面に下面が固着され、上方 の外板１４は便宜的に示される支持部材１６を介して基礎側梁２’に支持されて いる。また、抵抗板１３、外板１４及び中間板１５間それぞれには粘弾性体１２ によるロの字状の周辺シール部（１２）内に高粘性流体１１が封じ込まれている 。

【００２７】 以上のダンパー３０では、ダブルシアー型の両側それぞれにシングルシアー型 を組み込んだ態様であり、一側階梁１’及び基礎側梁２’のいずれにも固設され ない中間板１５が図８にて示すように対応可能な変位ストロークを大きくしてい る。よって、せん断歪みが過大となっても抵抗力は損なわれない。なお、二層シ ングルシアー型の参考図を図９（ａ），（ｂ）にて示す。

【００２８】 本考案の振動減衰装置では、以上の実施例に限らずシングルシアー型もダブル シアー型も所望数積層することができる。

【００２９】

【考案の効果】

以上に述べたように、本考案に係る構造物の振動減衰装置では、第１の剛性板 と第２の剛性板との間における高粘性流体が充填される空隙の周辺部や第１の剛 性板と第２の剛性板との間隔を粘弾性体を配設するだけで規定できるため、製作 や設置が従来のものに比べ著しく簡易化される。

【図面の簡単な説明】

【図１】ダンパーを上下階層梁−梁間に設置した例を示
す正面図である。

【図２】図１のＡ−Ａに沿う断面図である。

【図３】せん断力を受けた状態にあるダンパーの正面図
である。

【図４】図３のＡ’−Ａ’に沿う断面図である。

【図５】二層ダブルシアター型のダンパーを示す断面図
（ａ）と、このダンパーがせん断力を受けた状態を示す
断面図（ｂ）である。

【図６】ダンパーを免震層に設置した例を示す平面図で
ある。

【図７】図６のＢから見た正面図である。

【図８】せん断力を受けた状態にあるダンパーの正面図
である。

【図９】二層シングルシアー型のダンパーを示す断面図
（ａ）と、このダンパーがせん断力を受けた状態を示す
断面図（ｂ）である。

【符号の説明】

１０，２０，３０ ダンパー １１ 高粘性流体 １２ 粘弾性体 １３ 抵抗板 １４ 外板 １５ 中間板

Claims (4)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 構造物における振動により水平方向の相
   対変位が生じる上部構造と下部構造との間に介在させ
   る、高粘性流体を用いた振動減衰装置であって、前記上
   部構造に対し固設する第１の剛性板と、前記下部構造に
   対し固設して前記第１の剛性板に面対向させる第２の剛
   性板と、これら第１及び第２の剛性板間に充填される前
   記高粘性流体の周辺部をシールする接着性を有する粘弾
   性体とから構成したことを特徴とする構造物の振動減衰
   装置。
2. 【請求項２】 前記第２の剛性板が前記第１の剛性板の
   表裏両面に対するよう二枚備わる請求項１に記載の構造
   物の振動減衰装置。
3. 【請求項３】 前記第１の剛性板が複数備わる請求項２
   に記載の構造物の振動減衰装置。
4. 【請求項４】 前記第１及び第２の剛性板間に前記上部
   構造及び下部構造のいずれにも固設されない一又は二以
   上の中間板を設け、これら第１，第２の剛性板及び中間
   板間それぞれに前記高粘性流体及び粘弾性体を配設した
   請求項１又は請求項２に記載の構造物の振動減衰装置。