JP3006776B2 - 気相成長方法 - Google Patents

気相成長方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、基板上にIII−V族
化合物半導体を成長させる気相成長方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】III−V族化合物半導体を単結晶基板
上にエピタキシャル成長させる方法として、気相エピタ
キシャル成長法(以下VPEと呼ぶ)、有機金属気相成
長法(MOCVD)、分子線エピタキシャル成長法(M
BE)などが知られている。III族原料を気体状態で
あるハロゲン化物とし、V族元素を気体状態である水素
物として用いて、水素などをキャリヤガスとして反応容
器に輸送して、基板上にIII−V族化合物半導体を成
長させるハイドライドVPE法は、比較的容易に高純度
かつ良質な結晶膜が得られることから、GaAs,Ga
P,InP等のIII−V族化合物半導体デバイスの作
製に広く応用されている。
【0003】また、III族元素とV族元素を時間的に
別々に供給し、III−V族化合物半導体をIII族原
子を積層し、V族原子を積層し、それを繰り返すことに
より、1/2原子層づつ成長する、いわゆる原子層エピ
タキシャル(ALE)は、III族原料およびV族原料
が基板に到達する前に気相中で反応することがないた
め、成長温度としては比較的低温において単結晶基板上
にIII−V族化合物半導体を成長できることが知られ
ている。
【0004】この様な原子層エピタキシャルにおいて
は、たとえば、III族原子を積層する際には、III
族原子が1原子層積層した状態で安定である必要があ
る。V族原子についても同様である。その状況を実現す
るための1つの方法として、反応容器内へ送る原料ガス
を交互に供給する方法がある。
【0005】図3にその装置の概要を示す。図は通常の
ハイドライドVPE装置の概略を示している。図におい
て、1は第1の反応容器で、この内に第2の反応容器2
が開口し、この第2の反応容器内にIn金属3が収めら
れている。4はInP基板、5は基板ホルダ、6は加熱
装置を示す。MFC1,MFC2は夫々マスフロコント
ローラを示すもので、夫々配管7,8を通して、反応容
器1,2に連通している。次に動作について説明する
と、マスフロコントローラMFC1に流すガスをPH3
と水素の混合ガスとすることにより、反応容器1内にP
3 を導入する。またマスフロコントローラMFC1に
流すガスを水素のみとすることにより、反応容器1内の
PH3 をパージする。InClについては、マスフロコ
ントローラMFC2に流すガスをHClと水素の混合物
とすることにより、加熱装置6によって700〜800
℃に保持されたIn金属と反応して、InClを反応容
器1内に送る。パージについては、マスフロコントロー
ラMFC2に流すガスを水素のみとすることにより行
う。
【0006】図4に、ガス切替方法の状態を示す。図4
の(a)図はマスフロコントローラMFC1におけるP
3 の濃度を、図4(b)図はマスフロコントローラM
FC2におけるHCl濃度を示す。配管内は、時間に対
して、このように意図した矩形的な濃度が得られている
と考えられる。しかし、基板直上の気相の濃度は、反応
容器内での原料の拡散等により、矩形的な濃度分布は得
られない。図4の(c)図に、4重極質量分析装置を用
いて測定した、InCl濃度を示す。横軸は時間、縦軸
はInClの値の対数をとってある。HCl濃度に同期
して、InCl濃度は変化している。しかしながら、H
Clを切った後も時間に対して、ある時定数をもって、
指数関数的に減少していることがわかる。これは、In
Clを生成するIn金属容器内の容量および反応容器の
容量が大きいため、マスフロコントローラMFCでガス
を切り換えても、直ちに基板直上の気相濃度が変化しな
いためと考えられる。原子層エピタキシャル成長におい
ては、III族原子(ここではInCl)を表面につけ
た後、V族原料(ここではPH3 )を供給するわけであ
るが、III族原料が気相中にある内に、V族原料が導
入されると、気相中でInCl+PH3 →InP+HC
l+H2 の反応が進行し、意図しないInPが析出す
る。それを防ぐ為には、十分な気相中のInClパージ
を行った後にPH3 を導入するという方法が取られてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記の様に、従来の技
術では、意図した原子層エピタキシャル成長半導体結晶
を得るためには、III族原料を供給を停止した後、十
分III族原料濃度が減少した後でなければ、PH3
供給することができなかった。そのため、成長時間がか
かるという問題点があった。また逆にいえば、同一時間
で成長した膜の結晶品質が悪くなるという問題点があっ
た。本発明は上記の欠点を解決するために提案されたも
ので、その目的は、反応容器内の濃度減少を速くし、成
長時間を短くする、あるいは同一時間に成長した膜の結
晶品質を向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明は基板を設置した第1の反応容器と、前記第
1の反応容器に開口する第2の反応容器と、前記第2の
反応容器に供給されるハロゲンを含むガスの流量とハロ
ゲンの濃度を制御できる設備を有する装置を用い、前記
第1の反応容器内に設置した基板上に、V族元素を含む
第1のガスと、III族金属を含む第2の反応容器にハ
ロゲンを含むガスを流し、III族元素のハロゲン化物
を含む第2のガスを交互に基板に供給して、III−V
族化合物半導体結晶を成長させる方法において、前記第
2の反応容器にハロゲン化水素を供給し、所望の時間後
にハロゲン化水素の供給を停止する工程と、ついで前記
第2の反応容器に流すキャリヤガスの流量を減少させる
工程とを含むことを特徴とする気相成長方法を発明の要
旨とするものである。
【0009】
【作用】本発明によれば、第2の反応容器内へ流すハロ
ゲン濃度を減少させる第1の工程により、第2の反応容
器および第1の反応容器内の原料濃度を速やかに減少さ
せることに加え、第2の反応容器に流すガスの流量を減
少させる第2の工程により、第1の工程で減少した第2
の反応容器内の残留している原料ガスから、第1の反応
容器内への原料の流出を減少させ、第1の反応容器内の
ハロゲン化物の濃度を著しく減少させることができる。
そのため、続く、V族原料供給までの時間を従来法に比
べ短くできるので、成長速度を速くできるという作用を
有する。
【0010】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。なお
実施例は一つの例示であって、本発明の精神を逸脱しな
い範囲で、種々の変更あるいは改良を行いうることは言
うまでもない。
【0011】(実施例1)図1に本発明の第1の実施例
の成長手続きを示す。(a)は、HCl+H2 の供給の
状態を示している。(b)は、金属Inの入っている反
応容器2へのH2 流量の変化である。(c)は、基板直
上のInCl濃度を示しており、ここでは、成長中に4
重極質量分析装置を用いて測定したInCl濃度を示
す。縦軸は、InClの濃度の対数をとってある。横軸
は時間である。
【0012】図2に本実施例で用いた、半導体成長装置
の概略図を示す。装置は、基本的には、通常のVPE装
置と同じであるが、配管系のガス切替を速くするため
に、原料ガス供給のMFCの後に、排気側へ捨てるパー
ジライン(AV1およびAV3)を設けてある。すなわ
ち図2において、1は第1の反応容器で、この内に第2
の反応容器2が開口し、この第2の反応容器内にIn金
属3が収められている。4はInP基板、5は基板ホル
ダ、6は加熱装置を示す。MFC1〜MFC4はマスフ
ロコントローラ、AV1〜AV4は夫々パージラインを
示す。しかしてMFC1は配管9を介してパージライン
AV1とAV2に連通し、AV1は排気側に接続され、
AV2は配管10を介して第1の反応容器1に連通し、
MFC2の出口は第1の反応容器1に連通している。M
FC3の出口はAV3とAV4に連通し、AV3の出口
は排気側に連通し、AV4の出口は第2の反応容器2に
連通し、MFC4の出口も第2の反応容器2に連通して
いる。
【0013】次に操作について説明する。図1(a)
で、第2の反応容器2に塩酸の供給を開始する(ステッ
プ1)。ここではパージラインAV3を通して、排気側
に捨てていた塩酸を、AV4開,AV3閉とすることに
より、開始した。約9秒ほどこの状態で、反応容器2に
塩酸を供給した後、塩酸の供給を停止する第1の工程を
行った(ステップ2)。ここではAV3を開,AV4を
閉とした。この間、In金属のある反応容器2には、M
FC4で流量制御されたキャリヤH2 が10000sccm
(standard cubic centimeter per min 標準状態水素を
毎分10000cc)流れている。この塩酸供給停止(ス
テップ2)により、基板上のInCl濃度は指数関数的
に減少している。約15秒のパージによりInCl濃度
は、供給時に比べ約4桁減少している。その後、図1
(b)にあるように、キャリヤ水素流量を10000sc
cmから0.1sccm(標準状態水素を毎分0.1cc)に減
少させる第2の工程を行った。
【0014】図1(c)に見られるように、この工程に
より、InCl濃度はこの工程を行う前に比べ、約5桁
減少し、塩酸供給時に比べ約9桁減少していることが分
かる。ここでは、図を省略するが、この後に、PH3
約9秒供給した後、15秒間PH3 のパージを行い、再
び、InClの(ステップ1)の工程を行う。この工程
を1つのサイクルとして、1000サイクルを行った。
これにより成長した、InP基板上のALE成長InP
膜は、電子のキャリヤ濃度は1014cm-3と高品質なも
のが得られた。それに対して、図1の(b)の水素キャ
リヤ流量を成長中10SLMとした場合においては、成
長した原子層エピタキシャルInP膜の電子のキャリヤ
濃度は1018cm-3と多く、また、表面に異常成長が見
られ、表面モホロジイが劣化していた。図1(c)に、
この従来法での、基板上のInCl濃度を破線で示して
ある。(ステップ2)の工程がないため、InCl濃度
は約4桁の減少に留まっている。このことは、PH3
給時におけるInCl濃度が、本発明方法においては、
約9桁減少しているのに対して、従来法においては、約
4桁程度と大きいためであると考えられる。すなわち、
気相中に残っているInClとPH3 が、気相中で反応
し、原子層エピタキシャルInP膜に取り込まれたもの
と考えられる。それによって、不純物濃度が1014から
1018cm-3へと増えて、またそれらが核となり、異常
成長が促進され、表面モホロジイの劣化として表れたも
のと考えられる。
【0015】また、従来の方法で、InClのパージ時
間を40秒としたところ、本実施例と同程度のキャリヤ
濃度1014cm-3の表面モホロジイのよい結晶が得られ
た。このことは、図1(b)のInCl濃度破線より、
この長いパージにより、InCl濃度が減少したためと
考えることができる。
【0016】以上、本発明による実施例によれば、同一
成長時間において成長したALE膜において、格段の結
晶品質の向上が見られた。また、従来法で本実施例と同
程度の結晶性を得るためには、2〜3倍の時間がかか
る。従って、本発明によれば、同一の結晶性をもつIn
P膜を1/2〜1/3の時間で成長できる。
【0017】(実施例2)第2の実施例としては、Ga
Asの成長を行った。実施例1において、PH3 の代わ
りにAsH3 を、In金属の代わりにGa金属を用い
た。他の条件は実施例1と同じであり、同様な結果が得
られた。本実施例では、GaAsとInPについて示し
たが、他のIII−V族化合物半導体、GaSb,Ga
P,InAs等や、III−V族混晶半導体についても
同様の結果が得られた。
【0018】
【発明の効果】上記のように、本発明による半導体結晶
の作製方法は、III族原料の基板上の濃度をすばやく
減少させることにより、気相中でのV族原料との反応を
減少させ、作製されたIII−V族薄膜結晶の結晶性向
上あるいは成長時間の短縮に大きな効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を示す。 (a)PH3 濃度 (b)HCl濃度 (c)InCl濃度
【図2】本発明方法に用いられる装置を示す。
【図3】従来用いられている装置を示す。
【図4】従来用いられている方法を示す。 (a)PH3 濃度 (b)HCl濃度 (c)InCl濃度
【符号の説明】
1 第1の反応容器 2 第2の反応容器 3 In金属 4 InP基板 5 基板ホルダ 6 加熱装置 7,8 配管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 21/205 C30B 25/02 - 25/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板を設置した第1の反応容器と、前記
    第1の反応容器に開口する第2の反応容器と、前記第2
    の反応容器に供給されるハロゲンを含むガスの流量とハ
    ロゲンの濃度を制御できる設備を有する装置を用い、前
    記第1の反応容器内に設置した基板上に、V族元素を含
    む第1のガスと、III族金属を含む第2の反応容器に
    ハロゲンを含むガスを流し、III族元素のハロゲン化
    物を含む第2のガスを交互に基板に供給して、III−
    V族化合物半導体結晶を成長させる方法において、前記
    第2の反応容器にハロゲン化水素を供給し、所望の時間
    後にハロゲン化水素の供給を停止する工程と、ついで前
    記第2の反応容器に流すキャリヤガスの流量を減少させ
    る工程とを含むことを特徴とする気相成長方法。
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