JP3006477B2 - 板波超音波探傷方法 - Google Patents

板波超音波探傷方法

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JP3006477B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、被探傷材に板波超
音波を伝播させ、その反射波を受信して被探傷材に生じ
た欠陥を探傷する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板,冷延鋼板等、その厚みが比較
的薄い被探傷材の表面又は内部に生じた欠陥をオンライ
ンで非破壊検査するために、タイヤ探触子を用いて被探
傷材に板波超音波を伝播させ、その反射波を受信し、そ
の中に欠陥に基づく信号が含まれているか否かによっ
て、被探傷材に生じた欠陥を探傷する板波超音波探傷が
行われている。
【0003】図10はタイヤ探触子の使用態様を示す模式
的断面図であり、図中Sはその長手方向に移送される帯
状の被探傷材である。被探傷材Sの表面には接触媒質15
a が所定の厚みに均一に塗布されている。被探傷材Sの
上方には支持棒13が鉛直に配置してあり、支持棒13の下
端近傍には被探傷材Sの幅方向に固定軸16が支持されて
いる。固定軸16には被探傷材Sに転接する探触部22が回
転自在に取付けてある。
【0004】探触部22は、その周縁部に溝18,18が形成
してあるホイル17,17と該ホイル17,17の周囲を取り囲
むゴム等の帯状のタイヤ部14とを備えており、タイヤ部
14の両エッジは両ホイル17,17の溝18,18に固定してあ
る。探触部22内の固定軸16には、所定周期毎に超音波を
送受信する板波探触子20が被探傷材Sのエッジ部の方向
に所定角度傾斜して固定してある。探触部22内には音響
伝達媒質15b が充填してあり、板波探触子20が発生した
超音波は探触部22内の音響伝達媒質15b ,タイヤ部14及
び接触媒質15a を介して被探傷材Sへ、該被探傷材の幅
方向と平行に所定の入射角で入射され、そこで超音波の
入射角,被探傷材Sの板厚及び超音波の周波数に応じた
振動モードの板波超音波に変換されて、被探傷材S中を
伝播する。
【0005】被探傷材S中を伝播された板波超音波は、
被探傷材Sの表面又は内部に生じた欠陥、及び被探傷材
のエッジ部で反射され、反射波は被探傷材S表面の接触
媒質15a ,タイヤ部14及び探傷部22内の音響伝達媒質15
b を介して板波探触子20に受信されて時系列信号が得ら
れる。
【0006】図11は板波超音波探傷による時系列信号の
一例を示すグラフであり、図中、縦軸は信号強度を、ま
た横軸は超音波を発信してからの時間を示している。図
11の如く、超音波の発信直後から所定の時間A内に、探
触子近傍の乱反射によって受信された複数の信号が現れ
ている。そして、被探傷材の幅方向に伝播される板波超
音波の伝播時間である時間B内に、被探傷材の欠陥の反
射によって受信された信号が現れており、その後に被探
傷材のエッジ部の反射によって受信された信号が所定の
時間Cだけ現れている。このようにエッジ部からの反射
信号の幅が広いのは、被探傷材中を伝播する板波超音波
は伝播速度が異なる複数の振動モードの板波が重合した
波であるため、各振動モードの板波毎にエッジ部による
反射波が受信されるからである。
【0007】超音波を発信して時間Aが経過したタイミ
ングでゲートを開け、時間Bだけゲートを開けておくよ
うにすることによって、欠陥による反射波のみを受信す
るようにし、時系列信号内に予め定めた閾値以上の信号
が含まれていた場合、欠陥が存在すると判断する。この
とき、板波超音波は伝播距離によって減衰するため、反
射波強度を一定のレベルにするため、伝播距離が長くな
るに従って直線的に小さくなるゲインが設定してある距
離振幅補正回路によって、受信した反射波の強度を補正
している。
【0008】そして、時系列信号の強度に基づいて欠陥
の大きさを評価し、超音波を発信してから欠陥による反
射波が受信される時間の1/2と、予め求めた超音波の
被探傷材中の伝播速度との積から、被探傷材の幅方向に
おける欠陥の存在位置を求めていた。なお、前述したゲ
ート開のタイミング及びゲート領域の幅は、被探傷材の
材質,板幅,及び板厚等に基づいて予め定められる。
【0009】また、特開平 7−55773 号公報には次のよ
うな探傷方法が開示してある。被探傷材又はタイヤ探触
子を移動させ、タイヤ探触子から被探傷材へ所定の周期
で超音波を発信する。探傷方向に経時的に得られる時系
列信号を、所定のサンプリング周期でアナログ/ディジ
タル(A/D)変換して、時系列信号の振幅に応じた複
数の探傷信号を得、それを複数のメモリ素子がマトリッ
クス状に配置してある2次元配列メモリの1列目のメモ
リ素子にそれぞれ記憶させる。そして、時系列信号を受
信する都度、前同様の操作を行い、2列目,3列目,…
と順番に2次元配列メモリの各メモリ素子に記憶させる
ことによって2次元情報を得る。
【0010】2次元配列メモリに記憶した2次元情報
は、適宜階調の画像情報に処理されてD/A変換され、
画像信号として表示装置に与えられ、表示装置は2次元
探傷画像を表示する。表示装置に一画面が表示される
と、2次元配列メモリ内の情報は磁気記録装置に画像情
報として記録される。そして、被探領域の次の領域を探
傷した探傷信号が2次元配列メモリに順に与えられ、2
次元配列メモリは前同様に第1列から順に記憶する。前
述した2次元探傷画像には、探触子近傍の乱反射による
像及びエッジ部の反射波による像が、帯状に2本表示さ
れ、両者の間に欠陥による像が島状に表示されるため、
オペレータはこの島状の像を欠陥であると視認する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た従来の板波超音波探傷方法にあっては、ゲートを開け
るタイミング及びゲートを開けておく時間が一定である
ため、長手方向に移送される被探傷材に蛇行が生じた場
合、探触子近傍の乱反射による信号又はエッジ部の反射
波による信号がゲート内に入って欠陥の誤検出を生じ、
また欠陥の反射波による信号がゲートから外れて欠陥の
見逃しが生じるという問題があった。また、距離振幅補
正回路による反射波強度の補正が適正でないため、次の
ように欠陥の誤検出が生じるという問題があった。
【0012】図12は板波超音波の散乱によるノイズの発
生を説明する説明図であり、図中Sは被探傷材である。
被探傷材Sの一方のエッジ部Eの近傍にはタイヤ探触子
11が転接してあり、タイヤ探触子11から発信された超音
波は板波超音波になって帯状の被探傷材Sの幅方向へ伝
播し、他方のエッジ部Eで反射し、この反射波がタイヤ
探触子11に受信されている。板波超音波の伝播経路に比
較的大きい粒度の結晶粒CR,CR,…が存在する場合、板
波超音波の一部はそれら結晶粒CR,CR,…で反射し、結
晶粒CR,CR,…の大きさに応じた強度のノイズになる。
【0013】この、ノイズの強度も板波超音波の減衰に
影響されており、同じ大きさの結晶粒CR,CR,…からの
ノイズであっても、タイヤ探触子に近い程その強度は大
きい。そこで、距離振幅補正回路でゲインを乗じて反射
波強度を補正することによって、タイヤ探触子から遠い
位置にある欠陥による信号とタイヤ探触子に近い結晶粒
によるノイズとを区別していた。
【0014】図13は距離振幅補正回路に設定したゲイン
の特性及び板波超音波の減衰特性を示すグラフである。
図中、縦軸はゲインを、横軸はタイヤ探触子からの距離
を示している。また、破線はゲイン特性を、実線は減衰
特性をそれぞれ示している。図13の如く、ゲイン特性を
示すグラフは、一定の距離だけ大きな値をとった後、タ
イヤ探触子から離れるに従って直線的に小さくなり、最
初の値より略40dB小さなベース値で一定になってい
る。これに対して、板波超音波の減衰特性を示しグラフ
は、S字状に減少している。従って、図13から明らかな
如く、ゲイン特性と減衰特性とが一致しない部分があ
り、これが欠陥の誤検出の原因になっていた。また、被
探傷材に蛇行が発生した場合、ゲイン特性と受信した反
射波の減衰特性との差は更に大きくなる。更に、距離振
幅補正回路に設定し得るゲインのダイナミックレンジは
40dB程度が限度であり、板波超音波の減衰が大きな
材料,又は探傷領域が広い被探傷材等にあってはダイナ
ミックレンジが不足するという問題もあった。
【0015】一方、特開平 7−55773 号公報に開示され
た板波超音波探傷方法にあっては、表示装置に表示した
2次元探傷画像に基づいて、オペレータが探触子近傍の
乱反射による像,エッジ部の反射波による像及び欠陥に
よる像を各別に視認するため、被探傷材に蛇行が生じて
も、欠陥の誤検出又は見逃しが防止されるものの、欠陥
の検出はオペレータの視認によって行っているため、欠
陥検出の効率が低いという問題があった。また、反射波
強度を適正に補正するという課題は解決されていない。
【0016】本発明はかかる事情に鑑みてなされたもの
であって、その目的とするところは被探傷材の探傷位置
に対応して記憶した各探傷信号を第1閾値に基づいて2
値化し、2値化した各探傷信号を被探傷材又は超音波探
触子の移動方向に積算し、その積算結果から探傷信号に
おける欠陥検出の対象範囲を定め、定めた対象範囲で欠
陥を検出することによって、被探傷材に蛇行が生じても
欠陥の見逃し又は誤検出を防止し得る板波超音波探傷方
法を提供することにある。
【0017】また、他の目的とするところは所定周期で
得られる探傷信号を補正する補正値を板波超音波の減衰
特性に応じて設定しておき、探傷信号が得られる都度、
対応する補正値を用いて補正探傷信号を得ることによっ
て、被探傷材の蛇行に拘らず、探傷信号の信号強度を適
正に補正して、欠陥の誤検出を防止し得る板波超音波探
傷方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る板波超音
波探傷方法は、被探傷材又は超音波探触子を移動させ、
超音波探触子から超音波を移動方向と直交する方向へ所
定周期で発信し、それを板波超音波として前記被探傷材
に伝播させ、各反射波を受信して得た探傷信号に基づい
て欠陥を検出して被探傷材を探傷する方法において、各
探傷信号を被探傷材の探傷位置に対応付けて記憶し、そ
れらの探傷信号を第1閾値に基づいて2値化し、2値化
した各探傷信号を前記移動方向に積算し、その積算結果
から前記探傷信号における欠陥検出の対象範囲を定め、
定めた対象範囲内における探傷信号の信号強度と第2閾
値とを比較し、第2閾値以上であった場合、欠陥である
と判断することを特徴とする。
【0019】超音波探触子から超音波を移動方向と直交
する方向へ所定周期で発信し、それを板波超音波として
前記被探傷材に伝播させ、各反射波を受信して得た探傷
信号には、超音波探触子近傍の乱反射による信号、ノイ
ズ及び欠陥がある場合は欠陥による信号、被探傷材の端
部による信号がこの順に含まれている。この探傷信号を
被探傷材の探傷位置に対応して記憶することによって、
被探傷材の平面形状に応じた情報を得る。そして、記憶
した各探傷信号を第1閾値に基づいて2値化することに
よってノイズを除去し、超音波探触子近傍の乱反射によ
る矩形状の信号及び被探傷材の端部による矩形状の信号
を得る。そして、2値化した各探傷信号を移動方向に積
算することによって、即ち、被探傷材の長さ方向に連な
る複数の探傷信号の2値化値を積算する操作を、被探傷
材の幅方向に順番に繰り返して、被探傷材の幅方向にお
ける超音波信号強度のプロフィールを算出する。
【0020】図7は、被探傷材の幅方向のプロフィール
を算出した結果を示すグラフであり、縦軸はプロフィー
ル値を、横軸は被探傷材の幅方向をそれぞれ示してい
る。前述した如く、被探傷材の幅方向のプロフィールを
算出すると、図7に示した如く、超音波探触子近傍の乱
反射による山と被探傷材の端部による山とがそれぞれ1
つずつ得られ、これらの山によって挟まれた領域を欠陥
検出の対象範囲とする。
【0021】このように、2値化した探傷信号を用い
て、被探傷材の幅方向のプロフィールを算出することに
よって、超音波探触子近傍の乱反射の部分と被探傷材の
端部とを容易に判別し得、被探傷材の蛇行に拘らず、欠
陥検出の対象範囲が正確に定められる。そして、記憶し
た探傷信号において、この対象範囲内にある探傷信号の
信号強度と第2閾値とを比較し、第2閾値以上であった
場合、欠陥であると判断する。これによって、被探傷材
に蛇行が生じても欠陥の見逃し又は誤検出が防止され
る。
【0022】第2発明に係る板波超音波探傷方法は、第
1発明において、所定の欠陥が形成してある試料に超音
波を発信して探傷信号を得、欠陥による探傷信号の信号
強度とノイズによる探傷信号の信号強度との測定結果か
ら前記第2閾値を定め、この第2閾値より小さい前記第
1閾値を定めることを特徴とする。
【0023】欠陥であるか否かの判断に用いる第2閾値
は、所定寸法の欠陥を形成した試料材を板波超音波で探
傷し、得られた探傷信号に含まれる欠陥による探傷信号
の信号強度(S)とノイズによる探傷信号の信号強度
(N)とを比較して、Sのみを検出し得るようにNのn
倍(n>1)の値に定める。そして、この第2閾値より
小さくなるように第1閾値を定める。例えば、第1閾値
を第2閾値の1/nの値とすることによって、第1閾値
を用いた2値化処理によってNのみが除去される。
【0024】第3発明に係る板波超音波探傷方法は、被
探傷材又は超音波探触子を移動させ、超音波探触子から
超音波を移動方向と直交する方向へ所定周期で発信し、
それを板波超音波として前記被探傷材に伝播させ、受信
した各反射波それぞれから所定周期で探傷信号を得、得
られた各探傷信号に基づいて欠陥を検出して被探傷材を
探傷する方法において、各探傷信号を補正する補正値を
前記板波超音波の減衰特性に応じてそれぞれ設定してお
き、探傷信号が得られる都度、対応する補正値を用いて
補正探傷信号を生成し、生成した補正探傷信号に基づい
て欠陥を検出することを特徴とする。
【0025】超音波探触子から超音波を移動方向と直交
する方向へ所定周期で発信し、それを板波超音波として
前記被探傷材に伝播させ、受信した各反射波それぞれを
所定周期で量子化して複数の探傷信号を得る。一方、移
動方向と直交する方向における板波超音波の減衰特性を
予め求めておき、求めた減衰特性から前述した各探傷信
号を補正する補正値をそれぞれ設定しておく。このよう
に、非線型の減衰特性に応じた補正値を設定することに
よって、各探傷信号を適正に補正することができる。ま
た、従来の如く、超音波探触子からの距離に応じて直線
的に探傷信号を補正する場合、被探傷材の蛇行によって
補正誤差が増大するが、本発明にあっては前述した如
く、補正値は板波超音波の減衰特性に応じて設定してあ
るため、被探傷材に蛇行が発生しても補正誤差は僅かで
ある。
【0026】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に
基づいて具体的に説明する。図1は本発明方法の実施に
使用する板波超音波探傷装置の構成を示すブロック図で
あり、図中11はタイヤ探触子である。タイヤ探触子11は
矢符方向に移送される帯状の被探傷材Sの一方のエッジ
部E上に転接させてある。タイヤ探触子11にはパルサ2
から電圧が印加されるようになっており、パルサ2はパ
ルスタイミングコントローラ1からのパルス信号によっ
て電圧を印加する周期が制御されている。そして、タイ
ヤ探触子11は印加された電圧によって励振され、被探傷
材Sの他方のエッジ部Eへ超音波を発信しその反射波を
受信する。
【0027】タイヤ探触子11が探傷受信した信号は信号
増幅器3にて増幅された後、所定の通過周波数帯域を有
するバンドパスフィルタ4に入力され、ノイズ成分が除
去された信号はアナログ/ディジタル(A/D)変換器
5によって所定の周期でディジタル信号に変換され、複
数の探傷信号からなる時系列信号はコンピュータ6のC
PU61に与えられる。コンピュータ6には、時系列信号
をなす各探傷信号(D Nx1 ,DNx2 ,…,DNxNy)に応
じて、その信号強度を補正するための複数のゲイン(c
1,c2,…,cNx)が設定してあるルックアップテー
ブル62が備えられており、CPU61はA/D変換器5か
ら与えられた時系列信号をなす各探傷信号に、ルックア
ップテーブル62に設定してある各ゲインを先頭から順に
乗じて補正時系列信号(c1DNx1 ,c2DNx2 ,…,
cNxDNxNy)を得る。
【0028】前述した複数のゲインは、被探傷材S及び
タイヤ探触子11を用いて板波超音波の減衰特性を予め検
出しておき、検出した減衰特性,A/D変換器5のサン
プリング周期及びサンプリング数に基づいて、非線型な
減衰特性に応じてそれぞれ算出してあるため、補正時系
列信号を高精度に得ることができる。更に、ゲインは計
算によって予め求めた値をデータとしてルックアップテ
ーブル62に設定しておくため、任意の値を設定すること
ができ、従来の距離振幅補正回路ようにダイナミックレ
ンジに拘束されることはない。一方、ルックアップテー
ブル62に設定したゲインは非線型な減衰特性に正確に対
応しているため、被探傷材Sに蛇行が発生した場合であ
っても、ゲインと板波超音波の減衰特性とのずれは僅か
であり、高い補正精度が保たれる。
【0029】CPU61には前述したパルスタイミングコ
ントローラ1からパルス信号も与えられるようになって
おり、CPU61は、パルスタイミングコントローラ1か
ら与えられたパルス信号に基づいて、得られた補正時系
列信号をフレームメモリ63に2次元配列する。
【0030】図2はCPU61に与えられる信号の波形図
であり、図3はフレームメモリ63内に2次元配列された
時系列信号の波形図である。CPU61には、図2(a)
の如く、パルスタイミングコントローラ1からのパルス
信号、及び図2(b)の如く、各パルス信号のタイミン
グで被探傷材の幅方向に伝播される板波超音波によって
探傷された時系列信号とが与えられる。この時系列信号
をパルス信号毎に分割すると、被探傷材の移送方向の順
に該被探傷材の幅方向毎の時系列信号が得られる。そし
て、それらをx軸が被探傷材の幅方向,y軸が被探傷材
の移送方向,z軸が信号強度である座標軸上に、被探傷
材の移送方向の順に配列して2次元化すると、図3のよ
うになる。なお、両図中、RE はタイヤ探触子近傍の乱
反射による信号であり、KE は欠陥による信号であり、
E は被探傷材の他端エッジ部による信号である。
【0031】フレームメモリ63に補正時系列信号が2次
元配列されると、CPU61はフレームメモリ63内の所定
領域に配列され各補正時系列信号の各探傷信号を、その
信号強度に応じた適宜な階調,例えば0〜255階調の
濃淡画像信号に変換して画像メモリ64に与え、2次元探
傷画像として記憶させる。
【0032】図4は画像メモリ64に記憶された2次元探
傷画像を説明する説明図であり、濃淡の程度を等高線で
示してある。図4において縦軸は被探傷材の移送方向で
あり、横軸は被探傷材の幅方向である。図4の如く、2
次元探傷画像の両端にはタイヤ探触子近傍の乱反射によ
る像RP 及び被探傷材の他方のエッジ部による像T
Pが、縦に帯状に形成されている。そして両像の間に島
状の欠陥による像KP ,K P ,…及びノイズによる像N
P ,NP ,…が形成されている。
【0033】後述する欠陥検出部66には欠陥であると判
断する閾値が試験結果に基づいて予め設定してある。ま
た、欠陥検出の範囲を設定する検出範囲設定部65には、
前記閾値の決定に用いたS/N比(S/N=n)が予め
設定してあり、検出範囲設定部65は欠陥検出部 に設定
された閾値及びS/N比から2値化閾値を算出する。例
えば前述した閾値が階調値128、nが3である場合、
1/3×128≒42.3から、その少数点以下を切り
上げて43が2値化閾値である。
【0034】検出範囲設定部65は算出した2値化閾値を
用いて、画像メモリ64に記憶してある2次元探傷画像を
2値化し、得られた2値化画像から欠陥の検出範囲を決
定する。前述した如く閾値及びS/N比から算出した2
値化閾値を用いて2値化画像を生成することによって、
ノイズによる像のみを的確に消去することができる。そ
して、検出範囲設定部65は2値化画像において、被探傷
材の幅方向の画像信号のプロフィールを算出し、その結
果から欠陥の検出範囲を定める。
【0035】図5は2値化画像を説明する説明図であ
る。また、図6は図5に示した2値化画像のA−A線に
おけるグラフであり、図7は被探傷材の幅方向のプロフ
ィールを算出した結果を示すグラフである。これらの図
を用いて、欠陥検出範囲の決定方法を説明する。なお、
図5において、縦は被探傷材の長手方向であり、横は被
探傷材の幅方向である。
【0036】図5の如く、2値化画像には、図4にあっ
たレベルが低いノイズによる像NP,NP ,…は全て消
去されており、タイヤ探触子近傍の乱反射による像
P ,被探傷材の他方のエッジ部による像TP 及び欠陥
による像KP は最大階調値で表示されている。これらの
内、乱反射による像RP は、2値化によって、幅が広い
帯状の像RP とその内側に細い帯状の像RP の2つに分
かれている。そして、A−A線における2値化結果をグ
ラフ化すると図6のように、乱反射による2つの像
P ,RP 及びエッジ部による像TP に対応した矩形状
の3つの山があるグラフが生成される。
【0037】この乱反射による像RP ,RP に対応した
矩形状の2つの山の内、小さい方の山は、図5から明ら
かな如く、被探傷材の移動方向に沿って、出現する場合
と出現しない場合とがあるので、被探傷材の移動方向に
得られる各グラフを積算することによって、被探傷材の
幅方向のプロフィールを求めると、図7に示した如く、
乱反射による2つの像RP ,RP に対応する2つの山が
1つになる。そして、乱反射による像に対応する山がな
くなる点から、エッジ部による像に対応する山が立ち上
がる点までを欠陥検出範囲とする。これによって、欠陥
検出範囲を正確に定められる。これによって、被探傷材
に蛇行が発生した場合であっても、欠陥検出範囲を高精
度に設定することができ、欠陥の誤検出又は見逃しが防
止される。
【0038】欠陥の検出範囲が決定されると、欠陥検出
部66はその範囲の信号に予め設定された閾値以上のもの
がある場合、欠陥があると判断してその位置を特定す
る。そして、画像メモリ64に2値化画像に対応する2次
元探傷画像を再び生成し、特定した位置にある欠陥の寸
法,ピーク値等の情報を抽出し、それらの情報を上位コ
ンピュータ又は外部記録装置等へ出力する。
【0039】図8及び図9は図1に示したコンピュータ
による欠陥検出手順を示すフローチャートである。コン
ピュータ6のCPU61は、A/D変換器5から与えられ
た時系列信号を取り込む(ステップS1)と、ルックア
ップテーブル62に設定してある各ゲイン(c1,c2,
…,cNx)を参照し(ステップS2)、時系列信号をな
す各探傷信号(DNx1 ,DNx2 ,…,DNxNy)と各ゲイ
ン(c1,c2,…,cNx)とを先頭から順に乗じて補
正時系列信号(c1DNx1 ,c2DNx2 ,…,cNxD
NxNy)を生成する(ステップS3)。CPU61にはパル
スタイミングコントローラ1からパルス信号も与えられ
るようになっており、CPU61は、パルスタイミングコ
ントローラ1から与えられたパルス信号に基づいて、得
られた補正時系列信号をフレームメモリ63に2次元配列
する(ステップS4)。
【0040】フレームメモリ63に補正時系列信号が2次
元配列されると、CPU61はフレームメモリ63内の所定
領域に配列され各補正時系列信号をその強度に応じた適
宜な階調の濃淡画像信号に変換して画像メモリ64に与
え、2次元探傷画像として記憶させる(ステップS
5)。検出範囲設定部65は、欠陥検出部66に設定された
閾値及び該閾値の決定に用いたS/N比から2値化閾値
を算出し(ステップS6)、算出した2値化閾値を用い
て、画像メモリ64に記憶してある2次元探傷画像を2値
化する(ステップS7)。検出範囲設定部65は、得られ
た2値化画像から被探傷材の幅方向のプロフィールを次
の(1)式に基づいて算出し(ステップS8)、算出し
たプロフィールから欠陥の検出範囲を設定する(ステッ
プS9)。
【0041】
【数1】
【0042】欠陥の検出範囲が設定されると、欠陥検出
部66はその範囲の各信号と予め設定された閾値とを比較
し(ステップS10)、閾値以上の信号がある場合、欠陥
があると判断して(ステップS11)、その位置を特定す
る。そして、画像メモリ64に2値化画像に対応する2次
元探傷画像を再び生成し、特定した位置にある欠陥の寸
法,ピーク値等の情報を抽出し(ステップS12)、それ
らの情報を上位コンピュータ又は外部記録装置等へ出力
する(ステップS13)。
【0043】
【発明の効果】以上詳述した如く第1発明に係る板波超
音波探傷方法にあっては、被探傷材に蛇行が生じても欠
陥検出の対象範囲を正確に設定することができるため、
欠陥の見逃し又は誤検出が防止され、探傷精度が向上す
る。
【0044】第2発明に係る板波超音波探傷方法にあっ
ては、2値化処理に用いる第1閾値は、欠陥であるか否
かの判断に用いる第2閾値より小さい値、例えば第2閾
値の設定に用いたS/N比によって第2閾値を除した値
であるため、この第1閾値を用いた2値化処理によって
ノイズのみが除去され、欠陥検出の効率が向上する。
【0045】第3発明に係る板波超音波探傷方法にあっ
ては、移動方向と直交する方向における超音波の非線型
な減衰特性に応じて設定した複数の補正値によって、被
探傷材を探傷して得られた複数の探傷信号を板波超音波
の減衰特性に応じてそれぞれ補正するため、探傷信号は
適正に補正され、また、被探傷材に蛇行が生じても探傷
信号の補正誤差はわずかであり、探傷精度が向上する
等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の実施に使用する板波超音波探傷装
置の構成を示すブロック図である。
【図2】CPUに与えられる信号の波形図である。
【図3】フレームメモリ内に2次元配列された時系列信
号の波形図である。
【図4】画像メモリに記憶された2次元探傷画像を説明
する説明図である。
【図5】2値化画像を説明する説明図である。
【図6】図5に示した2値化画像のA−A線におけるグ
ラフである。
【図7】被探傷材の幅方向のプロフィールを算出した結
果を示すグラフである。
【図8】図1に示したコンピュータによる欠陥検出手順
を示すフローチャートである。
【図9】図1に示したコンピュータによる欠陥検出手順
を示すフローチャートである。
【図10】タイヤ探触子の使用態様を示す模式的断面図
である。
【図11】板波超音波探傷による時系列信号の一例を示
すグラフである。
【図12】板波超音波の散乱によるノイズの発生を説明
する説明図である。
【図13】距離振幅補正回路に設定したゲインの特性及
び板波超音波の減衰特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 パルスタイミングコントローラ 2 パルサ 5 A/D変換器 6 コンピュータ 11 タイヤ探触子 61 CPU 62 ルックアップテーブル 63 フレームメモリ 64 画像メモリ 65 検出範囲設定部 S 被探傷材 E エッジ部

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被探傷材又は超音波探触子を移動させ、
    超音波探触子から超音波を移動方向と直交する方向へ所
    定周期で発信し、それを板波超音波として前記被探傷材
    に伝播させ、各反射波を受信して得た探傷信号に基づい
    て欠陥を検出して被探傷材を探傷する方法において、 各探傷信号を被探傷材の探傷位置に対応付けて記憶し、
    それらの探傷信号を第1閾値に基づいて2値化し、2値
    化した各探傷信号を前記移動方向に積算し、その積算結
    果から前記探傷信号における欠陥検出の対象範囲を定
    め、定めた対象範囲内における探傷信号の信号強度と第
    2閾値とを比較し、第2閾値以上であった場合、欠陥で
    あると判断することを特徴とする板波超音波探傷方法。
  2. 【請求項2】 所定の欠陥が形成してある試料に超音波
    を発信して探傷信号を得、欠陥による探傷信号の信号強
    度とノイズによる探傷信号の信号強度との測定結果から
    前記第2閾値を定め、この第2閾値より小さい前記第1
    閾値を定める請求項1記載の板波超音波探傷方法。
  3. 【請求項3】 被探傷材又は超音波探触子を移動させ、
    超音波探触子から超音波を移動方向と直交する方向へ所
    定周期で発信し、それを板波超音波として前記被探傷材
    に伝播させ、受信した各反射波それぞれから所定周期で
    探傷信号を得、得られた各探傷信号に基づいて欠陥を検
    出して被探傷材を探傷する方法において、 各探傷信号を補正する補正値を前記板波超音波の減衰特
    性に応じてそれぞれ設定しておき、探傷信号が得られる
    都度、対応する補正値を用いて補正探傷信号を生成し、
    生成した補正探傷信号に基づいて欠陥を検出することを
    特徴とする板波超音波探傷方法。
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