JP3003343B2 - 複合フィルムおよびフラットケーブル - Google Patents

複合フィルムおよびフラットケーブル

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性、絶縁性、層間
接着性などに優れた複合フィルムに関し、さらに詳しく
は、エンジニアリングプラスチックである芳香族系ポリ
マーのフィルムとポリオレフィン系樹脂層とが積層さ
れ、両者の積層界面での剥離強度に優れた複合フィルム
に関する。本発明の複合フィルムは、フラットケーブル
等の絶縁基材として好適である。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体産業の発達により、各種機
器内の配線の複雑化に対応して、配線作業の省力化や配
線ミスの防止のため、さらに機器の小型化を目的とし
て、フラットケーブル(フラット電線)が開発され、広
範な分野で利用されている。
【0003】フラットケーブルは、複数本の円形導体ま
たはリボン状導体が2枚の耐熱性フィルムの間に相互に
接触しないように平行に配列され、接着剤層を介してラ
ミネート加工されている。このようなフラットケーブル
の絶縁基材としては、一般的に、二軸延伸ポリエチレン
テレフタレート(PET)フィルムと接着剤層またはヒ
ートシール層を形成する熱可塑性樹脂層とからなる複合
フィルムが汎用されている。
【0004】例えば、PETとポリ塩化ビニル(PV
C)との複合フィルムやPETと飽和共重合ポリエステ
ルとの複合フィルムがよく知られている。また、PET
とポリオレフィン系ホットメルト樹脂の複合フィルムも
提案されている(特開平2−295724号)。
【0005】一方、PETフィルム以外にも、各種芳香
族系ポリマーからなる高性能フィルムが次々と開発さ
れ、絶縁基材としても使用されている。これらの高性能
フィルムは、汎用フィルムに対比してエンプラフィルム
と呼ばれ、耐熱性、機械特性、電気絶縁性、寸法安定性
などに優れている。ところが、これら芳香族系ポリマー
のフィルムは、一般に、ポリオレフィン系樹脂との接着
性に乏しく、積層界面で剥離し易いため、両者の複合フ
ィルムの作成は非常に困難である。
【0006】従来、芳香族系ポリマーのフィルムとポリ
オレフィン系樹脂層からなる複合フィルムを製造するに
は、反応性に富むシラン化合物をグラフト共重合したポ
リオレフィン系樹脂や無水マレイン酸を共重合したポリ
オレフィン系樹脂などの特定のホットメルト樹脂が使用
されていた。しかし、これらのホットメルト樹脂は、積
層するに際し、十分な熱量を与えてやらなければ強固に
は接着せず、芳香族系ポリマーのフィルム上に押出コー
ティングしただけでは十分な剥離強度を得ることができ
ない。
【0007】また、両者を積層するに際し、アンカーコ
ート剤(AC剤)を用いる方法があるが、ポリエチレン
などのポリオレフィン系樹脂は、他の素材との接着性に
乏しいため、有効なものが少ないという欠点があった。
【0008】耐熱性、機械特性、絶縁性、寸法安定性な
どに優れた芳香族系ポリマーのフィルムとポリオレフィ
ン系樹脂層とを積層した複合フィルムが容易に得られる
ならば、例えば、フラットケーブル用の絶縁基材として
使用した場合に、最近の厳しい要求性能に応えることが
できるが、従来の方法では、層間剥離強度に優れた複合
フィルムを得るにはいまだ不十分である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アン
カーコート剤を使用することなく、また、押出コーティ
ングするだけで、芳香族系ポリマーのフィルムとポリオ
レフィン系樹脂層とが積層され、両者間の層間剥離強度
に優れた複合フィルムを提供することにある。また、本
発明の目的は、このような複合フィルムを用いたフラッ
トケーブルを提供することにある。
【0010】本発明者は、前記従来技術の問題点を克服
するために鋭意研究した結果、ポリオレフィン系樹脂に
多官能性モノマーまたはオリゴマーを配合した樹脂組成
物を用い、これを芳香族系ポリマーのフィルム上に押出
コーティングして積層フィルムとし、次いで電離性放射
線を照射すると、両者間の積層界面での剥離強度が増大
し、十分な実用性能を有する複合フィルムの得られるこ
とを見いだした。
【0011】また、この積層フィルムを2枚、ポリオレ
フィン系樹脂組成物層を内側にして対向させ、その間に
複数本の導体を挟み、ラミネート加工し、次いで電離放
射線を両面から照射すると、耐熱性、絶縁性、剥離強度
等に優れたフラットケーブルを容易に得ることができ
る。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至っ
たものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれ
ば、(A)分子骨格中に芳香族環を有し、ガラス転移温
度が60℃以上である結晶性プラスッチックフィルムま
たはガラス転移温度が150℃以上である非晶性プラス
チックフィルムと、(B)ポリオレフィン系樹脂100
重量部に対して、多官能性モノマーまたはオリゴマーを
0.5〜10重量部の割合で含有するポリオレフィン系
樹脂組成物層とが積層され、かつ、該ポリオレフィン系
樹脂組成物層が線量1〜30Mradの電離性放射線の
照射を施されたものであることを特徴とする複合フィル
ムが提供される。また、本発明によれば、該複合フィル
ムを絶縁基材として用いたフラットケーブルが提供され
る。
【0013】以下、本発明について詳述する。本発明で
は、芳香族系ポリマーのフィルムとして、分子骨格中に
芳香族環を有し、ガラス転移温度が60℃以上である結
晶性プラスッチックフィルムまたはガラス転移温度が1
50℃以上である非晶性プラスチックフィルムを使用す
る。
【0014】分子骨格中に芳香族環を有し、ガラス転移
温度が60℃以上である結晶性プラスチックとしては、
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ
エチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサル
ファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(P
EEK)などを挙げることができる。また、分子骨格中
に芳香族環を有し、ガラス転移温度が150℃以上であ
る非晶性プラスチックとしては、例えば、ポリアリレー
ト(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテ
ルサルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PE
I)、ポリイミド(PI)などを挙げることができる。
【0015】製膜法としては、熱可塑性のものは通常の
溶融押出法により、不溶融性のものは溶液による流延法
によりフィルムとすることができる。結晶性の芳香族ポ
リマーの場合には、製膜後に一軸または二軸延伸(配向
処理)する場合が多い。
【0016】ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、
ポリエチレン(PE:低・中・高密度、直鎖状低密度な
ど)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチ
レン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピ
レン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、ブテン
−プロピレン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステ
ル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリプロピレンなどを
挙げることができ、これらは、それぞれ単独で、あるい
は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】多官能性モノマーまたはオリゴマーとして
は、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アク
リレート、トリアリル(イソ)シアヌレート、ジエチレ
ングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、
1.4−ポリブタジエンなどを挙げることができるが、
これらに限定されるわけではない。
【0018】多官能性モノマーまたはオリゴマーは、ポ
リオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.5〜1
0重量部の割合で配合する。この配合割合が0.5重量
部未満であると、照射架橋後も十分な接着力が得られな
くなる。好ましくは1重量部以上である。また、この配
合割合が10重量部を越えると、ポリオレフィン系樹脂
と十分に混合されず多官能性モノマーまたはオリゴマー
がブリードする場合があるうえ、10重量部以上添加し
ても層間剥離強度が飽和して、それ以上上昇することも
ない。
【0019】ポリオレフィン系樹脂には、所望により難
燃剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、充填剤等の各種添加
剤を適宜配合することができる。
【0020】本発明の複合フィルムを製造するには、芳
香族ポリマーのフィルム上に、押出コーティング法によ
りポリオレフィン系樹脂組成物を積層し、得られた積層
フィルムに電離性放射線を照射してポリオレフィン系樹
脂層を架橋させる。
【0021】照射されるべき電離性放射線の種類として
は、α線、電子線(β線)、γ線、X線、紫外線などを
挙げることができるが、工業的利用の見地から、生産性
を考慮すれば、電子線またはγ線が好ましく、特に、電
子線が好ましい。
【0022】照射線量は、1〜30Mradの範囲とす
る。線量が1Mrad未満であると、十分な架橋がなさ
れず、層間剥離強度が向上しない。逆に、30Mrad
を越えると、複合フィルムが劣化することがある。
【0023】本発明の複合フィルムを用いてフラットケ
ーブルを作製するには、押出コーティング後の仮接着状
態にある積層フィルム2枚の間に、ポリオレフィン系樹
脂組成物層を内側にして複数本の導体を挟んでラミネー
トした後、芳香族ポリマーのフィルム外面から電離性放
射線を照射する。そうすると、複数本の導体が中間層の
ポリオレフィン系樹脂組成物層に埋設され、その上下両
面を芳香族ポリマーのフィルムで挟んだ構造のフラット
ケーブルを得ることができる。
【0024】図1〜図4に、本発明の複合フィルムを用
いてフラットケーブルを連続的に製造する方法を示す。
図1に示すように、芳香族ポリマーのフィルム(1)上
に、Tダイ押出機(3)からポリオレフィン系樹脂組成
物(2)を押出コーティングして積層し、ロール(4、
5)で圧着させて仮着した状態の積層フィルム(6)を
得る。図2に示すように、この積層フィルム2枚の間に
複数本の導体(7)を挟み込んで、図3に示す構造の積
層体を得る。この積層体の両面から電離性放射線照射装
置(8)により電離性放射線を照射してポリオレフィン
系樹脂組成物層(2)を架橋する。
【0025】本発明の複合フィルムを用いたフラットケ
ーブルは、絶縁フィルムの層間剥離がなく、しかもエン
プラフィルムの有する優れた耐熱性、機械特性、絶縁
性、寸法安定性などを発揮することができる。
【0026】
【実施例】以下に実施例と比較例により本発明を説明す
る。なお、これらの実施例は、本発明を限定するもので
はない。
【0027】[実施例1〜9、比較例1〜6]表1およ
び表2の「熱可塑性樹脂」の項に示した各成分を二軸押
出機により混合して(混合温度150℃)、低軟化点樹
脂組成物を得た。次に、低軟化点樹脂組成物をTダイ押
出機により、押出温度180℃、押出線速5m/min
の条件にて、100μmの厚みで、各芳香族ポリマーの
フィルム(「絶縁フィルム」の項:厚み50μm)上に
押し出した。この段階における、絶縁フィルムと低軟化
点樹脂組成物層の間の層間剥離強度を測定した。
【0028】次に、Tダイ押出で得られた各積層フィル
ムに、絶縁フィルム側から、加速電圧200kVの電子
線を10Mrad照射し、この段階での層間剥離強度を
測定した。
【0029】層間剥離強度の測定は、剥離巾10mm、
引張速度200mm/minの条件で、インストロン引
張試験機を用いて行なった。結果を表1および表2に示
す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】(脚注) PI:ポリイミド PEEK:ポリエーテルエーテルケトン PPS:ポリフェニレンサルファイド PES:ポリエーテルサルフォン PEI:ポリエーテルイミド PEN:ポリエチレンナフタレート PE:ポリエチレン;メルトフローインデックス(M
I)=2g/10min(190℃) EEA:エチレン−エチルアクリレート共重合体;エチ
ルアクリレート(EA)含量=19重量%、MI=25 シラングラフトEEA:EA含量=19重量%、シラン
=0.05重量%、MI=25g/10min TAIC:トリアリルイソシアヌレート TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート AC−PET:PETフィルムの片面にアンカーコート
剤(AC剤)を塗布したもので、AC剤塗布面にPEを
押出コーティングした。
【0033】(評価)表1から明らかなように、実施例
1〜9に示した複合フィルムの場合、押出直後の積層フ
ィルムの層間剥離強度に比べて、照射後のそれは大きく
上昇していることがわかる。
【0034】これに対して、比較例1〜5の場合には、
低軟化点側樹脂組成物が多官能モノマーまたはオリゴマ
ーを含有していないか、0.5重量部未満の含有量の場
合であり、含有していない場合(比較例1、4、5)
は、照射後も全く剥離強度が上昇せず、0.3重量部含
有している場合(比較例2、3)も殆ど上昇していな
い。特に、比較例5は、樹脂としてホットメルト接着剤
であるシラングラフトEEAを用いているが、押出コー
ティングだけでは層間剥離強度が出ず(0.4kg/c
m)、この値は照射後もあまり上昇しない。したがっ
て、多官能性モノマーまたはオリゴマーの添加は、非常
に大きい効果があることがわかる。また、比較例6は、
PETフィルムにAC剤を塗布したものであるが、あま
り強い剥離強度は出なかった。
【0035】[実施例10]実施例1で得られた未照射
の積層フィルム(幅10mm)2枚の間に、幅1mm、
厚さ0.05mmの平型導体6本を0.5mm間隔に並
べて挟み込み、150℃で熱ラミネートし、両面から加
速電圧200kVの電子線を10Mrad照射した。そ
の結果、ポリイミドフィルムとポリエチレン層の界面剥
離強度が1.1kg/cmのフラットケーブルが得られ
た。
【0036】
【発明の効果】本発明により、エンジニアリングプラス
チックである芳香族ポリマーからなる絶縁フィルムとポ
リオレフィン系樹脂層との接着性を高めるた複合フィル
ムが提供される。この複合フィルムを応用すれば、エン
ジニアリングプラスチックからなる絶縁フィルムとポリ
オレフィン系樹脂の接着剤層からなるフラットケーブル
を容易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】芳香族ポリマーのフィルム上に、ポリオレフィ
ン系樹脂組成物を押出コーティングして積層造する方法
を示す断面略図である。
【図2】積層フィルム2枚の間に複数本の導体(7)を
挟み込む方法を示す断面略図である。
【図3】複数本の導体がポリオレフィン系樹脂組成物層
に埋設され、その上下両面を芳香族ポリマーのフィルム
で挟んだ構造の積層体を示す断面略図である。
【図4】図3の積層体の両面から電離性放射線照射装置
により電離性放射線を照射してポリオレフィン系樹脂組
成物層を架橋する方法を示す断面略図である。
【符号の説明】
1 芳香族ポリマーのフィルム 2 ポリオレフィン系樹脂組成物層 3 Tダイ押出機 4 ロール 5 ロール 6 仮着した状態の積層フィルム 7 導体 8 電離性放射線照射装置

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)分子骨格中に芳香族環を有し、ガ
    ラス転移温度が60℃以上である結晶性プラスッチック
    フィルムまたはガラス転移温度が150℃以上である非
    晶性プラスチックフィルムと、(B)ポリオレフィン系
    樹脂100重量部に対して、多官能性モノマーまたはオ
    リゴマーを0.5〜10重量部の割合で含有するポリオ
    レフィン系樹脂組成物層とが積層され、かつ、該ポリオ
    レフィン系樹脂組成物層が線量1〜30Mradの電離
    性放射線の照射を施されたものであることを特徴とする
    複合フィルム。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィン系樹脂がポリエチレンで
    ある請求項1記載の複合フィルム。
  3. 【請求項3】 分子骨格中に芳香族環を有するプラスチ
    ックが、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポ
    リフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、
    ポリエーテルイミド、またはポリエチレンナフタレート
    である請求項1または2記載の複合フィルム。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれか1項記載の
    複合フィルムを用いたフラットケーブル。
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