JP3695272B2 - 親水性高分子膜およびその高分子膜を用いた高分子固体電解質膜並びにその製膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、通常の環境雰囲気下において、湿度の影響を受け、容易に劣化するような親水性高分子であるポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜を該高分子膜を被覆層で被覆した親水性高分子膜およびその製膜方法に関する。被覆層を剥離して得られる架橋ポリエーテル系重合体からなる親水性高分子膜は、電池、キャパシター、センサー、コンデンサー、EC(エレクトロクロミック)素子等の電気化学デバイス用材料として用いられ、特にリチウムポリマー電池の高分子固体電解質層として好適に使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池、キャパシター、センサー等の電気デバイスを構成する電解質は、イオン伝導性の点から溶液またはペースト状、ゲル状のものが用いられている。
しかし、液漏れによる機器の破損の恐れがあること、デバイスの実装、加工性に問題があること、また電解液を含浸させるセパレータを有するので、デバイスの超小型化、薄型化に限界があることなどの問題がある。
【0003】
このような背景から、親水性で高分子量のポリエーテル系共重合体に、電解質塩としてリチウムイミド塩等のリチウムイオン系の塩、そして架橋剤を添加した架橋高分子固体電解質の開発が行われるようになってきた。この架橋高分子固体電解質は、優れた電気伝導性を有するだけでなく、柔軟性、屈曲性、曲げ加工性を有し、この架橋高分子固体電解質をカソードおよびアノードに挟み込んだ固体電池は、次世代の全固体型リチウムポリマー電池として注目が集められている。
【0004】
一般に、この架橋高分子固体電解質の製膜方法としては、有機溶媒中に、ポリエーテル系共重合体、リチウムイオン系の塩、架橋剤、促進剤などを添加し、キャスト法にて20〜30μmのフィルムを得ている。しかしながら、このキャスト法ではコストアップの問題があること、また有機溶媒を使用することに伴う作業環境の悪化などの問題があった。
【0005】
これらの問題点を改善するため、上記架橋高分子固体電解質を、安価で、有機溶媒を使用する必要のない押出ラミネート法により製膜する試みがなされている。しかしながら、上記架橋高分子固体電解質は押出適性が非常に悪く、製膜ができたとしても100μm程度の厚みのものしか得られていない。
【0006】
また、このような架橋高分子固体電解質は、湿度の影響を受けることで容易に劣化し、製膜する環境の湿度や温度の影響を非常に考慮する必要がある。つまり、架橋高分子固体電解質を得るためには、非常にドライな環境下で製膜する必要があり、そのために製膜環境を整えるに必要な設備または製膜装置など高額の設備を必要とする問題があった。
【0007】
上述したような全固体型リチウムポリマー電池の場合、架橋高分子固体電解質層の厚みが薄ければ薄いほど電池の特性や電池のコストの点からも有効であり、次世代の2次電池として脚光を浴びてはいるが、現状としては押出ラミネート法では、キャスト法のような薄膜の架橋高分子固体電解質が得られていない現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、ピンホールが発生することがなく、かつ厚さが50μm以下の均一な膜厚を有し、品質の優れたポリエーテル系共重合体を主成分とする親水性高分子膜およびその高分子膜を用いた高分子固体電解質膜並びにその製膜方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために考え出されたものであり、請求項1記載の発明は、
厚さが50μm以下の親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物の被覆層で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆したことを特徴とする親水性高分子膜である。
【0010】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の親水性高分子膜において、前記親水性高分子が、ポリエチレンオキサイドホモポリマー、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンの重合比が85/15〜99/1の範囲のポリ(エチレンオキサイド/エピクロルヒドリン)共重合体、あるいはポリ(エチレンオキサイド/末端をメトキシで置換したエチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル)共重合体等のポリエーテル系共重合体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、
請求項1または2記載の親水性高分子膜において、前記親水性高分子を主成分とする樹脂組成物が、少なくともリチウムイオン塩などの電解質塩および架橋剤が配合されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、
請求項1ないし3のいずれかに記載の親水性高分子膜において、前記防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、あるいはポリフッカビニリデン樹脂、ポリビニリデンフロライド樹脂などのフッ素系樹脂、あるいはシリコーン系の樹脂の単体あるいはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、
請求項1ないし4のいずれかに記載の親水性高分子膜において、前記防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物が、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂100重量部に対して、無機化合物を0〜50重量部の範囲で添加されてなることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、
請求項1ないし5のいずれかに記載の親水性高分子膜を、架橋処理を施した後、前記親水性高分子膜の被覆層を剥離して得られる架橋親水性高分子膜をリチウムポリマー電池の固体電解質層として用いたことを特徴とする高分子固体電解膜である。
【0015】
請求項7記載の発明は、
請求項1ないし5のいずれかに記載の親水性高分子膜において、共押し出しにより、親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆して製膜し、次工程で前記親水性高分子膜を、加熱、紫外線照射、電子線照射のいずれかの手段によって架橋処理を施し、前記被覆層を剥離して得られる架橋親水性高分子膜を製造することを特徴とする親水性高分子膜の製膜方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の親水性高分子膜は、厚さが50μm以下の親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物の被覆層で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆したことを特徴とするものである。
【0017】
本発明で用いられる親水性高分子は、ポリビニルアルコール樹脂やエチレン-ビニルアルコール共重合体など、構造中に水酸基を含有する高分子、あるいは、ポリエチレンオキサイドや、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンの重合比が85/15〜99/1の範囲の範囲のポリ(エチレンオキサイド/エピクロルヒドリン)[P(EO/EP)]共重合体、あるいはポリ(エチレンオキサイド/末端をメトキシで置換したエチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル)[P(EO/EM/AGE)]共重合体等のエーテル結合を有するポリエーテル共重合体などが選択され、特に、電池などに使用される親水性高分子としては、後者のポリエーテル系共重合体が使用される。
【0018】
本発明で用いられる防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂は、吸湿性を有する親水性高分子である上記ポリエーテル系重合体からなる膜を該樹脂で被覆するととにより、ポリエーテル系重合体膜の吸湿による劣化を抑えることを目的で使用されるものである。樹脂の一例としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ポリαオレフィン、ポリプロピレン、ポリプロピレン-αオレフィン共重合体などポリオレフィン系樹脂や、ポリフッカビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂などのフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。上述したような樹脂は、防湿性や撥水性や疎水性を有する高分子として良く知られているが、特にこれらに限定されるものではなく、防湿性や撥水性や疎水性を有するような樹脂であれば良い。ただし、加工性やハンドリング、コストの点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0019】
一般に、ポリエーテル系共重合体は、電解質としての機能を発現させるためには、電解質塩としてリチウムイミド塩等のリチウムイオン系の塩を配合し、さらに、膜の強度物性を得るために、架橋剤を添加した樹脂組成物を使用した方が好ましい。基本的に、エチレンオキサイドを骨格に、エピクロルヒドリンやアリルグリシジルエーテル等の架橋点を有するユニットを含有した親水性高分子のポリエーテル系共重合体と、架橋させるための助剤と、導電性を促進させる為の助剤とを添加した組成物であれば良く、特に上記物質に限定されるものではない。
【0020】
また、前記防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物が、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂100重量部に対して、無機化合物を0〜50重量部の範囲で添加されてなることを特徴とするものである。
【0021】
無機化合物としては、粘土鉱物、ゼオライト、石英、ガラス繊維、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛などの各種無機顔料や充填剤を用いることが可能である。この無機化合物を配合する目的については後述する。
【0022】
親水性高分子であるポリエーテル系共重合体を電池などの高分子固体電解質として使用する場合は、ポリエーテル系重合体膜の単層を得る必要がある。
本発明のポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜と該膜を包含するように被覆した親水性高分子膜を、加熱、紫外線照射、電子線照射のいずれかの手段によって架橋処理を施し、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜を架橋せしめ、被覆層を剥離して得られる架橋ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜の単層をリチウムポリマー電池の固体電解質層として用いることを特徴とするものである。
【0023】
次に、本発明のポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜の製膜方法について説明する。
図1は、本発明の親水性高分子膜の構成の一例を示した断面図である。以下、図に基づいて詳細に説明する。
親水性高分子であるポリエーテル系共重合体を、リチウムポリマー電池などの高分子固体電解質として使用する場合は、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜の単層を得る必要がある。親水性高分子膜の単層は、以下に示す工程を経て得られる。
[工程1(共押出工程)]
親水性高分子であるポリエーテル系重合体を主成分とする樹脂組成物1(以下、樹脂Aという)からなる親水性高分子膜a(以下、A層という)を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂2および3(以下、樹脂Bという)に好ましくは無機化合物4および5を配合した樹脂組成物の被覆層(以下、B層という)で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆したB層b/A層a/B層cの構成からなる親水性高分子膜10を得る。
[工程2(架橋工程)]
工程1で得られた親水性高分子膜10のA層aを架橋させる。
[工程3(引き剥がし工程)]
工程2でA層aを架橋せしめた後、B層b /A層a/B層cの構成からなる親水性高分子膜10のB層bおよびcを引き剥がし、 A層aとしてポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜の単層が得られる。
【0024】
樹脂B2および3に配合される上記無機化合物4の役割としては、上記工程3の引き剥がし工程において、A層aからB層bおよびcを引き剥がす際に、より容易にB層を引き剥がすために用いられるものである。高分子固体電解質層として用いられるポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層は、樹脂A1の融点が非常に低く、非常に粘着性を有する。そのために、無機化合物を添加しないと、B層とA層の間でブロッキングが発生し、共押出により均一な膜厚で製膜できたポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層を引き伸ばしてしまう恐れがあり、引き剥がし工程の際に、ピンホールが生じる危険性がある。無機化合物を樹脂Bに添加することにより、アンチブロッキング的な効果を奏し、容易にA層からB層を引き剥がすことができる。また、無機化合物を含有したB層は、光の散乱や拡散により、紫外、可視光を散乱、拡散させ、光によるポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層の劣化を防ぐことが可能である。無機系紫外線吸収材料としての機能を有する酸化チタンや酸化亜鉛が無機化合物として特に好適に使用される。
【0025】
無機化合物の配合によって、上記アンチブロッキング剤的な効果が得られる点から有効であるが、エルカ酸アミドに代表される酸アミド系スリップ剤を添加すると、高分子固体電解質であるポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層の表面の汚染や、電池特性の低下の恐れがあるため、このようなスリップ剤は添加しない方が好ましい。また、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの有機系添加物も極力添加しない方が好ましい。
【0026】
無機化合物は、必ずしも添加する必要が無いが、上述した効果が得られるので添加した方が望ましく、樹脂B100重量部に対し無機化合物を0〜50重量部の範囲で、好ましくは1〜30重量部の範囲で添加するのが望ましい。添加量が少なすぎると、アンチブロッキング効果が劣り、多すぎるとこの樹脂B自体の押出加工適性も低下する。
【0027】
ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層を高分子固体電解質として使用するには、膜物性の向上を目的として、上述した工程2における架橋反応に必要な架橋剤を添加していた方が好ましい。上述した親水性高分子である樹脂Aは、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンであればエピクロルヒドリンユニットが、ポリ(エチレンオキサイト/末端をメトキシで置換したエチレンオキサイト/アリルグリシジルエーテル)共重合体ではアリルグリシジルエーテルユニットが架橋反応点として作用する。
【0028】
樹脂AからなるA層を架橋させる際には、加熱、紫外線、電子線などいずれかのエネルギーを利用して架橋させることが可能である。例えば、加熱によりエピクロルヒドリンの架橋点を架橋させる場合には、架橋剤としてはエチレンチオウレア、チオール類架橋剤等など、アクリルグリシジルエーテルの架橋点を架橋させる架橋剤としては、硫黄、過酸化物架橋剤などが挙げられ、架橋させる温度としては、温度が高い方が架橋しやすいため50℃以上より好ましくは80℃以上、上限はポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層を包含するB層がブロッキングしない温度以下であれば良く、B層のベースとなる樹脂Bが、ポリエチレンであれば115℃以下、ポリプロピレンであれば、145℃以下が好ましい。また、必要に応じて、これらの樹脂BからなるB層同士がブロッキングしないように、ポリフッ化ビニリデンなどのフィルムを介在させることもできる。
【0029】
共押出を行うための押出機については特に制限はないが、架橋剤を添加して熱架橋を行う場合、押出機中の滞留時間によって、高分子固体電解質として機能する親水性高分子である樹脂Aが押出機中で熱架橋、ゲル化を引き起こし、製膜ができなくならないように、押出機のサイズすなわちスクリュー径、L/D等を考慮して架橋剤を選定して製膜を行う。
また、共押出機のダイ設計も、特に制限されるものでなく、フィードブロックタイプやマルチマニホールドタイプなど使用することが可能である。また、ダイのリップクリアランスやダイ幅なども通常のポリオレフィンなどを押出す使用に設定すれば、加工上問題は生じない。
【0030】
また、共押出の場合は、共押出を行う樹脂の溶融粘度によって押出フィルムの厚み分布が異なる。図1に示すように、A層aが完全に包含されるようにB層bおよびcによって被覆されてた状態で製膜されれば、押出端面部分もB層により保護され、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層aの湿度による劣化は避けることが可能である。一方、親水性高分子膜の構造が、図2に示すように、押出端面部分gが外気に触れてしまう構造の場合は、端面部分gの部分からポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層aが吸湿し、劣化を引き起こす可能性がある。この場合、樹脂B2および3の粘度比を調整したり、共押出で使用するダイの樹脂合流部の最適設計によって、図1に示すように、A層aが完全に包含されるようにB層bおよびcによって被覆した状態に膜厚分布を設計することが可能である。
【0031】
親水性高分子である樹脂A1がポリエーテル系重合体を主成分とする場合は、高分子固体電解質としての機能を発現させるために、添加するリチウム塩の種類を変える場合がある。このリチウム塩の選定によっては、電池としての電気特性が大きく異なるだけでなく、溶融時の溶融粘度も大きく変化することがある。この場合は、予め、図3に示すように、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層hに対し、樹脂Bの上層i、下層j、左端部p、右端部kの各々の層を同時に製膜することで、A層hを包含するように上記各々のB層によって被覆すればよい。これにより異なる溶融粘度の樹脂を押し出す際、樹脂Bの溶融粘度の調整をすることなく、 A層を包含するようにB層によって被覆することが可能であり、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜が外気にふれて、吸湿による劣化を防ぐことができる。
【0032】
また、加工条件として押出温度も重要である。架橋前の高分子固体電解質であるポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子である樹脂Aは融点が100℃以下であることが望ましい。150℃を越えると、樹脂Aの分解生成物が生成する恐れがあり、これらの分解生成物が電池特性を低下させる恐れがあることから低温加工が好ましい。また、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層を被覆するB層の押出温度は、A層に対して熱の影響を与えないためにも、極力低温で加工する必要があり、好ましくは、樹脂Bの(融点+40)℃以下で加工することが好ましい。なお、この時の樹脂Bの引き取り性や粘度物性を考慮して、樹脂Bのメルトインデックスが高いものを利用することが良い。
【0033】
製膜後、引き剥がし工程の際、特に図1に示すように、ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜のA層aが、完全にB層bおよびcによって押出端面部分が保護されている場合や、図3に示す構成で、A層hが、各々のB層i、j、k、p で完全に押出端面部分が保護されている場合などは、スコアーカッターなどで、端部をm―m′、n―n′に沿ってその押出端面部分を切断し、その製膜品の中央部を実用幅として、A層から各々のB層を引き剥がすことが好ましい。
【0034】
ポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜が、使用用途により異なるが、例えば全固体型リチウムイオン電池のアノードとカソードの間の高分子固体電解質として使用する場合、膜厚としては、薄ければ薄いほど良く、好ましくは5〜50μm程度で使用される。当然ながら、ポリエーテル系共重合体膜にピンホール等があって電池のアノードとカソードが接触してショートするようなことがあってはならない。
【0035】
【実施例】
以下、具体的に本発明の親水性高分子膜およびその製膜方法についての実施例を詳細に説明する。
【0036】
<実施例1>
ポリエーテル系重合体を主成分とする樹脂組成物である下記樹脂Aと、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂組成物である下記樹脂Bを、下記押出機を使用して下記の加工条件で、A層を、B層の被覆層で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆した親水性高分子膜を作成した。
得られた親水性高分子膜の巻き取りを100mサンプリングし、それを更に小さく巻き取りにした状態で110℃の温度で10時間の条件で架橋反応を施し、樹脂A層を架橋せしめた。その際、加熱による樹脂Bとなるポリエチレン樹脂同士のブロッキングを避けるため、ポリテトラフルオロエチレン製フィルムを介在させることで巻き取りにした。架橋反応終了後、温度40℃、湿度90%R.H.のもとで1週間保存したのち、図3に示すように押出端面部分を端部切断位置m―m′およびn―n′に沿ってスリッターにて切断し、実用幅350mmとした。
このようにして得られたサンプルを、流れ方向300mm、幅350mmのカットサンプルにし、後にB層を手ではがすことにより、A層の厚さ25μmの膜厚が均一なポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜の単膜フィルムを得た。
A層からB層を引き剥がす際、ブロッキングの影響も無く容易に剥ぎ取ることができ、ピンホールもなく良好な製膜状態であった。さらに、端面部分に相当する部分は、湿度や光の影響を受けることが無く、変色や劣化もなかった。上記親水性高分子膜の単層フィルムを架橋高分子固体電解質膜としてのサンプルを得ることができた。
[樹脂A]
[押出機]
端面保護層製膜可能のダイを設置した共押出ラミネーター(製膜幅400mm、φ=50mm、L/D=28、フィードブロック)用の押出機3機を使用し、その一つを親水性高分子の押出に使用した。共押出樹脂である樹脂Bは、その他の2つの押出機を使用し、樹脂Bである共押出樹脂の流路を、樹脂Aである親水性高分子に対し上部、下部、左端部、右端部の層の形成が可能なように分流させてい
[加工条件]
・A層(親水性高分子)加工温度130℃ 製膜厚25μm
・B層(無機化合物含有樹脂組成物)加工温度140℃ 製膜厚40μm
・ 加工速度 10m/分
【0037】
<実施例2>
実施例1において、ポリエーテル系共重合体をポリ(エチレンオキサイド/エピクロルヒドリン)[P(EO/EM/AGE)] 共重合体にした以外は実施例1と同じである。
実施例1同様にブロッキングの影響も無く容易に剥ぎ取ることが可能であり、厚さ25μmの膜厚が均一で、かつピンホールの無いポリエーテル系重合体を主成分とする親水性高分子膜が得られた。また、吸湿の影響による端面の劣化は認められなかった。この単層フィルムを架橋高分子固体電解質膜としてのサンプルを得ることができた。
【0038】
<比較例1>
端面を保護しない押出機を使用した以外は実施例2と同じである。
端面を保護していない分、100m抜き取ったサンプルの端面は、すべて吸湿の影響で劣化している状態であった。劣化の度合いは、端部から100〜150mm程度であり、製膜中央部分は何とか劣化していない部分が存在するが、実用上かなりの問題を生じた(実際の実用幅100mm程度)。
【0039】
<比較例2>
樹脂Bを、吸湿性のポリエチレンオキサイドホモポリマー樹脂にした以外は、実施例2と同じである。
ポリエチレンオキサイドホモポリマーは、無機顔料を添加しても樹脂Aとの相溶性の関係から、親水性高分子であるA層とB層であるポリエチレンオキサイドホモポリマーの両者を引き剥がすのは非常に困難であった。また、ポリエチレンオキサイドホモポリマーは吸湿性が非常に高く、高湿度保存下において水分がA層である親水性高分子の樹脂Aまで達し、親水性高分子膜が吸湿による劣化によって実用にはならなかった。
【0040】
【発明の効果】
本発明により、共押出製膜技術を用いた、親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物の被覆層で包含するように、被覆した親水性高分子膜およびその製膜方法を提供することが可能となった。これによって、
(1)ピンホールが発生することがなく、かつ膜厚の均一な、吸湿による劣化の少ない品質の優れたポリエーテル系共重合体を主成分とする親水性高分子膜の単層フィルムが得られた。
(2)厚さが50μm以下のポリエーテル系共重合体を主成分とする親水性高分子膜の薄膜フィルムが得られた。その結果、今後期待されている全固体型リチウムポリマー電池や、センサー、コンデンサー等の薄型化により、電気機器のコンパクト化が可能となった。
(3)また、本発明のポリエーテル系共重合体を主成分とする親水性高分子膜は、全固体型リチウムポリマー電池の高分子固体電解質として用いることができ、高分子膜であることから、従来のような電解質の液漏れによる機器の破損等の問題が解消された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の親水性高分子膜の構成の一例を示した断面図である。
【図2】本発明の親水性高分子膜の構成の他の例を示した断面図である。
【図3】親水性高分子膜の端面がむき出しの構成の一例を示した断面図である。
【符号の説明】
1、6、11・・・親水性高分子を主成分とする樹脂(樹脂A)
2、3、7、8、12、13、14、15・・・防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂(樹脂B)
4、5、9、10、16、17、18、19・・・無機化合物
10、20、30・・・親水性高分子膜
a、d、h・・・親水性高分子を主成分とする樹脂層(A層)
b、c、e、f、i、j、k、p・・・防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂層(B層)
g・・・押出端面部
m―m´ 、n―n´・・・端部切断面
Claims (7)
- 厚さが50μm以下の親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物の被覆層で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆したことを特徴とする親水性高分子膜。
- 前記親水性高分子が、ポリエチレンオキサイドホモポリマー、エチレンオキサイドとエピクロルヒドリンの重合比が85/15〜99/1の範囲のポリ(エチレンオキサイド/エピクロルヒドリン)共重合体、あるいはポリ(エチレンオキサイド/末端をメトキシで置換したエチレンオキサイド/アリルグリシジルエーテル)共重合体等のポリエーテル系共重合体であることを特徴とする請求項1記載の親水性高分子膜。
- 前記親水性高分子を主成分とする樹脂組成物が、少なくともリチウムイオン塩などの電解質塩および架橋剤が配合されてなることを特徴とする請求項1または2記載の親水性高分子膜。
- 前記防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-αオレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、あるいはポリフッカビニリデン樹脂、ポリビニリデンフロライド樹脂などのフッ素系樹脂、あるいはシリコーン系の樹脂の単体あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の親水性高分子膜。
- 前記防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物が、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂100重量部に対して、無機化合物を0〜50重量部の範囲で添加されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の親水性高分子膜。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の親水性高分子膜を、架橋処理を施した後、前記親水性高分子膜の被覆層を剥離して得られる架橋親水性高分子膜をリチウムポリマー電池の固体電解質層として用いたことを特徴とする高分子固体電解膜。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の親水性高分子膜において、共押し出しにより、親水性高分子を主成分とする樹脂組成物からなる親水性高分子膜を、防湿性、撥水性、疎水性を有する樹脂を主成分とする樹脂組成物で包含するように、上下表裏および左右側面を被覆して製膜し、次工程で前記親水性高分子膜を、加熱、紫外線照射、電子線照射のいずれかの手段によって架橋処理を施し、前記被覆層を剥離して得られる架橋親水性高分子膜を製造することを特徴とする親水性高分子膜の製膜方法。
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