JP4944051B2 - 固体電解質複層フィルム及びその製造方法 - Google Patents

固体電解質複層フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解質複層フィルム及びその製造方法に関するものであり、特に、プロトン伝導性をもち燃料電池に用いられる固体電解質複層フィルム及びその製造方法に関するものである。
近年、携帯機器等の電源として利用できるリチウムイオン電池や燃料電池が活発に研究されており、その部材である固体電解質についても活発な研究が行われている。固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導材料やプロトン伝導材料である。
一般に、プロトン伝導材料としてはフィルム状のものがあり、燃料電池等の電池の固体電解質層として用いるためのフィルム状固体電解質及びその製造方法が提案されている。中でも、固体電解質であるポリマーの中に無機酸、例えばリン酸やリン酸誘導体が添加された固体電解質フィルムは、燃料電池に用いられたときに、比較的高いプロトン伝導度を示すものとされている。しかし、このような固体電解質フィルムは、使用を続けるうちに、無機酸が外部へ出てくるという問題があり、特に水の存在で外部へ出やすい。そこで、無機酸の浸み出しを防止する方法として、窒素原子を有する塩基性ポリマーからなる固体電解質層の両面に親水性の材料からなる層を設ける複層の電解質フィルムが提案されている(特許文献1参照)。この電解質フィルムでは、前記親水性の材料として、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸等のカチオン交換材料が用いられている。
特表2005−527948号公報
しかしながら、特許文献1に記載の固体電解質複層フィルムでは、固体電解質層からの無機酸の浸み出しが防止されているものの、表層が親水性の材料であるため、フィルムの使用環境下におけるサイズの変化が問題となる。例えば、表層が親水性材料からなるために水により大きく膨張してしまう。フィルムのサイズが変化すると、燃料電池に用いられたときに、触媒層等との剥離が起きてしまい、燃料電池の起電力が安定しないという問題を引き起こしてしまう。
また、固体電解質であるポリマーは、高沸点である特定の溶媒にしか溶けないこともあり、その生産効率をアップさせることが難しいという問題がある。
そこで、本発明は、寸法安定性に優れ、固体電解質からの添加剤の浸みだしが抑制された固体電解質フィルム、及びこの固体電解質フィルムを連続的に効率よく製造する方法とを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の固体電解質複層フィルムは、固体電解質であるポリマーからなる固体電解質層と、前記固体電解質層の両面にそれぞれ配され、疎水性の有機材料からなる疎水層と、を備え、前記有機材料は、光が照射されて重合する光重合性モノマー化13または化14の重合体であることを特徴として構成されている。但し、化13及び化14におけるAはアクリロイル基である。また、前記固体電解質層の厚みは10μm以上200μm以下の範囲で一定であり、前記各疎水層の厚みは0.1μm以上10μm以下の範囲で一定であることが好ましい。また、前記有機材料に、さらに弾性あるいは柔軟性がバインダ成分により付与されていることが好ましい。
また、本発明の前記固体電解質複層フィルムの製造方法は、固体電解質であるポリマーからなる固体電解質膜の一面に、光重合性モノマー化13または化14を含む第1のモノマー層を形成する第1工程と、前記固体電解質膜の他面に、前記光重合性モノマー化13または化14を含む第2のモノマー層を形成する第2工程と、前記第1のモノマー層と前記第2のモノマー層とにそれぞれ光を照射して、前記光重合性モノマー化13または化14を重合させる重合工程と、を有することを特徴とする。
Figure 0004944051
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本発明により、寸法安定性に優れ、固体電解質からの添加剤の浸みだしが抑制された固体電解質フィルムを、連続的に効率良く製造することができる。この固体電解質を用いた電極膜複合体が燃料電池に用いられると、この燃料電池は優れた起電力を発現する。
以下に、本発明の実施様態について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施様態に限定されるものではない。図1は、本発明の固体電解質複層フィルムの断面図である。固体電解質複層フィルム(以降、単に複層フィルムと称する)11は、固体電解質からなる固体電解質層13と、この固体電解質層を挟むように両面にそれぞれ配されて露出する第1の表層14及び第2の表層15とを備える。
固体電解質層13は、第1,第2表層14,15のいずれか一方を介して外部から供給されてきたプロトンを伝導し、第1,第2表層14,15の他方を介して外部へ導くプロトン伝導性を有する。固体電解質の成分としてのポリマーは、使用環境下で水に溶解しない範囲で、スルホン酸基が多い方が好ましい。これによりプロトンの通路であるいわゆるプロトンチャンネルを、密に形成することができる。しかし、スルホン酸基が多くなるほど、固体電解質層13は水により膨潤しやすくなり体積が大きくなることから、ポリマーが使用環境下で水に溶解しない場合であっても、第1表層14及び第2表層15による後述の膨潤の抑制力よりも膨潤する力が大きくなる場合にはスルホン酸基の数を減らすことが好ましい。固体電解質としてのポリマーの詳細は後述する。
プロトン伝導性を損なわない範囲でプロトン伝導性以外の機能を発現させることを目的として、または、プロトン伝導性を向上させることを目的として、固体電解質層には種々の添加剤が混合されてもよい。プロトン伝導度を向上させる添加剤としては、例えばリンタングステン酸H(PW1240)・30HOが好ましい。プロトン伝導度を向上させる添加剤がリンタングステン酸の場合には、固体電解質としてのポリマーの重量を100としたときにリンタングステン酸の濃度を5重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。プロトン伝導性を向上させる以外の目的の添加剤については後述する。
第1表層14と第2表層15とは、疎水性の有機材料からなる疎水層である。第1表層14と第2表層15とは、固体電解質層13の使用環境下における寸法変化を防ぐために、使用環境下でも変形しない成分を含む。特に、第1表層14及び第2表層15との接着面の寸法変化が少なくなるような成分が好ましい。そこで、この成分は、2次元あるいは3次元に架橋した剛直な分子構造をもつ化合物とされる。ただし、架橋構造は、プロトンの通過を妨げない隙間をもっている。このような架橋構造をもつ化合物としては、光照射による重合反応、つまり光重合により得られる化合物がある。この化合物を生成する、すなわち光重合するモノマー(光重合性モノマー)は、2次元あるいは3次元に架橋するための複数の官能基をもつことが好ましい。官能基の数は2以上であることがより好ましい。例えば、化1,化2に示す構造の化合物が挙げられる。化1に示す構造の化合物はDPHA(DiPentaerythritol HexaAcrylate)である。化1においてアクリロイル基(Acryloyl Group,化学式:CH2=CH−CO−)をAと略して表記した。化1に限らず、化2及び化10においても、アクリロイル基をAと略して表記することとする。さらに、光重合性モノマーがシクロオレフィン構造をもち、このシクロオレフィン構造がメソゲン骨格となる重合体を生成する化合物であると、より好ましい。固体電解質層13に添加剤が含まれている場合にはこの添加剤が外部へ出ることを防ぐ効果も大きいからである。この観点では、DPHAよりも化2に示す構造の化合物の方がより好ましい。
Figure 0004944051
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2次元あるいは3次元に架橋した剛直な分子構造をもつ化合物のみでは弾性が足りないと判断されるとき、あるいは割れが生じるときには、第1,第2表層14,15の中に、弾性や柔軟性を付与するいわゆるバインダ成分を含ませることが好ましい。バインダ成分としては、プロトン伝導性を考慮してスルホン酸基を有する有機ポリマーが好ましい。スルホン酸基をもつ有機ポリマーをバインダ成分として用いると、スルホン酸基をもつポリマーを固体電解質層13のポリマー成分として用いた場合には、第1表層14と固体電解質層13、第2表層15と固体電解質層13の密着性が向上することからの好ましい。つまり、固体電解質13と親和性ないし接着性をもつ成分をバインダ成分として用いることが好ましい。
第1表層14,第2表層15は、それぞれ単層構造である必要はなく、複層構造とされてもよい。複層構造とする場合には、複層のうちの少なくとも1層が疎水性の有機材料で形成されていればよい。
第1表層14の厚みT1と第2表層15の厚みT2とは、0.1μm以上20μm以下の範囲で一定であることが好ましい。これにより、添加剤が外部へ出ることを防ぐ、固体電解質層13の膨潤を抑制するという効果がより大きくなる。厚みT1,T2が0.1μm未満であると、添加剤が外部へ出てしまったり、固体電解質層13の膨潤を抑制する効果が小さくなる場合があり、20μmよりも大きいと、固体電解質複層フィルムとしてのプロトン伝導度を小さくしてしまう場合がある。また、厚みT1,T2が不均一であると、外から力がかかったときに応力が面方向で不均一となり、固体電解質複層フィルムとしての耐久性が小さくなってしまい、場合によっては局所的に破壊することも考えられる。
固体電解質層13の厚みT3は、10μm以上200μm以下の範囲で一定であることが好ましい。これにより、プロトン伝導度が均一となるという効果がある。固体電解質層13の厚みが10μm未満であると、燃料電池の固体電解質材料として用いた場合には燃料としてのガスがリークしてしまい、燃料電池の発電効率が低下したり耐久性が低下してしまうことがある。一方、200μmよりも大きいと、燃料電池の固体電解質材料として用いた場合には、固体電解質複層フィルムにおける内部抵抗が大きくなりすぎて発電効率が低下したり、燃料電池をコンパクトに製造できなくなることがある。また、固体電解質層の厚みT3が不均一であると、外から力がかかったときに応力が面方向で不均一となり、固体電解質複層フィルムとしての耐久性が小さくなってしまい、場合によっては局所的に破壊することも考えられる。
[固体電解質層13の原料]
本発明は、後述の製造法によりフィルムとする固体電解質として、プロトン供与基をもつポリマーを用いている。プロトン供与基をもつポリマーは、特に限定されないが、酸残基をもち、プロトン伝導材料として公知であるものを用いることができる。中でも好ましいポリマーは、酸残基をもつものであり、例えば、側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したスルホ化ポリエーテルエーテルケトン、スルホ化ポリベンズイミダゾール、ポリスルホンをスルホン化したスルホ化ポリスルホン、耐熱性芳香族高分子化合物のスルホ化物などが挙げられる。側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物としては、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸や、スルホ化ポリスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンなどがあり、耐熱性芳香族高分子のスルホ化物としてはスルホ化ポリイミド等がある。
パーフルオロスルホン酸の好ましい例としては、例えば特開平4−366137号公報、特開平6−231779号公報、特開平6−342665号公報に記載される物質が挙げられ、中でも、化3に示す物質が特に好ましい。ただし、化3において、mは100〜10000であり、200〜5000が好ましく、500〜2000がより好ましい。そして、nは0.5〜100であり、5〜13.5が特に好ましい。また、xはmに略同等であり、yはnと略同等である。
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スルホ化ポリスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンの好ましい例としては、特開平5−174856号公報、特開平6−111834号公報に記載される化合物や化4に示される物質が挙げられる。
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耐熱性芳香族高分子のスルホ化物の例としては、例えば、特開平6−49302号公報、特開2004−10677号公報、特開2004−345997号公報、特開2005−15541号公報、特開2002−110174号公報、特開2003−100317号公報、特開2003−55457号公報、特開平9345818号公報、特開2003−257451号公報、特表2000−510511号公報、特開2002−105200号公報に記載される物質が挙げられ、中でも、前記化5の一般式(I)〜(II)で示す各構造単位からなる共重合体と、以下の化6、化7に示される物質が特に好ましいものとして挙げられる。
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(Xはカチオン種を表す。)
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上記ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合は、フィルムの吸湿膨張率とプロトン伝導度に寄与する。ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合が小さくなると、プロトン伝導路、いわゆるプロトンチャンネルを十分に形成することができないことがある。そのため、得られるフィルムは実用に十分なプロトン伝導性を発現しないことがある。一方、ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合が大きくなると、フィルムの水分吸収性が高くなってしまうため、吸水による膨張率、つまり吸水膨張率が大きくなり、フィルムが劣化しやすくなる。
上記各化合物を得る過程におけるスルホン化反応は、公知文献の各種合成法に従って行うことができる。スルホン化剤としては、硫酸(濃硫酸)、発煙硫酸、ガス状あるいは液状物の三酸化硫黄、三酸化硫黄錯体、アミド硫酸、クロロスルホン酸等を用いることができる。溶媒としては、炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジオキセタン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等)等を用いることができる。反応温度は、−20℃〜200℃の範囲でスルホン化剤の活性に応じて決定するとよい。また、別の方法として、モノマーにメルカプト基、ジスルフィド基、スルフィン酸基を予め導入しておいて、酸化剤による酸化反応によってスルホン化物を合成することもできる。このときには、酸化剤として、過酸化水素、硝酸、臭素水、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸等を用いることができ、溶媒としては、水、酢酸、プロピオン酸等を用いることができる。この方法における反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で酸化剤の活性に応じて決定するとよい。また、さらに別の方法として、モノマーにハロゲノアルキル基を予め導入しておいて、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等による置換反応をしてスルホン化物を合成してもよい。このときには溶媒として、水、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類等を用いることができる。反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で決定するとよい。なお、以上のスルホン化反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
また、スルホン化物への反応工程では、アルキルスルホン化剤を用いてもよく、一般的な方法としてはスルホンとAlClを用いたフリーデルクラフツ反応がある(Journal of Applied Polymer Science,Vol.36,1753−1767,1988)。フリーデルクラフツ反応を行うためにアルキルスルホン化剤を用いた場合は、溶媒として炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、アセトフェノン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等、)等を用いることができる。反応温度は、室温から200℃の範囲で決定するとよい。なお、反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
化5の構造を有する固体電解質膜をつくる場合には、化5のXが水素原子H以外のカチオン種であるポリマー(以降、前駆体と称する)を含むドープをつくり、これを支持体上に流延してフィルムとして剥ぎ取り、このフィルムを酸の溶液に接触させてプロトン置換することによりXをHに置き換えるとプロトン伝導度の向上を図ることができるために好ましい。化5のXがHである場合には、このポリマーを含むドープを流延して剥ぎ取り乾燥すると固体電解質膜をつくることができるが、さらに、この固体電解質膜を上記のプロトン置換と同様に酸の溶液に接触することでプロトン伝導度をより向上させることができる。そして、この固体電解質膜に第1,第2表層14,15を付与すると、固体電解質膜が固体電解質層13となり、複層フィルム11が得られる。なお、第1,第2表層14,15を付与して複層フィルム11として後に、この複層フィルム11を酸の溶液に接触させることによっても、化5の構造を有する固体電解質層のXをHに置き換えることができる。
カチオン種とは、電離したときにカチオンを生成する原子または原子団を意味する。このカチオン種は1価である必要はない。プロトン以外のカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、カルシウムイオン、バリウムイオン、四級アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。なお、化5におけるXをHとせずにカチオン種のままとしてフィルムを製造してもそのフィルムは固体電解質としての機能をもつ。しかし、そのプロトン伝導性は、Xのカチオン種のうちHに置換された割合が多いほど高くなる。その意味では、XはHであることが特に好ましい。
固体電解質層13を構成するものは、プロトン供与性をもつ低分子化合物がポリマーと複合化された複合材料であってもよい。この場合のポリマー成分は、プロトン供与基を有しないポリマー(以下、プロトン非供与性ポリマーと称する)であってもよい、このポリマー成分にプロトン供与性をもつ低分子化合物を含ませることにより、全体としてはプロトン伝導性を発現させることができるからである。プロトン供与性をもつ低分子化合物としては、硫酸やリン酸等に例示される低分子の酸が挙げられる。リン酸は、自己解離を起こしやすく、開始した箇所はいわゆるプロトン欠陥部位となる。このプロトン欠陥部位は水素結合の対象となり、水素結合によるネットワークができてプロトン伝導が起きる。
上記複合材料のプロトン非供与性ポリマーとしてはポリベンズイミダゾール(以下、PBIと称する)が好ましく、このPBIと複合化させるプロトン供与性の低分子化合物としてはリン酸が好ましい。PBIのイミダゾール構造部がリン酸の解離を促進するので、プロトン伝導度が向上するからである。PBIは、化8の一般式(1)〜一般式(4)に示す化合物を例として挙げることができるがこれに限定されるものではない。化8の一般式(2)及び一般式(4)における「−R−」としては、化9の各構造を例として挙げることができる。しかし、本発明におけるPBIは、これらに限定されるものではなく、例えば、米国特許5525436号明細書に記載されるような各種PBIも含まれる。なお、PBIとリン酸とからなる固体電解質層13、またはこの固体電解質層13に第1,第2表層14,15を付与した複層フィルム11を、酸の溶液に接触することでプロトン伝導度をより向上させることができる。なお、化8の一般式(1)〜一般式(4)においては、nは20〜3000の自然数である。
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PBIの合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法でよい。例えば、3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド(3,3’−diaminobenzidine tetrahydrochloride)とイソフタル酸とを170℃〜200℃のポリリン酸(以下、PAAと称する)中で重合することにより得られる。
複層フィルム11は、以下の諸性能を示すものが好ましい。イオン伝導度は、例えば25℃、相対湿度70%において、0.005S/cm以上であることが好ましく、0.01S/cm以上であるものがより好ましい。さらに、50%メタノール水溶液に18℃で一日浸漬した後のイオン伝導度が0.003S/cm以上であることが好ましく、0.008S/cm以上であるものがより好ましく、特に、浸漬前に対する浸漬後のイオン伝導度の低下率が20%以内であるものが好ましい。そして、メタノール拡散係数が4×10−7cm/s以下であることが好ましく、2×10−7cm/s以下であるものが特に好ましい。
複層フィルム11の強度については、弾性率が10MPa以上であるものが好ましく、20MPa以上であるものが特に好ましい。なお、弾性率の測定方法については、特開2005−104148号公報の段落[0138]に詳細に記されており、弾性率の上記値は、東洋ボールドウィン社製の引っ張り試験機による値である。したがって、他の試験方法や試験機を用いて弾性率を求める場合には、上記試験方法や試験機による値との相関性を予め求めておくとよい。
複層フィルム11の耐久性については、50%メタノール中に一定温度で浸漬する経時試験の前後で、重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が、それぞれ20%以下であるものが好ましく、15%以下であるものが特に好ましい。さらに過酸化水素中における経時試験の前後でも、同様に重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものが特に好ましい。また50%メタノール中、一定温度での体積膨潤率が10%以下であるものことが好ましく、5%以下であるものが特に好ましい。
さらに、複層フィルム11は、安定した吸水率および含水率をもつものが好ましい。また、アルコール類、水、アルコールと水との混合溶媒に対し、溶解度が実質的に無視できる程に小さいものであることが好ましい。また上記液に浸漬した時の重量減少、形態変化についても実質的に無視できる程小さいものであることが好ましい。
複層フィルム11のイオン伝導性能は、イオン伝導度とメタノール透過係数との比であるいわゆる指数により表される。そして、ある方向における指数が大きいほど、その方向におけるイオン伝導性能が高いといえる。また、固体電解質フィルムの厚み方向においては、イオン伝導度は厚みに比例し、メタノール透過係数は厚みに反比例するので、厚みを変えることにより固体電解質フィルムのイオン伝導性能を制御することができる。燃料電池に用いる固体電解質フィルムでは、一方の面側にアノード電極、他方の面側にカソード電極が設けられることになるので、固体電解質フィルムの厚み方向における指数が他の方向における指数よりも大きいことが好ましい。
複層フィルム11の耐熱温度については、200℃以上であるものが好ましく、250℃以上のものがさらに好ましく、300℃以上のものが特に好ましい。ここでの耐熱温度は、1℃/分の測度で加熱していったときの重量減少5%に達した温度を意味する。なお、この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
さらに、複層フィルム11をフィルムとしてこれを燃料電池に用いる場合には、その最大出力密度が10mW/cm以上となるような複層フィルム11であることが好ましい。
固体電解質層13に混合される添加剤のうち、プロトン伝導度向上の目的以外のための添加剤について詳細に説明する。このような添加剤としては、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等が挙げられる。これら添加剤の添加率は、ドープ中の固形分全体を100重量%としたときに1重量%以上30重量%以下の範囲とすることが好ましい。ただし、添加率及び物質の種類は、プロトン伝導性に悪影響を与えないものとする。以下に各添加剤について具体的に説明する。
酸化防止剤としては、(ヒンダード)フェノール系、一価または二価のイオウ系、三価のリン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、サリチレート系、オキザリックアシッドアニリド系の各化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には特開平8−53614号公報、特開平10−101873号公報、特開平11−114430号公報、特開2003−151346号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
繊維としては、パーフルオロカーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平10−312815号公報、特開2000−231938号公報、特開2001−307545号公報、特開2003−317748号公報、特開2004−63430号公報、特開2004−107461号の各公報に記載の繊維が挙げられる。
微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−178777号、特開2004−217931号の各公報に記載の各種微粒子が挙げられる。
吸水剤、つまり親水性物質としては、架橋ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩、ポバール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールジアルキルエーテル、ポリグリコールジアルキルエステル、合成ゼオライト、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルが好ましい例として挙げられ、具体的には特開平7−135003号、特開平8−20716号、特開平9351857号の各公報に記載の吸水剤が挙げられる。
可塑剤としては、リン酸エステル系化合物、塩素化パラフィン、アルキルナフタレン系化合物、スルホンアルキルアミド系化合物、オリゴエーテル類、芳香族ニトリル類が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−288916号、特開2003−317539号の各公報に記載の可塑剤が挙げられる。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上の物が好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
固体電解質層13にはさらに、(1)複層フィルム11の機械的強度を高める目的、(2)固体電解質層13における酸濃度を高める目的で、種々のポリマーを含有させてもよい。
上記の目的のうち(1)には、分子量が10000〜1000000程度であり、固体電解質と相溶性のよいポリマーが適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらのうち2以上のポリマーの繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。また、フィルムとしたときの全重量に対し1〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。なお、相溶剤を用いることにより固体電解質との相溶性を向上させてもよい。相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上であるものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
上記目的のうち(2)には、プロトン酸部位を有するポリマー等が好ましい。このようなポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するスルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱芳香族高分子化合物のスルホン化物等を例示することができる。また、フィルムとしたときの全重量に対し1〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。
さらに、得られる複層フィルム11を燃料電池に用いる場合には、アノード燃料とカソード燃料との酸化還元反応を促進させる活性金属触媒をドープに添加してもよい。これにより、複層フィルム11の中に一方の極から浸透した燃料が他方の極に到達することなく固体電解質中で消費されるので、クロスオーバー現象を防止することができる。活性金属触媒は、電極触媒として機能するものであれば特に限定されないが、白金または白金を基にした合金が特に適している。
複層フィルム11をつくる方法としては、主に次の(A)及び(B)の2つがある。一方は、(A)固体電解質層13となる固体電解質膜をまずつくり、その表面に第1表層14と第2表層15とを付与する方法であり、他方は、(B)固体電解質層13を形成するドープと第1,第2表層14,15を形成するドープとが重なるように流延する方法である。(A)の方法としては、さらに次の(A―1)と(A−2)との2つがある。ひとつは、(A―1)固体電解質膜に第1表層14と第2表層15とを形成する塗布物を塗布する方法、あるいはスプレー等で吹きつける方法であり、もうひとつは、(A−2)固体電解質膜を第2表層14と第2表層15とを形成する液体に浸漬して乾燥する方法である。
以下に(A―2)の方法について説明する。図2は、複層フィルム11の製造設備の概略図である。図3はフィルム製造設備33の中の酸処理室84の概略図である。このフィルム製造設備33は本発明を実施するための一例であり、本発明を限定するものではない。
フィルム製造設備33は、支持体上にドープ24を流延して流延膜61を形成する流延室80と、走行する支持体により搬送される流延膜61を乾燥手段により乾燥する搬送室81と、支持体から流延膜61を剥ぎ取って化5のXがH以外のカチオン種である膜(以降、前駆体膜と称する)65とした後、この前駆体膜65の乾燥を進めるテンタ83と、前駆体膜65に酸処理及び電圧印加処理を行って水素置換膜68とする酸処理室84と、水素置換膜68の乾燥を行い化5のXがHである固体電解質膜72とする乾燥室85と、固体電解質膜72を調湿する調湿室86と、固体電解質膜72に第1表層を形成する塗布ダイ87及び光源88と、第2表層を形成する塗布ダイ89及び光源90と、調湿後の固体電解質膜72をロール状に巻き取る巻取装置145とを備える。
フィルム製造設備33は、ドープ製造設備(図示せず)10と接続されている。流延室80には、固体電解質及び添加剤が溶媒に溶けたドープ24を流出する流延ダイ93と、走行する支持体である流延バンド94とを備える。流延ダイ93の材質としては、析出硬化型のステンレス鋼が好ましく、その熱膨張率は2×10−5(℃−1)以下であることが好ましい。そして、電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有することが好ましい。流延ダイ93はコートハンガー型のダイが好ましい。
流延ダイ93の幅は特に限定されるものではないが、固体電解質膜72の幅の1.1倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、流延の際のドープ24の温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ93の温度を制御する温度コントローラが流延ダイ93に取り付けられることが好ましい。
また、流延ダイ93の上流側には、ポンプ(図示せず)が設けられている。さらに、流延ダイ93には、幅方向に所定の間隔で複数備えられた厚み調整ボルト(ヒートボルト)と、このヒートボルトによりスリットの隙間を調整する自動厚み調整機構が備えられることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムにより、流延ダイ93の上流側の上記ポンプの送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。ドープの送り量を精緻に制御するために、ポンプは高精度ギアポンプであることが好ましい。また、フィルム製造設備33中には、例えば赤外線厚み計のような厚み測定機を設け、厚みプロファイルに基づく調整プログラムと厚み測定機による検知結果とにより、自動厚み調整機構へのフィードバック制御を行ってもよい。製品としての固体電解質膜72の両側端を除く任意の2つの位置での厚み差が1μm以内となるように、先端リップのスリット間隔を±50μm以下に調整できる流延ダイ93を用いることが好ましい。なお、流延ダイ93のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の材質としては、タングステン・カーバイド(WC)、Al、TiN、Crなどが挙げられるが、中でも特に好ましくはWCである。
ドープ24が流延ダイ93のリップ先端で局所的に乾燥固化することを防止するために、リップ先端に溶媒を供給するための溶媒供給装置(図示しない)をリップ先端近傍に取り付けることが好ましい。溶媒が供給される位置は、流延ビードの両端部とリップ先端の両端部と外気とにより形成される三相接触線の周辺部が好ましい。供給される溶媒の流量は、片側それぞれに対し0.1mL/分〜1.0mL/分とすることが好ましい。これにより、異物、例えばドープ24から析出した固形成分や外部から流延ビードに混入したものが流延膜61中に混合してしまうことを防止することができる。
流延ダイ93は、回転ローラ97,98に掛け渡される支持体としての流延バンド94の上方に設けられる。流延バンド94は、少なくともいずれか一方の回転ローラの駆動回転により連続的に搬送される。この流延バンド94は、流延室80、搬送室81及び後述するタンクを巡るように無端で搬送される。
流延バンド94の幅は特に限定されるものではないが、ドープ24の流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲であることが好ましい。また、長さは20m〜200m、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。
流延バンド94の素材は特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス等の無機材料であっても良いし、有機材料からなるプラスチックフィルムでも良い。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の不織布のプラスチックフィルムが挙げられる。使用する溶媒、製膜温度に対応できるような化学的安定性と耐熱性とをもつ長尺物であることが好ましい。なお、本実施形態では、流延バンド94としてPETフィルムを使用している。
回転ローラ97,98の内部には、伝熱媒体である流体が通る流路(図示なし)が形成されている。所定の温度に調整された流体が流路を通ることにより回転ローラ97,98の周面の温度が調整され、周面に接触する流延バンド94の表面温度が調整される。流延バンド94の表面温度は、溶媒の種類、固形成分の種類、ドープ24の濃度等に応じて適宜設定する。
回転ローラ97,98、及び流延バンド94に代えて回転ドラム(図示しない)を支持体として用いることもできる。この場合には、回転速度ムラが0.2%以下となるように高精度で回転できるものであることが好ましい。回転ドラム、流延バンド94、回転ローラ97,98は、表面に欠陥が無く、平滑であるものが好ましい。
流延ダイ93の近傍には、流延ダイ93から流延バンド94にかけて形成されるリボン状のドープ24、すなわち流延ビードの流延バンド94走行方向における上流側を圧力制御するために減圧チャンバ(図示しない)を設けることが好ましい。また、流延バンド94の近傍には送風装置(図示しない)を設けて、流延膜61の溶媒を蒸発させるために風を吹き付けることが好ましい。なお、上記の送風装置には遮風板を設けて、流延膜61の形状を乱すような風が流延膜61にあたるのを抑制することが好ましい。その他に、流延室80には、その内部温度を所定の値に保つための温度コントローラと、蒸発した有機溶媒を凝縮回収するための凝縮器(コンデンサ)(共に図示しない)とが設けられる。このコンデンサは、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置が備えられている形態であることが好ましい。
搬送室81の内部には、所望の温度になるよう調整した乾燥風を送り出して流延膜61の乾燥を促進させる送風機(図示しない)が備えられている。また、搬送室81は、複数の区画に分け、更に各区画内に乾燥装置を取り付ける等して、各区画の乾燥温度が異なるように調整することが好ましい。これにより、流延膜61を徐々に乾燥することができるので、急激に溶媒が揮発してしわやつれなどの形状変化が発生するのを抑制することができる。搬送室81における区画の個数等は特に限定されるものではないが、搬送室81内の乾燥温度を30℃以上60℃以下の範囲となるように調整することが好ましい。また、搬送室81には、流延膜61を乾燥する際に発生する気化した有機溶剤を回収するための凝縮器(コンデンサ)99を設けている。凝縮器99は、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置が備えられている形態であることが好ましい。
搬送室81の下流には、剥取ローラ100を備えるタンク101が設けられている。本実施形態のタンク101には、浸漬液102が貯留されており、この剥ぎ取りローラ100と流延バンド94を支持する支持ローラとはともに浸漬液102の中に配される。そして、流延バンド94は流延バンド94とともに浸漬液102の中に案内されて浸漬される。このようにして、タンク101にて浸漬工程64(図2参照)が行われ、流延膜61及び前駆体膜65の中の溶媒が、浸漬液102に置き換えられ溶媒置換される。浸漬液102としては、流延膜61に含まれる溶媒よりも沸点が低く、有機溶媒の良溶媒であることが好ましい。このような浸漬液102に流延膜61を浸漬すると、流延膜61内に含まれる有機溶媒が抽出される速度が向上するとともに、後の乾燥工程において流延膜61に残留した有機溶媒の除去をすることが容易になる。
この溶媒置換により、流延膜61は自己支持性を発現する。流延膜61が自己支持性を発現する要因としては、次のとおりである。
(1)浸漬液102と流延膜61中に含まれる溶媒の一部との置換により、残留溶媒量が低減する。
(2)前駆体の貧溶媒である浸漬液102に浸漬することにより、流延膜61が固化する。
こうして、剥取ローラ100により、自己支持性を有する流延膜61を前駆体膜65として容易に剥ぎ取ることができると同時に、後の第1乾燥工程67における、前駆体膜65の残留溶媒の除去に要する時間を短縮することができる。なお、流延膜61から添加剤が浸漬液102中に溶け出る、流出する等の場合には、流延膜61の浸漬液102への浸漬は実施せず、前駆体膜65、水素置換膜68がある程度乾いたところで、後述のようにモノマー91を塗布して第1,第2表層を形成し、その後、浸漬液102へ浸漬して乾燥を再び行うとよい。
この浸漬液102として、純水を用いることが好ましい。本発明に用いられる純水とは、比電気抵抗が少なくとも1MΩ以上であり、特にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの金属イオンは1ppm未満、クロル、硝酸などのアニオンは0.1ppm未満を指す。純水は、逆浸透膜、イオン交換樹脂、蒸留などの単体、あるいは組み合わせによって、容易に得ることができる。
なお、浸漬液102に前駆体膜65を接触させる浸漬工程64を複数回行っても良い。浸漬工程64を複数回行う場合は、後の浸漬工程64になるに従って沸点が低くなるように各工程の浸漬液102を選択することが好ましい。この複数回の浸漬工程64により、前駆体膜65に含まれる残留溶媒の沸点を低下させることが可能になるため、浸漬工程64の後に行う第1乾燥工程67や第2乾燥工程73を容易にすることができる。また、剥取工程66は、流延膜61が浸漬液102に浸漬している間に行っても良いし、浸漬液102から流延膜61を取り出した後に行っても良い。また、浸漬工程64の代わりに、流延膜形成工程63において流延膜61に乾燥した風をあてることにより、流延膜61に自己支持性を発現させて、これを剥ぎ取ったものを前駆体膜65としてもよい。
また、流延膜61の溶媒置換の方法としては、流延膜61を浸漬液102に浸漬する方法に限られず、例えば、流延膜61に浸漬液102を接触させる方法を用いても良い。この浸漬液102を接触させる方法の具体的なものとして、例えば、支持体上の流延膜61に浸漬液102を吹付ける或いは塗布する方式等が挙げられる。
タンク101の下流でありテンタ83の上流には、前駆体膜65の両面方向に向けられた送風口を備える一対のエアナイフ103が設けられている。また、テンタ83には、乾燥風を送り出す乾燥装置と、チェーン(図示しない)の走行に伴い走行する多数のクリップ104とが備えられている。そして、テンタ83の下流には、前駆体膜65の両端部(耳部)を切り落とす耳切装置105が設けられている。耳切装置105には、切り取られた前駆体膜65の両側端部(耳と称される)の屑を細かく切断処理するためのクラッシャ105aが接続されている。
(酸処理室)
酸処理室84には、図3に示すとおり、酸浸漬槽110と電圧印加槽111と水槽112とが、上流側から順に設けられる。
(酸浸漬槽)
酸浸漬槽110には、プロトン供与体である酸を含む液(以下、第1液と称する)300が貯留する。酸浸漬槽110には、温調機115が備えられ、温調機115は、酸浸漬槽110に貯留する第1液300の温度を所定の範囲に保持する。さらに、酸浸漬槽110には、第1液300中に浸漬するようにローラ116、117が設けられる。ローラ116は、耳切装置105から送られる前駆体膜65を、第1液300内へ案内する。こうして、前駆体膜65と第1液300との接触により、前駆体膜65に酸処理が施され、前駆体が固体電解質となり、水素置換膜68が得られる。なお、固体電解質層をPBIとリン酸との複合材料により形成する場合には、PBIを含むドープを流延し、第1液300に代えてリン酸水溶液とするとよい。この場合のリン酸水溶液はPBIに対するプロトン供与体ではなく、複合材料の一材料として作用する。そして、ローラ117は、水素置換膜68を第1液300の外へ案内する。図3には、2つのローラ116、117が酸浸漬槽110内に設けられる様子を示しているが、これに限らず、1つまたは3つ以上のローラを酸浸漬槽110に設けても良い。なお、前駆体膜65から添加剤が第1液300中に溶け出る、流出する等の場合には、前駆体膜65の第1液300との接触は実施せず、前駆体膜65がある程度乾いたところで、後述のようにモノマー91を塗布して第1,第2表層を形成し、その後、浸漬液102へ浸漬して乾燥を再び行うとよい。
(第1液)
第1液300に含まれる酸として、例えば、硫酸、リン酸、硝酸や各種の有機酸を用いることができる。このうち、次工程である電圧印加工程での効果を高めるためには、有機酸、中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸、コハク酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、アクリル酸、マロン酸、クエン酸、シュウ酸、イタコン酸、フマル酸、一般式(1)で表される化合物のいずれかひとつであることが好ましい。
R−AR−SOH ・・・(1)
(ただし、Rは炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基、アミド基のいずれかひとつであり、ARはベンゼン環とナフタレン環とのいずれか一方である)
有機酸を第1液300として用いてプロトン置換度が低いようであれば、有機酸に代えて他の上記酸のうち、アニオンの式量が40以上1000以下である酸を使用すると、プロトン置換を阻害するアニオンが前駆体膜65に侵入しにくくなるため、プロトン置換を高効率で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、硝酸などを挙げることができるが、中でも、アニオンの式量が大きい硫酸を使用することが好ましい。第1液300として、上述した酸を水、或いは以下に示す有機溶剤と水との混合液に酸を溶解させたものを用いることができる。第1液300で用いることのできる有機溶剤として、第2液301と同様の有機溶剤を用いることができる。この有機溶剤及び第2液301の詳細については後述する。
第1液300に含まれるプロトンの濃度(以下、プロトン濃度と称する)は、0.05mol/リットル以上である。第1液300のプロトン濃度が0.05mol/リットル未満であると、前駆体膜65におけるプロトン置換が十分に行われず好ましくない。なお、プロトン濃度とは、従来用いられていた「規定度」と同一の概念の単位であり、第1液300のプロトン濃度とは、第1液300中に含まれ、プロトンとなりうる水素原子の濃度を表す。
温調機115により第1液300の温度は、前駆体膜65のガラス転移温度Tgに等しいことが望ましい。しかしながら、使用する第1液300の種類によっては、Tgが第1液300の沸点を越えてしまうことがある。安定した酸処理を行うためには、第1液300の沸点未満、好ましくは沸点(℃)の90%未満、更に好ましくは沸点(℃)の80%未満の温度に設定する。また、複層フィルム11の製造環境を考慮すると、第1液300の温度は室温以上であることが好ましく、30度以上に調整することがより好ましい。
ポリマーのガラス転移温度Tgは、DTA(示差熱分析)やDSC(示差走査熱量測定)を用いて求めることができる。ガラス転移温度Tgは、DTA曲線またはDSC曲線から求めることができる。ここで、得られたDTA曲線或いはDSC曲線からガラス転移温度Tgを求める方法として、中間点ガラス転移温度(Tmg)、補外ガラス転移開始温度(Tig)、補外ガラス転移終了温度(Teg)のいずれを用いても良い。なお、DTAやDSCの実施方法などガラス転移温度Tgの測定方法の詳細は、JIS K 7121による。
第1液300は、酸性の水溶液に限られず、プロトン置換において、前駆体のプロトン受容体にプロトンを与え得るものであればよい。例えば、酸がアニオンとプロトンに電離した際、アニオンよりもプロトン受容性が大きいものを前駆体として用いる場合には、第1液300に酸を用いてもよい。
この酸処理工程69において、前駆体膜65に高効率のプロトン置換を行うためには、前駆体膜65の残留溶媒量が、乾量基準に対して1重量%以上100重量%以下であることが好ましい。残留溶媒量が乾量基準に対して1重量%以下まで乾燥を進めると乾燥時間が長くなり、好ましくなく、残留溶媒量が乾量基準に対して100重量%以上の前駆体膜65に酸処理を行うと膜の空隙率が大きくなってしまい、好ましくない。なお、この乾量基準による残留溶媒量は、サンプリング時におけるフィルム重量をx、そのサンプリングフィルムを乾燥した後の重量をyとするとき{(x−y)/y}×100で算出される値である。
この酸処理工程69において、前駆体膜65のXがプロトンに置換された割合(以下、プロトン置換率と称する)が80モル%以上であることが好ましく、プロトン置換率が90モル%以上であることがより好ましい。このような高いプロトン置換率のプロトン置換を行なうことにより、優れたプロトン伝導度の固体電解質膜72を製造することができると同時に、酸処理工程69の後に行う電圧印加工程70においてプロトン伝導度をより向上させることが可能になる。
(電圧印加槽)
電圧印加槽111には、第2液301が貯留し、1対の電極120,121と、ローラ122,123とが設けられる。第2液301には、水素置換膜68とともに導かれてきた第1液300が含まれている。第2液302に導かれた第1液300は水素置換膜68の中に含まれたものであり、水素置換フィルムの表面に付着していたものも含まれる。なお、製造開始時には、第2液301中における酸の濃度が薄すぎて電圧印加をしても電流が流れない場合もあるので、このような場合には、第1液301と同じあるいは他の酸を予め加えておいてもよい。第1液300に有機酸以外の上記酸を用いた場合には、有機酸を第2液中に入れておくとよい。この有機酸としては、第1液300の成分としての各種有機酸が挙げられる。
また、電圧印加槽111は、温調機125を備える。温調機125は、電圧印加槽111に貯留する第2液301の温度を所定の範囲に保持する。電極120は、電圧印加槽111の内側の底面111a側に設けられる。また、電極121は、第2液301の液面301a側に設けられる。電極120及び電極121は、配線を介して、電源127と接続する。水素置換膜68は両電極120,121の間に配され、電源127により電極120と電極121との間に所定の電圧V1が印加される。こうして、第2液301には、電流が流れる。第2液301中に配されたローラ122は、酸浸漬槽110から送られる水素置換膜68を、第2液301内へ案内するとともに、ローラ123とともに、水素置換膜68を両電極120,121の間に案内する。そして、水素置換膜68は、下流側の水槽112へ案内される。
電極120と電極121との距離L1は300mm以下であることが好ましく、150mm以下、更に100mm以下であることがより好ましい。距離L1が300mmより大きい場合には、水素置換膜68のまわりの第2液301に十分な電流を流すことが困難になり、結果的に処理時間を長くせざるを得なくなる。この距離L1の調節により水素置換膜68のまわりの第2液301に流れる電流の大きさを調節することも可能である。
電源127は、電極120、121間の第2液301に電流が流れているか否かを検出する電流検出計(図示しない)を備える。電流が流れない場合には、電圧印加槽111に備えられたプロトン濃度調節器に信号をオンにして送る。プロトン濃度調節器は、有機酸の水溶液である第3液を貯留するタンクと、タンクに貯留する第3液を電圧印加槽111に供給する配管やバルブなどを有する。また、図示しない制御部は、電流検出計とプロトン濃度調節器と接続する。酸濃度調節器は、電圧印加槽111へ第3液を供給し、電圧印加槽111内の第2液301のプロトン濃度を調節することができる。制御部は、電流検出計から送られてきた信号に基づいて、電圧印加槽111への第3液の供給を開始する。そして、電流検出計からの信号がオフにされると、制御部は、電圧印加槽111への第3液の供給を停止する。こうして、電圧印加槽111は、電圧印加を維持することができる。
また、シフト部140は、電極120及び電極121と接続する。シフト部140は、電極120または電極121を所定の位置に移動して、電極120及び電極121との間の距離L1を所望の範囲に調節する。また、制御部141が、温調機125、シフト部140や電源127に接続する。この制御部141の制御の下、所望の条件の電圧印加工程が行われる。この制御部141により、電圧印加工程の進行度に応じて、距離L1、電圧V1、電流A1、第2液301の温度などを調節することが好ましい。
電極120と電極121との間に印加する電圧V1は、第2液301から電気分解によるアニオンが生成しない程度とし、電極120と電極121との間の電流密度は1mA/cm以上20mA/cm以下が好ましい。1mA/cm未満の電流密度であると、電圧の印加効果がほとんどない。一方、20mA/cmよりも大きい電流密度の場合については、バッチ式の予備実験によると、効果はみられなかった。特に、水酸化物イオンのような式量の小さいアニオンは、水素置換膜68内に浸入して、水素置換膜68内のプロトンや水素原子と結合してしまうため好ましくない。
この電圧印加工程により、水素置換膜68の内部に、プロトンが通る道筋、すなわちプロトンチャンネルが形成され、結果として、プロトン伝導度が向上する。また、交流電圧を印加することにより、プロトン伝導度をさらに向上させることができ、1Hz以上1000Hz以下の交流電圧とすると特に好ましい。なお、バッチ式の予備実験では、厚みが50μmの水素置換膜68を用いて交流電圧を検証してみたところ、50Hzで効果がピークになっていた。
(第2液)
第2液301として、酸を含む液を用いることができる。第2液301のプロトン濃度の調節により、上述した通電条件を満足させることができる。第2液301に含まれるプロトン濃度は、特に限定されるものではない。なお、第2液301としては、酸を含む液を用いることが好ましい。
第2液301として用いる酸を含む液のうち、アニオンの式量が40未満である場合には、水素置換膜68内に入り込みやすいこと、また、アニオンの式量が1000を超えると、水素置換膜68内に入りにくいが、一旦入り込んでしまうとそのまま水素置換膜68内に残留しやすい。水素置換膜68に残留するアニオンは、水素置換膜68のプロトン伝導度を低下させる原因となるためである。したがって、第2液301として、アニオンの式量が40以上1000以下である酸を使用することにより、不要なアニオンが水素置換膜68内で残留せず、プロトン伝導度が低下しないため好ましい。
第2液301として用いる有機溶剤は1種でも複数組み合わせてもかまわないが、水素置換膜68を溶解したり膨潤したりしないものを選ぶ必要がある。本発明に用いられる有機溶剤の例としては、新版溶剤ポケットブック(オーム社、1994年刊)などに挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばアルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル)、多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジエチルエーテル)、N,N−ジメチルホルムアミド、パーフルオロトリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどが挙げられる。
また、第2液301として水を用いる場合には、純水を用いることが好ましい。この場合には、未洗浄の酸処理工程後の水素置換膜68、すなわち、余剰の酸が残留する水素置換膜68を第2液301に浸漬することにより、水素置換膜68に通電することができる。第2液301として水を用いる場合には、直前の酸処理工程69で用いられる第1液300が、上述した第1液300の条件とともに、第2液301の条件を満たす必要がある。また、酸浸漬槽110と電圧印加槽111との間隔は、できるだけ小さいほうが好ましい。電圧印加槽111における通電処理は、水素置換膜68に残留する酸を介して行うことにより、本発明の効果が発現するからである。
温調機125により第2液301の温度は、水素置換膜68内に形成されたプロトンチャンネルが破壊されない程度、或いは再構成しない程度の温度に保持することが好ましく、具体的には、10℃以上120℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。
水槽112には、洗浄液305が貯留されている。水槽112は、温調機130を備える。温調機130は、水槽112に貯留する洗浄液305の温度を所定の範囲に保持する。また、水槽112は、ローラ131、132を備える。ローラ131は、電圧印加槽111から送られる水素置換膜68を、洗浄液305内へ案内する。そして、ローラ132により、水素置換膜68は洗浄液305中を案内された後、水素置換膜68は洗浄液305から取り除かれ、水槽112の下流に配される1組のエアナイフ(図示しない)へ案内される。こうして、水素置換膜68に水洗処理が行われる。1組のエアナイフ(図示しない)は、水素置換膜68の搬送路に対し、対向するようにそれぞれ配され、エアナイフの間を通過する水素置換膜68に水切処理を行う。その後、水素置換膜68は、乾燥室85に案内される。
洗浄液305として、純水を用いることが好ましい。また、酸を洗い流す高い効果を得るために、使用する洗浄液305の温度は30℃以上洗浄液の沸点以下とすることが好ましい。ただし、洗浄液305の温度は、略室温から沸騰するまでの温度範囲であれば特に限定されるものではない。
水洗工程69における水素置換膜68の水洗方法としては、水素置換膜68を連続搬送しながら実施することを考慮すると、上記方法の他、洗浄液305を塗布する方法、洗浄液305を吹き付ける方法が挙げられ、これらの方法のうちいずれの方法を用いても良い。
水洗に使用する洗浄液305の量は、少なくとも下記に定義される理論希釈率を上回る量を用いなければならない。すなわち、水洗に使用される洗浄液305の全てが第1液300の希釈混合に寄与したという仮定の理論希釈率を定義する。実際には、完全混合は起こらないので、理論希釈率を上回る洗浄液量を使用することとなる。用いた第1液のプロトン濃度や副次添加物、溶媒の種類にもよるが、少なくとも100〜1000倍、好ましくは500〜1万倍、さらに好ましくは1000〜十万倍の希釈が得られる洗浄液305を使用する。
理論希釈倍率 = 洗浄液305の塗布量[ml/m]÷第1液300の塗布量[ml/m
水洗方法は、ある決まった洗浄液305の量を用いる場合、一度に全量適用するよりも数回に分割して適用する回分式洗浄方法が好ましい。即ち、洗浄液305の量を幾つかに分けて、水素置換膜68の搬送方向にタンデムに設置した複数の水洗手段に供給する。一つの水洗手段と次の水洗手段との間には適当な時間(距離)を設けて、拡散による第1液300の希釈を進行させる。さらに好ましくは、搬送される水素置換膜68に傾斜を設けるなどして、水素置換膜68上の洗浄液305がフィルム面に沿って流れる様にすれば、拡散に加えて、流動による混合希釈が得られる。最も好ましい方法としては、水洗手段と水洗手段の間に水素置換膜68上の洗浄液305の膜を除去する水切り手段を設けることで、更に水洗希釈効率を高められる。具体的な水切り手段としては、ブレードコータに用いられるブレード、エアナイフコーターに用いられるエアナイフ、ロッドコータに用いられるロッド、ロールコータに用いられるロールが挙げられる。こうしたタンデムに配置された水洗手段の数は、多いほうが有利であるが、設置スペースならびに設備コストの観点より、通常は2〜10段、好ましくは2〜5段が使用される。
水切り手段後の洗浄液305の膜(以下、水膜と称する)の厚みは、薄い方が好ましいが、用いる切り手段の種類によって、水素置換膜68に残留する水膜の厚みが異なる。ブレード、ロッド、ロールなど、物理的に固体を水素置換膜68に接触させる方法においては、例え固体がゴムなどの硬度の低い弾性体であったとしても、水素置換膜68の表面にキズを付けたり、弾性体が磨り減ったりするので有限の水膜を潤滑流体として残す必要がある。通常は、数μm以上、好ましくは10μm以上の水膜を潤滑流体として残存させる。
極限まで水膜厚みを減少させられる水切り手段としては、エアナイフを用いることが好ましい。十分な風量と風圧を設定することにより、水膜厚みをゼロに近づけることが出来る。ただし、エアナイフからのエアの吹出し量が大きすぎると、ばたつきや寄りなど、水素置換膜68の搬送安定性に影響を及ぼすことがあるので、好ましい範囲が存在する。水素置換膜68上の元の水膜厚み、水素置換膜68の搬送速度にもよるが、通常は10〜500m/秒、好ましくは20〜300m/秒、より好ましくは30〜200m/秒の風速を使用する。また、均一に水膜除去を行うためには、水素置換膜68の幅方向の風速分布を、通常は10%以内、好ましくは5%以内になる様、エアナイフの吹出し口やエアナイフへの給気方法を調整する。搬送する水素置換膜68の表面とエアナイフ吹出し口の間隙が狭くなるほど、その水切り能力が増すが、水素置換膜68と接触して傷付ける可能性が高くなるため、適当な範囲がある。通常は、10μm〜10cm、好ましくは100μm〜5cm、さらに好ましくは500μm〜1cmの間隙をもって、エアナイフを設置する。さらに、エアナイフと対向する様に、水素置換膜68の水洗面と反対側にバックアップロールを設置することで、間隙の設定が安定するとともに、水素置換膜68のバタツキやシワ、変形などの影響を緩和することができるために好ましい。
また、上記のように酸処理工程69と水洗工程71とを行なうことにより、水素置換膜68に含まれる固体電解質中の無機塩等の不純物を除去する効果も得ることができるため、製造する固体電解質膜72の劣化を防止することもできる。なお、酸処理工程69及び水洗工程71を行なうことにより、水洗工程71後の水素置換膜68に含まれる金属の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下である。上記の金属としては、Na、K、Ca、Fe、Ni、Cr、Zn等が挙げられる。これらの金属の含有量は、例えば、市販の原子吸光光度計により測定することで把握することができる。
図2に示すように、乾燥室85には、多数のパスローラと、乾燥室85の内部の揮発溶媒を回収するために吸着回収装置(図示無し)と、乾燥風を供給する乾燥装置(図示しない)とが備えられている。乾燥室85では、乾燥風を水素置換膜68にあてて、水素置換膜68に含まれる溶媒を除去する乾燥処理を行う。水素置換膜68に乾燥処理を施すことにより、固体電解質膜72が得られる。
また、乾燥室85の下流に配される調湿室86には、乾燥室85と同じパスローラと温度制御装置と湿度制御装置(共に図示しない)とが備えられている。調湿室86の下流側の塗布ダイ87は、固体電解質膜72の一面に光重合性のモノマー91を塗布し、この塗布ダイ87の下流側の光源88は、モノマー91の塗膜に向けて光を照射する。さらに下流側の搬送路には、固体電解質膜72の他面にモノマー91を塗布する塗布ダイ89と、この塗膜に向けて光を照射する光源90とが備えられる。なお、光源88は、塗布ダイ89の下流に配されてもよい。
光源90の下流の巻取装置145には、巻き取り時のテンションを制御するためのプレスローラ(図示せず)が備えられることが好ましい。
次に、上記のフィルム製造設備33を用いて固体電解質膜72を製造する方法の一例を説明する。ドープ24を流延ダイ93に送り込み、流延ダイ93から流延ビードを形成させながら流延バンド94の上に流延する。この場合、流延バンド94に生じるテンションが10N/m×10N/mとなるように、回転ローラ97,98の相対位置、及び少なくともいずれか一方の回転速度を調整する。また、流延バンド94と回転ローラ97,98との相対速度差は、0.01m/分以下となるように調整する。なお、流延時においては、使用するドープ24の濃度及び固体電解質層の厚みT3(図1参照)を考慮して、ドープ24の流延量を決定する。流延バンド94の速度変動を0.5%以下とすることが好ましい。
流延室80には温度コントローラ(図示しない)を設けて、これにより−10℃〜57℃とされることが好ましい。流延室80の内部で蒸発した溶媒は回収装置(図示しない)により回収した後、再生させてドープ製造用の溶媒として再利用すると、製造コスト低減を実現できる等の効果を得る上でも好ましい。
流延ビードの形態を安定させるために、このビードに関し上流側のエリアが所定の圧力値となるように減圧チャンバで制御することが好ましい。減圧チャンバによる減圧値は、ビードに関し下流側のエリアよりも−2500Pa〜−10Paとすることが好ましい。なお、減圧チャンバにジャケット(図示しない)を取り付けて、内部温度が所定の温度を保つようにすることが好ましい。また、流延ビードの形状を所望のものに保つために、流延ダイ93のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けて流延ビードの両側を吸引することが好ましい。
流延バンド94上の流延膜61を、回転ローラ97,98を駆動させることにより流延バンド94を走行させて流延室80及び搬送室81内を搬送する。搬送室81内では、乾燥装置(図示しない)から乾燥風を供給して流延膜61の乾燥を促進させる。また、コンデンサ99は、搬送室81の内部の揮発溶媒を凝縮して回収する。
続けて、流延膜61が形成された流延バンド94をタンク101に送り込んで、浸漬液102に浸漬させる。溶媒置換により、前駆体膜65の残留溶媒量が低下し、流延膜61に自己支持性が発現する。そして、流延バンド94から流延膜61を剥取ローラ100により剥ぎ取って前駆体膜65を得る。前駆体膜65は、ガイドローラにより所定の方向に案内される。また、流延膜61が剥ぎ取られた後の流延バンド94は、回転ローラ97,98の駆動に伴い無端で走行しているため、再度流延室80内に送り込まれる。
なお、タンク101内において、流延膜61を水に浸漬させる形態は特に限定されるものではないが、流延膜61を水溶液に浸漬させる時間を1分以上60分以下とすることにより、流延膜61の自己支持性を発現させ、流延バンド94から前駆体膜65を剥ぎ取ることができる。
続けて、ガイドローラによって、前駆体膜65がタンク101から送り出される。エアナイフ103により前駆体膜65の表面にエアを吹き付けて、前駆体膜65の表面に付着している水分を除去する。この前駆体膜65をテンタ83に送り込む。テンタ83では、クリップ104で前駆体膜65の両側端部を把持して、チェーンの走行に伴い搬送する。この前駆体膜65の搬送の間に、所望の温度に調整した乾燥風を前駆体膜65にあてて、前駆体膜65の乾燥を促進させる。ただし、クリップ104をピンに代えて、このピンを前駆体膜65の両側端部に突き刺すことにより保持してから搬送させても良い。このとき、乾燥風の温度を調整することにより、テンタ83の内部の温度を80℃以上140℃以下とすることが好ましい。本実施形態では、その内部の温度を約120℃となるように調整する。また、本実施形態ではテンタ83の内部を搬送方向で異なった温度ゾーンとして4分割して、そのゾーン毎に乾燥条件を適宜調整することが好ましい。
テンタ83では、前駆体膜65を幅方向に延伸させることが可能とされている。テンタ83に送り込む前の前駆体膜65に付与する搬送方向における張力を調整することにより、前駆体膜65を搬送方向に延伸することも可能である。また、前駆体膜65を延伸する場合には、前駆体膜65の搬送方向と幅方向との少なくとも1方向を、延伸前の寸法に対し100.5%〜300%の寸法となるように延伸することが好ましい。これにより、前駆体膜65に含まれるポリマーの分子配向を調整することができる。
前駆体膜65を耳切装置105に送り込み、ここでその両側端部を切断除去する。このようにクリップで傷ついた前駆体膜65の両側端部を切除することで、平面性に優れる前駆体膜65を得ることができる。なお、切断された両側端部は、カッターブロワ(図示しない)によりクラッシャ105aに送り込まれ、ここで粉砕してチップとなる。このチップを、ドープ製造用のポリマー原料として再利用すると、原料の有効利用或いは製造コストの低減を図ることが出来る。なお、前駆体膜65の両側端部を切断する工程は省略することもできるが、前駆体膜65として支持体から剥ぎ取った後、固体電解質膜72として巻き取るまでのいずれかで行うことが好ましい。
耳切装置105から案内される前駆体膜65は、図3に示すローラ116、117により、酸浸漬槽110に貯留する第1液300に浸漬される。前駆体膜65と第1液300との接触により、前駆体膜65にプロトン置換が行われ、水素置換膜68が生成する。この水素置換膜68は、ローラ117により、第1液300から取り除かれる。
酸浸漬槽110から案内される水素置換膜68は、ローラ122、123により、電圧印加槽111に貯留する第2液301に浸漬し、電極120と電極121との間を案内される。電極120と電極121との間には所定の電圧が印加されているため、第2液301及び水素置換膜68を介して、電極120と電極121との間で通電する。その後、水素置換膜68は、ローラ122、123により、第1液300から取り除かれ、電圧印加槽111に案内される。
酸を介する水素置換膜68への通電により、水素置換膜68中のプロトン伝導度が向上する。酸を介する通電がどのようなプロセスでプロトン伝導度を向上させているかは不明であるが、次のように推測することできる。第1に通電により、水素置換膜68におけるプロトンの拡散が促進される。そしてこのプロトンの拡散の促進により、水素置換膜68内のプロトン置換が十分に行われると同時に、通電によるエネルギーがプロトン置換を活性化させるため、結果として、水素置換膜68のプロトン伝導度が向上する。
電圧印加槽111から案内される水素置換膜68は、ローラ131、132により、水槽112に貯留する洗浄液305に浸漬される。こうして、洗浄液305により、水素置換膜68に残留する酸を洗い流すことができる。水洗処理を十分に行った後、水素置換膜68は、ローラ132により、洗浄液305から取り除かれ、乾燥室85に案内される。
続けて、水素置換膜68を乾燥室85に送り込む。乾燥室85では、パスローラ140に巻き掛けながら水素置換膜68を搬送する間に乾燥装置から乾燥風を供給して乾燥させる。乾燥室85の内部温度は、特に限定されるものではないが、固体電解質の耐熱性(ガラス転移点Tg、熱変形温度、融点Tm、連続使用温度等)に応じて決定され、Tg以下とすることが好ましく、本発明では、乾燥室85の内部温度は80℃以上200℃以下とすることが好ましく、固体電解質膜72の残留溶媒量が乾量基準に対して10重量%未満となるまで乾燥することが好ましい。なお、固体電解質膜72からの蒸発により発生した溶媒ガスは、吸着回収装置141により吸着回収してから、溶媒成分を除去した後、再度、乾燥風として乾燥室85の内部に送りこむ。
乾燥室85は、送風温度を変えるために、搬送方向で複数の区画に分割されていることがより好ましい。また、耳切装置105と乾燥室85との間に予備乾燥室(図示しない)を設けて水素置換膜68を予備乾燥すると、乾燥室85で水素置換膜68の温度が急激に上昇することが防止されるので、乾燥室85での水素置換膜68の大幅な形状変化を抑制して、形状変化の少ない固体電解質膜72を得ることができる。
固体電解質膜72を調湿室86に搬入する。調湿室86では、乾燥室85と同様にパスローラ140に巻き掛けながら固体電解質膜72を搬送する間に、温度制御装置と湿度制御装置により所望の温度及び湿度となるように調整することにより調湿して、その含水量を制御する。なお、調湿室86内の温度及び湿度は特に限定されるものではないが、温度は20℃以上30℃以下であることが好ましく、湿度は40RH%以上70RH%以下であることが好ましい。これにより、固体電解質膜72の表面にカールが発生したり、巻き取る際に巻取り不良が発生したりするのを抑制することができる。なお、乾燥室85と調湿室86との間に冷却室(図示しない)を設けて固体電解質膜72を略室温まで冷却すると、温度変化により固体電解質膜72が形状変化するのを抑制することができるので好ましい。
光源88,90からの光の波長は、モノマー91の種類に応じて決定される。固体電解質膜72の一面にモノマー91が塗布されて塗膜が形成されると、この塗膜に光源88から光が照射される。これにより、モノマー91が重合し、架橋構造が形成され、第1表層となる。次いで、固体電解質膜72の他面にもモノマー91が塗布されて塗膜が形成される。この塗膜に光源90からの光が照射されると、モノマー91が重合して、架橋構造をもつ第2表層が形成される。第1表層及び第2表層が形成されることにより固体電解質膜72は固体電解質層13(図1参照)となり、複層フィルム11が得られる。なお、複数の官能基をもつモノマー91だけを塗布して架橋させると、第1,第2表層が硬くなりすぎてしまう場合がある。このような場合には、塗布するモノマー91にバインダ成分を予め加えておき、これを塗布液として用いるとよい。バインダ成分としては、ポリマーが好ましく、疎水性ポリマーがより好ましく、例えばポリスルホンが挙げられる。また、固体電解質膜72のポリマーと類似の構造をもつポリマーをバインダとして用いると、固体電解質層72と第1,第2表層との密着性をより高めることができるために好ましい。
巻取装置145の上流側の搬送路には、除電装置(図示しない)を設けて、搬送されている複層フィルム11の帯電圧を所定の値とすることが好ましい。除電後の帯電圧は、−3kV〜+3kVとされることが好ましい。更に、複層フィルム11は、ナーリング付与ローラ対により両側端部にナーリングが付与されることが好ましい。そして、複層フィルム11を巻取装置145でロール状に巻き取る。
上記実施形態では、前駆体膜65に酸処理工程69を行った後に、酸処理工程69により生成する水素置換固体電解質膜72に電圧印加工程70を行うが、本発明はこれに限らず、酸処理工程69と電圧印加工程70を同時に行っても良い。酸処理工程69と電圧印加工程70とを同時に行う場合には、複数の電圧印加工程を実施して、そのうち最後の電圧印加工程における第2液を有機酸の水溶液とするとよい。すなわち、酸処理工程のプロトン置換度を優先する場合の酸は無機酸とし、電圧印加効果を優先する場合の酸は有機酸とすることが好ましい。また、この電圧印加工程70は複数回行ってもよい。
上記実施形態では、前駆体膜65を第2液301へ浸漬して電圧印加工程70を行うが、本発明はこの態様に限られず、前駆体膜65と第2液301との他の接触方法により電圧印加工程70を行っても良い。前駆体膜65と第2液301とを接触させる方法として、前駆体膜65に第2液301を塗布する方法があり、前駆体膜65上の第2液301が塗布された領域を介して電圧を印加することにより電圧印加工程70を行うことができる。また、前駆体膜65を第2液301に一旦浸漬し、取り出した後、未洗浄のまま、前駆体膜65上の第2液301が残留する領域を介して電圧を印加することにより電圧印加工程70を行うこともできる。
上記実施形態では、前駆体膜65を第1液300へ浸漬して酸処理工程69を行うが、本発明はこの態様に限られず、前駆体膜65と第1液300との接触により酸処理工程69を行っても良い。酸処理工程69における第1液300と前駆体膜65との接触方式としては、(1)前駆体膜65に第1液300を均一に接触させることができること(2)前駆体膜65の片面に接触する第1液300の量の調節が容易であること、の条件を満たす方式が好ましい。この接触方式としては、エクストルージョン、スライドなどのダイコータ、順転ロール、逆転ロール、グラビアなどのロールコータ、細い金属線を巻いたロッドコータ等が好ましく利用できる。これらの接触方式に関しては、Modern Coating and Drying Technology ,Edward Cohen and Edgar B.Gutoff,Edits., VCH Publishers, Inc, 1992にまとめられている。前駆体膜65と接触する第1液300は、その後、水洗除去するため、環境保護のための廃液処理を考えた場合、極力塗布量を抑えることが望ましい。この観点では、少ない塗布量域でも安定に操作できるロッドコータ、グラビアコータ、ブレードコータが好ましく利用できる。更に、第1液300と接触した前駆体膜65を加熱する加熱手段を用いることにより、酸処理工程69を効率よく行うことができる。前駆体膜65の加熱手段として、前駆体膜65の片面への熱風の衝突、加熱ロールによる接触伝熱、マイクロ波による誘導加熱、赤外線ヒータによる輻射熱加熱等が好ましく利用できる。特に赤外線ヒータは、非接触、かつ空気の流れを伴わずに行えるので、第1液300が塗布された片面の影響を最小にできるため好ましい。赤外線ヒータの種類としては、例えば(株)ノリタケカンパニーリミテド製の電気式、ガス式、オイル式、スチーム式などの各種遠赤外セラミックヒータが利用できる。特に熱媒体がオイル、またはスチームを用いるオイル式ならびにスチーム式は、有機溶剤が共存する雰囲気では防爆の観点で好ましい。前駆体膜65の温度は、25℃以上150℃未満、好ましくは25℃以上100℃未満、更に好ましくは40℃以上80℃未満である。前駆体膜65の温度の検出には、一般に市販されている非接触の赤外線温度計が利用でき、上記温度範囲に制御するために、加熱手段に対してフィードバック制御を行ってもよい。
なお、ドープ24の溶媒としては、固体電解質としてのポリマーを溶解させることができる有機化合物であればよい。例としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)、及び窒素を含有する化合物(N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)など)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。なお、溶媒は、複数の物質を混合した混合物であってもよい。
ドープの溶媒は、複数の物質を混合した混合物であってもよい。溶媒を混合物とする場合には、固体電解質の良溶媒と貧溶媒との混合物とすることが好ましい。固体電解質が全重量の5重量%となるように溶剤と固体電解質とを混合して、不溶解物の有無により、使用した溶剤がその固体電解質の貧溶媒であるか良溶媒であるかを判断することができる。固体電解質の良溶媒、つまり固体電解質を溶解する物質は、溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的高い方であり、一方、貧溶媒は溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的低い方である。したがって、貧溶媒を良溶媒に混合することにより、フィルム製造工程における溶媒除去の効率及び効果を高めることができ、特に、流延膜の乾燥効率について大きく向上することができる。
良溶媒と貧溶媒との混合物においては、貧溶媒の重量比率が大きいほど好ましく、具体的には10%以上100%未満であること好ましい。より好ましくは、(良溶媒の重量):(貧溶媒の重量)が90:10〜10:90であることが好ましい。これにより、全溶媒の重量における低沸点成分の割合が大きくなるので、固体電解質フィルムの製造工程における乾燥効率及び乾燥効果をより向上させることができる。
良溶媒成分としてはDMF、DMAc、DMSO、NMPが好ましく、中でも、安全性や沸点が比較的低いという点からDMSOが特に好ましい。貧溶媒成分としては、炭素数が1以上5以下であるいわゆる低級アルコール、酢酸メチル、アセトンが好ましく、中でも炭素数が1以上3以下の低級アルコールがより好ましく、良溶媒としてDMSOを用いた場合にはこれとの相溶性が最も優れる点からメチルアルコールが特に好ましい。
複層フィルム11を、上記(B)の方法、すなわち共流延方法で製造する場合には、上記の実施形態で用いたドープ(以降、固体電解質層ドープと称する)24と、第1表層を形成するドープ(以降、第1表層ドープと称する),第2表層を形成するドープ(以降、第2表層ドープと称する)とをつくり、これらのドープが重なるように流延する。共流延による複層フィルムの製造方法については、特開2007−042595号公報記載の方法を適用することができる。具体的には、連続式の製造方法としての(B−1),(B−2)の方法が挙げられる。
(B−1)ひとつのダイから、固体電解質ドープと第1表層ドープと第2表層ドープとを重なるように流出して3つのドープが重なる流延膜を形成する方法。
(B−2)走行する支持体の上方に、走行方向の上流側から順に、第1表層ドープを流出する流延ダイ、固体電解質層ドープを流出する流延ダイ、第2表層ドープを流出する流延ダイを順に配してドープの層を順に重ねていき3層の流延膜を形成する方法。
第1表層ドープ及び第2表層ドープには、上記実施形態における塗布液、つまりモノマー91を用いるとよい。そして、3層からなる流延膜を剥ぎ取り、所望の程度に乾燥した後に、両面に光を照射してモノマーを光重合させる。
本発明の複層フィルムは、燃料電池用、特に特に直接メタノール型燃料電池用のプロトン伝導膜として好適に利用することができる他に、燃料電池の2つの電極に挟まれる固体電解質複層フィルムとして用いることができる。さらに、各種電池(レドックスフロー電池、リチウム電池等)における電解質、表示素子、電気化学センサー、信号伝達媒体、コンデンサ、電気透析、電気分解用電解質膜、ゲルアクチュエーター、塩電解膜、プロトン交換樹脂としても本発明の複層フィルムを用いることができる。
(燃料電池)
以下に、複層フィルムを電極膜複合体(Membrane and Electrode Assembly,以下、MEAと称する)に使用する例と、この電極膜複合体を燃料電池に用いる例とを説明する。ただし、ここに示すMEA及び燃料電池の形態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。図4は、MEAの断面概略図である。MEA261は、複層フィルム11と、この複層フィルム11を挟んで対向するアノード電極262及びカソード電極263とを備える。
アノード電極262は多孔質導電シート262aと複層フィルム11に接する触媒層262bとを有し、カソード電極263は多孔質導電シート263aとフィルム11に接する触媒層263bとを有する。多孔質導電シート262a,263aとしては、カーボンペーパー等がある。触媒層262b,263bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子をプロトン伝導材料に分散させた分散物からなる。カーボン粒子としては、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等があり、プロトン伝導材料としては、例えば、ナフィオン(登録商標)等がある。
MEA261の製造方法としては、次の4つの方法が好ましい。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プロトン伝導材料、溶媒を含む触媒ペースト(インク)を複層フィルム11の両面に直接塗布し、多孔質導電シート262a,263aを(熱)塗布層に圧着して5層構成のMEAを作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒層262b,263bの材料を含んだ液、例えば触媒ペーストを、多孔質導電シート262a,263aの表面に塗布し、触媒層262b,263bを形成させた後、複層フィルム11と圧着し、5層構成のMEA261を作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層262b,263bを形成させた後、複層フィルム11に触媒層262b,263bのみをうつし、3層構造を形成し、これに多孔質導電シート262a,263aを圧着し、5層構成のMEA261を作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクを複層フィルム11、多孔質導電シート262a,263aあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを含む液に複層フィルム11を含浸させ、白金粒子を複層フィルム11中で還元析出させて触媒層262b,263bを形成させる。触媒層262b,263bを形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEA261を作製する。
ただし、MEAの作り方としては、上記の方法には限定されず、公知の各種方法を適用することができる。例えば、上記の(1)〜(4)の方法の他に次の方法がある。触媒層262b,263bの材料を含んだ塗布液を予めつくり、この塗布液を支持体に塗布して乾燥する。触媒層262b,263bが形成された支持体を、触媒層262b,263bが複層フィルム11に接するように複層フィルム11の両面にそれぞれ重ねて圧着する。そして支持体を剥がしてから、触媒層262b,263bが両面に形成された複層フィルム11を多孔質導電シート262a,263aで挟み込む。そして、多孔質導電シート262a,263aと触媒層262b,263bとを密着させてMEAを製造することができる。
図5は、燃料電池を分解した概略図である。燃料電池271は、MEA261と、MEA261を挟持する一対のセパレータ272,273と、これらのセパレータ272,273に取り付けられたステンレスネットからなる集電体276と、パッキン277とを有する。アノード極側のセパレータ272にはアノード極側開口部281が設けられ、カソード極側のセパレータ273にはカソード極側開口282が設けられている。アノード極側開口部281からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部282からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
アノード電極262およびカソード電極263には、カーボン材料に白金などの活性金属粒子が担持された触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲である。ただし、粒子サイズが小さいほど単位重量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが小さすぎると凝集させることなく分散させることが難しくなるために、2nm程度が小ささの限度といわれている。
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極、つまり水素極に比べ、カソード極、つまり空気極の方が大きい。これは、カソード極の反応、つまり酸素の還元反応の速度がアノード極に比べて遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Feなどのさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制するために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Moなどの白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Auなどの白金基三元金属を用いることができる。活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
触媒層262b,263bは、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体276に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを複層フィルムに輸送すること、という機能をもつ。(1)のために触媒層262b,263bは、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性とされる。(2)についてはカーボン材料に担持される活性金属触媒が担い、(3)は同じくカーボン材料が担う。そして、(4)の機能を果たすために、触媒層262b,263bにプロトン伝導材料を混在させる。触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、酸残基を有する高分子化合物、例えばナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールなどの耐熱性芳香族高分子のスルホン化物等が好ましく用いられる。複層フィルムに含まれる固体電解質を触媒層262b,263bに用いると、触媒層262b,263bと複層フィルムとが同種の材料となるため、固体電解質と触媒層との電気化学的密着性が高まり、プロトン伝導の点でより有利である。活性金属の使用量を0.03〜10mg/cmの範囲とすることが、電池出力と経済性との観点から適する。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の重量に対して1〜10倍であることが好ましい。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの重量に対して、0.1〜0.7倍が好ましい。
アノード電極532、カソード電極533は、電極基材、透過層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理を施したものを使用することもできる。
MEAは電池に組み込み、燃料を充填した状態での交流インピーダンス法による面積抵抗値が3Ωcm以下のものが好ましく、1Ωcm以下のものがさらに好ましく、0.5Ωcm以下のものが最も好ましい。面積抵抗値は実測の抵抗値とサンプルの面積の積から得られる。
燃料電池の燃料として用いることのできるものを説明する。アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタンなど)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸などが挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素などが挙げられる。
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度3〜64重量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CHOH+HO→CO+6H+6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64重量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の重量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールが複層フィルムを透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が顕著となり、出力が低下する傾向にある。そこで、用いる複層フィルムのメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2)O+6H+6e→HOであり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層262b,263bに供給する方法としては、(1)ポンプ等の補助機器を用いて強制的に送りこむ方法(アクティブ型)と、(2)補助機器を用いない方法、例えば、燃料が液体である場合には毛管現象や自然落下により、気体である場合には大気に触媒層をさらして供給するパッシブ型との2通りの方法があり、また、(1)と(2)とを組み合わせることも可能である。(1)は、カソード側で生成する水を抜き出すことにより、燃料として高濃度のメタノールを使用することができ、空気供給による高出力化ができる等の利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。(2)は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路の形成されたセパレータを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用など様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能であり充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイなどが挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動(アシスト)自転車などが挙げられる。また、産業用や家庭用などのロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
次に、本発明の実施例を説明する。なお、以下の各実施例において、実験1〜14は本発明の実験であり、比較実験1〜5、本発明に対する比較実験である。実験1〜14では第1表層14,第2表層15を形成した複層フィルム11をつくり、比較実験1〜5では、固体電解質の単層フィルムをつくった。
ドープ24の処方は以下の通りである。ドープ24のポリマー成分を、化5のXがH以外のカチオン種である化合物とした場合と、PBIとした場合との両方を実施した。
ドープ24のポリマー成分を、化5におけるXはNa、nは0.4、数平均分子量Mnは50000、量平均分子量Mwは120000である。溶媒は、溶媒成分1と溶媒成分2との混合物である。溶媒成分1は該ポリマー成分の良溶媒であり、溶媒成分2は該ポリマー成分の貧溶媒である。ポリマー成分と溶媒とを以下の配合で混合してポリマー成分を溶媒に溶解し、全重量に対し20重量%の前駆体を含むドープ24を製造した。なお、この場合には、酸処理室84での酸処理工程を実施した。
・前駆体; 100重量部
・溶媒成分1;ジメチルスルホキシド 256重量部
・溶媒成分2;メタノール 171重量部
ドープ24のポリマー成分をPBIとした場合には、ポリベンズイミダゾールを溶媒としてのジメチルアセトアミドに溶かして濃度が20重量%のドープ24をつくった。このドープ24を流延バンド94としてのプラスチックフィルムの上に、乾燥後の厚みが50μmとなるように流延した。温度50℃、相対湿度10%環境下で流延膜61を3時間乾燥してからこれを流延バンド94から剥がして165℃で2時間乾燥−水中で3時間煮沸−120℃で2時間乾燥−リン酸水溶液に24時間浸漬−120℃の恒温槽で24時間乾燥、という一連の処理を実施した。
表1の項目番号1〜9には製造条件を、項目番号10〜14には得られたフィルムについての評価結果を示す。表1の各項目番号は、以下の内容を表す。
1.固体電解質層13におけるポリマー成分である。「A」は化5のXがH以外のカチオン種である化合物であり、「B」は化8の一般式(3)に示すPBIである。
2.ドープ24中に含ませた化合物の種類である。「A」は添加剤としてのリンタングステン酸であり、「B」は複合材料の一部となるリン酸である。
3.上記2の化合物のドープ24における重量比率である。上記2の化合物の重量をx1、ポリマー成分の重量をy1とするときに、100×x1/y1で求められる値(単位;重量%)である。
4.第1表層14,第2表層15を形成するための光重合性モノマー91。化2に示す構造の化合物を「A」、DPHAを「B」、化10の化学式で示される化合物を「C」として表す。なお、比較実験1〜5においては第1表層14,第2表層15を設けていないので「−」と記載する。
Figure 0004944051
5.第1,第2表層14,15におけるバインダ成分。このバインダ成分はモノマー91に加えておき、この混合物を塗布液または第1,第2表層ドープとして用いた。
6.塗布液及び第1,第2表層ドープにおけるモノマー91の重量比。モノマー91の重量をx2、バインダ成分の重量をy2とするときに、100×x2/(x2+y2)で求める値(単位;wt%)である。
7.第1,第2表層14,15の厚みT1,T2(単位;μm)。T1=T2とした。
8.モノマー91を重合させるための光照射における光強度(単位;W/cm)。照射した光は紫外線である。
9.モノマー91を重合させるための光照射時間(単位;秒)。
10.複層フィルム11と単層フィルムとをそれぞれ水に浸漬した後における上記2の化合物の含有率である。具体的には、複層フィルム11及び単層フィルムを、それぞれ70℃の水の中に一晩浸漬した状態で静置し、その後100℃で2時間乾燥し、その後重量を測定した。表1における値は、浸漬して乾燥した後の重量をy3とするときに、100×(y3−y1)/y1で求めた値である。なお、ここでのy1は、流延量を考慮した上での上記項目3のドープにおけるy1値である。
11.複層フィルム11及び単層フィルムの柔軟性。評価方法は、JIS−P−8115による。複層フィルム11、単層フィルムが割れなかった場合を「○」とし、割れた場合を「×」とした。
12.得られた複層フィルム11または単層フィルムを25℃の水中に2時間浸漬し、浸漬前と浸漬後との面積の変化率を求めた。表1には、浸漬前の複層フィルム11または単層フィルムの一面の面積をx4,浸漬後のフィルムの同じ一面の面積をy4としたときに、100×y4/x4で求める値(単位;%)を記す。
13.得られた複層フィルムまたは単層フィルムを25℃の水中に2時間浸漬し、浸漬前と浸漬後との重量の比率を求めた。表1には、浸漬前のフィルムの重量をx5,浸漬後のフィルムの重量をy5としたときに、100×y5/x5で求める値を記す。
14.プロトン伝導度(単位;S/cm)。プロトン伝導度の測定は、Journal of the Electrochemical Society 143巻4号1254−1259項(1996年)に従い、4端子交流法を用いて行なった。具体的には、先ず、実験1〜14でつくった複層フィルム11及び比較実験1〜5でつくった単層フィルムから、それぞれ長さ2cm、幅1cmに切り抜いたものをサンプルとした。次に、PTFE板に5mm間隔で白金線を4本固定したものに先ほどのサンプルを載せた後、更にPTFE板を載せてから、これらをビスで固定して試験セルとした。そして、この試験セルと、ソーラトロン製1480型及び1225B型を組合せたインピーダンスアナライザーとを用いて、80℃の水中で交流インピーダンス法によりプロトン伝導度の測定を行なった。
Figure 0004944051
以上の実施例の結果より、本発明によると、寸法安定性に優れ、固体電解質からの添加剤の浸みだしが抑制された固体電解質フィルムを、連続的に効率良く製造することができることがわかる。
本発明の固体電解質複層フィルムの断面図である。 フィルム製造設備の概略図である。 酸処理室の概略図である。 電極膜複合体の断面図である。 燃料電池の断面分解図である。
符号の説明
11 固体電解質複層フィルム
13 固体電解質層
14,15 第1表層,第2表層
33 フィルム製造設備
T1 第1表層の厚み
T2 第2表層の厚み
T3 固体電解質層の厚み

Claims (4)

  1. 固体電解質であるポリマーからなる固体電解質層と、
    前記固体電解質層の両面にそれぞれ配され、疎水性の有機材料からなる疎水層と、
    を備え、
    前記有機材料は、光が照射されて重合する光重合性モノマー化11または化12の重合体であることを特徴とする固体電解質複層フィルム。
    (但し、化11及び化12におけるAはアクリロイル基である。)
    Figure 0004944051
    Figure 0004944051
  2. 前記固体電解質層の厚みは10μm以上200μm以下の範囲で一定であり、
    前記各疎水層の厚みは0.1μm以上10μm以下の範囲で一定であることを特徴とする請求項1記載の固体電解質複層フィルム。
  3. 前記有機材料に、さらに弾性あるいは柔軟性がバインダ成分により付与されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の固体電解質複層フィルム。
  4. 固体電解質であるポリマーからなる固体電解質膜の一面に、光重合性モノマー化11または化12を含む第1のモノマー層を形成する第1工程と、
    前記固体電解質膜の他面に、前記光重合性モノマー化11または化12を含む第2のモノマー層を形成する第2工程と、
    前記第1のモノマー層と前記第2のモノマー層とにそれぞれ光を照射して、前記光重合性モノマー化11または化12を重合させる重合工程と、
    を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一つ記載の固体電解質複層フィルムの製造方法。
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