JP5243051B2 - 固体電解質フィルム及びその製造方法、並びにこの固体電解質フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池 - Google Patents

固体電解質フィルム及びその製造方法、並びにこの固体電解質フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解質フィルム及びその製造方法、並びにこの固体電解質フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池に関するものであり、特に、プロトン伝導性を持つ燃料電池用途の固体電解質フィルム及びその製造方法、並びにこの固体電解質フィルムを用いた電極膜複合体、燃料電池に関する。
環境汚染や、エネルギーの枯渇に関する問題を改善することができる次世代エネルギー減の1つとして燃料電池が注目されている。燃料電池は、電解質の両面にマイナス極であるアノード電極と、プラス電極であるカソード電極とを密着させた電極膜複合体(MEA)を基本構造とする。カソード電極に水素原子を含有する物質を供給してプロトンを生成させた後、電解質を介してアノード電極にプロトンを送り、ここで酸素と結合させることにより電極間に起電力を発生させる。
燃料電池は、電解質の種類により固体高分子型(PEFC)、アルカリ型(AFC)、リン酸型(PAFC)、溶融炭酸塩型(MCFC)、固体酸化物型(SOFC)の5つに大別される。この中で、固体高分子から形成された電解質を備えるPEFCは、常温から約100℃までの温度範囲で作動させることができること、また、小型・薄型・軽量化が可能であること等の特徴から、車載や携帯電子機器等への利用が期待されている。電解質の形成に用いられる固体高分子としては、プロトン伝導度が比較的高く、化学的に安定している等の理由から、パーフルオロスルホン酸系のポリマーが好例として挙げられる。
固体高分子からなる電解質を製造するには、所望のポリマーや溶剤等を含む混合液であるドープを支持体の上に流延して膜を形成した後、この膜を乾燥させることにより固体電解質フィルムとする。固体電解質フィルムには、その内部をプロトンが自在に動き回ることができるかどうかが重要とされる。燃料電池を高出力化するためには、出来る限りプロトン伝導度の高いものが望まれる。また、電解質中に含まれている水の割合、すなわち含水率が高いほどプロトンは自在に電解質の内部を動き回ることができる。したがって、プロトン伝導度及び含水率がいずれも高い固体電解質フィルムの提案が望まれている。
そこで、例えば、特許文献1には、固体電解質であるポリマーと水溶性無機化合物又は分子量1000未満の水溶性有機化合物と有機溶媒とを含む溶液を製膜した後、この膜から水溶性化合物を除去することにより、プロトン伝導度が高い固体電解質フィルムを製造する方法が提案されている。また、例えば、特許文献2、3には、スルホン酸基を有するポリアーレンエーテル系化合物を使用することによりプロトン伝導度を向上させる方法が提案されている。一方、高含水率を示す固体電解質フィルムとして、例えば、特許文献4には、所定のフッ素系重合体材料からなる膜を水又は水に可溶な有機溶剤を用いて100℃以上で膨潤処理した固体電解質フィルムが提案されている。
特開2005−146018号公報 特開2005−268144号公報 特開2005−268145号公報 特開平6−342665号公報
しかしながら、特許文献1〜3にように、プロトン伝導度の向上を目的としてポリマー種を変更するだけでは、フィルムを製造する途中においてポリマーが熱ダメージを受けるおそれがあり、所望とする特性を発現させることが難しい。また、特許文献4のように所定の溶液で処理するだけでは、必要とされるような高含水率を示す固体電解質フィルムを得ることが難しい。したがって、現在、プロトン伝導度及び含水率がいずれも高い値を示す固体電解質フィルム、及びその製造方法の提案が望まれている。
本発明は上記問題を解決することを目的とし、プロトン伝導度及び含水率が高い固体電解質フィルムを安定して製造することができる方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明の固体電解質フィルムの製造方法は、両面に電極部材を密着させて燃料電池とされる固体電解質フィルムの製造方法において、溶剤と固体電解質であるカチオン種を有するポリマーとを含むドープを支持体の上に流延して流延膜を形成する工程と、流延膜を支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取る工程と、湿潤フィルムを乾燥手段により乾燥させる際に、湿潤フィルムの幅方向及び幅方向と直交する搬送方向の2方向に張力を付与する第1張力付与工程と、第1張力付与工程の後に行われ、湿潤フィルムをプロトン供与体である化合物に接触させてカチオン種を水素原子に置換するプロトン置換工程と、プロトン置換工程の後に行われ、湿潤フィルムを乾燥手段により乾燥させると共に、湿潤フィルムの幅方向及び幅方向と直交する搬送方向の2方向に張力を付与する第2張力付与工程とを有することを特徴とする。
把持手段で湿潤フィルムの両側端部を把持した後、対面する把持手段の間隔を変更することにより湿潤フィルムの幅方向に対して張力を付与し、把持手段の搬送速度を変更させることにより湿潤フィルムの搬送方向に対して張力を付与することが好ましい。
プロトン置換工程と第2張力付与工程との間に行われ、湿潤フィルムを温水に接触させ膨潤させる工程を有することが好ましい。
本発明の固体電解質フィルムは、上記いずれか1つに記載の製造方法により得られることを特徴とする。
本発明の電極膜複合体は、上記の固体電解質フィルムと、固体電解質フィルムの一方の面に密着して備えられ、外部から供給される水素原子含有物質からプロトンを発生するためのアノード電極と、固体電解質フィルムの他方の面に密着して備えられ、固体電解質フィルムを通過したプロトン及び外部から供給される気体からなる水を合成するカソード電極とを有することを特徴とする。
本発明の燃料電池は、上記の電極膜複合体と、アノード電極に接触して備えられアノード電極と外部との電子の受け渡しをする第1の集電体と、カソード電極に接触して備えられカソード電極と外部との電子の受け渡しをする第2の集電体とを有することを特徴とする。
本発明により、プロトン伝導度及び水を吸収する割合、すなわち吸水率が高い固体電解質フィルムを安定して製造することができる。このように吸水率が高い固体電解質フィルムは含水率が高くなるので、高出力のMEAや燃料電池を提供することができる。
次に、本発明の固体電解質フィルムの製造方法について説明する。先ず、本発明に係るフィルムの原料について説明する。
本発明は、固体電解質としてプロトン供与基をもつポリマーを用いると良い。プロトン供与基をもつポリマーは特に限定されないが、酸残基をもちプロトン伝導材料として公知であるものを用いることができる。中でも好ましいポリマーは酸残基をもつものであり、例えば、側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルエーテルケトンをスルホン化したスルホ化ポリエーテルエーテルケトン、スルホ化ポリベンズイミダゾール、ポリスルホンをスルホン化したスルホ化ポリスルホン、耐熱性芳香族高分子化合物のスルホ化物等が挙げられる。側鎖にスルホン酸を有する付加重合高分子化合物としては、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸や、スルホ化スチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレン等があり、耐熱性芳香族高分子のスルホ化物としてはスルホ化ポリイミド等がある。
パーフルオロスルホン酸の好ましい例としては、例えば、特開平4−366137号公報、特開平6−231779号公報、特開平6−342665号公報に記載される物質が挙げられ、中でも、化1に示す物質が特に好ましい。ただし、化1において、mは100〜10000であり、200〜5000が好ましく、500〜2000がより好ましい。そして、nは0.5〜100であり、5〜13.5が特に好ましい。また、xはmに略同等であり、yはnと略同等である。
Figure 0005243051
スルホ化スチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルスチレン、スルホ化ポリアクリロニトリルブタジエンスチレンの好ましい例としては、特開平5−174856号公報、特開平6−111834号公報に記載される化合物や化2に示される物質が挙げられる。
Figure 0005243051
耐熱性芳香族高分子のスルホン化物の例としては、例えば、特開平6−49302号公報、特開2004−10677号公報、特開2004−345997号公報、特開2005−15541号公報、特開2002−110174号公報、特開2003−100317号公報、特開2003−55457号公報、特開平9345818号公報、特開2003−257451号公報、特表2000−510511号公報、特開2002−105200号公報に記載される物質が挙げられ、中でも下記化3、4とに示される物質が特に好ましいものとして挙げられる。化3は、式(I)〜(II)で示される各構造単位からなる共重合体である。式(I)中のXはカチオン種を表す。
Figure 0005243051
Figure 0005243051
上記ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合は、フィルムの吸湿膨張率とプロトン伝導度に寄与する。ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合が小さくなると、プロトン伝導路、いわゆるプロトンチャンネルを十分に形成することができないことがある。そのため、得られるフィルムは実用に十分なプロトン伝導性を発現しないことがある。一方、ポリマー重量のうち、スルホン酸基が占める割合が大きくなると、フィルムの水分吸収性が高くなってしまうため、吸水による膨張率、つまり吸水膨張率が大きくなり、フィルムが劣化しやすくなる。
上記化合物を得る過程におけるスルホン化反応は公知文献の各種合成法に従って行うことができる。スルホン化剤としては、硫酸(濃硫酸)、発煙硫酸、ガス状あるいは液状物の三化硫黄、三化硫黄錯体、アミド硫酸、クロロスルホン酸等を用いることができる。溶媒としては、炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジオキセタン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等)等を用いることができる。反応温度は、−20℃〜200℃の範囲でスルホン化剤の活性に応じて決定するとよい。
また、別の方法として、モノマーにメルカプト基、ジスルフィド基、スルフィン酸基を予め導入しておいて、酸化剤による酸化反応によってスルホン化物を合成することもできる。このときには、酸化剤として、過酸化水素、硝酸、臭素水、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、過マンガン酸カリウム、クロム酸等を用いることができ、溶媒としては、水、酢酸、プロピオン酸等を用いることができる。この方法における反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で酸化剤の活性に応じて決定するとよい。
また、さらに別の方法として、モノマーにハロゲノアルキル基を予め導入しておいて、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩等による置換反応をしてスルホン化物を合成してもよい。このときには溶媒として、水、アルコール類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類等を用いることができる。反応温度は、室温(例えば、25℃)〜200℃の範囲で決定するとよい。なお、以上のスルホン化反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
また、スルホン化物への反応工程では、アルキルスルホン化剤を用いてもよく、一般的な方法としてはスルトンとAlClを用いたフリーデルクラフツ反応がある(Journal of Applied Polymer Science,Vol.36,1753−1767,1988)。フリーデルクラフツ反応を行うためにアルキルスルホン化剤を用いた場合は、溶媒として炭化水素(ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、アセトフェノン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン等)、ハロゲン化アルキル(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等)等を用いることができる。反応温度は、室温から200℃の範囲で決定するとよい。なお、反応における溶媒は、2種以上の物質を混合した混合物であってもよい。
また、化3のXが水素原子以外のカチオン種であるポリマー(以降、前駆体と称する)を含む湿潤フィルムをプロトン置換してXをHとすることにより、化3の構造を有するポリマーからなる固体電解質フィルムを製造することができる。
カチオン種とは、電離したときにカチオンを生成する原子または原子団を意味する。このカチオン種は1価である必要はない。水素原子以外のカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオンが好ましく、カルシウムイオン、バリウムイオン、四級アンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンがより好ましい。なお、化3におけるXをHとせずにカチオン種のままとしてフィルムを製造してもそのフィルムは固体電解質としての機能をもつ。しかし、そのプロトン伝導性は、Xのカチオン種のうちHに置換された割合が多いほど高くなる。その意味では、XはHであることが特に好ましい。
固体電解質としては、以下の諸性能をもつものが好ましい。イオン伝導度は、例えば25℃、相対湿度70%において、0.005S/cm以上であることが好ましく、0.01S/cm以上であるものがより好ましい。さらに、50%メタノール水溶液に18℃で一日浸漬した後のイオン伝導度が0.003S/cm以上であることが好ましく、0.008S/cm以上であるものがより好ましく、特に、浸漬前に対する浸漬後のイオン伝導度の低下率が20%以内であるものが好ましい。そして、メタノール拡散係数が4×10−7cm/秒以下であることが好ましく、2×10−7cm/秒以下であるものが特に好ましい。
強度については、弾性率が10MPa以上であるものが好ましく、20MPa以上であるものが特に好ましい。なお、弾性率の測定方法については、特開2005−104148号公報の段落[0138]に詳細に記されており、弾性率の上記値は、東洋ボールドウィン社製の引っ張り試験機による値である。したがって、他の試験方法や試験機を用いて弾性率を求める場合には、上記試験方法や試験機による値との相関性を予め求めておくとよい。
耐久性については、50%メタノール中に一定温度で浸漬する経時試験の前後で、重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が、それぞれ20%以下であるものが好ましく、15%以下であるものが特に好ましい。さらに過酸化水素中における経時試験の前後でも、同様に重量、イオン交換容量、メタノール拡散係数の各変化率が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものが特に好ましい。また50%メタノール中、一定温度での体積膨潤率が10%以下であるものことが好ましく、5%以下であるものが特に好ましい。
さらに、安定した吸水率および含水率をもつものが好ましい。また、アルコール類、水、アルコールと水との混合溶媒に対し、溶解度が実質的に無視できる程に小さいものであることが好ましい。また上記液に浸漬した時の重量減少、形態変化についても実質的に無視できる程小さいものであることが好ましい。
固体電解質フィルムのイオン伝導性能は、イオン伝導度とメタノール透過係数との比であるいわゆる指数により表される。そして、ある方向における指数が大きいほど、その方向におけるイオン伝導性能が高いといえる。また、固体電解質フィルムの厚み方向においては、イオン伝導度は厚みに比例し、メタノール透過係数は厚みに反比例するので、厚みを変えることにより固体電解質フィルムのイオン伝導性能を制御することができる。燃料電池に用いる固体電解質フィルムでは、一方の面側にアノード電極、他方の面側にカソード電極が設けられることになるので、固体電解質フィルムの厚み方向における指数が他の方向における指数よりも大きいことが好ましい。固体電解質フィルムの厚みは10〜300μmが好ましい。例えば、イオン伝導度とメタノール拡散係数とが共に高い固体電解質の場合には、厚みが50〜200μmとなるようにフィルムを製造することが特に好ましく、イオン伝導度とメタノール拡散係数とが共に低い固体電解質の場合には、厚みが20〜100μmとなるようにフィルムをする製造することが特に好ましい。
耐熱温度については、200℃以上であるものが好ましく、250℃以上のものがさらに好ましく、300℃以上のものが特に好ましい。ここでの耐熱温度は、1℃/分の測度で加熱していったときの重量減少5%に達した温度を意味する。なお、この重量減少は、水分等の蒸発分を除いて計算される。
さらに、固体電解質をフィルムとしてこれを燃料電池に用いる場合には、その最大出力密度が10mW/cm以上の固体電解質であることが好ましい。
以上の固体電解質を用いることにより、フィルムの製造に好適な溶液を製造することができるとともに、燃料電池として好適な固体電解質フィルムを製造することができる。フィルムの製造に好適な溶液とは、例えば、粘度が比較的低く、濾過により異物を予め除去しやすい溶液である。なお、以下の説明では、得られる溶液をドープと称する。
ドープに使用する有機溶媒(単に、溶媒と称する場合もある)としては、固体電解質としてのポリマーを溶解させることができる有機化合物であればよい。例としては、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、クロロベンゼン等)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチレングリコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等)、及び窒素を含有する化合物(N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N′−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
ドープの溶媒は、複数の物質を混合した混合物であってもよい。溶媒を混合物とする場合には、固体電解質の良溶媒と貧溶媒との混合物とすることが好ましい。使用した溶剤がその固体電解質の貧溶媒であるか良溶媒であるかは、固体電解質が全重量の5重量%となるように溶剤と固体電解質とを混合した液中に、不溶解物が存在しているか否かにより判断することができる。貧溶媒及び良溶媒の基準は前述したので省略する。貧溶媒を良溶媒に混合するとフィルム製造工程における溶媒除去の効率及び効果を高めることができ、特に、流延膜の乾燥効率について大きく向上させることができる。
良溶媒と貧溶媒との混合物においては、貧溶媒の重量比率が大きいほど好ましく、具体的には10%以上100%未満であること好ましい。より好ましくは、(良溶媒の重量):(貧溶媒の重量)が、90:10〜10:90であることが好ましい。これにより、全溶媒の重量における低沸点成分の割合が大きくなるので、固体電解質フィルムの製造工程における乾燥効率及び乾燥効果をより向上させることができる。
良溶媒成分としてはDMF、DMAc、DMSO、NMPが好ましく、中でも、安全性や沸点が比較的低いという点からDMSOが特に好ましい。貧溶媒成分としては、炭素数が1以上5以下であるいわゆる低級アルコール、酢酸メチル、アセトンが好ましく、中でも炭素数が1以上3以下の低級アルコールがより好ましく、良溶媒としてDMSOを用いた場合にはこれとの相溶性が最も優れる点からメチルアルコールが特に好ましい。
固体電解質をフィルムとしたときの各種フィルム特性を向上させるためには、添加剤をドープに加えることができる。添加剤としては、酸化防止剤、繊維、微粒子、吸水剤、可塑剤、相溶剤等が挙げられる。これら添加剤の添加率は、ドープ中の固形分全体を100重量%としたときに1重量%以上30重量%以下の範囲とすることが好ましい。ただし、添加率及び物質の種類は、イオン伝導性に悪影響を与えないものとする。以下に添加剤について具体的に説明する。
酸化防止剤としては、(ヒンダード)フェノール系、一価または二価のイオウ系、三価のリン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、サリチレート系、オキザリックアシッドアニリド系の各化合物が好ましい例として挙げられる。具体的には特開平8−53614号公報、特開平10−101873号公報、特開平11−114430号公報、特開2003−151346号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
繊維としては、パーフルオロカーボン繊維、セルロース繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開平10−312815号公報、特開2000−231938号公報、特開2001−307545号公報、特開2003−317748号公報、特開2004−63430号公報、特開2004−107461号の各公報に記載の繊維が挙げられる。
微粒子としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム等が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−178777号、特開2004−217931号の各公報に記載の各種微粒子が挙げられる。
吸水剤、つまり親水性物質としては、架橋ポリアクリル酸塩、デンプン−アクリル酸塩、ポバール、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリグリコールジアルキルエーテル、ポリグリコールジアルキルエステル、合成ゼオライト、チタニアゲル、ジルコニアゲル、イットリアゲルが好ましい例として挙げられ、具体的には特開平7−135003号、特開平8−20716号、特開平9351857号の各公報に記載の吸水剤が挙げられる。
可塑剤としては、リン酸エステル系化合物、塩素化パラフィン、アルキルナフタレン系化合物、スルホンアルキルアミド系化合物、オリゴエーテル類、芳香族ニトリル類が好ましい例として挙げられ、具体的には特開2003−288916号、特開2003−317539号の各公報に記載の可塑剤が挙げられる。
相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上の物が好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
ドープにはさらに、(1)フィルムの機械的強度を高める目的、(2)膜中の酸濃度を高める目的で、種々のポリマーを含有させてもよい。
上記の目的のうち(1)には、分子量が10000〜1000000程度であり、固体電解質と相溶性のよいポリマーが適する。例えば、パーフッ素化ポリマー、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリオキセタン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、およびこれらのうち2以上のポリマーの繰り返し単位を含むポリマーが好ましい。また、フィルムとしたときの全重量に対し1重量%〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。なお、相溶剤を用いることにより固体電解質との相溶性を向上させてもよい。相溶剤としては、沸点または昇華点が250℃以上であるものが好ましく、300℃以上のものがさらに好ましい。
上記目的のうち(2)には、プロトン酸部位を有するポリマー等が好ましい。このようなポリマーとしては、ナフィオン(登録商標)等のパーフルオロスルホン酸ポリマー、側鎖にリン酸基を有するスルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリベンズイミダゾール等の耐熱芳香族高分子化合物のスルホン化物等を例示することができる。また、フィルムとしたときの全重量に対し1重量%〜30重量%の範囲となるようにこれらの物質をドープに含有させることが好ましい。
次に、本発明の詳細を具体的に説明する。なお、ここに示す形態は、本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
図1に示すように、本実施形態で用いられるフィルム製造設備30は、流延室32と、剥取ローラ33と、溶媒タンク37と、第1乾燥機38と、第1耳切装置39と、酸処理タンク40と、エアシャワ44と、洗浄タンク46と、第2乾燥機47と、第2耳切装置49と、巻取装置50とを備える。
流延室32は、支持体上にドープを流延して流延膜24を形成するためのものである。その内部には、1対のローラ51a、51bに巻き掛けられた流延バンド53と、流延ダイ54と、減圧チャンバ55と、送風装置57a、57b及び加熱装置59と、コンデンサ60とが備えられている。また、流延室32の外部には温度コントローラ61が取り付けられている。
流延バンド53の素材は特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス等の無機材料であっても良いし、有機材料からなるプラスチックフィルムでも良い。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ナイロン6フィルム、ナイロン6,6フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の不織布のプラスチックフィルムが挙げられる。使用する溶剤、製膜温度に対応できるような化学的安定性と耐熱性とをもつ長尺物であることが好ましい。流延バンド53の幅は特に限定されず、ドープの流延幅の1.1倍〜2.0倍の範囲のものが好適に用いられる。流延バンド53の長さは20m〜200mであり、厚みは0.5mm〜2.5mmであり、表面粗さは0.05μm以下となるように研磨されていることが好ましい。
回転ローラ51a、51bは、これらのうち少なくとも1機を駆動回転させることで、支持体である流延バンド53を連続的に走行させるためのものである。その内部に伝熱媒体流路(図示しない)が形成されており、この流路の中に温度を調整した伝熱媒体を注入し、これを循環又は通過させることで回転ローラ51a、51bの表面温度を所望の範囲に制御する。これにより、流延バンド53の表面温度が好適に制御される。流延バンド53の表面温度は特に限定されず、溶媒の種類や固形成分の種類、ドープの濃度等に応じて適宜設定すれば良い。
回転ローラ51a、51bの相対位置及び少なくともいずれか一方の回転速度を制御して、流延バンド53に生じる張力を10N/m×10N/mとする。流延バンド53と回転ローラ51a、51bとの相対速度差は、0.01m/分以下とする。流延バンド53の速度変動は0.5%以下とし、流延バンド53が一周する際に生じる幅方向における蛇行は1.5mm以下とすることが好ましい。この蛇行を抑制するためには、流延バンド53の両端の位置を検出する検出器(図示しない)と、この検出器による検出データに応じて流延バンド53の位置を調整する位置調整機(図示しない)とを設けて、流延バンド53の位置をフィードバック制御することがより好ましい。なお、後述する流延ダイ54の直下における流延バンド53は、回転ローラ51a、51bの回転に伴う上下方向の位置変動が200μm以内とすることが好ましい。
本発明では、回転ローラ51a、51b及び流延バンド53に代わる支持体として回転ドラム(図示しない)を用いても良い。回転ドラムを使用する場合には、回転速度ムラが0.2%以下となるように高精度で回転可能なものが好ましい。回転ドラムは、表面の平均粗さが0.01μm以下のように平滑なものが好ましく、更には、十分な硬度と耐久性とを向上させることを目的として、その表面がハードクロムめっき等で処理されているものが好ましい。なお、支持体の表面欠陥は最小限に抑制されていることが好ましく、具体的には、30μm以上のピンホールが無く、10μm以上30μm未満のピンホールが1個/m以下、10μm未満のピンホールが2個/m以下が好ましい。
流延ダイ54は、ドープ製造設備70から送り込まれるドープの流延口を有しており、この流延口から支持体上にドープを流延する。流延ダイ54の形態や材質等は特に限定されないが、析出硬化型のステンレス鋼で形成され、その熱膨張率が2×10−5(℃−1)以下であるものが好適に用いられる。電解質水溶液での強制腐食試験でSUS316と略同等の耐腐食性を有し、さらに、ジクロロメタン、メタノール、水の混合液に3ヵ月浸漬しても気液界面にピッティング(孔開き)が生じないような耐腐食性を有するものが好ましい。流延ダイ54は、鋳造後1ヶ月以上経過した素材を研削加工することにより作製されることが好ましい。これにより、流延ダイ54の内部をドープが一様に流れるのでスジ等が少ない流延膜24が形成される。
ドープと接する可能性のある流延ダイ54の面は、その仕上げ精度が表面粗さで1μm以下、真直度がいずれの方向にも1μm/m以下であることが好ましい。流延ダイ54の流延口のクリアランスは、自動調整により0.5mm〜3.5mmの範囲で調整可能とされるものを用いることが好ましい。また、流延ダイ54のリップ先端の接液部の角部分について、その面取り半径Rは流延ダイ54の全幅にわたり一定であり、かつ50μm以下とされることが好ましい。流延ダイ54はコートハンガー型が好ましい。
流延ダイ54の幅は特に限定されず、最終製品となるフィルム26の幅の1.1倍〜2.0倍程度であることが好ましい。また、製膜の際のドープの温度が所定温度に保持されるように、流延ダイ54の温度を制御する温度コントローラが流延ダイ54に取り付けられることが好ましい。さらに、流延ダイ54には、幅方向に所定の間隔で複数備えられた厚み調整ボルト(ヒートボルト)と、このヒートボルトによりスリットの隙間を調整する自動厚み調整機構が備えられることがより好ましい。ヒートボルトは予め設定されるプログラムによりポンプ(高精度ギアポンプが好ましい)の送液量に応じてプロファイルを設定し製膜を行うことが好ましい。ドープの送り量を精緻に制御するために、ポンプは高精度ギアポンプであることが好ましい。
また、フィルム製造設備30には、例えば、赤外線厚み計のような厚み測定機を設け、厚みプロファイルに基づく調整プログラムと厚み測定機による検知結果とにより、自動厚み調整機構へのフィードバック制御を行ってもよい。製品としてのフィルム26の両側端を除く任意の2つの位置での厚み差が1μm以内となるように、先端リップのスリット間隔を±50μm以下に調整することができる流延ダイ54を用いることが好ましい。
流延ダイ54のリップ先端には硬化膜が形成されていることがより好ましい。硬化膜の形成方法は、特に限定されるものではないが、セラミックスコーティング、ハードクロムめっき、窒化処理方法等が挙げられる。硬化膜としてセラミックスを用いる場合には、研削することができ気孔率が低く脆くなく耐腐食性が良く、かつドープとの親和性や密着性がないものが好ましい。具体的には、タングステン・カーバイド(WC)、Al、TiN、Cr等が挙げられるが、中でも特に好ましくはWCである。WCコーティングは、溶射法で行うことができる。
ドープが流延ダイ54のリップ先端で局所的に乾燥固化することを防止するために、リップ先端に溶媒を供給するための溶媒供給装置(図示しない)をリップ先端近傍に取り付けることが好ましい。溶媒が供給される位置は、流延ビードの両端部とリップ先端の両端部と外気とにより形成される三相接触線の周辺部が好ましい。供給される溶媒の流量は、片側それぞれに対し0.1mL/分〜1.0mL/分とすることが好ましい。これにより、異物、例えばドープから析出した固形成分や外部から流延ビードに混入したものが流延膜24中に混合してしまうことを防止することができる。なお、溶媒を供給するポンプとしては、脈動率が5%以下のものを用いることが好ましい。
減圧チャンバ55は、流延されるドープの近傍を減圧させるためのものである。減圧チャンバ55により流延するドープの支持体側を減圧することが好ましい。これにより、減圧された方向へドープが引き寄せられるので、支持体との間にエアを巻き込むことなく高速で流延することが可能となる。減圧チャンバ55には、その内部温度を所定の範囲に保持することができる機能を備えるものが好ましい。また、その設置箇所は流延ダイ54の流延口近傍とされ、本実施形態では吐出されるドープの流延バンド53側とされる。
送風装置57a、57bのうち、流延ダイ54に最も近い送風装置57aの流延ダイ54側には遮風板64が備えられている。遮風板64は各送風装置から供給される乾燥風が直接的に流延膜24に当たるのを防止するためのものである。その材質、設置箇所等は特に限定されないが、ドープの流延部に近い側に遮風板64を設けるより優れた遮風効果を得ることができるので好ましい。
温度コントローラ61は、流延室32の内部温度を所定の値に保つためのものである。流延膜24を形成させる間、温度コントローラ61によりその内部温度は−10℃〜57℃の範囲で略一定とされることが好ましい。コンデンサ60は、揮発した有機溶媒を凝縮回収するためのものである。なお、コンデンサ60は、凝縮液化した有機溶媒を回収するための回収装置が備えられているものが好ましい。
加熱装置59は、流延膜24の近傍を加熱して乾燥をより促進させるものである。そのため、流延バンド53の下流側であり流延膜24の反流延バンド側であり、流延バンド53の表面近傍に設置される。加熱装置59は特に限定されるものではなく、例えば、赤外線照射、減圧乾燥、遠赤外線、マイクロ波等を利用した装置が好適に使用される。
溶媒タンク37には溶媒置換液37aが貯留されている。溶媒置換液37aは、流延膜24に含まれる溶剤よりも沸点が低く、かつ固体電解質に対して貧溶媒である液体が用いられ、具体的には、水や有機溶媒と水との混合物が挙げられる。この有機溶媒は、ドープ調製用の溶媒と同一のものを用いることが好ましい。溶媒置換液37aに湿潤フィルム25を接触させることにより、湿潤フィルム25に含まれる溶剤と溶媒とを置換させる。なお、本発明における貧溶媒とは溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的低いものを指し、良溶媒とは溶媒として一般的に用いられる化合物の中でも沸点が比較的高く、固体電解質を溶解する物質を指す。
第1乾燥機38は、湿潤フィルム25に対して、その幅方向及び幅方向と直行する搬送方向の2方向に対して張力を付与しながら乾燥を促進させるものである。第1乾燥機38の内部には、湿潤フィルム25の両側端部を把持するための複数のクリップ38aと、乾燥風を供給するための送風装置(図示しない)とが備えられている。本実施形態では、これより下流に配される第2乾燥機47は、第1乾燥機38と同形のものを使用する。
第1耳切装置39は、内部に備えられるカッタ(図示しない)で湿潤フィルム25の両側端部を切除するためのものである。第1耳切装置39には、湿潤フィルム25の両側端部を切断片として粉砕するためのクラッシャ39aが接続されている。なお、本実施形態では、下流に配される第2耳切装置49は、第1耳切装置39と同形のものを使用する。
酸処理タンク40の内部には、酸を含む溶液40aが貯留されている。酸は電離したときのアニオンの式量が40以上1000以下の化合物とすることが好ましく、上記の化合物として具体的には、硫酸、リン酸、硝酸、有機スルホン酸が挙げられる。中でも、硫酸を使用することが好ましい。本実施形態では、酸を含む溶液40aとして、約30℃に加熱保温された0.5モル/Lの硫酸が含まれる液が使用される。
酸処理機40と洗浄タンク46との間であり、湿潤フィルム25の搬送路を中心にその対称となる位置に配されているエアシャワ44は、湿潤フィルム25の表面に付着している水分を払拭するためのものである。
洗浄タンク46には、湿潤フィルム25を洗浄するための温水が貯留されている。温水は、不純物の含有量が少ない純水を加熱したものであることが好ましい。本実施形態では、約30℃に温度を調整した温水を使用する。
第2乾燥機47は、洗浄後の湿潤フィルム25の両側端部を固定した状態で搬送する間に乾燥を促進させてフィルム26とするためのものである。第2耳切装置49は、フィルム26の両側端部を切除するためのものである。また、第2耳切装置49にはクラッシャ49aが接続されている。このクラッシャ49aの作用は、第1耳切装置39と同じであるため説明を省略する。そして、巻取装置50は完成したフィルム26を巻取るためのものである。
次に、上記のフィルム製造設備30の作用について説明する。
ドープ製造設備70から適宜適量のドープが流延ダイ54に送られ、流延ダイ54の流延口から流延バンド53に向かってドープが吐出される。本発明に係るドープは、固体電解質であるポリマーと溶剤とを含む混合物とする。ドープは、溶剤中にポリマーが完全に溶解している必要はなく、溶剤中にポリマーが分散している状態でも良いが、溶剤に対するポリマーの溶解度が高いものほど好ましい。流延時においてドープの流延量を調整すれば、形成させる流延膜24の厚みを制御することができる。また、ドープを安定して支持体上に流延させるにはドープの粘度が重要である。そこで、ドープ全量に対する固体電解質の濃度は5重量%以上50重量%以下とすることが好ましい。より好ましくは10重量%以上40重量%以下である。ドープに添加剤が含まれている場合、その濃度は、ドープ中の固形分全体を100重量%とすると1重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
減圧チャンバ55により流延ダイ54から流延バンド53にかけて形成されるリボン状のドープ、すなわち流延ビードの流延バンド53側を減圧する。これにより、流延バンド53側に流延ビードを引き寄せながら流延することができるので、流延ビードと流延バンド53との間においてエアの巻き込みが防止される。減圧チャンバ55による減圧は、流延ビードの上流側が下流側よりも−2500Pa〜−10Paとすることが好ましい。流延ビードの形状を所望のものに保つために、流延ダイ54のエッジ部に吸引装置(図示しない)を取り付けてビードの両側を吸引することが好ましい。このエッジ吸引風量は、1L/分〜100L/分の範囲であることが好ましい。
送風装置57a、57bから供給される乾燥風により、流延バンド53の走行に伴い移動する流延膜24の乾燥を促進させる。流延ビードに最も近い側に位置する送風装置57aには遮風板64を設ける。これにより、流延膜24の表面へ直接的に乾燥風が当たることがないので、平面性に優れる流延膜24を形成することができる。この時、加熱装置59により流延膜24の表面近傍が所定の温度範囲で加熱される。このため、流延膜24の乾燥は効率良くかつ効果的に促進される。
自己支持性を持つまで乾燥が促進された流延膜24を剥取ローラ33で支持しながら流延バンド53から剥ぎ取り湿潤フィルム25とする。流延バンド53から剥ぎ取る際の流延膜24の残留溶剤量は、固形分基準で200重量%〜950重量%であることが好ましい。本発明では、湿潤フィルム25や固体電解質フィルム26中に残留する溶剤量を乾量基準で示したものを残留溶剤量とする。測定方法は、採取したサンプルの重量をxとし、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出される。なお、多種の溶剤が存在する場合には、その総量を対象として考える。
溶媒タンク37に送った湿潤フィルム25を溶媒置換液37aに浸漬させて、湿潤フィルム25に含まれる溶剤の一部を溶媒に置換させる。これにより、湿潤フィルム25のゲル化を進行させることができる。また、湿潤フィルム25に含まれている溶剤を沸点の低い溶媒と置き換えることにより、低温、かつ短い時間で湿潤フィルム25を乾燥させることができる。湿潤フィルム25を溶媒に接触させる方法は特に限定されず、例えば、湿潤フィルム25の表面に溶液を吹き付けても良い。
湿潤フィルム25は第1乾燥機38に送られ、この入口付近でクリップ38aにより両側端部が把持される。両側端部が固定された湿潤フィルム25は、第1乾燥機38内を搬送される間に、送風装置から乾燥風が供給されて乾燥が促進される。この時、対面するクリップ38aの間隔を拡げて湿潤フィルム25の幅方向に張力を付与する。クリップ38aの搬送方向の速度を調整することで湿潤フィルム25の搬送方向に張力を付与する。これにより、湿潤フィルム25を幅方向及び搬送方向の2方向に張力が付与されて、分子配向を制御することができる。このような湿潤フィルム25は厚み方向の自由度が高くなるので吸水し易くなる。また、湿潤フィルム25に対し2方向に張力を付与すれば、乾燥による収縮を効率良くかつ効果的に抑制することができるので、湿潤フィルム25の面積変化を極力抑えることができる。
第1乾燥機38の出口付近で、湿潤フィルム25はクリップ38aによる把持が解放される。この後、湿潤フィルム25は第1耳切装置39に送られて、その両側端部が切断される。湿潤フィルム25は酸処理タンク40に送られて硫酸を含む液に浸漬される。これにより、湿潤フィルム25を構成するポリマー中のカチオン種が水素原子に置換されてプロトン置換度が高められる。上記の置換効率を向上させるために、使用する酸を含む溶液の温度は30℃以上120℃以下とすることが好ましい。酸を含む溶液の温度が高温であるほどプロトン置換の効率が向上し、短い時間でプロトン置換率の高い湿潤フィルム25を得ることができる。ここで、酸を含む溶液の温度は室温からその液が沸騰するまでの温度範囲であれば特に限定されるものではない。
ポリマー中のカチオン種の総数をxとし、カチオン種を置換した水素原子の総数をyとして(y/x)×100で表される値をプロトン置換率と称する。プロトン置換率はカチオン種全量に対して80%以上とすることが好ましい。より好ましくは、90%以上とすることである。ここで、湿潤フィルム25に酸を含む溶液を接触させる方法は特に限定されないが、湿潤フィルム25に対して出来る限り均一に接触させることが好ましい。本実施形態のように、酸を含む溶液に湿潤フィルム25を浸漬させると、その全面に対して溶液を均一に接触させることができるので好ましい。接触方法以外に、例えば、湿潤フィルム25の表面に所望の溶液を塗布する方法や、表面に溶液を吹き付ける方法も好適に用いられる。
エアシャワ44で湿潤フィルム25の表面に付着する余分な酸を除去した後、湿潤フィルム25を洗浄タンク46に送り温水に浸漬させる。これにより、湿潤フィルム25の表面に付着している余分な酸を洗い流すと共に、湿潤フィルム25を膨潤させる。このような湿潤フィルム25は、厚み方向の自由度が高く水を吸収し易い、すなわち吸水率の高いフィルムが得られる。膨潤させる上で、温水を使用することが最適であるが、洗浄効果に関しては、水を含む溶液であれば温水に限るものではない。また、水を含む溶液等に湿潤フィルム25を接触させる方法は特に限定されず、浸漬の他、例えば、塗布したり、吹き付けたりする方法が挙げられる。なお、塗布や吹付けの場合には、連続的に湿潤フィルム25を搬送しながら作業を行うことができるので、生産性の観点から好適である。
上記の様に酸及び温水で湿潤フィルムを洗浄すると、湿潤フィルムに含まれている無機塩等の不純物を除去する効果も得られる。このような湿潤フィルムから得られるフィルムは、不純物による劣化等が抑制される。フィルムの劣化を防止するには、酸処理及び洗浄をした後のフィルムに含まれる金属含有量は1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下である。なお、対象となる金属としては、Na、K、Ca、Fe、Ni、Cr、Zn等が挙げられ、これらの金属含有量は、例えば、市販の原子吸光光度計により測定することで把握することができる。
湿潤フィルム25は第2乾燥機47に送られ、この入口付近でクリップ47aにより両側端部が把持される。湿潤フィルム25はクリップ47aで固定された状態で第2乾燥機47内を搬送される間に、十分に乾燥が促進されてフィルム26とされる。ここで、対面するクリップ47aの間隔を拡げると共に搬送速度を調整する。これにより、幅方向及び搬送方向での分子配向が調整されて厚み方向での自由度が高く、かつプロトン伝導度の高いフィルム26が得られる。最後に、第2乾燥機47の出口付近でクリップ47aにより把持が解放されたフィルム26は巻取装置50で巻き取られる。
本発明では、溶剤を多く含み軟らかい状態の湿潤フィルムに対し、その幅方向及び搬送方向の2方向に対して張力を付与するようにしたので、効率良くかつ効果的に分子配向を制御することができる。このようなフィルムは厚み方向の自由度が高く水を吸収し易いので、結果として含水率が高くなる。以上より、本発明で得られるフィルムは、プロトン伝導度及び含水率が高いフィルムであるといえる。
本発明のフィルムは、両面に電極部材を密着させて燃料電池とされる固体電解質フィルムであり、この幅方向及び搬送方向の2方向に張力が付与されることで分子配向が制御され、燃料電池が使用される温度範囲の任意の温度t1(℃)、湿度t2(%)の雰囲気下に固体電解質フィルムを放置するとき、下記式(1)で表される固体電解質フィルムの吸水率X(%)と、下記式(2)で表される固体電解質フィルムの膨張率Y(%)とが、X/Y>1.5である。
式(1):X(%)=(M2/M1)×100
式(2):Y(%)=(W2/W1)×100
ここで、式(1)中のM1は、雰囲気に供する前の固体電解質フィルムの重さであり、M2は、雰囲気に供した後の固体電解質フィルムの重さを意味し、式(1)中のW1は、雰囲気に供する前の固体電解質フィルムの面積であり、W2は、雰囲気に供した後の固体電解質フィルムの面積を表す。このように、固体電解質フィルムの吸水率と膨潤率とがX/Y>1.5を満たすようなフィルムは、面積変化が小さいにも係らず吸水により重量が増えており、その耐久性及び含水率が向上する。本発明においてより好ましくは、X/Y>1.8であり、特に好ましくはX/Y>2.0である。一方、X/Yが1.5よりも小さいと湿度変化による固体電解質フィルムの面積の変化が大きくなる。このようにフィルムの面積が変化すればフィルムに応力が加わるので、耐久性は低下してしまう。
上記の様に所望のポリマーを溶剤と混合させたドープから流延膜を形成し、この流延膜を乾燥させてフィルムを作製する方法は溶液製膜方法と称される。溶液製膜方法では、乾燥工程や側端部の切除除去工程等の様々な工程が行われている。これらの各工程内、あるいは各工程間では、フィルムは主にローラにより支持または搬送されている。これらのローラには、駆動ローラと非駆動ローラとがあり、非駆動ローラは、主に、フィルムの搬送路を決定するとともに搬送安定性を向上させるために使用される。
本実施形態では、1種類のドープを流延する場合を示したが、本発明では、2種類以上のドープを同時に共流延して複層の流延膜を形成しても良いし、逐次に共流延させて複層の流延膜を形成させても良い。なお、2種類以上のドープを同時に共流延する場合には、フィードブロックを取り付けた流延ダイを用いても良いし、マルチマニホールド型流延ダイを用いても良い。ただし、共流延により多層からなるフィルムは、表面に露出する2層のうちいずれか一層が、フィルム全体の厚みの0.5%〜30%であることが好ましい。また、同時に共流延をする場合には、流延ダイの流延口から支持体にドープを流延する際に、高粘度ドープが低粘度ドープにより包み込まれて流延されるように各ドープの濃度を予め調整しておくことが好ましく、流延口から支持体にかけて形成されるビードのうち、外界と接する、つまり露出するドープが内部のドープよりも貧溶媒の比率が大きい処方とされることが好ましい。
固体電解質の前駆体からなるポリマーをフィルム化する上記方法に代えて、細孔が複数形成されているいわゆる多孔質基材の細孔に固体電解質を保持させて、固体電解質が細孔に入ったフィルムを製造しても、上記実施形態とは異なる固体電解質フィルムを製造することができる。このような固体電解質フィルムの製造方法としては、固体電解質が含まれるゾル−ゲル反応液を多孔質基材上に塗布して細孔に固体電解質を入れる方法、多孔質基材を固体電解質が含まれるゾル−ゲル反応液に浸漬し、細孔内に固体電解質を満たす方法等がある。
上記の多孔質基材の好ましい例としては、多孔性ポリプロピレン、多孔性ポリテトラフルオロエチレン、多孔性架橋型耐熱性ポリエチレン、多孔性ポリイミド等が挙げられる。また、固体電解質を繊維状に加工し、繊維中の空隙を他の高分子化合物等で満たし、その繊維を用いてフィルム状とすることにより固体電解質フィルムを形成することもできる。この場合には、空隙を満たすための他の高分子化合物の例としては、本明細書における添加剤として挙げた物質を挙げることができる。
本発明では、溶媒を含んでいるフィルムに対し、その幅方向及び、幅方向とは直行する搬送方向の2方向に対して張力を付与して乾燥することを特徴とする。2方向に張力を付与する方法は、上記の形態に限定されるものではない。例えば、図2に示すような固定部材100を用いても、本発明の効果を得ることができる。図2(a)に示すように、固定部材100は、内枠101と外枠102とを備える。内枠101は、その外寸が外枠102の内寸と略同等とされる。外枠102には、湿潤フィルム25をセットするための台107が形成されている。各枠101、102の両側の同じ箇所には、固定冶具104が差し込まれるための孔105が複数設けられている。なお、図2では、図の煩雑さを避けるため、同じ部材に付する符号を一部省略する。
図2(b)に示すように、外枠102内の所定の位置にシート状に裁断された湿潤フィルム25をセットした後、これを挟み込むようにして内枠101を外枠102内に嵌め込む。各孔105に固定冶具104を嵌め込むことで、内枠101と外枠102との間に湿潤フィルム25をしっかりと固定する。ここに、例えば、乾燥手段として送風口を有する送風装置から乾燥風を供給する。湿潤フィルム25の内部から溶媒が蒸発して乾燥が促進されるため収縮しようとするが、その四方が固定されているので幅方向及び幅方向とは直行する搬送方向の2方向に張力が付与される。これにより、湿潤フィルム25の幅方向及び搬送方向の寸法変化が低減されて厚み方向の自由度が高い湿潤フィルム25が得られる。このような湿潤フィルム25を乾燥して得られる固体電解質フィルム26は、厚み方向の自由度が高いので吸水率が高くなる。なお、固定部材としては、例えば、湿潤フィルム25の四方を突き刺すための複数のピンが備えられたピン型プレートを使用することもできる。
以下、固体電解質フィルムを用いるMEA並びに燃料電池について説明する。固体電解質フィルムを燃料電池に用いる場合には、アノード燃料とカソード燃料の酸化還元反応を促進させる活性金属触媒をドープに添加してもよい。これにより、固体電解質フィルムの中に一方の極から浸透した燃料が他方の極に到達することなく固体電解質中で消費されるので、クロスオーバー現象を防止することができる。活性金属触媒は、電極触媒として機能するものであれば特に限定されないが、白金または白金を基にした合金が特に適している。
〔燃料電池〕
以下に、代表してフィルム26を電極膜複合体(Membrane and Electrode Assembly,以下、MEAと称する)に使用する例と、この電極膜複合体を燃料電池に用いる例とを説明する。ただし、ここに示すMEA及び燃料電池の様態は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されない。図3に示すように、MEAの概略を示す断面図をみれば、MEA131は、フィルム26と、このフィルム26を挟んで対向するアノード電極132及びカソード電極133とを備える。
アノード電極132は多孔質導電シート132aとフィルム26に接する触媒層132bとを有し、カソード電極133は多孔質導電シート133aとフィルム26に接する触媒層133bとを有する。多孔質導電シート132a、133aとしては、カーボンペーパー等がある。触媒層132b、133bは、白金粒子等の触媒金属を担持したカーボン粒子をプロトン伝導材料に分散させた分散物からなる。カーボン粒子としては、例えばケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ等があり、プロトン伝導材料としては、例えばナフィオン(登録商標)等がある。
MEA131の作り方としては、各種方法を適用することができる。
(1)プロトン伝導材料塗布法:活性金属担持カーボン、プロトン伝導材料、溶媒を含む触媒ペースト(インク)をフィルム26の両面に直接塗布し、多孔質導電シート132a、133aを塗布層に熱圧着して5層構成のMEA131を作製する。
(2)多孔質導電シート塗布法:触媒層132b、133bの材料を含んだ液、例えば触媒ペーストを、多孔質導電シート132a、133aの表面に塗布し、触媒層132b、133bを形成させた後、フィルム26と圧着し、5層構成のMEA131を作製する。
(3)Decal法:触媒ペーストをPTFE上に塗布し、触媒層132b、133bを形成させた後、フィルム26に触媒層132b、133bのみをうつし、3層構造を形成し、これに多孔質導電シート132a、133aを圧着し、5層構成のMEA131を作製する。
(4)触媒後担持法:白金未担持カーボン材料をプロトン伝導材料とともに混合したインクをフィルム26、多孔質導電シート132a、133aあるいはPTFE上に塗布・製膜した後、白金イオンを含む液にフィルム26を含浸させ、白金粒子をフィルム中で還元析出させて触媒層132b、133bを形成させる。触媒層132b、133bを形成させた後は、上記(1)〜(3)の方法にてMEA131を作製する。
(5)その他:触媒層132b、133bの材料を含んだ塗布液を予めつくり、この塗布液を支持体に塗布して乾燥する。触媒層132b、133bが形成された支持体を、触媒層12b、13bがフィルム26に接するようにフィルム26の両面にそれぞれ重ねて圧着する。そして、支持体を剥がしてから、触媒層132b、133bが両面に形成されたフィルム26を多孔質導電シート132a、133aで挟み込む方法を適用することにより、触媒層132b、133bをフィルム26に密着させてMEA131を作製する。
ただし、本発明では、フィルム製造工程後に触媒層132b、133bを連続して形成させたフィルムを製造することができるので、MEAの作り方として公知の上記の方法においける触媒層の形成工程を行う必要がない。したがって、固体電解質フィルムの製造から触媒層形成までを連続して行うことができる。そのため、製造時間の短縮および連続大量生産化を実現することができる等の効果を得ることができる。
図4に示すように、燃料電池の概略を示す断面図をみれば、燃料電池141は、MEA131と、MEA131を挟持する一対のセパレータ142、143と、これらのセパレータ142、143に取り付けられたステンレスネットからなる集電体146と、パッキン147とを有する。アノード極側のセパレータ142にはアノード極側開口部151が設けられ、カソード極側のセパレータ143にはカソード極側開口152が設けられている。アノード極側開口部151からは、水素、アルコール類(メタノール等)等のガス燃料またはアルコール水溶液等の液体燃料が供給され、カソード極側開口部152からは、酸素ガス、空気等の酸化剤ガスが供給される。
アノード電極132およびカソード電極133には、カーボン材料に白金等の活性金属粒子が担持された触媒が用いられる。通常用いられる活性金属の粒子サイズは、2〜10nmの範囲である。ただし、粒子サイズが小さいほど単位重量当りの表面積が大きくなるので活性が高まり有利であるが小さすぎると凝集させることなく分散させることが難しくなるために、2nm程度が小ささの限度といわれている。
水素−酸素系燃料電池における活性分極はアノード極、つまり水素極に比べ、カソード極、つまり空気極の方が大きい。これは、カソード極の反応、つまり酸素の還元反応の速度がアノード極に比べて遅いためである。酸素極の活性向上を目的として、Pt−Cr、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Cu、Pt−Fe等のさまざまな白金基二元金属を用いることができる。アノード燃料にメタノール水溶液を用いる直接メタノール燃料電池においては、メタノールの酸化過程で生じるCOによる触媒被毒を抑制するために、Pt−Ru、Pt−Fe、Pt−Ni、Pt−Co、Pt−Mo等の白金基二元金属、Pt−Ru−Mo、Pt−Ru−W、Pt−Ru−Co、Pt−Ru−Fe、Pt−Ru−Ni、Pt−Ru−Cu、Pt−Ru−Sn、Pt−Ru−Au等の白金基三元金属を用いることができる。活性金属を担持させるカーボン材料としては、アセチレンブラック、Vulcan XC−72、ケチェンブラック、カーボンナノホーン(CNH)、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましく用いられる。
触媒層132b、133bは、(1)燃料を活性金属に輸送すること、(2)燃料の酸化(アノード極)、還元(カソード極)反応の場を提供すること、(3)酸化還元により生じた電子を集電体146に伝達すること、(4)反応により生じたプロトンを固体電解質、つまりフィルム26に輸送すること、という機能をもつ。(1)のために触媒層132b、133bは、液体および気体燃料が奥まで透過できる多孔質性とされる。(2)についてはカーボン材料に担持される活性金属触媒が担い、(3)は同じくカーボン材料が担う。そして、(4)の機能を果たすために、触媒層132b、133bにプロトン伝導材料を混在させる。触媒層のプロトン伝導材料としては、プロトン供与基を持った固体であれば制限はないが、フィルム26に用いられるような酸残基を有する高分子化合物、例えばナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸、側鎖リン酸基ポリ(メタ)アクリレート、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾール等の耐熱性芳香族高分子のスルホン化物等が好ましく用いられる。フィルム26の材料とされる固体電解質を触媒層132b、133bに用いると、触媒層132b、133bとフィルム26とが同種の材料となるため、固体電解質と触媒層との電気化学的密着性が高まり、イオン伝導の点でより有利である。活性金属の使用量を0.03mg/cm〜10mg/cmの範囲とすることが、電池出力と経済性との観点から適する。活性金属を担持するカーボン材料の量は、活性金属の重量に対して1倍〜10倍であることが好ましい。プロトン伝導材料の量は、活性金属担持カーボンの重量に対して、0.1倍〜0.7倍が好ましい。
触媒層132b、133bは、電極基材、透過層、あるいは裏打ち材とも呼ばれ、集電機能および水がたまりガスの透過が悪化するのを防ぐ役割を担う。通常は、カーボンペーパーやカーボン布を使用し、撥水化のためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)処理を施したものを使用することもできる。
MEAは電池に組み込み、燃料を充填した状態での交流インピーダンス法による面積抵抗値が3Ωcm以下のものが好ましく、1Ωcm以下のものがさらに好ましく、0.5Ωcm以下のものが最も好ましい。面積抵抗値は実測の抵抗値とサンプルの面積の積から得られる。
燃料電池の燃料として用いることのできるものを説明する。アノード燃料としては、水素、アルコール類(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等)、エーテル類(ジメチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン等)、ギ酸、水素化ホウ素錯体、アスコルビン酸等が挙げられる。カソード燃料としては、酸素(大気中の酸素も含む)、過酸化水素等が挙げられる。
直接メタノール型燃料電池では、アノード燃料として、メタノール濃度が3重量%〜64重量%のメタノール水溶液が使用される。アノード反応式(CHOH+HO→CO+6H+6e)により、1モルのメタノールに対し、1モルの水が必要であり、この時のメタノール濃度は64重量%に相当する。メタノール濃度が高い程、同エネルギー容量での燃料タンクを含めた電池の重量および体積が小さくできる利点がある。しかしながら、メタノール濃度が高い程、メタノールが固体電解質を透過しカソード側で酸素と反応し電圧を低下させる、いわゆるクロスオーバー現象が顕著となり、出力が低下する傾向にある。そこで、用いる固体電解質のメタノール透過性により、最適濃度が決められる。直接メタノール型燃料電池のカソード反応式は、(3/2)O+6H+6e→HOであり、燃料として酸素(通常は空気中の酸素)が用いられる。
上記アノード燃料およびカソード燃料を、それぞれの触媒層132b、133bに供給する方法としては、(1)ポンプ等の補助機器を用いて強制的に送りこむ方法(アクティブ型)と、(2)補助機器を用いない方法、例えば、燃料が液体である場合には毛管現象や自然落下により、気体である場合には大気に触媒層をさらして供給するパッシブ型との2通りの方法があり、また、(1)と(2)とを組み合わせることも可能である。(1)は、カソード側で生成する水を抜き出すことにより、燃料として高濃度のメタノールを使用することができ、空気供給による高出力化ができる等の利点がある反面、燃料供給系を備える事により小型化がし難い欠点がある。(2)は、小型化が可能な利点がある反面、燃料供給が律速となり易く高い出力が出にくい欠点がある。
燃料電池の単セル電圧は一般的に1V以下であるので、負荷の必要電圧に合わせて、単セルを直列スタッキングして用いる。スタッキングの方法としては、単セルを平面上に並べる「平面スタッキング」および、単セルを、両側に燃料流路が形成されたセパレータを介して積み重ねる「バイポーラースタッキング」が用いられる。前者は、カソード極(空気極)が表面に出るため、空気を取り入れ易く、薄型にできることから小型燃料電池に適している。この他にも、MEMS技術を応用し、シリコンウェハー上に微細加工を施し、スタッキングする方法も提案されている。
燃料電池は、自動車用、家庭用、携帯機器用等の様々な利用が考えられているが、特に、直接メタノール型燃料電池は、小型、軽量化が可能であり充電が不要である利点を活かし、様々な携帯機器やポータブル機器用エネルギー源としての利用が期待されている。例えば、好ましく適用できる携帯機器としては、携帯電話、モバイルノートパソコン、電子スチルカメラ、PDA、ビデオカメラ、携帯ゲーム機、モバイルサーバー、ウエラブルパソコン、モバイルディスプレイな等が挙げられる。好ましく適用できるポータブル機器としては、ポータブル発電機、野外照明機器、懐中電灯、電動自転車等が挙げられる。また、産業用や家庭用等のロボットあるいはその他の玩具の電源としても好ましく用いることができる。さらには、これらの機器に搭載された2次電池の充電用電源としても有用である。
本発明の効果をより詳細に説明するため、本発明について行なった実施例について説明する。なお、以下では、製造条件等の詳細を実施例1で説明するものとし、その他の実施例では、実施例1と異なる条件のみを説明する。
本実施例では、化3に示す化合物を固体電解質として用いた。先ず、化3の未プロトン置換物、つまり固体電解質の前駆体である原料Aを溶媒に溶解させて、固形分濃度が20重量%であるドープを調製した。この溶媒は、原料Aの良溶媒である溶媒成分1と原料Aの貧溶媒である溶媒成分2とを使用した。なお、化3におけるXはNa、nは0.4、数平均分子量Mnは50000、量平均分子量Mwは120000である。
・原料A; 100重量部
・溶媒成分1;ジメチルスルホキシド 256重量部
・溶媒成分2;メタノール 171重量部
〔固体電解質フィルムの製造〕
図1に示すフィルム製造設備30を用いて固体電解質フィルム26を製造した。先ず、流延ダイ54からドープを走行する流延バンド53の上に吐出して流延膜24を形成させた。送風装置57a、57bから乾燥風を供給すると共に、加熱装置59により流延膜24の近傍を加熱し、更に、温度コントローラ61で流延室32の内部温度を45℃とすることにより、原料Aの固形分、つまり固体電解質に対して残留溶剤量が30重量%になるまで流延膜24を乾燥させた。乾燥時間は10分であった。乾燥を促進させた流延膜24を剥取ローラ33で支持しながら流延バンド53から剥ぎ取り湿潤フィルム25とした。
湿潤フィルム25を溶媒置換タンク37に送り、約30℃に保温した水中に5分間浸漬させた後、第1乾燥機38に送り込んだ。第1乾燥機38では、湿潤フィルム25の両側端部をクリップ38aで把持し搬送する間に、内部に取り付けられた送風装置から30℃の乾燥風を供給して乾燥を促進させた。なお、乾燥時間は60分とした。ここで、対面するクリップ38aの間隔を拡げると共に、搬送方向の速度を調整して、湿潤フィルム25に対して幅方向及び搬送方向の2方向が105%の延伸率となるように張力を付与した。この延伸率は、延伸前の湿潤フィルム25の長さを基準としたものである。
クリップ38aによる把持を解放した湿潤フィルム25を第1耳切装置39に送り、その両側端部を切断した。次に、湿潤フィルム25を酸処理タンク40に送り、約30℃に加熱保温した0.5モル/Lの硫酸を含む液に浸漬させた。そして、エアシャワ44で湿潤フィルム25の表面に付着する酸を吹き飛ばした後、100℃に煮沸させた温水を貯留する洗浄タンク46に湿潤フィルム25を送り、浸漬させた。なお、上記の酸処理及び温水処理には、いずれも120分を費やした。
湿潤フィルム25を第2乾燥機47に送り、湿潤フィルム25の両側端部をクリップ47aで把持した後、第1乾燥機38と同様に、湿潤フィルム25の延伸率が幅方向で105%、搬送方向で105%となるように2方向に張力を付与しながら乾燥を促進させた。ここでは、30℃の乾燥風を60分間供給し、原料Aの固形分、つまり固体電解質に対して残留溶剤量が15重量%になるまで湿潤フィルム25を十分に乾燥させてフィルム26とした。
フィルム26を第2耳切装置49に送り、フィルム26の両側端部を切断した後、巻取装置50で巻取りロール状のフィルムを得た。完成したフィルム26の膜厚は50μmであった。フィルム26の膜厚は、アンリツ電気社製の電子マイクロメーターを用いて600mm/分の速度にて連続的にフィルム26の厚みを測定した。測定により得られたデータは、縮尺1/20、チャート速度30mm/分にてチャート紙上に記録された。そして定規によりデータ曲線に関して計測を実施したのちに、その計測値を基に厚みの平均値(単位;μm)を求めた。
完成したフィルムをサンプルとして、吸水率(%)、膨潤率(%)、プロトン伝導度、及び燃料電池に利用したときの最大出力密度変化率(%)を求め、フィルム26の品質を評価した。各評価方法の詳細を以下に示す。
〔吸水率〕
完成したフィルムから10×10cmのサイズに切り出したものをサンプルとし、この25℃における重さM′(g)及び、このサンプルを25℃の水の中に一定時間浸漬させた後の重さM′′(g)をそれぞれ求める。そして、各値を下記式に代入することにより算出される値をサンプルの吸水率X′(%)とする。
式(3):X′(%)=(M′′/M′)×100
〔膨潤率〕
吸水率で作成したものと同じ形のサンプルを作成し、これを25℃の水に浸漬させる前後の面積を求める。そして、下記式に代入することにより得られる値をサンプルの膨潤率Y′(%)とする。なお、式中のW′は浸漬前の面積(cm)であり、W′′は浸漬後の面積(cm)である。
式(4):Y′(%)=(W′′/W′)×100
また、上記により得られる吸水率X′と膨潤率Y′とから、面積変化と吸水率との関係を表す指標としてX′/Y′を算出した。
〔プロトン伝導度〕
完成したフィルムのうち、その搬送方向に沿って1mおきに任意に選んだ10箇所を直径13mmの円形に打ち抜いてサンプルを作製した。次に、2枚のステンレス板で各サンプルを挟んだ後、ソーラトロン社1470、1255Bを用いて交流インピーダンス法により交流インピーダンス値(S/cm)を測定した。上記の交流インピーダンス値をプロトン伝導度として評価した。なお、測定は、相対湿度を95%とし、25℃及び70℃にサンプルを供して行なった。
〔燃料電池の出力密度〕
完成したフィルムを用いて燃料電池を作製し、その燃料電池の出力を測定した。ここで、I−V特性にて初期の最大出力密度をa(W/cm)、0.3Aを定電流として300時間連続して運転させたときの最大出力密度をb(W/cm)として、(b/a)×100で算出される値を最大出力密度変化率(%)として求めた。なお、燃料電池の作成方法及び出力密度の測定方法は後述の通りである。
〔燃料電池の作製〕
(1)触媒層とされる触媒シートAの作製
白金担持カーボン(VulcanXC72に白金50wt%が担持されたもの)2gと、ナフィオン溶液(登録商標デュポン(株))として5%アルコール水溶液を15gとを混合し、超音波分散器で30分間分散させた。分散物の平均粒子径は約500nmであった。得られた分散物を、補強材入りのポリテトラエチレンフィルム(サンゴバン(株)製)の上に塗設し、乾燥した後、直径9mmの円形に打ち抜いて触媒シートAを作製した。
(2)MEAの作製
完成したフィルムの両面に、塗膜が固体電解質フィルムに接するように触媒シートAを張り合わせ、210℃、3MPa、10分間で熱圧着し、圧力をかけたままで降温してから、触媒シートAの支持体を剥離することで順にMEAを作製した。
〔出力密度の測定〕
上記評価で得られたMEAに、電極と同じサイズにカットしたガス拡散電極(E−TEK製)を積層した後、このMEAを標準燃料電池試験セル(エレクトロケム社製)にセットした。そしてこの試験セルを燃料電池評価システム((株)エヌエフ回路設計ブロック製 As−510)に接続した。そして、アノード側に加湿した水素ガスを流し、一方のカソード側には加湿した模擬大気を流して電圧が安定するまで運転して、出力密度(W/cm)を測定した。
実施例2では、第2乾燥機47で湿潤フィルム25に付与する張力の大きさを変更して、搬送方向及び幅方向に対する延伸率を共に120%と変更した以外は、全て実施例1と同様にしてフィルムを作成した。
実施例3では、第1乾燥機38で湿潤フィルム25に付与する張力の大きさを変更して、搬送方向及び幅方向に対する延伸率をいずれも60%とし、更に、第2乾燥機47でも湿潤フィルム25に付与する張力の大きさを変更して、搬送方向及び幅方向に対する延伸率を120%とした以外は、全て実施例1と同様にしてフィルムを作成した。
〔比較例1〕
比較例1では、第1乾燥機38及び第2乾燥機47で湿潤フィルム25の両側端部を把持せずに複数のロールで支持しながら搬送することで、幅方向に張力を付与することなく(フリー状態)、搬送方向にのみ張力を付与した。第1乾燥機38では、搬送方向の延伸率を60%とし、第2乾燥機47では80%とした。なお、これ以外のフィルムの製造条件は、全て実施例1と同じである。
〔比較例2〕
比較例2では、第1乾燥機38及び第2乾燥機47で湿潤フィルム25の両側端部を把持せずに複数のロールで支持しながら搬送することで、幅方向に張力を付与することなく(フリー状態)、搬送方向にのみ張力を付与した。第1乾燥機38では、搬送方向の延伸率を120%とし、第2乾燥機47では90%とした。なお、これ以外のフィルムの製造条件は、全て実施例1と同じである。
実施例1〜3及び比較例1、2の延伸条件及び、完成したサンプルより得られる評価結果を表1に纏めて示す。
Figure 0005243051
図5は、各実施例で得られたフィルムの膨潤率と吸水率との相関図である。図中の記号のうち、●は実施例1、□は実施例2、○は実施例3、×は比較例1、△は比較例2をそれぞれ表す。
以上の結果から、溶剤を多く含んでいる湿潤フィルムを乾燥する際に、搬送方向及び幅方向に張力を付与して延伸率をコントロールすることにより、膨潤率が低いにも係らず、吸水率が高い固体電解質フィルムを製造することができることを確認した。また、固体電解質としてカチオン種を有するポリマーを使用し、湿潤フィルムをプロトン供与体である化合物に接触させてカチオン種を水素原子に置換させることで、プロトン伝導度の高いフィルムを得ることができることも分かった。
本発明に係るフィルム製造設備の一例を示す概略図である。 フィルムを枠張り乾燥する際に用いられる固定部材の一例の概略図である。 本発明に係るMEAの概略を示す断面図である。 本発明に係る燃料電池の概略を示す断面図である。 本実施例において作製した各フィルムの膨潤率と吸水率との相関図である。
符号の説明
30 フィルム製造設備
24 流延膜
25 湿潤フィルム
26 固体電解質フィルム
38 第1乾燥機
47 第2乾燥機

Claims (6)

  1. 両面に電極部材を密着させて燃料電池とされる固体電解質フィルムの製造方法において、
    溶剤と固体電解質であるカチオン種を有するポリマーとを含むドープを支持体の上に流延して流延膜を形成する工程と、
    前記流延膜を前記支持体から湿潤フィルムとして剥ぎ取る工程と、
    前記湿潤フィルムを乾燥手段により乾燥させる際に、前記湿潤フィルムの幅方向及び前記幅方向と直交する搬送方向の2方向に張力を付与する第1張力付与工程と、
    前記第1張力付与工程の後に行われ、前記湿潤フィルムをプロトン供与体である化合物に接触させて前記カチオン種を水素原子に置換するプロトン置換工程と、
    前記プロトン置換工程の後に行われ、前記湿潤フィルムを乾燥手段により乾燥させると共に、前記湿潤フィルムの幅方向及び前記幅方向と直交する搬送方向の2方向に張力を付与する第2張力付与工程とを有することを特徴とする固体電解質フィルムの製造方法。
  2. 把持手段で前記湿潤フィルムの両側端部を把持した後、対面する前記把持手段の間隔を変更することにより前記湿潤フィルムの幅方向に対して張力を付与し、
    前記把持手段の搬送速度を変更させることにより前記湿潤フィルムの搬送方向に対して張力を付与することを特徴とする請求項1に記載の固体電解質フィルムの製造方法。
  3. 前記プロトン置換工程と前記第2張力付与工程との間に行われ、前記湿潤フィルムを温水に接触させ膨潤させる工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の固体電解質フィルムの製造方法。
  4. 請求項1ないしいずれか1つに記載の製造方法により得られることを特徴とする固体電解質フィルム。
  5. 請求項に記載の固体電解質フィルムと、
    前記固体電解質フィルムの一方の面に密着して備えられ、外部から供給される水素原子含有物質からプロトンを発生するためのアノード電極と、
    前記固体電解質フィルムの他方の面に密着して備えられ、前記固体電解質フィルムを通過した前記プロトン及び外部から供給される気体からなる水を合成するカソード電極とを有することを特徴とする電極膜複合体。
  6. 請求項に記載の電極膜複合体と、
    前記アノード電極に接触して備えられ前記アノード電極と外部との電子の受け渡しをする第1の集電体と、
    前記カソード電極に接触して備えられ前記カソード電極と外部との電子の受け渡しをする第2の集電体とを有することを特徴とする燃料電池。
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