JP3001510B2 - 栽培用補助具 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、野菜、花卉などの
各種植物を栽培用地あるいは栽培容器において栽培する
際に使用する補助具に関する。

【０００２】

【従来の技術】野菜、花卉などの植物を栽培する場合、
栽培用地に形成された畝に沿って苗を植えて栽培する方
法、あるいは培土を充填した栽培容器に苗を植えて栽培
する方法などが用いられている。

【０００３】また、野菜類を栽培する場合などは、培土
を充填した育苗容器で播種および育苗を行い、適当な時
期が到来したら、これらの苗を栽培用地に形成された畝
に定植して、その後の栽培を行うという方法も採用され
ている。

【０００４】一方、近年においては、図８に示すよう
に、培土８２を充填した円筒状の栽培容器８０を地面８
１に多数立設させ、この培土８２において苺８３などの
栽培を行う方法も実施されている。この栽培方法は一般
に高設栽培方法などと呼ばれているが、地面に形成され
た畝で栽培する方法に比べ、培土使用量が少なくてすむ
ため、肥料や水などの使用量を低減することができる。
また、この高設栽培方法は、地面より高い位置において
栽培を行うため、栽培期間中における作業者の肉体的負
担を軽減することも可能である。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】苺、野菜、花卉などを
栽培する場合、その根は、地中にあって水分や養分など
を吸収するという重要な役割を果たすとともに、植物体
を支えるという機能も有している。したがって、地中に
ある根の生育状態は、地上部分にある茎や葉の成長、あ
るいは収穫物となる果実や花などの品質や収量を左右す
る重要な要素の一つである。このため、植物の根は、地
中において均等かつ広範囲に伸長していくことが望まし
い。

【０００６】ところが、従来の栽培容器の場合、栽培容
器を構成する素材は陶磁器やプラスチックなどの平滑で
緻密な材料であるため、培土中において伸長した根が容
器内周面に当接すると、そこで折れ曲がり、互いに絡み
合った状態となるか、内周面に沿って下向きに伸長して
いくこととなる。

【０００７】すなわち、図８に示すように、栽培容器８
０に充填された培土８２の中を伸長してきた根８４は、
容器内周面に当接して折れ曲がるため、互いに絡み合っ
て根巻き状態となるか、容器内周面に沿って下方へ伸長
していく。したがって、苺８３の根８４は、容器内周面
の近傍に集中した状態となる。

【０００８】このように、植物の根が、培土中の特定部
分に集中して、互いに絡み合った状態となると、根の健
全な伸長が阻害され、根としての機能も低下（不活性
化）するため、植物の成長に悪影響を及ぼしている。ま
た、根が特定部分に偏在した状態となると、培土中に存
在する水分や養分などの吸収能力が全体的に低下するた
め、収穫量の減少や収穫物の品質低下などが生じてい
る。特に、育苗過程においては、定植時の活着遅延の問
題が生じている。

【０００９】そこで、本発明が解決しようとする課題
は、栽培中の植物の根の絡み合いを防止することによっ
て根の成長を活性化することが可能であり、植物の生育
状態を向上させることが可能な栽培用補助具を提供する
ことにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者は、植物の根の
成長過程に関する研究を重ねた結果、従来の栽培方法に
おいては、根が栽培容器の内周面付近に多く偏在してい
るという現象を発見した。このことから、培土中におい
て根を螺旋状に誘引すること、および、栽培容器と培土
との境界にある空気層を増加させることによって、根の
成長状態が向上することを見いだし、この知見に基づい
て本発明を成すに至った。

【００１１】すなわち、本発明は、合成樹脂のシートま
たはフィルムで形成された容器状または袋状の収容部に
詰めた培土などの植物支持体に上端部を除き埋設して使
用する栽培用補助具であって、前記植物支持体の中に埋
設され植物根が沿いながら下方へ伸長するのを誘引する
螺旋状誘引部と、前記植物支持体の表面から露出するよ
うに屈曲させた形状の把持部とを備えたことを特徴とす
る。ここで、植物支持体とは、培土、ロックウールある
いはゲル状物質などのように、その中において植物根の
成長が可能で、植物体の姿勢を保持することができるも
のをいう。

【００１２】このような構成の栽培用補助具を埋設した
植物支持体において植物を栽培すると、植物支持体中を
伸長する植物根は、螺旋状誘引部に触れた後この螺旋状
誘引部に沿って伸長していくため、根長が長くなる。ま
た、植物支持体中において、螺旋状誘引部と植物支持体
との境界部分に、植物根が伸長可能な空隙が形成される
ため、植物根は、植物支持体中に散在する空気層に沿っ
て伸長するとともに、このような空隙に沿って伸長して
いくことができる。

【００１３】したがって、植物支持体中において、根の
絡み合いや特定部分への根の集中が発生せず、根の成長
が活性化され、これによって、水分や養分などの吸収能
力が高まるため、植物の生育状態が向上する。

【００１４】また、本発明の栽培用補助具を、植物支持
体とともに栽培容器などに収容することにより、植物支
持体の形状保持性が向上するため、柔軟なシート材など
で形成された栽培容器を使用する場合などに、充填した
植物支持体の重みや内圧によって発生しやすい栽培容器
の変形や崩壊を有効に防止することができる。

【００１５】さらに、定植作業などの場合、植物苗を植
物支持体と共に栽培容器から抜き取る必要があるが、本
発明の栽培用補助具を植物支持体中に埋設しておけば、
栽培用補助具を介して植物根と植物支持体とが一体化し
た状態となるため、植物支持体とともに植物を抜き取る
際の根の切損などを防止することができ、作業性も向上
する。

【００１６】また、本発明の栽培用補助具では、螺旋状
誘引部を複数備えた構造とすることができる。このよう
な構造とすることにより、螺旋状誘引部と植物支持体と
の境界に形成される空隙が増加するため、根を誘引する
機能がさらに高まり、健全な根の成長を図ることができ
る。

【００１７】さらに、本発明の栽培用補助具では、螺旋
状誘引部の外形を、略円筒状または略円錐状とすること
ができる。螺旋状誘引部の外形を略円筒状とすることに
より、水平方向への根の伸長を抑制しつつ、下方へ伸長
させることが可能となるため、土中深く根を張る性質の
ある植物を栽培する場合、あるいは縦長型の栽培容器を
使用して栽培する場合などに好適なものとなる。また、
螺旋状誘引部の外形を略円錐状とすることにより、末広
がり状態に根を伸長させることが可能となるため、根の
成長領域を拡大することができる。

【００１８】なお、本発明の栽培用補助具では、螺旋状
誘引部に、栽培中の植物の茎、蔓、ランナーなどを保持
できるようにすることが好ましい。

【００１９】また、本発明の栽培用補助具では、螺旋状
誘引部の上端には植物支持体の表面から露出するように
屈曲させた形状の把持部を備えているので、埋設した栽
培用補助具を植物支持体中から抜き取る場合、把持部を
手指などで把持して引き出すことができるようになるた
め、作業性が向上する。また、この把持部は、植物支持
体の表面から露出する屈曲形状であることから、たとえ
ば植物支持体の表面に沿って配管される給水管や給肥管
などをその所定の位置に係止する手段としても使用可能
である。

【００２０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図１は第１実施形態の栽培用補助
具を示す斜視図、図２は前記栽培用補助具の使用状態を
示す斜視図、図３は前記栽培用補助具の使用状態を示す
縦断面図、図４は前記栽培用補助具の使用状態を示す斜
視図である。

【００２１】本実施形態の栽培用補助具１０は、図１に
示すように、培土中で成長する植物根を誘引するための
螺旋状誘引部１１および屈曲形状の把持部１２を備え、
栽培容器１３などに充填した培土中に埋設して使用する
ものである。

【００２２】ここで、図２〜４を参照して、栽培用補助
具１０を実際に使用する場合について説明する。図２に
示すように、重ね合わせた２枚の合成樹脂フィルム１
４，１５を部分的に貼着することによって形成された複
数の培土収容部１６を備えた高設栽培装置１７が、地面
２１に形成された畝２２に沿って起立状態に保持されて
おり、栽培用補助具１０は培土収容部１６に充填した培
土１８中に埋設されるとともに、その把持部１２を培土
１８表面から露出させている。

【００２３】このように、栽培用補助具１０を埋設した
培土１８に苺苗１９を植えると、培土１８中を伸長する
根２０は、螺旋状誘引部１１に触れた後、この螺旋状誘
引部１１に沿って下方へ伸長していくため、根長が長く
なる。また、培土１８中において、螺旋状誘引部１１と
培土１８との境界部分に、根２０が伸長可能な空隙が形
成されるため、根２０は、培土１８中に散在する空気層
２３に沿って伸長するとともに、このような空隙に沿っ
て伸長していく。

【００２４】したがって、根２０の絡み合い、あるいは
培土収容部１６の内周面への根２０の集中が発生せず、
根２０の成長が活性化され、これによって、水分や養分
などの吸収能力が高まるため、定植後の活着も良好とな
り、苺苗１９の生育状態が向上する。

【００２５】また、栽培用補助具１０を、培土１８とと
もに培土収容部１６に収容することにより、培土１８の
形状保持性が向上するため、合成樹脂シート材で形成さ
れた培土収容部１６が、充填した培土１８の重みや土圧
によって変形したり、破損することがない。

【００２６】さらに、栽培用補助具１０では、螺旋状誘
引部１１の外形を略円筒状としているため、水平方向へ
の根２０の伸長を抑制しつつ、培土収容部１６の下方に
向かって螺旋を描くように伸長させることが可能である
ため、直線的に伸長する場合よりも根長が長くなり、こ
れによって、水分や養分の吸収能力が増大し、深耕栽培
と同様の効果が得られる。

【００２７】また、栽培用補助具１０では、螺旋状誘引
部１１の上端を屈曲させて把持部１２を形成しているた
め、埋設した栽培用補助具１０を培土１８中から抜き取
る場合、把持部１２を手指などで把持して引き出すこと
により、容易に抜き取ることができる。なお、把持部１
２は、図４に示すように、苺苗１９に水や液肥などを供
給するために配管される給水管１９ａを所定位置で係止
する手段として利用することもできる。なお、把持部１
２は、苺苗１９の育苗段階などにおいて、ランナーを保
持するために使用することも可能である。

【００２８】なお、栽培用補助具１０の場合、螺旋状誘
引部１１は１条のみであるが、螺旋状誘引部１１を複数
条備えたものとすることもできる。螺旋状誘引部１１を
複数条備えることによって、螺旋状誘引部１１と培土１
８との境界に形成される空隙が増加するため、苺苗１９
の根２０を誘引する機能が高まり、根２０の成長をさら
に活性化することができる。この場合、複数の螺旋状誘
引部１１の螺旋方向を互いに逆とした構造、あるいは螺
旋方向を同方向とした構造のいずれをも採用することが
できる。

【００２９】ここで、図５を参照して、第２実施形態の
栽培用補助具について説明する。図５は第２実施形態の
栽培用補助具の使用状態を示す斜視図である。

【００３０】本実施形態の栽培用補助具５０の場合、栽
培用補助具１０と同様、培土１８中に螺旋状誘引部５１
を埋設するとともに、螺旋状誘引部５１の上端に形成さ
れた支持部５２を培土１８の表面から露出させている。
栽培用補助具５０は、支持部５２を有しているため、苺
苗１９の育苗段階においてランナーなどを係止するため
に使用することが可能であるが、図５に示すように、苺
苗１９の配列に沿って配管される給水管１９ａなどを支
持する手段として利用することも可能である。なお、螺
旋状誘引部５１の構造や機能などについては、栽培用補
助具１０の螺旋状誘引部１１と同様である。

【００３１】次に、図６を参照して、第３実施形態の栽
培用補助具について説明する。図６は第３実施形態の栽
培用補助具の使用状態を示す斜視図である。

【００３２】本実施形態の栽培用補助具６０は、螺旋状
誘引部６１と把持部６２とを備えている。栽培用補助具
６０の場合、図６（ａ）に示すように、合成樹脂シート
で形成された柔軟な袋体６３の中に培土６４と共に収容
することによって、袋体６３を起立状態に保持すること
が可能となるため、図６（ｂ）に示すように、培土６４
中において植物苗６５の育苗などを行うことができる。

【００３３】育苗期間が終了した後の定植作業の場合、
植物苗６５を培土６４と共に袋体６３から抜き取る必要
があるが、栽培用補助具６０の把持部６２を手指などで
把持して、回しながら引っ張ることにより、培土６４と
共に植物苗６５を袋体６３から簡単に抜き取ることがで
きる。この場合、栽培用補助具６０を培土６４中に埋設
することによって、栽培用補助具６０を介して植物苗６
５の根と培土６４とが一体化した状態となっているた
め、植物苗６５の根の切損などが発生することはなく、
作業性も良好である。

【００３４】次に、図７を参照して、第４実施形態の栽
培用補助具について説明する。図７は第４実施形態の栽
培用補助具を示す斜視図である。

【００３５】本実施形態の栽培用補助具７０は、外形が
略円錐状をした螺旋状誘引部７１と把持部７２とを備え
ており、栽培用補助具１０と同様、栽培容器７３に充填
された培土（図示せず）に埋設して使用するものであ
る。栽培用補助具７０の場合、螺旋状誘引部７１の外形
が略円錐状であるため、植物の根は螺旋状誘引部７１に
沿って末広がり状態に伸長するため、根の成長領域を広
範囲に拡大することが可能であり、これによって、水分
や養分の吸収能力が向上するため、植物の成長状態を活
性化させることができる。

【００３６】なお、本発明の栽培用補助具は、これまで
述べてきた実施の形態に限定するものではないので、従
来から使用されている各種栽培容器や図８に示すような
栽培容器８０などにおいて利用することが可能であり、
そのほかの高設栽培法において用いられている栽培容器
などにおいても採用することができる。

【００３７】

【発明の効果】本発明により、以下の効果を奏すること
ができる。

【００３８】（１）植物支持体中で成長する植物根を誘
引するための螺旋状誘引部を備えたことにより、栽培用
補助具を埋設した植物支持体で植物を栽培した場合、植
物支持体中を伸長する植物根は螺旋状誘引部に沿って伸
長するようになり、根の絡み合いや特定部分への根の集
中が発生せず、根の成長が活性化されるため、これによ
って、水分や養分などの吸収能力が高まり、植物の生育
状態が向上する。

【００３９】（２）栽培用補助具を植物支持体中に埋設
することにより、植物支持体の形状保持性が向上するた
め、柔軟なシート材などで形成された栽培容器を使用す
る場合でも、充填した植物支持体の重みや内圧に起因す
る栽培容器の変形や崩壊を防止ことができる。

【００４０】（３）栽培用補助具を植物支持体中に埋設
することにより、栽培用補助具を介して植物支持体と植
物根とが一体化するため、定植作業などの場合、植物支
持体と植物とが分離しないように抜き取ることが可能と
なるため、根の切損などを防止することができ、作業性
も向上する。

【００４１】（４）螺旋状誘引部を複数備えた構造とす
ることにより、植物支持体中へ埋設した場合に、螺旋状
誘引部と植物支持体との境界に形成される空隙が増加す
るため、根を誘引する機能がさらに高まり、健全な根の
成長を図ることができる。

【００４２】（５）螺旋状誘引部の外形を略円筒状とす
ることにより、水平方向への根の伸長を抑制しつつ、下
方へ伸長させることが可能となるため、土中深く根を張
る性質のある植物を栽培する場合、あるいは縦長型の栽
培容器を使用して栽培する場合などに好適なものとな
る。また、螺旋状誘引部の外形を略円錐状とすることに
より、末広がり状態に根を伸長させることが可能となる
ため、根の伸長領域が拡大して、植物の成長状態が活性
化される。

【００４３】（６）螺旋状誘引部の上端に、屈曲形状の
把持部を形成することにより、埋設した栽培用補助具を
植物支持体中から抜き取る場合、把持部を手指などで把
持して引き出すことができるようになるため、作業性が
向上する。

【００４４】（７）螺旋状誘引部の上端に設けた屈曲形
状の把持部は植物支持体の表面から露出するので、植物
支持体の表面に沿って配管した給水管や給肥管を把持部
で所定の位置に係止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１実施形態の栽培用補助具を示す斜視図であ
る。

【図２】図１に示す栽培用補助具の使用状態を示す斜視
図である。

【図３】図１に示す栽培用補助具の使用状態を示す縦断
面図である。

【図４】図１に示す栽培用補助具の使用状態を示す斜視
図である。

【図５】第２実施形態の栽培用補助具の使用状態を示す
斜視図である。

【図６】第３実施形態の栽培用補助具の使用状態を示す
斜視図である。

【図７】第４実施形態の栽培用補助具を示す斜視図であ
る。

【図８】従来技術を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１０，５０，６０，７０ 栽培用補助具 １１，５１，６１，７１ 螺旋状誘引部 １２，６２，７２ 把持部 １３，７３ 栽培容器 １４，１５ 合成樹脂フィルム １６ 培土収容部 １７ 高設栽培装置 １８，６４ 培土 １９ 苺苗 １９ａ 給水管 ２０ 根 ２１ 地面 ２２ 畝 ２３ 空気層 ５２ 支持部 ６３ 袋体 ６５ 植物苗

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 合成樹脂のシートまたはフィルムで形成
   された容器状または袋状の収容部に詰めた培土などの植
   物支持体に上端部を除き埋設して使用する栽培用補助具
   であって、前記植物支持体の中に埋設され植物根が沿い
   ながら下方へ伸長するのを誘引する螺旋状誘引部と、前
   記植物支持体の表面から露出するように屈曲させた形状
   の把持部とを備えたことを特徴とする栽培用補助具。
2. 【請求項２】 前記螺旋状誘引部の外形が、略円筒状ま
   たは略円錐状である請求項１記載の栽培用補助具。