JP2997723B2 - 糞便中のヒトヘモグロビンの検出方法 - Google Patents

糞便中のヒトヘモグロビンの検出方法

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JP2997723B2 JP5723591A JP5723591A JP2997723B2 JP 2997723 B2 JP2997723 B2 JP 2997723B2 JP 5723591 A JP5723591 A JP 5723591A JP 5723591 A JP5723591 A JP 5723591A JP 2997723 B2 JP2997723 B2 JP 2997723B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗ヒトヘモグロビン抗
体を用いて、糞便中のヒトヘモグロビンを免疫学的に高
感度に検出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、大腸癌等の下部消化器の疾患を検
査する方法として、消化器管からの出血に起因する糞便
中の潜血成分、特に、ヒトヘモグロビンを検出すること
が広く行なわれている。かかる方法の一つとして、食品
摂取や薬剤投与の制限を必要としない抗ヒトヘモグロビ
ン抗体を用いる免疫学的な検出方法が従来より広く行な
われている。
【0003】このような免疫学的な検出方法としては、
例えば、寒天板内での抗ヒトヘモグロビン抗体と被検液
中のヒトヘモグロビンとの沈降線を利用してヘモグロビ
ンを検出する一次元免疫拡散法、動物血球に抗ヒトヘモ
グロビン抗体を感作したものと被検液とを混合して生じ
る沈降現象像を利用して検出する逆受身血球凝集法、高
分子ラテツクス粒子に抗ヒトヘモグロビン抗体を感作し
たものと被検液を混合して生じる凝集像を利用して検出
するラテツクス凝集法、酵素や放射性同位元素で標識し
た抗ヒトヘモグロビン抗体を利用する酵素免疫法等が知
られている。
【0004】これらの検出方法においては、被検物質で
あるヒトヘモグロビンは、通常、溶解液状で検査に供さ
れる。即ち、例えば、便潜血検査では、最初の操作とし
て、糞便を生理食塩水や緩衝液等の溶解液中に溶解し、
糞便中のヒトヘモグロビンを溶解液状態とする。上記溶
解液としては、次の操作において、抗原抗体反応を利用
してヒトヘモグロビンを検出することを考慮して、抗原
抗体反応に適する中性乃至弱アルカル性(pH7.0〜8.
2)のpH緩衝液やpH緩衝能のない生理食塩水等が用いら
れる。
【0005】ヒトヘモグロビンの構造は、例えば、ヘモ
グロビンAでは、アミノ酸141個からなるα鎖とアミ
ノ酸146個からなるβ鎖と呼ばれるポリペプチドのそ
れぞれ2個からなる四量体であり、これらが立体的に配
置されている。このような構造のヒトヘモグロビンは、
糞便溶解液中で徐々に変性するために、従来、知られて
いる免疫学的方法によれば検出感度が著しく低い。特
に、被検液中の糞便濃度が高い場合には、上記ヒトヘモ
グロビンの変性が著しく、診断上、意義のある低濃度領
域での検出が困難となる。
【0006】一方、便潜血検査では、検査員の手間や不
快感を少なくするために、被検者自身が自宅等にて糞便
中に含まれるヒトヘモグロビンを溶解液状態にする場合
があり、このような場合は、糞便は溶解液状態で数日間
放置されることも多い。また、検査員がヒトヘモグロビ
ンを溶解液状態にした場合でも、作業の都合上、検査ま
でに数時間放置される場合もあり、このような放置状態
では、前述したようにヒトヘモグロビンの変性が起こる
ので好ましくない。
【0007】また、酵素免疫法のような検出方法を採用
した場合は、高温度下に数分間上記溶解液をインキユベ
ートすることがあり、同様に、ヒトヘモグロビンの変性
のために正確な検出が困難となる。このように、糞便中
のヒトヘモグロビンを溶解液状態とした後、検査される
までの間にヒトヘモグロビンが変性するのを防止するた
めに、例えば、ウシ血清アルブミンや糖類等を上記溶解
液に加えることも行なわれているが、ヒトヘモグロビン
の変性は十分に防止されない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の糞便
中に含まれるヒトヘモグロビンの検出における上記した
ような問題を解決するためになされたものであつて、糞
便を含有する被検液中に存在するヒトヘモグロビンの放
置下での変性を防止しつつ、高感度で正確にヒトヘモグ
ロビンを検出する方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、糞便中のヒト
ヘモグロビンを溶解液状態として被検液とし、このヒト
ヘモグロビンを抗ヒトヘモグロビン抗体を用いて検出測
定する方法において、糞便をpH4.5〜5.5の酸性の緩衝
液に溶解して酸性の被検液とし、測定の操作に至るま
、この被検液のpHを酸性に保持し、測定時に被検液を
中性に戻すことを特徴とする。
【0010】本発明の方法において、被検体としてのヒ
トヘモグロビンを含有する糞便を溶解するための液とし
ては、例えば、グリシン−塩酸緩衝液、酢酸緩衝液や、
グツド緩衝液等、酸性領域でpH緩衝能を示す緩衝剤が用
いられる。緩衝液のpHは3〜6、好ましくは4.5〜5.5
の範囲である。このように、本発明に従つて、緩衝液の
pHを酸性にすることによつて、ヒトヘモグロビンが安定
化する理由は明らかではないが、糞便中の成分によるヒ
トヘモグロビンの変性が阻害されるものと考えられる。
pHが3以下の強酸性であるときは、ヒトヘモグロビン自
体がpHによる変性を受けるため好ましくない。また、ア
ルカリ性(pH9〜11)のときも同様である。
【0011】緩衝剤の濃度は、特に限定されるものでは
ないが、通常、5〜100mmol/lの範囲内にあること
が望ましい。濃度が余りに低すぎるときは、糞便の溶解
液のpHを酸性に保つに十分でなく、余りに高すぎるとき
は、次のヒトヘモグロビンの検出操作のために、pHを中
性に戻すことが困難となる。本発明においては、緩衝液
中に生理食塩濃度近傍の食塩を添加することが好まし
い。また、細菌などによるヒトヘモグロビンの変性を抑
制するために、0.05〜0.5重量%濃度のアジ化ナトリ
ウム等の抗菌剤を添加することが好ましい。また、適
時、アルブミン等の蛋白を添加してもよい。
【0012】一般に、抗原抗体反応を実施するには、被
検液のpHが中性であることが望ましい。そこで、本発明
の方法においては、次いで、上記した酸性状態である被
検液にpH緩衝剤を加えて、そのpHを中性として、ヒトヘ
モグロビン検出のための被検液を調整する方法か、又は
試薬中にpH緩衝能を強くもたせる方法をとる。上記pH緩
衝剤としては、リン酸系、トリス系、ホウ酸系等の緩衝
液を用いることができる。pH緩衝剤の濃度は、用いた便
溶解用緩衝液との組み合わせを考慮して、混合後のpHが
中性を示すように選択される。pH緩衝剤は、測定直前に
被検液と混合するか、又は試薬中に配合すればよい。
【0013】本発明の方法において、ヒトヘモグロビン
を検出するには、従来から知られている抗ヒトヘモグロ
ビン抗体を用いた免疫学的検出方法が採用できる。ラテ
ツクス凝集法を利用した検出方法について例示すれば、
精製したヘモグロビンAを抗原として、ウサギ、ヤギ等
の動物に免疫した後、採血、精製して、抗ヒトヘモグロ
ビン抗体を得る。この抗体を中性pHにてポリスチレンラ
テツクス(粒径0.3μm)と混合し、数時間吸着反応さ
せた後、ウシ血清アルブミン及び食塩を含む緩衝液等で
遠心分離精製を行なつて、抗ヒトヘモグロビン抗体感作
ラテツクスを得る。本発明においては、この抗ヒトヘモ
グロビン抗体感作ラテツクス中にpH緩衝剤を配合して、
これをラテツクス試薬とする。次に、このラテツクス試
薬と被検液とをガラス板上で攪拌混合し、数分後にラテ
ツクスが凝集を起こすか否かによつて、ヒトヘモグロビ
ンを定性的に検出することができる。
【0014】また、酵素免疫法によるときは、抗ヒトヘ
モグロビン抗体を感作したマイクロプレートのウエルに
被検液及びpH緩衝剤を加え、一定時間加温した後、各ウ
エルを洗浄し、更に、酵素で標識した抗ヒトヘモグロビ
ン抗体を添加する。一定時間加温した後、再度洗浄を行
ない、酵素基質発色液を各ウエルに加え、呈色の度合か
ら被検液中のヒトヘモグロビンの量を測定する。
【0015】
【発明の効果】以上のように本発明の方法によれば、検
査まで糞便を酸性の溶解液状態とすることによつて、ヒ
トヘモグロビンが変性せず、かくして、検査まで長時間
放置されても、高感度にヒトヘモグロビンを検出するこ
とができる。
【0016】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。 実施例1 (pH緩衝剤の調製)0.2 mol/lトリス(ヒドロキシメ
チル)アミノメタン、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1
%アジ化ナトリウム及び0.9%塩化ナトリウムからなる
水溶液を調製し、これを1N水酸化ナトリウム水溶液に
てpH8.0に調整した。 (抗ヒトヘモグロビン抗体感作ラテツクスの調製)5%
カルボキシル化ポリスチレンラテツクス10mlに1mg/
mlの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミド10mlを加え、20分間攪拌しながら反
応させた後、0.01 mol/lホウ酸緩衝液(pH8.0)で
2回遠心分離精製した。
【0017】このラテツクス(濃度5%)10mlに、精
製ヒトヘモグロビンをウサギに免疫して調製した抗ヒト
ヘモグロビン抗体(ウサギIgG、濃度5mg/ml)7ml
を加え、5時間ゆつくりと攪拌しながら反応させ、更
に、0.1%ウシ血清アルブミンを含む0.01 mol/lホ
ウ酸緩衝液(pH8.0)25mlで3回遠心分離精製し、抗
ヒトヘモグロビン抗体感作ラテツクス(2%液)を得
た。 (ラテツクス試薬の調製)上記pH緩衝剤と抗ヒトヘモグ
ロビン抗体感作ラテツクスを4:1で混合し、ラテツク
ス試薬を調製した。 (便溶解用緩衝液の調製とヒトヘモグロビンの検出)5
mmol/l酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液に0.9%塩化ナト
リウム、0.05%アジ化ナトリウム及び0.2%ウシ血清
アルブミンを加え、pHを5.5に調整した。この緩衝液に
健常人便を4mg/mlになるように溶解し、更に、ヒトヘ
モグロビンが所定濃度になるように溶解、希釈した。こ
の溶液50μlにラテツクス試薬50μlを滴下し、ガ
ラス板上で混合、攪拌を行なつて、10分後の凝集の有
無を観察した。
【0018】更に、このヒトヘモグロビン希釈液を25
℃で6日間静置した後、同様にヒトヘモグロビンの検出
試験を実施した。結果を表1に示す。 実施例2 (ラテツクス試薬の調製)実施例1で調製した抗ヒトヘ
モグロビン抗体感作ラテツクスを0.1%ウシ血清アルブ
ミンを含む0.01 mol/lホウ酸緩衝液(pH8.0)で倍
に希釈して、ラテツクス試薬を調整した。 (便溶解用緩衝液の調製とヒトヘモグロビンの検出)1
0mmol/lグリシン塩酸緩衝液に0.9%塩化ナトリウ
ム、0.05%アジ化ナトリウム及び0.2%ウシ血清アル
ブミンを加え、pHを4.5に調整した。この緩衝液に健常
人便を4mg/mlになるように溶解し、更に、ヒトヘモグ
ロビンが所定濃度になるように溶解、希釈し、ガラス板
上でこの溶液50μlに実施例1で作製したpH緩衝剤5
0μlを加え、更に、ラテツクス試薬25μlを加えた
後、混合、攪拌を行なつて、10分後の凝集の有無を観
察した。
【0019】更に、このヒトヘモグロビン希釈液を25
℃で6日間静置した後、同様にヒトヘモグロビン検出試
験を実施した。結果を表2に示す。 比較例1 (便溶解用緩衝液の調製とヒトヘモグロビンの検出)1
0mmol/lトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−
塩酸緩衝液に0.9%塩化ナトリウム、0.05%アジ化ナ
トリウム及び0.2%ウシ血清アルブミンを加え、pHを8.
0に調整した。この緩衝液に健常人便を4mg/mlになる
ように溶解し、更に、ヒトヘモグロビンが所定濃度にな
るように溶解、希釈し、ガラス板上でこの溶液50μl
と上記緩衝液50μlを混合し、更に、実施例2で作製
したラテツクス試薬25μlを滴下し、混合、攪拌し
て、10分後の凝集の有無を観察した。
【0020】更に、このヒトヘモグロビン希釈液を25
℃で6日間静置した後、同様にヒトヘモグロビン検出試
験を実施した。結果を表3に示す。尚、表1、2及び3
において、凝集の判定基準は次のとおりである。 ++:非常に強い凝集がみられる。 +:強い凝集がみられる。
【0021】±:弱い凝集がみられる。 −:凝集がみられない。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中作 直美 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日 東電工株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−246667(JP,A) 特開 昭63−289453(JP,A) 特開 昭63−38163(JP,A) 特開 昭63−200064(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/53 G01N 33/50 G01N 33/531 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】糞便中のヒトヘモグロビンを溶解液状態と
    して被検液とし、このヒトヘモグロビンを抗ヒトヘモグ
    ロビン抗体を用いて検出測定する方法において、糞便を
    pH4.5〜5.5の酸性の緩衝液に溶解して酸性の被検液と
    し、測定の操作に至るまで、この被検液のpHを酸性に保
    持し、測定時に被検液を中性に戻すことを特徴とする糞
    便中のヒトヘモグロビンの検出方法。
  2. 【請求項2】酸性の被検液にpH緩衝剤を加えて中性に戻
    すことを特徴とする請求項1記載の糞便中のヒトヘモグ
    ロビンの検出方法。
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