JP2991721B2 - 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置 - Google Patents

抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置

Info

Publication number
JP2991721B2
JP2991721B2 JP1087732A JP8773289A JP2991721B2 JP 2991721 B2 JP2991721 B2 JP 2991721B2 JP 1087732 A JP1087732 A JP 1087732A JP 8773289 A JP8773289 A JP 8773289A JP 2991721 B2 JP2991721 B2 JP 2991721B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
receptor antibody
adsorbent
compound
water
stimulating hormone
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP1087732A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH02265566A (ja
Inventor
洋子 永野
敍孝 谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP1087732A priority Critical patent/JP2991721B2/ja
Publication of JPH02265566A publication Critical patent/JPH02265566A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2991721B2 publication Critical patent/JP2991721B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • External Artificial Organs (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は体液から有害な成分を吸着除去するための吸
着体およびそれを用いた除去装置に関する。さらに詳し
くは体液中より抗甲状腺刺激ホルモンレセプター(以
下、抗TSHレセプターという)抗体を除去し、自己免疫
疾患を抑制するための吸着体およびそれを用いた抗TSH
レセプター抗体の除去装置に関する。
〔従来の技術および発明が解決しようとする課題〕 自己免疫疾患は、その名称のごとく自己の組織の構成
成分に対する抗体が出現する疾患である。
代表的な自己免疫疾患である、自己免疫性甲状腺疾患
においては、TSH(甲状腺刺激ホルモン)レセプター対
する抗体の出現がみられる。これらの抗体はポリクロー
ナルであり、TSHレセプターへの結合部位も様々で機能
も異なる。レセプターに結合することにより甲状腺機能
を亢進する抗体を甲状腺刺激抗体(TSAb、thyroid stim
ulating antibody)、TSHレセプターへのTSHの結合を阻
害する抗体を甲状腺結合阻害抗体(TBII、thyroid bind
ing inhibitory immunoglobulin)と呼ばれている。
甲状腺機能が亢進されると血中における甲状腺ホルモ
ンが過剰になるため、これに基づく種々の臨床症状、す
なわち甲状腺中毒症が発現する。
また、TSHレセプターへのTSHの結合が阻害されると甲
状腺ホルモンの合成と分泌が障害されてT4、T3の血中濃
度を正常に維持できず、その結果種々の症状が現われ、
甲状腺機能の低下を呈する。
これらの症状の改善には抗TSHレセプター抗体の除去
が有効と思われる。自己免疫性甲状腺疾患の従来の治療
法としては、抗甲状腺剤(ステロイド剤)の投与、放射
性ヨード法、手術による甲状腺の摘出などがある。この
中で、ステロイドには副作用があり、また長期にわたる
薬剤投与は、薬剤耐性を生じるなどの問題もある。
また、放射性ヨード法は、特定の施設でしか使えな
い、発癌性の可能性や、遺伝子への影響が考えられる等
の問題点がある。
一方、手術による甲状腺の摘出により永続的な甲状腺
機能低下症を引き起こすこともある。
以上のことを考えると、病態の大きな要因となってい
る抗TSHレセプター抗体を血中から除去する方法が、治
療法としては有効であると考えられる。
本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意研究を重ねた結
果、体液中の有効成分をほとんど失うことなく抗TSHレ
セプター抗体を選択的に吸着しうる吸着体を見出し、本
発明を完成するに至った。
〔課題を解決するための手段〕
すなわち本発明は、水不溶性多孔質担体にアニオン性
官能基を有する化合物が固定されてなる抗TSHレセプタ
ー抗体の吸着体ならびに流体の流入口および流出口を有
する容器、流体および該流体に含まれる成分は通過でき
るが、前記の抗TSHレセプター抗体の吸着体は通過でき
ないフィルター、および前記容器内に充填された前記抗
TSHレセプター抗体の吸着体からなる抗TSHレセプター抗
体の除去装置に関する。
〔実施例〕
本明細書において体液とは血液、血漿、血清、腹水、
リンパ液、関節内液およびこれらからえられた分画成
分、ならびにその他の生体由来の液性成分をいう。
本発明において水不溶性多孔質担体とは、アニオン性
官能基を有する化合物を固定するための水に溶解しない
性質を有する物質をいう。本発明に用いる水不溶性多孔
質担体は、大きな径の連続した細孔を有するものが好ま
しい。すなわち抗TSHレセプター抗体は、おもにIgG(免
疫グロブリンG)であり、分子量が約16万の巨大分子な
ので、これを効率よく吸着するためには、この分子が容
易に多孔質体内に侵入しうることが必要である。
細孔径の測定方法には種々あり、水銀圧入法がもっと
もよく用いられているが、親水性多孔質体のばあいには
適用が難しい。これに変わる細孔径の目安として排除限
界分子量がよく用いられ、親水性多孔質体、疎水性多孔
質体のいずれも適用できる。排除限界分子量とは成書
(たとえば波多野博之、花井俊彦著、実験高速液体クロ
マトグラフィー、化学同人)などに述べられているごと
く、ゲル浸透クロマトグラフィーにおいて細孔内に侵入
できない(排除される)分子のうちもっとも小さい分子
量をもつ物の分子量をいう。
排除限界分子量は、対象とする化合物により異なるこ
とが知られており、一般に球状蛋白質、デキストラン、
ポリエチレングリコールなどについてよく調べられてい
るが本発明に用いる担体のばあい、抗TSHレセプター抗
体にもっとも類似していると思われる球状蛋白質を用い
てえられた値を用いるのが適当である。
排除限界の異なる種々の水不溶性多孔質担体を用いて
検討した結果、抗TSHレセプター抗体の吸着に適当な細
孔径の範囲は、10万以上6000万以下であることが明らか
になった。すなわち10万未満の排除限界分子量をもつ水
不溶性多孔質担体を用いたばあいには抗TSHレセプター
抗体の吸着量は小さく実用に耐えない。一方排除限界分
子量が大きくなるにつれて、抗TSHレセプター抗体の吸
着量は増加するがやがて頭打ちとなり、排除限界分子量
が6000万をこえると表面積が少なすぎ吸着量は目だって
低下するばかりでなく、目的とする抗TSHレセプター抗
体以外の吸着、すなわち非特異吸着が増加し選択性がい
ちじるしく低下する。
したがって本発明に用いる水不溶性多孔質担体の好ま
しい排除限界分子量は10万以上6000万以下であり、さら
に好ましくはより選択性吸着容量を大きくするために10
0万以上2000万以下であるのがよい。
つぎに水不溶性多孔質担体の多孔構造については表面
多孔性よりも全多孔性が好ましく、空孔容積が吸着容量
が大きいという点から20%以上であることが望ましい。
水不溶性多孔質担体の形状は、、粒状、球状、繊維状、
膜状、ホローファイバー状など任意の形状を選ぶことが
できる。粒状の水不溶性多孔質担体を用いるばあい、そ
の粒径は1μm未満のばあい圧力損失が大きく、5000μ
mをこえるばあい吸着容量が小さい点から1μm以上50
00μm以下であるのが好ましい。
本発明に用いる水不溶性多孔質担体は有機性、無機性
いずれであってもよいが、目的とする抗TSHレセプター
抗体以外の体液成分の吸着(いわゆる非特異吸着)の少
ないものが好ましい。親水性であるほうが非特異吸着が
少ないので水不溶性多孔質担体は水性であるよりも、親
水性であるほうが好ましい。
さらに、水不溶性多孔質担体表面には、リガンドの固
定化反応に用いうる官能基が存在していると好都合であ
る。これらの官能基の代表例としては、水酸基、アミノ
基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラ
ノール基、アミド基、エポキシ基、ハロゲン基、スクシ
ニルイミド基、酸無水物基などがあげられるが、これら
に限定されるわけではない。また、水不溶性多孔質担体
は前記官能基のなかでも水酸基を有する化合物よりなる
ものであるばあい非特異吸着が少ないので、とくに好ま
しい。これら官能基をスペーサとして導入された水不溶
性多孔質担体も用いうることはいうまでもない。
本発明に用いる水不溶性多孔質担体の代表例として
は、アガロール、デキストラン、ポリアクリルアミドな
どの軟質多孔質体、多孔質ガラス、多孔質シリカゲルな
どの無機多孔質体、ポリメチルメタクリレート、ポリビ
ニルアルコール、スチレン、ジビニルベンゼン共重合体
などの合成高分子および/またはセルロースなどの天然
高分子を原料とする多孔質ポリマーハードゲルなどがあ
げられることがこれらに限定されるわけではない。
本発明の吸着体を体外循環治療に用いる際には、血
液、血漿のごとき高粘性流体を高速で流す必要があるた
めに、圧密化を引き起こさない充分な機械的強度を有す
る硬質水不溶性多孔質担体を用いるのが好ましい。すな
わち硬質水不溶性多孔質担体とは後記参考例に示すごと
く、水不溶性多孔質担体を円筒状カラムに均一に充填
し、水性流体を流通したばあいの圧力損失と流速との関
係が少なくとこ0.3kg/cm2まで直線関係にあるものをい
う。
本発明の吸着体のアニオン性官能基は、pHが中性付近
で負に帯電するような官能基であればいかなるものも使
用しうる。これらの代表例としては、カルボキシル基、
スルホン酸基、スルホン基、硫酸エステル基、シラノー
ル基、リン酸エステル基、フェノール性水酸基などがあ
げられるがこれらに限定されるものではない。
アニオン性官能基を有する化合物としては、1分子あ
たりひとつのアニオン性官能基を有する化合物であって
も、また複数のアニオン性官能基を有するポリアニオン
化合物であってもよい。ポリアニオン化合物は抗TSHレ
セプター抗体に対する親和性が大きく、また単位量の水
不溶性多孔質担体に多くのアニオン性官能基を導入しや
すいので好ましい。なかでも分子量が1000以上のポリア
ニオン化合物は親和性、アニオン性官能基導入量が大き
く好ましい。ポリアニオン化合物が有するアニオン性官
能基は1種類であってもよいし、複数の種類であっても
よい。
本発明に用いるポリアニオン化合物の代表例として
は、ポリアクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリビニルスル
ホン酸、ポリビニルリン酸、ポリスチレンスルホン酸、
ポリスチレンリン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラ
ギン酸、ポリメタクリル酸、ポリリン酸、スチレン−マ
レイン酸共重合体などの合成ポリアニオン化合物、およ
びヘパリン、デキストラン硫酸、コンドロイチン、コン
ドロイチン硫酸、ホルホマンナン、ケラタン硫酸、ヒア
ルロン酸、アルギン酸、コロミン酸などのアニオン性官
能基含有多糖類があげられるがこれらに限定されるわけ
ではない。
さらに、アニオン性官能基を持つ化合物は、疎水性ス
ペーサを持つことが好ましい。
疎水性スペーサーとは、アニオン性官能基の導入され
た状態で1ogP値が2以上である化合物であればとくに制
限なく用いられる。ただし、水不溶性多孔質担体上に化
合物を化学結合法によって結合するばあいには、化合物
の一部が結合に使われることが多いが、この結合に用い
られた部分を除いた疎水性スペーサーの1ogP値が2未満
にならないことが望ましい。
化合物の1ogP値が2未満では抗TSHレセプター抗体の
吸着力が弱くなるので好ましくない。
1ogP値は、化合物の疎水性のパラメーターとなり、代
表的な、オクタノール−水系での分配係数Pの求め方は
以下のようである。まず、化合物をオクタノール(もし
くは水)に溶解し、これに当量の水(もしくはオクタノ
ール)を加え、グリッフィン・フラスク・シェイカー
(Griffin flask Shaker)(グリッフィン・アンド・ジ
ョージ・リミテッド)(Griffin&(George Ltd.)製)
で30分間振盪する。その後2000rpmで1〜2時間遠心分
離し、オクタノール層および水層中の化合物濃度を分光
学的またはGLCなどの種々の方法で測定することによ
り、次式で求められる。
P=Coct/Cw Coct:オクタノール層中の化合物濃度 Cw:水層中の化合物濃度 これまでに多くの研究者らにより種々の化合物の1ogP
値が実測されているが、これらの実測値はシー・ハンシ
ュ(C.Hansch)らによって整理されている(「パーティ
ション・コーフィシエンツ・アンド・ゼア・ユージズ」
ケミカル・レビューズ(PARTITION COEFFI CIENTS AND
THEIR USES:Chemical Reviews)、71巻、525頁、(197
1)参照)。
また実測値の知られていない化合物についてはアール
・エフ・レッカー(R.F.Rekker)がその著書(「ザ・ハ
イドロフォビック・フラグメンタル・コンスタント(TH
E HYDROPHOBIC FRAGMENTAL CONSTANT)」、エルセビア
・サイエンティフィック・パブリッシング・カンパニー
・アムステルダム(ELsevier Sci.Pub.Com.Amsterdam)
(1977))中に示されている疎水性フラグメント定数f
を用いて計算した値(Σf)が参考となる。疎水性プラ
グメント定数fは、数多くの1ogP実測値をもとに、統計
学的処理を行ない決定された種々のフラグメントの疎水
性を示す値であり、化合物を構成する各々のフラグメン
トのf値の和は、1ogP値とほぼ一致する。
このような化合物の代表例としてはn−ヘプチルアミ
ン、n−オクチルアミン、デキルアミン、ドデシルアミ
ン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、2−ア
ミノオクテン、ナフチルアミン、フェニル−n−プロピ
ルアミン、ジフェニルメチルアミンなどのアミン類、n
−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、ドデ
シルアルコール、ヘキサデシルアルコール、1−オクテ
ン−3−オール、ナフトール、ジフェニルメタノール、
4−フェニル−2−ブタノールなどのアルコール類なら
びにこれらのアルコールのグリシジルエーテル類、n−
オクタン類、ノナン酸、2−ノネン酸、デカン酸、ドデ
カン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、ジ
フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸などのカルボン酸
類ならびにこれらの酸ハロゲン化物、エステル、アミド
などのカルボン酸誘導体、塩化オクチル、臭化オクチ
ル、塩化デシル、塩化ドデシルなどのハロゲン化物、オ
クタンチオール、ドデカンチオールなどのチオール類、
n−オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロ
ロシランなどのハロゲン化シラン類、n−オクチルアル
デヒド、n−カプリンアルデヒド、ドデシルアルデヒド
などのアルデヒド類などがあげられる。これらの他にも
叙上の例示化合物の炭化水素部分の水素原子がハロゲ
ン、窒素、酸素、イオウなどのヘテロ原子を含有する置
換基、他のアルキル基などで置換された化合物のうち、
1ogP値が2以上の化合物、前述のシー・ハンシュ(C.Ha
nsch)らの総説(「パーティション・コーフィシエンツ
・アンド・ゼア・ユージズ」ケミカ・ルレビューズ(PA
RTITION COEFFICIENTS AND THEIR USES;Chemical Revie
ws)、71巻、525頁(1971))中の555〜613頁の表に示
されている1ogP値が2以上の化合物を用いることができ
るが、本発明においてはこれらのみに限定されるもので
はない。なおこれらの化合物はそれぞれ単独で用いても
よいし、任意の2種類以上を組合せてもよく、さらには
1ogP値が2未満の化合物との組合せで用いても良い。
疎水性スペーサーとアニオン性官能基を有する化合物
の形状は、疎水性のスペーサーの末端にアニオン性官能
基あるいはアニオン性官能基を有する化合物が結合して
いるもの、疎水性のスペーサー上にアニオン性官能基あ
るいはアニオン性官能基を有する化合物が分散して結合
しているものがあげられるがこれらに限定されるもので
はない。
本発明の吸着体に固定されるアニオン性官能基を有す
る化合物は1種類であってもよいし、2種類以上であっ
てもよい。
本発明の吸着体は、水不溶性多孔質担体にアニオン性
官能基を有する化合物が固定された状態のものをいう。
そのようなアニオン性官能基を有する化合物が固定され
てなる状態をうるためにアニオン性官能基を水不溶性多
孔質担体に導入する方法としては公知の種々の方法を特
別な制限なしに用いることができるが、そのようなアニ
オン性官能基を有する化合物が固定されてなる状態をう
るためのアニオン性官能基の水不溶性多孔質担体への導
入方法は種々あり、いかなる方法で導入してもよく、代
表的な導入方法としては、 (1) アニオン性官能基または容易にアニオン性官能
基に変換しうる官能基を含有する化合物をモノマーまた
は架橋剤として用いる重合によって吸着体を形成させる
方法、 (2) アニオン性官能基を含有する化合物を水不溶性
多孔質担体に固定させる方法、 (3) アニオン性官能基を形成する化合物と水不溶性
多孔質担体とを直接反応させることによって、水不溶性
多孔質担体にアニオン性官能基を有する化合物を固定さ
せる方法 などがあげられる。
もちろんガラス、シリカ、アルミナなどもともとアニ
オン性官能基を含有するアニオン性官能基を含有する化
合物を試薬として用いてもよい。
(1)の方法において用いるアニオン性官能基または
容易にアニオン性官能基に変換しうる官能基を含有する
モノマーまたは架橋剤の代表例としては、アクリル酸お
よびそのエステル、メタクリル酸およびエステル、スチ
レンスルホン酸などがあげられるがこれらに限定される
わけではない。
(2)の方法、すなわちアニオン性官能基を含有する
化合物を水不溶性多孔質担体に固定させる方法として
は、物理的吸着による方法、イオン結合による方法、共
有結合により固定する方法などがあり、いかなる方法を
用いてもよいが、吸着体の保存性ならびに安定性のため
にはアニオン性官能基含有化合物が脱離しないことが重
要であるので、強固な固定が可能な共有結合法が望まし
い。
共有結合によりアニオン性官能基含有化合物を固定さ
せるばあい、アニオン性官能基含有化合物がアニオン性
官能基以外に固定に利用できる官能基を有するのが好ま
しい。
固定に利用できる官能基の代表例としては、アミノ
基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、スキシニ
ルイミド基、水酸基、チオール基、アルデヒド基、ハロ
ゲン基、エポキシ基、シラノール基などがあげられるが
これらに限定されるわけではない。
つぎに、(3)の方法、すなわちアニオン性官能基を
形成する化合物と水不溶性多孔質担体とを反応させるこ
とによって、水不溶性多孔質担体にアニオン性官能基を
有する化合物を固定させてアニオン性官能基を導入する
方法の代表例として水酸基含有多孔質担体に硫酸エステ
ル基を導入する反応があげられる。このばあい、水酸基
含有水不溶性多孔質担体とクロロスルホン酸、濃硫酸な
どの試薬を反応させることによって直接硫酸エステル基
を導入することができる。
本発明の吸着体を治療に用いるには種々の方法があ
る。もっとも簡便な方法としては患者の血液を体外に導
入して血液バッグに貯め、これに本発明の吸着体を混合
して抗TSHレセプター抗体を除去後、フィルターを通し
て吸着体を除去し、血液を患者に戻す方法がある。この
方法は、複雑な装置を必要としないが、1回の処理量が
少なく治療に時間を要し、操作が煩雑になるという欠点
を有する。
つぎの方法は吸着体をカラムに充填し、体外循環回路
に組み込みオンラインで吸着除去を行うものである。す
なわち流体の流入口および流出口を有する容器、流体お
よび該流体に含まれる成分は通過できるが、水不溶性多
孔質担体にアニオン性官能基を有する化合物が固定され
てなる抗TSHレセプター抗体の吸着体は通過できないフ
ィルター、および前記容器内に充填された前記抗TSHレ
セプター抗体の吸着体からなる抗TSHレセプター抗体の
除去装置に体液を通液する方法が簡便で好ましい。
第2図に本発明の抗TSHレセプター抗体の除去装置の
一実施例の概略断面図を示す。第2図中、(1)および
(2)はそれぞれの流体の流入口と流出口、(3)は本
発明の吸着体、(4)および(5)は流体および流体に
含まれる成分は通過できるが本発明の吸着体は通過でき
ないフィルターまたはメッシュ、(6)はカラム、
(7)は容器である。ここで流体の流入口側のフィルタ
ー(4)は存在しなくてもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する
が、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではな
い。
参考例 両端に孔径15μmのフィルターを装着したガラス製円
筒カラム(内径9mm、カラム長さ150mm)にアガロースゲ
ル(バイオラド(Biorado)社製のバイオゲルA5m(Biog
el A5m)、粒径50〜100メッシュ)、ポリマー硬質ゲル
(東ソー(株)製のトヨパールHW65、粒径50〜100μ
m、およびチッソ(株)製のセルロファインGC−700m、
粒径45〜105μm)をそれぞれ均一に充填しペリスタル
ティックポンプによりカラム内に水を流通し、流速と圧
力損失ΔPとの関係を求めた。その結果を第1図に示
す。同図より明らかなように軟質ゲルであるアガロース
ゲルは一定の流速以上では圧密化をおこし、圧力を増加
させても流速が増加しないのに対し、トヨパール、セル
ロファインなどの硬質ゲルは圧力の増加にほぼ比例して
流速が増加する。
製造例1 多孔質セルロースゲルであるCKゲルA3(商品名、チッ
ソ(株)製、球状蛋白質の排除限界分子量5000万、粒径
45〜105μm)70mlをヘプタン170ml中に懸濁し、20%
(重量%、以下同様)NaOH47mlとノニオン系界面活性剤
トゥイーン20(商品名、バイオラッド社製)5mlを加
え、40℃で30分振盪した。エピクロルヒドリン47mlを加
えて45℃で3時間撹拌し、ゲルを水洗濾過し、エポキシ
基の導入されたセルロースゲル(以下、エポキシ化セル
ロースゲルという)をえた。
製造例2 ポリビニルアルコール(PVA)ゲルであるSEPABEDS XF
P−6XO3(商品名、三菱化成工業(株))の沈降体積30m
l分に水を加え、全量を60mlにする。これに2N NaOHを16
ml加え、40℃で数分振盪後、エピクロルヒドリン6mlを
加え40℃で3時間振盪した。同じゲルを用いて、同様の
操作を再度繰返し、反応終了後ゲルを濾別水洗し、エポ
キシ基の導入されたPVAゲル(以下、エポキシ化PVAゲル
という)をえた。
実施例1 製造例1でえたエポキシ化セルロースゲル5mlに分子
量約5000、イオウ含量15%のデキストラン硫酸ナトリウ
ム4gおよび水5mlを加えpH9に調整して45℃で16時間振盪
した。その後、ゲルを濾別して、2M食塩水溶液、0.5M食
塩水溶液および水を用いてこの順に洗浄し、0.5%モノ
エタノールアミン水溶液を加えて振盪し未反応のエポキ
シ基を封止してデキストラン硫酸ナトリウムが固定され
たセルロースゲル(以下、デキストラン硫酸−CKA3とい
う)をえた。
実施例2 製造例2でえたエポキシ化PVAゲル10mlに水を加え、
全量を15mlにした。これにデキストラン硫酸ナトリウム
(分子量1700)5gを加え、45℃で振盪し完全に溶解させ
た後、IN NaOHを用いてPH9.5に調整し、47℃で16時間静
置した。0.5%モノエタノールアミン水溶液を加えて振
盪し未反応のエポキシ基を封止した。反応終了後、ゲル
を濾別水洗し、デキストラン硫酸が固定されPVAゲル
(以下、デキストラン硫酸−PVAという)をえた。
実施例3 製造例1でえたエポキシ化セルロースゲル10mlに、片
末端にアミノ基を有するポリアクリル酸(分子量約100
0)1gを水5mlに溶かして加え、これに、2N NaOH 1mlを
加えて、室温で48時間放置した。反応終了後ゲルを濾別
水洗し、0.5%モノエタノールアミン水溶液を加えて振
盪し未反応のエポキシ基を封止してポリアクリル酸が固
定されたセルロースゲル(以下、ポリアクリル酸−CKA3
という)をえた。片末端にアミノ基を有するポリアクリ
ル酸は、2−アミノエタンチオールを連鎖移動剤とし、
2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤と
するアクリル酸の低重合反応よりえた(日本化学会誌、
No1、88〜92頁、(1977)、2−ヒドロキシエチル=メ
タクリレート−スチレン系ABA型ブロック共重合体の構
造およびその構造とぬれ、岡野光夫、他、参照)。
実施例4 製造例2でえたエポキシ化PVAゲルをサックドライし
3.5gはかりとり、これに実施例3で用いたのと同じ、片
末端にアミノ基を有するポリアクリル酸(分子量約100
0)1.25gを水5mlに溶かして加え、これに2N NaOH 1mlを
加えて、室温で48時間放置した。反応終了後ゲルを濾別
水洗し、0.5%モノエタノールアミン水溶液を加えて振
盪し未反応のエポキシ基を封止してポリアクリル酸が固
定されたPVAゲル(以下、ポリアクリル酸−PVAという)
をえた。
実施例5 製造例1でえたエポキシ化セルロースゲル14mlに、コ
ンドロイチン硫酸7gを水6mlに溶かしたものを加え、全
量を27mlにする。2N NaOHでPH10に調整し、45℃で2.5時
間振盪し、室温で1晩放置した。反応終了後ゲルを濾
別、水洗し、0.5%モノエタノールアミン水溶液を加え
て振盪し未反応のエポキシ基を封止してコンドロイチン
硫酸が固定されたセルロースゲル(以下、コンドロイチ
ン硫酸−CKA3という)をえた。
実施例6 実施例1〜5でえた吸着体を生理食塩水で平衡化し、
各々1mlずつチューブ(容量7ml)にとった。これに、バ
セドウ病患者血漿を4mlずつ(実施例5の吸着体には1.1
ml)加え、37℃で2時間振盪した。
この吸着操作終了後、遠心分離してゲルを沈降させ、
採取した上澄み中の抗TSHレセプター抗体(TBII)の活
性値を測定した。TBIIの測定はTSHのラジオレセプター
アッセーを用いる方法で行った。すなわち、TBIIの活性
値はレセプターへの抗体の結合により125I−TSHのレセ
プター結合が阻害されることにより、間接的に抗体の存
在を検出する方法で行なった。なお、TBIIの値が大きい
ほど、活性値が高いことを示す。
またIgG濃度または総蛋白濃度を測定し、吸着の選択
性をみた。第1表に吸着後の吸着体の上澄み中のTBIIの
活性値およびIgG濃度、ならびにバセドウ病患者血漿のT
BIIの活性値およびIgG濃度を、また第2表に吸着後の吸
着体の上澄み中のTBIIの活性値およひ総蛋白質濃度なら
びにバセトウ病患者血漿のTBIIの活性値および総蛋白濃
度を示す。第1表および第2表からIgGまたは総蛋白質
の吸着率に対し、TBIIの吸着率は大きく、実施例1〜5
の吸着体は選択的にTBIIを吸着していることがわかる。
実施例7 実施例1および2でえた吸着体を生理食塩水で平衡化
し、各々1mlずつチューブ(容量7ml)にとった。これに
バセドウ病患者血漿を4mlずつ加え、37℃で2時間振盪
した。この吸着操作終了後、遠心分離してゲルを沈降さ
せ、採取した上澄み中の抗TSHレセプター抗体(TBII)
の活性値を測定した。TBIIは実施例6と同様にTSHのラ
ジオレセプターアッセーを用いる方法で測定した。
なお、TBII値が大きいほど、活性値が高いことを示
す。
第3表に吸着後の吸着体の上澄み中のTBIIの活性値な
らびに吸着反応に用いたバセドウ病患者血漿のTBIIの活
性値を示す。
〔発明の効果〕 本発明の吸着体およびそれを用いた除去装置は体液よ
り抗TSHレセプター抗体を選択的に吸着しうるという効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は3種類のゲルを用いて流速と圧力損失との関係
を調べた結果を示すグラフであり、第2図は本発明の抗
TSHレセプター抗体の除去装置の一実施例の概略断面図
である。 (図面の主要符号) (1):流入口 (2):流出口 (3):吸着体 (4)(5):フィルター (7):容器

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水不溶性多孔質担体にアニオン性官能基を
    有する化合物が固定されてなる抗甲状腺刺激ホルモンレ
    セプター抗体の吸着体。
  2. 【請求項2】水不溶性多孔質担体の球状蛋白質の排除限
    界分子量が10万以上6000万以下である請求項1記載の抗
    甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体。
  3. 【請求項3】水不溶性多孔質担体が水酸基を有する化合
    物よりなる請求項1記載の抗甲状腺刺激ホルモンレセプ
    ター抗体の吸着体。
  4. 【請求項4】アニオン性官能基を有する化合物が、1分
    子内に1個以上のアニオン性官能基を有するアニオン化
    合物である請求項1記載の抗甲状腺刺激ホルモンレセプ
    ター抗体の吸着体。
  5. 【請求項5】流体の流入口および流出口を有する容器、
    流体および該流体に含まれる成分は通過できるが、請求
    項1記載の抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着
    体は通過できないフィルター、および前記容器内に充填
    された前記抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着
    体からなる抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去
    装置。
JP1087732A 1989-04-06 1989-04-06 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置 Expired - Fee Related JP2991721B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1087732A JP2991721B2 (ja) 1989-04-06 1989-04-06 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1087732A JP2991721B2 (ja) 1989-04-06 1989-04-06 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH02265566A JPH02265566A (ja) 1990-10-30
JP2991721B2 true JP2991721B2 (ja) 1999-12-20

Family

ID=13923094

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP1087732A Expired - Fee Related JP2991721B2 (ja) 1989-04-06 1989-04-06 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2991721B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4859520B2 (ja) * 2006-04-28 2012-01-25 株式会社カネカ 血圧降下性ペプチドの吸着材、吸着方法および吸着装置

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62211073A (ja) * 1986-03-12 1987-09-17 鐘淵化学工業株式会社 補体成分用吸着体
JPH0622632B2 (ja) * 1987-09-08 1994-03-30 鐘淵化学工業株式会社 吸着体および除去装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPH02265566A (ja) 1990-10-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP0247592B1 (en) Adsorbent for beta2-microglobulin and immunoglobulin l-chain
JPH0144725B2 (ja)
WO2004098680A1 (ja) 全血処理が可能な低密度リポ蛋白およびフィブリノーゲンの吸着材、及び吸着器
JPH10290833A (ja) トキシックショックシンドロームトキシン−1の吸着剤、その吸着除去方法および該吸着剤を充填してなる吸着器
JP2991721B2 (ja) 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の吸着体とそれを用いた抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体の除去装置
JPH0622633B2 (ja) 吸着体およびそれを用いた除去装置
JPH0667472B2 (ja) 血清アミロイドp蛋白用吸着体
JP2543693B2 (ja) 低比重リポ蛋白質の吸着材およびその製造方法
JPH0611333B2 (ja) 免疫複合体の吸着体およびそれを用いた免疫複合体の除去装置
JPS6399875A (ja) 体外循環治療用のβ↓2−ミクログロブリン吸着体
JP2009178523A (ja) 可溶性腫瘍壊死因子受容体の吸着材、吸着方法および吸着装置
JPH0622632B2 (ja) 吸着体および除去装置
JP3157026B2 (ja) 血液浄化用吸着材
JP3084436B2 (ja) 抗dna抗体の除去装置
JP2007029511A (ja) ハイモビリティーグループ蛋白の吸着材、吸着方法および吸着装置
JPS6226073A (ja) 直接血液潅流吸着方法およびその装置
JP3251547B2 (ja) 免疫複合体の除去装置
JP2726662B2 (ja) 吸着体およびそれを用いた除去装置
JPH0771632B2 (ja) 吸着体およびそれを用いた除去装置
JP3084437B2 (ja) 抗脂質抗体の除去装置
JP2983955B2 (ja) 腎糸球体基底膜付着性蛋白質の除去装置
JP2001204816A (ja) 直接血液灌流用体液処理器
JP4777554B2 (ja) 内因性カンナビノイドの吸着材、吸着除去方法および吸着器
RU2098140C1 (ru) Способ проведения экстракорпоральной иммуносорбции
JPH0592036A (ja) 活性化補体成分の除去方法

Legal Events

Date Code Title Description
S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees