JP2990957B2 - 鍛造弁ケーシングの流体整流板 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、火力，原子力発電タ
ービンの入口弁またはバイパス弁に用いられ鍛造により
製作される弁ケーシングの流体整流板に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、蒸気タービンの主蒸気止め弁と蒸
気加減弁は同一のケーシングに組み込まれ、この複合弁
ケーシングは袋ナットで高圧タービンに接続されてい
る。主蒸気止め弁の機能は、タービンの過速度トリップ
またはその他の保安装置が作動した危急の場合に、ター
ビンへ流入する蒸気を瞬時にしゃ断することにある。ボ
イラより導かれた主蒸気は、複合弁ケーシングに流入
し、主蒸気止め弁を経た後蒸気加減弁に流入する。蒸気
加減弁は調速装置により制御され、タービンに流入する
蒸気量を加減して速度制御あるいは負荷調整を行う。ま
た、タービン過速度トリップまたはその他の保安装置が
作動した危急の場合には、タービンへ流入する蒸気を瞬
時にしゃ断し、主蒸気止め弁と合わせてタービン保護の
二重化が図られている。

【０００３】図６は従来の鋳鋼製の主蒸気止め弁及び蒸
気加減弁の弁ケーシングの断面図で、（Ａ）は水平断面
図、（Ｂ）は（Ａ）のＢ−Ｂ断面図である。ボイラから
供給された蒸気は、矢印の方向に流れ、弁ケーシング１
内の主蒸気止め弁２を経て９０°方向転換され蒸気加減
弁３を通って蒸気タービンへ入る。弁内は蒸気流にさら
されるため、静的動的に大きな流体力を受けるととも
に、弁の出入り口での圧力比が大きく、蒸気流が乱れや
すい等の極めて過酷な条件下での使用となる。特に蒸気
流が９０°方向転換される部位での流体の旋回流に起因
する弁体の振動や弁シートのエロージョンを防止するた
めに弁ケーシング１に流体整流板４を設けている。この
種の弁は、従来は弁体を機械による一体削り加工し、流
体整流板を弁体の内側に溶接で取り付けていた。また
は、鋳造でケーシングと一体に流体整流板を製作してい
た。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】近年タービンの高効率
化が進みタービン入口蒸気は以前に比べ高温高圧になっ
てきている。従って体積流量が減少して弁口径も小さ
く、流体整流板を取り付けるケーシング内径も小さくな
ってきている。従来の機械加工では下記のごとき制約が
あり、加工治具の大きさに左右されある程度の大きさ以
下では製作不可能という問題があった。 （１）機械加工するには弁体内に刃物が入るスペースが
必要である。 （２）流体整流板を後から設けるときは、溶接機を弁ケ
ーシング内に入れかつ溶接作業をするためのスペースが
必要である。 また、鋳造したものは、使用後にクラックなどの内部欠
陥が発生する恐れがある。

【０００５】この発明は、弁口径が小さくとも主蒸気止
め弁，蒸気加減弁の弁ケーシングに容易に取り付けでき
る鍛造弁ケーシングの流体整流板を提供することを目的
とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】蒸気タービンの入口に配
置され、流体整流板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁
の弁ケーシングにおいて、溶接用固定足を有する複数の
流体整流板と、複数の流体整流板取付穴を貫通させた鍛
造弁ケーシングとを用意し、この流体整流板取付穴に前
記鍛造弁ケーシングの内側から前記溶接用固定足を差し
込んで、前記鍛造弁ケーシングの外側から前記流体整流
板取付穴と前記溶接用固定足の頭部との間に溶接肉盛
し、前記それぞれの流体整流板を前記鍛造弁ケーシング
に固定したことによって、上記目的を達成する。

【０００７】また、蒸気タービンの入口に配置され、流
体整流板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁ケーシ
ングにおいて、頭部にねじが刻まれたねじ付固定足を有
する複数の流体整流板と、複数の流体整流板取付穴を貫
通させた鍛造弁ケーシングとを用意し、この流体整流板
取付穴に前記鍛造弁ケーシングの内側から前記ねじ付固
定足を差し込んで、このねじ付固定足のねじを前記鍛造
弁ケーシングの外側からナットで締め付け、前記それぞ
れの流体整流板を前記鍛造弁ケーシングに固定したこと
によって、上記目的を達成する。

【０００８】さらに、蒸気タービンの入口に配置され、
流体整流板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁ケー
シングにおいて、頭部にねじ穴が刻まれた複数の流体流
体整流板と、複数の流体整流板取付穴を貫通させた鍛造
弁ケーシングと、複数の整流板固定ボルトとを用意し、
前記流体整流板取付穴に前記鍛造弁ケーシングの外側か
ら前記整流板固定ボルトを差し込んで、前記それぞれの
整流板固定ボルトを前記鍛造弁ケーシングの内側の前記
流体整流板のねじ穴に締め付け、前記それぞれの流体整
流板を前記鍛造弁ケーシングに固定したことによって、
上記目的を達成する。

【０００９】

【作用】この発明においては、鍛造弁ケーシングを貫通
して穿たれた流体整流板取付穴に、鍛造弁ケーシングの
内側から流体整流板の溶接用固定足を差し込んで、鍛造
弁ケーシングの外側から流体整流板取付穴と溶接用固定
足の頭部との間に溶接肉盛りし、鍛造弁ケーシングの外
側から流体整流板を容易に鍛造弁ケーシングに固定する
ことができる。

【００１０】また、鍛造弁ケーシングを貫通して穿たれ
た流体整流板取付穴に、鍛造弁ケーシングの内側から流
体整流板のねじ付固定足を差し込んで、鍛造弁ケーシン
グの外側からねじ付固定足のねじをナットで締め付け、
鍛造弁ケーシングの外側から流体整流板を容易に鍛造弁
ケーシングに固定することができる。

【００１１】さらに、鍛造弁ケーシングを貫通して穿た
れた流体整流板取付穴に、鍛造弁ケーシングの外側から
整流板固定ボルトを差し込んで、整流板固定ボルトを鍛
造弁ケーシングの内側の流体整流板のねじ穴に締め付
け、鍛造弁ケーシングの外側から流体整流板を容易に鍛
造弁ケーシングに固定することができる。

【００１２】

【実施例】図１はこの発明の実施例による流体整流板を
備えた鍛造弁ケーシングの断面図で、（Ａ）は水平断面
図、（Ｂ）は（Ａ）のＢ−Ｂ断面図であく。図１におい
て、鍛造弁ケーシング１１には、主蒸気止め弁２と蒸気
加減弁３とを内蔵しており、蒸気は矢印の方向に流れ
る。鍛造弁ケーシング１１内の蒸気流を９０°方向転換
する位置に流体整流板１２を取り付けている。

【００１３】実施例１ 図２はこの発明の溶接用固定足を備えた流体整流板の実
施例を示す鍛造弁ケーシングの一部断面図、図３は図２
のIII 部拡大図である。図２において、溶接用固定足１
２ａを有する２個の流体整流板１２と、２個の流体整流
板取付穴１１ａを貫通させた鍛造弁ケーシング１１とを
用意し、この流体整流板取付穴１１ａに鍛造弁ケーシン
グ１１の内側から溶接用固定足１２ａを差し込んで、鍛
造弁ケーシング１１の外側から流体整流板取付穴１１ａ
と溶接用固定足１２ａの頭部との間に溶接肉盛１２ｂを
施し、それぞれの流体整流板１２を鍛造弁ケーシング１
１に固定した。流体整流板１２は、主蒸気止め弁２の入
口側と蒸気加減弁３の入口側にそれぞれ２個づつ設けて
いる。このため鍛造弁ケーシング１１が小型であっても
容易に流体整流板１２を鍛造弁ケーシング１１に固定す
ることができる。

【００１４】実施例２ 図４はこの発明のねじ付固定足を備えた流体整流板の実
施例を示す鍛造弁ケーシングの一部断面図である。図４
において、頭部にねじが刻まれたねじ付固定足１３ａを
有する２個の流体整流板１３と、２個の流体整流板取付
穴１１ａを貫通させた鍛造弁ケーシング１１とを用意
し、この流体整流板取付穴１１ａに鍛造弁ケーシング１
１の内側からねじ付固定足１３ａを差し込んで、このね
じ付固定足のねじを鍛造弁ケーシング１１の外側からナ
ット１３ｂで締め付け、それぞれの流体整流板１３を鍛
造弁ケーシング１１に固定した。流体整流板１３は主蒸
気止め弁２の入口側と蒸気加減弁３の入口側にそれぞれ
２個づつ設けている。このため鍛造弁ケーシング１１が
小型であっても容易に流体整流板１２を鍛造弁ケーシン
グ１１に固定することができる。

【００１５】実施例３ 図５はこの発明の整流板固定ボルトを用いた流体整流板
の実施例を示す鍛造弁ケーシングの一部断面図である。
図５において、頭部にねじ穴１４ａが刻まれた２個の流
体整流板１４と、２個の流体整流板取付穴１１ａを貫通
させた鍛造弁ケーシング１１と、２個の整流板固定ボル
ト１４ｂとを用意し、流体整流板取付穴１１ａに鍛造弁
ケーシング１１の外側から整流板固定ボルト１４ｂを差
し込んで、それぞれの整流板固定ボルト１４ｂを鍛造弁
ケーシング１１の内側の流体整流板のねじ穴１４ａに締
め付け、それぞれの流体整流板１４を鍛造弁ケーシング
１１に固定した。流体整流板１３は主蒸気止め弁２の入
口側と蒸気加減弁３の入口側にそれぞれ２個づつ設けて
いる。このため鍛造弁ケーシング１１が小型であっても
容易に流体整流板１２を鍛造弁ケーシング１１に固定す
ることができる。

【００１６】

【発明の効果】この発明によれば、鍛造弁ケーシングを
貫通して穿たれた流体整流板取付穴に溶接用固定足また
はねじ付固定足または整流板固定ボルトを差し込んで、
流体整流板を鍛造弁ケーシングの外側から固定するの
で、鍛造弁ケーシングが小型でも流体整流板の鍛造弁ケ
ーシングへの取り付けが容易となる。その結果、この種
の弁の振動または弁シートのエロージョンを防止するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施例による流体整流板を備えた鍛
造弁ケーシングの断面図で、（Ａ）は水平断面図、
（Ｂ）は（Ａ）のＢ−Ｂ断面図である。

【図２】この発明の実施例１の流体整流板を備えた鍛造
弁ケーシングの一部断面図である。

【図３】図２のIII 部拡大図である。

【図４】この発明の実施例２の流体整流板を備えた鍛造
弁ケーシングの一部断面図である。

【図５】この発明の実施例３の流体整流板を備えた鍛造
弁ケーシングの一部断面図である。

【図６】従来の鋳鋼製の主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁
ケーシングの断面図で、（Ａ）は水平断面図、（Ｂ）は
（Ａ）のＢ−Ｂ断面図である。

【符号の説明】

１ 弁ケーシング ２ 主蒸気止め弁 ３ 蒸気加減弁 １１ 鍛造弁ケーシング １１ａ 流体整流板取付穴 １２ 流体整流板 １２ａ 溶接用固定足 １２ｂ 溶接肉盛 １３ 流体整流板 １３ａ ねじ付固定穴 １３ｂ ナット １４ 流体整流穴 １４ａ ねじ穴 １４ｂ 整流板固定ボルト

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】蒸気タービンの入口に配置され、流体整流
   板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁ケーシングに
   おいて、溶接用固定足を有する複数の流体整流板と、複
   数の流体整流板取付穴を貫通させた鍛造弁ケーシングと
   を用意し、この流体整流板取付穴に前記鍛造弁ケーシン
   グの内側から前記溶接用固定足を差し込んで、前記鍛造
   弁ケーシングの外側から前記流体整流板取付穴と前記溶
   接用固定足の頭部との間に溶接肉盛し、前記それぞれの
   流体整流板を前記鍛造弁ケーシングに固定したことを特
   徴とする鍛造弁ケーシングの流体整流板。
2. 【請求項２】蒸気タービンの入口に配置され、流体整流
   板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁ケーシングに
   おいて、頭部にねじが刻まれたねじ付固定足を有する複
   数の流体整流板と、複数の流体整流板取付穴を貫通させ
   た鍛造弁ケーシングとを用意し、この流体整流板取付穴
   に前記鍛造弁ケーシングの内側から前記ねじ付固定足を
   差し込んで、このねじ付固定足のねじを前記鍛造弁ケー
   シングの外側からナットで締め付け、前記それぞれの流
   体整流板を前記鍛造弁ケーシングに固定したことを特徴
   とする鍛造弁ケーシングの流体整流板。
3. 【請求項３】蒸気タービンの入口に配置され、流体整流
   板を有する主蒸気止め弁，蒸気加減弁の弁ケーシングに
   おいて、頭部にねじ穴が刻まれた複数の流体整流板と、
   複数の流体整流板取付穴を貫通させた鍛造弁ケーシング
   と、複数の整流板固定ボルトとを用意し、前記流体整流
   板取付穴に前記鍛造弁ケーシングの外側から前記整流板
   固定ボルトを差し込んで、前記それぞれの整流板固定ボ
   ルトを前記鍛造弁ケーシングの内側の前記流体整流板の
   ねじ穴に締め付け、前記それぞれの流体整流板を前記鍛
   造弁ケーシングに固定したことを特徴とする鍛造弁ケー
   シングの流体整流板。