JP2990416B2 - 無段変速駆動車両の操舵装置 - Google Patents

無段変速駆動車両の操舵装置

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JP2990416B2
JP2990416B2 JP7264016A JP26401695A JP2990416B2 JP 2990416 B2 JP2990416 B2 JP 2990416B2 JP 7264016 A JP7264016 A JP 7264016A JP 26401695 A JP26401695 A JP 26401695A JP 2990416 B2 JP2990416 B2 JP 2990416B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、静油圧式無段変速
機、ベルト式無段変速機、コーン式無段変速機、摩擦式
無段変速機等の無段変速機を左右一対備え、左右の走行
駆動輪を左右の無段変速機にそれぞれ接続して駆動する
無段変速駆動車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】かかる無段変速駆動車両における操舵装
置は、特公昭57−25428号公報、実公昭49−3
8826号公報、特開昭57−950号公報、実公昭4
0−31219号公報により既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、無段変速駆
動車両の左右の駆動輪は各々独立して駆動されるため、
左右の駆動輪の回転速度がバランスしていないと直進性
が低下する問題があり、特に車両の発進時に左右の駆動
輪が回転を始めるタイミングに僅かでも誤差があると、
車両が左右に回頭して直進性が大きく損なわれてしま
う。
【0004】かかる直進性の問題は、変速操作装置と無
段変速機のポンプ或いはモータの斜板とを接続するリン
ク系のガタを調整することにより解消可能であるが、従
来はその調整が面倒で多くの時間と労力を必要とする問
題があった。
【0005】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもの
であって、無段変速駆動車両の直進性の調整を容易に行
えるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、請求項1に記載された発明は、一対の無段変速機に
接続された左右の走行駆動輪の回転数を独立に制御して
走行及び旋回を行うべく、ベース部材に前後回動自在に
支持されてチェンジレバーの操作により前後回動するコ
ントロール軸と、コントロール軸に左右揺動自在に枢支
され、コントロール軸の前後回動に応じて前後揺動し、
且つステアリングハンドルの操作により左右揺動するミ
キシングレバーと、ミキシングレバーを一対の無段変速
機の速度調整部材に連結する連結部材とを備えてなり、
ミキシングレバーの前後揺動により一対の無段変速機の
出力回転数を実質的に同一回転数で増減速させるととも
に、ミキシングレバーの左右揺動により一対の無段変速
機の出力回転数を相互に異なる回転数で増減速させる無
段変速駆動車両の操舵装置であって、前記コントロール
軸の軸方向位置を変化させてミキシングレバーの左右位
置を微調整する調整手段を備えたことを特徴とする。
【0007】また請求項2に記載された発明は、請求項
1の構成に加えて、前記調整手段が、ベース部材に設け
た支持部に一端が回動可能且つ軸方向移動不能に支持さ
れ、他端がコントロール軸の軸端面に螺合するボルト
と、このボルトをコントロール軸に相対回転不能に結合
するナットとからなることを特徴とする。
【0008】また請求項3に記載された発明は、請求項
2の構成に加えて、前記支持部の外側面に前記ボルトの
頭部を係止するとともに、前記支持部を前後方向に貫通
する開口部内に前記ナットを配置したことを特徴とす
る。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】図1〜図22は本発明の一実施例を示すも
ので、図1は作業車両の全体側面図、図2は図1の2方
向矢視図、図3は図1の要部拡大図、図4は図1の要部
拡大図、図5は図2の要部拡大図、図6は図2の要部拡
大図、図7は図4の要部拡大図、図8は図7の8−8線
断面図(無段変速機は断面にせず)、図9は図8の要部
拡大図、図10は図8の要部拡大図、図11は図7の1
1−11線断面図、図12は油圧回路図、図13は図6
の13−13線拡大断面図、図14は図13の14−1
4線断面図、図15は図13の15方向矢視図、図16
は図13の16−16線断面図、図17は図14の17
−17線拡大断面図、図18は図14の要部拡大図、図
19は作用の説明図、図20は作用の説明図、図21は
ステアリング切れ角と車輪速比との関係を示すグラフ、
図22はステアリングハンドルの限界切れ角における車
軸回転数を示すグラフである。
【0011】図1及び図2に示すように、操舵輪として
の左右一対の前輪Wf,Wf及び走行駆動輪としての左
右一対の後輪Wr,Wrを有する乗用型の作業車両1
は、車体前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム
2,2と、車体左右方向に延び両サイドフレーム2,2
間を接続する5本のクロスフレーム31 〜35 (図5参
照)とよりなる車体フレームFを備える。車体フレーム
Fの前部にはフロアパネル4、ハンドルポスト5及びシ
ートベース6が装着され、シートベース6上に乗員が座
乗するシート7が設けられる。ハンドルポスト5の上部
には左右の前輪Wf,Wfを操舵するとともに、後述す
る静油圧式無段変速機を介して左右の後輪Wr,Wrに
回転数差を発生させるためのステアリングハンドル8が
設けられる。ステアリングハンドル8は丸ハンドル、バ
ーハンドル、矩形ハンドル、レバーハンドル等の任意の
もので良い。ハンドルポスト5の左側には後述する作業
機への動力伝達を制御するテンションクラッチをON/
OFFするためのクラッチレバー9が設けられ、またシ
ート7の右側には作業車両1を前後進させるためのチェ
ンジレバー10が設けられる。
【0012】車体後部上面には単気筒4サイクルエンジ
ンEが、そのクランク軸11を車体左右方向に向け、且
つシリンダ12を後方斜め上方に向けた状態で搭載され
る。エンジンEの上部には、燃料タンク13、エアクリ
ーナ14A及びマフラー14Mが支持される。エンジン
Eの下部には、該エンジンEの駆動力を油圧に変換して
左右の後輪Wr,Wrを駆動するトランスミッションT
が搭載される。シート7の下部に搭載された変速操作装
置Mは、左右の後輪Wr,Wrの回転数を独立に制御す
べく前記ステアリングハンドル8の操作及びチェンジレ
バー10の操作をミキシングしてトランスミッションT
に伝達する。車体後端にはエンジンEにより駆動される
ロータリ作業機Rが接続される。
【0013】図3及び図5から明らかなように、ステア
リングハンドル8に接続されたステアリングシャフト2
1の下端にピニオン22が固着されており、枢軸23に
より軸支されたセクタギヤ24が前記ピニオン22に噛
合する。左右の前輪Wf,Wfを軸支する左右のナック
ル25L ,25R は略L字状に形成されており、クロス
フレーム32 の下部に段付きボルト39を介して左右揺
動自在に枢支されたフロントアクスル40の左右両端部
に設けたガイド筒26,26(キングピンに相当)に首
振り自在に支持される。ナックル25L ,25R に各々
固設された左右のナックルアーム27L ,27R がタイ
ロッド28で相互に接続されるとともに、左側のナック
ルアーム27L と前記セクタギヤ24とがステアリング
ロッド29で相互に接続される。
【0014】而して、ステアリングハンドル8を操作す
ると、ステアリングシャフト21、ピニオン22、セク
タギヤ24、ステアリングロッド29、左側のナックル
アーム27L 及び左側のナックル25L を介して左側の
前輪Wfが操舵され、更に左側のナックルアーム27L
からタイロッド28、右側のナックルアーム27R 及び
右側のナックル25R を介して右側の前輪Wfが操舵さ
れる。尚、ステアリングハンドル8のステアリング切れ
角の最大値(即ち、限界切れ角)は左右各360°であ
り、ステアリング切れ角が360°であるときに旋回内
側の前輪Wfの操舵角は57°〜60°になるように設
定される。この操舵角範囲は、信地旋回時に車体が円滑
に旋回でき、しかも高速走行スラローム時に安定して走
行できるように設定されている。
【0015】図4及び図6から明らかなように、チェン
ジレバー10は車体左右方向に延びる枢軸30を介して
前後左右揺動自在に枢支される。チェンジレバー10が
ニュートラル位置Nにあるとき作業車両1は停止してお
り、チェンジレバー10をニュートラル位置から前方に
揺動させると作業車両1は0km/h〜+5.2km/
hで前進走行する。前方揺動角が14°のときにチェン
ジレバー10は作業時トップ位置F1 になって車速は+
2.5km/hになり、前方揺動角が42°のときにチ
ェンジレバー10は走行時トップ位置F2 になって車速
は+5.2km/hになる。チェンジレバー10をニュ
ートラル位置から後方に揺動させると作業車両1は0k
m/h〜−2.4km/hで後進走行し、後方揺動角が
20°のときにチェンジレバー10は後進時トップ位置
Rになって車速は−2.4km/hになる。
【0016】尚、前進走行時の最大車速の+5.2km
/h及び後進走行時の最大車速−2.4km/hは任意
に変更可能である。
【0017】駆動輪である後輪Wr,Wrの外径を例え
ば1.15倍に拡大すると、前述した各速度が同じ比率
で増加する。この場合、車速2.5km/hは2.8k
m/h〜2.9km/hに、前進最大車速の5.2km
/hは6.0km/hに、後進最大車速の−2.4km
/hは−2.7km/h〜−2.8km/hにそれぞれ
増加することになる。
【0018】次に、図7〜図12に基づいてエンジンE
の駆動力を左右の後輪Wrに伝達するトランスミッショ
ンTの構造を説明する。
【0019】図7及び図8において、トランスミッショ
ンTはミッションケース102と、このミッションケー
ス102の左右側面にそれぞれ取付けられる一対の静油
圧式無段変速機103L ,103R と、ミッションケー
ス102内に配設される減速装置104と、ミッション
ケース102の左右側壁をそれぞれ貫通する一対の車軸
106L ,106R とを備え、これら車軸106L ,1
06R の外端に左右の後輪Wr,Wrがそれぞれ取付け
られる。
【0020】ミッションケース102は、車軸10
L ,106R の軸線と直交する平面上で分割された左
ケース半体102L 及び右ケース半体102R の開放端
相互をボルト105…により分離可能に接合して構成さ
れる。左ケース半体102L の外側面は、その上半部よ
りも下半部が外方へ大きく突出してその間に段部109
を形成しており、これに対し右ケース半体102R の外
側面は全体に亘り略平坦に形成される。このようにし
て、ミッションケース102は、段部109を挟んで上
方に狭幅部102A 、下方に広幅部102B を備え、そ
の狭幅部102A の左右側面に一対の静油圧式無段変速
機103L ,103R が取付けられる。
【0021】左右の車軸106L ,106R は、ミッシ
ョンケース102の広幅部102Bの左右両側壁に装着
されたベアリング155,155により、筒状のアクス
ルケース154L ,154R の内部に支承される。
【0022】図7及び図9に示すように、左右の静油圧
式無段変速機103L ,103R は同一構造のものを対
称的に配置したものである。各静油圧式無段変速機10
L,103R は、同側のケース半体102L ,102
R の外側面に分離可能にボルト結合された分配板110
と、この分配板110にボルト結合されたハウジング1
11と、このハウジング111内に配設される油圧ポン
プ112及び油圧モータ113とを備えている。油圧ポ
ンプ112は、分配板110を貫通するポンプ軸114
と、このポンプ軸114にスプライン結合されて分配板
110に回転摺動自在に密接するポンプシリンダ115
…と、ポンプ軸114を囲む環状の配列状態でポンプシ
リンダ115…に摺動自在に嵌装された多数のポンププ
ランジャ116…と、これらポンププランジャ116…
の外端に当接するポンプ斜板117と、その背面をスラ
ストベアリング118を介して支承する斜板ホルダ11
9とから構成され、その斜板ホルダ119は、軸線がポ
ンプ軸114の軸線と直交する一対の斜板軸120を介
してハウジング111に支承されており、ポンプ斜板1
17をポンプ軸114と直交する直立位置(ニュートラ
ル位置)を経て一方の最大傾斜位置(前進時トップ位
置)と他方の最大傾斜位置(後進時トップ位置)との間
で傾動させ得るようになっている。左右の各斜板ホルダ
119の斜板軸120の外端には変速アーム249L
249R が固着され、この変速アーム249L ,249
R を回動することにより、各ポンプ斜板117の角度を
調節することができる。
【0023】他方、油圧モータ113は、分配板110
を貫通するモータ軸121と、このモータ軸121にス
プライン結合されて分配板110に回転摺動自在に密接
するモータシリンダ122…と、モータ軸121を囲む
環状の配列状態でモータシリンダ122…に摺動自在に
嵌装された多数のモータプランジャ123…と、これら
モータプランジャ123…の外端に当接するモータ斜板
124とから構成され、そのモータ斜板124の背面は
モータ軸121に対し一定角度傾斜した状態でハウジン
グ111にスラストベアリング125を介して支承され
る。
【0024】左右のポンプ軸114,114は狭幅部1
02a内でジョイント138により同軸に連結される。
一方、左右のモータ軸121,121は同軸上で相対回
転可能に配置される。
【0025】図12に示すように、各静油圧式無段変速
機103L ,103R において、油圧ポンプ112及び
油圧モータ113間は油圧閉回路126により相互に接
続される。油圧閉回路126には、その高圧側及び低圧
側間を接続するバイパス路127が設けられ、これにマ
ニュアル操作で開閉されるリリース弁128が介装され
る。油圧ポンプ112には、そのポンプ軸114により
駆動される作動油補給ポンプ129が連結される。この
作動油補給ポンプ129は油溜130から作動油を汲上
げて給油路131へ圧送するもので、その給油路131
は油圧閉回路126の高圧側及び低圧側にそれぞれ一方
向弁132,133を介して接続される。また給油路1
31は、必要に応じて、互いに並列関係のリリーフ弁1
34及び吸入弁135を介して油溜130に接続され
る。
【0026】而して、リリース弁128の閉鎖時、前記
ポンプ斜板117の前進側への傾斜状態で油圧ポンプ1
12を駆動すれば、油圧閉回路126を作動油が実線矢
印方向へ流れ、このときの油圧ポンプ112の容量と油
圧モータ113の容量との比を変速比として油圧モータ
113のモータ軸121は正転し、反対にポンプ斜板1
17が後進側へ傾斜していれば、油圧閉回路126を作
動油が点線矢印方向へ流れ、モータ軸121は逆転す
る。この間、油圧閉回路126に漏油を生じれは、その
ときの低圧側に対応する一方向弁132又は一方向弁1
33が開き、作動油補給ポンプ129から油圧閉回路1
26に作動油の補給が行われる。給油路131が一定値
以上に昇圧した場合には、リリーフ弁134が開いて給
油路131の過度の昇圧を防ぎ、またエンジンブレーキ
により油圧閉回路126において高圧側と低圧側とが急
激に反転した場合、その低圧側への作動油補給ポンプ1
29による作動油の補給が不足するときには、吸入弁1
35が開いて油溜130の油を該低圧側へ吸入させ、こ
れにより油圧閉回路126の空気の吸込みを防ぐことが
できる。
【0027】再び図9において、前記油溜130はミッ
ションケース102の両ケース半体102L ,102R
間に画成される。そして各分配板110の内側には、作
動油補給ポンプ129及び吸入弁135の各吸入口を追
って油溜130に浸漬されるオイルフィルタ136が装
着され、作動油補給ポンプ129及び吸入弁135に供
給すべき作動油を濾過するようになっている。
【0028】図9及び図10に示すように、減速装置1
04は、ミッションケース102の狭幅部102A 及び
広幅部102B にそれぞれ車軸106L ,106R と平
行に回転自在に支承される第1及び第2中間軸14
1 ,1402 と、左右のモータ軸121,121の内
端部にそれぞれ固着される左右一対の第1小歯車141
L,141R と、第1中間軸1401 にそれぞれ回転自
在に支承されて第1小歯車141L ,141R に噛合す
る左右一対の第1大歯車142L ,142R と、これら
第1大歯車142L ,142R の対向端にそれぞれ一体
に形成された左右一対の第2小歯車143L ,143R
と、第2中間軸1402 の、狭幅部102Aに臨む右端
部にキーまたはスプライン結合されて右第2小歯車14
R に噛合する右第2大歯車144R と、この右第2大
歯車144R の左側に隣接して第2中間軸1402 に回
転自在に支承され、左第2小歯車143L に噛合する左
第2大歯車144L と、この左第2大歯車144L の左
端にドグクラッチ145を介して連結し、第2中間軸1
402 に回転自在に支承される右最終小歯車146
R と、この右最終小歯車146R の左側で第2中間軸1
402 にキー又はスプライン結合されるクラッチ体14
7と、このクラッチ体147の左端にドグクラッチ14
8を介して連結し、第2中間軸1402 に回転自在に支
承される左最終小歯車146L と、左右の車軸10
L ,106R にスプライン結合して左右の最終小歯車
146L ,146R にそれぞれ噛合する左右一対の最終
大歯車149L ,149R とから構成される。右側の油
圧モータ113の駆動力は左側の車軸106 L に伝達さ
れ、左側の油圧モータ113の駆動力は右側の車軸10
R に伝達される。
【0029】図7及び図11に示すように、ミッション
ケース102の狭幅部102A には、第1中間軸140
1 に平行し、且つ互いに同軸の左右一対のブレーキ軸1
50 L ,150R が相対回転可能に支承され、これらブ
レーキ軸150L ,150Rには、前記第1大歯車14
L ,142R にそれぞれ噛合する一対のブレーキ歯車
151L ,151R が固着される。左右のブレーキ軸1
50L ,150R は、狭幅部102A の左右外側へそれ
ぞれ突出しており、これらにブレーキレバー153の回
動により作動するブレーキ装置152L ,152R がそ
れぞれ設けられる。
【0030】尚、ブレーキ歯車151L ,151R を第
1大歯車142L ,142R にそれぞれ噛合させる代わ
りに、そのブレーキ歯車151L ,151R を前記第2
大歯車144L ,144R にそれぞれ噛合させても良
い。
【0031】図4及び図6に示すように、左ケース半体
102L の前部から一方のポンプ軸114が外部に突出
する。エンジンEのクランク軸11に設けた変速機駆動
プーリ32と前記一方のポンプ軸114に設けた変速機
従動プーリ33とに無端ベルト34が巻き掛けられる。
枢軸35に枢支されてスプリング36により付勢された
テンションプーリ支持腕37の先端にテンションプーリ
38が設けられており、このテンションプーリ38が前
記無端ベルト34に当接して所定のテンションを発生さ
せる。
【0032】而して、エンジンEの駆動力が変速機駆動
プーリ32、無端ベルト34及び変速機従動プーリ33
介して左右の静油圧式無段変速機103L ,103R
ポンプ軸114,114に分配され、それぞれ適宜変速
された後、対応するモータ軸121,121から減速装
置104へ出力される。右側の静油圧式無段変速機10
R のモータ軸121から減速装置104に出力された
駆動力は左側の車軸106L に伝達され、左側の静油圧
式無段変速機103L のモータ軸121から減速装置1
04に出力された駆動力は右側の車軸106R に伝達さ
れ、これにより左右の後輪Wr,Wrが駆動されて作業
車両1を走行させることができる。
【0033】この場合、左右の静油圧式無段変速機10
L ,103R において、両方のポンプ斜板117,1
17を前進側へ傾動させれば、両方のモータ軸121,
121が正転して作業車両1を前進させ、両方のポンプ
斜板117,117を後進側へ傾動させれば、両方のモ
ータ軸121,121が逆転して作業車両1を後進させ
ることができる。また、左右のポンプ斜板117,11
7の傾斜角度に差をつけて左右の静油圧式無段変速機1
03L ,103R の変速比を異ならせれば、左右のモー
タ軸121,121の回転速度に差が生じて作業車両1
を旋回させることができる。
【0034】尚、エンジンEの回転数は調整可能である
が、通常の使用状態では3600RPMに固定されてい
る。
【0035】次に、図1〜図6に基づいてエンジンEか
らロータリ作業機Rへの動力伝達について説明する。
【0036】最後部のクロスフレーム35 から後方に突
設したブラケット61に車体左右方向に延びる作業機昇
降軸62が回転自在に支持される。エンジンEのクラン
ク軸11に設けた作業機駆動プーリ63と作業機昇降軸
62に設けた作業機従動プーリ64とが無端ベルト65
を介して接続されており、この無端ベルト65のテンシ
ョンを制御するテンションクラッチCが、車体前部に枢
軸66を介して前後揺動自在に枢支された前記クラッチ
レバー9に接続される。
【0037】即ち、左側のサイドフレーム2に設けたブ
ラケット67に上下方向に延びる伝達軸68が回動自在
に支持されており、この伝達軸68に固設したアーム6
9とクラッチレバー9の下端とがリンク70を介して接
続される。枢軸71を介して中間部を枢支されたL字状
の支持腕72の一端に設けたテンションプーリ73が前
記無端ベルト65に当接し、支持腕72の他端と前記伝
達軸68に固着した他のアーム60とが緩衝スプリング
74を介装したボーデンワイヤ75で接続される。伝達
軸68はリターンスプリング76で図6の反時計方向
(即ち、テンションクラッチCのOFF方向)に付勢さ
れる。
【0038】而して、テンションクラッチCをONすべ
くクラッチレバー9を前方に押すと、伝達軸68がリタ
ーンスプリング76に抗してOFF位置からON位置へ
と時計方向に回動してボーデンワイヤ75を牽引し、支
持腕72が揺動することによりテンションプーリ73が
無端ベルト65に押し付けられる。これによりテンショ
ンクラッチCがONし、エンジンEのクランク軸11の
回転が作業機昇降軸62に伝達される。伝達軸68がO
FF位置からON位置へ回動する際に思案点を通過する
ので、ボーデンワイヤ75に介装した緩衝スプリング7
4の張力により伝達軸68がON位置に安定的に保持さ
れる。また、テンションクラッチCをOFFすべくクラ
ッチレバー9を後方に引くと、リターンスプリング76
の弾発力で伝達軸68はOFF位置に回動し、そこに安
定的に保持される。
【0039】作業機昇降軸62に上下揺動自在に枢支さ
れた前部チェーンケース77の後端に中間ケース78を
介して後部チェーンケース79が結合されており、これ
ら前部チェーンケース77、中間ケース78及び後部チ
ェーンケース79を含むロータリ作業機Rは前記ブラケ
ット61との間に装着した作業機昇降シリンダ80によ
り昇降駆動される。即ち、作業機昇降軸62に第1ブラ
ケット85及び第2ブラケット86がそれぞれ上下揺動
自在に枢支されており、第1ブラケット85は連結部材
87を介して後部チェーンケース79に結合されるとと
もに、第2ブラケット86は作業機昇降シリンダ80に
接続される。第2ブラケット86は第1ブラケット85
の下面に対向しており、従って作業機昇降シリンダ80
で第2ブラケット86を上方に揺動させると、この第2
ブラケット86に押圧された第1ブラケット85がロー
タリ作業機Rと共に上方に揺動する。また作業機昇降シ
リンダ80が作動しなくとも、地面からの反力でロータ
リ作業機Rは作業機昇降軸62回りに上方に自由に揺動
することができる。
【0040】後部チェーンケース79の後端に設けられ
た複数の耕耘刃81…は、前部チェーンケース77、中
間ケース78及び後部チェーンケース79の内部に収納
された図示せぬチェーン伝動機構により前記作業機昇降
軸62に接続されて回転駆動される。尚、図中の符号8
2は耕耘刃81…のカバー、符号83は抵抗棒、符号8
4は均平板である。
【0041】次に、ステアリングハンドル8の操作及び
チェンジレバー10の操作をミキシングして作業車両1
を前後進及び左右旋回させるための変速操作装置Mの構
造を、図13〜図18に基づいて詳述する。
【0042】変速操作装置Mは左右両側壁及び底壁を有
して上面が開放した断面C字状のベース部材201を備
えており、このベース部材201の上端に連なる支持板
202が左右各2個のステー203…によりサイドフレ
ーム2,2に支持される。ベース部材201の前後に溶
接した一対のブラケット204,204に、前後方向に
延びるビボット205,205を介して、側面視で逆U
字状をなすガイド部材206の前後両下端が左右揺動可
能に枢支される。
【0043】ガイド部材206の上端に設けられた一対
のワイヤジョイント207L ,207R に一端を結合さ
れた一対のボーデンワイヤ208L ,208R は、その
他端がステアリングハンドル8により回動する前記セク
タギヤ24(図5参照)に結合される。従って、作業車
両1を旋回させるべくステアリングハンドル8を操作す
ると、ボーデンワイヤ208L ,208R を介してガイ
ド部材206がビボット205,205回りに左右揺動
する。
【0044】ベース部材201の下部には左右方向に延
びるコントロール軸209が回転自在に支持される。チ
ェンジレバー10の枢軸30に固着したアーム210と
コントロール軸209の右端に固着したアーム211と
がロッド212で連結されており、チェンジレバー10
を前後に揺動させることによりコントロール軸209が
回動する。
【0045】コントロール軸209に2本のボルト22
1,221で固定したブラケット222に、枢支ピン2
23を介してミキシングレバー224の下端が左右揺動
自在に枢支され、このミキシングレバー224は支持板
202の開口202aを貫通して上方に延出する。枢支
ピン223には左右一対のニュートラルプレート251
L ,251R が各々独立に揺動し得るように枢支されて
おり、両ニュートラルプレート251L ,251R は相
互に接近する方向にニュートラルスプリング252で付
勢される。左右のニュートラルプレート251L ,25
R は、ブラケット222の上端に設けた固定ニュート
ラルピン253に当接する位置に停止する。
【0046】ミキシングレバー224に設けた可動ニュ
ートラルピン254が前記両ニュートラルプレート25
L ,251R に挟持されており、これによりミキシン
グレバー224がニュートラル位置に安定的に停止す
る。ミキシングレバー224が左に倒されると、可動ニ
ュートラルピン254に押圧された左側のニュートラル
プレート251L がニュートラルスプリング252を引
き伸ばしながら左側に揺動し、ミキシングレバー224
が右に倒されると、可動ニュートラルピン254に押圧
された右側のニュートラルプレート251R がニュート
ラルスプリング252を引き伸ばしながら右側に揺動す
る。
【0047】ミキシングレバー224は、ガイド部材2
06の上面にボルト及びナットで固定したガイドプレー
ト206dに前後方向に長く形成したガイド溝206a
に遊嵌する。ガイドプレート206dはガイド部材20
6に形成した長孔206c…に沿って左右に位置調整可
能であり、その位置調整によって車両の左右方向の旋回
特性を均一にすることができる。
【0048】従って、チェンジレバー10を操作してコ
ントロール軸209を前後に回動させると、ミキシング
レバー224がガイド溝206aに沿って前後に揺動す
る。また、ステアリングハンドル8を操作してガイド部
材206をピボット205,205回りに左右に揺動さ
せると、ミキシングレバー224の上部外周に回転自在
に支持したガイドローラ255がガイド溝206aの左
右両側縁に当接して押圧され、ミキシングレバー224
は枢支ピン223回りに左右に揺動する。その際にミキ
シングレバー224とガイド溝206aの両側縁との間
に形成された隙間により、ミキシングレバー224はス
テアリングハンドル8の切れ角が小さい間は揺動せず、
切れ角が所定の値を越えると前記側縁がガイドローラ2
55に当接してミキシングレバー224が揺動し始め
る。
【0049】図20から明らかなように、前記ガイド溝
206aは瓢箪形ないしはボーリングのピン形に形成さ
れており、その左右方向の溝幅は、ミキシングレバーの
a位置(車速V=0km/h)に対応する部分で最も広
く、そこからb位置(車速V=2.5km/h)に対応
する部分に向かって漸減するとともに、そこからc位置
(車速V=5.2km/h)に対応する部分に向かって
略一定に保持される。また前記溝幅は、ミキシングレバ
ーのa位置(車速V=0km/h)に対応する部分から
d位置(車速V=−2.5km/h)に対応する部分に
向かって漸減する。
【0050】支持板202の上面に植設した左右一対の
枢軸226,226に、左右一対のコントロールアーム
227L ,227R の基端がカラー228,228を介
して前後揺動自在に支持される。各枢軸226に上下2
枚のニュートラルプレート229,230が枢支されて
ニュートラルスプリング231で相互に接近する方向に
付勢されており、両ニュートラルプレート229,23
0間に各コントロールアーム227L ,227R に下向
きに固設したニュートラルピン232と支持板202に
上向きに固設したニュートラルピン233とが挟持され
る。従って、コントロールアーム227L ,227R
ニュートラル位置、即ち左右方向に一直線に延びる位置
に向けて付勢される。
【0051】図18から明らかなように、枢軸226の
外周とカラー228の内周との間に上下一対のオイルレ
スブッシュ265,266が介装されており、カラー2
28に設けたグリスニップル267内のグリス溜が、両
オイルレスブッシュ265,266、枢軸226及びカ
ラー228によって囲まれた環状空間269に連通して
いる。従って、前記グリスニップル267からグリスを
注入するだけでオイルレスブッシュ265,266の摺
動面に給油することができ、オイルレスブッシュ26
5,266自身が備える低摩擦性と相俟ってカラー22
8をスムーズに回動させることが可能となる。これによ
り、チェンジレバー10及びステアリングハンドル8の
微妙な操作に追随してコントロールアーム227L ,2
27R をスムーズに回動させ、作業車両1を正確にコン
トロールすることが可能となる。
【0052】ミキシングレバー224に固定したブラケ
ット256の左右両端にはそれぞれ内側ボールジョイン
ト244,244が設けられる。またコントロールアー
ム227L ,227R の先端には該コントロールアーム
227L ,227R の長手方向に沿って延びる長孔22
7a,227aが形成されており、この長孔227a,
227aにボルト245,245を介して外側ボールジ
ョイント246,246が摺動自在に支持される。内側
ボールジョイント244,244と外側ボールジョイン
ト246,246とは、ターンバックル式に長さを調節
し得る一対のプッシュプルロッド247L ,247R
連結される。ミキシングレバー224が垂直なニュート
ラル位置(図20のa位置)にあるとき、上部から見て
プッシュプルロッド247L ,247R はコントロール
アーム227L ,227R に一直線に重なっている。
【0053】左右のコントロールアーム227L ,22
R の中間部に設けた一対の前側ボールジョイント24
8,248と、トランスミッションTの一対の斜板軸1
20,120の上端に設けた前記変速アーム249L
249R の先端に設けた一対の後側ボールジョイント2
50,250とが、ターンバックル式に長さを調節し得
る一対のプッシュプルロッド270L ,270R で連結
される。プッシュプルロッド270L ,270R との干
渉を回避すべく、ガイド部材206の後面に開口206
bが形成される。而して、チェンジレバー10及びステ
アリングハンドル8を操作すると、変速操作装置Mのコ
ントロールアーム227L ,227R の揺動に連動して
トランスミッションTの変速アーム249L ,249R
が揺動し、左右の後輪Wr,Wrの回転数が増減する。
【0054】次に、図14及び図17に基づいて、作業
車両1の直進性を調整するための調整手段271の構造
を説明する。
【0055】ベース部材201に支持されたコントロー
ル軸209は、前後回動自在であるだけでなく軸方向に
も僅かに摺動自在である。ベース部材201の左側面に
は、上壁2721 、側壁2722 及び下壁2723 を有
する断面コ字状のブラケット272が固着されており、
コントロール軸209の延長線上に位置するようにブラ
ケット272の側壁2722 に形成した孔2725 を貫
通する調整ボルト273の先端が、コントロール軸20
9の左端面2091 に開口するボルト孔209 2 に螺入
される。
【0056】調整ボルト273には2個のロックナット
274,275が螺入されており、調整ボルト273の
頭部2731 とブラケット272の左側面との間にワッ
シャ276が配設されるとともに、左側のロックナット
274とブラケット272の右側面との間にワッシャ2
77が配設される。2個のロックナット274,275
は相互に圧接されて調整ボルト273に対してロックさ
れており、2枚のワッシャ276,277とブラケット
272の左右側面との間には僅かな隙間が設けられてい
る。従って、調整ボルト273はブラケット272に対
して回転可能且つ軸方向摺動不能に支持される。
【0057】更に、調整ボルト273にはフランジ27
1 付のロックナット278が螺入されており、このロ
ックナット278を回転させてフランジ2781 をコン
トロール軸209の端面2091 に圧接することによ
り、調整ボルト273とコントロール軸209とが相対
回転不能に結合される。前記3個のロックナット27
4,275,278は、前後方向に開口するブラケット
272の開口部2724 内に配置される。
【0058】而して、ナット回しやねじ回し等の工具T
1 を調整ボルト273の頭部273 1 に係合させて該調
整ボルト273を回り止めした状態で、ブラケット27
2の開口部からスパナ等の工具T2 を挿入してロックナ
ット278を緩めることにより、コントロール軸209
と調整ボルト273との結合を解除することができる。
この状態から前記工具T1 で調整ボルト273を締め込
むと、該調整ボルト273に螺合するコントロール軸2
09が引かれて図17の矢印A方向に移動し、逆に調整
ボルト273を緩めるとコントロール軸209は押され
て図17の矢印B方向に移動する。このようにしてコン
トロール軸209の軸方向位置が調整されると、工具T
1 で調整ボルト273を回り止めした状態で、工具T2
でロックナット278を締め込んで調整ボルト273を
コントロール軸209に相対回転不能に結合する。
【0059】上述のようにしてコントロール軸209の
左右位置を微調整すると、このコントロール軸209に
枢支したミキシングレバー224と共に左右のプッシュ
プルロッド247L ,247R も左右方向に移動する。
その結果、図18から明らかなように、プッシュプルロ
ッド247L ,247R の外側ボールジョイント24
6,246を支持するボルト245,245を、コント
ロールアーム227L ,227R の長孔227a,22
7aに沿って移動させ、左右の長孔227a,227a
の隙間α,αが均一になるように調整することができ
る。
【0060】ところで、隙間α,αの調整をターンバッ
クル式のプッシュプルロッド247 L ,247R で行う
ことも可能であるが、プッシュプルロッド247L ,2
47 R は2本あるために調整個所が多いだけでなく、そ
の上部がガイドプレート206dによって覆われている
ために作業性が極めて悪い問題がある(図18参照)。
しかしながら、本実施例では1本の調整ボルト273だ
けで調整を行うことができるばかりか、工具T1 により
操作されるボルト273の頭部2731 がブラケット2
72の側壁2722 の外側面に露出しており、しかも工
具T2 により操作されるロックナット278が前後に開
口するブラケット272の開口部272 4 内に配置され
ているので上記調整作業を極めて容易に行うことができ
る。
【0061】次に、前述の構成を備えた本発明の実施例
の作用について説明する。
【0062】左右のコントロールアーム227L ,22
R が共にニュートラル位置から前方に揺動すると左右
の静油圧式無段変速機103L ,103R の正転方向の
回転数が増加し、作業車両1は0km/h〜+5.2k
m/hの車速で前進走行する。左右のコントロールアー
ム227L ,227R が共にニュートラル位置から後方
に揺動すると左右の静油圧式無段変速機103L ,10
R の逆転方向の回転数が増加し、作業車両1は0km
/h〜−2.4km/hの車速で後進走行する。作業車
両1の旋回時には左右のコントロールアーム227L
227R のニュートラル位置からの揺動角に差が生じ、
旋回外側走行駆動輪速度Voが増加するとともに旋回内
側走行駆動輪速度Viが減少する。その結果、ステアリ
ングハンドル8の操作による前輪Wf,Wfの操舵と相
俟って作業車両1を旋回させることができる。また、旋
回外側走行駆動輪のみを駆動して旋回内側走行駆動輪の
駆動を停止すれば、作業車両1を信地旋回させることが
できる。
【0063】以下、ステアリングハンドル8及びチェン
ジレバー10の操作と作業車両1の挙動との関係を、図
19及び図20を参照して詳述する。
【0064】チェンジレバー10がニュートラル位置に
あるとき作業車両1は停止しており、このとき左右方向
に真っ直ぐ延びた左右のコントロールアーム227L
227R の上部に左右のプッシュプルロッド247L
247R が重なっている(図19(C)及び図20のa
位置参照)。この状態でステアリングハンドル8を例え
ば左旋回方向に操作すると、ガイド部材206がピボッ
ト205,205回りに右側に揺動し始める。ステアリ
ング切れ角θを限界切れ角にしても、ガイド部材206
のガイド溝206aの左縁はミキシングレバー224に
当接しない。
【0065】作業車両1を前進走行させるべくチェンン
ジレバー10をニュートラル位置から前方に揺動させる
と、チェンジレバー10に接続されたコントロール軸2
09が前方に回動し、このコントロール軸209に支持
されたミキシングレバー224も前方に揺動する。その
結果、ミキシングレバー224の上部に設けた内側ボー
ルジョイント244,244が前方に移動し、この内側
ボールジョイント244,244にプッシュプルロッド
247L ,247R を介して接続された外側ボールジョ
イント246,246が前方内側に引っ張られる。
【0066】その結果、外側ボールジョイント246,
246のボルト245,245が前記隙間α分だけ移動
した後に(図18参照)、該ボルト245,245に長
孔227a,227aの内端を引かれた左右のコントロ
ールアーム227L ,227 R が、ニュートラルスプリ
ング231,231に抗して等しい角度だけ前方に揺動
する(図19(B)、(A)及び図20のb、c位置参
照)。このように左右のコントロールアーム227L
227R が前方に同量だけ揺動すると、その揺動量に応
じた車速(0km/h〜+5.2km/h)で作業車両
1が前進走行する。
【0067】上述のようにして作業車両1を前進発進さ
せるとき、調整手段271によってコントロールアーム
227L ,227R の長孔227a,227aの隙間
α,αを予め均一になるように調整しているため、左右
のコントロールアーム227L,227R を同じタイミ
ングで揺動させて左右の後輪Wr,Wrを同じタイミン
グで駆動し、発進時における作業車両1の直進性を確保
することができる。
【0068】ミキシングレバー224から左右変速アー
ム249L ,249R に至るリンク系には左右不均一な
ガタがあり、また左右の油圧ポンプ112,112間及
び左右の油圧モータ113,113間にも微妙な性能差
があるため、隙間α,αは必ずしも左右均一になるよう
に調整する必要はなく、要するに作業車両1の直進性能
が得られるように調整すれば良い。尚、作業車両1を後
進発進させるときにも、前進発進させる場合と同様に直
進性を確保することができることは言うまでもない。
【0069】車両の前進走行中にステアリングハンドル
8を例えば左旋回方向に操作してステアリング切れ角θ
が所定値に達すると、右側に揺動したガイド部材206
のガイド溝206aの左縁がミキシングレバー224に
当接し(図20のb′,c′位置)、ミキシングレバー
224が右側に揺動する。その結果、図19(B)、
(A)に鎖線で示すように、左右のプッシュプルロッド
247L ,247R が右方向に移動し、左側のコントロ
ールアーム227L の前方への揺動角が鎖線位置まで増
加するとともに、右側のコントロールアーム227R
前方への揺動角が鎖線位置まで減少する。これにより、
左側の静油圧式無段変速機103L のモータ軸121の
回転数が増加して右側の後輪Wrの速度が増加し、右側
の静油圧式無段変速機103R のモータ軸121の回転
数が減少して左側の後輪Wrの速度が減少或いは停止す
る。
【0070】また、チェンジレバー10をニュートラル
位置から後方に揺動させると、左右のコントロールアー
ム227L ,227R が前進走行の場合と前後対称に後
方に揺動するため、作業車両1はコントロールアーム2
27L ,227R の後方揺動量に応じた車速(0km/
h〜−2.4km/h)で後進走行する(図19(D)
及び図20のd位置参照)。
【0071】この後進走行の場合にも、ステアリングハ
ンドル8を例えば左旋回方向に操作してステアリング切
れ角θが所定値に達すると、ガイド部材206のガイド
溝206aの左縁がミキシングレバー224に当接し
(図20のd′位置)、ミキシングレバー224が右側
に揺動する。その結果、図19(D)に鎖線で示すよう
に、左右のプッシュプルロッド247L ,247R が右
方向に移動し、プッシュプルロッド247L ,247R
を介して左側のコントロールアーム227L の後方への
揺動角が鎖線位置まで増加するとともに、右側のコント
ロールアーム227R の後方への揺動角が鎖線位置まで
減少する。これにより、左側の静油圧式無段変速機10
L のモータ軸121の回転数が増加して右側の後輪W
rの速度が増加し、右側の静油圧式無段変速機103R
のモータ軸121の回転数が減少して左側の後輪Wrの
速度が減少する。
【0072】以上、ステアリングホイール8を左旋回方
向に操作した場合について説明したが、ステアリングホ
イール8を右旋回方向に操作した場合の作用も実質的に
同一である。
【0073】上述したように、ステアリングハンドル8
の操作とチェンジレバー10の操作とをミキシングして
トランスミッションTを制御することが可能となる。し
かも、ステアリングハンドル8及びチェンジレバー10
の一方を操作しても、その操作が他方に干渉することが
ないため、作業員の運転操作を簡素化して疲労を軽減す
ることができる。
【0074】次に、図21及び図22のグラフを併せて
参照しながら、上記作用を更に詳しく説明する。
【0075】図21は、横軸にステアリング切れ角θ
(0°〜360°)を取り、縦軸に車輪速比(旋回内側
走行駆動輪速度Vi/旋回外側走行駆動輪速度Vo)を
取ったもので、破線はニュートラルステアライン(旋回
内側走行駆動輪及び旋回外側走行駆動輪が何れもスリッ
プしない車輪速比)を示している。
【0076】車速Vが例えば1.0km/hの場合に
は、ガイド溝206aの溝幅が広いためにステアリング
切れ角θが0°〜300°の領域で車輪速比Vi/Vo
が1.0になって仮想的なデフロック状態となり、低車
速時における操舵応答性を鈍くすることができる。ステ
アリング切れ角θ=308°においてニュートラルステ
アラインを上から下に横切ることにより、操舵特性はア
ンダーステア状態からオーバーステア状態に移行する。
そしてステアリング切れ角θ=324°において旋回内
側走行駆動輪速度Vi=0になって信地旋回状態に移行
した後、ステアリング切れ角θ=360°まで旋回内側
走行駆動輪速度Vi=0を保ったまま旋回外側走行駆動
輪速度Voが増加する。
【0077】車速V=1.5km/hの場合は、前述し
た車速V=1.0km/hの場合とほぼ同じであり、ス
テアリング切れ角θが0°〜270°の領域でデフロッ
ク状態、ステアリング切れ角が270°〜285°の領
域でアンダーステア状態、ステアリング切れ角が285
°〜324°の領域でオーバーステア状態、ステアリン
グ切れ角が324°〜360°の領域で信地旋回状態と
なる。
【0078】車速V=2.5km/hの場合は、ステア
リング切れ角θが0°〜180°の領域でデフロック状
態、ステアリング切れ角が180°〜215°の領域で
アンダーステア状態、ステアリング切れ角が215°〜
324°の領域でオーバーステア状態、ステアリング切
れ角が324°〜360°の領域で信地旋回状態とな
る。信地旋回が行われる車速Vは、後輪Wr,Wrの外
径を前述の如く増加させた場合でも十分機能するように
考慮すると、V=3.0km/hが限界であり、後輪W
r,Wrの外径を増加させた車両では、それ以上の車速
Vではリンクの関係からステアリング切れ角θを限界切
れ角(θ=360°)としても信地旋回状態にはならな
い。
【0079】後輪Wr,Wrの外径の変化を考慮する
と、車速Vが3.0km/h〜3.4km/hの領域で
はステアリング切れ角θの増加に応じてオーバーステア
状態に移行するが、それ以上の車速(図21にはV=
3.5km/hの場合を示す)ではステアリング切れ角
θが増加してもオーバーステア状態に移行することはな
い。
【0080】一方、作業車両1の後進走行時には、限界
切れ角(θ=360°)に近づくまでデフロック状態の
保持され、限界切れ角の近傍でアンダーステア状態に移
行する。従って、後進走行時にオーバーステア状態や信
地旋回状態に移行することはない。
【0081】このように、車体の安定性が高い低速前進
走行時(作業時)には比較的に小さいステアリング切れ
角θでオーバーステア状態や信地旋回状態にして旋回性
能を高めることができ、しかも車体の安定性が低い高速
前進走行時(路上走行時)や後進走行時にはオーバース
テア状態や信地旋回状態を不使用とすることにより、車
体の安定性を充分に確保することができる。
【0082】図22は、横軸に直進走行時における左右
の車軸回転数を取り、縦軸にステアリングハンドル8の
限界切れ角(θ=360°)における旋回内側走行駆動
輪の回転数と旋回外側走行駆動輪の回転数とを別個に取
ったものである。尚、括弧内の車速は後輪Wr,Wrの
外径を前述した如く1.15倍した場合の数値であ
る)。
【0083】前進走行時には、車速Vが0km/h〜
2.5km/h(0km/h〜3.0km/h)の信地
旋回領域(第1の車速領域)では、旋回内側走行駆動輪
回転数はゼロであり、旋回外側走行駆動輪回転数は直進
時の回転数よりも2〜3倍に増速される。車速Vが2.
5km/h〜3.4km/h(3.0km/h〜3.9
km/h)のオーバーステア領域(第2及び第3の車速
領域)及び車速Vが3.4km/h〜5.2km/h
(3.9km/h〜6.0km/h)のアンダーステア
領域(第3の車速領域)では、旋回内側走行駆動輪回転
数は線型に増加し、旋回外側走行駆動輪回転数は非線型
に増加する。一方、後進走行時には、車速Vが0km/
h〜−2.4km/h(0km/h〜−2.8km/
h)の全ての領域(第2の車速領域)がニュートラルス
テア領域となる。
【0084】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発
明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の設計
変更を行うことが可能である。
【0085】例えば、実施例では4輪車両を例示した
が、本発明は操舵輪が1輪の3輪車両、前輪Wf,Wf
が走行駆動輪であり後輪Wr,Wrが操舵輪である4輪
車両、操舵輪を備えずに走行駆動輪がクローラである車
両に対しても適用することができる。
【0086】また、実施例では回転角の大きい丸型のス
テアリングハンドルを例示したが、回転角の小さいバー
ハンドルであっても良い。
【0087】更に、実施例では2ポンプ2モータ型のト
ランスミッションを例示したが、本発明は1ポンプ2モ
ータ型のトランスミッションに対しても適用することが
できる。また、2ポンプ2モータ型のトランスミッショ
ンを採用した場合には、油圧モータのモータ斜板を制御
する代わりに油圧ポンプのポンプ斜板を制御しても良
い。
【0088】更にまた、実施例では無段変速機として静
油圧式無段変速機103L ,103 R を例示したが、静
油圧式無段変速機103L ,103R に代えて、ベルト
式無段変速機、コーン式無段変速機、摩擦式無段変速機
等の任意の無段変速機を採用することができる。
【0089】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明
によれば、コントロール軸の軸方向位置を変化させてミ
キシングレバーの左右位置を微調整するだけで、ミキシ
ングレバーと左右の無段変速機の速度調整部材との相対
位置を変化させて車両の直進性を調整することができる
ので、その調整個所を最小限に抑えて作業を効率化する
ことができる。
【0090】また請求項2に記載された発明によれば、
ベース部材に設けた支持部に支持したボルトを回転させ
るだけでコントロール軸の軸方向位置を変化させること
ができるので作業性が極めて高く、短時間で調整作業を
行うことが可能となる。
【0091】また請求項3に記載された発明によれば、
ボルトの頭部及びナットに外部から工具を容易に係合さ
せることができるので、作業性をより一層高めることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】作業車両の全体側面図
【図2】図1の2方向矢視図
【図3】図1の要部拡大図
【図4】図1の要部拡大図
【図5】図2の要部拡大図
【図6】図2の要部拡大図
【図7】図4の要部拡大図
【図8】図7の8−8線断面図
【図9】図8の要部拡大図
【図10】図8の要部拡大図
【図11】図7の11−11線断面図
【図12】油圧回路図
【図13】図6の13−13線拡大断面図
【図14】図13の14−14線断面図
【図15】図13の15方向矢視図
【図16】図13の16−16線断面図
【図17】図14の17−17線拡大断面図
【図18】図14の要部拡大図
【図19】作用の説明図
【図20】作用の説明図
【図21】ステアリング切れ角と車輪速比との関係を示
すグラフ
【図22】ステアリングハンドルの限界切れ角における
車軸回転数を示すグラフ
【符号の説明】
8 ステアリングハンドル 10 チェンジレバー 103L 静油圧式無段変速機(無段変速機) 103R 静油圧式無段変速機(無段変速機) 201 ベース部材 209 コントロール軸 224 ミキシングレバー 249L 変速アーム(速度調整部材) 249R 変速アーム(速度調整部材) 270L プッシュプルロッド(連結部材) 270R プッシュプルロッド(連結部材) 271 調整手段 272 ブラケット(支持部) 2724 開口部 273 調整ボルト(ボルト) 2731 頭部 278 ロックナット(ナット) Wr 後輪(走行駆動輪)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 市川 勝久 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式 会社本田技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−28052(JP,A) 実開 昭61−46614(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B62D 11/00 - 11/24

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の無段変速機(103L ,10
    R )に接続された左右の走行駆動輪(Wr)の回転数
    を独立に制御して走行及び旋回を行うべく、ベース部材
    (201)に前後回動自在に支持されてチェンジレバー
    (10)の操作により前後回動するコントロール軸(2
    09)と、コントロール軸(209)に左右揺動自在に
    枢支され、コントロール軸(209)の前後回動に応じ
    て前後揺動し、且つステアリングハンドル(8)の操作
    により左右揺動するミキシングレバー(224)と、ミ
    キシングレバー(224)を一対の無段変速機(103
    L ,103R )の速度調整部材(249L ,249R
    に連結する連結部材(270 L ,270R )とを備えて
    なり、ミキシングレバー(224)の前後揺動により一
    対の無段変速機(103L ,103R )の出力回転数を
    実質的に同一回転数で増減速させるとともに、ミキシン
    グレバー(224)の左右揺動により一対の無段変速機
    (103L ,103R )の出力回転数を相互に異なる回
    転数で増減速させる無段変速駆動車両の操舵装置であっ
    て、 前記コントロール軸(209)の軸方向位置を変化させ
    てミキシングレバー(224)の左右位置を微調整する
    調整手段(271)を備えたことを特徴とする無段変速
    駆動車両の操舵装置。
  2. 【請求項2】 前記調整手段(271)が、ベース部材
    (201)に設けた支持部(272)に一端が回動可能
    且つ軸方向移動不能に支持され、他端がコントロール軸
    (209)の軸端面に螺合するボルト(273)と、こ
    のボルト(273)をコントロール軸(209)に相対
    回転不能に結合するナット(278)とからなることを
    特徴とする、請求項1記載の無段変速駆動車両の操舵装
    置。
  3. 【請求項3】 前記支持部(272)の外側面に前記ボ
    ルト(273)の頭部(2731 )を係止するととも
    に、前記支持部(272)を前後方向に貫通する開口部
    (2724 )内に前記ナット(278)を配置したこと
    を特徴とする、請求項2記載の無段変速駆動車両の操舵
    装置。
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