JP2980262B2 - ニードルパンチ不織布の製造方法 - Google Patents

ニードルパンチ不織布の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、絡合度が高くかつ表面
平滑性に優れた不織布を、少ないニ−ドル針打数で効果
的に製造する不織布の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】昨今、人工皮革等不織布を用いた製品の
高品質化が強く望まれ、とくに不織布段階での絡合度及
び表面平滑性の品質向上が極めて強く要求されている。
かかる要望に対して、今まで種々の提案が成されてき
た。
【0003】例えば、均質な内部構造および優れた表面
平滑性を有する不織繊維シ−トの製造方法が、特公昭4
9−10632号公報に提案されている。かかる方法
は、それなりの効果はあるものの、目標とする繊維絡合
度を得るためには、非常に多くのニ−ドル針打数を必要
とし、コスト面,設備面のデメリットが大きい。また、
特開昭61−12962号公報には、効率的なニ−ドル
パンチ処理を行うためのニ−ドル針の改良が提案されて
いるが、本発明の目的としているような表面平滑性に極
めて優れた不織布を効率的に製造するための方策に関し
ては提案されていない。更に、特開昭61−55250
号公報には、バ−ブの繊維把持能とニ−ドル突刺し深さ
の組合わせにより絡合度が高くかつ高品位な不織布の製
造方法が提案されているが、該提案においても高効率と
いう点では満足できるものではない。
【0004】すなわち、かかる提案はそれなりの効果は
認められるものの、絡合度及び表面平滑性が極めて優れ
た不織布を高効率に製造するという点では、不十分なも
のであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
技術は、絡合度及び表面平滑性が極めて優れた不織布を
高効率に製造するという点では満足できる物ではなかっ
た。本発明はかかる従来技術の上記問題点を解決するも
のであり、特に人工皮革の製造に適した繊維の絡合度及
び表面平滑性に極めて優れた不織布を高効率に製造する
方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は以下の如き構成
を有するものである。即ち、本発明はステ−プルからな
るウェッブに、ニ−ドルパンチ処理を施し、不織布を製
造するに際し、不織布の層間剥離強力が6〜8kg/inch
になるまでは、バ−ブのアンダ−カットアングルが20
〜35度、キックアップの大きさが繊維直径の1.2〜
1.8倍、スロ−トディプスの大きさが繊維直径の1.
5〜2.5倍である1バ−ブニ−ドル針を用いてニ−ド
ルパンチ処理を行い、続いて、ノ−キックアップタイプ
でスロ−トディプスの大きさが繊維直径の2〜4倍であ
る1バ−ブニ−ドル針を用いて少なくとも500本/cm
2の針打数のニ−ドルパンチ処理を行うことを特徴とす
る不織布の製造方法である。
【0007】本発明に使用するステ−プルにはとくに制
限はなく、単成分系繊維でも多成分系繊維でもよく、ま
た繊維成分としても特に限定はされないが一般に用いら
れる合成繊維が好ましく用いられる。また繊維カット長
は25〜150mm、繊維デニ−ルは1.5〜10デニ−
ルと通常のものが好ましく用いられる。またウエッブ目
付は100〜1000g/m2と通常用いられる範囲で良
いが本発明の効果を顕著に示すためには200〜700
g/m2の物が好ましい。
【0008】本発明におけるニ−ドルパンチは大きく2
つの段階に分けられ、前段階はバ−ブのアンダ−カット
アングルが20〜35度、キックアップの大きさが繊維
直径の1.2〜1.8倍、スロ−トディプスの大きさが
繊維直径の1.5〜2.5倍である1バ−ブニ−ドル針
を用いて、不織布の層間剥離強力が6〜8kg/inchにな
るまでニ−ドルパンチ処理を行う工程で、その目的は、
表面の地合いの荒れを極力防いだ範囲内で高効率に繊維
絡合度を上昇せしめる工程であり、後段階は、ノ−キッ
クアップタイプでスロ−トディプスの大きさが繊維直径
の2〜4倍である1バ−ブニ−ドル針を用いて少なくと
も500本/cm2の針打数のニ−ドルパンチ処理を行う
工程で、その目的は、表面平滑性を向上させるものであ
る。これらの2つの段階の組合わせにより、従来技術で
はおよそ3000本/cm2以上の針打数が必要とされた
レベルの高絡合度及び高表面平滑性が約1000本/cm
2程度の針打数で達成されるのである。この事は、針寿
命、設備面等のコスト面において大きなメリットであ
る。
【0009】前段階で用いるニ−ドル針は、バ−ブのア
ンダ−カットアングルが20〜35度、キックアップの
大きさが繊維直径の1.2〜1.8倍、スロ−トディプ
スの大きさが繊維直径の1.5〜2.5倍である1バ−
ブニ−ドル針であるが、本発明者等はニ−ドルパンチ処
理の前段階としてこの仕様の針を用いることが本発明の
目的に最も適っていることを多大な試行錯誤の中から見
出したのである。ただし、不織布の層間剥離強力が6〜
8kg/inchになるまでこの針でニ−ドルパンチ処理する
必要がある。6kg/inchに達しない間に後段階に移る
と、本発明の目的とするレベルの絡合度を得るためには
ニ−ドル針打数が多く必要となり効率が悪く、8kg/in
chを越えるまでパンチ処理すると前段階で生じた表面の
地合いの荒れやニ−ドルマ−クを後段階で修正するのが
困難となる。不織布の層間剥離強力がこの範囲になるま
での必要パンチ数はもちろん使用する繊維やステ−プル
の形状によって異なるが通常人工皮革等に用いられる合
成繊維よりなるステ−プルであれば、およそ500本/
cm2程度の針打数で達成される。
【0010】なお、本発明にいう不織布の層間剥離強力
は、不織布の絡合状態を示す指標であり、不織布をたて
方向に1inch巾で23cm長さに切取り、厚さのほぼ真中
にカミソリで切れ目を入れ長さ約10cm程度を剥離さ
せ、つかみ間隔13cm、引張り速度20cm/minで剥離
させたときの平均剥離強力をいう。測定値はn=2の平
均値で表わす。
【0011】続いて、後段階ではノ−キックアップタイ
プでスロ−トディプスの大きさが繊維直径の2〜4倍で
ある1バ−ブニ−ドル針を用いて少なくとも500本/
cm2の針打数のニ−ドルパンチ処理を行うが、前段階に
比べればニ−ドル針のバ−ブが各々のニ−ドル針打で繊
維を捕捉する確率及び1回のニ−ドル針打でバ−ブが捕
捉する繊維の平均本数と繊維捕捉時間は小さくなる。つ
まり、ニ−ドルパンチ処理効率は落ちるが、この段階で
不織布の表面平滑性を向上せしめ、しかもニ−ドルマ−
ク等の品位をも向上させるのである。前段階で上記程度
まで絡合した不織布の品位向上を図るには少なくとも5
00本/cm2の針打数のニ−ドルパンチ処理が必要であ
るというのが本発明者等の出した結論である。
【0012】両段階に用いるニ−ドル針の仕様として
は、もちろん繊維束の塊の生成を防ぐために1バ−ブを
用いており、そのブレ−ド部の断面形状に関してはとく
に制限はないが、一般に用いられる正三角形の場合には
その一辺の長さが0.3〜0.7mmのものが針跡の点か
ら好ましく用いられる。また、針先端からのバ−ブ位置
は本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はな
いが、3〜7mmの範囲が好ましい。
【0013】
【実施例】次に本発明を具体的な実施例で説明するが、
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。な
お、実施例中の部および%は特に断わりのない限り重量
に関するものである。
【0014】実施例−1 3デニ−ルのポリエチレンテレフタレ−ト(密度1.3
g/cm3)からなる合成繊維に捲縮を与え、50mmにカ
ットしたステ−プルを開綿し、カ−ドに通し、クロスラ
ッパ−により目付400g/m2のシ−ト状ウエッブとし
た。これをバ−ブのアンダ−カットアングルが27度、
キックアップが27ミクロン(繊維直径の約1.5
倍)、スロ−トディプスが36ミクロン(繊維直径の約
2倍)、スロ−ト長が1mm、針先端からのバ−ブ位置が
5mm、ブレ−ド部の断面形状が正三角形であってその一
辺の長さが0.7mm(32番手)である1バ−ブニ−ド
ル針を用いて550本/cm2の針打数のニ−ドルパンチ
処理を行った。この段階での不織布の層間剥離強力は7
kg/inchであった。続いてノ−キックアップタイプでス
ロ−トディプスが54ミクロン(繊維直径の約3倍)で
ある1バ−ブニ−ドル針を用いて550本/cm2の針打
数のニ−ドルパンチ処理を行った。得られた不織布は表
面平滑性に極めて優れ、かつ不織布の層間剥離強力が9
kg/inchと高い絡合度を示し、また不織布の断面を観察
すると、大きな繊維束の塊は無く繊維が3次元的に高度
に絡合したものであった。
【0015】実施例−2 ポリエチレン50部、6−ナイロン50部からなる3デ
ニールの溶融混合紡糸繊維(2成分平均密度0.98g
/cm3)からなる複合繊維に、実施例−1と同様の処理
を行ない目付500g/m2のシ−ト状ウエッブを得た。
これをバ−ブのアンダ−カットアングルが20度、キッ
クアップが27ミクロン(繊維直径の約1.3倍)、ス
ロ−トディプスが41.5ミクロン(繊維直径の約2
倍)であって他の仕様は実施例−1の前段階で用いたの
と同じ針を用いて、500本/cm2の針打数のニ−ドル
パンチ処理を行った。この段階での不織布の層間剥離強
力は6.5kg/inchであった。続いて実施例−1と同様
の後段階ニ−ドルパンチ処理を行った。得られた不織布
は実施例−1と同様表面平滑性に極めて優れ、かつ不織
布の層間剥離強力が8.5kg/inchと絡合度の高いもの
であった。また複合繊維によく見られるような糸割れも
ほとんど無かった。
【0016】比較例−1 実施例−2のシート状ウエッブに、実施例−2の前段階
で用いたのと同じ針を用いて、1000本/cm2の針打
数のニ−ドルパンチ処理を行った。得られた不織布の層
間剥離強力は10kg/inchと高いものであったが表面の
微凹凸が激しく表面平滑性に欠けており、ニ−ドルマ−
クも目立っていた。また繊維の割れも目立っており、後
半部のニ−ドル効果の減退が推測された。
【0017】比較例−2 実施例−2のシート状ウエッブに、実施例−2の後段階
で用いたのと同じ針を用いて、1500本/cm2の針打
数のニ−ドルパンチ処理を行った。得られた不織布の表
面平滑性は優れていたが、不織布の層間剥離強力が5kg
/inchと低く絡合度の低いものであった。また不織布の
断面を観察しても、3次元的な絡合度に劣ったものであ
った。更に、風合も充実感のないものであった。
【0018】比較例−3 実施例−1のシート状ウエッブに、バ−ブのアンダ−カ
ットアングルが20度、 キックアップが9ミクロン
(繊維直径の約0.5倍)、スロ−トディプスが100
ミクロン(繊維直径の約5.6倍)、スロ−ト長が1m
m、針先端からの第1バ−ブ位置が5mm、ブレ−ド部の
断面形状が正三角形であってその一辺の長さが0.7mm
(32番手)である9バ−ブニ−ドル針を用いて550
本/cm2の針打数のニ−ドルパンチ処理を行った。この
段階での不織布の層間剥離強力は8.5kg/inchであっ
た。続いて実施例−1と同様の後段階ニ−ドルパンチ処
理を行った。得られた不織布の層間剥離強力は10kg/
inchと高いものであったが表面平滑性に欠けており、ニ
−ドルマ−クも目立っていた。また不織布の断面を観察
すると、大きな繊維束の塊が多く、緻密な絡合状態が形
成されていなかった。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明によって、人
工皮革等に用いることのできる絡合度が高くかつ表面平
滑性に極めて優れた不織布を、少ないニ−ドル針打数で
効果的に製造でき、針寿命、設備製造、設備管理等の面
で大幅なコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる1バ−ブニ−ドル針のモデル図
である。
【図2】図1のバ−ブ部の拡大モデル図である。
【符号の説明】
1 バ−ブ、 2 針先端からのバ−ブ位置、 3 キックアップ、 4 スロ−トディプス、 5 アンダ−カットアングル、 6 スロ−ト長。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ステ−プルからなるウェッブに、ニ−ド
    ルパンチ処理を施し、不織布を製造するに際し、不織布
    の層間剥離強力が6〜8kg/inchになるまでは、バ−ブ
    のアンダ−カットアングルが20〜35度、キックアッ
    プの大きさが繊維直径の1.2〜1.8倍、スロ−トデ
    ィプスの大きさが繊維直径の1.5〜2.5倍である1
    バ−ブニ−ドル針を用いてニ−ドルパンチ処理を行い、
    続いて、ノ−キックアップタイプでスロ−トディプスの
    大きさが繊維直径の2〜4倍である1バ−ブニ−ドル針
    を用いて少なくとも500本/cm2の針打数のニ−ドル
    パンチ処理を行うことを特徴とする不織布の製造方法。
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JP6429563B2 (ja) * 2014-09-29 2018-11-28 ユニチカ株式会社 ニードルパンチ装置およびニードルパンチ方法
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