JP2978437B2 - 金属板の酸洗装置および酸洗方法 - Google Patents

金属板の酸洗装置および酸洗方法

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JP2978437B2 JP8048332A JP4833296A JP2978437B2 JP 2978437 B2 JP2978437 B2 JP 2978437B2 JP 8048332 A JP8048332 A JP 8048332A JP 4833296 A JP4833296 A JP 4833296A JP 2978437 B2 JP2978437 B2 JP 2978437B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は金属板の酸洗装置お
よび酸洗方法に関する。なお、本発明が適用される金属
板の代表的なものとしては炭素鋼熱間圧延鋼板、ステン
レス鋼熱間圧延鋼板、シリコン鋼熱間圧延鋼板など(以
下、ストリップという)があるが、これらに限られるも
のではない。
【0002】
【従来の技術】従来の酸洗装置の一例として、図9に示
すものがある(従来例I)。この従来例Iは、酸洗槽10
の入側にスケールブレーカ6としてテンションレベラー
やスキンパスミルを設置しており、ストリップSにスケ
ールブレーカ6で塑性伸びを与えて、スケールにクラッ
クを生じさせ、酸液中に浸漬したとき溶解反応を生じや
すくすることを狙ったものである。なお、1〜3は各酸
洗槽、4はリンス槽、5はドライヤーである。しかし、
この従来例Iでは各酸洗槽1〜3内で浸漬中に自然対流
的に酸液がスケールクラック中に入っていくのを待つだ
けであるので、クラック中にスケール溶解反応に充分な
塩酸が必要量入り込まず、溶解反応が遅れて、酸洗時間
が長くかかるという問題がある。
【0003】また、別の従来例として特開昭55−91983
号公報に記載された技術(従来例II)がある。この従来
例IIは図10に示すように、酸洗槽1内に曲げ加工ロール
54、55、56、57を千鳥状に配置し、ストリップSを酸液
中で曲げながら酸洗槽を通過させるものである。しか
し、この従来例IIでは、ストリップSは図11に示すよう
に入槽前の直進状態((a) 参照)から酸液中で曲げが加
えられ((b) 参照)、再び直進状態に戻る((c) 参照)
のであるが、曲げを加えた(b) 図の状態ではクラックc
に酸液が入るものの、その後直進状態に移るとクラック
cは閉鎖され酸液はクラックcから排出されるので、溶
解反応が停止してしまう。よって、従来例IIでも酸液時
間が長くかかるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑み、酸液を効果的に地金に接触させて溶解反応を促進
し、酸洗時間を短縮しうる酸洗装置および酸洗方法を提
供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の酸洗装置は、
酸洗槽が直列に接続された複数の槽からなり、該酸洗槽
の入側にストリップに塑性伸びを与えるスケールブレー
カを設置し、ストリップが最初に浸漬される第1槽に
液中に浸漬されたストリップに曲げ加工を施すベンディ
ング装置を設置したことを特徴とする。請求項の酸洗
装置は、前記酸洗槽を構成する各槽に、それぞれベンデ
ィング装置を配置したことを特徴とする。請求項の酸
洗装置は、前記酸洗槽が直列に接続された複数の槽から
なり、ストリップが最初に浸漬される第1槽にベンディ
ング装置を配置し、かつ該第1槽中の酸液の濃度を下流
の槽より高くしたことを特徴とする。
【0006】請求項の酸洗装置は、前記ベンディング
装置が、ストリップを挾むように対向させて配置したデ
フレクタロールおよびワークロールと、デフレクタロー
ルに支持されたストリップに対するワークロールの圧下
量を可変に調整するインターメッシュ調整機構からなる
ことを特徴とする。請求項の酸洗装置は、前記インタ
ーメッシュ調整機構が、ワークロールを昇降させる昇降
シリンダと、昇降シリンダのピストンロッドとワークロ
ールを連結する連結ロッドと、連結ロッドの上限位置を
可変に設定する上限ストッパと、連結ロッドの下限位置
を可変に調整する下限ストッパとからなることを特徴と
する。
【0007】請求項の酸洗方法は、酸洗槽に入る前の
ストリップに0.1 〜10%の塑性伸び率を与え、ついで酸
洗槽内の酸液に浸漬している間にストリップの表面歪が
前記塑性伸び率の0.2 〜1倍になるように曲げを加える
ことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施形態を図面
に基づき説明する。図1は請求項1の発明の一実施形態
に係る酸洗装置の説明図、図2はスケールブレーカ6の
説明図、図3はベンディング装置7の要部断面側面図、
図4はインターメッシュ調整機構の拡大図、図5はスケ
ール溶解反応の説明図、図6はスケール溶解実験を示す
グラフである。
【0009】図1において、10は酸洗槽で、酸洗第1槽
1、酸洗第2槽2、酸洗第3槽3からなり、下流側にリ
ンス槽4を備え、出側にドライヤー5を備えている。な
お、酸洗槽は図示の3槽に限られず、4槽以上でもよ
く、2槽でもよい。酸洗槽10の入側にはスケールブレー
カ6が設置されている。このスケールブレーカ6はテン
ションレベラーやスキンパスミル等で構成されるが、そ
の一例は図2に示すとおりである。すなわち、ブライド
ロール15、16の間に数基のワークロール11がパスライン
方向に離間して設けられ、バックアップロールで支えら
れている。そして、ワークロール11の前後には、デフレ
クタロール14が配置されている。12はワークロール11の
ストリップSに対する圧下量を調節する昇降機構であ
る。
【0010】上記のスケールブレーカ6では、ブライド
ロール15、16でストリップSに張力をかけておいて、ワ
ークロール11をデフレクタロール14間に適量突出させる
と、図5(a) に示すように地金aは伸びるが、表層のス
ケールbは伸びないためスケールbにクラックcを入れ
ることができる。
【0011】図1に示す酸洗槽10の第1槽1には2基の
ベンディング装置7が設置されている。このベンディン
グ装置7の詳細を図3〜4に基づき説明する。8はデフ
レクタロール、9はワークロールで、これらはストリッ
プSを挟むように配置されている。ワークロール9には
ロッド21が結合され、油圧シリンダで構成された昇降シ
リンダ22のピストンロッド23に連結ロッド24で結合され
ている。連結ロッド24には鍔25が形成されており、鍔25
の上方の連結ロッド24外周に上限ストッパ26が上下摺動
自在に嵌められ、鍔25の下方のロッド21外周に下方スト
ッパ27が上下摺動自在に嵌められている。上限ストッパ
26は外周に雄ネジが形成され、内周に雌ネジが形成され
たウォームホイール28と噛み合っており、ウォーム29を
モータ(図示省略)で回転させてウォームホイール28を
回転させると上限ストッパ26を上下に移動させ、その設
定位置を変えることができる。下限ストッパ27もウォー
ムホイール31とウォーム32で同様に、上下に移動させ、
その位置を変えるように構成されている。
【0012】上記の構成により、昇降シリンダ22を伸縮
させると、ワークロール9が昇降し、デフレクタロール
8に対するインターメッシュ量(圧下量)を迅速に調整
することができる。そして、上・下限ストッパ26、27の
設定位置を変えることによりインターメッシュ量(圧下
量)を正確に調整することができる。なお、上記のイン
ターメッシュ調整機構は迅速に圧下・開放操作できると
いう利点があるが、これに限らず任意の調整機構、たと
えばウォームジャッキなどを用いてもよい。
【0013】つぎに、図1および図5に基づき本実施形
態による酸洗方法を説明する。まず、スケールブレーカ
6でストリップSの塑性伸び率ε0 が0.1 〜10%となる
ように伸びを与える。ここでいう塑性伸び率ε0 とは、
スケールブレーカ処理前におけるストリップSのパスラ
イン方向の2点間の距離に対するスケールブレーカ処理
後の伸びの割合をいい、ε0 =(L´−L)Lで表され
る。ただし、Lはスケールブレーカ処理前の2点間の距
離、L´はスケールブレーカ処理後の2点間の距離であ
る。上記のように塑性伸びをストリップSに与えると、
既述のごとく図5(a) に示すように、地金aの表面のス
ケール6にクラックcが生じる。
【0014】ついで、ストリップSが酸洗槽10の第1槽
1内に入ると酸液に浸漬された状態で、ベンディング装
置7によって曲げが加えられる。この場合、ストリップ
Sの表面歪が前記塑性伸び率の0.2 〜1倍になるよう
に、ワークロール9とデフレクタロール8のインターメ
ッシュを調整する。なお表面歪とは、ストリップSを曲
げたときに生ずる板表面の歪をいい、ε´=t/2ρで
表される。ただし、ρは曲げの曲率半径( mm) 、 tは板
厚( mm) である。
【0015】上記のように、曲げを加えた状態では、ス
トリップSの外側はε´だけ伸び、内側はε´だけ縮む
ことになる。所望の表面歪を得るためには、ワークロー
ル9による曲げ半径ρを変えればよく、そのためにはデ
フレクタロール8に対するワークロール9のインターメ
ッシュ量(圧下量)を昇降シリンダ22を昇降させて変え
ればよい。
【0016】図5において、塑性伸びε0 に対する曲げ
表面歪ε´の割合、すなわちε´/ε0 =0.2 のとき
は、ストリップSの直進状態でのクラックcの隙間をδ
とすると(同図(a)参照)、曲げを加えたときの曲げ
の外側の隙間δは1.2 倍に広がり、曲げの内側の隙間δ
は0.8 倍に縮まる。この隙間δの開閉作用により、曲げ
の外側では新酸液をクラックc内に呼び込み、内側では
反応を終えた酸液をクラックcから排出することにな
る。また、ε´/ε0 =1のときは、曲げの外側の隙間
δは2倍となり、曲げの内側の隙間δは0となる。すな
わち、曲げの内側のクラックc内の酸液は全て排出さ
れ、その後ストリップSが直進状態に戻ると外部の酸液
を吸収することになる。よって、ε´/ε0 は1より大
きく曲げる必要はない。なお、ε´/ε0 =0.2 より小
さいと、酸液の吸引排出効果が少ないので、ε´/ε0
=0.2 〜1が好ましい範囲である。
【0017】図1の酸洗装置では2台のベンディング装
置7によりストリップSに表裏各1回ずつ曲げが加えら
れるが、この場合、図5(b) に示すように、曲げの外側
では新酸液が吸入され(符号i参照)、曲げの内側では
古い酸液の絞り出しが行われ(符号e参照)、つぎに曲
げが反転すると酸液の吸入と絞り出しが反対面で行われ
る。さらに図5(c) に示すように直進状態に移ると直前
の曲げ状態と反対の吸入iと絞り出しeが行われる。こ
のように、本発明では、スケールブレーカ6による塑性
伸びによって生じたクラックcに、ベンディング装置7
による曲げ作用によって、積極的に酸液をクラックcに
吸入排出させるので、常時新しい酸液によって、溶解反
応が進むことになり、酸洗い操作が効率よく短時間で行
えることになる。
【0018】酸液中でストリップSに加える曲げは、少
なくとも1回であるが、曲げ回数が多い程新酸液との接
触が多くなるので酸洗時間が短縮できるが、ある回数を
越えると酸洗いか完了するので、必要以上に曲げ回数を
増やす必要はない。必要な曲げ回数、したがってベンデ
ィング装置7の数は、ストリップの材質、板厚、スケー
ル厚さ等によって適正に選択すればよい。
【0019】図7の酸洗装置は請求項の発明の一実施
形態であり、酸洗槽10の第1槽1に2台のベンディング
装置7を、酸洗槽10の第2槽2に1台のベンディング装
置7を、酸洗槽10の第3槽3に1台のベンディング装置
をそれぞれ設置したもので、ストリップSの酸液中曲げ
を表裏各2回行えるようにしている。
【0020】図8の酸洗装置は請求項の発明の一実施
形態であり、酸洗槽10の第1槽1に3台のベンディング
装置7を設置しており、第1槽1内の酸液の濃度を下流
の槽より高く、たとえば15%としたものである。なお、
通常の酸液濃度は3〜10%である。
【0021】なお、図1、図6および図7はいずれも例
示であって、ここに図示していない構成も、請求項1の
範囲内で自由に採用することができる。
【0022】
【実施例】図6は本発明の酸洗装置および酸洗方法の実
験結果を示すグラフである。実験方法は、つぎのとおり
である。図7の酸洗装置を用い、ストリップSに酸液中
曲げを表裏各2回を加えた。酸液の濃度は各槽1、2、
3とも7%、ストリップの材質は低炭素熱延鋼板であ
り、板厚が2.3mm である。スケールブレーカ6で与えた
塑性伸び率ε0 =3%のものを実施例1とし、塑性伸び
率ε0 =0.5 %のものを実施例2とし、塑性伸び率ε0
=0%つまり伸びを与えていないのものを比較例1とし
て、それぞれについて塑性伸び率ε0 に対する曲げ表面
歪ε' の割合が0から1.2 までの間を6段階に区分し
て、酸洗時間を計測した。
【0023】結果は、図6のとおりであり、線Aは実施
例1を、線Bは実施例2を、線Cは比較例1を示す。比
較例1は酸洗時間が全く減少しておらず、酸洗前の塑性
伸びがなければ酸液中の曲げに効果が無いことが判る。
実施例1、2はいずれも酸洗前に塑性伸びを付与してい
るものであり、塑性伸び率ε0 の大きい実施例1の方が
実施例2より酸洗時間が短くなっている。これは塑性伸
び率ε0 が大きいほどクラックcが大きくなり、酸液と
の接触面積が大きくなるからと考えられる。そして、酸
液中の曲げによる表面歪ε' の前記塑性伸び率ε0 に対
する割合が大きくなるほど、酸洗時間が減少している。
これは曲げが大きいほどクラックcの開き加減や絞り出
し効果が顕著になり新液と旧液の入れ替りがより効果的
に行われるものと考えられる。
【0024】
【発明の効果】請求項1〜およびの発明によれば、
スケール層に予じめ形成したクラックに常に新しい酸液
を供給できるので、溶解反応が迅速になり酸洗時間を短
縮でき、酸洗槽の長さを短くして設備コストを低減した
り、酸洗槽の長さが従来と同じであれば通板ラインの速
度を上げて生産性を向上させることができる。請求項
の発明によれば、デフレクタロールに対するワークロー
ルの圧下量を自在に調整できるので、ストリップの板厚
に適した表面歪を与えることができ、曲げ加工によるク
ラックへの酸液の供給と絞り出しを最適化でき、効果的
に酸洗いを行わせることができる。請求項の発明によ
れば、昇降シリンダでワークロールを上下動させるの
で、ワークロールの上げ下げが迅速に行えタイムロスが
少なくなる。また、上・下限ストッパによりワークロー
ルの設定位置を正確に位置決めでき、かつ位置調整自在
であるので、インターメッシュの調整が正確かつ容易に
行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の一実施形態に係る酸洗装置の
説明図である。
【図2】スケールブレーカの説明図である。
【図3】ベンディング装置の要部断面側面図である。
【図4】インターメッシュ調整機構の拡大図である。
【図5】スケール溶解反応の説明図である。
【図6】スケール溶解実験を示すグラフである。
【図7】請求項の発明の一実施形態に係る酸洗装置の
説明図である。
【図8】請求項の発明の一実施形態に係る酸洗装置の
説明図である。
【図9】従来例Iの酸洗装置の説明図である。
【図10】従来例IIの酸洗装置の説明図である。
【図11】従来例IIの問題点の説明図である。
【符号の説明】
1 酸洗槽 6 スケールブレ
ーカ 7 ベンディング装置 8 デフレクタロ
ール 9 ワークロール 10 酸洗槽 22 昇降シリンダ 24 連結ロッド 25 鍔 26 上限ストッパ 27 下限ストッパ a 地金 b スケール c クラック

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸洗槽が直列に接続された複数の槽からな
    り、該酸洗槽の入側にストリップに塑性伸びを与えるス
    ケールブレーカを設置し、ストリップが最初に浸漬され
    る第1槽に酸液中に浸漬されたストリップに曲げ加工を
    施すベンディング装置を設置したことを特徴とする金属
    板の酸洗装置。
  2. 【請求項2】前記酸洗槽を構成する各槽に、それぞれベ
    ンディング装置を配置したことを特徴とする請求項1記
    載の酸洗装置。
  3. 【請求項3】前記酸洗槽が直列に接続された複数の槽か
    らなり、ストリップが最初に浸漬される第1槽にベンデ
    ィング装置を配置し、かつ該第1槽中の酸液の濃度を下
    流の槽より高くしたことを特徴とする請求項1記載の酸
    洗装置。
  4. 【請求項4】前記ベンディング装置が、ストリップを挾
    むように対向させて配置したデフレクタロールおよびワ
    ークロールと、デフレクタロールに支持されたストリッ
    プに対するワークロールの圧下量を可変に調整するイン
    ターメッシュ調整機構からなることを特徴とする請求項
    または2記載の酸洗装置。
  5. 【請求項5】前記インターメッシュ調整機構が、ワーク
    ロールを昇降させる昇降シリンダと、昇降シリンダのピ
    ストンロッドとワークロールを連結する連結ロッドと、
    連結ロッドの上限位置を可変に設定する上限ストッパ
    と、連結ロッドの下限位置を可変に調整する下限ストッ
    パとからなることを特徴とする請求項記載の酸洗装
    置。
  6. 【請求項6】酸洗槽に入る前のストリップに0.1 〜10%
    の塑性伸び率を与え、ついで酸洗槽内の酸液に浸漬して
    いる間にストリップの表面歪が前記塑性伸び率の0.2 〜
    1倍になるように曲げを加えることを特徴とする金属板
    の酸洗方法。
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