JP2973045B2 - 集合住宅における換気空調システム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はマンション等の集合住宅
における換気空調システムに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来集合住宅における個別換気手段とし
て換気口による自然換気、換気扇等の換気機器による強
制換気が一般によく知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが近年、玄関ド
ア、窓サッシ等の住宅部品の品質向上、施工精度や断熱
性能の向上等に伴う居住空間の気密性の高まりや厨房機
器等の機器類の大型化等に起因して従来の換気手段では
換気量が不足がちとなり、これが結露を生じてカビ、ダ
ニの発生要因となりその結果生活環境を悪化させたり、
住宅の耐久性を減ずる原因になるという問題があった。

【０００４】そこでかゝる問題を解決すべく居住空間上
の天井スペースに換気ダクト配管を施工し、強制換気装
置により居住空間とダクト配管で給気から排気までの空
気流を生起させ強制換気を行うようにしたものが提案さ
れている。しかしながらこのような換気手段によれば、
全体の構造、特に配管構造が複雑となって、設備費、工
事費が嵩むばかりでなく、その後のメンテナンスが面倒
である等の課題があった。

【０００５】本発明はかゝる実情にかんがみてなされた
もので、逆梁の床構造を備えた集合住宅において床下収
納空間層、床上居住空間層、および天井裏換気空間層を
三層の換気空間層に形成し、それらの空間層に換気用空
気を流通させて効率のよい換気を行うことができるよう
にし、前記課題を解決した集合住宅における換気空調シ
ステムを提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】前記目的達成のため、本
発明の第１の特徴とするところは、躯体の床スラブに上
向きに突出する逆梁を備え、該逆梁上に床板を敷設する
ことにより床板下に床下収納空間層を、また床板上に床
上居住空間層を形成してなる集合住宅において、前記床
上居住空間層の上方に天井裏換気空間層を形成し、床下
収納空間層と、床上居住空間層とを下部換気口を介して
相互に連通するとともに床上居住空間層と天井裏換気空
間層とを上部換気口を介して相互に連通し、さらに床下
収納空間層を躯体壁に沿って設けた換気通路を介して天
井裏換気空間層に連通し、前記床下収納空間層には、熱
交換器を設け、この熱交換器に連なる２系統の換気ダク
トを床上居住空間層および天井裏換気空間層にそれぞれ
連通するとともにその吹出，吸込ポートを直接床下収納
空間層に開口し、さらに熱交換器に連なる給，排気ダク
トを外気に開口した点にある。

【０００７】また本発明の第２の特徴とするところは、
前記第１の特徴に加えて前記熱交換器には２系統の給気
ダクトを接続して、それらの給気ダクトを南側および北
側外気にそれぞれ開口して南側外気と北側外気を選択的
に給気可能とした点にある。

【０００８】

【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例につい
て説明する。

【０００９】図１は本発明システムを備えた集合住宅
の、図２の１−１線に沿う縦断面図、図２は図１の２−
２線に沿う平面図、図３は夏季仕様の場合の換気の流れ
を示す図、図４は冬季仕様の場合の換気の流れを示す図
である。

【００１０】図１，２において、集合住宅は鉄筋コンク
リート構造よりなり、躯体Ｆの一部を構成する床スラブ
１により複数の階層に区画されている。各階層に設けら
れる個別専有空間Ｓは、前，後の躯体外壁２，３と、図
１において紙面と垂直な方向に隣接する隣りの個別専有
空間Ｓとの間を仕切る左，右躯体仕切壁４，５によって
区画されるとともに個別専有空間Ｓの四隅に躯体柱６が
立設されている。また南側に面する躯体外壁３の外側に
はバルコニー７が張り出され、また北側に面する躯体外
壁２の外側には通路８が張り出される。

【００１１】各床スラブ１の上面には、対向する躯体柱
６を継ぐ四本の逆大梁９が上向きに一体に突出形成され
るとともに、これら四本の逆大梁９の内側において、該
逆大梁９よりも僅かに高さの低い二本の逆小梁１０が床
スラブ１を横切るように互いに平行に一体に突出形成さ
れる。逆大梁９および逆小梁１０上には、複数の短い束
１１および１２が所定間隔を存して配設され、これらの
束１１および１２上には、床板１３が敷設される。そし
て床板１３とその下方の床スラブ１との間には、周囲を
逆大梁９で囲まれる密閉状の床下収納空間層１４が形成
される。而してこの床下収納空間層１４内は逆小梁１０
によって複数の区画部１４₁ ，１４₂ ，１４₃ に区画さ
れるが、逆小梁１０と床板１３間には、空気の流通間隙
が形成されることにより、床下収納空間層１４全域には
空気が自由に流通できるようになっている。

【００１２】また床板１３上には、この床板１３、天井
壁１５、および側壁１６とによって床上居住空間層１７
が画成され、この床上居住空間層１７の天井壁１５と階
上の床スラブ１間には、天井裏換気空間層１８が形成さ
れ、この天井裏換気空間層１８は、床上居住空間層１７
の側壁１６と、前，後躯体外壁２，３間に形成される複
数の換気通路１９を介して床下収納空間層１４に連通さ
れ、また前記天井裏換気空間層１８は、床上居住空間層
１７の天井壁１５の隅部および中間部に開口した複数の
上部換気口２０を介して床上居住空間層１７にも連通さ
れている。

【００１３】また床板１３の隅部および中間部には複数
の下部換気口２１が開口され、これらの換気口２１を通
して床下収納空間層１４と床上居住空間層１７とが相互
に連通されている。

【００１４】前記床下収納空間層１４の中央の区画部１
４₂ 内にはファンコイルユニットと熱交換ユニットとよ
りなる熱交換器Ｈが設置される。この熱交換器Ｈの前，
後面には、開閉可能な南側および北側給，排気ダクト２
３，２４および２５，２６が対称的に接続され、南側
給，排気ダクト２３，２４は床下収納空間層１４の逆小
梁１０および逆大梁９上を通って躯体外壁３を貫通し、
南側、すなわちバルコニー７側の外部に開口している。
また北側給，排気ダクト２５，２６も床下収納空間層１
４の逆小梁１０および逆大梁９上を通って躯体外壁２を
貫通し、北側、すなわち通路８側の外部に開口してい
る。

【００１５】熱交換器Ｈには、切換可能な吹出，吸込，
切換ポート２７が床下収納空間層１４に直接開口してお
り、このポート２７を吹出側に切換えるとき、このポー
ト２７から新鮮空気を直接床下収納空間層１４に吹出す
ことができ、またこの吹出，吸込，切換ポート２７を吸
込側に切換えると、該ポート２７より床下収納空間層１
４内の汚染空気を吸い込むことができる。なお、吹出，
吸込，切換ポート２７は熱交換器Ｈに別々に設けてもよ
い。

【００１６】また熱交換器Ｈには、複数本の水平換気ダ
クト２８，２９が接続され、これらのダクト２８，２９
は床板１３に開口した前記複数の下部換気口２１を介し
て床上居住空間層１７に連通している。さらに熱交換器
Ｈには鉛直換気ダクト３０が接続され、このダクト３０
は天井壁１５を貫通して天井裏換気空間層１８に連通さ
れる。

【００１７】躯体Ｆの前，後躯体外壁２，３の上部に
は、外気と換気通路１９とを連通する、開閉可能な自然
給気口３３，３５および自然排気口３４，３６が開口さ
れる。

【００１８】なお、図中３７は玄関口、３８，３９およ
び４０は開口部である。

【００１９】次に本発明の実施例の作用について説明す
る。

【００２０】まず、図１，２に図３を参照して本実施例
の夏季仕様の場合について説明する。

【００２１】南側外部に開口する、南側給，排気ダクト
２３，２４を閉じるとともに熱交換器Ｈを夏季仕様に切
換える。

【００２２】熱交換器Ｈが稼動すれば、図３矢印（ａ）
に示すように北側外部に開口する北側の給気ダクト２５
より北側外部の比較的冷たい外気を取入れる。熱交換器
Ｈにおいて、熱交換後の冷気は矢印（ｂ）に示すように
鉛直換気ダクト３０を通って床上居住空間層１７上の天
井裏換気空間層１８へと流れる。該層１８に流入した冷
気は図３矢印（ｃ）に示すようにそこを全域にわたって
流れ、その一部は矢印（ｄ）に示すように天井壁１５の
複数の上部換気口２０を通って床上居住空間層１７へと
流れ、一方天井裏換気空間層１８の前後部に達した残り
の冷気は矢印（ｅ）に示すように換気通路１９へと流れ
る。

【００２３】ところで床上居住空間層１７に流入した冷
気は、図３矢印（ｄ）に示すように該空間層１７を上か
ら下へ全域にわたって流れ該空間層１７を清浄冷気によ
って換気したのち、床板１３に開口した複数の下部換気
口２１および水平換気ダクト２８，２９を通って熱交換
器Ｈに戻される。一方換気通路１９に流入した残りの冷
気は矢印（ｅ）に示すように該通路１９…を下向きに流
れて床下収納空間層１４へと流れ、さらに図３矢印
（ｆ）に示すように該層１４を前後部より中央部へと流
れて床下収納空間層１４を換気したのち、吹出，吸込，
切換ポート２７を通って熱交換器Ｈに戻される。

【００２４】熱交換器Ｈに還流した汚染空気はそこで熱
交換後、図３矢印（ｇ）に示すように排気ダクト２６を
通って外気に放出される。

【００２５】以上のように夏季には、熱交換器Ｈからの
冷気を床上居住空間層１７および床下収納空間層１４の
何れにも同じように全域にわたって万遍なく流して能率
のよい換気が行われるとともに天井裏換気空間層１８に
も冷気の一部を流通させ、床スラブ１、躯体外壁２，３
等の躯体回りを換気することができる。

【００２６】次に図１，２に図４を併せ参照して本実施
例の冬季仕様の場合につて説明する。

【００２７】北側外部に開口する給，排気ダクト２５，
２６を閉じるとともに熱交換器Ｈを冬季仕様に切換え
る。

【００２８】熱交換器Ｈの稼動により図４矢印（イ）に
示すように南側外部に開口する給気ダクト２３より比較
的暖かい外気を熱交換器Ｈに取入れる。熱交換後の暖気
は図４矢印（ロ）に示すように水平換気ダクト２８，２
９を通り、床板１３の複数の下部換気口２１を通って図
４矢印（ハ）に示すように床上居住空間層１７に吹出し
て該層１７内を下から上へと換気する一方、図４矢印
（ニ）に示すように熱交換器Ｈの吹出，吸込，切換ポー
ト２７からは直接床下収納空間層１４内に暖気を吹出し
て該空間層１４を換気する。

【００２９】ところで床上居住空間層１７を換気した暖
気は図４矢印（ホ）に示すように天井壁１５の複数の上
部換気口２０を通って天井裏換気空間層１８へと流れ、
一方床下収納空間層１４を換気した暖気は図４矢印
（へ）に示すように換気通路１９を通って天井裏換気空
間層１８へと流れ、それらの２系統の暖気流は、天井裏
換気空間層１８で合流したのち図４矢印（ト）に示すよ
うに鉛直換気通路３０を通って熱交換器Ｈに戻される。
そして熱交換器Ｈに還流した汚染空気は、該熱交換器Ｈ
内で熱交換後図４矢印（チ）に示すように排気ダクト２
４を通って南側外気に排出される。

【００３０】以上のように冬季には、熱交換器Ｈからの
暖気を床下収納空間層１４および床上居住空間層１７の
何れにも全域にわたって万遍なく流動させて能率のよい
換気が行われるとともに天井裏換気空間層１８にも暖気
の一部を流通させ床スラブ１、躯体外壁２，３等の躯体
回りを換気することができる。

【００３１】また春季、あるいは秋季では、その時の気
温によって前記夏季、あるいは冬季仕様の換気手段を選
択的に採用することが可能であり、さらに前述の強制換
気を自然換気に変えてもよい、この場合には前，後躯体
外壁２，３の上部に開設される互いに対向する自然給，
排気口３３，３４あるいは３５，３６を選択的に開口す
れば、これらの給，排気口３３，３４あるいは３５，３
６を通して外部と天井裏換気空間層１８、床上居住空間
層１７および床下収納空間層１４との間で外気が自由に
流通してそれらの空間層１８，１７および１４を能率良
く自然換気することができる。

【００３２】以上の実施例において、熱交換器Ｈは従来
公知のものが使用され、また床上居住空間の冷，暖房は
図示しない別の冷，暖房機器により行うことが可能であ
る。

【００３３】

【発明の効果】以上のように請求項１の発明によれば、
逆梁構造の床スラブ備える集合住宅において、床下収納
空間、床上居住空間および天井裏換気空間を三層の換気
空間に形成してそれらの空間を、それらの全域にわたっ
て床下収納空間に設けた熱交換器により能率よく強制換
気することができ、特に床スラブ，躯体外壁等の躯体壁
に沿って換気流を流動させることにより空気の淀みによ
る躯体壁への結露の発生を防止してそれに起因するカ
ビ、ダニの発生を防止し、快適な居住空間を提供すこと
ができ、また住宅の耐久性を向上することができる。

【００３４】また請求項２の発明によれば、前記請求項
１の発明の前記効果に加えて外気温を有効に利用、たと
えば夏季には北側の冷たい外気を、冬季には南側の暖か
い外気を換気用空気として利用し、熱効率のよい強制換
気を行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明換気空調システムを備えた集合住宅の、
図２の１−１線に沿う縦断面図

【図２】図１の２−２線に沿う横断平面図

【図３】夏季仕様の場合の換気の流れを示す図

【図４】冬季仕様の場合の換気の流れを示す図

【符号の説明】

１ 床スラブ ９ 逆大梁 １０ 逆小梁 １３ 床板 １４ 床下収納空間層 １７ 床上居住空間層 １８ 天井裏換気空間層 １９ 換気通路 ２０ 上部換気口 ２３ 南側給気ダクト ２４ 南側排気ダクト ２５ 北側給気ダクト ２６ 北側排気ダクト ２７ 吹出，吸込ポート ２８，２９ 水平換気ダクト Ｆ 躯体 Ｈ 熱交換器

フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭64−54152（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−300135（ＪＰ，Ａ) 実開 平２−85924（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) F24F 7/10

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 躯体（Ｆ）の床スラブ（１）に上向きに
   突出する逆梁（９，１０）を備え、該逆梁（９，１０）
   上に床板（１３）を敷設することにより床板（１３）下
   に床下収納空間層（１４）を、また床板（１３）上に床
   上居住空間層（１７）を形成してなる集合住宅におい
   て、前記床上居住空間層（１７）の上方に天井裏換気空
   間層（１８）を形成し、床下収納空間層（１４）と、床
   上居住空間層（１７）とを下部換気口（２１）を介して
   相互に連通するとともに床上居住空間層（１７）と天井
   裏換気空間層（１８）とを上部換気口（２０）を介して
   相互に連通し、さらに床下収納空間層（１４）を躯体壁
   （２，３）に沿って設けた換気通路（１９）を介して天
   井裏換気空間層（１８）に連通し、前記床下収納空間層
   （１４）には、熱交換器（Ｈ）を設け、この熱交換器
   （Ｈ）に連なる２系統の換気ダクト（２８，２９；３
   ０）を床上居住空間層（１７）および天井裏換気空間層
   （１８）にそれぞれ連通するとともにその吹出，吸込ポ
   ート（２７）を直接床下収納空間層（１４）に開口し、
   さらに熱交換器（Ｈ）に連なる給，排気ダクト（２３，
   ２４；２５，２６）を外気に開口したことを特徴とする
   集合住宅における換気空調システム。
2. 【請求項２】 前記熱交換器（Ｈ）には２系統の給気ダ
   クト（２３，２５）を接続して、それらの給気ダクト
   （２３，２５）を南側および北側外気にそれぞれ開口し
   て南側外気と北側外気を選択的に給気可能とした請求項
   １記載の集合住宅における換気空調システム。