JP3111393B2 - 逆梁床構造の集合住宅における冷，暖房および換気システム - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は，マンション等の集合住
宅において，住宅空間を画成する躯体壁全体を蓄熱体に
構成して，省エネで健康，快適な住宅環境を確保できる
ようにした，冷，暖房および換気システムに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】従来，マンション等の集合住宅におい
て，太陽熱や廃熱を利用した省エネ冷，暖房システムや
住宅空間に換気通路を設けてそこにクリーンな空気を循
環させ健康で快適な居住環境を確保するようにしたもの
が種々提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが従来のもの
は，住宅空間に，単に冷，暖房装置を設置したり，強制
換気装置，換気通路を設けたりしているので，住宅空間
を狭め，設備費が嵩み，さらに住宅空間全域にわたって
均等で効率のよい冷，暖房と換気とを行うのが難しいと
いう課題がある。

【０００４】本発明はかかる実情に鑑みてなされたもの
で，住宅空間を画成する躯体壁全体を蓄熱体に構成する
とともにこの躯体壁と冷，暖房および換気設備とを一体
に融合させ，安全，安価，省エネが確保された快適な住
環境の新規な住宅を得るようにした，逆梁床構造の集合
住宅における冷，暖房および換気システムを得ることを
目的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に，本発明の第１の特徴とするところは，住宅空間を画
成する躯体壁の床部分を構成する床スラブを，該床スラ
ブの縦横に逆梁を上向きに突設した逆梁構造とした集合
住宅における冷，暖房および換気システムにおいて，前
記床スラブの逆梁上に床板を敷設して，前記住宅空間
を，相互に空気の流通が可能な床下空間と床上空間の二
層構造に構成し，前記躯体壁はその全体が蓄熱体となる
ように，その躯体壁本体の外気に対面する外面には断熱
壁を，また同躯体壁本体の前記床下空間に対面する内面
には吸放熱壁をそれぞれ積層させ，前記床下空間には，
放熱部を備えた熱源と，該熱源の放熱部からの暖気ある
いは冷気を前記床下空間に放散して前記住宅空間に循環
させる強制換気ファンと，取り入れた外気と回収排気と
を熱交換して前記強制換気ファンに導く熱交換器とを収
納，配設してなる。

【０００６】また本発明の第２の特徴とするところは，
前記第１の発明の特徴において，前記住宅空間は，逆梁
を有する床構造の，集合住宅である。

【０００７】

【実施例】以下，図面に基づいて本発明を逆梁床構造を
有する集合住宅に実施した場合の実施例について説明す
る。

【０００８】図１〜図３は本発明の一実施例を示すもの
で，図１は本発明住宅における冷，暖房および換気シス
テムを備えた集合住宅の，図２の１−１線に沿う平面
図，図２は，図１の２−２線に沿う縦断面図，図３は，
図２の３−３線に沿う一部破断拡大図である。

【０００９】図１に示すように，住宅空間Ｈを画成す
る，躯体壁Ｆは吸熱および放熱を行うべく蓄熱体に構成
されている。すなわち躯体壁本体１の外気に対面する外
面には断熱壁２が積層され，またその内面には吸放熱壁
３が積層されて三層構造に構成される。

【００１０】躯体壁Ｆの床部分，即ち床躯体を構成す
る，床スラブ４は逆梁構造に構成されており，その上面
には，躯体柱５を継ぐ逆大梁６およびそれら間を継ぐ逆
小梁７が上向きに縦横に突設されている。そして該床ス
ラブ４の下面には断熱壁２が，またその上面には吸放熱
壁３が積層される。

【００１１】隣接する住宅空間Ｈを仕切る，躯単壁Ｆの
側壁部分は，その両面に吸放熱壁３がそれぞれ積層され
て三層構造に構成される。

【００１２】前記住宅空間Ｈは，床下空間８，床上空間
９および天井空間１０の三層の高気密，高断熱構造に構
成される。

【００１３】前記逆大梁６および逆小梁７上には，複数
の短い束１１および１２が所定間隔を存して配設され，
これらの束１１，１２上には輻射パネルよりなる床板１
３が敷設される。そしてこの床板１３下に床下空間８
が，またその上に床上空間９が形成される。床上空間９
は居住空間となるもので，仕切パネル１４によってサニ
タリ１５，寝室１６，リビングルーム１７等適宜の部屋
に仕切られる。

【００１４】階上の床スラブ，すなわち天井躯体壁１８
の下方には所定の間隔を存して吸放熱壁よりなる天井板
１９が張設され，この天井板１９の上方に天井空間１０
が形成される。

【００１５】躯体壁Ｆの南側の外面にはバルコニー２０
が張り出され，また躯体壁Ｆの北側の外面には通路２１
が張り出される。バルコニー２０には前記床板１３と略
面一のバルコニー床板２２が敷設され，その下にバルコ
ニー床下空間２３が形成される。

【００１６】前記床下空間８には，熱源２４，強制換気
ファン２５，および熱交換器２６が配設される。

【００１７】次に主に図３を参照してこれらの具体的構
造について説明する。前記熱源２４は温水タンク２８と
その出入口間を接続してその途中に放熱コイル２９を接
続した温水回路３０，および冷水タンク３１とその出入
口を接続してその途中に放熱コイル３２を接続した冷水
回路３３とより構成されている。而して温水タンク２８
および冷水タンク３１は深夜電力を利用して加熱および
冷却するようにすれば，熱源コストの低減に役立つ。

【００１８】なお，熱源２４としてその外，ヒートポン
プ，ソーラシステム等の使用が可能である。

【００１９】前記強制換気ファン２５は電動式遠心ファ
ンにより構成されてファンケース３４内に収容され，こ
のケース３４の前壁には，床下空間８に開口される吹出
口３５が設けられる。強制換気ファン２５と吹出口３５
間には前記放熱コイル２９，３２が配設され，前記ファ
ン２５からの風は放熱コイル２９，３２を通過して吹出
口３５より床下空間８に放出される。

【００２０】また前記熱交換器２６は熱交換素子３７を
熱交換ケース３８内に収容して構成され，その出口は，
前記強制換気ファン２５の吸込側に連通されている。ま
た熱交換ケース３８には，新気取入口４０，排気回収口
４１および排気排出口４２が開口されている。新気取入
口４０はフィルタ４３を介して熱交換器２６に連通され
る。

【００２１】新気取入口４０に接続される新気導入ダク
ト４３は床下空間８の逆大梁６および逆小梁７を貫通
し，さらにバルコニー床下空間２３を通って躯体壁Ｆを
貫通して外気に開口される。また排気回収口４１は床板
１３貫通して床上空間９を鉛直方向に延びる鉛直ダクト
４５を介して天井空間１０に開口されている。さらに前
記排気排出口４２に接続される排気ダクト４８は床下空
間８の逆大梁６および逆小梁７を貫通してバルコニー床
下空間２３に開口し，バルコニー床板２２に設けた通口
２７を通って外気に連通される。排気ダクト４８の外端
部には塵埃等の外気への放出を防止するためのフィルタ
を必要に応じて設ける。

【００２２】床板１３には，床下空間８と床上空間９と
を連通する，開閉調節可能な通気口４４が開設され，こ
れら通気口４４は床上空間９のサニタリ１５，寝室１
６，リビングルーム１７等部屋単位に設けられ，各部屋
の仕切パネル１４，躯体壁Ｆに沿うように開口される。
また天井板１９にも床上空間９と天井空間１０とを連通
する，開閉調節可能な他の通気口４６が開設され，これ
ら通気口４６も床上空間９の各部屋に対応して仕切パネ
ル１４或いは躯体壁Ｆに沿うように開口される。

【００２３】次にこの実施例の作用について説明する。

【００２４】．冬季の暖房および換気 熱源２４の温水タンク２８の温水を図３に白抜き矢印で
しめすように温水回路３０に循環させるとともに強制換
気ファン２５を稼働すれば，図に実線矢印に示すよう
に，冷たい新気は新気取入口４０を通って熱交換ケース
３８に導かれ，そこでフィルタ４３により濾過された
後，熱交換素子３７を通って一次的に温められる。温め
られた新気は強制換気ファン２５により加圧されて放熱
コイル２９を通って二次的に温められた後，暖気となっ
て吹出口３５より床下空間８に放出される。床下空間８
を流れた新気は床板１３に形成した通気口４４を通って
床上空間すなわち居住空間９を流れて該空間９を暖房す
る。また床下空間８の暖気熱は輻射パネルよりなる床板
１３を通って輻射熱として床上空間９へと伝熱され，該
空間９を全域にわたって能率よく暖房する。

【００２５】床上空間９を暖房した排気は，図に点線矢
印で示すように，天井板１９の通気口４６を通って天井
空間１０へと流れ，その間に吸放熱パネルよりなる天井
板１９は排気熱を受けて保温される。天井空間１０を流
れる排気は鉛直ダクト４５を通って床下空間８へと流
れ，熱交換器２６を通り，外気との間で熱交換を行った
後，排気ダクト４８を通ってバルコニー床下空間２３へ
流れ，そこから外気に放出される。

【００２６】ところで前記躯体壁Ｆは躯体壁本体１の外
気に対面する外面に断熱壁２を，またその内面に吸放熱
壁３を積層して全体が蓄熱体に構成され，しかも住宅空
間Ｈ全体が気密構造に構成されていることにより，暖気
が床下空間８，床上空間９および天井空間１０を循環す
る間に，その暖気熱が躯体壁Ｆに蓄熱されて，該熱の外
気への放散が可及的に低減される。そして例えば特に外
気が低温となる夜間では蓄熱体からの放熱により住宅空
間Ｈ全体を適温に保温することが可能となる。

【００２７】．夏期の冷房および換気 熱源２４の冷水タンク３１の冷水を図３鎖線に示すよう
に冷水回路３３に循環させるとともに強制換気ファン２
５を稼働すれば，高温の新気は新気取入口４０を通って
熱交換器２６に流れ，ここで排気との間で熱交換を行い
一次的に冷やされた後，強制換気ファン２５により放熱
コイル３２に圧送され，そこで二次的に冷やされて吹出
口３５より床下空間８に吹き出される。床下空間８を流
れる冷気は通気口４４を通って床上空間９，すなわち居
住空間を流れて該空間９を冷房した後，天井板１９の通
気口４６を通って天井空間１０へと流れ，さらにそこか
ら鉛直ダクト４５を通って熱交換器２６へと流れる。こ
の熱交換器２６では高温の新気との間で熱交換を行い，
廃熱を回収した後，排気は排気排出口４２より排出ダク
ト４８を通り外気に放出される。

【００２８】ところで前記躯体壁Ｆは躯体壁本体１の外
気に対面する外面に断熱壁２をまたその内面に吸放熱壁
３を積層して全体が蓄熱体に構成され，しかも住宅空間
Ｈ全体が高気密に構成されていることにより，その冷気
熱が躯体壁Ｆに有効に蓄熱されて，該熱の外気への放散
が可及的に低減される。そして，蓄熱体からの放熱によ
り住宅空間Ｈ全体を適温に保温することが可能となる。

【００２９】以上本発明の一実施例について説明した
が，本発明はその実施例に限定されることなく，本発明
の範囲内で種々の実施例が可能である。たとえば，前記
熱源，強制換気ファンおよび熱交換器は従来公知の他の
ものの使用が可能である。

【００３０】

【発明の効果】以上のように本発明の第１の特徴によれ
ば，住宅空間を画成する躯体壁の床部分を構成する床ス
ラブを，該床スラブの縦横に逆梁を上向きに突設した逆
梁構造とした集合住宅における冷，暖房および換気シス
テムにおいて，前記床スラブの逆梁上に床板を敷設し
て，前記住宅空間を，相互に空気の流通が可能な床下空
間と床上空間の二層構造に構成し，前記躯体壁はその全
体が蓄熱体となるように，その躯体壁本体の外気に対面
する外面には断熱壁を，また同躯体壁本体の前記床下空
間に対面する内面には吸放熱壁をそれぞれ積層させるの
で，躯体壁自体，特に床下空間に縦横に張出す逆梁を有
して熱容量の大きな床スラブ自体を，高性能の蓄熱体と
して有効活用することができ，従って床下空間に専用の
蓄熱体を多量に設ける必要はないから，コスト節減に寄
与し得るばかりかその床下空間を収納スペースとして有
効利用することが可能となる。

【００３１】また床下空間には，放熱部を備えた熱源
と，該放熱部からの暖気あるいは冷気を前記床下空間に
放散して住宅空間に循環させる強制換気ファンと，取り
入れた外気と回収排気とを熱交換して前記強制換気ファ
ンに導く熱交換器とを収納配設したので，床スラブ自体
の大熱容量の蓄熱効果とも相俟って，住宅空間全体の
冷，暖房および換気をきわめて能率よく行うことがで
き，省エネで，健康，快適かつ安全な住宅環境を提供す
ることができる。しかも前記床下空間は，床スラブの上
面と，その上面に起立する逆梁上の床板との間に十分な
高さ，広さを以て画成可能であるため，居住空間の有効
容積を減ずることなく，前記熱源，強制換気ファンおよ
び熱交換器を何れも無理なく収納でき，そのレイアウト
も容易である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明住宅における冷、暖房および換気システ
ムを備えた住宅空間の、図２の１−１線に沿う平面図

【図２】図１の２−２線に沿う縦断面図

【図３】図２の３−３線に沿う一部破断拡大図

【符号の説明】２・・・断熱壁 ３・・・吸放熱壁 ４・・・床スラブ ６・・・逆梁としての逆大梁 ７・・・逆梁としての逆小梁 ８・・・床下空間 ９・・・床上空間 １３・・床板 ２４・・熱源２４ ２５・・強制換気ファン ２６・・熱交換器 ２９・・放熱部としての放熱コイル ３２・・放熱部としての放熱コイル Ｆ・・・躯体壁 Ｈ・・・住宅空間

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 正文 大分県大分市明野東２丁目１番１の12 (72)発明者 生野 隆 大分県大分郡庄内町大字大龍1782−５ (56)参考文献 特開 平２−282642（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−291026（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−99132（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F24F 3/147 F24F 3/00 F24F 5/00 F24F 13/068

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 住宅空間（Ｈ）を画成する躯体壁（Ｆ）
   の床部分を構成する床スラブ（４）を，該床スラブ
   （４）の縦横に逆梁（６，７）を上向きに突設した逆梁
   構造とした集合住宅における冷，暖房および換気システ
   ムにおいて， 前記床スラブ（４）の逆梁（６，７）上に床板（１３）
   を敷設して，前記住宅空間（Ｈ）を，相互に空気の流通
   が可能な床下空間（８）と床上空間（９）の二層構造に
   構成し， 前記躯体壁（Ｆ）はその全体が蓄熱体となるように，そ
   の躯体壁本体（１）の外気に対面する外面には断熱壁
   （２）を，また同躯体壁本体（１）の前記床下空間
   （８）に対面する内面には吸放熱壁（３）をそれぞれ積
   層させ， 前記床下空間（８）には，放熱部を備えた熱源（２４）
   と，該熱源（２４）の放熱部（２９，３２）からの暖気
   あるいは冷気を前記床下空間（８）に放散して前記住宅
   空間（Ｈ）に循環させる強制換気ファン（２５）と，取
   り入れた外気と回収排気とを熱交換して前記強制換気フ
   ァン（２５）に導く熱交換器（２６）とを収納，配設し
   たことを特徴とする，逆梁床構造の集合住宅における
   冷，暖房および換気システム。