JP2971288B2 - 耐熱性鋼部材 - Google Patents
耐熱性鋼部材Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加熱炉用熱間ガイドロ
ール、熱間圧延用ガイドシュー、溶融ガラス成形用工
具、熱間ダイス等の、熱間で繰り返し荷重が加わる用途
に適した耐熱性鋼部材に関する。
ール、熱間圧延用ガイドシュー、溶融ガラス成形用工
具、熱間ダイス等の、熱間で繰り返し荷重が加わる用途
に適した耐熱性鋼部材に関する。
【0002】
【従来の技術】熱間で繰り返し荷重が加わるため、基材
が靱性を有し、かつ熱間での耐衝撃性、耐摩耗性等が要
求される耐熱性鋼部材、例えば熱間圧延用ガイドシュー
として、鋳鋼基材等の表面に、Cr3C2と、Co基また
はNi基の耐熱合金(例えば0.02C−16Cr−1
6Mo−4W−Ni)バインダーをプラズマパウダーウ
エルディング、いわゆる溶射により肉盛りしてなるもの
が提案されている(特開昭63−18044号)。この
種の溶射により形成された耐熱性被膜は、基材との拡散
時間が極く短いため、基材と被膜との拡散による一体化
が不十分であり、また溶射の際閉じこめられたガスに基
づく多数の微細気孔が存在するため、繰り返し荷重によ
って、基材からの被膜剥離や、気孔を起点とする被膜の
破壊が起こり易いという問題を有する。
が靱性を有し、かつ熱間での耐衝撃性、耐摩耗性等が要
求される耐熱性鋼部材、例えば熱間圧延用ガイドシュー
として、鋳鋼基材等の表面に、Cr3C2と、Co基また
はNi基の耐熱合金(例えば0.02C−16Cr−1
6Mo−4W−Ni)バインダーをプラズマパウダーウ
エルディング、いわゆる溶射により肉盛りしてなるもの
が提案されている(特開昭63−18044号)。この
種の溶射により形成された耐熱性被膜は、基材との拡散
時間が極く短いため、基材と被膜との拡散による一体化
が不十分であり、また溶射の際閉じこめられたガスに基
づく多数の微細気孔が存在するため、繰り返し荷重によ
って、基材からの被膜剥離や、気孔を起点とする被膜の
破壊が起こり易いという問題を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱間での繰
り返し荷重が加わっても、耐熱性被膜の剥離や破壊、あ
るいは鋼基材の破損が起こり難い、高温耐摩耗性に優れ
た耐熱性鋼部材を提供することを目的とする。
り返し荷重が加わっても、耐熱性被膜の剥離や破壊、あ
るいは鋼基材の破損が起こり難い、高温耐摩耗性に優れ
た耐熱性鋼部材を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の耐熱性鋼
部材は、クロム炭化物、金属硼化物およびニッケルより
なる液相焼結層が表面に形成されている。この焼結層
は、Cr3C2粉末50〜85重量%、金属硼化物粉末
0.5〜6重量%およびNi粉末14.5〜44重量%
よりなる有機溶剤スラリーを、鋼基材表面に塗布、自然
乾燥後、液相焼結することにより形成されることが好ま
しい。本発明の第2の耐熱性鋼部材は、クロム炭化物、
金属硼化物、ニッケルおよびクロムよりなる液相焼結層
が表面に形成されている。この場合の焼結層は、Cr3
C2粉末50〜85重量%、金属硼化物粉末0.5〜6
重量%、Ni粉末およびCr粉末(の和が)14.5〜
44重量%よりなり、かつCr重量%とNi重量%の比
(Cr/Ni)が0.25〜0.33である有機溶剤ス
ラリーを、鋼基材表面に塗布、自然乾燥後、液相焼結す
ることにより形成されることが好ましい。
部材は、クロム炭化物、金属硼化物およびニッケルより
なる液相焼結層が表面に形成されている。この焼結層
は、Cr3C2粉末50〜85重量%、金属硼化物粉末
0.5〜6重量%およびNi粉末14.5〜44重量%
よりなる有機溶剤スラリーを、鋼基材表面に塗布、自然
乾燥後、液相焼結することにより形成されることが好ま
しい。本発明の第2の耐熱性鋼部材は、クロム炭化物、
金属硼化物、ニッケルおよびクロムよりなる液相焼結層
が表面に形成されている。この場合の焼結層は、Cr3
C2粉末50〜85重量%、金属硼化物粉末0.5〜6
重量%、Ni粉末およびCr粉末(の和が)14.5〜
44重量%よりなり、かつCr重量%とNi重量%の比
(Cr/Ni)が0.25〜0.33である有機溶剤ス
ラリーを、鋼基材表面に塗布、自然乾燥後、液相焼結す
ることにより形成されることが好ましい。
【0005】クロム炭化物、特にCr3C2は融点が約1
900℃と高く、かつ硬度や耐酸化性も高いので、その
焼結体は高温耐摩耗性に優れているが、単独では焼結は
実質的に不可能である。そのためバインダーとしてニッ
ケル、またはニッケル+クロムを使用する。この場合で
も実質的に空孔のない、焼結層を形成するための液相焼
結温度は約1275℃となる(図2、図3参照)。金属
硼化物は一般に融点が高い(例えばWBの場合、280
0℃)が、比較的低温(WBの場合約1050℃)にニ
ッケルとの共晶領域があるので、比較的微量の金属硼化
物の添加により液相焼結温度を低下させることができる
(図2参照)。その低下温度分だけ鋼基材の焼結時の温
度が低下して、鋼基材の結晶粒粗大化に伴う靱性の低下
が減少して、熱間での繰り返し荷重が加わっても、鋼基
材の破損が起こり難くなる。以上のように焼結層(すな
わち耐熱性被膜)は、液相焼結によって形成されるの
で、比較的短時間(例えば約30分)の焼結中に空孔を
有しない緻密な被膜となる。また焼結材と鋼基材は液相
の存在下で拡散反応して、両者は完全に一体化するの
で、繰り返し荷重が加わっても焼結層の剥離や破壊が起
こり難い。また液相焼結温度が比較的低いので、焼結中
に焼結層の鋼基材への溶け込みによる形崩れが起こるお
それがなく、満足な形状の焼結層を得ることができる。
なおバインダーに適量のクロムを含む場合(第2の耐熱
性鋼部材)は、高温耐酸化性がより向上する。
900℃と高く、かつ硬度や耐酸化性も高いので、その
焼結体は高温耐摩耗性に優れているが、単独では焼結は
実質的に不可能である。そのためバインダーとしてニッ
ケル、またはニッケル+クロムを使用する。この場合で
も実質的に空孔のない、焼結層を形成するための液相焼
結温度は約1275℃となる(図2、図3参照)。金属
硼化物は一般に融点が高い(例えばWBの場合、280
0℃)が、比較的低温(WBの場合約1050℃)にニ
ッケルとの共晶領域があるので、比較的微量の金属硼化
物の添加により液相焼結温度を低下させることができる
(図2参照)。その低下温度分だけ鋼基材の焼結時の温
度が低下して、鋼基材の結晶粒粗大化に伴う靱性の低下
が減少して、熱間での繰り返し荷重が加わっても、鋼基
材の破損が起こり難くなる。以上のように焼結層(すな
わち耐熱性被膜)は、液相焼結によって形成されるの
で、比較的短時間(例えば約30分)の焼結中に空孔を
有しない緻密な被膜となる。また焼結材と鋼基材は液相
の存在下で拡散反応して、両者は完全に一体化するの
で、繰り返し荷重が加わっても焼結層の剥離や破壊が起
こり難い。また液相焼結温度が比較的低いので、焼結中
に焼結層の鋼基材への溶け込みによる形崩れが起こるお
それがなく、満足な形状の焼結層を得ることができる。
なおバインダーに適量のクロムを含む場合(第2の耐熱
性鋼部材)は、高温耐酸化性がより向上する。
【0006】鋼基材としては、耐熱性鋼部材の用途に応
じて適宜の鋼、例えば低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、
工具鋼、ステンレス鋼、あるいはそれらの組み合せ複合
材等が用いられる。クロム炭化物の原料粉としては、商
業的に入手が容易なCr3C2粉が用いられる。金属硼化
物の原料粉としては、WB、CrB、CrB2、Mo
B、TiB2 、HfB2 、ZrB2 、NbB2 、TaB
2 、FeB等の、耐熱性鋼部材の用途に応じて適宜のも
のが用いられる。
じて適宜の鋼、例えば低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼、
工具鋼、ステンレス鋼、あるいはそれらの組み合せ複合
材等が用いられる。クロム炭化物の原料粉としては、商
業的に入手が容易なCr3C2粉が用いられる。金属硼化
物の原料粉としては、WB、CrB、CrB2、Mo
B、TiB2 、HfB2 、ZrB2 、NbB2 、TaB
2 、FeB等の、耐熱性鋼部材の用途に応じて適宜のも
のが用いられる。
【0007】焼結層における、クロム炭化物の量は50
〜85重量%であることが好ましい。50重量%より少
ないと、高温耐摩耗性が低下し、一方85重量%を越え
ると、焼結性が低下して、焼結層の高温強度が低下する
からである。金属硼化物の量は、0.5〜6重量%、よ
り好ましくは1〜4重量%であることが望ましい。0.
5重量%より少ないと、液相焼結可能な温度の低下が小
さく、従って焼結温度が高くなるため、鋼基材の焼結時
における劣化が大きくなり、一方6重量%を越えると、
焼結層の強度(抗折力)が低下し、脆くなり易くなり、
更に高温耐酸化性が低下するからである(図2参照)。
残りのニッケル(14.5〜44重量%)は、被膜に靱
性を付与するためのバインダーとして作用する。
〜85重量%であることが好ましい。50重量%より少
ないと、高温耐摩耗性が低下し、一方85重量%を越え
ると、焼結性が低下して、焼結層の高温強度が低下する
からである。金属硼化物の量は、0.5〜6重量%、よ
り好ましくは1〜4重量%であることが望ましい。0.
5重量%より少ないと、液相焼結可能な温度の低下が小
さく、従って焼結温度が高くなるため、鋼基材の焼結時
における劣化が大きくなり、一方6重量%を越えると、
焼結層の強度(抗折力)が低下し、脆くなり易くなり、
更に高温耐酸化性が低下するからである(図2参照)。
残りのニッケル(14.5〜44重量%)は、被膜に靱
性を付与するためのバインダーとして作用する。
【0008】バインダーとして、クロムを添加する場合
は、ニッケルとクロムの合計量が14.5〜44重量%
の範囲内で、Cr/Niが0.25〜0.33であるこ
とが好ましい。Cr/Niが0.25より小さいと、ニ
ッケルのみの場合よりも耐酸化性が劣り、一方Cr/N
iが0.33を越えるまでクロムを添加しても、耐酸化
性の向上はあまりみられず、しかも機械的強度が低下す
るからである。
は、ニッケルとクロムの合計量が14.5〜44重量%
の範囲内で、Cr/Niが0.25〜0.33であるこ
とが好ましい。Cr/Niが0.25より小さいと、ニ
ッケルのみの場合よりも耐酸化性が劣り、一方Cr/N
iが0.33を越えるまでクロムを添加しても、耐酸化
性の向上はあまりみられず、しかも機械的強度が低下す
るからである。
【0009】焼結層の平均厚さは、0.3〜2.0mm
であることが好ましい。0.3mmより薄いと、耐熱性
表面被覆としての性能が十分に発揮できず、一方2.0
mmより厚いと、焼結層と鋼基材との熱膨張係数の差に
基づく残留応力が高くなるため、繰り返し荷重が加わる
と、焼結層が破壊し易くなるためである。
であることが好ましい。0.3mmより薄いと、耐熱性
表面被覆としての性能が十分に発揮できず、一方2.0
mmより厚いと、焼結層と鋼基材との熱膨張係数の差に
基づく残留応力が高くなるため、繰り返し荷重が加わる
と、焼結層が破壊し易くなるためである。
【0010】次に耐熱性鋼部材の製造法の例について述
べる。3μm以下の粒径にボールミルで粉砕された、C
r3C2、ニッケル、(クロム)、金属硼化物の混合原料
粉と、有機溶剤(例えばポリビニルブチラール、ジブチ
ルフタレート、エチルアルコール等の混合溶剤)を混合
攪拌して、粘度約150〜200c.pの低粘度スラリ
ーを作製し、真空脱泡する。このスラリーを、鋼基材の
焼結層を形成すべき表面部分に、浸漬、刷毛塗り等の適
宜の手段で、塗布、自然乾燥(乾燥時間は通常約30
分)の操作を繰り返すことにより、所定の厚さの乾燥ス
ラリー層を形成させる。乾燥スラリー層の厚さは通常、
形成されるべき焼結層の厚さの約2倍である。このスラ
リーを形成された鋼基材を真空炉、または不活性ガス炉
で、約1175〜1200℃で所定時間焼結した後、炉
冷する。炉から取り出した後、所定の表面形状、粗度に
仕上げ加工する。なお自然乾燥を行うのは、熱風乾燥の
ような急速乾燥を行なうと、スラリー層に、ひび割れや
空孔等の欠陥が発生するからである。
べる。3μm以下の粒径にボールミルで粉砕された、C
r3C2、ニッケル、(クロム)、金属硼化物の混合原料
粉と、有機溶剤(例えばポリビニルブチラール、ジブチ
ルフタレート、エチルアルコール等の混合溶剤)を混合
攪拌して、粘度約150〜200c.pの低粘度スラリ
ーを作製し、真空脱泡する。このスラリーを、鋼基材の
焼結層を形成すべき表面部分に、浸漬、刷毛塗り等の適
宜の手段で、塗布、自然乾燥(乾燥時間は通常約30
分)の操作を繰り返すことにより、所定の厚さの乾燥ス
ラリー層を形成させる。乾燥スラリー層の厚さは通常、
形成されるべき焼結層の厚さの約2倍である。このスラ
リーを形成された鋼基材を真空炉、または不活性ガス炉
で、約1175〜1200℃で所定時間焼結した後、炉
冷する。炉から取り出した後、所定の表面形状、粗度に
仕上げ加工する。なお自然乾燥を行うのは、熱風乾燥の
ような急速乾燥を行なうと、スラリー層に、ひび割れや
空孔等の欠陥が発生するからである。
【0011】
【実施例】次に実施例について述べる。 実施例1 Cr3C2粉を60.5重量%、ニッケル粉を30重量
%、クロム粉を8重量%、WB粉を1.5重量%、これ
等にアセトンを配合し、振動ボールミルで平均粒径1.
5μmに湿式粉砕した後、乾燥した混合原料粉末100
部に対し、ポリビニルブチラール2.5部、ジブチルフ
タレート0.6部、エチルアルコール7部の混合溶剤を
加えて、25℃で攪拌機により1時間混合した後、真空
脱泡し、粘度180c.p.の低粘度のスラリーを作製
した。ブロー(blow)−ブロー(blow)ガラス
成形機の粗型用プランジャーのヘッド先端部(SS41
材)を、上記スラリー中に、浸漬、引き上げ、自然乾燥
する操作を25回繰り返し行って、先端部に平均厚さ約
2mmの、比較的均一な厚さの乾燥スラリー層を形成し
た。上記プランジャーを真空焼結炉で、1200℃で3
0分間加熱して、スラリー層を液相焼結した後炉冷し
た。焼結層の平均厚さは約1mmであり、硬度は85R
Aであった。焼結層を平均厚さ約0.5mmになるまで
研削加工し、鏡面に仕上げた。
%、クロム粉を8重量%、WB粉を1.5重量%、これ
等にアセトンを配合し、振動ボールミルで平均粒径1.
5μmに湿式粉砕した後、乾燥した混合原料粉末100
部に対し、ポリビニルブチラール2.5部、ジブチルフ
タレート0.6部、エチルアルコール7部の混合溶剤を
加えて、25℃で攪拌機により1時間混合した後、真空
脱泡し、粘度180c.p.の低粘度のスラリーを作製
した。ブロー(blow)−ブロー(blow)ガラス
成形機の粗型用プランジャーのヘッド先端部(SS41
材)を、上記スラリー中に、浸漬、引き上げ、自然乾燥
する操作を25回繰り返し行って、先端部に平均厚さ約
2mmの、比較的均一な厚さの乾燥スラリー層を形成し
た。上記プランジャーを真空焼結炉で、1200℃で3
0分間加熱して、スラリー層を液相焼結した後炉冷し
た。焼結層の平均厚さは約1mmであり、硬度は85R
Aであった。焼結層を平均厚さ約0.5mmになるまで
研削加工し、鏡面に仕上げた。
【0012】このプランジャーの先端部の、鋼基材1と
焼結層2の界面近傍部の走査型電子顕微鏡観察による断
面組織図(倍率:2000)を図1に示す。3角形状、
台形形状、正方形状、長方形状、多角形状等の粒状部分
がクロム炭化物3であり、その間を埋める不定形の部分
が、ニッケル、クロム、WBよりなる結合相4である。
結合相4中のニッケルおよびクロムは固溶体を形成して
いるものと推測される。WBも、この場合は少量なの
で、上記固溶体中に固溶しているものと推測される。こ
の図面から鋼基材1と焼結層2が溶融拡散して完全に一
体化しており、また焼結層2に空孔が実質的に無いのが
分かる。さらにX線回折の結果、焼結中にクロム炭化物
3に、結合相4中のクロムが若干浸透して、クロム炭化
物3には、Cr3C2の他に、微量のCr7C3およびCr
23C6 が含まれることが判明した。
焼結層2の界面近傍部の走査型電子顕微鏡観察による断
面組織図(倍率:2000)を図1に示す。3角形状、
台形形状、正方形状、長方形状、多角形状等の粒状部分
がクロム炭化物3であり、その間を埋める不定形の部分
が、ニッケル、クロム、WBよりなる結合相4である。
結合相4中のニッケルおよびクロムは固溶体を形成して
いるものと推測される。WBも、この場合は少量なの
で、上記固溶体中に固溶しているものと推測される。こ
の図面から鋼基材1と焼結層2が溶融拡散して完全に一
体化しており、また焼結層2に空孔が実質的に無いのが
分かる。さらにX線回折の結果、焼結中にクロム炭化物
3に、結合相4中のクロムが若干浸透して、クロム炭化
物3には、Cr3C2の他に、微量のCr7C3およびCr
23C6 が含まれることが判明した。
【0013】このプランジャーを用いて、ガラス成形の
実用化試験を行った所、成形時(成形温度約1100
℃)に、プランジャー表面に発生する酸化異物の壜内部
に付着する量が、従来のステライト等の溶射層を形成さ
れたプランジャーを使用した場合に比べて、約100分
の1に激減した。上記の壜内部に付着した酸化異物は壜
破損の起点となるので、壜破損を招き易い故、少ない程
好ましい。なお混合原料粉末にWB粉を添加しなかった
場合は、前記のように焼結温度が約1275℃と高いた
め、Cr3C2と鋼基材の間に直接液相反応が著しく進行
して、溶け込みが激しく、満足な焼結層(焼結被膜)を
有するプランジャーを形成することができなかった。
実用化試験を行った所、成形時(成形温度約1100
℃)に、プランジャー表面に発生する酸化異物の壜内部
に付着する量が、従来のステライト等の溶射層を形成さ
れたプランジャーを使用した場合に比べて、約100分
の1に激減した。上記の壜内部に付着した酸化異物は壜
破損の起点となるので、壜破損を招き易い故、少ない程
好ましい。なお混合原料粉末にWB粉を添加しなかった
場合は、前記のように焼結温度が約1275℃と高いた
め、Cr3C2と鋼基材の間に直接液相反応が著しく進行
して、溶け込みが激しく、満足な焼結層(焼結被膜)を
有するプランジャーを形成することができなかった。
【0014】実施例2 何れもNi30重量%、Cr8重量%で、Cr3C2が6
2.0重量%、WBが0重量%(試料No.1)、Cr
3C2が60.5重量%、WBが1.5重量%(試料N
o.2)、Cr3C2が59.0重量%、WBが3.0重
量%(試料No.3)、Cr3C2が57.0重量%、W
Bが5.0重量%(試料No.4)、Cr3C2が54.
0重量%、WBが8.0重量%(試料No.5)、およ
びCr3C2が52重量%、WBが10重量%(試料N
o.6)よりなる、長さ30mm,幅10mm、厚さ5
mmの、各試料について複数個の圧粉体を、一軸プレス
成形法によって作製した。成形前の、各原料粉の平均粒
径は3μmであった。
2.0重量%、WBが0重量%(試料No.1)、Cr
3C2が60.5重量%、WBが1.5重量%(試料N
o.2)、Cr3C2が59.0重量%、WBが3.0重
量%(試料No.3)、Cr3C2が57.0重量%、W
Bが5.0重量%(試料No.4)、Cr3C2が54.
0重量%、WBが8.0重量%(試料No.5)、およ
びCr3C2が52重量%、WBが10重量%(試料N
o.6)よりなる、長さ30mm,幅10mm、厚さ5
mmの、各試料について複数個の圧粉体を、一軸プレス
成形法によって作製した。成形前の、各原料粉の平均粒
径は3μmであった。
【0015】各圧粉体を真空焼結炉で、1100℃、1
125℃、1150℃、1175℃、1200℃、12
25℃、1250℃、1275℃および1300℃で3
0分間加熱、焼結した後炉冷して、試料No.1、N
o.2、No.3、No.4、No.5およびNo.6
の焼結温度の異なる焼結片を作製し、表面をダイアモン
ド砥石によって研削仕上げした。各試料No.1、2、
3、4、5、6の焼結片について抗折力を測定した結果
を図3に示す。各試料No.1、2、3、4、5、6に
おいて、最も高い抗折力が得られた温度を最適焼結温度
として図2に示した。焼結温度が最適焼結温度より低い
場合および高い場合はそれぞれ、主として不完全焼結の
ためおよびCr3C2が粗大化するために、抗折力が低下
するものと推測される。図2に、各試料No.1、2、
3、4、5、6の最適焼結温度で作製された焼結片の抗
折力、硬度および酸化増量(大気中で900℃×50時
間加熱後)を示した。
125℃、1150℃、1175℃、1200℃、12
25℃、1250℃、1275℃および1300℃で3
0分間加熱、焼結した後炉冷して、試料No.1、N
o.2、No.3、No.4、No.5およびNo.6
の焼結温度の異なる焼結片を作製し、表面をダイアモン
ド砥石によって研削仕上げした。各試料No.1、2、
3、4、5、6の焼結片について抗折力を測定した結果
を図3に示す。各試料No.1、2、3、4、5、6に
おいて、最も高い抗折力が得られた温度を最適焼結温度
として図2に示した。焼結温度が最適焼結温度より低い
場合および高い場合はそれぞれ、主として不完全焼結の
ためおよびCr3C2が粗大化するために、抗折力が低下
するものと推測される。図2に、各試料No.1、2、
3、4、5、6の最適焼結温度で作製された焼結片の抗
折力、硬度および酸化増量(大気中で900℃×50時
間加熱後)を示した。
【0016】
【発明の効果】本発明の耐熱性鋼部材は、高温での繰り
返し荷重が加わっても、耐熱性被膜の剥離や破壊、ある
いは鋼基材の破損が起こり難く、かつ高温耐摩耗性に優
れている。
返し荷重が加わっても、耐熱性被膜の剥離や破壊、ある
いは鋼基材の破損が起こり難く、かつ高温耐摩耗性に優
れている。
【図1】鋼基材と焼結層の界面近傍部の拡大組織図であ
る。
る。
【図2】金属硼化物の量と、焼結材の最適焼結温度、機
械的性質および酸化増量の関係を示す図面である。
械的性質および酸化増量の関係を示す図面である。
【図3】金属硼化物の量の異なる焼結材の、焼結温度と
抗折力との関係を示す線図である。
抗折力との関係を示す線図である。
1 鋼基材 2 焼結層 3 クロム炭化物 4 結合相(ニッケル、クロム、金属硼化物)
Claims (4)
- 【請求項1】クロム炭化物、金属硼化物およびニッケル
よりなる液相焼結層が表面に形成されていることを特徴
とする耐熱性鋼部材。 - 【請求項2】焼結層が、Cr3C2粉末50〜85重量
%、金属硼化物粉末0.5〜6重量%およびNi粉末1
4.5〜44重量%よりなる有機溶剤スラリーを、鋼基
材表面に塗布、自然乾燥後、液相焼結することにより形
成される請求項1記載の耐熱性鋼部材。 - 【請求項3】クロム炭化物、金属硼化物、ニッケルおよ
びクロムよりなる液相焼結層が表面に形成されているこ
とを特徴とする耐熱性鋼部材。 - 【請求項4】焼結層が、Cr3C2粉末50〜85重量
%、金属硼化物粉末0.5〜6重量%、Ni粉末および
Cr粉末14.5〜44重量%よりなり、かつCr重量
%とNi重量%の比(Cr/Ni)が0.25〜0.3
3である有機溶剤スラリーを、鋼基材表面に塗布、自然
乾燥後、液相焼結することにより形成される請求項3記
載の耐熱性鋼部材。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP11935593A JP2971288B2 (ja) | 1993-04-23 | 1993-04-23 | 耐熱性鋼部材 |
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EP1010674A3 (en) * | 1998-12-14 | 2000-12-20 | Praxair S.T. Technology, Inc. | Release coating for glass molds |
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- 1993-04-23 JP JP11935593A patent/JP2971288B2/ja not_active Expired - Fee Related
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