JP2970803B2 - 物品の模様とその形成方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は物品の模様とその形
成方法に関する。物品としては、釣竿やリール等の釣用
品、ゴルフクラブ等のゴルフ用品、ラケット等のテニス
やバトミントン用品、スキー用品、自転車等である。

【０００２】

【従来の技術】乱糸スプレーガンを使用して物品表面に
塗料による乱糸状模様をほぼランダム状に形成すること
が可能であるが、これは細い線状模様のために繊細な感
じが得られる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】然しながら、乱糸のみ
では単なる乱れた線の集合であるため傷や汚れの集合の
ようにも見え、装飾感の乏しい模様になる欠点がある。
また、乱糸状模様が物品の本体層や背景色層の上に重ね
られて形成されておれば、外力によって擦られれば細い
線状の模様のために欠けたり剥離したりし易い。このこ
とは特にスポーツ用品において顕著である。

【０００４】依って本発明は、耐久性を向上させ、乱糸
状模様の繊細さを残しつつ装飾感を強めた模様と、それ
を容易に形成する方法の提供を目的とする。また、スポ
ーツ用品の握り部の滑り止めを兼ねる模様を形成するこ
とを他の目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的に鑑みて本発明
は、物品表面にほぼランダム状に配設され、乱糸状模様
の端部に該乱糸状模様の糸幅よりも大きな幅寸法の点状
模様を付加した糸状と点状の組合せからなる模様と、該
糸状と点状の組合せからなる模様と同一の層に形成され
た背景色層とを有することを特徴とする物品の模様を提
供する。

【０００６】また、塗料の噴出量と空気使用量とが夫々
所定の量である場合に、物品表面に乱糸状模様がほぼラ
ンダム状に形成される乱糸スプレーガンを使用し、前記
空気使用量を前記所定量よりも少なくするか、或いは塗
料噴出量を前記所定量よりも少なくして乱糸状模様の端
部に該乱糸状模様の糸幅よりも大きな幅寸法の点状模様
を付加し、ほぼランダム状に配設された糸状と点状の組
合せからなる模様を形成することを特徴とする物品模様
の形成方法を提供する。

【０００７】乱糸状模様の端部に糸幅よりも大きな点状
模様を付加した糸状と点状の組合せからなる模様のた
め、乱糸の繊細さを有すると共に、豪華さが加わり、装
飾感が向上する。更には、糸状と点状の組合せからなる
模様の層と同一の層に背景色層が形成されているため、
糸状と点状の組合せからなる模様は表面に突出しておら
ず、乱反射が生ぜず装飾感が向上すると共に、耐久性が
向上する。この背景色と糸状と点状の組合せからなる模
様の層の上にクリヤー層を設けたり、或いは物品本体の
上に下地層を設けたりすることは自由である。

【０００８】乱糸状模様がほぼランダム状に形成される
塗料の所定噴出量よりも少なくするか、或いは、空気を
所定使用量よりも少なくした条件で乱糸スプレーガンを
使用すれば、糸状と点状の組合せからなる模様が形成で
きることが実験により判明した。従って、塗料量や空気
量の条件さえ設定すれば、単にスプレー操作だけで所望
の糸状と点状の組合せからなる模様が簡単に低コストで
形成できる。この糸状と点状の組合せからなる模様はそ
の下地から外方に突出しており、これを物品の握り部に
形成すれば、滑り止め作用を果す。また、この糸状と点
状の組合せからなる模様の上から、該糸状と点状の組合
せからなる模様の間の領域も含めて糸状と点状の組合せ
からなる模様の背景色塗料を塗布し、該背景色塗料層と
共に前記糸状と点状の組合せからなる模様の層を研摩し
て全体表面を平滑にすれば、請求項１の物品模様が形成
できる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下本発明を添付図面に示す実施
の形態例に基づき、更に詳細に説明する。図１は本発明
に係る実施形態の例を示しており、物品としてエポキシ
樹脂をマトリックスとし、炭素繊維で強化した釣竿の元
竿１０を使用し、その部分側面図である。握り領域部１
０ＧＺを外れた領域Ｚに、白色、黒色等の背景色層１
６’の中に、糸状と点状の組合せからなる模様１４’が
ほぼランダムに配設されている。

【００１０】この図の矢視線Ｂ−Ｂによる部分断面の拡
大図を図２に示している。元竿本体１０Ｈの表面に下地
塗装層１２を設けて平滑にし、その層の上に糸状と点状
の組合せからなる模様１４’を設けている。更にこれら
糸状と点状の組合せからなる模様１４’間の領域には背
景色の層１６’が形成されており、糸状と点状の組合せ
からなる模様の層と同一の層として形成されている。従
って、外力によって擦られても糸状と点状の組合せから
なる模様１４’は欠けたり剥離し難く、耐久性を有す
る。更にこの表面にはクリヤー塗装の層１８が形成され
ており、更に有効に模様層を保護している。このクリヤ
ー層１８は無くてもよい。糸状と点状の組合せからなる
模様は単なる線状の乱糸状模様と比較して、頭部（図４
参照）の存在によって装飾感が向上する。

【００１１】図３は上記元竿１０の模様の形成方法を説
明する図である。（ａ）は、元竿本体１０Ｈの表面に下
地塗装層１２を設け、その上に後述の方法で多数の糸状
と点状の組合せからなる模様１４を乱糸スプレーガンで
吹付けて夫々突出形成させ、これがほぼランダム状に配
設形成された状態の一部を示す。このように単にスプレ
ー操作だけで所望の糸状と点状の組合せからなる模様が
簡単に低コストで形成できる。この糸状と点状の組合せ
からなる模様１４はその平面視を図４に示すように、糸
状部（帯状部）１４Ｌと、その一端に帯幅よりも大きな
幅の点状頭部（面状頭部）１４Ｈを有する。また、一般
に、頭部１４Ｈの高さは糸状部１４Ｌの高さよりも高
い。

【００１２】この糸状と点状の組合せからなる模様１４
のランダム状の配列は一種類の色からなる模様に限ら
ず、糸状と点状の組合せからなる模様を複数種類の色に
よる模様にしてもよい。即ち、ある色の糸状と点状の組
合せからなる模様１４を吹付け形成し、次に他の色の糸
状と点状の組合せからなる模様１４をその上から吹付け
形成して、全体をほぼランダム状に配設する。このよう
に上から重ねるようにして吹付けても、糸状と点状の組
合せからなる模様１４のため、特に高密度の吹付けを行
わなければ重なることが少ないが、重なってもよい。こ
のように多色にすれば、多色による装飾性が向上する。
糸状と点状の組合せからなる模様１４のランダムな配列
は、背景空間色の存在から、その色に応じて浮き上がる
ように見えたり、沈んだりして見え、視認し易く、外観
が優れたものとなる。

【００１３】（ｂ）はこの糸状と点状の組合せからなる
模様１４の上から、各模様１４間の領域と共に、糸状と
点状の組合せからなる模様１４の隠蔽される色の背景色
を塗布して背景色層１６を形成する。その後、サンドペ
ーパー等の研摩紙によって背景色層と共に糸状と点状の
組合せからなる模様を、点線で示す高さ程度まで研摩す
る。その研摩されて平滑化された表面にクリヤー塗装を
行って図２の状態にする。この背景色層の塗布と研摩作
業は複数回繰り返してもよい。

【００１４】

【実施例】上述の糸状と点状の組合せからなる模様１４
の形成は、例えば、岩田塗装機工業（株）製の乱糸スプ
レーガンＳＧＤ−７１等を用い、エポキシ樹脂塗料やウ
レタン樹脂塗料やフッ素樹脂塗料等の粘度を好ましくは
４〜１２ポアズとし、塗料噴出量を８０ミリリットル／
分、吹付け空気圧力を２ｋｇｆ／ｃｍ² とし、空気使用
量を７５リットル／分程度に設定して乱糸模様を形成で
きるが、この塗料噴出量を２０〜３０％程度低下させる
か、或いは空気使用量を２０〜３０％程度低下させる
と、乱糸状模様の端部に点状模様が付加された糸状と点
状の組合せからなる模様が形成される。通常の扱き塗装
では５〜１２ポアズ程度の粘度の塗料で扱くため、そう
した塗料を希釈することなくそのまま乱糸スプレーガン
に使用して糸状と点状の組合せからなる模様を形成でき
る簡便さがある。

【００１５】また、上記実施例のようにして糸状と点状
の組合せからなる模様１４を元竿１０の握り領域部１０
ＧＺに形成し、図１〜図３で説明したような研摩を行わ
なければ、そのままで滑り止め作用を果す。即ち、元竿
本体１０Ｈの表面に直接か、或いは下地塗装を施し、そ
の上に上記のようにして糸状と点状の組合せからなる模
様１４を形成する。こうすれば、ランダムに配設された
乱糸状突起と、高さの高い点状突起とによって、どの方
向の力にも、また、握持力に応じた滑り止め効果が得ら
れる。乱糸状突起のみと比べ、点状突起（面状突起）の
存在により下地への結合力を高めており、耐久性が向上
する。

【００１６】以上の説明は、釣竿に限らず、既述の各種
物品に適用できる。また、滑り止めは、特にスポーツ用
品に適する。また、下地塗装層１２はなくて直接に糸状
と点状の組合せからなる模様を形成してもよく、また、
物品によっては物品表面を平滑に研摩してから下地塗装
層を施すか、或いは、研摩した上に直接糸状と点状の組
合せからなる模様を形成してもよい。

【００１７】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明に
係る物品模様は、乱糸状模様の端部に点状模様が付加さ
れているため、装飾感が向上し、しかも糸状と点状の組
合せからなる模様層と背景色層とが同一の層に形成され
ているため、擦られても剥がれることが防止され、耐久
性が向上する。模様形成方法では、単にスプレー操作だ
けで所望の糸状と点状の組合せからなる模様が簡単に低
コストで形成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】図１は、本発明に係る模様の実施形態例の側面
図である。

【図２】図２は、図１の矢視線Ｂ−Ｂによる部分断面拡
大図である。

【図３】図３は、図１の模様形成方法の説明図である。

【図４】図４は、図３の模様形成途中の糸状と点状の組
合せからなる模様の平面図である。

【符号の説明】

１０ 元竿 １０Ｈ 元竿本体 １２ 下地塗装層 １４’ 糸状と点状の組合せからなる模様（の
層） １６’ 背景色の層 １８ クリヤー層

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 物品表面にほぼランダム状に配設され、
   乱糸状模様の端部に該乱糸状模様の糸幅よりも大きな幅
   寸法の点状模様を付加した糸状と点状の組合せからなる
   模様と、該糸状と点状の組合せからなる模様と同一の層
   に形成された背景色層とを有することを特徴とする物品
   の模様。
2. 【請求項２】 塗料の噴出量と空気使用量とが夫々所定
   の量である場合に、物品の表面に乱糸状模様がほぼラン
   ダム状に形成される乱糸スプレーガンを使用し、 前記空気使用量を前記所定量よりも少なくするか、或い
   は塗料噴出量を前記所定量よりも少なくして乱糸状模様
   の端部に該乱糸状模様の線幅よりも大きな幅寸法の点状
   模様を付加し、ほぼランダム状に配設された糸状と点状
   の組合せからなる模様を形成することを特徴とする物品
   模様の形成方法。