JP2965338B2 - 酵母の内容物の漏出法 - Google Patents

酵母の内容物の漏出法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は酵母の内容物を効率よく漏出させる方法に関
するものである。
更に詳細には、本発明は生のままの酵母であって、特
に高次倍数体酵母の内容物を漏出させる方法に関するも
のである。
本発明の方法によって漏出させた酵母の内容物は加熱
による変性が起こらないので、ビタミン類などの損失は
全くなく、栄養的にもすぐれており、食品原料や培地成
分としてきわめて有用である。
[従来の技術及び問題点] 一般に酵母の内容物は酵母エキス(Yeast extract)
として知られている。酵母エキスにはビタミン類、有機
塩基類、アミノ酸類が多量に含まれて栄養価が高く、食
品原料や微生物培養原料として使用されている。
従来、酵母エキスは常識として2倍体の酵母が用いら
れており、該酵母の自己消化液や熱水抽出液を濃縮して
濃厚液にしたり、噴霧乾燥、凍結乾燥などによって粉末
化して製品としている。
しかしながら、2倍体酵母を自己消化したり、熱水抽
出したりすれば、内容物はある程度破壊されたり、熱変
性を起こしたりすることになる。
[問題点を解決するための手段] 本発明者らは、酵母の内容物を分離するのに当たり、
当然より多くの内容物をできるだけ多く漏出させ、かつ
内容物に変性を起こさせないで取得する方法を求めて鋭
意研究した結果、高次倍数体酵母を静水圧で加圧するこ
とによって酵母の内容物を効率よく漏出させることがで
きること見出だしたのである。
本発明は、高次倍数体酵母を静水圧で加圧し、酵母の
内容物を効率よく漏出せしめることを特徴とする酵母の
内容物の漏出法である。
本発明における高次倍数体酵母、例えば4倍体酵母と
は、酵母の基本染色体組の4倍の染色体構成をもつ酵母
をいう。
通常、酵母は親株から由来した二組のゲノム(二倍体
細胞)から成るが、染色体の複数の過程が細胞分裂と同
調しなくなった時に異質倍数性細胞が生ずる。このよう
にゲノムの重複は当然でも起こるが、コルヒチンなどの
薬品処理や温度処理などの物理的刺激によって起こすこ
ともできる。また、細胞融合によって起こすこともで
き、かつ産業的量産培養も行える。
本発明における高次倍数体酵母は本発明において4倍
体の他3倍体も包含されるものであるが、奇数倍体並び
に5倍体以上のものは、稔生が低く、実用的には4倍体
が好ましい。
また、本発明における酵母とは、酵母に属するもので
あればいずれでも良いが、パン酵母、酒酵母、ワイン酵
母等の食用酵母から得られる高次倍数体酵母を選択して
使用するほうが得られる漏出物が酵母エキスとして広範
囲に利用できるので好ましい。
本発明における静水圧としては1,000〜6,000気圧、好
ましくは2,000〜4,000気圧程度である。
酵母の内容物の漏出処理に際しては、酵母を1〜60重
量%の酵母懸濁液として、直接加圧装置に挿入したり、
一旦酵母の懸濁液を可撓性プラスチック容器などに入
れ、この容器を水中に入れて、1,000〜6,000気圧に加圧
すればよい。
加圧時間としては、1分〜20時間程度が示されるが、
圧力と加圧時間のかね合いで内容物の成分の変化がある
ので、静水圧1,000〜6,000気圧の間で加圧時間による内
容物の成分組成をあらかじめ求めておいて、各圧力によ
る時間を決めるのが好ましい。
第1表は2倍体及び4倍体のパン酵母の10重量%の水
懸濁液を2,000〜3,000気圧で25℃、10分間加圧した後、
酵母細胞を遠心分離で除いた各上清液について280nmに
吸収をもつ物質の漏出量を比較したものである。
第1表から、同じ重量%の酵母量から、2倍体酵母よ
り4倍体酵母の方が内容物が多量漏出していることがわ
かる。
次の第2表は、2倍体及び4倍体のパン酵母の10重量
%懸濁液を2,000〜3,000気圧で25℃、10分間加圧した
後、各処理酵母をYPG寒天倍地でのコロニー数により生
残率を比較したものである。
第2表から、2,000〜3,000気圧の加圧処理によって、
圧力が高まるほど、どちらの酵母も損傷がはげしくなる
ことが分かる。そして4倍体酵母は更に損傷がはげしい
ことが分かる。
尚、酵母の生残率は加圧処理後のコロニー数を加圧処
理前のコロニー数で割った値である。
次の第3表は2倍体パン酵母及び4倍体清酒酵母(交
雑株)の10重量%水懸濁液を2,500気圧で25℃15分それ
ぞれ加圧した後、遠心分離し、上清液について各アミノ
酸量を比較したものである。
第3表から、4倍体酵母が2倍体酵母に比べ各種アミ
ノ酸が豊富に漏出されていることが分かる。
次に本発明の実施例を示す。
実施例1 4倍体パン酵母を10重量%水懸濁液として、その5ml
を5ml容プラスチック容器に充填、密封した後、圧力反
応容器(J.Biol.Chem.,19,511−512(1914))内に装填
し更に容器内を水で充填して密封した。
この圧力反応容器を25℃で10分間3,000気圧をかけ、
圧力解除後プラスチック容器内の5mlの懸濁液を遠心分
離し、上清液4.1mlを酵母の内容物として取得すること
ができた。
[発明の効果] 本発明は、酵母の内容物の漏出において、高次倍数体
酵母からの内容物を漏出させることにより、まず高次倍
数体酵母が加圧処理による損傷をうけやすいことから、
低い加圧でかつ短時間で漏出処理することができる。
この結果、加圧装置の設備投資が大きく軽減される
他、処理工程の時間短縮が量産体制において、その経済
的効果は大きい。
また、高次倍数体酵母が内容物を多量に漏出すること
で、酵母エキス等のコストを大幅に軽減することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A23L 1/28 C12N 1/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】高次倍数体酵母を、圧力が1,000〜6,000気
    圧の静水圧で加圧処理し、該酵母の内容物を漏出せしめ
    ることを特徴とする酵母の内容物の漏出法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
J.Ferment Technol.,Vol.55[1](1977)p.1−12
日本農芸化学会誌,Vol.63[3](1989)p.557(3Ap7欄)

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