JP2964858B2 - 断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品 - Google Patents

断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品

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JP2964858B2 JP29816093A JP29816093A JP2964858B2 JP 2964858 B2 JP2964858 B2 JP 2964858B2 JP 29816093 A JP29816093 A JP 29816093A JP 29816093 A JP29816093 A JP 29816093A JP 2964858 B2 JP2964858 B2 JP 2964858B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄系部材の表面に形成
する被膜層に関し、特に金属粉末の焼結層内の気孔を減
少し、耐酸化性を改善した断熱被膜層を有する鋳鉄製部
品に関する。
【0002】
【従来の技術】鉄系部材は高温に繰り返し使用される場
合には、断熱および耐酸化性を付与するために表面処理
がされている。この内、被膜処理としてはセラミックを
主体としたものが多い。しかし、金属とこのセラミック
との接合強度は充分ではなく、特に、自動車部品のよう
な長時間にわたって高温環境下で使用される部材におい
ては、表面の被膜層と母材の間に発生する下地酸化の現
象によって、界面での接合強度の低下が生じ、ついには
被膜層の剥離にいたることになる。
【0003】一般に、金属母材とセラミックの接合にお
いて、セラミックのポーラス性によって接合強度が問題
であるために、機械的な方法によって溶融時に応力を負
荷し、その封止作用を利用して界面の強度を向上させる
ことがなされている。この方法においても、両者の濡れ
性には限界があり十分な強度を得ることは難しい。さら
に、他の化学的な方法によって、濡れ性の改善を図ろう
としても、化学反応に付随するガス等と母材との関係に
おいて、接合強度への寄与を十分大きくすることは困難
となる。(例えば、材料工学辞典、p2463, vol. 4, 198
6)
【0004】さらに、特開昭61─163282号公報
には、セラミックと水ガラスをバインダーとしてスラリ
ー状として、これを金属部材に塗布してセラミック被膜
を形成する方法が開示されている。また、特開平3─1
6969号公報に、予め表面に酸化鉄の被膜層を形成す
る方法が開示れているが、これにおいても十分な接合強
度は得られない問題がある。
【0005】本発明者等は特許出願した特願平4─28
1600号において、鉄系合金の粉末からなる焼結層を
形成し、この表面にセラミック被膜層を形成する方法を
提案した。これにより、十分な接合強度が得られるが、
気孔の存在によって母材表面での酸化の発生がある。ま
た、使用環境によって高温下では、焼結層上にセラミッ
ク皮膜を形成した場合には、焼結層とセラミック被膜と
の熱膨張率の違いによる応力の作用があり、前記酸化の
進行と、内部応力の発生に基づいて、それぞれ被膜剥離
に繋がる可能性があり、十分な接合強度を維持するとは
言えない。さらに、鉄系部材と表面被膜層との界面の酸
化を防止して、その接合強度を向上し、さらに必ずしも
セラミック被膜を形成せずとも、十分な断熱性と耐酸化
性とを発現する被膜層の形成技術が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
鉄系部材、特に鋳鉄製部品の表面にFeを含有した鉄系
合金粉末による粉末層を形成するプロセスと、これを加
熱して焼結層を形成するプロセスによって構成されるセ
ラミック被膜層の形成方法において、さらに部材表面で
の酸化によるセラミックとの接合強度低下を防止するた
めに、多孔体である焼結層の気孔を封止して、それらを
封鎖孔となし母材表面酸化の進行を抑止することを可能
とする断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品を提供することで
ある。本発明の別の目的は、前記酸化を防止することに
よって、さらに必ずしもセラミック被膜を形成せずと
も、十分な断熱性と耐酸化性とを発現する被膜層を提供
することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的が、断熱被膜
層を備えた鋳鉄製部品であって、鋳鉄部材表面に10〜
90重量%のFeを含有した鉄系合金粉末からなる焼結
層が形成されてなり、該焼結層の気孔内に、融点が70
0〜850℃のガラス質物質が気孔全体に対して50%
以上含浸されていることを特徴とする断熱被膜層を備え
た鋳鉄製部品によって達成される。また、断熱被膜層を
備えた鋳鉄製部品であって、鋳鉄部材表面に10〜90
重量%のFeを含有した鉄系合金の粉末からなる焼結層
が形成されてなり、該焼結層にはセラミック中空体が分
散されていることを特徴とする断熱被膜層を備えた鋳鉄
製部品によっても達成される。
【0008】さらに、断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品で
あって、鋳鉄部材表面に10〜90重量%のFeを含有
した鉄系合金の粉末からなる焼結層が形成されてなり、
該焼結層はCr、Zr、Ti、Si、Mn、Nb、Vの
少なくとも1種以上の金属粉末が混合され、加熱により
生成された該金属粉末の酸化物の充填によって、該焼結
層に閉鎖孔を形成してなることを特徴とする断熱被膜層
を備えた鋳鉄製部品によっても達成される。
【0009】以下に本発明の限定理由について詳述す
る。本発明の鉄系金属粉末の組成のFeを10〜90重
量%に限定するが、これはFeが10%未満では焼結性
および接合強度が低くなり、90%超では耐酸化性を満
足しないためである。
【0010】さらに本発明では、金属層内に含浸するガ
ラス質物質の融点(ガラス質物質は明確な融点を有しな
いが、ガラス質物質が軟化を開始する「軟化点」と同意
語として用いる)が850℃よりも高い場合には、気孔
内に存在するガラス質物質と金属粉末との間に、微小な
亀裂が発生し、十分な酸素遮断効果が得られない。ま
た、700℃よりも融点が低いとガラス質物質の粘度が
低下して気孔内から流失し、効果を発現しないことにな
る。本発明の第一発明の範囲内の融点を持つ場合、気孔
内にガラス質物質が適度の粘度で溶融し、粒子間の隙間
を充填する効果が得られる。
【0011】また、本発明は、含浸量を気孔体積の50
%以上と限定しているが、これ以下では粒子間を充填し
て、隙間を埋める効果が十分に得られないためである。
また、本発明のガラス質物質は、ケイ酸とアルカリ(N
2 O、Li2 O、K2 O)からなる二成分ガラスが好
ましい。なお、通常のガラスは融点が1000℃以上で
あり本発明の範囲外となる。これはアルカリを含有する
ことにより、融点を700〜850℃に調整することが
可能となり、前記二成分ガラスは常温では、乾燥すると
水溶性を示し容易に含浸することができることによる。
また、融点が同程度の700〜850℃である金属合金
等を用いると金属層と反応し、ガラスの融点が変化する
傾向にあるが、前記ガラスは金属との反応性が乏しく安
定した状態を維持できるためである。
【0012】本発明の第二発明では、前記第一発明と同
様の理由で鉄系合金粉末の組成として、Feを10〜9
0重量%に限定するものである。一方、セラミック中空
体の組成としては、融点が使用温度である1200℃以
上であり、内部が中空になっている球であれば良く、組
成を限定するものではないが、現状では、技術的および
工業的には例えば、Al2 3 、SiO2 およびAl2
3 とSiO2 からなるセラミックである。平均粒径
(外径)は鉄系合金粉末よりも粒径が大きく、かつ2m
m以下が好ましい。
【0013】この粒径が鉄系合金粉末以上となると焼結
性および接合強度が低く、2mm以上では、膜厚上限が
2mmであり、被膜から露出し、成膜できなくなる。こ
のセラミック中空体の混合比は、鉄系合金粉末/(鉄系
合金粉末+セラミック中空体)が体積比で20〜70%
が適正な範囲である。これが20%未満では焼結性およ
び接合強度が低く、70%超では断熱性が十分でない。
さらに、成膜を得る方法として、鉄系合金粉末とセラミ
ック中空体およびブタノール等の有機溶媒からなるスラ
リーを鋳鉄部材に塗布し、これを焼成しても良い。この
時、スラリー溶媒は焼結に何ら寄与しないので、アルコ
ール類、水のいずれでも良い。
【0014】但し、作業性を考慮するとブタノールが好
ましい。本発明の焼結条件は、焼結温度は700〜12
00℃であり、これは700℃未満では焼結性および接
合強度が低く、かつ1200℃超では金属母材が熱歪み
を生じるため、成膜できない。なお、焼結雰囲気条件は
酸素濃度が5%以下が好ましく、酸素濃度が5%以上で
は鉄系合金粉末が酸化し、焼結性および接合強度が低下
する。また、膜厚は0.3〜2.0mmが適正であり、
0.3mm未満では断熱性が低く、2.0mm超では焼
結性および接合強度が低くなる。
【0015】本発明の第三発明においても、鉄系合金粉
末の組成としてFeを10〜90重量%に限定するが、
これは10重量%未満では焼結性および接合強度が低下
し、90重量%を越えると、耐酸化性が低下するからで
ある。すなわち、金属層の空隙は、Crの効果により防
げるが、金属粉末自身の耐酸化性が低下し、この粉末内
の粒界等を酸素が移動し、結果として、母材が酸化を起
こす。また、平均粒径は50μm以下が適正である。粒
径が50μm超では焼結性および接合強度が低下する。
次に、微小金属粉末についての要件として、鉄系合金粉
末より優先的に酸化されることが必要であり、さらに微
小金属粉末の酸化物が緻密体となること、微小金属粉末
およびこの酸化物の融点が1000℃以上であることが
必要な要件である。
【0016】また、その平均粒径は鉄系合金粉末の平均
粒径よりも小さいこと、すなわち50μm未満であるこ
とが合わせて必要なことである。もしも、鉄系合金粉末
の平均粒径より大きい時には、鉄系合金粉末の焼結性お
よび接合性を阻害する。また、その混合比は、Crの場
合では、Cr粉末の体積総量/(Cr粉末の体積総量+
鉄系合金粉末の体積総量)が20〜50%が必要であ
る。もしも、これが20%未満の時は、被膜の耐酸化性
は空気遮断性が低いため十分でなく、50%超では鉄系
合金粉末の焼結性および接合性を阻害する。
【0017】
【作用】本発明は、金属層内に融点が700〜850℃
であるガラス系物質を含浸することを第一の特徴として
いる。一般に鋳鉄部材は、700℃以上の温度では酸化
量が増加し、特に800℃から著しく酸化する特徴を有
している。この温度条件を勘案して、前記焼結層の気孔
内に特定融点のガラス質物質を含浸させることにより、
酸化量の増加する条件下では、ガラス質物質が適度な粘
度となり気孔の隙間を充填することによって、酸化を防
止することができ、かつ気孔の存在によって断熱性も備
えるものである。
【0018】これをガラス質物質に限定したのは焼結層
に対して濡れ性が良いという観点に基づいており、この
濡れ性が悪いと隙間が生じ、酸化の防止が不充分とな
る。さらに、断熱性を向上させるためにセラミック被膜
を形成してもよい。また、本発明は、前記焼結層にセラ
ミック中空体を分散させことによって断熱性を付与する
ことが可能であり、セラミック被膜層の形成が必ずしも
必要でなくなり、熱膨張率の相違に起因する内部応力の
発生がなく、被膜層の剥離を防止することが可能とな
る。
【0019】さらに、前記特定金属からなる粉末を焼結
層に混合しておくことにより、鋳鉄部材の使用時、ある
いは付加的な酸化処理により金属粉末が酸化して酸化物
となり、この酸化反応時の体積変化(膨張)により焼結
層の封孔がなされ、鋳鉄の酸化を防止することができ
る。
【0020】
【実施例】以下、添付図面を参照して、本発明の実施態
様例および比較例によって本発明を詳細に説明する。
【0021】実施例1 本発明の第一発明を自動車用鋳鉄製エキゾーストマニホ
ールド(以下Exマニと略す)に実施した。先ず、Ex
マニの内面をショットブラストにて粗面化し、FeNi
(Fe−50重量%Ni)合金粉(粒度10〜20μ
m)に蒸留水を加えて、攪拌しスラリー状とする。この
際の粘土は1000〜4000cpsに調整する。この
スラリーを鋳鉄製Exマニ内部に流し込み、膜厚が10
0μmとなるように塗布する。塗布後これを200℃で
乾燥し、これを真空中または不活性ガス中にて昇温し、
900℃にて5Hr保持する。
【0022】その後、炉冷することにより金属層が形成
される。ガラス質物質としてケイ酸塩ガラスのSiO2
─Na2 O(水ガラス)を用い、市販の水ガラス3号溶
液(75%SiO2 ─25%Na2 O)に蒸留水を加え
濃度を25重量%まで希釈する。この溶液内に処理した
Exマニを浸漬し、これを真空中に置いて金属層内に水
ガラスを含浸させる。その後、300℃で乾燥し重量を
測定し、気孔体積(予め測定する)に対して含浸の程度
を調べ、前記ガラス質の含浸工程を繰り返し、気孔全体
積に対して50%以上まで含浸を行った。Exマニの場
合には、前記含浸工程を5回繰り返すことにより、気孔
体積の60%まで含浸が可能となる。その後、ZrO2
等を骨材としたセラミックスラリーを塗布し、500℃
で焼成し、断熱被膜を構成した。図1および図2は本実
施例の成膜後の模式図である。図1は鋳鉄部材4の表面
に鉄系合金粉末を焼結させた金属層1を形成し、その気
孔内2にガラス質物質3を含浸させたものである。図2
は図1にさらに、上部にセラミック5を被覆した断熱被
膜を形成したものを示す。
【0023】前記工程で作成したExマニおよび前記含
浸工程のない従来品を850℃の大気中に保持し、金属
層と母材間の酸化状態を切断観察した。その結果を図7
に示す。図7に示すように従来品は母材が著しく酸化し
ているのに対して本発明品は母材酸化を防いでいること
が分かる。表1にガラス成分、含浸量およびガラス融点
を変化させた際の、耐酸化性能をまとめて示した。ここ
では、耐酸化性の指標として大気中850℃、200時
間保持後の母材界面部の酸化スケール厚さを示してい
る。表1より本発明の範囲内では耐酸化性が優れている
ことが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】実施例2 本実施例においては、第二発明をExマニに実施したも
のである。その作成工程は、50wt.%Fe−50wt.%N
i粉末(平均粒径10μm)とアルミナ製中空体(平均
粒径50μm)を金属粉/(金属粉+アルミナ中空体)
が50vol.%となるように混合した。この混合粉末1部
にブタノールを1部加え、十分に攪拌し原料スラリーを
得た。このスラリーをExマニの内面に塗布し、余剰の
スラリーを除去後、80℃の乾燥器で2時間乾燥させ
た。
【0026】その後、アルゴン雰囲気、900℃で5時
間保持し成膜した。成膜後の断面組織の模式図を図3に
示す。また、比較のために従来のセラミックコーティン
グの成膜後の模式図を図4に示す。図4では、セラミッ
ク粉末8およびセラミック中空体6は、なんら接合に寄
与しておらず、無機質結合剤9でコーティングと母材金
属とを接合していた。そのため、接合強度が低く、冷熱
サイクルが生じた時などには、コーティングの剥離が生
じることがあった。図3に示すごとく、本実施例では鉄
系金属粉末は焼結され焼結金属層7を形成するととも
に、セラミック中空体6を固めると同時に、鋳鉄部材4
とも拡散接合するため、従来のセラミック被膜に比較し
て高い接合強度を得ることができる。
【0027】また、接合界面をEPMAライン分析を行
ったところ、Fe、Ni元素の拡散が認められた。同様
の工程にて金属粉末組成および粒径、アルミナ製中空球
粒径、両材料の混合比、焼結温度を表2のように変えて
成膜を行った。比較例として、Al2 3 粉末(粒径2
0μm)10部、Al2 3 中空球(粒径50μm)1
0部、水ガラス結合剤(水ガラス2号)20部を混合
し、塗布後、500℃で膜厚0.5mmの成膜した。
【0028】上記のように作成した排気管の性能を以下
の方法で調査した。その結果を表2〜4にまとめて示
す。断熱性評価は2000ccの4気筒ガソリンエンジ
ンに上記Exマニを組み込み、4000rpmの回転数
で30分運転した。その時の被膜上部と被膜下部の温度
差を熱電対で測定し、これを断熱温度とした。それ故、
この温度が大きい程、断熱性に優れていると言える。ま
た、密着性(接合性)評価については、上記排気管より
テストピースを切り出し、剪断密着測定法により、接合
性を評価した。表2〜4より本発明の範囲内では密着強
度および断熱性が優れていることが分かる。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
【表4】
【0032】実施例3 以下、本発明の第三発明をExマニに適用した実施例に
ついて説明する。50wt.%Fe−50wt.%Ni粉末(平
均粒径10μm)と純度95%のCr粉末(平均粒径2
μm)をCr粉末の体積総量/(Cr粉末の体積総量+
鉄系合金粉末の体積総量)が30%となるように混合し
た。(重量比では33wt.%)この混合粉末100部に対
して、10部のブタノールを混合し、十分に攪拌し原料
スラリーを得た。このスラリーをExマニの内面に塗布
し、余剰のスラリーを除去後、80℃の乾燥器で2時間
乾燥させた。その後、アルゴン雰囲気、900℃で5時
間保持し焼成した。焼成後の断面組織の模式図を図5に
示す。鉄系合金粉末10は相互に焼結しており、かつ母
材の鋳鉄部材4とも拡散によって強固に接合されてい
る。本実施例では、その空隙(気孔)には、微少金属粉
末11としてCr粉末が観察される。なお膜厚は、50
0μmであった。上記Exマニを大気雰囲気で850℃
に10時間保持した。
【0033】その後テストピース(50x50x5)を
切り出し、断面組織の観察を行った。その組織模式図を
図6に示す。この図では鉄系合金粉末10の焼結層空隙
に存在する微少金属粉末11は体積膨張を起こし、鉄系
合金粉末10の焼結層空隙を埋める。これにより、母材
への酸素の通路が遮断され、母材の酸化を防ぐことにな
る。本実施例では、被膜内の開口気孔(オープンポア)
に位置するCr粉末は、酸化されその体積を膨張し、気
孔を塞いでいる。一方、閉口気孔(クローズポア)に位
置するCr粉末は酸化されることなく、Crのままで存
在している。このように、開口気孔をCrの酸化膨張で
遮断することにより、空気(酸素)は、母材に供給され
ず、母材酸化を防ぐことになる。この結果を表5のNo.
39に示す。
【0034】
【表5】
【0035】実施例4 50wt.%Fe−50wt.%Ni粉末(平均粒径10μm)
と純度95%のCr粉末(平均粒径2μm)をCr粉末
の体積総量/(Cr粉末の体積総量+鉄系合金粉末の体
積総量)が30%となるように混合した。(重量比では
33wt.%)この混合粉末の体積総量50に対してAl2
3 製中空球(粒径50μm)の体積が50となるよう
混合した。(重量換算すると粉末100部に対して、A
2 3中空球8部)この混合品100部に対して、1
0部のブタノールを混合し、十分に攪拌し原料スラリー
を得た。
【0036】このスラリーをExマニの内面に塗布し、
余剰のスラリーを除去後、80℃の乾燥器で2時間乾燥
させた。その後、アルゴン雰囲気、900℃で5時間保
持し焼成した。上記Exマニを大気雰囲気で850℃に
10時間保持した。その後テストピース(50x50x
5)を切り出し、断面組織の観察を行った。その結果、
被膜内の開口気孔(オープンポア)に位置するCr粉末
は、酸化されその体積を膨張し、気孔を塞いでいる。こ
の時、膜厚は500μmであった。上記Exマニを20
00ccのガソリンエンジンに組み込み、4000rp
mの回転数で30分運転した。その時の被膜上部と被膜
下部の温度差を熱電対で測定し、これを断熱温度とし
た。比較として実施例3で作製したExマニ(中空球な
し)も評価した。
【0037】なお、両者とも膜厚が500μmで同一で
あることを確認し、評価をおこなった。その結果、中空
球無添加品(実施例3)は断熱温度5℃であったのに対
して、中空球添加品(実施例4)は断熱温度40℃であ
った。この結果より、中空球を添加することによって、
断熱性も付与できることが確認できた。この結果を表5
のNo.40に示す。
【0038】実施例5 50wt.%Fe−50wt.%Ni粉末(平均粒径10μm)
と純度95%のCr粉末(平均粒径2μm)をCr粉末
の体積総量/(Cr粉末の体積総量+鉄系合金粉末の体
積総量)が30%となるように混合した。(重量比では
33wt.%)この混合粉末100部に対して、20部のブ
タノールを混合し、十分に攪拌し原料スラリーを得た。
このスラリーをExマニの内面に塗布し、余剰のスラリ
ーを除去後、80℃の乾燥器で2時間乾燥させた。その
後、アルゴン雰囲気、900℃で5時間保持し焼成し
た。
【0039】その際、焼成後に膜厚を測定したところ、
100μmであった。このFeNi−Cr層上にセラミ
ックスをコーティングし、断熱性を付与する。Al2
3 粉末(粒径20μm以下)100部に水ガラス1号
(濃度30wt.%)溶液50部ヲ加え、十分に攪拌し、原
料塗料を得た。この塗料(スラリー)を上記工程で作製
したFeNiコーティング済Exマニ内面に流し込み、
塗布し、余剰のスラリーを除去後、80℃の乾燥器で1
時間乾燥させた。
【0040】その後、大気雰囲気、300℃で5時間保
持し焼成した。焼成後、膜厚を測定したところ、500
μm(セラミック層400μm、FeNiCr層100
μm)であった。上記Exマニを大気雰囲気で850℃
に5時間保持し、FeNiCr層の酸化処理を行った。
本実施例ではこの酸化処理を最後に行ったが,これはセ
ラミックスラリー塗布時に、スラリーがFeNiCr層
にしみ込み、密着強度を向上させる効果がある。酸化処
理をセラミックスラリー塗布前におこなった場合、Fe
NiCr層が封孔し、このしみ込みを阻害する場合があ
るためである。
【0041】また、本実施例ではセラミックスラリー溶
媒としてアルカリ性である水ガラス溶液を用いたが、リ
ン酸アルミナ溶液のような酸性溶媒の場合、この溶媒が
FeNiCr層の気孔内を通じて侵入し、鉄基母材を腐
食する場合がある。このような場合には、酸化処理後に
セラミック層のコーティングを行うことによって溶媒腐
食も防止可能である。上記Exマニを2000ccのガ
ソリンエンジンに組み込み、4000rpmの回転数で
30分運転した。
【0042】その時の被膜上部と被膜下部の温度差を熱
電対で測定し、これを断熱性を評価した。その結果、断
熱温度は40℃であり、中空球添加品(実施例4)と同
等の断熱性を有することが分かった。この結果を表5の
No.41に示す。
【0043】実施例6 鉄系合金粉末の組成、粒径および微小金属粉末の組成、
粒径を変更し、実施例3と同様な工程でExマニを作製
し、耐酸化性能および接合強度を評価した。これらを表
6〜7のNo.44以降にまとめて示す。この表におい
て、耐酸化性評価方法は上記Exマニからテストピース
(50x50x5)を切り出し、大気雰囲気、850℃
で保持し、母材の酸化具合を切断観察によって調査し
た。
【0044】保持時間は、最高200時間とし、0〜5
0時間までの10時間毎に調査し、50〜200時間ま
での50時間毎に調査した。母材界面近傍が10μm以
上酸化した時間を耐酸化性の指標とし、この時間が大き
いほど耐酸化性が優れていると考えられる。接合強度測
定方法は上記Exマニからテストピース(50x50x
5)を切り出し、剪断により接合強度を測定した。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【発明の効果】本発明は鉄系部材の表面に、ガラス質物
質を含浸することによって耐酸化性に優れる鉄系合金の
焼結層を被膜層として形成するもので、熱膨張率大き
く、かつ弾性率が小さいため、高温での使用の際に発生
する熱応力は小さくて済む。さらに最表面に接合性に優
れるセラミック被膜を形成可能とし、冷熱サイクルの使
用環境における被膜寿命を顕著に延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る金属焼結層にガラス質物質を含浸
した被膜層の断面組織の模式図である。
【図2】本発明に係る金属焼結層の表面にさらにセラミ
ック層を被膜した断面組織の模式図である。
【図3】本発明に係る金属焼結層にセラミック中空球を
含む被膜層の断面組織の模式図である。
【図4】従来のセラミック被膜層の断面組織の模式図で
ある。
【図5】本発明に係る金属焼結層に金属粉末および微少
金属粉末を混合した被膜層の断面組織の模式図である。
【図6】本発明に係る金属焼結層に金属粉末および微少
金属粉末を混合した被膜層の使用により、酸化が進行し
た被膜層の断面組織の模式図である。
【図7】本発明および従来の耐酸化性を比較して示す図
である。
【符号の説明】
1…金属焼結層 2…気孔 3…ガラス質物質 4…鋳鉄母材 5…セラミック層 6…セラミック中空球 7…金属焼結層 8…セラミック粉末 9…無機質結合剤 10…鉄系金属粉末 11…金属微粉 12…金属酸化物 13…閉口気孔

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品であっ
    て、鋳鉄部材表面に10〜90重量%のFeを含有した
    鉄系合金粉末からなる焼結層が形成されてなり、該焼結
    層の気孔内に、融点が700〜850℃のガラス質物質
    が気孔全体に対して50%以上含浸されていることを特
    徴とする断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品。
  2. 【請求項2】 断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品であっ
    て、鋳鉄部材表面に10〜90重量%のFeを含有した
    鉄系合金の粉末からなる焼結層が形成されてなり、該焼
    結層にはセラミック中空体が分散されていることを特徴
    とする断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品。
  3. 【請求項3】 断熱被膜層を備えた鋳鉄製部品であっ
    て、鋳鉄部材表面に10〜90重量%のFeを含有した
    鉄系合金の粉末からなる焼結層が形成されてなり、該焼
    結層はCr、Zr、Ti、Si、Mn、Nb、Vの少な
    くとも1種以上の金属粉末が混合され、加熱により生成
    された該金属粉末の酸化物の充填によって、該焼結層に
    閉鎖孔を形成してなることを特徴とする断熱被膜層を備
    えた鋳鉄製部品。
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