JP2963175B2 - 半導体装置 - Google Patents

半導体装置

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JP2963175B2
JP2963175B2 JP24146290A JP24146290A JP2963175B2 JP 2963175 B2 JP2963175 B2 JP 2963175B2 JP 24146290 A JP24146290 A JP 24146290A JP 24146290 A JP24146290 A JP 24146290A JP 2963175 B2 JP2963175 B2 JP 2963175B2
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【発明の詳細な説明】 [概要] 半導体装置、特に、光・光スイッチ、光双安定レー
ザ、高速応答レーザ等のように光に高速で応答する半導
体装置に関し、 準位対にキャリアが蓄積するのを防止して超高速動作
させることができる半導体装置を提供することを目的と
し、 第1の光学遷移エネルギを有する第1の準位対と、前
記第1の光学遷移エネルギより小さい第2の光学遷移エ
ネルギを有し、前記第1の準位対からキャリアが遷移さ
れる第2の準位対と、前記第1の光学遷移エネルギに対
応する波長の光を発生し、該光に共鳴するキャリアを前
記第1の準位対に生成して、該光に対する吸収率を低下
させるキャリア生成手段と、前記第1の準位対から前記
第2の準位対に遷移されたキャリアを誘導放射により消
滅させるキャリア消滅手段とを有するように構成する。
[産業上の利用分野] 本発明は半導体装置、特に、光・光スイッチ、光双安
定レーザ、高速応答レーザ等のように光に高速で応答す
る半導体装置に関する。
近年、大容量光通信や高速光コンピュータ等に用いる
ために、光を光により高速でスイッチングさせる光・光
スイッチが注目され、光のオン・オフ動作を超高速で行
うことが要求されている。
[従来の技術] 光のオン・オフ動作を超高速で行うために、TBQ(Tun
neling Bi−Quantum Well)構造を有する半導体装置が
提案されている(特開昭63−224547号)。TBQ構造は、
幅の狭い量子井戸と幅の広い量子井戸を交互に多数設け
たものである。
幅の狭い量子井戸の準位対に共鳴する波長の光を照射
すると、幅の狭い量子井戸に励起子が生成されて光を吸
収し難くなり、光の吸収率が低下する。励起子が生成さ
れるとトンネル現象により励起子のキャリアが幅の広い
量子井戸に抜け出すので、再び光を吸収できるようにな
り吸収率が回復する。このようにTBQ構造の半導体装置
では10psecのオーダで光を吸収回復が可能であり、高速
で光をオンオフすることができる。
[発明が解決しようとする課題] このようにTBQ構造の半導体装置は、光吸収回復時間
が1psecと従来のものに比べて高速で光スイッチングが
可能である。しかし、TBQ構造の半導体装置を、より高
速に動作させようとすると、トンネリングにより抜出し
たキャリアが幅の広い量子井戸に蓄積して、幅の狭い井
戸からのキャリアのトンネリングを阻害し、高速動作が
困難になるという問題があった。
本発明の目的は、準位対にキャリアが蓄積するのを防
止して超高速動作させることができる半導体装置を提供
することにある。
[課題を解決するための手段] 上記目的は、第1の光学遷移エネルギを有する第1の
準位対と、前記第1の光学遷移エネルギより小さい第2
の光学遷移エネルギを有し、前記第1の準位対からキャ
リアが遷移される第2の準位対と、前記第1の光学遷移
エネルギに対応する波長の光を発生し、該光に共鳴する
キャリアを前記第1の準位対に生成して、該光に対する
吸収率を低下させるキャリア生成手段と、前記第1の準
位対から前記第2の準位対に遷移されたキャリアを誘導
放射により消滅させるキャリア消滅手段とを有すること
を特徴とする半導体装置によって達成される。
また、上記目的は、第1の光学遷移エネルギに対応す
る波長の光に共鳴してキャリアを生成して、該光に対応
する吸収率を低下させる第1の準位対と、前記第1の光
学遷移エネルギより小さい第2の光学遷移エネルギを有
し、前記第1の準位対からキャリアが遷移される第2の
準位対とを有し、前記第1の準位対にキャリアが生成し
た場合は、前記第1の準位対から前記第2の準位対にキ
ャリアを遷移させ、前記第2の準位対に遷移されたキャ
リアを誘導放射により消滅させることを特徴とする半導
体装置によっても達成される。
また、上記目的は、第1の光学遷移エネルギを有する
第1の準位対と、前記第1の光学遷移エネルギより小さ
い第2の光学遷移エネルギを有し、前記第1の準位対か
らキャリアが遷移される第2の準位対と、前記第1の準
位対にキャリアを生成し、前記第1の光学遷移エネルギ
に対応する波長の光を発生する光発生手段と、前記第1
の準位対から前記第2の準位対に遷移されたキャリアを
誘導放射により消滅させるキャリア消滅手段とを有し、
前記第1の準位対のキャリアを前記第2の準位対に遷移
することにより、前記第1の遷移エネルギに対応する波
長の光の発振を停止することを特徴とする半導体装置に
よっても達成される。
[作用] 本発明によれば、準位対にキャリアが蓄積するのを防
止して超高速動作させることができる。
[実施例] 本発明の第1の実施例による半導体装置を第1図を用
いて説明する。
第1図(a)に示すように、約500μm厚のGaAs基板1
0上に幅が1.1456μm(l1)で厚さが2.42μm(l2)の
超格子層12が形成されている。超格子層12は、厚さ32ML
のGaAs層12aと厚さ14MLのAl0.51Ga0.49As層12bを交互に
88周期積層した超格子構造である。但し、1ML(原子
層)は2.83Åである。GaAs基板10と中央底部はエッチン
グ除去されている。超格子層12の上面及び側面には誘導
体多層膜14が形成され、超格子層12の下面にも誘電体多
層膜16が形成されている。なお、誘電体多層膜14、16は
約200ÅのAu薄膜でもよい。
本実施例による半導体装置の製造方法を説明する。Ga
As基板10上にMBE法によりGaAs層12aとAl0.51Ga0.49As層
12bを交互に88周期積層して厚さl2の超格子層12を形成
する。次に、超格子層12の幅がl1になるようにパターニ
ングする。続いて、超格子層12の上面、側面及び下面に
誘電体多層膜14、16を形成する。
本実施例の半導体装置の超格子層12のバンド構造を第
1図(b)に示す。GaAs層12aの準位対が、光学遷移エ
ネルギE1(=hc/λ1)と光学遷移エネルギE2(=hc/λ
2)の少なくとも2つの準位対に量子化されている。超
格子層12の幅l1は次式 l1=(mλ1)/(2nSL) 但し、m:整数 nSL:超格子層12の屈折率 を満足し、超格子層12の誘電体多層膜14間のキャビティ
において光学遷移エネルギE1の波長λ1でレーザ発振す
るように形成されている。また、超格子層12の厚さは次
式 l2≒(mλ2)/(2nSL) 但し、m:整数 nSL:超格子層12の屈折率 を満足するように形成されている。
次に、本実施例による半導体装置を光・光スイッチと
して用いた場合の動作について説明する。
半導体装置の超格子層12の上方に信号光を発生する信
号光用レーザ光源20と制御光を発生する制御光用レーザ
光源22を設け、超格子層12の下方に信号光を受光する受
光素子24を設ける。信号光用レーザ光源20及び制御光用
レーザ光源22の波長は光学遷移エネルギE2に共鳴するλ
2(=0.79μm)である。
信号光用レーザ光源20から波長λ2の信号光を超格子
層12に照射すると、一部が吸収されて超格子層12のエネ
ルギE2の準位対に電子及び正孔が励起される。残りは透
過して受光素子24で受光される。受光素子24の受光信号
は信号光の強さに応じた一定の強さとなる。
ここで制御光用レーザ光源22からパルス状で高出力の
制御光を超格子層12に照射すると、エネルギE2の準位対
に電子及び正孔が励起され、一時的にエネルギE2の準位
対に存在する電子及び正孔が多くなる。このため、信号
光により電子及び正孔が励起し難くなり超格子層12の光
吸収率が低下し、受光素子24の受光信号が一時的に上昇
する。しかし、エネルギE2の準位対に励起された電子及
び正孔は、緩和現象によりエネルギE1の準位対に遷移す
るので、超格子層12の吸収率は上昇し、受光素子24の受
光信号は回復する。
制御光用レーザ光源22から制御光が高出力、高繰返し
により出力されると、エネルギE2の準位対に電子及び正
孔が次々と励起されてエネルギE1の準位対に遷移され
る。このため、エネルギE1の準位対に電子及び正孔が蓄
積し、エネルギE2の準位対からエネルギE1の準位対へ遷
移し難くなり、制御光に対する信号光の高速応答が阻害
される。
しかしながら、本実施例の半導体装置では超格子層12
が左右の誘電体多層膜14間により波長λ1のレーザ発振
が可能なキャビティを形成しているので、エネルギE1の
準位対の電子及び正孔の濃度がある程度(〜1012cm-2
以上になるとレーザ発振して蓄積された電子及び正孔を
超高速で消滅させる。このため、エネルギE1の準位対に
電子及び正孔がある程度(〜1012cm-2)以上蓄積するこ
となくクランプされ、エネルギE2の準位対からエネルギ
E1の準位対に電子及び正孔が遷移し難くなることがな
く、高出力、高繰返しの制御光にも超高速で応答するこ
とができる。
このように本実施例によれば、レーザ発振させること
により電子及び正孔を高速で消滅させることができるの
で、高出力、高繰返しの制御光にも超高速で応答するこ
とができる。
本発明の第2の実施例による半導体装置を第2図を用
いて説明する。
第2図(a)に示すように、約600μm厚の半絶縁性
のInP基板30上に幅が2.2μm(l1)で厚さが1.1075μm
(l2)の超格子層32が形成されている。超格子層32は、
厚さ15MLのIn0.53Ga0.47As層32aと、厚さ9MLのIn0.31Al
0.69As0.82Sb0.18層32bと、厚さ30MLのIn0.48Ga0.52As
0.95Sb0.05層32cと、厚さ9MLのIn0.31Al0.69As0.82Sb
0.18層32dとを60周期積層したTBQ構造である。但し、1M
L(原子層)は2.93Åである。InP基板30の中央底部はエ
ッチング除去されている。超格子層32の上面及び側面に
は誘電体多層膜34が形成され、超格子層32の下面にも誘
電体多層膜36が形成されている。なお、誘導体多層膜3
4、36は約200ÅのAu薄膜でもよい。
本実施例による半導体装置の製造方法を説明する。In
P基板20上にMBE法によりIn0.53Ga0.47As層32aとIn0.31A
l0.69As0.82Sb0.18層32bとIn0.48Ga0.52As0.95Sb0.05
32cとIn0.31Al0.69As0.82Sb0.18層32dとを交互に60周期
積層して厚さl2の超格子層32を形成する。次に、超格子
層32の幅がl1になるようにパターニングする。続いて、
超格子層32の上面、側面及び下面に誘電体多層膜34、36
を形成する。
本実施例の半導体装置の超格子層32のバンド構造を第
2図(b)に示す。In0.48Ga0.52As0.95Sb0.05層32cの
準位が、光学遷移エネルギE1(=hc/λ1)の準位対に
量子化され、In0.53Ga0.47As層32aの準位が、光学遷移
エネルギE2(=hc/λ2)の準位対に量子化されてい
る。超格子層32の幅l1は次式 l1=(mλ1)/(2nSL) を満足し、超格子層32の誘電体多層膜34間のキャビティ
において光学遷移エネルギE1の波長λ1レーザ発振する
ように形成されている。
次に、本実施例による半導体装置を光・光スイッチと
して用いた場合の動作について説明する。
半導体装置の超格子層32の上方に信号光を発生する信
号光用レーザ光源40と制御光を発生する制御光用レーザ
光源42を設け、超格子層32の下方に信号光を受光する受
光素子44を設ける。信号光用レーザ光源40及び制御光用
レーザ光源42の波長は光学遷移エネルギE2に共鳴するλ
2(=1.3μm)である。
制御光用レーザ光源42から制御光が高出力、高繰返し
により出力され、エネルギE2の準位対に電子及び正孔が
次々と励起される。励起された電子及び正孔はトンネリ
ングしてエネルギE1の準位対に遷移される。本実施例で
は超格子層32が左右の誘電体多層膜34間により波長λ1
のレーザ発振が可能なキャビティを形成しているので、
エネルギE1の準位対の電子及び正孔の濃度がある程度
(〜1012cm-2)以上になると波長λ1(=1.564μm)
によりレーザ発振して蓄積された電子及び正孔を超高速
で消滅させる。このため、エネルギE2の準位対からエネ
ルギE1の準位対に電子及び正孔が遷移し難くなることが
なく、高出力、高繰返しの制御光にも超高速で応答する
ことができる。
このように本実施例によれば、レーザ発振させること
により電子及び正孔を高速で消滅させることができるの
で、高出力、高繰返しの制御光にも超高速で応答するこ
とができる。
なお、制御光用レーザ光源42から制御光を照射し続け
れば、エタロンの光双安定性により本実施例による半導
体装置を双安定メモリとしても動作させることができ
る。
本発明の第3の実施例による半導体装置を第3図を用
いて説明する。第2図に示す半導体装置と同一の構成要
素には同一の符号を付しつ説明を省略又は簡略にする。
本実施例では超格子層32上方に誘電光用レーザ光源46
を更に設けている点に特徴がある。エネルギE1の準位対
に蓄積された電子及び正孔をレーザ発振により消滅させ
る代わりに、誘電光用レーザ光源46からエネルギE1に共
鳴する波長λ1(=1.564μm)のレーザ光を照射する
ことにより、誘導放射により超高速で電子及び正孔を消
滅させる。
なお、本実施例では、誘導放射により電子及び正孔を
消滅させ、レーザ発振により電子及び正孔を消滅させな
いので、超格子層32の幅を必ずしも波長λ1でレーザ発
振する長さl1(=(mλ1)/(2nSL))にする必要は
ない。
本発明の第4の実施例による双安定レーザを第4図を
用いて説明する。
第4図(a)に示すように、約600μm厚の半絶縁性
のInP基板50上に幅が5.51μm(l2)の超格子層(利得
領域)52が形成され、超格子層52上に幅が4.41μm(l
1)の超格子層(可飽和吸収領域)54が形成されてい
る。超格子層52は、厚さ15MLのIn0.53Ga0.47As層52a
と、厚さ9MLのIn0.31Al0.69As0.82Sb0.18層52bとを29周
期積層した超格子構造である。超格子層54は15MLのIn
0.53Ga0.47As層54aと、厚さ9MLのIn0.31Al0.69As0.82Sb
0.18層54bと、厚さ30MLのIn0.48Ga0.52As0.95Sb0.05層5
4cと、厚さ9MLのIn0.31Al0.69As0.82Sb0.18層54dとを29
周期積層したTBQ構造である。但し、1ML(原子層)は2.
93Åである。
超格子層52の左右側面には誘電体多層膜56が形成さ
れ、レーザ発振した波長λ2のレーザ光(hν2)は側
面から誘電体多層膜56を通して出力される。超格子層54
の左右側面から上面周囲にも誘電体多層膜58が形成さ
れ、レーザ発振した波長λ1のレーザ光(hν1)は側
面から誘電体多層膜58を通して出力される。利得領域と
しての超格子層52には光閉込め用のクラッド層(図示せ
ず)とキャリア注入用のp側電極及びn側電極(図示せ
ず)が設けられている。なお、誘電体多層膜56、58は約
200ÅのAu薄膜でもよい。
利得領域としての超格子層52のバンド構造を第4図
(b)に示す。In0.53Ga0.47As層52aの準位が、光学遷
移エネルギE2(=hc/λ2)の準位対に量子化されてい
る。超格子層53の幅l2は次式 l2=(mλ2)/(2nSL) を満足し、超格子層52の誘電体多層膜56間のキャビティ
において光学遷移エネルギE2の波長λ2でレーザ発振す
るように形成されている。
可飽和吸収領域としての超格子層54のバンド構造を第
4図(c)に示す。In0.48Ga0.52As0.95Sb0.05層54cの
準位が、光学遷移エネルギE1(=hc/λ1)の準位対に
量子化され、In0.53Ga0.47As層54aの準位が、光学遷移
エネルギE2(=hc/λ2)の準位対に量子化されてい
る。超格子層54の幅l1は次式 l1=(mλ1)/(2nSL) を満足し、超格子層54の誘電体多層膜58間のキャビティ
において光学遷移エネルギE1の波長λ1でレーザ発振す
るように形成されている。
超格子層54の上方からは波長λ2(=1.3μm)の制
御光を照射する制御光用レーザ光源60が設けられてい
る。制御光用レーザ光源60からの制御光により可飽和吸
収領域である超格子層54の吸収率を制御し、利得領域で
ある超格子層52のレーザ発振を双安定制御する。
本実施例によれば、波長λ1でレーザ発振して光学遷
移エネルギE1の準位対の電子及び正孔を急速に消滅させ
るので、双安定制御する波長λ2のレーザ発振を高速で
停止させることができる。
本発明の第5の実施例による双安定レーザを第5図を
用いて説明する。第4図に示す双安定レーザと同一の構
成要素には同一の符号を付して説明を省略又は簡略にす
る。
本実施例では、超格子層52及び超格子層54は共に幅が
l1(=4.41μm)にパターニングされ、また、超格子層
52及び超格子層54を併せた全層厚をl2(=0.7392μm)
にしている。超格子層52及び超格子層54側面及び上面に
誘電体多層膜62が設けられ、InP基板50の中央底部がエ
ッチング除去されて、露出した超格子層52下面に誘電体
多層膜64が形成されている。
超格子層54の側面の誘電体多層膜62間のキャビティに
おいて光学遷移エネルギE1の波長λ1でレーザ発振する
ように形成されている。また、超格子層52及び54の上下
面の誘電体多層膜62、64間のキャビティにおいて光学遷
移エネルギE2の波長λ2でレーザ発振するように形成さ
れている。したがって、本実施例では、超格子層52の下
面及び超格子層54の上面からレーザ光が発光させる面発
光型である。
超格子層54の上面からレーザ光が発光するので、超格
子層54の斜め上方から波長λ2(=1.3μm)の制御光
を照射する制御光用レーザ光源60を設けている。制御光
用レーザ光源60からの制御光により可飽和吸収領域であ
る超格子層54の吸収率を制御し、利得領域である超格子
層52のレーザ発振を双安定制御する。
本実施例によれば、波長λ1でレーザ発振して光学遷
移エネルギE1の準位対の電子及び正孔を急速に消滅させ
るので、双安定制御する波長λ2のレーザ発振を高速で
停止させることができる。
本発明の第6の実施例による高速応答レーザを第6図
を用いて説明する。本実施例の高速応答レーザは量子細
線を発光線として用いたものである。
第6図(a)に示すように、n−InP基板70上にn−I
nP層72が形成され、n−InP層72上に量子細線を有する
量子細線層74が形成されている。量子細線層74上にはp
−InP層76が形成されている。p−InP層76上にはp+−In
GaAs層78を介してp側電極層80が形成され、n−InP基
板70下面にはn側電極層82が形成されている。
本実施例の高速応答レーザの平面における一方向の長
さl1は、光学遷移エネルギE1の波長λ1でレーザ発振す
るキャビティの長さ(l1=(mλ1)/(2nSL))とな
るように形成されている。また、他方向の長さl2は、光
学遷移エネルギE2の波長λ2でレーザ発振するキャビテ
ィの長さ(l2=(mλ2)/(2nSL))となるように形
成されている。
量子細線層74の断面の詳細な構造を第6図(b)に示
す。同図(b)の紙面の左右の方向が長さl1の方向であ
り、紙面に垂直な方向が長さl2の方向である。
In0.31Al0.69As0.82Sb0.18のバリア層74a中に、縦方
向に並んだ電子注入層74b、活性層74c、正孔注入層74d
が埋め込まれている。n−InP層72から厚さ9MLのバリア
層74aを介して、縦30ML横15MLの長方形断面のIn0.53Al
0.05Ga0.42Asの電子注入層74bが形成されている。この
電子注入層74bから厚さ9MLのバリア層74aを介して、縦3
0ML横15MLの長方形断面のIn0.48Ga0.52As0.95Sb0.05
活性層74cが形成されている。この活性層74cから厚さ9M
Lのバリア層74aを介して、縦30ML横15MLの長方形断面の
In0.49Al0.14Ga0.37As0.97Sb0.03の正孔注入層74dが形
成されている。正孔注入層74dはp−InP層76と9MLのバ
リア層74aを介して形成されている。但し、1ML(原子
層)は2.93Åである。
縦方向に並んだ電子注入層74b、活性層74c、正孔注入
層74dがバリア層74中に多数列形成され、電子注入層74
b、活性層74c、正孔注入層74dの列の間に使い捨て層74e
が挿入されている。活性層74cと活性層74cの間に9ML厚
のバリア層74aを介して、縦30ML横30MLの正方形断面のI
n0.42Ga0.58As0.90Sb0.10の使い捨て層74eが形成されて
いる。
第6図(b)に示す量子細線層74のA−A断面でのバ
ンド構造を同図(c)に示し、B−B断面でのバンド構
造を同図(d)に示す。
p側電極層80とn側電極層82から活性層74cに電流が
注入される。同図(c)のバンド図から明らかなよう
に、電子は、n−InP層72からトンネリングにより電子
注入層74bを経て活性層74cに注入され、正孔は、p−In
P層76からトンネリングにより正孔注入層74dを経て活性
層74cに注入される。電流が注入されると活性層74cに電
子及び正孔が注入され、活性層74cの長さl2(=(mλ
2)/(2nSL))に基づく波長λ2でレーザ発振する。
一方、同図(d)のバンド図から明らかなように、活
性層74cの準位が光学遷移エネルギE2(=hc/λ2)の準
位対に量子化され、使い捨て層74eの準位が光学遷移エ
ネルギE1(=hc/λ1)の準位対に量子化されている。
活性層74cのエネルギE2の準位対に生成された電子及び
正孔はトンネリングにより使い捨て層74eのエネルギE1
の準位対に遷移する。エネルギE1の準位対に電子及び正
孔が蓄積すると直ちに波長λ1のレーザ発振により高速
で消滅するので、エネルギE2の準位対の電子及び正孔は
常にエネルギE1の準位対に高速で遷移する。
したがって、注入電流が停止すればエネルギE2の電子
及び正孔はトンネリングにより直ちにエネルギE1の準位
対に遷移するので、トンネリング時間(1〜10psec)と
いう短時間でレーザ発振を停止させることができる。
このように本実施例によれば電流注入の開始又は停止
に対して高速で応答してレーザを発振又は停止させるこ
とができる。
本発明は上記実施例に限らず種々の変形が可能であ
る。
例えば、上記第6の実施例では量子細線を用いた半導
体装置に本発明を適用したが、量子箱を用いた半導体装
置に本発明を適用してもよい。
また、上記第1乃至第6の実施例で示された半導体材
料及び組成は例示であって、上述の材料及び組成に限定
されるものではない。
[発明の効果] 以上の通り、本発明によれば準位対にキャリアが蓄積
するのを防止して超高速動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の第1の実施例による半導体装置を示す
図、 第2図は本発明の第2の実施例による半導体装置を示す
図、 第3図は本発明の第3の実施例による半導体装置を示す
図、 第4図は本発明の第4の実施例による双安定レーザを示
す図、 第5図は本発明の第5の実施例による双安定レーザを示
す図、 第6図は本発明の第6の実施例による高速応答レーザを
示す図である。 図において、 10……GaAs基板 12……超格子層 12a……GaAs層 12b……Al0.51Ga0.49As層 14、16……誘電体多層膜 20……信号光用レーザ光源 22……制御光用レーザ光源 24……受光素子 30……InP基板 32……超格子層 32a……In0.53Ga0.47As層 32b……In0.31Al0.69As0.82Sb0.18層 32c……In0.48Ga0.52As0.95Sb0.05層 32d……In0.31Al0.69As0.82Sb0.18層 34、36……誘電体多層膜 40……信号光用レーザ光源 43……制御光用レーザ光源 44……受光素子 46……誘導光用レーザ光源 50……InP基板 52……超格子層(利得領域) 52a……In0.53Ga0.47As層 52b……In0.31Al0.69As0.82Sb0.18層 54……超格子層(可飽和吸収領域) 54a……In0.53Ga0.47As層 54b……In0.31Al0.69As0.82Sb0.18層 54c……In0.48Ga0.52As0.95Sb0.05層 54d……In0.31Al0.69As0.82Sb0.18層 56、58……誘電体多層膜 60……制御光用レーザ光源 62、64……誘電体多層膜 70……n−InP基板 72……n−InP層 74……量子細線層 74a……バリア層(In0.31Al0.69As0.82Sb0.18) 74b……電子注入層(In0.53Al0.05Ga0.42As) 74c……活性層(In0.48Ga0.52As0.95Sb0.05) 74d……正孔注入層(In0.49Al0.14Ga0.37As0.97S
b0.03) 74e……使い捨て層(In0.42Ga0.58As0.90Sb0.10) 76……p−InP層 78……p+−InGaAs層 80……p側電極層 82……n側電極層
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18 G02F 1/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1の光学遷移エネルギを有する第1の準
    位対と、 前記第1の光学遷移エネルギより小さい第2の光学遷移
    エネルギを有し、前記第1の準位対からキャリアが遷移
    される第2の準位対と、 前記第1の光学遷移エネルギに対応する波長の光を発生
    し、該光に共鳴するキャリアを前記第1の準位対に生成
    して、該光に対する吸収率を低下させるキャリア生成手
    段と、 前記第1の準位対から前記第2の準位対に遷移されたキ
    ャリアを誘導放射により消滅させるキャリア消滅手段と を有することを特徴とする半導体装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の半導体装置において、 前記キャリア消滅手段は、レーザ発振させることにより
    前記第2の準位対に遷移されたキャリアを消滅させるこ
    とを特徴とする半導体装置。
  3. 【請求項3】請求項1記載の半導体装置において、 前記キャリア消滅手段は、誘導光を導入することにより
    前記第2の準位対に遷移されたキャリアを消滅させるこ
    とを特徴とする半導体装置。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体
    装置において、 前記第1の準位対と前記第2の準位対がポテンシャル障
    壁により隔てられ、前記ポテンシャル領域をトンネリン
    グすることにより前記第1の準位対から前記第2の準位
    対にキャリアが遷移することを特徴とする半導体装置。
  5. 【請求項5】請求項4記載の半導体装置において、 前記第1の準位対は量子化された量子化準位であること
    を特徴とする半導体装置。
  6. 【請求項6】請求項5記載の半導体装置において、 前記量子化準位の量子化の次元が2次元であることを特
    徴とする半導体装置。
  7. 【請求項7】請求項4乃至6のいずれかに記載の半導体
    装置において、 前記ポテンシャル障壁の電子のトンネリング時間と正孔
    のトンネリング時間がほぼ等しいことを特徴とする半導
    体装置。
  8. 【請求項8】第1の光学遷移エネルギに対応する波長の
    光に共鳴してキャリアを生成して、該光に対応する吸収
    率を低下させる第1の準位対と、 前記第1の光学遷移エネルギより小さい第2の光学遷移
    エネルギを有し、前記第1の準位対からキャリアが遷移
    される第2の準位対とを有し、 前記第1の準位対にキャリアが生成した場合は、前記第
    1の準位対から前記第2の準位対にキャリアを遷移さ
    せ、前記第2の準位対に遷移されたキャリアを誘導放射
    により消滅させる ことを特徴とする半導体装置。
  9. 【請求項9】第1の光学遷移エネルギに対応する波長の
    光により第1の準位対に発生した、該光に対する吸収率
    を低下させる作用を有するキャリアを消滅させる方法で
    あって、 前記第1の準位対の第1の光学遷移エネルギより小さい
    第2の光学遷移エネルギを有する第2の準位対を設け、
    前記第1の準位対に発生したキャリアを前記第2の準位
    対に遷移させ、前記第2の準位対に遷移されたキャリア
    を誘導放射により消滅させることを特徴とする方法。
  10. 【請求項10】第1の光学遷移エネルギを有する第1の
    準位対と、 前記第1の光学遷移エネルギより小さい第2の光学遷移
    エネルギを有し、前記第1の準位対からキャリアが遷移
    される第2の準位対と、 前記第1の準位対にキャリアを生成し、前記第1の光学
    遷移エネルギに対応する波長の光を発生する光発生手段
    と、 前記第1の準位対から前記第2の準位対に遷移されたキ
    ャリアを誘導放射により消滅させるキャリア消滅手段と
    を有し、 前記第1の準位対のキャリアを前記第2の準位対に遷移
    することにより、前記第1の遷移エネルギに対応する波
    長の光の発振を停止する ことを特徴とする半導体装置。
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