JP2962147B2 - 透き入れ紙の製造方法 - Google Patents

透き入れ紙の製造方法

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JP2962147B2 JP14139194A JP14139194A JP2962147B2 JP 2962147 B2 JP2962147 B2 JP 2962147B2 JP 14139194 A JP14139194 A JP 14139194A JP 14139194 A JP14139194 A JP 14139194A JP 2962147 B2 JP2962147 B2 JP 2962147B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、透き入れ紙の製造方法
に関するものである。より詳しくは、模様や文字等の透
き入れが鮮明にでき、しかも紙としての品質が低下する
ことのない透き入れ紙を製造する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】紙に意匠性や偽造防止性能を付与する目
的で透き入れを施すことは従来から広く行われている。
こうした透き入れ紙の製造は、周知のように金属細線、
竹簀、合成樹脂等から作製された図柄や文字等の模様形
を網の目の表面に取り付けた抄紙網、あるいは網の目を
樹脂等で模様形に塗りつぶした抄紙網を、円網抄紙機の
円網シリンダーや長網抄紙機のダンディーロールの上網
としてとりつけて抄紙することによって行われてきた。
前者の抄紙網を用いる場合には、模様形が取り付けられ
た凸部分で繊維が押し退けられる結果、その部分の紙層
が薄くなることで透き入れ模様が発現する。また後者の
抄紙網を用いる場合には、模様形部分の網の目が塞がれ
ているため紙料の通過が抑制される結果、その部分の紙
層が薄くなって透き入れ模様が発現する。
【0003】透き入れ紙の品質は主に透き入れの「鮮明
さ」によって評価される。「鮮明さ」は、図柄や文字等
の透き入れを施した部分と施さない部分の紙層の厚みが
急激に変化していることで得られる。この厚みの変化が
なだらかであると図柄や文字が不鮮明となり透き入れの
品質は低下する。
【0004】本発明者らが検討した結果では、「鮮明
さ」に影響の大きいものは紙料に使用する木材パルプの
繊維長と繊維の太さであり、繊維長の短いもののほうが
長いものより、また繊維の細いもののほうが太いものよ
り鮮明な透き入れが得られることが判った。この理由と
しては、紙料中の木材パルプの繊維が短くあるいは細く
なると紙料の水保ちが向上し、特に抄紙機のワイヤーパ
ートにおける紙料の水保ちが良くなると、繊維が緻密に
模様形の上に堆積して模様をよく再現する結果、透き入
れ模様の「鮮明さ」が向上するためと考えられる。
【0005】透き入れ紙の製造においては、上記した透
き入れの鮮明さ以外に、紙としての品質、具体的には紙
の物理的強度、適度の剛直性、印刷適性等の性能も要求
され、これら種々の条件を考慮して紙料の調製を行って
いるのが実状であり、透き入れの鮮明さのみを考慮でき
ないという制約がある。
【0006】透き入れの鮮明さを向上する方法として
は、一般に原料に用いる木材パルプの叩解を進めてパル
プ繊維を短くあるいは細くする方法が考えられる。
【0007】また、一般の製紙用パルプに全幹ケナフパ
ルプのような特殊な原料を混合した紙料を用いて透き入
れ抄紙する方法も本出願人により提案されている(特願
平5−79126号)。
【0008】さらに、ポリエチレンオキサイド、ポリア
クリルアミド、トロロアオイ等を紙料に添加して紙料の
粘度を高めることにより、抄紙機のワイヤーパートでの
紙料の水保ちを良好にする方法も従来から使われてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、叩解を
進めてパルプ繊維を短くあるいは細くした木材パルプを
用いて透き入れ抄紙した場合には、得られた透き入れ紙
の風合いや寸法安定性等といった透き入れの鮮明さ以外
の紙の性質が低下する傾向がある。
【0010】また、全幹ケナフパルプを紙料に混合する
方法は、紙としての品質を損なうことなく、透き入れの
鮮明さが得られるという利点はあるものの、特殊な原料
を使用するため用途が限定される。
【0011】さらにポリエチレンオキサイドのような薬
品を紙料に添加する方法は、透き入れの鮮明さは改良で
きるが、紙の物理的強度や印刷適性の向上等の効果につ
いては殆どない。又、多量に使い過ぎるとポリエチレン
オキサイドについては多量の泡が発生し、紙の品質に悪
影響を及ぼす。さらに、これら薬品は機械的安定性が悪
く、例えば木材パルプとの同時叩解やスクリューポンプ
での流送等に際して物理的せん断力を受けると粘度低下
が著しく、添加効果は殆ど期待できないため、通常は抄
紙直前に紙料に添加しなければならないという制約があ
る。
【0012】そこで本発明は、透き入れ紙の物理的強
度、印刷適性、紙の風合い等といった紙としての品質を
低下させることなく、透き入れの鮮明さを効果的に向上
させることができる、新規かつ改良された透き入れ紙の
製造方法を提供することを課題としてなされたものであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために種々の製紙用原料を用いて透き入れ紙
を作り評価した。そして本発明者らは、保水力の高い微
細フィブリル化セルロースに着目し、かような微細フィ
ブリル化セルロースを種々の割合で植物繊維パルプと併
用し透き入れ紙を製造して検討を進めた結果、特定の微
細フィブリル化セルロースをある特定の割合で植物繊維
パルプに混合し、特定の濾水度とした紙料を用いて透き
入れ抄紙すると、紙としての品質を低下させることなく
鮮明な透き入れを施すことができることを見いだし、本
発明を完成したものである。
【0014】すなわち本発明による透き入れ紙の製造方
法は、数平均繊維長0.05〜0.3mmで保水値25
0%以上の微細フィブリル化セルロース1〜10重量%
と植物繊維パルプ90〜99重量%とからなりかつ濾水
度200〜400mlC.S.F.とした紙料を用いて
抄紙し透き入れを施すことを特徴とするものである。
【0015】本発明で使用する微細フィブリル化セルロ
ースは、パルプ繊維の細胞壁を形成しているフィブリル
の結束を強力な機械的せん断力等により破壊することに
よってミクロフィブリルの次元まで微細化したものであ
り、特に本発明においては、数平均繊維長が0.05〜
0.3mmで保水値が250%以上の微細フィブリル化
セルロースを使用することが必要である。
【0016】数平均繊維長は、KAJAANI社(フィ
ンランド)製造の繊維長測定機(FS−200型)で測
定したデータのうち、一定のパルプサスペンション中に
存在する繊維の全長を積算した後、その本数で割った値
を示す。通常の紙の原料である広葉樹晒クラフトパルプ
および針葉樹晒クラフトパルプの数平均繊維長はそれぞ
れ0.5mmおよび1mm程度の長さであり、叩解を進
めることでフィブリル化した繊維ですら数平均繊維長は
最小0.35mm程度の長さである。
【0017】本発明で使用する微細フィブリル化セルロ
ースの数平均繊維長を0.05〜0.3mmとする理由
は、0.05mm未満の場合には微細フィブリル化セル
ロース自体が小さすぎて、抄紙時に抄紙網から微細フィ
ブリル化セルロースが流失する割合が多くなってしま
う。一方、数平均繊維長が0.3mmを超える微細フィ
ブリル化セルロースを使用した場合には、得られた透き
入れ紙の透き入れの鮮明さにおいて所望の向上が達成で
きない。鮮明な透き入れができ、しかも紙としての他の
品質を低下させることのない透き入れ紙を得るために
は、特に数平均繊維長が0.1〜0.2mmの微細フィ
ブリル化セルロースを用いることが好ましい。
【0018】微細フィブリル化セルロースの保水値はパ
ルプの膨潤度の指標であり、膨潤繊維中に取り込まれて
保持された水分と繊維内および繊維間に存在する自由水
とを、適当な遠心力により区別しうるという考えに基づ
き測定される値である。本発明で規定している保水値も
同様の概念に基づき、JAPAN TAPPI No.
26に指示されている方法で測定した値である。すなわ
ち、規定のフィルターに一定量の試料のマットを予め形
成しておき、遠心分離機を用いて3000Gの遠心力で
15分間脱水した後、保持されていた水の量を絶乾パル
プ量で割ったときの値を示している。通常の未叩解のパ
ルプでは90%前後、叩解したパルプでも200%程度
の保水値しか示さない。本発明で微細フィブリル化セル
ロースを使用した理由はその保水力の高い点に着目した
ためであり、保水値が250%未満の微細フィブリル化
セルロースを使用した場合には、抄紙機のワイヤーパー
トでの水保ちを高めて透き入れの鮮明さを向上させる効
果が十分に得られない。
【0019】微細フィブリル化セルロースの製造法とし
ては従来から種々の方法が知られており、本発明におい
てはいかなる方法で製造された微細フィブリル化セルロ
ースであっても、所定の数平均繊維長および保水値を備
えているものであれば使用できる。例えばセルロース繊
維に機械的せん断力を与えることにより微細フィブリル
化セルロースを製造する方法としては、ビーター,コニ
カルリファイナー,シングルディスクリファイナー,ダ
ブルディスクリファイナー等の各種叩解機を用いる方
法、特公昭60−19921号で提案されているような
繊維状セルロースの懸濁液を小径オリフィスを通過させ
て、その懸濁液に少なくとも3000psiの圧力差で
高速度を与え、次ぎにこれを衝突させて急速に減速させ
ることにより切断作用を行わせる方法、特開昭63−2
56787号で提案されているようなヘベル付き駆動軸
でインペラーを回転させ繊維材料に衝撃を加える方法、
特開平4−82907号で提案されているようなハウジ
ング内に配置されたロータとハンマーによって乾式で微
細化を行う方法、特開平3−163135号で提案され
ているような媒体攪拌湿式粉砕装置による方法、特開平
6−10287号で提案されているような振動ミル粉砕
装置による方法、特開平4−194097号で提案され
ているようなサンドミル等の微粉砕機を使用する方法な
どが挙げられる。また、機械的処理だけでなく、酸加水
分解処理、アルカリ処理、液体アンモニア処理、酵素処
理、水蒸気処理などの化学的処理と機械的処理とを併用
した方法も提案されている。
【0020】微細フィブリル化セルロースの原料として
は、例えば広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP),針葉
樹晒クラフトパルプ(NBKP),広葉樹晒サルファイ
トパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ
(NBSP)等の化学パルプや、砕木パルプ(GP),
サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプとい
った木材パルプが使用でき、さらには、コットンパルプ
や麻,バガス,ケナフ,エスパルト,楮,雁皮,三椏等
の非木材繊維パルプ、再生セルロース繊維等も用いるこ
とができる。
【0021】微細フィブリル化セルロースと植物繊維パ
ルプとの混合割合は、微細フィブリル化セルロース1〜
10重量%と植物繊維パルプ90〜99重量%とする。
微細フィブリル化セルロースが1重量%より少ない混合
では所望の効果が期待できない。一方、微細フィブリル
化セルロースを多量に添加した場合には、紙料の濾水性
が悪くなり、抄紙機のワイヤーパートでの水切れが悪化
して紙切れ等の問題を起こし易くなる。微細フィブリル
化セルロースの添加量の上限は、原料として用いる植物
繊維パルプの種類やその濾水度によっても変動し、例え
ば濾水度の高いケナフ靭皮パルプを原料として用いる場
合でも、微細フィブリル化セルロースを10重量%より
多量に添加すると紙料の濾水度が200mlC.S.
F.より低下してしまい濾水性が悪くなる。また木材パ
ルプを原料とする場合には、微細フィブリル化セルロー
スを5重量%より多量に添加すると紙料の濾水性が悪く
なる傾向がある。
【0022】本発明の方法を実施するに際しては、先ず
微細フィブリル化セルロースと植物繊維パルプとを所定
の割合で混合した紙料を調成する。植物繊維パルプとし
ては従来から慣用されているものが同様に使用できる。
例えば、LBKP,NBKP,LBSP,NBSP等の
化学パルプや、GP,TMP等の機械パルプ等の木材繊
維からなるパルプだけでなく、ワラ、竹、エスパルト、
とうもろこし、バガス、葦、ケナフ等の草類繊維、マニ
ラ麻、サイザル麻、パイナップル葉等の葉の繊維、亜
麻、大麻、苧麻、黄麻、楮、三椏、雁皮等の靭皮繊維、
綿、リンター、カポック等の種毛繊維などからなるパル
プも使用でき、これらの単独あるいは2種類以上を混合
してもよい。また必要に応じてアクリル、ビニロンなど
の合成繊維、レーヨンなどの半合成繊維等を少量配合し
てもよい。
【0023】微細フィブリル化セルロースと植物繊維パ
ルプとを混合して調成した紙料を、次いでビーター、ジ
ョルダン、リファイナー等の周知の叩解機を使用して、
濾水度200〜400mlC.S.F.(カナダ標準形
濾水度)になるまで叩解を進める。紙料の濾水度は、透
き入れの鮮明さと深い関係がある。すなわち、濾水度が
400mlC.S.F.より高い場合には、叩解が浅す
ぎるので透き入れの鮮明さが悪くなる。一方、濾水度が
200mlC.S.F.より低いと叩解が進みすぎ、得
られる透き入れ紙の寸法安定性が悪くなり印刷適性に悪
影響を与えることになる。
【0024】上記したように、植物繊維パルプに微細フ
ィブリル化セルロースを混合した後に、植物繊維パルプ
を微細フィブリル化セルロースとともに叩解してもよい
が、予め濾水度450〜700mlC.S.F.程度に
叩解した植物繊維パルプに微細フィブリル化セルロース
を添加して濾水度200〜400mlC.S.F.にな
るようにしてもよい。微細フィブリル化セルロースを添
加することによって濾水度がどのように変化するかを試
験した一例を下表に示す。この例は、NBKP30重量
部とLBKP70重量部の混合物を予め濾水度520m
lC.S.F.および660mlC.S.F.に叩解し
たものに、微細フィブリル化セルロースを1重量%から
5重量%まで量を変えて添加した場合の濾水度の変化を
調べたものである。
【0025】 微細フィブリル化セルロース添加量(重量%) 520 460 410 380 290 660 590 520 460 390 単位:mlC.S.F.
【0026】上記の例では、濾水度520mlC.S.
F.の原料パルプの場合には微細フィブリル化セルロー
スを3重量%添加することにより、また濾水度660m
lC.S.F.の原料パルプの場合には微細フィブリル
化セルロースを5重量%添加することにより、濾水度を
400mlC.S.F.以下とすることができる。
【0027】なお紙料には必要に応じて湿潤紙力増強
剤、乾燥紙力増強剤、サイズ剤、填料、着色剤、定着剤
などの製紙用副資材を添加してもよい。
【0028】かくして得られた所定の濾水度を備えた紙
料を、長網抄紙機、円網抄紙機、短網抄紙機、傾斜ワイ
ヤー抄紙機などの従来周知の抄紙機を使用して、通常坪
量50〜200g/m2 となるように抄紙する。
【0029】抄紙機上の紙匹に透き入れを施すための抄
紙網としては、従来と同様に、金属細線、竹簀、合成樹
脂等から作製した図柄や文字等の模様形を網の目の表面
に取り付けた抄紙網や、網の目を樹脂などで模様形に塗
りつぶした抄紙網が使用でき、これを円網抄紙機の円網
シリンダーや長網抄紙機のダンディーロールの上網とし
てとりつけて透き入れを行う。また抄紙網自体に図柄を
型打ちして網に凹凸をつけたり、本出願人が特開平3−
185200号で提案したようにレースを上網としてと
りつける方法等を採用することもできる。
【0030】本発明の方法によって製造される透き入れ
紙は、微細フィブリル化セルロースを添加せずに植物繊
維パルプを主体とした同一濾水度を有する紙料から製造
した透き入れ紙に比較すると、透き入れの鮮明さは変わ
らないものの、紙の物理的強度、印刷適性、風合いとい
った紙としての性質が良好なものが得られる。あるい
は、従来の紙料の場合より濾水度の低い紙料に調成した
場合でも、微細フィブリル化セルロースを併用すること
によって、透き入れの鮮明さ以外の紙としての性質は同
程度のまま、透き入れの鮮明さが向上した透き入れ紙が
得られる。かかる効果は、微細フィブリル化セルロース
を植物繊維パルプに添加したことによって得られる効果
である。
【0031】かような効果が得られる理由については次
のように考えられる。すなわち、微細フィブリル化セル
ロースの添加により紙料の水保ちが飛躍的に向上するた
め、植物繊維パルプ自体の叩解程度が同じ場合には、微
細フィブリル化セルロースを添加したものは、添加しな
いものと比べて濾水度が低くなる。そのため、例えば叩
解があまり進んでいない状態の濾水度600mlC.
S.F.程度の植物繊維パルプでも、微細フィブリル化
セルロースを添加することにより混合物全体の濾水度を
300mlC.S.F.程度とすることができる。従っ
て微細フィブリル化セルロースを添加して300ml
C.S.F.とした紙料と、微細フィブリル化セルロー
スを添加せずに植物繊維パルプ自体を300mlC.
S.F.まで叩解した紙料とで透き入れ紙を製造すれ
ば、透き入れの鮮明さは両者同程度でも、前者の場合に
は叩解があまり進んでいない状態の植物繊維パルプを使
用できることになるため、紙の物理的強度、印刷適性、
風合いといった紙としての性質が向上するものと考えら
れる。
【0032】一方、植物繊維パルプ自体の叩解程度すな
わち濾水度が例えば300mlC.S.F.程度であれ
ば、これに微細フィブリル化セルロースを添加すること
により混合物全体の濾水度を200mlC.S.F.程
度まで低下させることができる。従って、微細フィブリ
ル化セルロースを添加して200mlC.S.F.とし
た紙料と、微細フィブリル化を添加せずに植物繊維パル
プ自体を300mlC.S.F.まで叩解した紙料とで
透き入れ紙を製造すれば、前者の場合には、紙としての
性質は同程度のまま、透き入れの鮮明さが向上した透き
入れ紙が得られるものと考えられる。
【0033】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。なお重
量部はいずれも絶乾重量部を示す。
【0034】実施例1 使用パルプとして微細フィブリル化セルロース(数平均
繊維長0.13mm、保水値440%)1重量部、NB
KP30重量部、LBKP69重量部を混合し、混合物
をリファイナーで濾水度300mlC.S.Fまで叩解
した後、ロジンサイズ剤(商品名「SPN700」、荒
川林産化学(株)製造)を1.3重量部、澱粉(商品名
「アミコール」、日澱化学(株)製造)を0.5重量
部、定着剤(硫酸バンド)を5.5重量部加えて紙料を
調成し、長網抄紙機を使用して坪量110g/m2 (絶
乾重量換算)で抄紙した。
【0035】エポキシ樹脂製の文字型(円の中に銀行マ
ークを描いたもの:マークの幅1.5mm、円の直径3
0mm)を取り付けた抄紙網をダンディロールの上網と
して使用し、抄紙網上の紙匹に押し当てて透き入れを施
した。次いでサイズプレス装置で表面強度向上の目的で
ポリビニルアルコールを塗工し、後は常法に従い乾燥さ
せ透き入れ紙を製造した。
【0036】実施例2 濾水度200mlC.S.F.まで叩解した以外は、実
施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0037】実施例3 濾水度400mlC.S.F.まで叩解した以外は、実
施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0038】実施例4 使用パルプを微細フィブリル化セルロース5重量部、L
BKP65重量部とした以外は、実施例1と同様にして
透き入れ紙を製造した。
【0039】実施例5 NBKP30重量部とLBKP69重量部の混合物をリ
ファイナーで濾水度460mlC.S.F.まで叩解し
た後、ロジンサイズ剤「SPN700」を1.3重量
部、澱粉「アミコール」を0.5重量部、定着剤(硫酸
バンド)を5.5重量部加えて混合し、さらに微細フィ
ブリル化セルロース(数平均繊維長0.13mm、保水
値440%)を1重量部加えて混合して濾水度400m
lC.S.F.の紙料を調成した。この紙料を用いて実
施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0040】実施例6 ケナフ靭皮パルプ90重量部をリファイナーで濾水度6
00mlC.S.F.まで叩解した後、ロジンサイズ剤
「SPN700」を1.3重量部、澱粉「アミコール」
を0.5重量部、定着剤(硫酸バンド)を5.5重量部
加えて混合し、さらに微細フィブリル化セルロース(数
平均繊維長0.13mm、保水値440%)10重量部
を加えて混合して濾水度250mlC.S.F.の紙料
を調成した。この紙料を用いて実施例1と同様にして透
き入れ紙を製造した。
【0041】比較例1 使用パルプとして、微細フィブリル化セルロースを使用
せずに、NBKP30重量部およびLBKP70重量部
とした以外は、実施例1と同様にして透き入れ紙を製造
した。
【0042】比較例2 使用パルプとして、微細フィブリル化セルロースを使用
せずに、NBKP30重量部およびLBKP70重量部
とし、濾水度150mlC.S.F.まで叩解した以外
は、実施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0043】比較例3 濾水度450mlC.S.F.まで叩解した以外は、実
施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0044】比較例4 濾水度150mlC.S.F.まで叩解した以外は、実
施例1と同様にして透き入れ紙を製造した。
【0045】比較例5 使用パルプを微細フィブリル化セルロース0.8重量
部、NBKP30重量部、LBKP69.2重量部とし
た以外は、実施例1と同様にして透き入れ紙を製造し
た。
【0046】比較例6 ケナフ靭皮パルプ88重量部をリファイナーで濾水度6
00mlC.S.F.まで叩解した後、ロジンサイズ剤
「SPN700」を1.3重量部、澱粉「アミコール」
を0.5重量部、定着剤(硫酸バンド)を5.5重量部
加えて混合し、さらに微細フィブリル化セルロース(数
平均繊維長0.13mm、保水値440%)12重量部
を加えて混合して濾水度190mlC.S.F.の紙料
を調成した。この紙料を用いて実施例1と同様にして透
き入れ紙を製造した。
【0047】上記の実施例および比較例で製造した透き
入れ紙の諸性質の評価を行った結果を表1および表2に
示す。表1は、原料パルプとして木材パルプを用いた実
施例1〜5と比較例1〜5の評価結果であり、表2は、
原料パルプとしてケナフ靭皮パルプを用いた実施例6と
比較例6の評価結果である。なお評価は次の方法により
行った。
【0048】坪量:JIS P−8124に規定する方
法により測定した。 密度:JIS P−8118に規定する方法により測定
した。 透き入れの鮮明さ:目で観察して5点法で評価した。5
点が最も優れていることを示し、実用的には3点以上が
必要である。 物理的強度:下記の3種類の強度を測定し、5点法で評
価した。 引張り強さ:JIS P−8113に規定する方法によ
り測定した。 耐折強さ :JIS P−8115に規定する方法によ
り測定した。 引裂強さ :JIS P−8116に規定する方法によ
り測定した。 印刷適性:用紙を平判にカットし、オフセット印刷機を
用いて評価した。自動給紙適性、用紙の伸縮、紙ムケ
(表面強度が弱いと起こる)を総合して5点法で判断し
た。 紙の風合い:手による官能試験により5点法で評価し
た。
【0049】
【0050】表1から明らかなように、本発明の実施例
1〜5は比較例と比較して、いずれも物理的強度、印刷
適性、透き入れの鮮明さ共にバランスのとれた透き入れ
紙が製造できる。特に、微細フィブリル化セルロースと
NBKPとLBKPを重量部比で1:30:69の割合
で混合し、濾水度300mlC.S.F.とした紙料を
用いて抄紙し透き入れを施した場合(実施例1)には、
バランスが優れた良い結果が得られている。
【0051】これに対して比較例1では、紙料の濾水度
を実施例1と同じく300mlC.S.F.としても、
微細フィブリル化セルロースを添加していないため、透
き入れの鮮明さが劣り、紙としての品質も劣っている。
【0052】比較例2では、紙料の叩解程度を高めた結
果、透き入れの鮮明さは向上しているが、微細フィブリ
ル化セルロースを添加していないため紙としての品質が
低下している。
【0053】比較例3と4は、いずれも微細フィブリル
化セルロースを添加しているが、濾水度を400ml
C.S.F.より高い450mlC.S.F.にした場
合と、200mlC.S.F.より低い150mlC.
S.F.にした場合である。叩解程度を低くした比較例
3では透き入れの鮮明さが悪化し、叩解程度を高くしす
ぎた比較例4では透き入れの鮮明さは良くなるが、紙と
しての品質が低下してしまう。
【0054】比較例5は、微細フィブリル化セルロース
の添加量を0.8重量%と低くした場合であり、透き入
れの鮮明さや紙としての品質向上の効果は十分でない。
【0055】また表2に示したように、原料パルプとし
て濾水性の高いケナフ靭皮パルプを用いた実施例6の場
合は、微細フィブリル化セルロースを10重量%添加す
ると混合物の濾水度は250mlC.S.F.となり、
透き入れ紙の紙としての品質向上効果が認められるのに
対して、微細フィブリル化セルロースを12重量%と多
量に添加すると混合物の濾水度は190mlC.S.
F.に低下してしまい、得られた透き入れ紙の寸法安定
性が悪くなって印刷適性が劣るとともに、風合いも悪化
する。
【0056】
【発明の効果】従来の透き入れ紙の製造に際しては、紙
に要求される物理的な強度、印刷適性、風合い等を考慮
すると、透き入れの鮮明さを高めるには自ずから制限が
あったのに対して、本発明によれば、所定の数平均繊維
長と保水値を有する微細フィブリル化セルロースの所定
量を植物繊維パルプと併用することによって、紙として
要求される物理的強度、印刷適性、風合い等を保ちなが
ら透き入れの鮮明さにも優れた透き入れ紙を製造するこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪野 光男 静岡県駿東郡長泉町本宿501番地 特種 製紙株式会社内 (72)発明者 福井 里司 静岡県駿東郡長泉町本宿501番地 特種 製紙株式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D21H 17/02,15/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 数平均繊維長0.05〜0.3mmで保
    水値250%以上の微細フィブリル化セルロース1〜1
    0重量%と植物繊維パルプ90〜99重量%とからなり
    かつ濾水度200〜400mlC.S.F.とした紙料
    を用いて抄紙し透き入れを施すことを特徴とする透き入
    れ紙の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記紙料は、微細フィブリル化セルロー
    スと植物繊維パルプとの混合物を濾水度200〜400
    mlC.S.F.に叩解したものであることを特徴とす
    る請求項1記載の透き入れ紙の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記紙料は、予め叩解した植物繊維パル
    プに微細フィブリル化セルロースを混合することにより
    混合物の濾水度を200〜400mlC.S.F.にし
    たものであることを特徴とする請求項1記載の透き入れ
    紙の製造方法。
  4. 【請求項4】 濾水度450〜700mlC.S.F.
    の植物繊維パルプに微細フィブリル化セルロースを混合
    することを特徴とする請求項3記載の透き入れ紙の製造
    方法。
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