JP2961870B2 - イソチアゾロン水性製剤 - Google Patents

イソチアゾロン水性製剤

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陽一 佐藤
勝次 辻
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【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 この発明は、安定化されたイソチアゾロン水性製剤に
関する。さらに詳しくは、非医療用殺菌剤として有用な
イソチアゾリン−3−オン化合物を含有してなり、こと
に種々の合成高分子エマルジョンの防腐・防カビ処理用
に有用な水性製剤に関する。
(ロ)従来の技術 5−クロロ−2−メチル−イソチアゾリン−3−オン
や2−メチル−イソチアゾリン−3−オンのごときイソ
チアゾロン化合物は、従来から非医療用殺菌剤、防腐剤
・防カビ剤として知られており、ことにNBRラテック
ス、SBRラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等の合
成高分子エマルジョンの防腐・防カビ剤として有用であ
る。
このイソチアゾロン化合物は、水に易溶解性であるた
め、対象系中への分散や製品の引火性、経済性も考慮し
て水溶液製剤として使用することが望まれる。特に引火
性の点について、グリコール系溶媒のみで製剤された製
品は、引火性を持つ。
引火性のある製品は、消防法、市町村火災防止条例に
より、その貯蔵、運搬について規制を受けなければなら
ない。
この事より、引火性のある製品については、充分な注
意を払い火災事故を未然に防止しなければならない。
従って、引火性のある製品は取り扱いが難しく、殺菌
剤についても引火性のないものが望まれている。しか
し、イソチアゾロン化合物は水中では短時間で加水分解
するため単なる水溶液では製剤として極めて不安定で到
底実使用に耐えない。
そこで従来から、イソチアゾロン化合物をカルシウム
塩やマグネシウム塩等の金属塩とのコンプレックスとし
て水や水性溶媒に溶解して安定性を付与させた水性製剤
や、多量の有機溶剤にイソチアゾロン化合物を溶解して
含水量を著しく低減させた有機溶媒製剤(特開昭61−56
174号、同61−212576号公報)が提案されている。
(ハ)発明が解決しようとする課題 しかしながら、上記従来の水性製剤を防腐・防カビ剤
としてそのまま合成高分子エマルジョンに有効量添加し
た場合には、製剤中に含まれるカルシウムやマグネシウ
ム等の多価金属イオンの作用により、エマルジョン相が
破壊されて分相や凝固が生じる問題(いわゆるエマルジ
ョンのショック)があった。
従って、かかる水性製剤を用いる場合には、充分に希
釈して添加する必要があるが、それにより、添加対象と
なる合成高分子エマルジョンのラテックス濃度の変動等
の品質低下を招く不都合が生じる。また希釈して使用し
ても凝固が生じる場合もあった。またこの水性製剤を希
釈することなく合成高分子エマルジョンへ使用する提案
もあるが、この際には、特定のアニオン界面活性剤を併
用添加する必要があった(特開昭60−65042号、同60−9
6652号公報)。
一方、前記した有機溶剤製剤を合成高分子エマルジョ
ンに添加した場合には、系に部分的に有機溶剤が高濃度
に持ち込まれてやはりショックが生じる場合があった。
この発明は、かかる状況下なされたものであり、こと
に、製剤安定性が優れていると共に、引火性の問題もな
く経済的にも安価であり、また合成高分子エマルジョン
へ直接添加してもショックを生じないイソチアゾロン化
合物製剤を提供しようとするものである。
(ニ)課題を解決するための手段 上記観点から、本発明者らは鋭意研究、検討を行った
結果、本来不安定なイソチアゾロン化合物の含水有機溶
媒溶液に対し、特定のビストリハロメチルスルホン系化
合物を特定量添加して調製することにより、金属塩を用
いることなくその安定性が著しく向上する事実及びこの
水性製剤を高分子エマルジョンへ防腐、防カビ有効量添
加してもいわゆるショック等の悪影響が生じない事実を
見い出した。
かくしてこの発明によれば、(a)一般式(I): (式中、Xは水素原子または塩素原子、Yはメチル基) で表されるイソチアゾロン化合物と、(b)上記一般式
(I)の化合物を少なくとも溶解しうるに足りる量の、
水と親水性有機溶媒との混合溶媒と、(c)安定化成分
として配合されるビストリブロモメチルスルホンとから
なり、上記成分の(a)イソチアゾロン化合物を1〜20
重量%及び成分(c)のビストリブロモメチルスルホン
を0.05〜5重量%含有し、かつ水含有量が10〜90重量%
に調整されてなるイソチアゾロン水性製剤が提供され
る。
この発明の水性製剤は、従来安定化に用いられていた
カルシウムやマグネシウム塩を実質的に含有することな
く、優れた製剤安定性が付与された水溶液製剤である。
そして、ことに、ビストリハロメチルスルホン系化合物
が安定化剤として作用するという意外な事実に基づいて
なされたものである。
ここで、上記ビストリハロメチルスルホンの一部は相
乗的スライム防除効果を目的としてイソチアゾロン化合
物との併用に用いられることは知られている(特公昭61
−25004号公報参照)。しかし、この公報では具体的に
はこれらを併用した非水性製剤を開示しているにすぎ
ず、この発明のごとき含水製剤を示唆するものではな
い。とくにごく少量の上記スルホン系化合物を含有させ
ることによりイソチアゾロン化合物の水性製剤の安定化
が達成できる事実や示唆については何ら示されていな
い。
この発明で用いる式(I)のイソチチアゾロン化合物
は、5−クロロ−2−メチル−イソチアゾリン−3−オ
ン及び2−メチル−イソチアゾリン−3−オンである。
これらのイソチアゾロン化合物は例えば特公昭46−12
723号公報に記載されている合成法に従って製造でき、
通常上記化合物の混合物として得られる。これらの混合
物もこの発明に好適に用いられる。
この発明で用いる安定化成分であるビストリハロメチ
ルスルホンとしては、下式(II)で示されるビストリブ
ロモメチルスルホン(BTBMS)が適している。
この発明の水性製剤は、式(I)の化合物の水溶液を
調製し、この溶液中に所定量の前記安定化成分及び前記
安定化成分を溶解するに足る量の親水性有機溶媒を添加
して作製することが出来る。しかし、特に順序に関係な
く作製することも出来る。
ここで溶媒として用いる水としては、通常の水、例え
ば、水道水、軟水、純水等が挙げられ、工業用水等も使
用可能である。親水性有機溶媒としては、例えば、エチ
レングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレン
グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリ
コール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレング
リコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオー
ル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレン
グリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモ
ノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエ
ーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ト
リプロピレングリコールモノメチルエーテル等の公知の
種々のポリオール又はポリオールエーテル系液状化合
物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルム
アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2
−ピロリドン等を用いることができる。ただし、合成高
分子エマルジョンのショックを防止する点で、有機溶媒
の含有量は、混合溶媒中、50重量%未満が好ましい。
また、式(I)の有機溶媒溶液に所定量の前記安定化
成分を添加した製剤を調製し、使用時に水で希釈するこ
とも可能である。この場合には輸送上の経済的メリット
も得られる。
なお、上記混合溶媒製剤に用いられる有機溶媒には、
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−
ピロリドン等のアミド系化合物単独又はこれらのアミド
系化合物と前記グリコール系溶媒との混合溶媒を用いる
のが製剤の貯蔵安定性の点で好ましい。
この発明の水性製剤中の式(I)の化合物の配合量
は、1〜20重量%とされ、貯蔵安定性の点で1〜10重量
%とするのが好ましい。
この発明における安定化成分としてのビストリブロモ
メチルスルホンの配合量は、製剤中、0.05〜5重量%と
される。0.05重量%未満では貯蔵安定性が不充分であ
り、5重量%を越えると低温時にブロモメチルスルホン
の結晶が析出するおそれがあり、適さない。とくに0.2
〜4重量%とするのが好ましい。
一方、この発明の水性製剤における水含有量は10〜90
重量%とされ、30〜70重量%とするのが好ましい。90重
量%を越えると、貯蔵安定性の点で適さず、10重量%未
満では合成高分子エマルジョンに添加時にエマルジョン
のショック等を生じる虞れがあるため、この発明の目的
からして適さない。
この発明の水性製剤は多価金属を用いることなく、し
かも有機溶媒を著しく低減した量で使用したものである
ため、合成高分子エマルジョン添加時のショックが防止
又は抑制されることになる。しかも引火性等取扱い上の
不便もなく、経済的にも安価であり、水性製剤として優
れた安定性を発揮するものである。
(ホ)実施例 イソチアゾロン化合物として、5−クロロ−2−メチ
ル−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−イソチア
ゾリン−3−オンとの混合物(重量比9:1)、以下MITと
略す)を用い、これを第1表に記載の各種溶媒に溶解
し、さらに安定成分[ビストリブロモメチルスルホン
(BTBMS)]を添加し混合撹拌を行って実施例B1〜B23、
比較例A1〜A21の製剤品を得た。(なお表中の数字はす
べて重量部を示す。また実施例B13〜14及び比較例A13〜
14は欠番である。
これらの各種製剤品について下記の試験を行った。
[貯蔵安定性試験] 試験方法……各製剤品をガラス容器に入れ40℃の条件
下に放置した。経日的に状態を観察し、外観変化がなく
HPLC(高速液体クロマトグラフィ)で測定した結果、分
解が認められないものを○、外観懸濁でHPLC測定による
MITの分解率が10%未満のものを△、外観上結晶が多量
に析出白濁し分解率が10%以上のものを×とした。
ただし、本試験における40℃安定性2ケ月は、室温に
於いては、6ケ月以上に相当することが長年の試験結果
から推定されている。
[高分子エマルジョンに対するショックテスト] 高分子エマルジョン(2種のSBRラテックス及びアク
リル樹脂エマルジョン)を各々100ml、200ml容量のビー
カーにとり製剤品を3ml添加した。マグネチックスター
ラで3分間撹拌後100メッシュの金網で濾過した。金網
上に凝集物が残らないものを○、凝集物が残るものを×
とした。
この結果から、この発明の水性製剤は、安定性に優
れ、かつ高分子エマルジョンに対して悪影響を及ぼさな
い優れたものであることが判る。
なお、前記表中の略号は以下の化合物を意味するもの
である。
(ヘ)発明の効果 この発明のイソチアゾロン水性製剤は、安定性ことに
貯蔵安定性に優れたものである。そして、高分子エマル
ジョンに直接添加した際においても悪影響が生じない。
従って、取扱い上便利であるのみならずイソチアゾロン
化合物の用途、使用態様等の拡大をも可能とするのであ
る。
フロントページの続き (72)発明者 辻 勝次 大阪府大阪市東淀川区東淡路2丁目10番 15号 株式会社片山化学工業研究所内 (72)発明者 片山 栄 大阪府大阪市東淀川区東淡路2丁目10番 15号 株式会社片山化学工業研究所内 (56)参考文献 特開 昭62−70301(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)一般式(I): (式中、Xは水素原子または塩素原子、Yはメチル基) で表されるイソチアゾロン化合物と、 (b)上記一般式(I)の化合物を少なくとも溶解しう
    るに足りる量の、水と親水性有機溶媒との混合溶媒と、 (c)安定化成分として配合されるビストリブロモメチ
    ルスルホンとからなり、 上記成分の(a)イソチアゾロン化合物を1〜20重量%
    及び成分(c)のビストリブロモメチルスルホンを0.05
    〜5重量%含有し、かつ水含有量が10〜90重量%に調整
    されてなるイソチアゾロン水性製剤。
  2. 【請求項2】合成高分子エマルジョンの防腐・防カビに
    用いられる請求項1の水性製剤。
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