JP2960356B2 - 真空蒸着用蒸発監視方法と蒸発監視装置 - Google Patents

真空蒸着用蒸発監視方法と蒸発監視装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真空蒸着装置など
の真空チェンバー内において、加熱によって溶融蒸発ま
たは昇華させて形成される蒸着蒸発材料の原子または分
子線の蒸発状態を監視する蒸発監視方法とそれを実施す
るための蒸発監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】真空蒸着では、真空チェンバー内部に配
置された蒸発材料を加熱によって溶融蒸発または昇華さ
せて原子または分子線を発生し、これとは別に真空チェ
ンバー内部に配置された半導体ウエハなどの基板上に凝
着させることにより薄膜を形成する。従来において、こ
のような薄膜形成に必要な蒸発材料の蒸発手段として
は、抵抗加熱法と電子衝撃加熱法が知られている。抵抗
加熱法は、電気抵抗体で発生した熱を輻射または熱伝導
により蒸発源に加えて加熱する形式のものであり、加熱
源の方が薄膜材料よりも高温になる。このため、加熱蒸
発される薄膜材料へ不純物が混入し、加熱源が薄膜材料
と反応することもあり、また加熱源の材料における融点
などによる制約もあった。
【0003】一方、電子衝撃加熱法は、熱陰極フィラメ
ントで発生させた熱電子を加速して蒸発材料に衝突させ
て加熱する方法である。このような電子衝撃加熱法によ
る蒸発源としては、蒸発材料をるつぼに収納し、熱陰極
フィラメントで発生させた熱電子を前記蒸発材料に電磁
誘導すると共に加速電圧をかけて加速し、衝突させる形
式のものが最も一般的である。また他の蒸発源として、
棒状の蒸発材料の先端部に熱陰極フィラメントから発生
した熱電子を衝突させ、この棒状の蒸発材料の先端部分
を電子衝撃によって溶解して蒸発させるものもある。
【0004】このような真空蒸着において、良質な薄膜
を成長させるための重要なファクターとして、蒸発材料
の蒸発状態が挙げられ、その蒸発速度や蒸発方向を安定
化させるためには、衝撃電圧、衝撃電子電流などの電気
条件を高精度で制御する必要がある。特に、棒状又は板
状の蒸発材料の先端周辺に熱陰極フィラメントを配置
し、電子衝撃加熱によりその先端部分を加熱溶融し、そ
の下方に配置した基板上に堆積・蒸着して薄膜を形成す
る蒸着方式では、蒸発材料の蒸発に伴って短くなる棒状
または板状の蒸発材料を先端側に送り出し、その先端部
分と熱陰極フィラメントとの間の距離を一定に保つこと
が必要である。
【0005】また、蒸発材料の蒸発速度及び蒸発方向
は、棒状の蒸発材料の径や板状の蒸発部材の厚さ等によ
っても変化するため、安定な蒸発状態を保つためには、
先端の溶融部分を像として直視し、前記電気条件の不足
を補正することが望ましい。加えて、複数の元素または
合金を溶融混合して蒸発させる場合、各元素がどのよう
な割合で蒸発しているかをモニターすることが重要であ
り、最も一般的な手法は、その蒸発源の近傍に質量分析
計を配置し、その分子線のマススペクトル強度を調べる
ことである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、棒状又は板状
の蒸発材料の先端を溶融蒸発させる前記の方法では、そ
の溶融部分の温度分布を、熱電対などの温度計を用いて
直接計測することは不可能である。また、従来、真空装
置の一部に、蒸発部分に近接して、ガラス製の監視窓を
配置し、この監視窓を通して蒸発部分を観察することも
可能である。しかし、この監視窓を蒸発材料の蒸発部分
に直接向けると、監視窓の内面に蒸発した物質が付着し
てしまい、内部の観察ができなくなってしまう。そのた
め、例えばこの窓ガラスの内側直前にシャッターを配置
し、観察時だけこれを開ける手段が講じられている。し
かし、このような手段を講じても、完全にその汚れを防
止することは不可能であった。
【0007】さらに、このような蒸着装置内では、蒸発
した蒸着物質が装置の内部に配置された質量分析計に付
着すると、この質量分析計の性能が著しく低下する。こ
のため、質量分析計をシャッターなどで被い、測定時だ
けこれをオープンする手法が採らている。しかし、これ
らの機構を含んだ質量分析計が基板の近傍に配置される
ため、基板周辺が複雑になり、その取り付けにも制約が
大きかった。
【0008】そこで、本発明では、前記の従来技術にお
ける問題点に鑑み、真空チェンバーの観察窓を蒸発材料
の蒸発部分に直接向けずに、蒸発材料の蒸発部分を反射
像として観察可能な真空蒸着用蒸発監視方法と蒸発監視
装置を提供することをその目的とする。さらに、複数の
元素または合金を溶融混合して蒸発させる場合、その分
子線のマススペクトル強度を調べるために真空チェンバ
ー内に質量分析計を配置する構造においても好適な蒸発
監視方法と蒸発監視装置を提供することをその目的とす
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明では、前記の目的
を達成するため、前記蒸発材料21の溶融部22の近傍
に配置され、この溶融部22を反射して、その反射像を
前記監視窓40に投影する反射鏡30とを備え、蒸発材
料21の溶融部22の溶融蒸発状態を、前記反射鏡30
と監視窓40とを介して、反射像として監視することと
した。さらに、前記真空チェンバー1内に、質量分析計
50を配置すると共に、前記反射鏡30を移動自在と
し、同反射鏡30をその移動により前記質量分析計50
と蒸発材料21との間を遮蔽・開放するシャッターとし
て使用するものである。
【0010】すなわち、本発明のよる真空蒸着用蒸発監
視方法は、真空チェンバー1の内部に配置した基板10
0の表面上に、蒸発材料21の加熱によって溶融蒸発ま
たは昇華させて形成した原子または分子線を凝着させる
真空蒸着において、前記蒸発材料21の溶融部22の溶
融蒸発状態を、前記蒸発材料21の溶融部22を反射す
る反射鏡30と、前記真空チェンバー1の壁部に設けた
監視窓40とを介して、反射像として監視する。さら
に、前記真空チェンバー1内に質量分析計50を配置す
ると共に、前記反射鏡30を移動自在に配置するするこ
とにより、同反射鏡30をその移動により前記質量分析
計50と蒸発材料21との間を遮蔽・開放するシャッタ
ーとして使用する。
【0011】また、本発明のよる真空蒸着用蒸発監視装
置は、真空チェンバー1の内部に配置した基板100の
表面上に、蒸発材料21の加熱によって溶融蒸発または
昇華させて形成した原子または分子線を凝着させる真空
蒸着において、前記真空チェンバー1の壁部に設けた監
視窓40と、前記蒸発材料21の溶融部22を反射し
て、その反射像を前記監視窓40に投影する反射鏡30
とを有する。さらに、前記真空チェンバー1内に質量分
析計50を配置すると共に、前記反射鏡30を移動自在
に配置するすることにより、同反射鏡30をその移動に
より前記質量分析計50と蒸発材料21との間を遮蔽・
開放するシャッターとして使用する。
【0012】これらの蒸発監視方法と装置では、真空チ
ェンバー1の監視窓40を、直接蒸発材料21の溶融部
22に向けなくとも、蒸発材料21の溶融部22が反射
鏡30による反射像として監視窓40に投影されるの
で、監視窓40において蒸発材料21の溶融部22の溶
融蒸発状態が監視できる。さらに、前記真空チェンバー
1内に質量分析計50を配置すると共に、前記反射鏡3
0を移動自在に配置しているので、同反射鏡30をその
移動により前記質量分析計50と蒸発材料21との間を
遮蔽・開放するシャッターとして使用することができ
る。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照しながら、本発
明の実施の形態について、具体的且つ詳細に説明する。
図2に真空チェンバー内部に配置されたを加熱によって
溶融蒸発または昇華させて原子または分子線を発生し、
真空チェンバー内部に配置された半導体ウエハなどの基
板100上に凝着させて薄膜を形成する、いわゆる成膜
装置の一部が示されている。この成膜装置では、真空チ
ェンバー1の内部に、原子または分子線を発生する蒸発
部2と、その下方に配置されたヒーターを内蔵した基板
ホルダー3とを備え、この上に基板100が保持されて
いる。
【0014】図1に、本発明の一の実施の形態である真
空内の蒸発監視方法を実施する装置の構成が示されてい
る。前記真空チェンバー1の内部の蒸発源2では、棒状
の蒸発材料21が順次矢印で示すように、上方から下方
へ送り出されており、この棒状の蒸発材料21の下先端
を囲むように電子衝撃加熱の電子源である熱陰極フィラ
メント23が配置されている。加熱電流の供給によりこ
の熱陰極フィラメント23から発生した熱電子e、e…
は、熱陰極フィラメント23と蒸発材料21との間に印
加された加速電圧により加速され、棒状の蒸発材料21
の先端部に衝突する。この衝撃エネルギーにより蒸発材
料の先端部が加熱溶融されて、点状の溶融部分22を形
成する。そして、この加熱溶融した点状の溶融部分22
から、基板100の表面上に堆積・蒸着される材料の原
子あるは分子線24、24…が発射される。
【0015】真空チェンバー1の内部の前記蒸発源2の
近傍に反射鏡30が配置されている。なお、この実施の
形態では、この反射鏡30は円形の反射面を有してい
る。また、この反射鏡30には、その反射面の裏面側に
同反射面とほぼ45°の角度でアーム31が取り付けら
れており、これにより図中の矢印方向に移動可能になっ
ている。なお、このアーム31は、前記真空チェンバー
1の内壁面に取り付けられ、図示しないトランスファー
機構により移動可能となっている。
【0016】前記真空チェンバー1の壁面の一部に前記
反射鏡30によって反射される蒸発源2、特に蒸発材料
21の溶融部分22の像が投影される位置に、フランジ
にガラスなどの透光性の高い材質の円板状の窓部材を嵌
め込ん監視窓40が設けられている。真空チェンバー1
内の蒸着材料21の溶融部分22の像が、反射鏡30に
よって反射され、監視窓40を通して真空チェンバー1
の外部から直接観察することが可能になる。この監視窓
40の位置に、例えば、溶融点からの輻射光を用いてそ
の温度を測定することができる光温度計(図示せず)を
配置して溶融部分22の温度を正確に測定することがで
きる。また、この監視窓40からの目視による観察によ
り、蒸発材料21の溶融部分22の温度と共にその熱陰
極フィラメント23との間の距離などをモニターするこ
とにより、蒸発材料の蒸発速度及び蒸発方向を一定に保
ち、安定な蒸発状態を保つことが可能になる。
【0017】真空チェンバー1内に配置される前記反射
鏡30には、蒸発物質が常にフレッシュな状態で蒸着す
るため、その表面である鏡面としての機能は失われるこ
とない。従って、常に鮮明な反射像を監視窓40を通し
て観察することが可能である。一方、前記の反射鏡30
の働きにより、反射像を観察するために真空チェンバー
1の壁面の一部に設けられる監視窓40は、蒸発材料2
1の溶融部分22に直接向けて配置する必要はない。む
しろ、監視窓40を、蒸発材料21の溶融部分22から
発射される蒸発物質の影響の少ない位置に配置すること
により、その内表面を蒸発物質により汚染されることな
く、内部の観察に好適な状態に保たれる。
【0018】図1に示すように、前記真空チェンバー1
内には、蒸発させる元素の割合をモニターするため、分
子線のマススペクトル強度を調べる質量分析計50を配
置されている。この質量分析計50は、前記蒸発材料2
1の溶融部分22の近傍であって、蒸発材料21に対し
て反射鏡30の反対側に位置している。従って、反射鏡
30の移動により、反射鏡30が蒸発材料21の溶融部
分22と質量分析計50との間にあるとき、その間が反
射鏡30により遮蔽される。一方、反射鏡30が移動
し、蒸発材料21の溶融部分22と質量分析計50との
間から待避すると、蒸発材料21の溶融部分22と質量
分析計50とが直接向かい合う。このようにして反射鏡
30は、質量分析計50のシャッターの働きをする。こ
れにより、質量分析計50で蒸発物質の分析をしないと
きは、反射鏡30と蒸発材料21の溶融部分22との間
を遮蔽しておくことで、蒸着物質による汚染を最小限に
留めることができる。
【0019】また、前記反射鏡30と前記質量分析計5
0とを結ぶ直線は、蒸発材料21の溶融部分22と基板
100とを結ぶ直線と直交するよう配置されている。こ
のため、基板100上に堆積・蒸着する分子線に影響を
与えることなく、この蒸発源2の溶融状態の観察とそれ
からの分子線の分析を行うことが可能である。また、反
射鏡30が質量分析計50のシャッターの働きを兼ねる
ことから、必要なシャッターの数を減少することがで
き、前記基板100の近傍の配置が複雑になるのを避け
ることができる。
【0020】前記の実施の形態においては、真空チェン
バー1内の蒸発材料21として、1本の棒状或いは一枚
の板状)の蒸発材料21についてのみ説明したが、複数
の元素または材料を反応あるいは混合して蒸着を行う場
合、例えば、図3(a)及び(b)に示すように、2本
の棒状の蒸発材料21、21または2枚の板状の蒸発材
料21’、21’をその先端部が互いに接触する程度に
近接して平行またはV字状に配置し、その下先端を熱陰
極フィラメント23で加熱溶融して必要な分子線を発生
してもよい。このように、複数の元素または材料を反応
あるいは混合して分子線を発生する場合は、各元素の蒸
発割合をモニターして所望の蒸着状態を得るため、前記
質量分析計50を設ける必要性が高くなる。
【0021】前記の実施の形態では、棒状または板状の
蒸発材料の先端部を電子衝撃で加熱溶融して蒸発させ、
この分子線を下方の基板へ向けてへ発射させる方式につ
いてのみ説明したが、本発明はこの方式に限定されるも
のではない。例えば、従来のるつぼに蒸発材料を収納
し、これを電子ガンから発生した電子で衝撃して上方に
向けて蒸発させる形式のものや、クヌードセンセルと称
される抵抗加熱方式の蒸発源を使用したものにも適用す
ることができることは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明による真空蒸着用蒸発監視方法と蒸発監視装置では、
真空チェンバー内での蒸発材料から発射される蒸発物質
の影響を受けることなく、蒸発材料の蒸発部分を反射像
として観察可能となり、蒸発材料の蒸発速度及び蒸発方
向等をモニターして、良質な薄膜を成長させることが可
能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態である真空内の蒸発監視
装置の概略構成を示す図である。
【図2】前記蒸発監視装置を内部に備える成膜装置の構
成を説明する側面図である。
【図3】前記蒸発監視装置により溶融蒸発を監視する蒸
発源の他の例を示す図である。
【符号の説明】
1 真空チェンバー 2 蒸発源 3 基板ホルダー 21 蒸発材料 21’ 蒸発材料 22 溶融部分 23 熱陰極フィラメント 24 分子線 30 反射鏡 31 アーム 40 監視窓 50 質量分析計 100 基板

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空チェンバー(1)の内部に配置した
    基板(100)の表面上に、蒸発材料(21)の加熱に
    よって溶融蒸発または昇華させて形成した原子または分
    子線を凝着させる真空蒸着において、前記蒸発材料(2
    1)の溶融部(22)の溶融蒸発状態を、前記蒸発材料
    (21)の溶融部(22)を反射する反射鏡(30)
    と、前記真空チェンバー(1)の壁部に設けた監視窓
    (40)とを介して、反射像として監視し、前記真空チ
    ェンバー(1)内に、さらに質量分析計(50)を配置
    し、前記反射鏡(30)を移動自在に配置し、同反射鏡
    (30)をその移動により前記質量分析計(50)と蒸
    発材料(21)との間を遮蔽・開放するシャッターとし
    て使用することを特徴とする真空蒸着用蒸発監視方法。
  2. 【請求項2】 真空チェンバー(1)の内部に配置した
    基板(100)の表面上に、蒸発材料(21)の加熱に
    よって溶融蒸発または昇華させて形成した原子または分
    子線を凝着させる真空蒸着において、前記真空チェンバ
    ー(1)の壁部に設けた監視窓(40)と、前記蒸発材
    料(21)の溶融部(22)を反射して、その反射像を
    前記監視窓(40)に投影する反射鏡(30)とを有
    し、前記真空チェンバー(1)内に、さらに質量分析計
    (50)を配置し、前記反射鏡(30)を移動自在に配
    置し、同反射鏡(30)をその移動により前記質量分析
    計(50)と蒸発材料(21)との間を遮蔽・開放する
    シャッターとして使用することを特徴とする真空蒸着用
    蒸発監視装置。
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