JP2956406B2 - 加工性の優れた高珪素電磁鋼板 - Google Patents
加工性の優れた高珪素電磁鋼板Info
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Description
鉄心材料等に使用される高珪素電磁鋼板に関する。
用いられている電磁鋼板には、通常、集合組織制御およ
び固有抵抗増大のために珪素が添加される。珪素が6.
5wt%含まれる鉄合金は、磁歪がほぼ零になるために
最も優れた軟磁性を示すが、珪素の添加量が多くなると
材料が脆くなるため、珪素を4wt%以上含む高珪素鋼
は通常の圧延法により薄鋼板とすることは不可能であ
る。これに対し、近年高珪素薄鋼板を得る方法として、
溶融状態から直接薄板に鋳造する融体急冷法(例えば、
特公昭60−32705号)、特殊な圧延法を適用する
方法(例えば、特公平3−80846号)、圧延により
得られた低Siの鋼板にSiを富化する所謂浸珪法(例
えば、特公平2−60041号)等が提案され、特に浸
珪法は工業的に実用化されている。
高珪素鋼板を、実際にモータやトランスに使用するため
には、鋼板に打ち抜き、剪断、曲げといった加工を加え
る必要がある。しかし、高珪素鋼板は脆性であるため打
ち抜きや剪断端面で割れや欠損を生じたり、曲げ加工で
割れを生じやすいという問題がある。このような高珪素
鋼板の加工改善を目的として、従来いくつかの提案がな
されている。
結晶粒径が1〜100μmで且つ結晶粒が薄板表面に対
し垂直に成長した柱状晶からなり、規則格子が実質的に
存在しないことで加工性と磁気特性の優れた高珪素鋼帯
が得られるとしている。また、特開昭62−27072
3号では、圧延組織の状態で製品形状に加工成形し、そ
の後焼鈍することにより実質的に加工性の良好な高珪素
鋼板を製造できるとしている。さらに、特開平4−16
5050号では、Mnを固溶Sの悪影響を抑えるために
添加し、結晶粒の方位集積度を高めることにより加工性
の優れた高珪素方向性珪素鋼板を製造できるとしてい
る。
のうち特公昭61−15136号は、結晶粒径が100
μm以上ではその効果が得られず、しかも、高珪素鋼で
は規則相が実質的に存在しないようにするためには90
0℃以上から水焼き入れ等の急冷を施す必要があること
から、製造工程上困難を伴う技術である。また、特開昭
62−270723号の方法では、加工時に圧延組織を
有しているために加工後に高温の焼鈍が必要であり、現
状のトランス、モータの製造工程から考えると工程が一
つ追加されることになるため経済上好ましくない。ま
た、特開平4−165050号では方位集積が高いこと
が必要であるが、高い集積度を得ることはインヒビタを
用いた二次再結晶の安定性からみて困難であり、また、
この技術は無方向性珪素鋼板には適用できない欠点があ
る。
みなされたもので、打ち抜き、剪断、曲げ等の工程にお
いて必要とされる高珪素電磁鋼板の加工性を、材料面か
ら経済性を考慮して改善しようとするものであり、安価
でしかも加工性に優れた、すなわち、打ち抜きや剪断端
面における割れや欠損が少なく、或いは曲げ加工におい
て曲げ可能半径を小さくできる高珪素電磁鋼板を提供し
ようとするものである。
く母相が本来的に脆いため、従来、加工性の改善はほと
んど不可能であると考えられてきた。本発明者らは高珪
素鋼板の加工性向上を目指して種々の実験研究を行って
きたが、最終の熱処理雰囲気中の露点および酸素濃度を
変化させた種々の高珪素鋼板の加工性を調査するうち
に、同じ珪素量でありながら加工性が他の鋼板に較べて
比較的良好なものが存在することを発見した。図1にそ
の際の試験結果を示す。この試験では、焼鈍雰囲気中の
露点、酸素濃度を変えるために真空度を変化させた。同
図の横軸にはこの真空度を、また、縦軸には加工性の指
標として三点曲げ試験(図2に示す方法で試料を押し込
み、割れずに押し込めるストローク距離を測定する試
験)において試片が破壊するまでの押し込み量を示して
いる。焼鈍は各真空度の下で1200℃×15分の条件
で行った。この試験結果から、真空度が良くなればなる
ほど加工性は良好になることが判った。
カニズムを詳細に検討したところ、破面の形態が加工性
と強い相関があること、具体的には、加工性の劣ったも
のは結晶粒の粒界破面が多く現れ、一方、加工性の優れ
たものは劈開破面が多く現れるという事実が判明した。
さらに、加工性の優れた試料と劣った試料について粒界
破面の偏析元素濃度をオージェ電子分光で調査したとこ
ろ、加工性の優れた試料は総じて結晶粒界での酸素濃度
が低く、結晶粒界での酸素濃度が高い試料は加工性に劣
ることが明らかとなった。
ることにより粒界酸素濃度以外に加工性と相関する因子
を明かにすることを試みた。すなわち、粒界酸素濃度が
一定であるような試料群について種々の粒界偏析元素の
加工性に対する影響を調査した。その結果、粒界におけ
る硫黄が酸素の効果とは独立に加工性に重大な影響を及
ぼしていることが判明した。図3は、Si:6.49w
t%、Mn:0.005wt%、S:0.0015wt
%、O:0.0022wt%の成分組成を有する板厚
0.35mmの試料について、0.1vol%H2Sを
含むN2雰囲気中で熱処理を施し、熱処理後の試料の三
点曲げ性(上述した三点曲げ試験での押し込み量)と、
オージェ電子分光装置により粒界において検出された硫
黄濃度との関係を示したものである。なお、上記熱処理
を施した後の試料中のトータルの硫黄量は分析誤差内で
ほぼ一定であった。また、オージェ電子分光装置により
測定した粒界での酸素濃度はいずれも3〜5at%の範
囲であった。図3によれば、加工性は結晶粒界の硫黄濃
度と強い相関をもっており、結晶粒界の硫黄が加工性を
劣化させていることが推測できる。このように粒界硫黄
濃度と加工性とが強い相関を有することの詳細なメカニ
ズムは不明であるが、粒界にMn等の硫化物形成元素が
含まれていないことから、硫黄はおそらく固溶した状態
で粒界に存在しているもの考えられる。
晶粒径をコントロールすることは容易であるが、上記試
験においても焼鈍温度を変化させると加工性も大きく変
化することが判った。このように本発明者らは、従来加
工性が基本的に劣ると考えられてきた高珪素鋼板の加工
性が、実は粒界の性質と極めて大きな相関を有してお
り、これを制御することにより加工性に優れた高珪素鋼
板が得られることを見出した。
で、以下のような構成を有する。 (1) Si:4〜10wt%を含有し、結晶粒界にお
けるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中のO濃度)が3
0at%以下、結晶粒界におけるS濃度(結晶粒界に偏
析する元素中のS濃度)が0.2at%以下である加工
性の優れた高珪素電磁鋼板。 (2) C:0.01wt%以下、Si:4〜10wt
%、Mn:0.5wt%以下、P:0.01wt%以
下、S:0.01wt%以下、Sol.Al:0.2w
t%以下、N:0.01wt%以下、O:0.02wt
%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、結晶粒
界におけるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中のO濃
度)が30at%以下、結晶粒界におけるS濃度(結晶
粒界に偏析する元素中のS濃度)が0.2at%以下で
ある加工性の優れた高珪素電磁鋼板。 (3) Si+Al:4〜10wt%を含有し、結晶粒
界におけるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中のO濃
度)が30at%以下、結晶粒界におけるS濃度(結晶
粒界に偏析する元素中のS濃度)が0.2at%以下で
ある加工性の優れた高珪素電磁鋼板。 (4) C:0.01wt%以下、Si+Al:4〜1
0wt%、Mn:0.5wt%以下、P:0.01wt
%以下、S:0.01wt%以下、N:0.01wt%
以下、O:0.02wt%以下、残部Feおよび不可避
不純物からなり、結晶粒界におけるO濃度(結晶粒界に
偏析する元素中のO濃度)が30at%以下、結晶粒界
におけるS濃度(結晶粒界に偏析する元素中のS濃度)
が0.2at%以下である加工性の優れた高珪素電磁鋼
板。 (5) 上記(1)〜(4)の鋼板において、板厚が
0.5mm以下、板面から見た平均結晶粒径が2.0m
m以下である加工性の優れた高珪素電磁鋼板。
明する。Siは、添加量が略6.5wt%で磁歪が零と
なり最も優れた軟磁性を示す。Siが4wt%未満では
高珪素鋼板としての所望の磁気特性が得られず、また、
鋼板の加工性も特に問題とならない。一方、Siが10
wt%を超えると飽和磁束密度が著しく減少する。この
ため、Siは4〜10wt%とする。また、Siはその
一部をAlで置換することも可能であり、この場合には
Si+Al量を規定する必要がある。Si+Alが4w
t%未満では本発明が目的とする磁気特性が得られず、
また、鋼板の加工性は特に問題とならない。一方、Si
+Alが10wt%を超えると飽和磁束密度の著しく減
少する。このため、Siの一部をAlで置換する場合に
は、Si+Al:4〜10wt%とする。
が0.01wt%超えると経時的に軟磁性が劣化する所
謂時効劣化現象が生じる。このためCは0.01wt%
以下とすることが好ましい。MnはSと結合してMnS
となり、スラブ段階での熱間加工性を改善する作用があ
る。しかし、Mnが0.5wt%を超えると飽和磁束密
度の減少が大きくなるため適当でない。このためMnは
0.5wt%以下とすることが好ましい。
その含有量はできるだけ低いほうが好ましい。経済性お
よびPが0.01wt%以下であれば実質的にその悪影
響は無視できることから、Pは0.01wt%以下とす
ることが好ましい。Sは熱間圧延時の脆性を増大させる
元素であるとともに、軟磁気特性も劣化させるため、そ
の含有量はできるだけ低いほうが好ましい。後述するよ
うに本発明において最も重要な要件は粒界における硫黄
濃度であるが、ここで述べる硫黄量は粒界および粒内を
含む全体の硫黄量である。経済性およびSが0.01w
t%以下であれば実質的にその悪影響は無視できること
から、Sは0.01wt%以下とすることが好ましい。
するとともに、磁気特性上も電気抵抗を高める作用を有
する。Siを4〜10wt%添加する鋼では、Siによ
り磁気特性の改善を図り、Alは鋼の脱酸作用のみを果
たせばよいことから、Sol.Alは0.2wt%以下
とすることが好ましい。一方、Siの一部をAlで置換
する場合には、上述したようにSi+Alを4〜10w
t%とする。Nは軟磁気特性を劣化させる元素であり、
時効による磁気特性の経時的変化も引き起こすため、そ
の含有量はできるだけ低いほうが好ましい。経済性およ
びNが0.01wt%以下であれば実質的にその悪影響
は無視できることから、Nは0.01wt%以下とする
ことが好ましい。
その含有量はできるだけ低いほうが好ましい。本発明で
は粒界における酸素濃度を規定しているが、ここでいう
O量は粒界および粒内を含む全体のO量である。後述す
るように本発明は、鋼板中に不可避的に含まれるOとS
の粒界での濃度を規制することにより優れた加工性を得
るものであるが、鋼板中のO量が増加すると、熱処理条
件に拘りなく酸素は粒内および粒界のいずれにも存在す
るようになり、粒界酸素濃度を30at%以下に制御す
ることが難しくなる。鋼板中のO量が0.02wt%以
下であれば、熱処理条件(例えば、熱処理雰囲気の真空
度)によって酸素の存在する箇所(粒内または粒界)を
選択的に制御することが比較的容易であり、このためO
は0.02wt%以下とすることが好ましい。一方、O
の下限に特別な限定はなく、また、O量を単純に低減さ
せても、粒界酸素濃度の低減化には結び付かない。但
し、Oを過度に低減することはコスト高を招くため、経
済性の観点からは0.0005wt%未満まで低減化さ
せることは得策ではない。以上の成分以外に、鋼中の不
可避不純物としてCr、Ni、Cu、Sn、Mo等が含
まれる場合があり、これらがそれぞれ0.03wt%程
度を限度に含まれても本発明の効果は損なわれない。
粒界に偏析した元素中の硫黄濃度)が0.2at%(at
omic %)以下であることが必要であり、これが本発明
における最も重要な要件である。ここで、結晶粒界の硫
黄量とは、粒界に偏析している元素中の硫黄含有量(a
t%)である。通常、この硫黄量の測定にはオージェ電
子分光装置が用いられる。この装置による測定では、真
空度1×(1/109)torr以下に保った真空容器
中において試料を破壊させ、大気に汚染されていない清
浄な粒界破面を観察しながらオージェ電子を分光するも
のであり、これにより清浄な粒界破面における元素の分
析が可能である。
量を行う場合、以下に述べるような方法がとられる
(「ユーザのための実用オージェ電子分光法」共立出版
社 1989参照)。すなわち、材料表面における元素の定
量を行う場合は、測定されたオージェ電子強度(エネル
ギーに対して微分されたもので、ピークの高さで示され
る)と各元素のオージェ電子の放出効率を示す指標であ
る相対感度を用いて、以下のように計算される。 [X](at%)={(X/x)/[(A/a)+(B/b)+(C/c) +・・・・・+(X/x)+・・・・]}×100 但し A,B,C,D,・・・・・ :各元素のオージェ電
子強度 a,b,c,d,・・・・・ :各元素の相対感度
ー位置は元素によって決められており、例えば、Feは
3本あるLMM遷移のうち一番高エネルギー側のピー
ク、OはKLL遷移、CはKLL遷移、SはLVV遷移
を使用する。また、相対感度も各元素の遷移について既
にその値が得られており、上記文献にその値が記載され
ているが、ファイの装置ではFe:0.220,C:
0.140,O:0.400,S:0.750という値
が使われている。このようにオージェ電子分光結果から
元素の定量値を求めることは一般的に行われており、本
発明でもこの方法を採用して結晶粒界の元素の定量を行
った。先に述べたように、本発明者らはこのような方法
で加工性の優れた材料と加工性の劣った材料について粒
界面を探し、この粒界面における元素分析を行ったとこ
ろ、粒界における硫黄濃度が加工性の優劣と極めて大き
な相関を有することを見出したものである。
板厚0.1mmの高珪素鋼板であって、オージェ電子分
光により測定した結晶粒界の酸素濃度が略同じものにつ
いて、引張り伸びとオージェ電子分光により測定した結
晶粒界の硫黄濃度との相関を調べた結果を図4に示す。
同図によれば、明らかに結晶粒界の硫黄濃度が低いもの
ほど引張り伸びが良好である。この試験の試料中、引張
り伸びが3%以上あったものは塑性変形を起こしてい
た。さらに、破面の走査電子顕微鏡観察を行ったとこ
ろ、引張り伸びの優れたものほど粒界破壊よりも劈開破
壊が多く、一方、引張り伸びの劣るものほど粒界割れの
傾向が強くなることが判った。従来、このような高珪素
鋼板は塑性変形を起こさないものと考えられてきたが、
結晶粒界における硫黄濃度が0.2at%以下であれば
塑性変形を起こすことが明らかとなった。以上のことか
ら本発明では、結晶粒界における硫黄濃度を0.2at
%以下と限定する。
硫黄濃度を規定するだけでなく、結晶粒界の酸素濃度
(結晶粒界に偏析した元素中の酸素含有量)を30at
%(atomic %)以下とする必要がある。つまり、上記
粒界硫黄濃度低減化による効果は、粒界酸素濃度が十分
に低い場合においてのみ得られるものであり、このため
粒界酸素濃度は30at%以下とすることが必要とな
る。図5はSi:6.66wt%、S:0.001wt
%、Sol.Al:0.001wt%、O:0.002
5wt%の成分組成を有し、且つ粒界における酸素濃度
が異なる鋼板(板厚0.35mm)について、粒界にお
ける硫黄濃度と三点曲げ性(上述した三点曲げ試験での
押込み量)との関係を示したものである。これによれ
ば、粒界酸素濃度が30at%以下では粒界硫黄濃度と
三点曲げ性の相関は認められるが、粒界酸素濃度が30
at%を超えると、粒界硫黄濃度を0.2at%以下に
低減させても三点曲げ性に殆ど変化は見られない。この
ため本発明では、粒界酸素濃度を30at%以下、好ま
しくは15at%以下と規定する。
濃度および酸素濃度の影響のほかに、結晶粒径も加工性
に影響を及ぼし、板面から見た平均結晶粒径が2.0m
m以下であれば、加工性がさらに向上することが明かと
なった。この効果は、結晶粒界における硫黄の効果によ
り粒界が強くなった分だけ粒内の強さが相対的に低下
し、そのため粒内を貫通する割れが多くなる傾向がある
ため、あまり粒径が大きくなると加工性が劣化すること
が原因と考えられる。表1に示した化学成分を有する高
珪素鋼板の中で、粒界酸素濃度が略5at%、粒界炭素
濃度が略1at%、粒界硫黄濃度が略0.05at%の
ものについて結晶粒径を種々変化させ、板面から見た平
均結晶粒径と三点曲げ特性との関係を調べた。その結果
を図6に示す。これによれば、平均結晶粒径を2.0m
m以下とすることにより加工性が良好となることが判
る。
処理による結晶粒成長性が極めて良好で、粗大な粒を形
成しやすく、板厚方向に結晶粒が貫通するいわゆるバン
ブー構造をとりやすい。しかし、上述したように加工性
の観点からは鋼板の結晶粒径は2.0mm以下であるこ
とが好ましく、結晶粒が大きくなり過ぎないように熱処
理条件をコントロールする必要がある。本発明者らは、
高珪素鋼板の結晶組織がバンブー構造をとる場合、鋼板
の板厚のほぼ3〜4倍の結晶粒径で事実上の結晶粒成長
が停止することを見出した。したがって、結晶粒径を
2.0mm以下に保つためには板厚を0.5mm以下に
すればよく、この場合には熱処理上の配慮も必要がなく
なる。このような理由から、鋼板の板厚は0.5mm以
下とすることが好ましい。
分布に関係なく得られるものであり、したがって、本発
明の対象は方向性珪素鋼板であるか無方向性珪素鋼板で
あるかを問わない。また、通常電磁鋼板の表面には絶縁
を目的とした皮膜が形成されるが、本発明の効果は皮膜
の有無にも影響されない。また、本発明では薄板を得る
方法に特別な制約はなく、先に述べた特殊な圧延法や浸
珪法等、適宜な方法で製造された高珪素鋼板に適用でき
る。
mの高珪素鋼板において、5torr〜1×(1/10
5)torrの範囲の異なる真空度の雰囲気において、
1200℃×15分の熱処理(最終焼鈍)を行った。こ
の時の実験室気温は27℃、湿度80%であった。この
ようにして得られた試料を図2に示す三点曲げ試験に供
し、割れずに押し込めるストローク距離を測定した。さ
らに、各試料の残材をオージェ電子分光装置に持込み、
8×(1/1010)torrの真空中で破壊させ、その
破面を観察して結晶粒界での組成分析を行った。この組
成分析に基づき、試料の中から粒界酸素濃度が3〜5a
t%、粒界炭素濃度が略0.3at%、平均結晶粒径が
略0.2mmのものを選び、これらの試料について三点
曲げ量に及ぼす粒界硫黄濃度の影響を調べた。その結果
を図7に示す。これによれば、結晶粒界における硫黄濃
度が減少すると三点曲げ量が明らかに向上しており、結
晶粒界の硫黄濃度が低いほうが加工性が良好であること
が判る。
種々の板厚の高珪素鋼板について、1×(1/104)
torrの真空度の雰囲気において、800〜1300
℃の範囲の異なる焼鈍温度で15分間の最終焼鈍を行
い、種々の板厚、平均結晶粒径を有する試料を作製し
た。このようにして得られた試料について三点曲げ試験
を実施し、さらに各試料の残材をオージェ電子分光装置
に持込み、結晶粒界の酸素濃度、炭素濃度、硫黄濃度を
測定した。オージェ電子分光測定の結果では、いずれの
試料も粒界酸素濃度が8±2at%、粒界炭素濃度が
0.8〜2at%、粒界硫黄濃度が0.05〜0.10
at%の範囲であった。各試料の平均結晶粒径および三
点曲げ試験の結果を表4に示す。これによれば、平均結
晶粒径が2.0mmを超えると曲げ特性が著しく劣化す
ることが判る。また、板厚が0.5mmを超えるものは
平均結晶粒径が2.0mm以下であっても曲げ特性に劣
っている。
板厚0.3mmの珪素鋼板を作製し、1200℃におい
て浸珪処理−拡散処理(Si拡散浸透処理)を行った。
上記浸珪処理は、キャリアガスとして高純度窒素ガス
(露点−70℃)を混合した四塩化珪素(SiCl4)
雰囲気ガスと、キャリアガスとして通常窒素ガス(露点
−30℃)を混合した四塩化珪素(SiCl4)雰囲気
ガスの2種類の雰囲気ガスを使用して行った。これらの
試料について三点曲げ試験を行い、また、その残材から
オージェ電子分光測定により結晶粒界の酸素濃度、炭素
濃度、硫黄濃度を測定した。この組成分析に基づき、試
料の中から粒界酸素濃度が略10at%、粒界炭素濃度
が略0.7at%、平均結晶粒径が略0.80mmのも
のを選び、これらの試料について粒界硫黄濃度と三点曲
げ量との相関を調べた。その結果を図8に示す。これに
よれば、Si拡散浸透処理により得られた高珪素鋼板に
ついても、結晶粒界の硫黄濃度の規制が鋼板の加工性の
向上に有効であることが判る。
板厚0.35mmの鋼板を圧延法にて作製し、露点を−
10℃から−70℃、H2S濃度を0から0.1vol
%で変化させた窒素雰囲気中で1200℃×15分の熱
処理を行った。これらの試料について図2に示した三点
曲げ試験を行い、また、その残材からオージェ電子分光
測定により、結晶粒界の酸素濃度および硫黄濃度を測定
し、三点曲げ量に及ぼす粒界酸素濃度、粒界硫黄濃度の
影響を調べた。その結果を図5に示す。これによれば、
粒界酸素濃度が30at%以下では粒界硫黄濃度と三点
曲げ性の相関は認められるが、粒界酸素濃度が30at
%を超えると、粒界硫黄濃度を0.2at%以下に低減
させても三点曲げ性にほとんど変化は見られないことが
判る。
素鋼板について、最終焼鈍雰囲気の真空度と鋼板の三点
曲げ特性との関係を示すグラフ
す説明図
いて、粒界硫黄濃度と三点曲げ特性との関係を示すグラ
フ
界硫黄濃度と鋼板の引張り伸びとの関係を示すグラフ
曲げ特性との関係を示すグラフ
1at%、粒界硫黄濃度が略0.05at%の高珪素鋼
板について、板面からみた平均結晶粒径と三点曲げ特性
との関係を示すグラフ
と鋼板の三点曲げ特性との関係を示すグラフ
と鋼板の三点曲げ特性との関係を示すグラフ
Claims (5)
- 【請求項1】 Si:4〜10wt%を含有し、結晶粒
界におけるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中のO濃
度)が30at%以下、結晶粒界におけるS濃度(結晶
粒界に偏析する元素中のS濃度)が0.2at%以下で
ある加工性の優れた高珪素電磁鋼板。 - 【請求項2】 C:0.01wt%以下、Si:4〜1
0wt%、Mn:0.5wt%以下、P:0.01wt
%以下、S:0.01wt%以下、Sol.Al:0.
2wt%以下、N:0.01wt%以下、O:0.02
wt%以下、残部Feおよび不可避不純物からなり、結
晶粒界におけるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中のO
濃度)が30at%以下、結晶粒界におけるS濃度(結
晶粒界に偏析する元素中のS濃度)が0.2at%以下
である加工性の優れた高珪素電磁鋼板。 - 【請求項3】 Si+Al:4〜10wt%を含有し、
結晶粒界におけるO濃度(結晶粒界に偏析する元素中の
O濃度)が30at%以下、結晶粒界におけるS濃度
(結晶粒界に偏析する元素中のS濃度)が0.2at%
以下である加工性の優れた高珪素電磁鋼板。 - 【請求項4】 C:0.01wt%以下、Si+Al:
4〜10wt%、Mn:0.5wt%以下、P:0.0
1wt%以下、S:0.01wt%以下、N:0.01
wt%以下、O:0.02wt%以下、残部Feおよび
不可避不純物からなり、結晶粒界におけるO濃度(結晶
粒界に偏析する元素中のO濃度)が30at%以下、結
晶粒界におけるS濃度(結晶粒界に偏析する元素中のS
濃度)が0.2at%以下である加工性の優れた高珪素
電磁鋼板。 - 【請求項5】 板厚が0.5mm以下、板面から見た平
均結晶粒径が2.0mm以下である請求項1、請求項
2、請求項3または請求項4に記載の加工性の優れた高
珪素電磁鋼板。
Priority Applications (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5028562A JP2956406B2 (ja) | 1993-01-25 | 1993-01-25 | 加工性の優れた高珪素電磁鋼板 |
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