JP6866791B2 - 靱性予測装置、靱性予測方法、およびプログラム - Google Patents
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Description
本実施形態では、靱性の予測対象の鋼材としてマルテンサイト・セメンタイト鋼を例に挙げて説明する。ここで、マルテンサイト・セメンタイト鋼は、母相(マトリックス)としてマルテンサイトを含み、且つ、破壊起点物質としてセメンタイトを含む。マルテンサイト・セメンタイト鋼は、焼戻しを行うことにより得られる。破壊起点物質とは、その物質自身が割れるか、または、母相と剥離を起こすことによって、破壊の起点となる物質をいう。本実施形態では、破壊起点物質としてセメンタイトを示すが、破壊基点物質は、セメンタイトの他、酸化物や介在物であってもよい。破壊起点物質の大きさは0.3[μm]未満である。ここで、破壊起点物質の大きさは、破壊起点物質を電子顕微鏡で測定した場合の測定面において当該破壊起点物質を楕円で近似した場合の当該楕円の短径であるものとする。
以下、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、靱性予測装置100の機能的な構成の一例を示す図である。図2−1および図2−2は、靱性予測装置100による靱性予測方法の一例を説明するフローチャートである。靱性予測装置100のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを有する情報処理装置や専用のハードウェアを用いることにより実現することができる。以下に、図2−1および図2−2のフローチャートに従って、靱性予測装置100が有する機能の一例を説明する。
また、本発明者らは、マルテンサイト・セメンタイト鋼においては、セメンタイトなどの破壊起点物質は小さく、且つ、数多く存在しているため、ステップS202で定義された複数の微小要素の全てにおいて、少なくとも1つの破壊起点物質に割れが発生していることを見出した。この場合、ステージIの現象が発生しているものとして、ステージIIおよびステージIIIの現象を考慮すればよい。以下に、ステップIIおよびステージIIIの現象から得た着想について説明する。
次に、ステップS211において、粒径導出部106は、ステップS210で抽出された粒径のうち最大の粒径を、ステップS209で選択された微小要素におけるブロックの代表粒径として導出する。
次に、ステップS213において、粒径導出部106は、ステップS212で抽出された粒径のうち最大の粒径を、ステップS209で選択された微小要素における破壊起点物質の代表粒径として導出する。
次に、ステップS216において、結晶方位導出部108は、ステップS215で定義した3つの<100>方向(a軸、b軸、c軸)のうち、疲労き裂303が開口する方向であるy軸の方向に最も近い方向(軸)を特定し、特定した方向(軸)とy軸とのなす角度を、ステップS209で選択された微小要素の結晶方位として導出する。
引張試験の結果の取得形態として、例えば、外部装置からの受信、靱性予測装置100の外部の記憶媒体からの読み出し、および、靱性予測装置100のユーザインターフェースに対する入力操作の少なくとも何れか1つを採用することができる。
次に、ステップS222において、破壊有無判定部113は、き裂開口量設定部112により設定されたき裂開口量の現在の設定値に対応する、解析用試験片の全ての位置の作用応力を、ステップS219で導出された、き裂開口量と作用応力との関係から取得する。
次に、ステップS223において、破壊有無判定部113は、ステップS214で導出された、各微小要素における破壊応力と、ステップS222で取得された作用応力のうち、当該微小要素に含まれる位置の作用応力とを比較する。そして、破壊有無判定部113は、複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力(の一部または全部)が、当該微小要素おける破壊応力を上回るか否かを判定する。
次に、ステップS227において、き裂開口量設定部112は、き裂開口量の増加量の現在の設定値の半分の量を、き裂開口量の増加量の新たな設定値とする。そして、ステップS222に戻り、き裂開口量の増加量の現在の設定値が許容値以下になるまで、ステップS222〜S227の処理を繰り返し行う。
以上のように本実施形態では、マルテンサイト・セメンタイト鋼のEBSDの測定面におけるそれぞれのブロックを楕円近似し、近似した楕円の長径と短径を導出する。楕円の長径を用いてPetchモデルにより、試験片の各微小要素における破壊応力σIIを導出すると共に、楕円の短径を用いてGriffithモデルにより、試験片の各微小要素における破壊応力σIIIを導出し、各微小要素において、大きい方の破壊応力を当該微小要素の破壊応力とする。また、試験片に対しCTOD試験を行う場合に試験片の各位置に作用する作用応力の数値解を、FEMを用いて導出する。そして、微小要素における破壊応力と、当該微小要素に含まれる位置の作用応力とを比較した結果に基づいて、試験片を構成するマルテンサイト・セメンタイト鋼の靱性を評価する指標(CTOD値)を導出して出力する。従って、母相としてマルテンサイトを有する鋼材の靱性を、破壊靱性試験を行わずに正確に予測することができる。即ち、非特許文献1で靱性の予測対象としているフェライト・セメンタイト鋼における破壊起点物質(セメンタイト)に比べ、マルテンサイト・セメンタイト鋼における破壊起点物質の大きさは(概ね10倍以上)小さいが、このような小さな破壊起点物質であっても、破壊起点物質の割れが、破壊起点物質とブロックとの界面を突破してき裂が進展する。しかしながら、フェライト・セメンタイト鋼の母相は、フェライトであり、マルテンサイト・セメンタイト鋼のように複雑ではなく、また、母相の結晶粒の大きさが大きい。このため、非特許文献1では、フェライトの結晶粒を円に近似する。これに対し、マルテンサイト・セメンタイト鋼では、ブロックの単位でき裂が進展していくことに着目し、ブロックを楕円近似し、き裂の進展の素過程(ステージII、III)に対応するように、楕円の長径または短径を、微小要素の破壊応力を導出する式に与える。よって、微小要素の破壊応力を正確に導出することができ、その結果、マルテンサイト・セメンタイト鋼における靱性を正確に予測することができる。
次に、実施例を説明する。本実施例では、非特許文献1に記載のように、ブロックを円近似し、ブロックの粒径として円相当径を用いた場合と、本実施形態のように、ブロックを楕円近似し、ブロックの粒径として楕円の長径または短径を用いた場合とのそれぞれについて計算し、実験値(実測値)との比較を行った、尚、計算に際しては、ブロックの粒径以外については同一の条件とした。
図9(a)は、炭素量が0.5Cであり、650[℃]、40[min]の条件で焼戻しを行うことにより得られた焼戻しマルテンサイト鋼についての結果である。図9(b)は、炭素量が0.5Cであり、650[℃]、320[min]の条件で焼戻しを行うことにより得られた焼戻しマルテンサイト鋼についての結果である。
図9(a)および図9(b)に示すように、ブロックを円近似した場合(計算値/円相当径の値を参照)よりもブロックを楕円近似した場合(計算値/楕円形の値を参照)の方が、CTOD値の計算値は実験値に近くなっていることが分かる。尚、本実施例では、ステージIIに起因する破壊応力σIIよりもステージIIIに起因する破壊応力σIIIの方が大きくなる傾向であった。
<変形例1>
本実施形態では、靱性の予測対象がマルテンサイト・セメンタイト鋼である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、靱性の予測対象をベイナイト・セメンタイト鋼としてもよい。靱性の予測対象をベイナイト・セメンタイト鋼にする場合には、前述した説明において、マルテンサイトをベイナイトに置き換えればよい。ただし、マルテンサイトに特有な部分は、ベイナイトに特有な内容に置き換わる。
本実施形態では、試験片に対しCTOD試験を行う場合に試験片の各位置に作用する作用応力の数値解を、FEMを用いて導出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、試験片に形成された疲労き裂が時間の経過と共に開口するように(即ち、疲労き裂の応力集中が時間の経過と共に高まるように)、試験片に荷重を付加したときの試験片の各位置に作用する作用応力の数値解または解析解を導出していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、CTOD試験に代えて、シャルピー試験を適用してもよい。また、FEMに代えて、境界要素法等の数値解析を用いてもよいし、応力拡大係数の解析解または数値解を用いてもよい。
本実施形態では、母相の粒径分布と破壊起点物質の粒径分布を、靱性予測装置100で導出する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、靱性予測装置100が、母相の粒径分布と破壊起点物質の粒径分布を外部から取得してもよい。
前述したように、複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回る場合、き裂開口量の増加量を減少させて、微小要素における破壊応力と、当該微小要素に含まれる位置の作用応力とを比較すれば、計算時間を短くすることができるので好ましい。しかしながら、き裂開口量の増加量を細かく設定し、単調に増加させるようにしてもよい。このようにする場合、複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回ることが破壊有無判定部113により判定された時点で、出力部114は、き裂開口量の現在の設定値を出力する。
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、マルテンサイト・セメンタイト鋼における脆性破壊として、破壊起点物質を起点とする破壊(へき開破壊)のみが生じるとした場合を例に挙げて説明した。しかしながら、旧オーステナイト粒の粒径が大きかったり、母相の粒界に偏在するP(リン)の量が多かったりすると、(破壊起点物質の割れに起因せずに)母相の粒界が分離し、母相の粒界に沿って破壊が進展する粒界破壊が起きる。このように、マルテンサイト・セメンタイト鋼の脆性破壊を解析する際には、へき開破壊だけでなく、粒界破壊も考慮するのが好ましい。そこで、本実施形態では、へき開破壊と粒界破壊との双方を考慮する場合について説明する。このように本実施形態は、第1の実施形態に対し、粒界破壊を考慮することによる構成および処理が追加される。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図9に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
ステップS1209において、粒界破壊用粒径分布取得部1101は、旧オーステナイトの画像を取得する。本実施形態では、解析用試験片と同じ製造条件で製造された(同じ成分の)マルテンサイト・セメンタイト鋼を用意し、当該マルテンサイト・セメンタイト鋼の観察面をピクリン酸飽和水溶液で腐食して旧オーステナイト粒界を選択的に現出させる。このように旧オーステナイト粒界が現出した観察面を測定面として電子顕微鏡により当該測定面の画像を、旧オーステナイトの画像として得る。本実施形態では、SEMを用いて旧オーステナイトの画像を得る。このとき、十分な数の旧オーステナイトが旧オーステナイトの画像に含まれるようにする。粒界破壊用粒径分布取得部1101は、旧オーステナイトの画像として、複数の視野で撮影された複数の画像を得るのが好ましい。
粒界P量は、Pの添加量[mass%]および焼戻し温度に依存する。そこで、Pの添加量および焼戻し温度を異ならせて複数のマルテンサイト・セメンタイト鋼を作製する。そして、これら複数のマルテンサイト・セメンタイト鋼のそれぞれについて、前述したオージェ電子分光法を用いて粒界P量を測定する。そして、粒界P量と、当該粒界P量が得られたマルテンサイト・セメンタイト鋼の製造条件(成分)との関係を示す情報を作成して記憶する。粒界P量と、当該粒界P量が得られたマルテンサイト・セメンタイト鋼の製造条件(成分)との関係を示す情報として、例えば、粒界P量と、当該粒界P量が得られたマルテンサイト・セメンタイト鋼の製造条件(成分)とを相互に関連付けて記憶するテーブルを用いることができる。また、粒界P量と、当該粒界P量が得られたマルテンサイト・セメンタイト鋼の製造条件(成分)との関係を示す情報として、当該関係を示す関係式を作成してもよい。粒界P量取得部1103は、粒界P量と、当該粒界P量が得られたマルテンサイト・セメンタイト鋼の製造条件(成分)との関係を示す情報が記憶された記憶媒体(例えばデータベース)から、解析用試験片の製造条件(成分)に対応する粒界P量を読み出す。粒界P量取得部1103は、このようにしても、粒界P量の測定値を取得することができる。
次に、ステップS1220において、粒界破壊用粒径導出部1104は、ステップS1219で抽出された粒径のうち最大の粒径を、ステップS1213で選択された微小要素における旧オーステナイトの代表粒径として導出する。
σGB=48.5d-1/2−50.7P+1848 ・・・(4)
本発明者らは、粒界破壊応力を定式化するため、粒界破壊応力に及ぼす旧オーステナイトの粒径および粒界P量の影響を調査した。焼入れ温度によって旧オーステナイトの粒径を調整し、Pの添加量および焼戻し温度によって粒界P量を調整することができる。このようにして或る鋼種のマルテンサイト・セメンタイト鋼について複数の試験片を作製した。ここでは、マルテンサイト・セメンタイト鋼の試験片として、解析用試験片と同一のもの(直方体のマルテンサイト・セメンタイト鋼の表面に、疲労き裂を1箇所導入したもの)を採用した。
旧オーステナイトの粒径は、ステップS1210で説明したのと同様に方法で測定した。即ち、まず、旧オーステナイトの画像から特定される旧オーステナイトの(領域の)円相当径(直径)を旧オーステナイトの粒径とする。旧オーステナイトの画像から、旧オーステナイトの組として複数(例えば、少なくとも20個)の旧オーステナイトからなる組を抽出する。そして、抽出した組に含まれる各旧オーステナイトの粒径を画像処理により導出し、導出した粒径の平均値を旧オーステナイトの粒径とする。
尚、各試験片の脆性破壊は、全て粒界破壊であった。
そして、ここでは、Pの添加量が90ppm、焼戻し温度が550[℃]のマルテンサイト・セメンタイト鋼を基準とし、図13(b)に示す予測値の切片の値である1848と、図13(a)に示す予測値の傾き(48.5)と、図13(b)に示す予測値の傾き(−50.7)とから、(4)式を得た。
σGB=f(d1/2,P) ・・・(5)
また、粒界破壊応力σGBの予測式は、鋼種ごとに作成するのが好ましい。
ステップS1214〜S1215の処理とステップS1216〜S1217の処理の処理順は順不同である。図12−2に示すようにして、ステップS1214〜S1215の処理とステップS1216〜S1217の処理を並列に行わずに、ステップS1214〜S1215の処理とステップS1216〜S1217の処理のうち、一方を先に、他方を後に行ってもよい。また、ステップS1214〜S1218と、ステップS1219〜S1221の処理順も順不同である。図12−2に示すようにして、ステップS1214〜S1218と、ステップS1219〜S1221の処理を並列に行わずに、ステップS1214〜S1218と、ステップS1219〜S1221の処理のうち、一方を先に、他方を後に行ってもよい。また、ステップS1214〜S1222と、ステップS1223〜S1224の処理順も順不同である。図12−2に示すようにして、また、ステップS1214〜S1222と、ステップS1223〜S1224の処理のうち、一方を先に、他方を後に行ってもよい。
また、本実施形態においても、第1の実施形態で説明した種々の変形例(<変形例1>〜<変形例4>等)を採用することができる。
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
以下に、請求項の記載と実施形態の記載との関係の一例を説明する。請求項の記載が実施形態の記載に限定されないことは、変形例等において説明した通りである。
微小要素定義手段は、例えば、微小要素定義部102を用いることにより実現される。
第1の破壊応力導出手段は、例えば、破壊応力導出部107を用いることにより実現される。第1の破壊応力は、例えば、ステージIIに起因する破壊応力に対応し、第2の破壊応力は、例えば、ステージIIIに起因する破壊応力に対応する。
作用応力導出手段は、例えば、作用応力導出部111を用いることにより実現される。
指標導出手段は、例えば、き裂開口量設定部112、破壊有無判定部113、および出力部114を用いることにより実現される。靱性を評価する指標は、例えば、CTOD値を用いることにより実現される。
第1の粒径分布取得手段は、例えば、粒径分布取得部103を用いることにより実現される。
第1のサンプリング数導出手段は、例えば、サンプリング数導出部104を用いることにより実現される。
第1の粒径導出手段は、例えば、粒径導出部106を用いることにより実現される。
第2の破壊応力導出手段は、例えば、粒界破壊応力導出部1105を用いることにより実現される。第2の破壊応力導出手段により導出される破壊応力は、例えば、粒界破壊応力σGBに対応する。
破壊応力決定手段は、例えば、破壊応力決定部1106を用いることにより実現される。
破壊応力の予測式は、例えば、(4)式、(5)式に対応する。
第2の粒径分布取得手段は、例えば、粒界破壊用粒径分布取得部1101を用いることにより実現される。
第2のサンプリング数導出手段は、例えば、粒界破壊用サンプリング数導出部1102を用いることにより実現される。
第2の粒径導出手段は、例えば、粒界破壊用粒径導出部1104を用いることにより実現される。
負荷レベル量設定手段は、例えば、き裂開口量設定部112を用いることにより実現される(ステップS220、S224、S226も参照のこと)。試験片の応力集中を高めることにより当該試験片において変化する形状を反映した物理量である負荷レベル量は、例えば、き裂開口量に対応する。尚、請求項11における負荷レベル量設定手段の記載は、例えば、ステップS220、S224に対応し、請求項12における負荷レベル量設定手段の記載は、例えば、ステップS226に対応する。具体的に、請求項12の、当該判定の直前に増加させた前記負荷レベル量は、例えば、繰り返し行われるステップS224のうち、ステップS225でNOと判定される直前に行われたステップS224で増加されたき裂開口量に対応し、当該増加させる前の前記負荷レベル量は、例えば、当該ステップS224での増加前のき裂開口量に対応する。
負荷レベル量増加量設定手段は、例えば、き裂開口量設定部112を用いることにより実現される(ステップS221、S227も参照のこと)。尚、請求項12における負荷レベル量増加量設定手段の記載は、例えば、ステップS221に対応し(変形例4も参照のこと)、請求項12における負荷レベル量増加量設定手段の記載は、例えば、ステップS227に対応する。
破壊応力判定手段は、例えば、破壊有無判定部113を用いることにより実現される(ステップS223も参照のこと)。
出力手段は、例えば、出力部114を用いることにより実現される(変形例4等も参照のこと)。
負荷レベル量判定手段は、例えば、破壊有無判定部113を用いることにより実現される(ステップS225も参照のこと)。
Claims (15)
- マルテンサイトまたはベイナイトを母相として含み、破壊起点物質としてセメンタイトを含む鋼材の靱性を予測する靱性予測装置であって、
前記鋼材と同じ材料で構成される試験片であって、外部から荷重が付加されることにより応力集中が発生する形状を有する試験片の応力集中想定領域に複数の微小要素を定義する微小要素定義手段と、
前記複数の微小要素のそれぞれにおける破壊応力を、当該微小要素に含まれるブロックの粒径に基づいて導出する第1の破壊応力導出手段と、
前記試験片の応力集中が時間の経過と共に高まるように前記試験片に荷重を加えたときの前記試験片の各位置に作用する作用応力の数値解または解析解を導出する作用応力導出手段と、
前記微小要素における破壊応力と、当該微小要素に含まれる位置の作用応力とを比較した結果に基づいて、前記靱性を評価する指標を導出する指標導出手段と、を有し、
前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の長径または短径であることを特徴とする靱性予測装置。 - 前記第1の破壊応力導出手段により導出される前記破壊応力は、前記破壊起点物質の割れが当該破壊起点物質と前記ブロックとの界面を突破して発生するき裂により前記鋼材が脆性破壊するときに当該鋼材に発生する応力であり、
前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の長径であることを特徴とする請求項1に記載の靱性予測装置。 - 前記第1の破壊応力導出手段により導出される前記破壊応力は、前記破壊起点物質の割れが当該破壊起点物質と前記ブロックとの界面を突破して発生するき裂が前記ブロック間の界面を突破することにより前記鋼材が脆性破壊するときに当該鋼材に発生する応力であり、
前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の短径であることを特徴とする請求項1に記載の靱性予測装置。 - 前記第1の破壊応力導出手段は、前記複数の微小要素のそれぞれにおける破壊応力として、第1の破壊応力と第2の破壊応力とを導出し、同一の前記微小要素における当該第1の破壊応力および当該第2の破壊応力のうち、大きい方を当該微小要素における破壊応力として導出し、
前記第1の破壊応力は、前記破壊起点物質の割れが当該破壊起点物質と前記ブロックとの界面を突破して発生するき裂により前記鋼材が脆性破壊するときに当該鋼材に発生する応力であり、
前記第1の破壊応力を導出する際に用いられる前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の長径であり、
前記第2の破壊応力は、前記破壊起点物質の割れが当該破壊起点物質と前記ブロックとの界面を突破して発生するき裂が前記ブロック間の界面を突破することにより前記鋼材が脆性破壊するときに当該鋼材に発生する応力であり、
前記第2の破壊応力を導出する際に用いられる前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の短径であることを特徴とする請求項1に記載の靱性予測装置。 - 前記破壊起点物質の大きさは、当該破壊起点物質を電子顕微鏡で測定した場合の測定面における円相当径で0.3[μm]未満であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の靱性予測装置。
- 前記ブロックの粒径と当該粒径を有する前記ブロックの数との関係を示す母相の粒径分布を取得する第1の粒径分布取得手段と、
複数の前記ブロックの大きさと、前記微小要素の大きさとに基づいて、前記母相の粒径分布から抽出する粒径の数を導出する第1のサンプリング数導出手段と、
前記第1のサンプリング数導出手段により導出された数の粒径を前記母相の粒径分布からランダムに抽出し、抽出した粒径のうち最大の粒径を、1つの前記微小要素に含まれる前記ブロックの粒径として導出する第1の粒径導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の靱性予測装置。 - 前記鋼材における旧オーステナイトの粒径と、前記母相の粒界におけるPの濃度とに基づいて、前記複数の微小要素のそれぞれにおける破壊応力を導出する第2の破壊応力導出手段と、
同一の前記微小要素における、前記第1の破壊応力導出手段により導出された前記破壊応力と、前記第2の破壊応力導出手段により導出された前記破壊応力とのうち小さい方を当該微小要素における破壊応力として決定する破壊応力決定手段と、を更に有し、
前記第2の破壊応力導出手段により導出される前記の破壊応力は、前記破壊起点物質の割れに起因せずに前記母相の粒界に沿って進展することにより前記鋼材が脆性破壊するときに当該鋼材に発生する応力であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の靱性予測装置。 - 前記第2の破壊応力導出手段は、破壊応力の予測式として、前記鋼材における旧オーステナイトの粒径の1/2乗と、前記母相の粒界におけるPの濃度と、破壊応力との関係を示す予測式を用いて、前記破壊応力を導出することを特徴とする請求項7に記載の靱性予測装置。
- 前記旧オーステナイトの粒径と当該粒径を有する前記旧オーステナイトの数との関係を示す旧オーステナイトの粒径分布を取得する第2の粒径分布取得手段と、
複数の前記旧オーステナイトの大きさと、前記微小要素の大きさとに基づいて、前記旧オーステナイトの粒径分布から抽出する粒径の数を導出する第2のサンプリング数導出手段と、
前記第2のサンプリング数導出手段により導出された数の粒径を前記旧オーステナイトの粒径分布からランダムに抽出し、抽出した粒径のうち最大の粒径を、1つの前記微小要素に含まれる前記旧オーステナイトの粒径として導出する第2の粒径導出手段と、を更に有することを特徴とする請求項7または8に記載の靱性予測装置。 - 前記試験片の表面に凹みが形成されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の靱性予測装置。
- 前記作用応力導出手段は、前記試験片の各位置に作用する作用応力の数値解または解析解と、前記試験片の応力集中を高めることにより当該試験片において変化する形状を反映した物理量である負荷レベル量との関係を導出し、
前記指標導出手段は、前記負荷レベル量を設定する負荷レベル量設定手段と、
前記負荷レベル量の増加量を設定する負荷レベル量増加量設定手段と、
前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回るか否かを判定する破壊応力判定手段と、
前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回ることが前記破壊応力判定手段により判定されると、その時点で前記負荷レベル量設定手段により設定されている前記負荷レベル量を、前記靱性を評価する指標として出力する出力手段と、を更に有し、
前記負荷レベル量設定手段は、前記複数の微小要素の何れにおいても、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回らないことが前記破壊応力判定手段により判定されると、前記負荷レベル量増加量設定手段により設定された増加量だけ前記負荷レベル量の現在の設定値を増加させ、
前記負荷レベル量設定手段による前記負荷レベル量の増加と前記破壊応力判定手段による判定は、前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回ることが前記破壊応力判定手段により判定されるまで繰り返し行われることを特徴とすることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の靱性予測装置。 - 前記指標導出手段は、前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素における破壊応力を上回ることが前記破壊応力判定手段により判定されると、前記負荷レベル量の増加量が許容値以下であるか否かを判定する負荷レベル量判定手段を更に有し、
前記負荷レベル量設定手段は、前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回ることが前記負荷レベル量判定手段により判定されると、当該判定の直前に増加させた前記負荷レベル量を下回り、且つ、当該増加させる前の前記負荷レベル量を上回るように前記負荷レベル量の現在の設定値を減少させ、
前記負荷レベル量増加量設定手段は、前記複数の微小要素の少なくとも何れか1つにおいて、当該微小要素に含まれる位置の作用応力が、当該微小要素おける破壊応力を上回ることが前記負荷レベル量判定手段により判定されると、前記負荷レベル量の増加量を現在の設定値よりも減少させ、
前記出力手段は、前記負荷レベル量の増加量が許容値以下であることが前記負荷レベル量判定手段により判定されると、その時点で前記負荷レベル量設定手段により設定されている前記負荷レベル量を、前記靱性を評価する指標として出力し、
前記破壊応力判定手段による判定と、前記負荷レベル量判定手段による判定と、前記負荷レベル量設定手段による前記負荷レベル量の減少と、前記負荷レベル量増加量設定手段による前記負荷レベル量の増加量の減少は、前記前記負荷レベル量の増加量が許容値以下であることが前記負荷レベル量判定手段により判定されるまで繰り返し行われることを特徴とする請求項11に記載の靱性予測装置。 - 前記試験片の表面に凹みが形成されており、
前記負荷レベル量は、前記凹みの所定の位置における開口量であることを特徴とする請求項11または12に記載の靱性予測装置。 - マルテンサイトまたはベイナイトを母相として含み、破壊起点物質としてセメンタイトを含む鋼材の靱性を予測する靱性予測方法であって、
前記鋼材と同じ材料で構成される試験片であって、外部から荷重が付加されることにより応力集中が発生する形状を有する試験片の応力集中想定領域に複数の微小要素を定義する微小要素定義工程と、
前記複数の微小要素のそれぞれにおける破壊応力を、当該微小要素に含まれるブロックの粒径に基づいて導出する破壊応力導出工程と、
前記試験片の応力集中が時間の経過と共に高まるように前記試験片に荷重を加えたときの前記試験片の各位置に作用する作用応力の数値解または解析解を導出する作用応力導出工程と、
前記微小要素における破壊応力と、当該微小要素に含まれる位置の作用応力とを比較した結果に基づいて、前記靱性を評価する指標を導出する指標導出工程と、を有し、
前記ブロックの粒径は、当該ブロックを楕円で近似した場合の当該楕円の長径または短径であることを特徴とする靱性予測方法。 - 請求項1〜13の何れか1項に記載の靱性予測装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
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