JP2954819B2 - 全反射蛍光x線分析装置の校正方法 - Google Patents

全反射蛍光x線分析装置の校正方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、全反射蛍光X線分析装
置の校正方法に関する。
【0002】
【従来の技術】X線全反射を用いた蛍光X線分析装置
(全反射蛍光X線分析装置= Total Reflection X-ray
Fluorescence)は、光学研磨状態の平滑面上の微量不純
物の測定に有効であることが知られている。
【0003】また、この分析法を実施する装置として、
全反射蛍光X線分析装置が知られている。この分析装置
は、X線源から放出される一次X線を試料表面、例えば
半導体ウェ−ハの表面で全反射させ、このときウェ−ハ
表面から放出される蛍光X線、即ち二次X線を二次X線
検出器で検出することにより、試料表面に付着している
微量不純物の面内分布を測定するものである。
【0004】即ち、X線を光学的に平滑な平面に低い入
射角で照射すると、X線は、それが照射された物質に吸
収されることなく、入射角度と等角に反射される。つま
り、X線は、全反射される。この時、X線が全反射され
る平面に試料を載せておけば、試料に当たったX線以外
は全反射されるので、散乱X線を見かけ上、無視し得る
状態で試料から出る蛍光X線を検出できる。従って、S
/N比(信号対雑音比)の良好な検出ができる。
【0005】従来の全反射蛍光X線分析装置は、反射波
検出器を設けるか否かによって以下の二つの構造に分け
られる。 (a) 図5は、反射波検出器を設けない簡単な構造の全反
射蛍光X線分析装置である。図7は、入射X線と試料か
ら発生する蛍光X線を示す図である。
【0006】対陰極11で発生した一次X線12´は、
分光器13によって単色化及び高密度化され、試料(半
導体基板)14に所定の入射角θで入射される。単色化
された入射X線12の入射角θが十分に小さい(全反射
臨界角φより小さい(θ<φ))場合、図7に示すよう
に、このX線12は全反射するので、散乱X線は見かけ
上、無視でき、不純物101から出る蛍光X線15が検
出器16によって検出される。
【0007】しかし、この全反射蛍光X線分析装置で
は、反射波17の強度変化を確認できないため、X線入
射角θを正確に求めることができない。つまり、入射X
線の全反射臨界角φは、蛍光X線15の強度を測定する
ことにより求めていた。従って、この分析装置では、正
確な全反射臨界角φがわからず、試料の分析を正確に行
うことができない。
【0008】なお、入射X線12の入射角θが全反射臨
界角φより大きい(θ≧φ)場合、図8に示すように、
入射X線12は不純物101中に入り込み、不純物10
1の内部から多量の散乱X線18が発生する。そのた
め、S/N比の非常に悪い検出となってしまう。
【0009】(b) 図6は、反射波検出器を有する構造の
全反射蛍光X線分析装置である。対陰極11で発生した
一次X線12´は、分光器13によって単色化され、試
料14に入射角θ1 で入射される。この入射に対して反
射される反射波17を反射波検出器19で検出する。従
って、この全反射蛍光X線分析装置は、X線入射角θ1
を正確に求めることができる。
【0010】しかし、入射X線12の入射角θ1 を変え
る際、試料14を傾けると共に、非常に高い精度で反射
波検出器19の試料14に対する反射角θ2 (又は、入
射X線に対する反射X線の角度θ3 )を調節する機構が
必要となる。
【0011】従って、当該調節機構を実現するために部
品点数が多くなり、構造も複雑となる。さらに、この分
析装置では、対陰極11、分光器13、試料14及び反
射波検出器19の幾何学的な位置関係の校正は可能であ
るが、蛍光X線検出器16とX線照射位置20の校正を
行うことができない。
【0012】図9及び図10は、X線入射角と蛍光X線
強度との関係を示す図である。なお、図9は、当該位置
関係が正確である場合を示すもので、図10は、当該位
置関係が不正確である場合を示すものである。
【0013】つまり、図9及び図10に示すように、蛍
光X線検出器とX線照射位置の位置関係がずれても、入
射角に対する蛍光X線強度の分布は同様の曲線を形成す
るため、蛍光X線検出器とX線照射位置の位置関係のず
れを判断できない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来は、
反射波検出器を設けるものと設けないものの二種類の全
反射蛍光X線分析装置が存在した。しかし、いずれの装
置も、簡単な機構で精度よくX線入射角を求め、かつ、
蛍光X線検出器とX線照射位置の関係のずれを校正し得
ることができない欠点がある。
【0015】本発明は、上記欠点を解決すべくなされた
もので、その目的は、簡単な機構で精度よくX線入射角
を求めることができ、かつ、蛍光X線検出器とX線照射
位置の関係のずれをも校正し得る全反射蛍光X線分析装
置の校正方法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の全反射蛍光X線分析装置の校正方法は、ま
ず、入射X線の試料への入射角度を変化させ、各入射角
度における当該試料から発生する蛍光X線及び当該入射
X線の散乱X線を検出し、入射X線の試料への入射角度
と蛍光X線の強度を入射X線の散乱X線の強度で規格化
した値との関係を求める。そして、これを理想曲線と比
較することにより、入射X線の試料への入射角度のずれ
及び入射X線の試料への照射位置のずれを校正するとい
うものである。
【0017】
【作用】上記構成によれば、反射波検出器を設けない簡
単な機構でも、精度よくX線入射角を求めることができ
る。また、蛍光X線検出器とX線照射位置の関係のずれ
をも校正することができる。
【0018】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明の一実施
例について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例
に係わる校正方法を実施するための全反射蛍光X線分析
装置を示している。
【0019】まず、本発明に使用する全反射蛍光X線分
析装置について簡単に説明する。図1において、21
は、X線の供給源となる対陰極、22は、分光器、23
は、試料台、24は、試料、25は、検出器、26は、
制御装置である。この全反射蛍光X線分析装置は、反射
波検出器を有しておらず、部品点数が少なく、簡単な構
造となっている。
【0020】対陰極21で発生した一次X線27´は、
分光器22によって単色化及び高密度化され、試料24
に所定の入射角θで入射される。単色化された入射X線
27の入射角θが十分に小さい(全反射臨界角φより小
さい(θ<φ))場合、このX線27は全反射する。X
線照射位置28で発生する蛍光X線及び散乱X線は、検
出器25によって検出される。なお、入射X線27の試
料24に対する入射角θは、試料台23を傾けることに
より変えることができる。
【0021】次に、全反射蛍光X線分析装置の校正方法
について説明する。まず、入射X線27を試料(平面基
板)24に照射し、このとき試料24から発生した蛍光
X線と、入射X線27が試料によって散乱した散乱X線
とを、検出器25によって検出する。
【0022】入射X線27の入射角θを変えて、蛍光X
線及び散乱X線の測定を行う。各入射角で検出された試
料24からの蛍光X線強度を散乱線の強度で規格化す
る。入射角θと規格値との関係を求め、理想曲線との比
較から正確な全反射臨界角及び入射X線の発散角を求め
ることができる。
【0023】また、制御装置26は、検出器25の水平
移動及び試料台23の傾き、上下移動などを制御するこ
とが可能である。従って、対陰極21、分光器22、X
線照射位置及び検出器25の位置関係の校正を行うこと
ができる。
【0024】図2は、試料にシリコン(Si)基板を用
いた場合において、X線入射角θと蛍光X線強度を散乱
X線強度で規格化した値との関係を示すものである。ま
た、図3は、試料に酸化シリコン(SiO2 )基板を用
いた場合において、X線入射角θと蛍光X線強度を散乱
X線強度で規格化した値との関係を示すものである。
【0025】図2及び図3において、全反射領域a及び
全反射外領域cでは、蛍光X線強度を散乱X線強度で規
格化した値は、X線入射角θに依存することなく、一定
である。一方、全反射と全反射外の混合領域bでは、蛍
光X線強度と散乱X線強度が変化し、その割合によって
規格値が変化する。従って、全反射臨界角φは、混合領
域bに存在し、その角度は、全反射領域aの値と全反射
外領域cの値から決定することができる。
【0026】混合領域bは、全反射条件を満たす成分と
全反射条件を満たさない成分とが含まれた領域である。
図11に示すように、発散角が2Δφの場合、試料20
2に照射されるX線の波長は、ブラッグの条件より、 2d・sin(φB ±Δφ)=n(λB ±Δλ) n=1,2,3… [1] で表される。但し、dは、分光器205の面間隔、λ
は、X線の波長である。
【0027】また、試料202に対する入射X線の全反
射臨界角φcriticalは、 φcritical ={(5.4×1010・Z・ρ・λ2 ) / A}1/2 [2] で表される。但し、Aは、試料202の質量数、Zは、
原子番号、ρは、密度、λは、入射X線の波長である。
なお、試料にシリコンウェ−ハを用いた場合、A=2
8.09、Z=14、ρ=2.33g/cm3 となる。
【0028】従って、発散角が2Δφのとき、試料に対
する全反射臨界角のバラツキは、第1式においてn=1
とすると、 (θ±Δθ)critical={(5.4 ×1010・Z・ρ・(λB ±Δλ))/A}1/2 ={(5.4 ×1010・Z・ρ・2d・sin(φB ±Δφ))/A}1/2 [3] となる。
【0029】つまり、混合領域bは、全反射条件を満た
す成分と全反射条件を満たさない成分とが、±Δθの範
囲で存在することを意味する。従って、発散角(2Δ
φ)が大きくなれば、混合領域b(±Δθ)は広くな
り、混合領域bの幅から試料に入射する入射X線の発散
角を求めることができる。
【0030】発散角2Δφは、スリット201幅や、タ
−ゲット206、分光器205、スリット204、試料
202の位置関係や、分光器205のエネルギ−分解能
などによって変わる。試料に対する入射X線の照射範囲
が半導体検出器201の視野範囲より広い場合は、半導
体検出器の視野範囲内での発散角を求めることができ
る。
【0031】このように、本発明の全反射蛍光X線分析
装置の校正方法では、反射波検出器を設けない簡単な構
造においても、全反射領域a及び全反射外領域cを判断
することができ、正確な全反射臨界角φを求めることが
できる。
【0032】しかも、9,67keVのエネルギ−を用
いたシリコンの臨界角は、約0.184°であるので、
図2より判断すると、本発明の校正方法によりX線の入
射角を求める場合の入射角誤差EI は、±0.005°
程度である。なお、従来技術の欄の(a) の装置によりX
線の入射角を求める場合の入射角誤差EP は、±0.0
2°程度となり、入射角誤差が大幅に低下する。
【0033】ところで、図6に示す反射波検出器を設け
た従来型の全反射蛍光X線装置では、対陰極、分光器、
X線照射位置及び反射波検出器の位置関係の校正は可能
であるが、X線照射位置と蛍光X線検出器との位置関係
の校正は不可能である。
【0034】本発明の校正方法では、X線照射位置と蛍
光X線検出器との位置関係が乱れた場合、図4に示すよ
うに、全反射領域及び全反射外領域は、一定の値を示す
ことなく、理想曲線から大きくずれていることがわか
る。つまり、X線照射位置と蛍光X線検出器との位置関
係の校正は、全反射領域及び全反射外領域の値が理想曲
線からずれているか否かにより判断することができる。
【0035】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明の全反射
蛍光X線分析装置の校正方法によれば、次のような効果
を奏する。反射波検出器を設けない簡単な機構でも、精
度よくX線入射角を求めることができる。また、蛍光X
線検出器とX線照射位置の関係のずれをも校正すること
が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の校正方法に使用する全反射蛍光X線分
析装置の概略図。
【図2】X線入射角と蛍光X線を散乱X線で規格化した
値との関係を示す図。
【図3】X線入射角と蛍光X線を散乱X線で規格化した
値との関係を示す図。
【図4】X線入射角と蛍光X線を散乱X線で規格化した
値との関係を示す図。
【図5】従来の校正方法に使用する全反射蛍光X線分析
装置の概略図。
【図6】従来の校正方法に使用する全反射蛍光X線分析
装置の概略図。
【図7】入射X線と試料から発生する蛍光X線を示す
図。
【図8】入射X線と試料から発生する蛍光X線及び散乱
X線を示す図。
【図9】X線入射角と蛍光X線強度との関係を示す図。
【図10】X線入射角と蛍光X線強度との関係を示す
図。
【図11】発散角2Δφと試料への入射角θ±Δθを示
す図。
【符号の説明】
21,206 …対陰極(タ−ゲット)、 22,205 …分光器、 23,203 …試料台、 24,202 …試料、 25,201 …検出器、 26 …制御装置、 204 …スリット。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入射X線の試料への入射角度を変化さ
    せ、各入射角度における当該試料から発生する蛍光X線
    及び当該入射X線の散乱X線を検出し、入射X線の試料
    への入射角度と蛍光X線の強度を入射X線の散乱X線の
    強度で規格化した値との関係を求め、これを理想曲線と
    比較することにより、入射X線の試料への入射角度のず
    れ及び入射X線の試料への照射位置のずれを校正するこ
    とを特徴とする全反射蛍光X線分析装置の校正方法。
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