JP2943044B2 - 低温感受性を有するパン酵母及びパン製造法 - Google Patents
低温感受性を有するパン酵母及びパン製造法Info
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- Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、低温感受性を有するパ
ン酵母菌株の取得を目的とし、更には得られた該菌株を
用いてパン生地を調整しこれを低温保存しパンを製造す
ることを目的とするものである。
ン酵母菌株の取得を目的とし、更には得られた該菌株を
用いてパン生地を調整しこれを低温保存しパンを製造す
ることを目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】低温感受性パン酵母の菌株取得に当って
は、製パン適性を有する酒精醸造用酵母を利用する方法
(特開昭61−195637)や、市販パン酵母より選
択した菌株に対して突然変異誘発処理を施した菌株或い
は突然変異誘発処理を施さなくとも検知しうる突然変異
を初めに示す菌株を利用する方法(特開平5−7634
8)などが採られてきた。しかし、サッカロミセス・セ
レビシエは一般的な能力として低温条件において発酵能
を持っていることから、低温感受性菌株の取得に際して
は菌株集団の大多数が低温非感受性(低温活性)である
菌株の集団の中から低温感受性というネガティブな性質
を持つ菌株を選択しなければならない。この選択に当た
っては多数の菌株を扱う必要があり、効率が著しく悪
い。低温感受性を示す菌株を分離選択するに際して効率
を高める方法として、利用可能な数種の方法がMeth
ods in Yeast Genetics(Col
d Spring Harabor Laborato
ry)に紹介されている。その主なものとしてはナイス
タチン濃縮(Nature 211,206−207
(1966))、細胞壁溶解酵素処理(Nature
253,46−47(1975))、tritium
suicide(Mutation Res.17,3
15−322(1973))がある。これらの濃縮方法
の中で汎用されている方法がナイスタチン濃縮である
が、ナイスタチン処理の時間を長くした場合には制限条
件(低温ゆえに発酵増殖が制限される条件)下であって
も目的とする菌株の死滅率が少なからず増加する。ナイ
スタチン濃縮を用いた低温感受性酵母の取得方法は特開
平5−336872に述べられているが、低温感受性と
いう特殊な性能を持つ菌株の存在比率が少ない場合には
処理条件の設定が極めて難しい。
は、製パン適性を有する酒精醸造用酵母を利用する方法
(特開昭61−195637)や、市販パン酵母より選
択した菌株に対して突然変異誘発処理を施した菌株或い
は突然変異誘発処理を施さなくとも検知しうる突然変異
を初めに示す菌株を利用する方法(特開平5−7634
8)などが採られてきた。しかし、サッカロミセス・セ
レビシエは一般的な能力として低温条件において発酵能
を持っていることから、低温感受性菌株の取得に際して
は菌株集団の大多数が低温非感受性(低温活性)である
菌株の集団の中から低温感受性というネガティブな性質
を持つ菌株を選択しなければならない。この選択に当た
っては多数の菌株を扱う必要があり、効率が著しく悪
い。低温感受性を示す菌株を分離選択するに際して効率
を高める方法として、利用可能な数種の方法がMeth
ods in Yeast Genetics(Col
d Spring Harabor Laborato
ry)に紹介されている。その主なものとしてはナイス
タチン濃縮(Nature 211,206−207
(1966))、細胞壁溶解酵素処理(Nature
253,46−47(1975))、tritium
suicide(Mutation Res.17,3
15−322(1973))がある。これらの濃縮方法
の中で汎用されている方法がナイスタチン濃縮である
が、ナイスタチン処理の時間を長くした場合には制限条
件(低温ゆえに発酵増殖が制限される条件)下であって
も目的とする菌株の死滅率が少なからず増加する。ナイ
スタチン濃縮を用いた低温感受性酵母の取得方法は特開
平5−336872に述べられているが、低温感受性と
いう特殊な性能を持つ菌株の存在比率が少ない場合には
処理条件の設定が極めて難しい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】低温感受性パン酵母と
は、0℃〜15℃の低温域において発酵能の発現が極め
て小さく、しかも低温域から温度を上昇させると、発酵
能が回復し正常な製パン性能を示す性質を有するパン酵
母をいう。低温感受性菌株を取得するに際してナイスタ
チン濃縮を利用することは優れた方法ではあるが、変異
処理によっても低温感受性という表現型が低頻度にしか
誘発されなかった場合には、目的とする菌株の死滅率を
低下させないような何らかの対処をしなければならな
い。この対処の方法の一つとしては厳密な処理条件(温
度、時間、薬剤濃度など)を設定する方法があり、もう
一つとしては制限条件下での増殖を繰り返す方法がある
が、何れも極めて煩雑な方法である。この様な煩雑な方
法をとること無く、簡便な方法で低温感受性菌株を取得
する方法が開発されれば、多種多様な性能を持つ元株に
低温感受性という性質を容易に付与できることになる。
また、アンチマイシン、ナイスタチンなどの抗生物質は
水に溶け難く、扱い難く、高価でもあり、これに代わる
適当な物質が使用できることが望まれる。
は、0℃〜15℃の低温域において発酵能の発現が極め
て小さく、しかも低温域から温度を上昇させると、発酵
能が回復し正常な製パン性能を示す性質を有するパン酵
母をいう。低温感受性菌株を取得するに際してナイスタ
チン濃縮を利用することは優れた方法ではあるが、変異
処理によっても低温感受性という表現型が低頻度にしか
誘発されなかった場合には、目的とする菌株の死滅率を
低下させないような何らかの対処をしなければならな
い。この対処の方法の一つとしては厳密な処理条件(温
度、時間、薬剤濃度など)を設定する方法があり、もう
一つとしては制限条件下での増殖を繰り返す方法がある
が、何れも極めて煩雑な方法である。この様な煩雑な方
法をとること無く、簡便な方法で低温感受性菌株を取得
する方法が開発されれば、多種多様な性能を持つ元株に
低温感受性という性質を容易に付与できることになる。
また、アンチマイシン、ナイスタチンなどの抗生物質は
水に溶け難く、扱い難く、高価でもあり、これに代わる
適当な物質が使用できることが望まれる。
【0004】
【課題を解決するための手段】酵母は好気的条件でも嫌
気的条件でも生育が可能である。嫌気的な条件で酵母が
生育するには発酵によってエネルギ−を獲得しなければ
ならない。低温域で発酵能が感受性の菌株、即ち低温域
で発酵能の発現が極めて小さい菌株を選択するには、酵
母菌株の持つ発酵能を低温域に限定して感受性とする必
要がある。このためには酵母菌株を低温域に置き、発酵
によってエネルギ−を獲得できない菌株を選抜する必要
がある。この際に発酵によらず、つまり好気的に低温域
でエネルギ−を獲得できない菌株をも選択することの無
い様に、予め発酵によってのみエネルギ−が獲得できる
条件とする必要がある。本発明者らは、一つには呼吸阻
害作用を有するアジ化ナトリウムを培地に添加する方
法、一つには酸素供給を遮断するための脱酸素剤を用い
る方法により低温感受性株が選択できることを見出し
た。
気的条件でも生育が可能である。嫌気的な条件で酵母が
生育するには発酵によってエネルギ−を獲得しなければ
ならない。低温域で発酵能が感受性の菌株、即ち低温域
で発酵能の発現が極めて小さい菌株を選択するには、酵
母菌株の持つ発酵能を低温域に限定して感受性とする必
要がある。このためには酵母菌株を低温域に置き、発酵
によってエネルギ−を獲得できない菌株を選抜する必要
がある。この際に発酵によらず、つまり好気的に低温域
でエネルギ−を獲得できない菌株をも選択することの無
い様に、予め発酵によってのみエネルギ−が獲得できる
条件とする必要がある。本発明者らは、一つには呼吸阻
害作用を有するアジ化ナトリウムを培地に添加する方
法、一つには酸素供給を遮断するための脱酸素剤を用い
る方法により低温感受性株が選択できることを見出し
た。
【0005】また、本発明者らは、パン酵母の耐熱性を
検討していく過程で、培養齢の進行により耐熱性が著し
く増加することを見出した。増殖初期の細胞と培養齢の
進んだ細胞では、熱処理前の生菌率を各100%とする
と、熱処理時間が同一の場合、生菌率が0%になる熱処
理温度に差があることを見出したのである。増殖初期の
細胞や熟成細胞が再増殖した増殖初期の細胞と、培養齢
の進んだ熟成細胞とが混在している集団について、熱処
理温度を上げていくと、増殖初期の細胞や熟成細胞が再
増殖した増殖初期の細胞が先ず生菌率が0%になるが、
熟成細胞には生き残っている生菌があり、更に温度を上
げるとはじめて熟成細胞の生菌率が0%となる。熱処理
時の耐熱性については実施例2に記載しており、培養齢
が指数増殖期に相当する培養20時間目の細胞は耐熱性
が低く、指数後期から定常期に相当する52時間目、6
4時間目、72時間目と培養が進むにつれて細胞の耐熱
性が増す。このことから、細胞が増殖期に移行すること
により熱ストレスに対する耐性が減少し、定常期で獲得
していた耐熱性が失われていくことが推定される。この
様な耐熱性の差を利用すれば、アジ化ナトリウム叉は脱
酸素剤で低温処理を行い、低温下でほとんど発酵せずに
培養齢が定常期のままで休止状態の熟成細胞、即ち低温
感受性菌株を簡便に効率よく分離選択できる。
検討していく過程で、培養齢の進行により耐熱性が著し
く増加することを見出した。増殖初期の細胞と培養齢の
進んだ細胞では、熱処理前の生菌率を各100%とする
と、熱処理時間が同一の場合、生菌率が0%になる熱処
理温度に差があることを見出したのである。増殖初期の
細胞や熟成細胞が再増殖した増殖初期の細胞と、培養齢
の進んだ熟成細胞とが混在している集団について、熱処
理温度を上げていくと、増殖初期の細胞や熟成細胞が再
増殖した増殖初期の細胞が先ず生菌率が0%になるが、
熟成細胞には生き残っている生菌があり、更に温度を上
げるとはじめて熟成細胞の生菌率が0%となる。熱処理
時の耐熱性については実施例2に記載しており、培養齢
が指数増殖期に相当する培養20時間目の細胞は耐熱性
が低く、指数後期から定常期に相当する52時間目、6
4時間目、72時間目と培養が進むにつれて細胞の耐熱
性が増す。このことから、細胞が増殖期に移行すること
により熱ストレスに対する耐性が減少し、定常期で獲得
していた耐熱性が失われていくことが推定される。この
様な耐熱性の差を利用すれば、アジ化ナトリウム叉は脱
酸素剤で低温処理を行い、低温下でほとんど発酵せずに
培養齢が定常期のままで休止状態の熟成細胞、即ち低温
感受性菌株を簡便に効率よく分離選択できる。
【0006】本発明はサッカロミセス・セレビシエに属
するパン酵母菌株を、アジ化ナトリウム又は脱酸素剤の
存在下10〜15℃の温度で2〜7日間培養する低温処
理を行った後、43〜48℃の温度で培養して低温活性
を有する菌株を選択的に死滅させることを特徴とする低
温感受性パン酵母菌株の取得方法に関するものである。
また、本発明は、サッカロミセス・セレビシエに属する
パン酵母菌株を、アジ化ナトリウム又は脱酸素剤の存在
下10〜15℃の温度で2〜7日間培養する低温処理を
行った後、43〜48℃の温度で培養して低温活性を有
する菌株を選択的に死滅させて得られる低温感受性パン
酵母菌株、特に、サッカロミセス・セレビシエFERM
P−14087、サッカロミセス・セレビシエFER
M P−14088、サッカロミセス・セレビシエFE
RM P−14208から選択される低温感受性パン酵
母菌株に関するものである。さらに、本発明は、上記の
本発明の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製したパン
生地を低温保存する方法、上記本発明の低温感受性パン
酵母菌株を用いて調製した低温保存可能なパン生地、お
よび上記本発明の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製
したパン生地を低温保存した後、パンを製造することか
らなるパンの製造方法に関するものである。
するパン酵母菌株を、アジ化ナトリウム又は脱酸素剤の
存在下10〜15℃の温度で2〜7日間培養する低温処
理を行った後、43〜48℃の温度で培養して低温活性
を有する菌株を選択的に死滅させることを特徴とする低
温感受性パン酵母菌株の取得方法に関するものである。
また、本発明は、サッカロミセス・セレビシエに属する
パン酵母菌株を、アジ化ナトリウム又は脱酸素剤の存在
下10〜15℃の温度で2〜7日間培養する低温処理を
行った後、43〜48℃の温度で培養して低温活性を有
する菌株を選択的に死滅させて得られる低温感受性パン
酵母菌株、特に、サッカロミセス・セレビシエFERM
P−14087、サッカロミセス・セレビシエFER
M P−14088、サッカロミセス・セレビシエFE
RM P−14208から選択される低温感受性パン酵
母菌株に関するものである。さらに、本発明は、上記の
本発明の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製したパン
生地を低温保存する方法、上記本発明の低温感受性パン
酵母菌株を用いて調製した低温保存可能なパン生地、お
よび上記本発明の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製
したパン生地を低温保存した後、パンを製造することか
らなるパンの製造方法に関するものである。
【0007】本発明の特徴である、アジ化ナトリウム又
は脱酸素剤の存在下で低温処理を行い、引続き熱処理を
行って目的とする低温感受性菌株を分離選択して取得す
る方法を次に詳述する。UV照射、エチルメタンスルホ
ン酸(EMS)処理など何らかの方法で突然変異処理を
施したパン酵母菌株、或いは突然変異処理を施していな
いパン酵母菌株を対象とするが、変異処理を施した菌株
については変異固定培養を菌体が定常期に到達するまで
最低3日間行い、変異処理を施さない菌株については前
培養を菌体が定常期に到達するまで同様に最低3日間行
う。その後、呼吸活性を阻害させるためにアジ化ナトリ
ウムを50ppm以上添加した培地、又は酸素供給を遮
断させるために必要な量の脱酸素剤を添加した培地を使
用して、10℃〜15℃の間の任意の温度、好ましくは
13℃〜15℃の温度で、2日間〜7日間の任意の期
間、好ましくは3日間〜5日間、低温処理を行い、この
低温処理条件で発酵により増殖し、再び培養齢が増殖初
期に移行した細胞と、低温処理条件でほとんど発酵せず
に培養齢が定常期のまま休止した細胞とが混在した状態
に移行させる。ここで使用する培地は、酵母が生育でき
る液体培地であれば特に限定しない。この後、引続き4
3℃〜48℃の間の任意の温度、好ましくは45℃〜4
7℃の温度で熱処理を10分間程度行い、前段階の低温
処理で発酵増殖し、耐熱性が低下した細胞、即ち低温感
受性ではない細胞(低温活性の細胞)のみを死滅させ
る。この様にして目的とする低温感受性菌株を簡便に分
離選択できる。低温感受性菌株を分離選択するに際して
は、増殖が休止している細胞と増殖の結果娘細胞が付加
した細胞を分離するセルソーターの使用も可能であるが
成熟細胞の耐熱性を利用する本発明と比べると、簡便さ
と費用の点で格段に劣るものである。
は脱酸素剤の存在下で低温処理を行い、引続き熱処理を
行って目的とする低温感受性菌株を分離選択して取得す
る方法を次に詳述する。UV照射、エチルメタンスルホ
ン酸(EMS)処理など何らかの方法で突然変異処理を
施したパン酵母菌株、或いは突然変異処理を施していな
いパン酵母菌株を対象とするが、変異処理を施した菌株
については変異固定培養を菌体が定常期に到達するまで
最低3日間行い、変異処理を施さない菌株については前
培養を菌体が定常期に到達するまで同様に最低3日間行
う。その後、呼吸活性を阻害させるためにアジ化ナトリ
ウムを50ppm以上添加した培地、又は酸素供給を遮
断させるために必要な量の脱酸素剤を添加した培地を使
用して、10℃〜15℃の間の任意の温度、好ましくは
13℃〜15℃の温度で、2日間〜7日間の任意の期
間、好ましくは3日間〜5日間、低温処理を行い、この
低温処理条件で発酵により増殖し、再び培養齢が増殖初
期に移行した細胞と、低温処理条件でほとんど発酵せず
に培養齢が定常期のまま休止した細胞とが混在した状態
に移行させる。ここで使用する培地は、酵母が生育でき
る液体培地であれば特に限定しない。この後、引続き4
3℃〜48℃の間の任意の温度、好ましくは45℃〜4
7℃の温度で熱処理を10分間程度行い、前段階の低温
処理で発酵増殖し、耐熱性が低下した細胞、即ち低温感
受性ではない細胞(低温活性の細胞)のみを死滅させ
る。この様にして目的とする低温感受性菌株を簡便に分
離選択できる。低温感受性菌株を分離選択するに際して
は、増殖が休止している細胞と増殖の結果娘細胞が付加
した細胞を分離するセルソーターの使用も可能であるが
成熟細胞の耐熱性を利用する本発明と比べると、簡便さ
と費用の点で格段に劣るものである。
【0008】アジ化ナトリウムはナトリウムアジド、窒
化ナトリウムとも呼ばれており、呼吸阻害作用を有す
る。アジ化ナトリウムはミトコンドリアの電子伝達系に
おいてシトクロムcオキシダ−ゼの作用を阻害する
(「生化学辞典」,東京化学同人発行,第1版第7刷,
P10−11)。アジ化ナトリウムの呼吸活性阻害作用
を利用してパン酵母菌株に対し低温処理を行うと、発酵
能が低温感受性となった菌株が選択できる。アジ化物は
呼吸阻害作用を有するのでアジ化ナトリウム以外のアジ
化物を使用しても低温感受性菌株が選択できる。脱酸素
剤としてはピロガロ−ルその他種々あるが、特殊処理し
た活性酸化鉄を主成分とするエ−ジレス(三菱ガス化学
製)やアネロメイト(日水製薬製)などの市販品も利用
できる。脱酸素剤は酸素供給を遮断させるための役割を
持ち、パン酵母菌株に対し低温処理を行うと、発酵能が
低温感受性となった菌株が選択できる。低温活性とは、
低温域(0℃〜15℃)における発酵能が低温感受性で
ない性質、即ち、低温域で発酵能を有し、その発酵能が
微小ではない性質をいう。
化ナトリウムとも呼ばれており、呼吸阻害作用を有す
る。アジ化ナトリウムはミトコンドリアの電子伝達系に
おいてシトクロムcオキシダ−ゼの作用を阻害する
(「生化学辞典」,東京化学同人発行,第1版第7刷,
P10−11)。アジ化ナトリウムの呼吸活性阻害作用
を利用してパン酵母菌株に対し低温処理を行うと、発酵
能が低温感受性となった菌株が選択できる。アジ化物は
呼吸阻害作用を有するのでアジ化ナトリウム以外のアジ
化物を使用しても低温感受性菌株が選択できる。脱酸素
剤としてはピロガロ−ルその他種々あるが、特殊処理し
た活性酸化鉄を主成分とするエ−ジレス(三菱ガス化学
製)やアネロメイト(日水製薬製)などの市販品も利用
できる。脱酸素剤は酸素供給を遮断させるための役割を
持ち、パン酵母菌株に対し低温処理を行うと、発酵能が
低温感受性となった菌株が選択できる。低温活性とは、
低温域(0℃〜15℃)における発酵能が低温感受性で
ない性質、即ち、低温域で発酵能を有し、その発酵能が
微小ではない性質をいう。
【0009】本発明においては、優れた低温感受性パン
酵母菌株として、サッカロミセス・セレビシエ(Sac
charomyces cerevisiae)NIL
S−1(受託番号FERM P−14087)、サッカ
ロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)NILS−2(受託番号FER
M P−14088)及びサッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisia
e)NILS−3(受託番号FERM P−1420
8)の3菌株を得ることができた。これら3菌株の菌学
的性質は次の通りである。
酵母菌株として、サッカロミセス・セレビシエ(Sac
charomyces cerevisiae)NIL
S−1(受託番号FERM P−14087)、サッカ
ロミセス・セレビシエ(Saccharomyces
cerevisiae)NILS−2(受託番号FER
M P−14088)及びサッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisia
e)NILS−3(受託番号FERM P−1420
8)の3菌株を得ることができた。これら3菌株の菌学
的性質は次の通りである。
【0010】 [サッカロミセス・セレビシエ NILS−1] 1.生育状態 (麦芽汁培地) 細胞の大きさ及び形状 (4.2〜5.0)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし (バレイショ抽出液寒天培地) 細胞の大きさ及び形状 (3.3〜4.2)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし 2.子のう胞子の形成 (酢酸ソ−ダ培地) 3個乃至4個の子のう胞
子を形成 3.最適生育条件 pH5〜6 30℃〜32℃ 4.生育範囲 pH3〜8 〜38℃ 6.その他 硝酸塩の同化 − 尿素の分解 − ゼラチンの液化 − 酢酸生成 − 澱粉様物質の生成 − 7.本菌株の特性 0℃〜15℃で発酵能の低温感受性を有する。
子を形成 3.最適生育条件 pH5〜6 30℃〜32℃ 4.生育範囲 pH3〜8 〜38℃ 6.その他 硝酸塩の同化 − 尿素の分解 − ゼラチンの液化 − 酢酸生成 − 澱粉様物質の生成 − 7.本菌株の特性 0℃〜15℃で発酵能の低温感受性を有する。
【0011】[サッカロミセス・セレビシエ NILS
−2] 1.生育状態 (麦芽汁培地) 細胞の大きさ及び形状 (3.3〜4.2)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし (バレイショ抽出液寒天培地) 細胞の大きさ及び形状 (3.3〜4.2)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし 2.子のう胞子の形成 (酢酸ソ−ダ培地) 3個乃至4個の子のう胞
子を形成 3.最適生育条件 pH5〜6 30℃〜33℃ 4.生育範囲 pH3〜8 〜38℃ 6.その他 硝酸塩の同化 − 尿素の分解 − ゼラチンの液化 − 酢酸生成 − 澱粉様物質の生成 − 7.本菌株の特性 0℃〜15℃で発酵能の低温感受性を有する。
−2] 1.生育状態 (麦芽汁培地) 細胞の大きさ及び形状 (3.3〜4.2)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし (バレイショ抽出液寒天培地) 細胞の大きさ及び形状 (3.3〜4.2)×(2.5〜3.3)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし 2.子のう胞子の形成 (酢酸ソ−ダ培地) 3個乃至4個の子のう胞
子を形成 3.最適生育条件 pH5〜6 30℃〜33℃ 4.生育範囲 pH3〜8 〜38℃ 6.その他 硝酸塩の同化 − 尿素の分解 − ゼラチンの液化 − 酢酸生成 − 澱粉様物質の生成 − 7.本菌株の特性 0℃〜15℃で発酵能の低温感受性を有する。
【0012】 [サッカロミセス・セレビシエ NILS−3] 1.生育状態 (麦芽汁培地) 細胞の大きさ及び形状 (2.5〜3.3)×(2.0〜2.5)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし (バレイショ抽出液寒天培地) 細胞の大きさ及び形状 (2.5〜3.3)×(2.0〜2.5)μm 楕円型 増殖形式 出芽増殖 仮性菌糸の有無 なし 2.子のう胞子の形成 (酢酸ソ−ダ培地) 4個の子のう胞子を形成 3.最適生育条件 pH5〜6 30℃ 4.生育範囲 pH3〜8 〜38℃ 6.その他 硝酸塩の同化 − 尿素の分解 − ゼラチンの液化 − 酢酸生成 − 澱粉様物質の生成 − 7.本菌株の特性 0℃〜15℃で発酵能の低温感受性を有する。
【0013】
(実施例1)市販パン酵母「ニッテンイ−スト」(日本
甜菜製糖株式会社製)を供試菌株としてアジ化ナトリウ
ム処理条件を検討した。呼吸能の抑制効果を調べるため
YPG培地(イ−ストエキス1%、ペプトン2%、グリ
セロ−ル5%)を使用し、アジ化ナトリウム濃度を9段
階(0、5、10、20、30、40、50、100、
200ppm)に変えてそれぞれの生育程度を菌体沈澱
量の差として4段階評価した。結果を表1に示す。
甜菜製糖株式会社製)を供試菌株としてアジ化ナトリウ
ム処理条件を検討した。呼吸能の抑制効果を調べるため
YPG培地(イ−ストエキス1%、ペプトン2%、グリ
セロ−ル5%)を使用し、アジ化ナトリウム濃度を9段
階(0、5、10、20、30、40、50、100、
200ppm)に変えてそれぞれの生育程度を菌体沈澱
量の差として4段階評価した。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
【0015】アジ化ナトリウム濃度は50ppm以上で
呼吸能を完全に阻害することが分った。発酵能への影響
についてはYPD培地(イ−ストエキス1%、ペプトン
2%、グルコ−ス2%)を使用し、アジ化ナトリウム濃
度を7段階(40、50、60、70、80、90、1
00ppm)に変えてダ−ラム管へのガス捕集の有無に
よって判定したが、表2に示す通り、7段階のどの濃度
においてもガス捕集量に差は認められなかった。
呼吸能を完全に阻害することが分った。発酵能への影響
についてはYPD培地(イ−ストエキス1%、ペプトン
2%、グルコ−ス2%)を使用し、アジ化ナトリウム濃
度を7段階(40、50、60、70、80、90、1
00ppm)に変えてダ−ラム管へのガス捕集の有無に
よって判定したが、表2に示す通り、7段階のどの濃度
においてもガス捕集量に差は認められなかった。
【0016】
【表2】
【0017】上記の結果から、アジ化ナトリウム処理時
のアジ化ナトリウム濃度は50ppm以上が適当である
ことが判明した。アジ化ナトリウム存在下での発酵によ
る菌体生育の経日変化について、処理温度との関連性を
確認するため、50ppmのアジ化ナトリウムを含むY
PD培地を使用し、11℃〜19℃の間で濁度の変化を
600nmで経日的に測定した。結果を表3に示す。
のアジ化ナトリウム濃度は50ppm以上が適当である
ことが判明した。アジ化ナトリウム存在下での発酵によ
る菌体生育の経日変化について、処理温度との関連性を
確認するため、50ppmのアジ化ナトリウムを含むY
PD培地を使用し、11℃〜19℃の間で濁度の変化を
600nmで経日的に測定した。結果を表3に示す。
【0018】
【表3】
【0019】11℃〜13℃では1日目まで増殖が抑え
られているが、2日目には吸光度の上昇即ち増殖が認め
られ、2日目から4日目までは吸光度の変化は殆どな
い。14℃以上になると経日的に吸光度の上昇度合が漸
次高くなり、17℃以上では日数が経つにつれ吸光度の
上昇度が更に高まって増殖が旺盛になることが表3から
理解できる。
られているが、2日目には吸光度の上昇即ち増殖が認め
られ、2日目から4日目までは吸光度の変化は殆どな
い。14℃以上になると経日的に吸光度の上昇度合が漸
次高くなり、17℃以上では日数が経つにつれ吸光度の
上昇度が更に高まって増殖が旺盛になることが表3から
理解できる。
【0020】(実施例2)市販パン酵母「ニッテンイ−
スト」(日本甜菜製糖株式会社製)及び「VITAL−
Sドライイ−スト」(ドイツ DHW社(DEUTSC
HE HEFEWERKE GMBH)製)に由来する
パン酵母菌株を供試菌株として前培養時間の検討を行っ
た。上記の二つの菌株について、10mlYPD培地に
おける前培養を20、52、64、72時間行い、各々
を3000rpmの遠心分離操作で回収した。この回収
した各々を滅菌水10mlで2回洗浄した後10mlに
メスアップし、0.5mlずつ10本のネジ口付試験管
に分注し、各1本ずつについて、42℃から50℃まで
1℃毎の設定温度において何れも10分間の熱処理を行
い、YPD寒天培地で生菌数を測定した。この結果を表
4に示す。表4における生菌率%は、熱処理をしない場
合の生菌数を100%とした指数である。
スト」(日本甜菜製糖株式会社製)及び「VITAL−
Sドライイ−スト」(ドイツ DHW社(DEUTSC
HE HEFEWERKE GMBH)製)に由来する
パン酵母菌株を供試菌株として前培養時間の検討を行っ
た。上記の二つの菌株について、10mlYPD培地に
おける前培養を20、52、64、72時間行い、各々
を3000rpmの遠心分離操作で回収した。この回収
した各々を滅菌水10mlで2回洗浄した後10mlに
メスアップし、0.5mlずつ10本のネジ口付試験管
に分注し、各1本ずつについて、42℃から50℃まで
1℃毎の設定温度において何れも10分間の熱処理を行
い、YPD寒天培地で生菌数を測定した。この結果を表
4に示す。表4における生菌率%は、熱処理をしない場
合の生菌数を100%とした指数である。
【0021】
【表4】
【0022】前培養20時間では、ニッテンイ−スト菌
株もVITAL−S菌株も共に、44℃の熱処理によ
り、熱処理をしない時と較べて生菌数は6%或いは25
%まで急激に低下し、45℃では0%となった。一方、
前培養72時間では、ニッテンイ−スト菌株は44℃の
熱処理で生菌数は79%程度まで低下したが、VITA
L−S菌株では100%維持されており、48℃の熱処
理でもニッテンイ−スト菌株は9%、VITAL−S菌
株は20%の生菌数が残存していた。このことから、前
培養を72時間と長くした方が熱処理後の生菌数の確保
ができることが分かった。
株もVITAL−S菌株も共に、44℃の熱処理によ
り、熱処理をしない時と較べて生菌数は6%或いは25
%まで急激に低下し、45℃では0%となった。一方、
前培養72時間では、ニッテンイ−スト菌株は44℃の
熱処理で生菌数は79%程度まで低下したが、VITA
L−S菌株では100%維持されており、48℃の熱処
理でもニッテンイ−スト菌株は9%、VITAL−S菌
株は20%の生菌数が残存していた。このことから、前
培養を72時間と長くした方が熱処理後の生菌数の確保
ができることが分かった。
【0023】(実施例3)VITAL−S菌株の72時
間前培養を行ったものを種菌としてYPD培地に接種
し、増殖の再開と耐熱性の変化を調べた。結果を表5に
示す。
間前培養を行ったものを種菌としてYPD培地に接種
し、増殖の再開と耐熱性の変化を調べた。結果を表5に
示す。
【0024】
【表5】
【0025】増殖再開0分目から150分目まで30分
間隔でサンプリングを行い、また300分目にサンプリ
ングを行った。そして、増殖による600nmの吸光度
変化及び熱処理前後の生菌数の変化を調べた。熱処理条
件は46℃、10分間で行った。培養時間の経過と共に
吸光度は増加したが、90分までは熱処理前のコロニ−
数の変化はなかった。これは細胞の出芽による吸光度上
昇と推定される。熱処理後の生菌数は培養経過と共に低
下して90分では急激に低下し、培養再開150分では
生菌率は2.4%まで低下した。
間隔でサンプリングを行い、また300分目にサンプリ
ングを行った。そして、増殖による600nmの吸光度
変化及び熱処理前後の生菌数の変化を調べた。熱処理条
件は46℃、10分間で行った。培養時間の経過と共に
吸光度は増加したが、90分までは熱処理前のコロニ−
数の変化はなかった。これは細胞の出芽による吸光度上
昇と推定される。熱処理後の生菌数は培養経過と共に低
下して90分では急激に低下し、培養再開150分では
生菌率は2.4%まで低下した。
【0026】(実施例4)実施例1のアジ化ナトリウム
存在下での低温処理の検討において、緩慢ではあるが順
調な増殖が示された14℃を低温処理を行う温度に設定
した。また、実施例3の増殖再開と耐熱性変化の検討結
果から、増殖再開により熱処理前コロニ−数が2倍を超
えた時点でも熱処理による生菌数が0.7%残存してい
ることから、低温処理時間は3日以上行うことも可能で
あるが、変異誘発率が低い場合に、できるだけ温和な処
理条件で目的とする低温感受性変異株を取得できること
が本発明の利点であるので、低温処理は14℃、3日間
行い、熱処理条件は46℃、10分間行うこととした。
上記条件で、VITAL−Sドライイ−ストに由来する
パン酵母菌株を供試菌株として低温感受性菌株の取得を
検討した。
存在下での低温処理の検討において、緩慢ではあるが順
調な増殖が示された14℃を低温処理を行う温度に設定
した。また、実施例3の増殖再開と耐熱性変化の検討結
果から、増殖再開により熱処理前コロニ−数が2倍を超
えた時点でも熱処理による生菌数が0.7%残存してい
ることから、低温処理時間は3日以上行うことも可能で
あるが、変異誘発率が低い場合に、できるだけ温和な処
理条件で目的とする低温感受性変異株を取得できること
が本発明の利点であるので、低温処理は14℃、3日間
行い、熱処理条件は46℃、10分間行うこととした。
上記条件で、VITAL−Sドライイ−ストに由来する
パン酵母菌株を供試菌株として低温感受性菌株の取得を
検討した。
【0027】YPD培地2mlで30℃、2日間振とう
培養した菌体を3000rpm、3分間の遠心分離によ
り回収した後、滅菌水を2ml添加し洗浄した。この洗
浄操作を2回繰返した後、0.1M燐酸バッファ−(p
H7.0)2mlで菌体懸濁液とし、その1.7mlを
35×14mmのマイクロプレ−トに移し、エチルメタ
ンスルホン酸(EMS)35μlを添加後、マイクロプ
レ−トミキサ−で攪拌しながら、処理開始45分後から
15分間隔で0.2mlずつサンプリングし、5%チオ
硫酸ナトリウム液8mlに加えて変異処理を停止した。
菌体を3000rpm、3分間の遠心分離により回収し
た後、滅菌水を5ml添加し洗浄した。この洗浄操作を
2回繰返した後、呼吸欠損株の生育を抑制するためYP
G培地10mlで30℃、24時間振とう培養の後、Y
PD培地10mlで72時間振とう培養した。この菌体
を3000rpm,3分間の遠心分離により回収し、ア
ジ化ナトリウムの50ppm溶液10mlを添加して懸
濁した。この懸濁液1mlをアジ化ナトリウム50pp
m含有のYPD培地10mlに接種して、14℃におい
て72時間振とう培養を行った。振とう培養した菌体を
3000rpm,3分間の遠心分離により回収した後、
滅菌水10ml添加し2回洗浄した。この後、滅菌水1
mlを添加して懸濁し、この懸濁液1mlをネジ口試験
管に取り、46℃、10分間の熱処理を行った。熱処理
後の原液、10倍希釈液及び100倍希釈液をYPD寒
天培地に塗抹し、30℃、16時間培養し、平板上で小
さなコロニ−が形成されたことを確認した後、10℃の
恒温器に移し、4日間培養を行った。培養後周囲のコロ
ニ−よりも小さなコロニ−を釣菌し、10℃での液体発
酵力をInfluence of Dough Con
stituents on Fermentation
(Cereal Chemistry Vol.22
(1945))に記載の組成において発酵基質を10%
グルコ−スとしたもの(G10)を用いて測定し、24時
間後の炭酸ガス発生量が50mg以下の株を選択した。
VITAL−Sドライイ−ストを元株として上記操作に
より得られた菌株をサッカロミセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)NI
LS−1(以下、NILS−1と称する)と命名し、生
命工学工業技術研究所に寄託した(寄託番号FERM
P−14087)。
培養した菌体を3000rpm、3分間の遠心分離によ
り回収した後、滅菌水を2ml添加し洗浄した。この洗
浄操作を2回繰返した後、0.1M燐酸バッファ−(p
H7.0)2mlで菌体懸濁液とし、その1.7mlを
35×14mmのマイクロプレ−トに移し、エチルメタ
ンスルホン酸(EMS)35μlを添加後、マイクロプ
レ−トミキサ−で攪拌しながら、処理開始45分後から
15分間隔で0.2mlずつサンプリングし、5%チオ
硫酸ナトリウム液8mlに加えて変異処理を停止した。
菌体を3000rpm、3分間の遠心分離により回収し
た後、滅菌水を5ml添加し洗浄した。この洗浄操作を
2回繰返した後、呼吸欠損株の生育を抑制するためYP
G培地10mlで30℃、24時間振とう培養の後、Y
PD培地10mlで72時間振とう培養した。この菌体
を3000rpm,3分間の遠心分離により回収し、ア
ジ化ナトリウムの50ppm溶液10mlを添加して懸
濁した。この懸濁液1mlをアジ化ナトリウム50pp
m含有のYPD培地10mlに接種して、14℃におい
て72時間振とう培養を行った。振とう培養した菌体を
3000rpm,3分間の遠心分離により回収した後、
滅菌水10ml添加し2回洗浄した。この後、滅菌水1
mlを添加して懸濁し、この懸濁液1mlをネジ口試験
管に取り、46℃、10分間の熱処理を行った。熱処理
後の原液、10倍希釈液及び100倍希釈液をYPD寒
天培地に塗抹し、30℃、16時間培養し、平板上で小
さなコロニ−が形成されたことを確認した後、10℃の
恒温器に移し、4日間培養を行った。培養後周囲のコロ
ニ−よりも小さなコロニ−を釣菌し、10℃での液体発
酵力をInfluence of Dough Con
stituents on Fermentation
(Cereal Chemistry Vol.22
(1945))に記載の組成において発酵基質を10%
グルコ−スとしたもの(G10)を用いて測定し、24時
間後の炭酸ガス発生量が50mg以下の株を選択した。
VITAL−Sドライイ−ストを元株として上記操作に
より得られた菌株をサッカロミセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)NI
LS−1(以下、NILS−1と称する)と命名し、生
命工学工業技術研究所に寄託した(寄託番号FERM
P−14087)。
【0028】(実施例5)発酵による菌体生育条件を強
調するために脱酸素剤存在下での低温感受性株の取得を
検討した。VITAL−Sドライイ−ストに由来するパ
ン酵母菌株を元株として、YPD培地50mlで30
℃、2日間振とう培養した菌体を、3000rpm,3
分間の遠心分離により回収した後、滅菌水を50ml添
加し洗浄した。この洗浄操作を2回繰返した後、20m
lの菌体懸濁液としてシャ−レに移し、マグネチックス
タ−ラで攪拌しながら30Wの紫外線を約40cmの高
さから照射した。照射開始から10分間隔で1mlずつ
サンプリングして死滅率を調べた。照射40分で死滅率
が90%に達したため、照射40分の段階の菌体を遮光
下でYPD培地10mlに接種した後、72時間の変異
固定培養を行った。この菌体培養液1mlをシステイン
1000ppm添加YPD培地10mlに接種し、エア
バリア−性の袋にアネロメイト(日水製薬製)1セット
と共に封入して、14℃において72時間振とう培養を
行った。
調するために脱酸素剤存在下での低温感受性株の取得を
検討した。VITAL−Sドライイ−ストに由来するパ
ン酵母菌株を元株として、YPD培地50mlで30
℃、2日間振とう培養した菌体を、3000rpm,3
分間の遠心分離により回収した後、滅菌水を50ml添
加し洗浄した。この洗浄操作を2回繰返した後、20m
lの菌体懸濁液としてシャ−レに移し、マグネチックス
タ−ラで攪拌しながら30Wの紫外線を約40cmの高
さから照射した。照射開始から10分間隔で1mlずつ
サンプリングして死滅率を調べた。照射40分で死滅率
が90%に達したため、照射40分の段階の菌体を遮光
下でYPD培地10mlに接種した後、72時間の変異
固定培養を行った。この菌体培養液1mlをシステイン
1000ppm添加YPD培地10mlに接種し、エア
バリア−性の袋にアネロメイト(日水製薬製)1セット
と共に封入して、14℃において72時間振とう培養を
行った。
【0029】振とう培養した菌体を3000rpm、3
分間の遠心分離により回収した後、滅菌水を10ml添
加し2回洗浄した。この後、滅菌水1mlを添加して懸
濁し、その懸濁液1mlをネジ口試験管に取り、46
℃、10分間の熱処理を行った。熱処理後の原液、10
倍希釈液、100倍希釈液をYPD寒天培地に塗抹し、
30℃、16時間培養し、平板上で小さなコロニ−が形
成されたことを確認した後、10℃の恒温器に移し、4
日間培養を行った。培養後、周囲のコロニ−よりも小さ
なコロニ−を釣菌し、10℃での液体発酵力をInfl
uence ofDough Constituent
s on Fermentation(Cereal
Chemistry Vol.22(1945))に記
載の組成において発酵基質を10%グルコ−スとしたも
の(G10)を用いて測定し、24時間後の炭酸ガス発生
量が50mg以下の株を選択した。このようにして得ら
れたVITAL−Sドライイ−ストに由来する菌株をサ
ッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyce
s cerevisiae)NILS−2(以下、NI
LS−2と称する)と命名し、寄託した(寄託番号FE
RM P−14088)。
分間の遠心分離により回収した後、滅菌水を10ml添
加し2回洗浄した。この後、滅菌水1mlを添加して懸
濁し、その懸濁液1mlをネジ口試験管に取り、46
℃、10分間の熱処理を行った。熱処理後の原液、10
倍希釈液、100倍希釈液をYPD寒天培地に塗抹し、
30℃、16時間培養し、平板上で小さなコロニ−が形
成されたことを確認した後、10℃の恒温器に移し、4
日間培養を行った。培養後、周囲のコロニ−よりも小さ
なコロニ−を釣菌し、10℃での液体発酵力をInfl
uence ofDough Constituent
s on Fermentation(Cereal
Chemistry Vol.22(1945))に記
載の組成において発酵基質を10%グルコ−スとしたも
の(G10)を用いて測定し、24時間後の炭酸ガス発生
量が50mg以下の株を選択した。このようにして得ら
れたVITAL−Sドライイ−ストに由来する菌株をサ
ッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyce
s cerevisiae)NILS−2(以下、NI
LS−2と称する)と命名し、寄託した(寄託番号FE
RM P−14088)。
【0030】(実施例6)実施例4と同一の低温処理及
び熱処理条件を繰り返すことで人為的な変異処理を施さ
ずに、低温感受性菌株の集積が可能かどうかについて検
討した。供試菌株としてニッテンイ−ストを使用した。
YPD液体培地10mlで72時間振とう培養した菌体
を3000rpm、3分間の遠心分離により回収し、ア
ジ化ナトリウム50ppm溶液を10ml添加して懸濁
した。この懸濁液1mlをアジ化ナトリウム50ppm
含有のYPD培地10mlに接種して、14℃において
72時間振とう培養を行った。振とう培養した菌体を3
000rpm,3分間の遠心分離により回収した後、滅
菌水を10ml添加し2回洗浄した。この後、滅菌水1
mlを添加して懸濁し、この懸濁液1mlをネジ口試験
管に取り、46℃、10分間の熱処理を行った。熱処理
後の原液から0.1mlを取りYPD寒天培地に塗抹
し、30℃、16時間培養し、平板上で小さなコロニ−
が形成されたことを確認した後、10℃の恒温器に移
し、4日間培養を行った。培養後のコロニ−の大きさは
ほぼ均一であったため、熱処理後の原液0.5mlをY
PD培地10mlに接種し72時間前培養を行い、培養
後の菌体を使用し低温処理−熱処理のサイクルを10回
繰り返した。最終の熱処理後の原液0.1mlを塗抹
し、10℃で培養したYPD平板上で周囲のコロニ−よ
りも小さなコロニ−の形成が認められたため、それを釣
菌し、10℃での液体発酵力をInfluence o
f Dough Constituents on F
ermentation(Cereal Chemis
tryVol.22(1945))に記載の組成におい
て発酵基質を10%グルコ−スとしたもの(G10)を用
いて測定し、24時間後の炭酸ガス発生量が50mg以
下の株を選択した。ニッテンイ−ストを元株として上記
操作により得られた菌株をサッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisia
e)NILS−3(以下、NILS−3と称する)と命
名し、寄託した(寄託番号FERMP−14208)。
び熱処理条件を繰り返すことで人為的な変異処理を施さ
ずに、低温感受性菌株の集積が可能かどうかについて検
討した。供試菌株としてニッテンイ−ストを使用した。
YPD液体培地10mlで72時間振とう培養した菌体
を3000rpm、3分間の遠心分離により回収し、ア
ジ化ナトリウム50ppm溶液を10ml添加して懸濁
した。この懸濁液1mlをアジ化ナトリウム50ppm
含有のYPD培地10mlに接種して、14℃において
72時間振とう培養を行った。振とう培養した菌体を3
000rpm,3分間の遠心分離により回収した後、滅
菌水を10ml添加し2回洗浄した。この後、滅菌水1
mlを添加して懸濁し、この懸濁液1mlをネジ口試験
管に取り、46℃、10分間の熱処理を行った。熱処理
後の原液から0.1mlを取りYPD寒天培地に塗抹
し、30℃、16時間培養し、平板上で小さなコロニ−
が形成されたことを確認した後、10℃の恒温器に移
し、4日間培養を行った。培養後のコロニ−の大きさは
ほぼ均一であったため、熱処理後の原液0.5mlをY
PD培地10mlに接種し72時間前培養を行い、培養
後の菌体を使用し低温処理−熱処理のサイクルを10回
繰り返した。最終の熱処理後の原液0.1mlを塗抹
し、10℃で培養したYPD平板上で周囲のコロニ−よ
りも小さなコロニ−の形成が認められたため、それを釣
菌し、10℃での液体発酵力をInfluence o
f Dough Constituents on F
ermentation(Cereal Chemis
tryVol.22(1945))に記載の組成におい
て発酵基質を10%グルコ−スとしたもの(G10)を用
いて測定し、24時間後の炭酸ガス発生量が50mg以
下の株を選択した。ニッテンイ−ストを元株として上記
操作により得られた菌株をサッカロミセス・セレビシエ
(Saccharomyces cerevisia
e)NILS−3(以下、NILS−3と称する)と命
名し、寄託した(寄託番号FERMP−14208)。
【0031】(実施例7)NILS−1,2とそれぞれ
の元株(元株1とする)、NILS−3とその元株(元
株2とする)の合計5株について、0℃、5℃、10
℃、15℃、20℃、30℃における液体発酵試験を行
い、16時間後の炭酸ガス発生量を重量法で求めた。発
酵培地はInfluence of Dough Co
nstituents on Fermentatio
n(Cereal Chemistry Vol.22
(1945))に記載の組成において発酵基質を10%
グルコ−ス(G10)としたものを用いた。結果を図1及
び図2に示した。
の元株(元株1とする)、NILS−3とその元株(元
株2とする)の合計5株について、0℃、5℃、10
℃、15℃、20℃、30℃における液体発酵試験を行
い、16時間後の炭酸ガス発生量を重量法で求めた。発
酵培地はInfluence of Dough Co
nstituents on Fermentatio
n(Cereal Chemistry Vol.22
(1945))に記載の組成において発酵基質を10%
グルコ−ス(G10)としたものを用いた。結果を図1及
び図2に示した。
【0032】炭酸ガス発生量は、30℃においてはグル
コ−ス含量(2.5g/発酵容器)に対して理論値1.
22gにかなり近付いており、発酵は大方収まっている
状態と考えられる。30℃では、炭酸ガス発生量はNI
LS各株はそれぞれの元株とほぼ同等の値を示した。こ
の傾向は20℃においても見られた。15℃では、NI
LS−1とNILS−3はそれぞれの元株の37%及び
34%の炭酸ガス量であり、NILS−2は元株の45
%の炭酸ガス発生量と、相当のレベルまで低下した。更
に温度を下げた10℃では、NILS−1、NILS−
2、NILS−3はそれぞれの元株の18%、15%、
10%の炭酸ガス発生量に留まり、5℃では完全に発酵
が停止していた。
コ−ス含量(2.5g/発酵容器)に対して理論値1.
22gにかなり近付いており、発酵は大方収まっている
状態と考えられる。30℃では、炭酸ガス発生量はNI
LS各株はそれぞれの元株とほぼ同等の値を示した。こ
の傾向は20℃においても見られた。15℃では、NI
LS−1とNILS−3はそれぞれの元株の37%及び
34%の炭酸ガス量であり、NILS−2は元株の45
%の炭酸ガス発生量と、相当のレベルまで低下した。更
に温度を下げた10℃では、NILS−1、NILS−
2、NILS−3はそれぞれの元株の18%、15%、
10%の炭酸ガス発生量に留まり、5℃では完全に発酵
が停止していた。
【0033】図1及び図2に示される如く、NILS各
株の15℃での炭酸ガス発生量は元株に比し34%から
45%であり、20℃における値と比較すると明らかに
低下していることが認められる。そして、実施例4、実
施例5及び実施例6においては、それぞれ14℃に設定
して低温処理を行い、発酵能が抑制された菌株が取得さ
れていることを考え併せると、発酵能の低温感受性が示
される臨界点は15℃付近にあると推定される。
株の15℃での炭酸ガス発生量は元株に比し34%から
45%であり、20℃における値と比較すると明らかに
低下していることが認められる。そして、実施例4、実
施例5及び実施例6においては、それぞれ14℃に設定
して低温処理を行い、発酵能が抑制された菌株が取得さ
れていることを考え併せると、発酵能の低温感受性が示
される臨界点は15℃付近にあると推定される。
【0034】(実施例8)NILS−1、NILS−2
の2株とそれぞれの元株(元株1)、NILS−3とそ
の元株(元株2)について、4℃〜37℃の温度範囲に
おける温度勾配培養を行い、600nmにおける培養液
の吸光度を測定した。培地には1/2濃度のYPD培地
(イ−ストエキス0.5%、ペプトン1%、グルコ−ス
1%)を使用し、培養温度を段階的に変化して24時間
培養を行った。結果を図3及び図4に示した。NILS
−1は元株1に比べ20℃以下での生育が若干抑制され
る傾向は見られたが、NILS−2は元株1と類似して
いた。NILS−3も20℃以下での生育が元株2と類
似していた。即ち、NILS−1、NILS−2、NI
LS−3とも低温域での生育には元株と比べて大きな変
化はないことが分かった。また、NILS−3株は元株
2に比べ、増殖ピ−クを示す温度が低下し、30℃以上
の増殖も低下していた。全体として、NILS各株は元
株に比べ、増殖速度は遅くなる傾向が見られた。
の2株とそれぞれの元株(元株1)、NILS−3とそ
の元株(元株2)について、4℃〜37℃の温度範囲に
おける温度勾配培養を行い、600nmにおける培養液
の吸光度を測定した。培地には1/2濃度のYPD培地
(イ−ストエキス0.5%、ペプトン1%、グルコ−ス
1%)を使用し、培養温度を段階的に変化して24時間
培養を行った。結果を図3及び図4に示した。NILS
−1は元株1に比べ20℃以下での生育が若干抑制され
る傾向は見られたが、NILS−2は元株1と類似して
いた。NILS−3も20℃以下での生育が元株2と類
似していた。即ち、NILS−1、NILS−2、NI
LS−3とも低温域での生育には元株と比べて大きな変
化はないことが分かった。また、NILS−3株は元株
2に比べ、増殖ピ−クを示す温度が低下し、30℃以上
の増殖も低下していた。全体として、NILS各株は元
株に比べ、増殖速度は遅くなる傾向が見られた。
【0035】(実施例9)NILS−1,2とそれぞれ
の元株(元株1)、NILS−3とその元株(元株2)
の合計5株について、小麦粉100gに対しグルコ−ス
7.2g、生イ−スト4.3g、水57mlを含む菓子
パン中種生地を調整し、10℃における炭酸ガス発生量
をファ−モグラフによって測定した。生地の混捏はナシ
ョナルコンプリ−トミキサ−(National Mf
g.,Co.製)を使用して3分間行い、30gずつに
分割後、5℃で2時間冷却を行った後、10℃の温度で
5時間保存して経時的に炭酸ガス発生量を測定した。そ
の結果を表6に示した。
の元株(元株1)、NILS−3とその元株(元株2)
の合計5株について、小麦粉100gに対しグルコ−ス
7.2g、生イ−スト4.3g、水57mlを含む菓子
パン中種生地を調整し、10℃における炭酸ガス発生量
をファ−モグラフによって測定した。生地の混捏はナシ
ョナルコンプリ−トミキサ−(National Mf
g.,Co.製)を使用して3分間行い、30gずつに
分割後、5℃で2時間冷却を行った後、10℃の温度で
5時間保存して経時的に炭酸ガス発生量を測定した。そ
の結果を表6に示した。
【0036】
【表6】
【0037】NILS株を使用した全ての生地は、10
℃において元株よりも発酵能が抑制されていた。
℃において元株よりも発酵能が抑制されていた。
【0038】(実施例10)NILS−1を使用し、本
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、中種冷蔵法での食パン製造
試験を実施した。対照としては元株1を用いた。当日及
び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性についてはク
リ−プメ−タ− RE−3305(株式会社山電製)を
使用して測定した。硬さ及び弾力は発酵の強弱、発酵時
間によって変化し、発酵が進むにつれて低下する。この
ことから硬さ及び弾力は発酵の抑制度合の指標とするこ
とができる。製造されたパンは外観と内相を総合的に評
価して、良好、並、不良の3段階の基準により評価し
た。配合及び工程条件については表7、評価については
表8にまとめた。
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、中種冷蔵法での食パン製造
試験を実施した。対照としては元株1を用いた。当日及
び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性についてはク
リ−プメ−タ− RE−3305(株式会社山電製)を
使用して測定した。硬さ及び弾力は発酵の強弱、発酵時
間によって変化し、発酵が進むにつれて低下する。この
ことから硬さ及び弾力は発酵の抑制度合の指標とするこ
とができる。製造されたパンは外観と内相を総合的に評
価して、良好、並、不良の3段階の基準により評価し
た。配合及び工程条件については表7、評価については
表8にまとめた。
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】NILS−1を使用した場合には中種冷蔵
2週間目であっても中種の過剰な発酵が抑制されている
ことから、発酵による生地の物理性の変化は少なく、並
程度に評価され得る食パンを製造できることが分かっ
た。これにより工程条件でも理解される通り、所要時間
として4時間必要な中種発酵の後に低温保存できること
になり、早朝作業の解消を始め製パン作業の軽減に大き
く寄与することが考えられる。
2週間目であっても中種の過剰な発酵が抑制されている
ことから、発酵による生地の物理性の変化は少なく、並
程度に評価され得る食パンを製造できることが分かっ
た。これにより工程条件でも理解される通り、所要時間
として4時間必要な中種発酵の後に低温保存できること
になり、早朝作業の解消を始め製パン作業の軽減に大き
く寄与することが考えられる。
【0042】(実施例11)NILS−2を使用し、本
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、中種冷蔵法での菓子パン製
造試験を実施した。対照として元株1を用いた。当日及
び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性についてはク
リ−プメ−タ−を使用して測定した。製造されたパンは
外観と内相を総合的に評価して、良好、並、不良の3段
階の基準により評価した。配合及び工程条件については
表9、評価については表10にまとめた。
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、中種冷蔵法での菓子パン製
造試験を実施した。対照として元株1を用いた。当日及
び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性についてはク
リ−プメ−タ−を使用して測定した。製造されたパンは
外観と内相を総合的に評価して、良好、並、不良の3段
階の基準により評価した。配合及び工程条件については
表9、評価については表10にまとめた。
【0043】
【表9】
【0044】
【表10】
【0045】NILS−2を使用した場合には中種冷蔵
2週間目であっても中種の過剰な発酵が抑制されている
ことから、発酵による生地の物理性の変化は少なく、並
程度に評価され得る菓子パンを製造できることが分かっ
た。これにより工程条件でも理解される通り、所要時間
として2.5時間必要な中種発酵の後に低温保存できる
こととなり、早朝作業の解消を始め製パン作業の軽減に
大きく寄与することが考えられる。またNILS−1と
NILS−2は同一の元株に由来する株であることから
双方とも食パンと菓子パンの両方を製造可能な性能を有
していると推定される。
2週間目であっても中種の過剰な発酵が抑制されている
ことから、発酵による生地の物理性の変化は少なく、並
程度に評価され得る菓子パンを製造できることが分かっ
た。これにより工程条件でも理解される通り、所要時間
として2.5時間必要な中種発酵の後に低温保存できる
こととなり、早朝作業の解消を始め製パン作業の軽減に
大きく寄与することが考えられる。またNILS−1と
NILS−2は同一の元株に由来する株であることから
双方とも食パンと菓子パンの両方を製造可能な性能を有
していると推定される。
【0046】(実施例12)NILS−1を使用し、本
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、生地玉冷蔵法でのバタ−ロ
−ル製造試験を実施した。対照として元株1を用いた。
当日及び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性につい
てはクリ−プメ−タ−を使用して測定した。製造された
パンは外観と内相を総合的に評価して、良好、並、不良
の3段階の基準により評価した。配合及び工程条件につ
いては表11、評価については表12にまとめた。
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、生地玉冷蔵法でのバタ−ロ
−ル製造試験を実施した。対照として元株1を用いた。
当日及び低温保存後の生地の硬さと弾力の物理性につい
てはクリ−プメ−タ−を使用して測定した。製造された
パンは外観と内相を総合的に評価して、良好、並、不良
の3段階の基準により評価した。配合及び工程条件につ
いては表11、評価については表12にまとめた。
【0047】
【表11】
【0048】
【表12】
【0049】NILS−1を使用した場合には中種冷蔵
2週間目であっても発酵による生地の物理性の変化は少
なく、焼き色もほぼ良好な並程度に評価され得るバタ−
ロ−ルを製造できることが分かった。これにより2週間
までの低温保存期間であれば冷凍生地を調整せずにパン
生地を保存することが可能となり、それにより生地に凍
結障害を発生させる懸念がなく良質なパンを提供するこ
とが可能となる。
2週間目であっても発酵による生地の物理性の変化は少
なく、焼き色もほぼ良好な並程度に評価され得るバタ−
ロ−ルを製造できることが分かった。これにより2週間
までの低温保存期間であれば冷凍生地を調整せずにパン
生地を保存することが可能となり、それにより生地に凍
結障害を発生させる懸念がなく良質なパンを提供するこ
とが可能となる。
【0050】(実施例13)NILS−3を使用し、本
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、生地冷蔵でのデニッシュペ
ストリ−の製造試験を実施した。対照として元株2を用
いた。評価はペストリ−製造工程の作業性についても判
定した。製造されたペストリ−は外観と内相を総合的に
評価して、良好、並、不良の3段階の基準により評価
し、硬さ、ガム性、凝集性、付着性などのテクスチャ−
についてはクリ−プメ−タ−を使用して測定した。硬さ
は数値が高いほど固い食感であることを示す。歯ざわり
の指標となるガム性、歯切れの指標となる凝集性、歯へ
の粘りの指標となる付着性は数値が低いほど歯切れが良
く軽い食感になる。配合及び工程条件については表1
3、評価については表14と表15にまとめた。
手法によって育成される酵母菌株の低温における発酵能
低下を利用することにより、生地冷蔵でのデニッシュペ
ストリ−の製造試験を実施した。対照として元株2を用
いた。評価はペストリ−製造工程の作業性についても判
定した。製造されたペストリ−は外観と内相を総合的に
評価して、良好、並、不良の3段階の基準により評価
し、硬さ、ガム性、凝集性、付着性などのテクスチャ−
についてはクリ−プメ−タ−を使用して測定した。硬さ
は数値が高いほど固い食感であることを示す。歯ざわり
の指標となるガム性、歯切れの指標となる凝集性、歯へ
の粘りの指標となる付着性は数値が低いほど歯切れが良
く軽い食感になる。配合及び工程条件については表1
3、評価については表14と表15にまとめた。
【0051】
【表13】
【0052】
【表14】
【0053】
【表15】
【0054】NILS−3を使用した場合には低温保存
2週間目であっても並程度に評価され得るペストリ−を
製造でき、その食感も当日品とさほど変わりなく、歯切
れの良い軽い食感を維持していることが分かった。ま
た、油脂のロ−ルイン工程で生地発酵が抑制されるため
均質な層を形成することが可能となり、低温保存が可能
という利点以外にも、良質なペストリ−を製造できると
いう画期的な特性を持つことが分かった。
2週間目であっても並程度に評価され得るペストリ−を
製造でき、その食感も当日品とさほど変わりなく、歯切
れの良い軽い食感を維持していることが分かった。ま
た、油脂のロ−ルイン工程で生地発酵が抑制されるため
均質な層を形成することが可能となり、低温保存が可能
という利点以外にも、良質なペストリ−を製造できると
いう画期的な特性を持つことが分かった。
【0055】
【発明の効果】サッカロミセス・セレビシエに属するパ
ン酵母を、突然変異処理を施していない菌株叉は突然変
異処理した菌株について、アジ化ナトリウム叉は脱酸素
剤の存在下で低温処理を行った後、熱処理により低温活
性を有する菌株を選択的に死滅させる方法によって、低
温感受性株を簡便に効率よく分離選択することが出来
た。そして取得した酵母を用いてパン生地を調整し、こ
れを低温保存後パンを製造して良品質の製品を得ること
が出来た。
ン酵母を、突然変異処理を施していない菌株叉は突然変
異処理した菌株について、アジ化ナトリウム叉は脱酸素
剤の存在下で低温処理を行った後、熱処理により低温活
性を有する菌株を選択的に死滅させる方法によって、低
温感受性株を簡便に効率よく分離選択することが出来
た。そして取得した酵母を用いてパン生地を調整し、こ
れを低温保存後パンを製造して良品質の製品を得ること
が出来た。
【0056】
【図1】NILS−1、NILS−2並びに元株1の液
体発酵試験を行い、16時間後の炭酸ガス発生量(m
g)を求めた結果をまとめたものである。
体発酵試験を行い、16時間後の炭酸ガス発生量(m
g)を求めた結果をまとめたものである。
【図2】NILS−3並びに元株2の液体発酵試験を行
い、16時間後の炭酸ガス発生量(mg)を求めた結果
をまとめたものである。
い、16時間後の炭酸ガス発生量(mg)を求めた結果
をまとめたものである。
【図3】NILS−1、NILS−2並びに元株1の温
度勾配培養を行い、培養液の吸光度を測定した結果をま
とめたものである。
度勾配培養を行い、培養液の吸光度を測定した結果をま
とめたものである。
【図4】NILS−3、並びに元株2の温度勾配培養を
行い、培養液の吸光度を測定した結果をまとめたもので
ある。
行い、培養液の吸光度を測定した結果をまとめたもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI //(C12N 1/18 C12R 1:865) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 1/00 - 7/08 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)
Claims (8)
- 【請求項1】 サッカロミセス・セレビシエに属するパ
ン酵母菌株を、アジ化ナトリウムの存在下10〜15℃
の温度で2〜7日間培養する低温処理を行った後、43
〜48℃の温度で培養して低温活性を有する菌株を選択
的に死滅させることを特徴とする低温感受性パン酵母菌
株の取得方法。 - 【請求項2】 サッカロミセス・セレビシエに属するパ
ン酵母菌株を、脱酸素剤の存在下10〜15℃の温度で
2〜7日間培養する低温処理を行った後、43〜48℃
の温度で培養して低温活性を有する菌株を選択的に死滅
させることを特徴とする低温感受性パン酵母菌株の取得
方法。 - 【請求項3】 サッカロミセス・セレビシエに属するパ
ン酵母菌株を、アジ化ナトリウムの存在下10〜15℃
の温度で2〜7日間培養する低温処理を行った後、43
〜48℃の温度で培養して低温活性を有する菌株を選択
的に死滅させて得られる低温感受性パン酵母菌株。 - 【請求項4】 サッカロミセス・セレビシエに属するパ
ン酵母菌株を、脱酸素剤の存在下10〜15℃の温度で
2〜7日間培養する低温処理を行った後、43〜48℃
の温度で培養して低温活性を有する菌株を選択的に死滅
させて得られる低温感受性パン酵母菌株。 - 【請求項5】 サッカロミセス・セレビシエFERM
P−14087、サッカロミセス・セレビシエFERM
P−14088、サッカロミセス・セレビシエFER
M P−14208から選択される低温感受性パン酵母
菌株。 - 【請求項6】 請求項3ないし5のいずれか1項に記載
の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製したパン生地を
低温保存する方法。 - 【請求項7】 請求項3ないし5のいずれか1項に記載
の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製した低温保存可
能なパン生地。 - 【請求項8】 請求項3ないし5のいずれか1項に記載
の低温感受性パン酵母菌株を用いて調製したパン生地を
低温保存した後、パンを製造することからなるパンの製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6081098A JP2943044B2 (ja) | 1994-03-29 | 1994-03-29 | 低温感受性を有するパン酵母及びパン製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP6081098A JP2943044B2 (ja) | 1994-03-29 | 1994-03-29 | 低温感受性を有するパン酵母及びパン製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07265061A JPH07265061A (ja) | 1995-10-17 |
JP2943044B2 true JP2943044B2 (ja) | 1999-08-30 |
Family
ID=13736919
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP6081098A Expired - Fee Related JP2943044B2 (ja) | 1994-03-29 | 1994-03-29 | 低温感受性を有するパン酵母及びパン製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2943044B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102168992B1 (ko) * | 2018-09-04 | 2020-10-22 | 정창민 | 막걸리 장기 보존을 위한 신규 효모 균주 |
-
1994
- 1994-03-29 JP JP6081098A patent/JP2943044B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07265061A (ja) | 1995-10-17 |
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Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |