JP2938624B2 - ヒートシール性を備えた包装用シート及び包装用シート積層体 - Google Patents

ヒートシール性を備えた包装用シート及び包装用シート積層体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は高いヒートシール強度
が得られるヒートシール可能な食品包装用シート及び包
装用シート積層体に係り、例えばヒートシール法によっ
て製袋し、この中に生肉、魚肉、加工肉等の肉を直接に
充填して包装するのに適する食品包装用シート及び包装
用シート積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】肉を充填する包装材料としては、例えば
特公昭63−38480号に多数の米国特許が紹介され
ている。特に各種麻繊維紙に希薄ビスコースを含浸、乾
燥、再生し、チューブ状に形成してから、高濃度ビスコ
ースを飽充して、再生セルロース膜に紙が埋め込まれた
袋状の包装材料が提案され、広く我が国でも使用されて
きた。
【0003】この種の包装材料に関しては、例えば、希
薄ビスコース加工の代りに耐アルカリ性強度付与製品を
添加して抄紙する(特公昭45−3948号)等の変法
も多数提案されている。
【0004】しかし、これらのチューブ形成法は複雑な
作業で手間と費用がかかるため、ヒートシール法で所定
の形状に形成、接合できる肉を充填する際にも接合部で
破袋することのない高いヒートシール強度の得られるシ
ート材料が望まれるようになった。
【0005】特公平2−42959号では、パルプ化天
然植物繊維やレーヨン等の親水性繊維からなる層(A
層)と、疎水性でかつヒートシール性を有する熱可塑性
繊維(B層)と前記A層からなる混抄層の米坪量24g
/m2 の抄き合わせ紙の少なくとも一面にビスコース加
工を施した加工紙が提案されている。
【0006】特開昭59−228100号にはポリエス
テル繊維からなる第一層と、低融点成分を少なくとも一
部に有する繊維と、ポリエステル繊維とからなる第二層
を積層一体化したヒートシール強度が得られる合成紙が
提案されている。
【0007】又、最近はパルプ化天然繊維植物繊維主体
の紙に、ビスコースを塗布又は含浸し、直ちにセロハン
等を重ね合わせて引き続き乾燥、再生、水洗、乾燥等を
経て、ビスコース由来の再生セルロースを接着剤とする
積層体シートがヒートシール性を有しない肉の包装材料
として既に実用化されている。
【0008】ヒートシール性を有するビスコース加工紙
は、ヒートシールによって接着剤を使用しないで高速で
自動製袋ができ、ビスコース加工により付着した再生セ
ルロースにより紙の耐水強度や繊維間強度、紙層間強度
が改善され、紙粉や繊維の脱落が大幅に減少する等の利
点が期待される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
2−42959等の従来の技術では期待された利点が発
揮されず、特公平2−42959ではヒートシール強度
が例えば0.320Kg/15mmと低いものであった。
又、製袋後に加工肉製品を充填する(押し込む)には
0.6Kg/15mm以上のシール強度を必要とする場合
が多いため、従来のものでは、充填時に破断が発生する
場合があった。
【0010】他方、一部に低融点成分を有する合成高分
子繊維は、熱と圧力によって相互に融合接着するため、
耐水強度や繊維間強度、紙層間強度が改善された状態で
は、こわばって扱い難く、例えば肉を充填する(押し込
む)際に作業性が劣る結果となる。
【0011】この発明は前記従来の技術の問題点を解消
するためになされたものであって、従来のビスコース加
工の利点は残したままヒートシール強度を大きく改善し
た食品包装用シート材料、例えば加工肉製品を充填する
際に作業性が劣る原因となるこわばりが無く、且つ高い
ヒートシール強度が得られる食品包装用ヒートシール材
料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明は、低融点で苛
性アルカリによって容易に加水分解する成分を少なくと
も表面の一部に有する繊維を第一の繊維とし、パルプ化
天然植物繊維を第二の繊維とし、少なくとも一つの層は
前記第一及び第二の繊維とを主成分とし、残りの層は少
なくとも第一の繊維を主成分とし、前記一の層と残りの
層とに存在する主成分の重量比率が異なる2層以上から
構成され、すべての層に再生セルロースが含浸付着され
ていることをその要旨とするものである。
【0013】第一の繊維としてはヒートシールによって
高い接着力が得られるとともにシール部分に収縮やこじ
わの発生が少ない点からポリエステル系繊維が好まし
い。ポリエチレンテレフタレートと、共重合ポリエステ
ルの芯鞘構造複合繊維が最も良い。
【0014】すなわち、第一の繊維は、複合繊維化され
ていることが好ましく、組み合わせる繊維成分としては
高融点成分がヒートシールによって著しい劣化、特に強
度低下を生じない程度に低融点成分との間に融点及び軟
化点の差があることが好ましい。又、複合繊維の形態は
芯鞘構造以外サイドバイサイド構造でも良い。
【0015】この発明でいう第一の繊維での低融点と
は、食品業界で使用されているヒートシール機で軟化あ
るいは溶融する温度特性を持つものをいう。又、苛性ア
ルカリによって容易に加水分解するとは苛性ソーダ水溶
液の濃度が0.1〜10%で加水分解が進むものをいい、特
に室温で浸漬し、液から引き上げて加温する程度の作用
で表面光沢が低下する程度の作用を受けることが好まし
い。
【0016】又、第一の繊維の低融点成分とは、高分子
物質であって分子にエステル結合を有するものが良い。
エステル基には0.1 〜10%苛性ソーダ水溶液で容易に加
水分解するものが多く、特にその種類は限定するもので
はない。分子の主鎖にエステル基をもつものとしては各
種の共重合ポリエステルがあり、高融点成分であるポリ
エチレンテレフタレートと組み合わせて複合繊維とする
のに適している。共重合ポリエステルとしては、酸成分
としてテレフタール酸、イソフタル酸、セバシン酸、5
−スルホイソフタル酸金属塩等のジカルボン酸から2種
又はそれ以上を組み合わせる。あるいはジオール成分と
してエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,
4ブタンジオール、ポリエチレングリコール等から2種
又はそれ以上を組み合わせる。つや消剤、滑り剤等は包
装材料としての用途に由来する制約の許容する範囲内で
添加して良い。
【0017】なお、低融点成分として、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン、塩化ビニールポリアミド等のアルカ
リ非加水分解性主鎖を有する高分子が用いられると、ビ
スコース加工後にヒートシール強度が充分に高くならな
い。
【0018】繊維の太さは0.5〜5d(デニール)、
好ましくは1〜3dが良い。繊維の長さは2〜12mm、
好ましくは3〜9mmが良い。繊維に巻縮はないものが良
いが、サイドバイサイド型複合繊維にしばしば発現する
うねりは差し支えない。
【0019】層状構造はヒートシール可能な包装材料に
必要なシール強度が得られるようにするためにはヒート
シールされる面、又はこれに近接した層には第一の繊維
が高い率で含有されていなければならない。第一の繊維
を高率に含有した層はポーラスになり易く、従って、可
塑性の内容物を包装したり、又、印刷や印字をするには
適さない。これを改善するために他方の面は第二の繊維
としてパルプ化植物天然繊維を高い率で含有し、より緻
密な層を形成するのが良い。
【0020】第二の繊維は叩解可能であり、叩解度と含
有率によって緻密の程度を調節できる。第二の繊維とし
ては、マニラ麻、サイザル麻、N・BKP、L・BK
P、U・KP、リンター、ケナフ、みつまた、楮、雁
皮、その他木材パルプ等が挙げられる。
【0021】再生セルロースの付着量は包装用シート単
体の場合は0.1〜5%の範囲で良い。これは第二の繊
維の含有率によっても変化する。しかしながら積層体に
する場合には著しく大量の付着量を必要とする。
【0022】流動性の有る内容物を包装するためには、
少なくとも一部分にさらに緻密な層を設ける必要があ
る。このために非ヒートシール層にセロハン等のセルロ
ース系フィルムと積層し、張合わせる構造が提案されて
いる。本発明の請求項1のシートにビスコースを適当に
希釈して含浸し、過剰液を除去してから、セロハン等の
セルロース系フィルムと積層し、凝固再生すると、積層
接着される。この接着力はシート表面の第二の繊維含有
率が高い方が強固なのでこの第二の繊維含有率が高い層
の面を選ぶ。第二の繊維含有率が高い層を以下この発明
では非ヒートシール層といい、第二の繊維含有率が低い
層を易ヒートシール層という。
【0023】第一の繊維と第二の繊維重量比は、非シー
トシール層は、 第一の繊維:第二の繊維=2〜45:98〜55 易ヒートシール層は、 第一の繊維:第二の繊維=71〜100:29〜0 がよい。
【0024】ヒートシール接合の強度は、接合された表
面間の接着強度、紙層間の接着強度、及び各紙層内の繊
維間接着強度、各層の引張強度等によって決まる。非ヒ
ートシール層にも第一の繊維が多く含有されている程、
各層の引張強度や易ヒートシール層との層間強度がヒー
トシールによって強化される度合が大きく、強い接合強
度が得られる。また,第一の繊維の全量もヒートシール
接合の強度に影響が有り、10g/m2 未満では著しく
弱い接合になる。
【0025】本発明は全紙層内に含まれる第一の繊維の
合計量が少なくてはヒートシール部にかかる「剥離力」
等の外力による破壊に対する抵抗力が不充分で不充分な
ヒートシール強度しか得られない。第一の繊維の合計量
としては1m2 あたり10g以上が必要である。
【0026】本発明の目的の一つに、2層抄合せ紙をビ
スコース含浸した後であって乾燥や再生をする前に、セ
ルロース系フィルム特に再生セルロースフィルムすなわ
ちセロハンを、紙の第二の繊維を多く含有する紙層の面
に重ね合わせ、これに引き続いて乾燥、凝固、再生、洗
浄、乾燥等の通常のビスコース加工に含まれる工程を適
宜に施して抄合せ紙−セルロース系フィルム積層体を得
ることが含まれる。
【0027】セロハン等を重ね合わせる面の紙層に第二
の繊維が含まれないか、または少ない場合には、再生セ
ルロースの付着が劣り、セロハンとの接着もできないか
実用的強度が得られない。
【0028】ビスコース含浸又は塗布による再生セルロ
ースの付着量は、セロハン等を積層する場合には大量に
なる。又、包装の目的により紙層を補強するだけのタイ
プから、紙層が再生セルロース膜で埋込まれる程に莫大
な量のタイプがある。
【0029】
【作用】本発明による製品は袋状等に形成し、ヒートシ
ールとして接合部分を封じた後も曲げやずれへの柔軟性
をシール部分以外は必要とするため、第一の繊維の低融
点部分を溶融することは避けるが、その結果として層間
接着強度が通常の紙よりも低くなるがビスコース希釈液
を用いているため、再生セルロースで全ての層が含浸被
覆されて、層間及び層内の繊維間接着が強化される。第
一の繊維が高率で含有されるヒートシール層にも第二の
繊維が含有されると、これに再生セルロースが強固に付
着し、繊維間及び層間の接着が更に強化される。
【0030】非ヒートシール層にも第一の繊維が多く含
有されている程、ヒートシール層との層間強度がヒート
シールによって強化される度合が大きくなり、強い接合
強度が得られる。
【0031】包装用シート積層体はその非ヒートシール
層が再生セルロースを介してセルロース系フィルムと接
着されているが、この積層体ではビスコース由来の再生
セルロースが抄合せ紙とセロハン等との強い接着剤とし
て機能する。
【0032】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明はどの紙
層にも第一の繊維が含まれると、再生セルロースにより
繊維間および紙層間の接着が改善されて、製袋工程や食
品の充填の際、及び包装終了後の運搬その他の取扱時の
紙層割れや、破断のトラブル発生を阻止する効果があ
る。このためには易ヒートシール層にも2%以上の第二
の繊維が含まれることが好ましい。又、すべての層に再
生セルロースが含浸付着されているため、紙の耐水強
度、繊維間強度、紙層間強度を改善することができ、紙
粉や繊維の脱落が大幅に減少する等の効果があるととも
に、すべての層に再生セルロースが含浸付着されている
ため、吸水性をなくすことができる。又、どの紙層にも
第一の繊維が含まれていると、接合される2枚のシート
のヒートシールされた部分の紙層間だけでなく、その他
の部分の紙層間も接着が改善されて、結果として製袋し
て充填包袋後の破袋強度に関連するヒートシール部近傍
の剥離強度の向上が認められる場合がある。
【0033】
【実施例】低融点(低軟化点)成分と高融点成分の複合
繊維と、パルプ化天然繊維を、表1の易ヒートシール層
の欄の重量比率でビータに投入し、水性スラリーを調整
した。非イオン系の分散助剤を適宜使用した。さらに、
他のビーターを用意し、表1の非ヒートシール層の欄の
重量比率で上記の複合繊維とパルプ化天然植物繊維、又
はその一方の水性スラリーを調整した。
【0034】この2種のスラリーを別個の流送経路で、
2槽の円網抄紙機に流送して、易ヒートシール層と非ヒ
ートシール層の2層の抄合せ紙を表2の坪量で抄造し
た。なお、乾燥にはヤンキー式乾燥筒を使用した。
【0035】次に常法により溶解パルプから調整した
6.5重量%セルロースと、6%の苛性ソーダを含む熟
成度の若いビスコースを薄い苛性ソーダ水溶液で希釈
し、ロールコータを用いて抄合せ紙の非ヒートシール面
から再生セルロース付着量が5g/m2 になるように塗
布し、さらに、この面に30g/m2 の重さのセロハン
を重ねて乾燥し、次に希硫酸乃至硫酸ソーダ浴で再生
し、水洗、乾燥して包装用シート積層体を造った。
【0036】又、比較例として、表1及び表2の易ヒー
トシール層の欄の重量比率及び非ヒートシール層の欄の
重量比率で実施例と同様に抄き合せ紙、あるいは包装用
シート積層体を造った。
【0037】[ヒートシール強度]ヒートシール強度は
抄合せ紙及び包装用シート積層体を20°C、65%R
Hの雰囲気に放置した後に、2枚を易ヒートシール層同
士が接するように重ね合わせて、紙の縦方向及び横方向
にヒートシーラ(生産機)に挿入し、シールを行った。
この接合部を接合部の延びる方向と直交方向に幅15mm
の試験片を採取し、20°C、65%RHの雰囲気と一
夜放置してから、JISP8113に準じて定速伸長型
引張試験機を用いて引き剥がす最大応力を求め、ヒート
シール強度とした。その結果を表3に示す。
【0038】このヒートシーラーを用いて積層体の筒状
の袋を試作し、筒の径に合わせてカットした塩漬け肉の
塊を押込んだところ、実施例の1,2,3,4,5の袋
は破袋しなかったが、比較例1は35%、比較例2は2
3%、比較例3は9%、比較例4は50%以上が破袋し
た。
【0039】実施例1,2,3,4,5の肉入り袋はス
モークも正常に行われたが比較例1,2,3,4は充分
に行うことができなかった。なお、表1において、共重
合ポリエステル複合とは、共重合ポリエステル(軟化接
着温度110°C)を鞘、ポリエチレンフレフタレート
を芯とするもので、太さ2d、繊維長5mmの複合繊維で
ある。
【0040】又、低融点ポリオレフィンPP複合とは、
共重合ポリオレフィン(軟化接着温度110°C)を
鞘、ポリプロピレンを芯とするもので、太さ2d、繊維
長5mmの複合繊維である。
【0041】又、表3において比較例3の積載不能と
は、セロハンが非ヒートシール面にもヒートシール面に
も積層接着できず、包装用シート積層体ができなかった
ことをいう。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D21H 5/00 G 5/20 F (72)発明者 遠藤 明太郎 岐阜県美濃市前野422番地 大福製紙株 式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−122452(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B65D 65/40 B32B 5/26 D01F 8/14 D21H 27/30 D21H 15/10

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 低融点で苛性アルカリによって容易に加
    水分解する成分を少なくとも表面の一部に有する繊維を
    第一の繊維とし、パルプ化天然植物繊維を第二の繊維と
    し、少なくとも一つの層は前記第一及び第二の繊維とを
    主成分とし、残りの層は少なくとも第一の繊維を主成分
    とし、前記一の層と残りの層とに存在する主成分の重量
    比率が異なる2層以上から構成され、すべての層に再生
    セルロースが含浸付着されているヒートシール性を備え
    た包装用シート。
  2. 【請求項2】 第一の繊維が共重合ポリエステルとポリ
    エチレンテレフタレートの複合繊維である請求項1に記
    載のヒートシール性を備えた包装用シート。
  3. 【請求項3】 第一の繊維と第二の繊維との重量比率が
    異なる層は2層であり、その一方の層と他方の層とのそ
    れぞれの繊維の重量比率は、一方の層では、 第一の繊維:第二の繊維=2〜45:98〜55 であり、他方の層では、 第一の繊維:第二の繊維=71〜100:29〜0 であり、全部の層に含まれる第一の繊維の合計の量が1
    0g/m2 以上であることを特徴とする請求項1又は請
    求項2の内いずれかに記載のヒートシール性を備えた包
    装用シート。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の包装
    用シートにおいて、第二の繊維の含有比率が大きい層
    が、再生セルロースを介してセルロース系フィルムと接
    着されていることを特徴とするヒートシール性を備えた
    包装用シート積層体。
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