JP2937149B2 - ポリエステルフィルムの延伸方法 - Google Patents

ポリエステルフィルムの延伸方法

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JP2937149B2 JP29883196A JP29883196A JP2937149B2 JP 2937149 B2 JP2937149 B2 JP 2937149B2 JP 29883196 A JP29883196 A JP 29883196A JP 29883196 A JP29883196 A JP 29883196A JP 2937149 B2 JP2937149 B2 JP 2937149B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面改質されたポ
リエステルフィルムの延伸方法に関するものである。さ
らに詳しくは、厚み均質性にすぐれ且つ表面改質された
ポリエステルフィルムを、すぐれた生産性のもとに延伸
する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルフィルムを長手方向に延伸
した後、表面改質のためにポリエステル水溶液または水
分散液を塗布し、さらに幅方向に延伸することは、従来
から広く行なわれている。
【0003】しかしながら、長手方向に延伸したポリエ
ステルフィルムに、ポリエステル水溶液または水分散液
を塗布した後、さらに幅方向に延伸する方法において
は、表面改質は可能ではあるが、厚みむらの大きいフィ
ルムしか得られないことが多いという問題があった。
【0004】そして、上記の厚みむらが招かれる主たる
原因は、生産性向上の観点から、ポリエステル水溶液ま
たは水分散液が完全に乾燥しない内にフィルムを延伸す
ることによるものである。また、他の原因としては、フ
ィルムのクリップ汚れを心配して、ポリエステル水溶液
または水分散液をテンタークリップが把持する部分近傍
には塗布しないこと、つまりフィルムの幅方向に全面に
塗布しないことが挙げられる。
【0005】すなわち、上記のようにポリエステル水溶
液または分散液の塗布面積が少ないと、幅方向の延伸時
の予熱工程において、塗布部分のフィルム温度は水の蒸
発潜熱のために昇温しないが、非塗布部のフィルム温度
はほぼ予熱温度まで昇温されるため、このように幅方向
に温度分布のある状態で幅方向の延伸を行う場合には、
塗布部と非塗布部の境界で延伸の程度に差が生じ、境界
部での延伸が過大に起っていわゆる過延伸となり、フィ
ルム破れが多発したり、たとえ延伸できても厚みむらの
悪いフィルムしか得られないのである。
【0006】したがって、従来では、ポリエステル水溶
液または分散液を塗布した部分の水を完全に蒸発させ、
しかも塗布部の温度を非塗布部の温度と同じように昇温
させてから、幅方向の延伸を行う必要があり、このため
に製膜の速度が低下し、生産性が悪いばかりか、大幅な
コストアップにつながっていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した従
来技術における問題点の解決を課題として検討した結果
達成されたものである。
【0008】したがって、本発明の目的は、厚み均質性
にすぐれ且つ表面改質されたポリエステルフィルムを、
すぐれた生産性のもとに延伸する方法を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明のポリエステルフィルムの延伸方法は、実質
的に配向・結晶化していないポリエステルフィルムを
い、長手方向に一段階目の延伸をすることによりスタッ
ク構造を有したフィルムとし、さらに長手方向に二段階
目の延伸することにより、長手方向に少なくとも2段階
以上に分割した延伸をした後、この長手方向延伸フィル
ムの少なくとも片面に、ポリマー水溶液または水分散液
を塗布し、次いで幅方向に延伸することを特徴とする延
伸方法である。
【0010】また、本発明のポリエステルフィルムの延
伸方法においては、長手方向の延伸における一段階目延
伸を、ポリエステルのガラス転移温度より30℃高い温
度(Tg+30℃)以上の高温から、ポリエステルの冷
結晶化温度(Tcc)以下の温度で、延伸速度:200
00%/min以下、延伸倍率:1.25〜2.5倍の
条件で行うこと、さらには、ポリマー水溶液または水分
散液を、フィルム中央部の厚さに対する幅方向両端部の
厚さの比率が1.5倍以上となるように、フィルムの幅
方向両端部まで幅広く塗布すること、さらには、ポリマ
ー水溶液または水分散液が、完全に乾燥しないうちに、
フィルムの幅方向の延伸を開始すること、さらには、フ
ィルムの幅方向の延伸温度が、ポリエステルフィルムの
ガラス転移温度より40℃低い温度(Tg−40℃)か
ら冷結晶化温度(Tcc)℃までの温度であること、さ
らには、ポリエステルフィルムが熱可塑性ポリエステル
に対し液晶性ポリエステルを5重量%以下配合した組成
物からなることが好ましい条件であり、これらの条件を
適用することによって、さらに優れた効果を得ることが
できる。
【0011】すなわち、本発明のポリエステルフィルム
の延伸方法によれば、長手方向延伸フィルムは、一段目
の延伸でスタック構造を有したフィルムを再度長手方向
に延伸したフィルムであるため、幅方向の延伸温度をポ
リエステルフィルムのガラス転移温度(Tg)以下と低
くてもよく、したがってポリマー水溶液または水分散液
が完全に乾燥しない内に幅方向の延伸を開始してもよい
のである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で用いるポリエステルと
は、分子主鎖中にエステル結合を有する高分子化合物で
あり、通常ジオールとジカルボン酸とからの重縮合反応
により合成される熱可塑性ポリエステルであるが、ヒド
ロキシ安息香酸で代表されるヒドロキシカルボン酸のよ
うに自己縮合する化合物を利用した熱可塑性ポリエステ
あってもよい。
【0013】上記ジオール化合物の代表例としては、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、ブチレング
リコール、ヘキセングリコール、さらにジエチレンギリ
コール、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイド
付加物、プロピレンオキサイド付加物などで代表される
エーテル含有ジオールなどが挙げられ、これらは単独ま
たは混合体の形で用いられる。
【0014】また、ジカルボン酸化合物の代表例として
は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレ
ンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、
スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、
マレイン酸、フマル酸、およびそれらの混合体などが挙
げられる。
【0015】本発明においては、特にポリエチレンテレ
フタレート(PET)またはその共重合体、ポリブチレ
ンナフタレート(PBN)またはその共重合体、ポリブ
チレンテレフタレート(PBT)またはその共重合体、
およびポリエチレンナフタレート(PEN)またはその
共重合体などが好ましく用いられる。これらポリエステ
ルの繰替えし単位は、100以上、特に150であるこ
が好ましい。
【0016】上記ポリエステルの固有粘度は、オルトク
ロルフェノール(OCP)中での測定値として、0.5
(dl/g)以上、特に0.6(dl/g)以上である
のが好ましい。
【0017】もちろんこれらのポリエステルには、公知
の添加剤、例えば滑剤、安定剤、酸化防止剤、粘度調整
剤、帯電防止剤、着色剤、および顔料などを任意に配合
することができる。
【0018】また、上記のポリエステルに対し、液晶性
ポリエステルを添加したポリエステル組成物をフィルム
素材とすることによって、延伸性を改良することができ
る。ここで用いられる液晶性ポリエステルとは、メソゲ
ン基を有し溶融時に光学異方性を示すポリエステルのこ
とであり、その代表例としては、特開平7ー23331
0号公報などに開示されるものなどが挙げられる。本発
明においては、特にパラヒドロキシ安息香酸(HBA)
成分を主メソゲンとして40〜90重量%含有した液晶
性ポリエステルが好ましく用いられる。
【0019】液晶ポリエステルのメソゲンの含有形式
は、ランダム共重合、ブロック共重合、ブランチ共重
合、およびそれらの組合わせ複合共重合など任意の形式
でよいが、本発明においては特にランダム共重合とブロ
ック共重合との複合体が好ましく用いられる。
【0020】液晶性ポリエステルの溶融粘度ηmは、1
00Pa・s以下、好ましくは20Pa・s以下、さら
に好ましくは10Pa・sであることが、少量の添加で
本発明の効果を助長する点で好適である。このような粘
度の低い液晶性ポリエステル原料は、安定に重合させる
ことが困難であるばかりか、一定の形状を保った押出原
料にすること(ペレタイズ)も困難であり、さらに末端
基が多いために溶融押出時に多くの脱酢酸が起こり、押
出系の金属を腐食させてしまうという重大な欠点を有し
ているが、溶融粘度ηm20Pa・sを超える液晶性ポ
リエステル原料を一旦試作した後、この原料を温水中で
加水分解させながら酢酸を抽出させるとともに、溶融粘
度ηmを20Pa・s以下に調整することにより、本発
明に使用するに好適な液晶性ポリエステルを作ることが
できる。
【0021】なお、液晶性ポリエステルは、280℃に
加熱したときの酢酸発生量が10ppm以下、好ましく
は1ppm以下、さらに好ましくは全く酢酸の発生しな
いものを用いることが大切である。
【0022】液晶性ポリエステルは、ポリエステルフィ
ルムを形成する熱可塑性ポリエステル中に0.01〜5
重量%、特に0.1〜1重量%含有されることが好まし
い。液晶性ポリエステルの含有量が5重量%を越える
と、ポリエステルフィルムの物理的特性、例えば透明
性、引裂伝播抵抗、衝撃性、および耐摩耗性などの特性
が低下するため好ましくなく、逆に0.01重量%未満
では、本発明の効果である延伸性の改良を期待すること
ができない。
【0023】なお、液晶性ポリエステルは、ポリエステ
ルフィルム中に厚さ方向に0.5μm以下、好ましくは
0.3μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下に層
状・針状に分散していることが、本発明の効果を大きく
する上で好適である。液晶性ポリエステルの分散形状
は、液晶性ポリエステルとマトリックスである熱可塑性
ポリエステルとの組成、相溶性、粘度比率、相溶化剤の
みならず、溶融時の剪断速度、剪断力、溶融温度、混練
時間、押出時の引取り速度比率(ドラフト比)、さらに
は延伸倍率・速度・温度などの延伸条件にも依存する。
【0024】本発明のポリエステルフイルムには、他の
ポリマー層、例えば他のポリエステル、ポリオレフィ
ン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、およびアクリル
系ポリマーなどの層を積層してもよい。
【0025】また、本発明のポリエステルフイルムのフ
イルム厚さには何ら制限はないが、0.1〜250μ
m、好ましくは0.5〜125μm、さらに好ましくは
1〜25μmと薄い方が得られる効果が大きい。
【0026】次に、上記のポリエステルフィルムの延伸
方法について具体的に説明する。
【0027】すなわち、本発明における長手方向延伸と
は、実質的に配向・結晶化していないポリエステルフィ
ルムに対し、長手方向の分子配向を与えるための延伸を
意味し、通常はロールの周速差により実施される。
【0028】そして、この長手方向延伸は二段階以上に
分割して行うことが必須であり、複数本のロール対で多
段階で行うことがさらに好ましい。
【0029】一段目の長手方向延伸においては、ポリエ
ステルのガラス転移温度より30℃高い温度(Tg+3
0℃)以上の高温から、ポリエステルの結晶化温度(T
cc)℃以下の温度で、延伸速度は20000%/mi
n程度以下とできる限り遅くして、延伸倍率1.25〜
2.5倍のいわゆるスーパードロー的な延伸を行う。こ
のようにして得られた長手方向一段目延伸フィルムは、
ポリエチレンテレフタレート(PET)のようにベンゼ
ン環を有するポリマーでは、ベンゼン環が相互に面配向
して2〜3個上下に積層したような構造、いわゆるスタ
ック構造を取ること(固体NMR解析から判明)が必要
であるが、エチレングリコール部分は必ずしも相互に配
列している必要はない。この時のフィルムの複屈折は、
0.03以下、好ましくは0.01以下であり、結晶化
度はほとんど0%である。
【0030】次に、このようにして得られたスタック構
造を有した長手方向一段目延伸フィルムを、さらに同じ
長手方向に一段あるいは多段で延伸することにより、複
屈折を0.10〜0.21、結晶化度が5〜30%程度
の長手方向延伸フィルムを得る。
【0031】長手方向の延伸の総合倍率は、ポリエステ
ル樹脂の種類により異なるが、通常は2〜15倍程度で
あり、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフ
タレートを用いた場合は4〜8倍程度である。
【0032】このように、長手方向延伸を2段階以上に
分割して行うことにより、スタック構造を有したフィル
ムとしたために、次の幅方向延伸を、ポリエステルフィ
ルムのガラス転移温度Tgより40℃低い温度(Tg−
40℃)から冷結晶化温度(Tcc)℃までの温度で延伸
することができるのである。
【0033】なお、上記スタック構造とは、個体NMR
から求めた1,4位のベンゼン環炭素の緩和時間T1 ρ
が、100mSEC以上、好ましくは120mSEC以
上のものをいう。さらには、個体NMRから求めた非晶
鎖の運動成分(a)と結晶鎖の運動成分(b)とのスペ
クトル比(a/b)が、式a<bを満足することが好ま
しい。
【0034】これらの値は、固体高分解能NMRによる
ベンゼン環部分のCP/MASスペクトルのaおよびb
の長さ、および固体NMRから求めた1,4位のベンゼ
ン環炭素の緩和時間T1 ρ(mSEC)である。T1 ρ
は、分子の運動のし易さを表わし、T1 ρが長いと分子
の運動性が束縛され、運動がしにくく、逆にT1 ρが短
いと分子運動がし易いことを表わす。
【0035】従来公知の融点以上の温度で溶融押出して
急冷したキャストフィルムのT1 ρは、50〜80mS
ECの範囲にあり、分子は比較的運動し易く、このため
にフィルムを長手方向に延伸した後、水系塗液を塗布し
て完全に水が飛散する前に幅方向に延伸した場合には、
フィルム破れが多発したり、厚みむらの悪いフィルムし
か得られなかった。
【0036】これに対し、本発明は、緩和時間T1 ρ
が、100mSEC以上、好ましくは、120mSEC
以上である規則的な構造(スタック構造)を有するフィ
ルムを、さらに長手方向に延伸した後、水系塗液を塗布
して完全に水が飛散する前に幅方向に延伸した場合に
は、フィルム破れが起らず、かつ厚みむらが小さくすぐ
れたフィルムになることを見出した点を特徴としてい
る。
【0037】aは非晶構造に起因する134ppmにみ
られるピーク(A)の高さからバックグランドを差し引
いた長さで、bは結晶構造に起因する130ppmにみ
られるピーク(B)の高さからバックグランドを差し引
いた長さである。aもbも、延伸や熱処理によって分子
の運動が束縛されて大きくなるが、その大きさの変化の
度合はaとbとで異なり、非晶構造に起因するa値のほ
うが、結晶構造に起因するb値より大きくなり、したが
って、a>bとなることが多いが、本発明においては、
特にその値がa<bのフィルムを延伸することにより、
幅方向延伸性のよい、厚みむらの小さいフィルムが得ら
れるのである。
【0038】次いで、長手方向延伸フィルムの少なくと
も片面にポリマー水溶液または水分散液を塗布するが、
塗布方法には特に限定されず、ロールコーター、グラビ
アコーター、リバースコーター、およびバーコーターな
どの公知の方法を用いて塗布することができる。
【0039】本発明で用いるポリマー水溶液または水分
散液とは、ポリエステル、ポリウレタン、アクリルポリ
マー、ポリアミド、イオン性ポリマー、ポリオレフィン
などのポリマーおよびその変性体を水に溶解したものま
たは分散剤を用いて分散させたものであり、これら溶液
または分散液における固形分濃度は0.1〜30重量
%、特に1〜10重量%であることが好ましい。
【0040】この時、ポリマー水溶液または水分散液塗
布する幅方向領域は、フィルムの中央部の厚さより、
1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは
3倍以上厚いフィルム両端部にまで幅広く塗布すること
が望ましい。これは、フィルムの幅方向の延伸時の予熱
工程で塗布部分のフィルム温度は水の蒸発潜熱のために
昇温しないが、非塗布部のフィルム温度はほぼ予熱温度
まで昇温され、このように幅方向に温度分布のある状態
で幅方向に延伸すると、塗布部と非塗布部の境界で延伸
の程度に差が生じ、境界部で延伸が過大に起る、いわゆ
る過延伸となり、フィルム破れが多発したり、たとえ延
伸できても厚みむらの悪いフィルムしか得られないため
である。したがって、これを避けるためには、塗布部も
非塗布部も同じ温度になってから幅方向延伸するのが理
想的ではある。しかし、生産性を考えると塗布部の温度
が非塗布部の温度より低くなり延伸張力は大きくなる
が、その絶対張力と同じだけの張力をフィルム端部で発
生させるには、温度の高い端部のフィルム厚さを厚くす
る必要があるためである。
【0041】なお、幅方向延伸とは、フィルムに幅方向
の配向を与えるための延伸を意味し、通常はテンターを
用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送
して、幅方向に延伸する。
【0042】この時の幅方向延伸は、延伸前の予熱工程
で塗布液を完全に乾燥して、しかも塗布部分のフィルム
温度を非塗布部分であるフィルム端部の温度と同一にな
るまで充分に加熱してから幅方向延伸するのがよいが、
この場合には乾燥・昇温に時間がかかり、生産性は大幅
に悪くなる。
【0043】このために、本発明においては、スタック
構造という特別な構造を有したフィルムを再度長手方向
に延伸したフィルムにしておくことで、幅方向の延伸
を、ポリエステルフィルムのガラス転移温度Tgより4
0℃低い温度(Tg−40℃)℃、好ましくは(Tg−
20℃)から冷結晶化温度(Tcc)℃までの低い温度で
行うことが可能となるので、ポリマー水溶液または水分
散液が完全に乾燥しない内に幅方向の延伸を開始するこ
とができるため、生産性を大幅に向上することができ
る。
【0044】幅方向の延伸の倍率は、樹脂の種類により
異なるが、通常は2〜10倍、好ましくは3〜6倍程度
である。
【0045】なお、幅方向延伸の後に、その歪みを除去
するために、熱処理(熱固定)を行うこともしばしば行
われる。熱処理の温度としては、延伸温度から樹脂の融
点近傍までの様々な温度を採用することができる。
【0046】次に、本発明のフィルムの延伸方法の一例
についてより具体的に説明するが、本発明は必ずしもこ
れに限定されるものではない。
【0047】まず、熱可塑性ポリエステル樹脂の原料を
ペレットなどの形態で用意し、必要に応じて、事前乾燥
を熱風中あるいは真空下で行い、押出機に供給する。押
出機内において、融点以上に加熱溶融された樹脂は、溶
融状態でフィルタ、ギアポンプなどを連結する加熱され
たパイプ中を通り異物を除去される。この際、ギアポン
プを連結することで樹脂の押出量の均一性が向上し、厚
みむらの低減に効果が高い。
【0048】押出機よりダイに送られた樹脂は、ダイで
目的の形状に成形された後、吐出される。この吐出の際
の樹脂温度は、通常、融解終了温度(Tme)℃以上であ
る。ダイから吐出されたシート状の溶融樹脂は、キャス
ティングドラム上で冷却固化され、フィルムに成形され
る。この際、シート状の溶融樹脂に静電気を印加してド
ラム上に密着させ、急冷固化する方法が好ましく用いら
れる。
【0049】次に、長手方向に延伸を行う場合には、こ
のようにして得られた未延伸フィルムを、80〜120
℃の加熱ロールで加熱し、長手方向に1.3〜2.5倍
程度延伸し、スタック構造を形成させた後、さらに1.
05〜2.8倍程度ずつ多段階で延伸し、総合的に長手
方向延伸の倍率を2〜15倍とし、これを20〜50℃
のロール群で冷却固定する。
【0050】そして、この長手方向延伸フィルムの少な
くとも片面に、ポリエステルなどのポリマー水溶液また
は水分散液を塗布する。塗布方法は特に限定されない
が、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコー
ター、およびバーコーターなどを用いて塗布するのが好
ましい。この時、塗布する幅方向の領域が、中央のフィ
ルム厚みの1.5倍以上、好ましくは2倍以上となるよ
うな端部にまで幅広く塗布することが大切である。
【0051】続いて、フイルムの両端をクリップで把持
しながらテンタに導き、ガラス転移温度Tgより40℃
低い温度(Tg−40℃)から冷結晶化温度(Tcc)℃
までの温度に加熱された熱風雰囲気中で、幅方向に2〜
10倍に延伸する。
【0052】こうして二軸延伸されたフイルムには、平
面性、寸法安定性を付与するために、テンタ内で延伸温
度以上Tm以下の熱固定が付与され、均一に徐冷後室温
まで冷やして巻き取られる。
【0053】かくして、すぐれた生産性のもとに、高速
で安定に得られた表面改質ポリエステルフィルムは、厚
み均一性にきわめてすぐれており、磁気記録用、電気絶
縁用、包装用、成形用、コンデンサー用、およびOA・
FA用などの一般工業用フィルムとして広く用いること
ができる。
【0054】
【実施例】以下に、実施例および比較例を挙げて、本発
明の構成および効果をさらに説明する。
【0055】なお、以下の実施例および比較例における
各物性は次の方法により測定した値である。
【0056】1.配向 アッベの屈折計を使用して3軸方向の屈折率を求め、面
内の軸配向の異方性を測定した。複屈折は面内の長軸か
ら短軸の屈折率の差として求める。面内等方性の場合、
軸配向の異方性は0となる。
【0057】2.結晶化度Xc(%) 測定しようとするポリマーの密度をd、完全結晶密度を
dc、完全非晶密度daとし、次式で求めた値である。 Xc(%)=[(d−da)/(dc−da)]×10
【0058】3.ガラス転移温度Tg(℃)、冷結晶化
温度Tcc(℃) パーキンエルマー社製DSC−II型測定装置を用い、サ
ンプル重量10mg、窒素気流下で、昇温速度20℃/
分で昇温して行き、ベースラインの偏起する温度をT
g,さらに昇温したところの発熱ピークをTccとする。
【0059】4.溶融粘度ηm (Pa・s) 直径D0.5mm、長さL10mmのL/D=20の細管の
メルトインデクサーを用いて、溶融温度280℃、剪断
速度1000秒-1の時の値を測定する。
【0060】5.厚みむら アンリツ社製フィルムシックネステスタKG601Aお
よび電子マイクロメータK306Cを用い、縦方向に3
0mm幅、10m長にサンプリングしたフィルムの厚み
を連続的に測定する。長手方向の場合は10m長、幅方
向の場合は全幅での厚み最大値Tmax (μm)、最小値
Tmin (μm)から、R=Tmax −Tmin を求め、Rと
10m長の平均厚みTave (μm)から、厚みむら
(%)=R/Tave ×100 として求めた。この全体
の厚みむらが、3%未満のものを「○、3%以上10%
未満のものを「△」、10%を越えるものを「×」とし
た。
【0061】6.幅方向延伸性 製膜時間8時間に亘り、それぞれの条件で幅方向の延伸
状態を観察したときの状態から判断し、破れが全くない
ときを「○」、破れが1〜3回あるときを「△」、破れ
が4回以上あるときを「×」とした。
【0062】[実施例1および2]ポリエステルとし
て、ポリエチレンテレフタレート(PET)(固有粘度
[η]=0.65、添加剤として平均粒径0.2μmの
球形シリカを0.1重量%含有)を用いた。このPET
の含水率が20ppm以下になるように乾燥した後、公
知の溶融押出機に供給し、285℃で充分混練りした
後、20μmカットの繊維燒結金属フィルターを通過さ
せて濾過し、続いてTダイ口金から溶融体を押出し、こ
の溶融体に静電荷を印加させ、25℃に保たれた鏡面ク
ロムメッキロールに密着させて、ドラフト率10で引取
り、冷却固化させた。
【0063】かくして得られたポリエステルフィルムの
Tgは71℃、冷結晶化温度は135℃、結晶化度は0
%、分子配向の異方性は認められなかった。
【0064】この押出フィルムを、公知のロール式縦延
伸機でロール表面温度115℃という比較的高温度で、
延伸区間を広くして、延伸速度は20000%/min
程度以下と比較的ゆっくりした速度で、長手方向に1.
8倍延伸し、スタック構造が形成されていることを確認
した後、さらに延伸温度95℃で、長手方向に3.3倍
延伸し、総合長手方向延伸倍率を6倍とした。
【0065】次に、得られた長手方向延伸フィルムの片
面にポリエステル水溶液を塗布した。この水溶性ポリエ
ステルの組成は、PET(68モル%)/I(20モル
%)/SSIA(12モル%)−PEG(10モル%)
(T:テレフタル酸、I:イソフタル酸、SSIA:ソ
ジウムスルフォイソフタル酸、PEG:ポリエチレング
リコール)であった。塗布方法はメータリングバーコー
ターなどを用いて塗布した。この時、塗布する幅方向の
領域が、中央のフィルム厚みの2.0倍となる端部にま
で幅広く塗布した(塗布部の厚み比率2.0)。
【0066】続いて、フイルムの両端をクリップで把持
しながらテンタに導き、ガラス転移温度Tg近傍の75
℃に加熱された熱風雰囲気中で、幅方向に5倍に延伸し
た。このフィルムの幅方向延伸時には、水が完全に蒸発
するまでじっくり予熱工程で乾燥した場合(実施例1)
と、塗布層に水を含水させたまま幅方向延伸した場合
(実施例2)の2通りの延伸を行った。
【0067】この後、それぞれのフィルムを210℃で
熱固定し、厚さ12μmの二軸配向ポリエステルフィル
ムを得た。
【0068】かくして得られたフィルムの諸特性は表1
に示したとおりであるが、生産性・延伸性にすぐれてお
り、また得られたフィルムは厚み均質性にすぐれたもの
であった。
【0069】[比較例1]実施例2で用いた多段長手方
向延伸を、95℃の1段延伸に変える以外は、実施例2
と全く同様にして二軸延伸することにより、厚さ12μ
mのフィルムを得た。
【0070】得られたフィルムの特性は表1に示したと
おりであり、この結果からは、長手方向の延伸は、フィ
ルムにスタック構造を付与する多段延伸でなければなら
ないことが判る。
【0071】[実施例3]実施例2で用いた塗布部の厚
み比率を1倍にして、幅方向の塗布領域を変更した以外
は、実施例2と全く同様にして、表1に示したような物
性を有する二軸延伸フィルムを得た。
【0072】
【0073】
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のポリエス
テルフィルムの延伸方法によれば、幅方向の延伸を均一
で安定に実施することができ、しかも得られたポリエス
テルフィルムは厚みむらが小さく、幅方向の物性の均一
性にもすぐれている。また、塗布液の水を完全に乾燥す
る必要がないために、製膜速度を低下させることがなく
生産性・経済性にすぐれている。
【0076】したがって、本発明の方法によって、すぐ
れた生産性のもとに、高速で安定に得られた表面改質ポ
リエステルフィルムは、厚み均一性にきわめてすぐれて
おり、磁気記録用、電気絶縁用、包装用、成形用、コン
デンサー用、およびOA・FA用などの一般工業用フィ
ルムとして広く用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B29C 55/02 - 55/28 C08J 5/18 CFD C08J 7/04

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】実質的に配向・結晶化していないポリエス
    テルフィルムを用い、長手方向に一段階目の延伸をする
    ことによりスタック構造を有したフィルムとし、さらに
    長手方向に二段階目の延伸することにより、長手方向に
    少なくとも2段階以上に分割した延伸をした後、この長
    手方向延伸フィルムの少なくとも片面に、ポリマー水溶
    液または水分散液を塗布し、次いで幅方向に延伸するこ
    とを特徴とする延伸方法。
  2. 【請求項2】長手方向の延伸における一段階目延伸を、
    ポリエステルのガラス転移温度より30℃高い温度(T
    g+30℃)以上の高温から、ポリエステルの冷結晶化
    温度(Tcc)以下の温度で、延伸速度:20000%
    /min以下、延伸倍率:1.25〜2.5倍の条件で
    行うことを特徴とする請求項1に記載のポリエステルフ
    ィルムの延伸方法。
  3. 【請求項3】ポリマー水溶液または水分散液を、フィル
    ム中央部の厚さに対する幅方向両端部の厚さの比率が
    1.5倍以上となるように、フィルムの幅方向両端部ま
    で幅広く塗布することを特徴とする請求項1または2に
    記載のポリエステルフィルムの延伸方法。
  4. 【請求項4】ポリマー水溶液または水分散液が、完全に
    乾燥しないうちに、フィルムの幅方向の延伸を開始する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載
    ポリエステルフィルムの延伸方法。
  5. 【請求項5】フィルムの幅方向の延伸温度が、ポリエス
    テルフィルムのガラス転移温度より40℃低い温度(T
    g−40℃)から冷結晶化温度(Tcc)℃までの温度
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に
    記載のポリエステルフィルムの延伸方法。
  6. 【請求項6】ポリエステルフィルムが、熱可塑性ポリエ
    ステルに対し液晶性ポリエステルを5重量%以下配合し
    た組成物からなることを特徴とする請求項1〜5のいず
    れか1項に記載のポリエステルフィルムの延伸方法。
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