JP2936908B2 - 被転写シート - Google Patents

被転写シート

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JP2936908B2
JP2936908B2 JP4240632A JP24063292A JP2936908B2 JP 2936908 B2 JP2936908 B2 JP 2936908B2 JP 4240632 A JP4240632 A JP 4240632A JP 24063292 A JP24063292 A JP 24063292A JP 2936908 B2 JP2936908 B2 JP 2936908B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像データに基づく昇
華転写手段により形成された画像パターンとホログラム
パターンとを備え、例えばIDカード等に適用される画
像表示体の製造に用いる被転写シートに係わる。
【0002】
【従来の技術】被転写シートの受像層に画像データに基
づき昇華転写手段により画像パターンを形成し、少なく
とも被転写シートの受像層を熱転写法により画像表示体
(対象物)の表面に転写することにより画像を形成する
方法が知られている(例えば特開昭63−81093号
公報参照)。
【0003】以下、前記方法を詳述する。この方法で使
用される被転写シートの基本的な構成は、任意のシート
状基材の一方の面に、少なくとも昇華性(熱移行性)染
料で染色可能な熱可塑性樹脂からなる受像層を設けたも
のである。
【0004】前記の様な被転写シートの受像層を、色剤
が昇華性染料である染料フィルムの染料層と当接し、染
料フィルム側からサーマルヘッドを圧接し、画像データ
に基づく電気信号をサーマルヘッドに印加・加熱するこ
とにより染料層を部分的に受像層に転写し、画像パター
ンを形成する。なお、画像データが多色である場合、色
調の異なる染料フィルムを用いて、同様な工程を繰り返
し、被転写シート上に多色の画像パターンを形成する。
【0005】上記の工程により画像パターンの形成され
た被転写シートを画像表示体の表面に当接させ、被転写
シート側から熱ロール、熱板等の加熱媒体を圧接・加熱
し、少なくとも受像層を画像表示体に熱転写するもので
ある。なお、この際に受像層は熱可塑性樹脂であるの
で、接着剤としての機能も果す。
【0006】上記方法は、画像パターンが昇華性染料で
形成されているので鮮明であり、かつ、画像形成体を特
に選ばずに画像形成ができるという効果を有している。
【0007】しかしながら上記方法を実施する際には、
被転写シートの受像層の材料の選択が問題となる。つま
り、画像パターンを形成する工程においては、染料フィ
ルムと当接し加熱されるために、受像層の熱可塑性樹脂
の熱溶融温度が低い場合、受像層が染料フィルム側に転
写(熱融着)してしまう恐れがある。転写を防ぐために
は、受像層に熱溶融温度の高い熱可塑性樹脂の使用が考
えられるが、画像表示体への受像層の転写の工程におい
て、加熱媒体の温度を上昇させなければならず、染料か
らなる画像パターンの劣化(褪色)や画像表示体に熱に
よるダメージが発生する。また、染料フィルムに対する
接着性を下げるために、受像層中にシリコン等の添加剤
を混入させることも考えられるが、その場合、画像表示
体への接着性が悪くなるという問題が発生する。
【0008】他方、上記方法によって作成された画像表
示体は、画像データを有しているので、例えば身分証明
カード等のIDカードへの適用が想定されるが、画像デ
ータの偽造(改ざん)の防止については何ら考慮されて
いない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、昇
華性染料により形成された画像パターンの劣化(褪色)
や熱によるダメージが少なく、かつ、画像データの偽造
(改ざん)が不可能な画像表示体の製造に用いる被転写
シートを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、請求項1記載の発明は、耐熱性ベースフィルム上
に、このベースフィルムから剥離容易な剥離層、ホログ
ラム形成層、該ホログラム形成層よりも屈折率の大きい
透明薄膜層およびガラス転移点が50℃以上の熱可塑性
樹脂とフィラーからなる受像・接着層を順次積層してな
り、該フィラーが熱溶融温度200℃以上の無機または
有機フィラーであることを特徴とする被転写シートを提
供する。
【0011】
【0012】また、請求項2に記載の発明は、受像・接
着層がさらに紫外線吸収剤を含有することを特徴とする
請求項1記載の被転写シートを提供する。
【0013】また、請求項3に記載の発明は、剥離層が
耐摩擦剤と熱可塑性樹脂から成り、その熱可塑性樹脂が
ポリメチルメタアクリレート、またはエポキシ樹脂であ
ることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の
被転写シートを提供する。
【0014】また、請求項4に記載の発明は、ホログラ
ム形成層が2液反応型ウレタン樹脂を主成分とし、該樹
脂のポリオール成分が、ガラス転移点70℃から150
℃の範囲でかつOH価が50から150の範囲にあるア
クリルポリオール樹脂であることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれかに記載の被転写シートを提供する。
【0015】また、請求項5に記載の発明は、透明薄膜
層と受像・接着層間にプライマー層を設けたことを特徴
とする請求項1乃至4のいずれかに記載の被転写シート
を提供する。
【0016】また、請求項6に記載の発明は、プライマ
ー層がウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1乃
至5のいずれかに記載の被転写シートを提供する。
【0017】
【作用】以上のように、本発明に係わる被転写シート
は、受像・接着層中にフィラーを有しているので、例え
受像・接着層中の熱可塑性樹脂の熱溶融温度が低いもの
であっても、画像パターンを形成工程において、受像・
接着層が染料フィルム側に転写してしまう恐れはなく、
また、シリコン等の添加剤を用いなくてもよいので、画
像形成体との接着性も良好である。さらに、受像・接着
層中の熱可塑性樹脂はガラス転移点50℃以上であるの
で、熱による画像変化を生じない。
【0018】さらに、被転写シートの剥離層以下を転写
させることに製造する画像形成体は、昇華性染料からな
る画像パターンの上に透明なホログラムパターンが形成
される。よって、ホログラムパターンを消失させること
なしに、画像の改ざんは困難である。また、透明薄膜層
は無機化合物であるので、画像パターンを形成する昇華
性染料の外部への拡散を防ぐことができる。
【0019】また、受像・接着層中に紫外線吸収剤を含
有すれば、紫外線等の光による変褪色を防ぐことができ
る。
【0020】また、剥離層が耐摩擦剤と熱可塑性樹脂の
混合物であれば、熱転写時に容易にベースフィルムから
剥離し、染料による画像の外部からの化学的及び機械的
損傷を防ぐことができる。
【0021】また、ホログラム形成層が2液反応型ウレ
タン樹脂を主成分とし、該樹脂のポリオール成分が、ガ
ラス転移点70℃から150℃の範囲でかつOH価が5
0から150の範囲にあるアクリルポリオール樹脂であ
れば、塗工適性も良好で、前記被転写シートに要求され
るエンボス成形性、基材フィルムとの剥離性が極めて良
好な被転写シートを得ることができる。
【0022】さらにまた、透明薄膜層と受像・接着層間
にプライマー層を設ければ、透明薄膜層と受像・接着層
間の密着性が向上する。
【0023】請求項1に係る被転写シート(1)は、図
1に示すように、ベースフィルム(11)、剥離層(1
2)およびホログラム形成層(13)、透明薄膜層(1
4)、受像・接着層(16)から成る。請求項6に係る
被転写シート(1)は、図2に示すように、ベースフィ
ルム(11)、剥離層(12)、ホログラム形成層(1
3)および透明薄膜層(14)、プライマー層(1
5)、受像・接着層(16)、から成る。なお、ホログ
ラム形成層(13)には、ホログラムパターン(3a)
が形成されている。
【0024】ベースフィルム(11)は、転写時の熱圧
で軟化変形しない耐熱性を必要とする。かかるベースフ
ィルム(11)は公知であり、例えば厚さ3〜50μm
の二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムを
使用できる。
【0025】また、剥離層(12)は熱転写時に容易に
ベースフィルム(11)から剥離する必要がある。ま
た、転写された後の保護膜の機能を果たす必要が有る。
保護膜の機能とは染料による画像の外部からの化学的及
び機械的損傷を防ぐことである。この両者の機能を満た
すためには耐摩擦剤と熱可塑性樹脂の混合物を使用すれ
ば良い。
【0026】熱可塑性樹脂は可塑剤や薬品の透過を防止
すると共に引っ掻きによる傷を減少させるものである。
かかる熱可塑性樹脂としてはポリメチルメタアクリレー
ト、またはエポキシ樹脂が使用できる。メチルメタアク
リレート及びエポキシ樹脂は既存の熱可塑性樹脂の中で
耐可塑剤性が優れると共にベースフィルム(11)と剥
離が容易である。これらの樹脂を剥離層(12)に用い
ることにより、転写後の画像上に軟質塩化ビニルシート
やプラスチック消しゴムなどを接触させた時にこれらに
含まれる可塑剤の移行を防止できる。また、酸、アルカ
リ、アルコール、灯油などの薬品の浸透を防ぎ、画像へ
の影響を防止することができる。
【0027】また、耐摩擦剤は耐摩耗性や耐性スクラッ
チ性の向上のために添加するものである。例えば、テフ
ロンパウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワック
ス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス
などの天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族
アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセラ
イト系ワックス、水素化ワックス、合成ケトン系ワック
ス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系
ワックス、合成動物ロウ系ワックス、アルファーオレフ
ィン系ワックスなどの合成ワックス、及びステアリン酸
亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩などをあげることができ
る。
【0028】剥離層(12)は、熱可塑性樹脂と耐摩擦
剤の合計量100重量部に対して熱可塑性樹脂85〜9
5重量部、耐摩擦剤5〜15重量部で良い。また、塗布
量は1〜3g/m2 で良い。
【0029】剥離層(12)には上記成分の外、転写時
の切れを向上するために剥離改善剤を混合することもで
きる。例えば線状飽和ポリエステル樹脂である。ただし
上記熱可塑性樹脂と耐摩擦剤の合計量100重量部に対
し、0〜3重量部に限るべきである。
【0030】なお、剥離層(12)にはこの他の添加
物、例えば紫外線吸収剤等を添加しないことが望まし
い。添加により耐薬品性がおちたり、または、可塑剤の
浸入が容易になり、剥離層の機械的強度劣化の原因とな
るからである。
【0031】剥離層を塗工する方法は、まず、剥離層組
成物を適当な溶剤により塗料化し、その塗料をグラビア
塗布、ロールコーティング塗布、または、バーコート塗
布などの塗布方法で塗布乾燥して形成させればよい。
【0032】ホログラム形成層(13)は表面レリーフ
型ホログラムスタンパにて、加熱・加圧によりホログラ
ムパターン(3a)を形成する為の層である。ホログラ
ム形成層(13)に用いられる樹脂としては、2液反応
ウレタン樹脂を使用することより極めて良い結果が得ら
れる。すなわち、2液反応ウレタン樹脂はエンボス成形
性が良好でプレスむらが生じ難く、明るい再生像が得ら
れ、その上、エンボス形成時の基材への密着性が良好
で、透明薄膜層との接着性も良好でかつ被転写体へ転写
する際の剥離性が極めてよい。
【0033】すなわち、本発明に述べるホログラム形成
層(13)としての2液反応型ウレタン樹脂は、耐溶剤
性、耐熱性、加工性などの諸物性から、ポリエーテルポ
リオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオー
ルなどのポリオール成分と、イソシアネート基を持つプ
レポリマーとから成るポリオール硬化型ウレタン樹脂が
適当であるが、中でもポリオール成分がガラス転移点7
0〜105℃の範囲でかつOH基が50〜150の範囲
にあるアクリルポリオール樹脂を用いることにより、塗
工適性も良好で、前記被転写シートに要求されるエンボ
ス成形性、基材フィルムとの剥離性が極めて良好な被転
写シートを得ることができる。イソシアネート成分とし
ては、トルエンジイソシアネート(TDI)、キシレン
ジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンイソシア
ネート(HMDI)などが使用できる。
【0034】また塗工適性の向上、転写性の調整剤とし
て、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロー
スアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピ
オネート、エチルセルロース、メチルセルロース等のセ
ルロース系樹脂を2液反応型ウレタン樹脂に対し、最大
で30%重量部併用添加することにより、さらに良結果
が得られる。
【0035】このようなホログラム形成層(13)を塗
工する方法として、塗料化した樹脂をロールコート、ブ
レードコート等の方法により塗布、乾燥させて0.5〜
5μmの膜厚を形成させればよい。
【0036】こうして得られたホログラム形成層(1
3)は、剥離ニス層が塗工された基材フィルムと適度に
接着し、エンボス成形時の加熱、加圧により優れた成形
性を有し、しかも表面にニッケル、金、クロム等のメッ
キを施したスタンパへ接着せず、更に透明薄膜層と良好
な接着性を示し、しかも皮膜の切れが良好である。さら
にホットスタンプ時の透明薄膜層の剥離不良や転写ム
ラ、バリ、フクレの発生などのない確実な転写が可能と
なり、ウレタン樹脂の優れた耐熱性により、蒸着工程
や、ホットスタンプ時の熱によって発生する収縮による
ひび割れ、白化、ホログラムパターンの破壊など、外観
上の品質低下を防ぐことができる。
【0037】透明薄膜層(14)はホログラム形成層
(13)の樹脂よりも屈折率の高く、かつ可視光領域に
おいて透過率の高い材料が使用される。屈折率の高い透
明薄膜層(14)を設けると、ホログラムの特徴である
再生の角度依存性により、ホログラムの再生可能な角度
範囲外では単なる透明体としてしか見えず、ホログラム
の再生可能な角度範囲では光の屈折率が最大になり、反
射型ホログラムとしての効果がでてくる。このような透
明薄膜層(14)の材料としては表1記載の無機物が挙
げられる。
【0038】
【表1】
【0039】なお、透明薄膜層(14)を形成する方法
としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ
ーティング法等の方法により設けることができる。膜厚
としては、100Å〜10000Åの範囲が適当であ
る。
【0040】プライマー層(15)は透明薄膜層(1
4)と受像・接着層(16)とを接着させる為の接着改
良層である。そのような樹脂としてはウレタン樹脂が適
当である。具体的には、ポリウレタンアイオノマー樹
脂、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオー
ル、アクリルポリオールなどのポリオール成分と、イソ
シアネート基を持つプレポリマーとから成る。
【0041】プライマー層(15)を塗工する方法は、
まず、剥離層組成物を適当な溶剤により塗料化し、その
塗料をグラビア塗布、ロールコーティング塗布、また
は、バーコート塗布等の塗布方法で塗布乾燥させればよ
い。
【0042】受像・接着層(16)は画像パターンを形
成すると共にプラスチック材料等からなる画像形成体の
表面に接着するものである。かかる理由から熱可塑性樹
脂とフィラーの混合物から成る。
【0043】受像・接着層(16)に使用する熱可塑性
樹脂はガラス転移点(Tg)が50℃以上のものが使用
できる。ガラス転移点の温度が50℃未満の樹脂を使用
すると、転写の後、この樹脂により染料のマイグレーシ
ョンが生じ、画像のにじみが発生する。また、ガラス転
移点110℃以下のものが好ましい。ガラス転移点が1
10℃を越える樹脂を使用すると転写の際に高い温度を
必要とし、サーマルヘットに負荷がかかるだけでなく、
ポリ塩化ビニルカードなどのプラスチック材料が熱によ
り変形することがある。
【0044】受像・接着層(16)に使用する熱可塑性
樹脂としては、例えば、線状飽和ポリエステルなどのポ
リエステル、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸、
ポリアクリル酸−2−メトキシエチル、ポリアクリル酸
メチル、ポリアクリル酸−2−ナフチル、ポリアクリル
酸イソボルニル、ポリメタクリロメチル、ポリアクリロ
ニトリル、ポリメチルクロロアクリレート、ポリメタク
リル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリ
ル酸−tert−ブチル、ポリメタクリル酸イソブチ
ル、ポリメタクリル酸フェニル、メタクリル酸メチルと
メタクリル酸アルキル(ただしアルキル基の炭素数は2
〜6)の共重合樹脂などのアクリル系樹脂、ポリスチレ
ン、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、スチ
レン−ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸
アルキル(ただしアルキル基の炭素数は1〜6)などの
ビニル系樹脂などである。
【0045】受像・接着層(16)表面に染料フィルム
を介してサーマルヘッドで昇華転写画像を転写する際、
受像・接着層(16)の主成分が熱可塑性樹脂である
為、そのままではサーマルヘッドの熱により受像・接着
層(16)が染料フィルムの染料層に熱融着して鮮明な
画像パターンが得られない。その為に、受像・接着層
(16)中にブロッキング防止性のある熱溶融温度(有
機フィラーの場合は軟化点もしくは分解点、無機フィラ
ーの場合は融点)200℃以上の無機または有機フィラ
ーを添加して熱融着を防止する。
【0046】例えば、有機フィラーとしてはポリテトラ
フロロエチレン微粒子、デンプン、シリコーン樹脂微粒
子、ポリアクリロニトリル系微粒子、ベンゾグアナミン
樹脂及びメラミン樹脂を原料とする硬化樹脂微粒子等で
ある。無機フィラーとしては炭酸カルシウム、タルク、
カオリン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素、水酸化ア
ルミニウム、酸化マグネシウム等である。
【0047】受像・接着層(16)は、その熱可塑性樹
脂100重量部に対して1〜20重量部で良い。塗布量
は1〜3g/m2 が好ましい。
【0048】必要に応じて受像・接着層(16)に含有
する紫外線吸収剤は光による染料の変褪色を防止するも
のである。すなわち、波長250〜400nmの紫外線
を吸収してそのエネルギーを染料に無害な熱エネルギー
として再輻射し、紫外線吸収剤自体は何ら変質しない。
この理由から最大吸収波長250〜400nmの紫外線
吸収剤を使用する。
【0049】例えばフェニルサリシレート、p−ter
t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニ
ルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤、2,
4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシベン
ゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフ
ェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフ
ェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾ
フェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメト
キシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−
5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外
線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェ
ニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−
5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾー
ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル
−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−
(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−ブチル
フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−
(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−アミル
フェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾー
ル系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−
3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シア
ノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアク
リレート系紫外線吸収剤である。
【0050】紫外線吸収剤は、その熱可塑性樹脂とフィ
ラーからなる混合物100重量部に対して、5〜40重
量部で良い。
【0051】受像・接着層を塗工する方法は、まず、受
像・接着層組成物を適当な溶剤により塗料化し、その塗
料をグラビア塗布、ロールコーティング塗布、または、
バーコート塗布などの塗布方法で塗布乾燥して形成させ
ればよい。
【0052】こうして得られる被転写シート(1)は、
昇華性染料で画像パターンを形成後、プラスチック材料
等に重ね、熱圧し、ベースフィルム(11)のみを剥離
除去して、転写することができる。転写は受像・接着層
(16)に含まれる熱可塑性樹脂の軟化点以上の温度に
加熱して行なうことができる。通常150〜250℃で
ある。時間は1〜10秒程度で良い。
【0053】図1に示す被転写シートをプラスチック材
料からなる身分証明カードに転写し、画像形成体を製造
する場合の例を図3、4に示す。
【0054】図4において、被転写シートは図中左上の
ロールに巻かれており、複数の搬送ローラ(24)を経
由して昇華転写部(20)、転写部(30)に搬送され
る。なお、被転写シートの受像・接着層は図上部におい
ては上側に形成されている。
【0055】昇華転写部(20)は、被転写シートが摺
接するドラム(21)と、色剤が染料である染料フィル
ム(23)と、染料フィルム(23)側から圧接するサ
ーマルヘッド(22)を有する。画像パターン形成に当
たっては、画像データに基づく電気信号をサーマルヘッ
ドに印加・加熱することにより染料層の染料を部分的に
受像・接着層に転写し、画像パターン(2a)を形成す
る。なお、画像データが多色である場合、1本のフィル
ムに異なる色の染料層を有する染料フィルムを用いて多
色画像パターンを形成してもよいし、異なる色の染料フ
ィルム(23)とサーマルヘッド(22)の組をドラム
(21)に沿って複数設け、多色画像パターンを形成し
てもよい。
【0056】転写部(30)は、画像形成体(32)上
の被転写シート(1)を裏面(被受像・接着層形成面)
から加熱する転写ロール(31)を有する。転写ロール
(31)により加熱された被転写シート(1)の剥離層
以下は、画像形成体(32)に転写する。
【0057】なお、画像形成体(32)は、プラスチッ
クからなるカード基材に限らず、パスポート等の紙製の
小冊子にも適用できることは明らかであろう。
【0058】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。
【0059】(実施例1) {被転写シートの製造} 剥離層塗料の組成 ポリメチルメタアクリレート(Tg:105℃) 10重量部 (三菱レイヨン(株)製 BR−80) テフロンパウダー 1 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0060】 ホログラム形成層塗料の組成 アクリルポリオール樹脂 25重量部 (TG:75℃,OH価:100) ニトロセルロース樹脂 5 〃 (窒素含有率:12%,平均重合度:45,粘度:1/2) キシレンジイソシアナート 5 〃 トルエン/2ーブタノン(25/20) 45 〃 酢酸イソブチル 20 〃
【0061】 受像・接着層塗料の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(Tg:65℃) 10重量部 (積水化学工業(株)製 エスレックA) メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(分解点300℃/軟化点なし) (日本触媒(株)製 エポスターS) 2 〃 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール 2.5 〃 トルエン/2−ブタノン(2/1) 40 〃
【0062】厚さ12μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上に、グラビアコーターを用いて、上記剥離
層塗料を乾燥重量2.0g/m2 になるように塗布乾燥
して剥離層(12)を形成した。その層上に上記ホログ
ラム形成層塗料をグラビアコータで乾燥重量が1.2g
/m2 になるように塗布乾燥してホログラム形成層(1
3)を形成し、60℃、72時間エイジングをおこなっ
た後、プレス機にてホログラム形成層とスタンパーのホ
ログラムパターン形成面を重ね合わせ、エンボス加工を
160℃、40kg/cmの加熱、加圧条件にて行いホ
ログラム形成面へホログラムパターンを形成した。次に
該ホログラム形成面に約500Åの厚みにZnS蒸着を
して透明薄膜層(14)を形成した。更に、上記受像・
接着層塗料をグラビアコーターで乾燥重量が1.5g/
2 になるように塗布乾燥して受像・接着層(16)を
形成し、被転写シートを製造した。
【0063】{染料フィルムの製造}3つの色の染料
(イエロー、マゼンタ、シアン)を各々ポリビニルブチ
ラールに分散させ、グラビアコータを用いて、厚さ6μ
mのポリエステルフィルム上に、各色が交互に配置され
るように塗布乾燥して、3色の染料層を有する染料フィ
ルムを形成した。
【0064】図4に記載の装置に上記の被転写シートお
よび染料フィルムと、ポリ塩化ビニルからなるカード
(画像形成体)を配置した。
【0065】以下に装置の動作を説明する。まず、被転
写シートにイエローの画像パターンを形成する。3つの
色の染料が交互に配置された染料フィルムのイエローの
染色層を被転写シートの受像・接着層に当接し、予め装
置の画像処理部(図示せず)に入力してある画像データ
の中から、イエローの画像データを抽出し、それに相当
する電気信号をサーマルヘッドに印加・加熱した。な
お、サーマルヘッドと被転写シートの相対的な位置を動
かすため、ドラムを右回りに回転させた。マゼンタ、シ
アンについても同様に行い、カラーの画像パターンを被
転写シートに形成した。
【0066】次に画像パターンが形成された部分を転写
部に搬送し、ポリ塩化ビニルからなるカード(画像形成
体)と位置合せを行ない、加熱ロール(加熱温度150
℃)を被転写シートに押し付け、被転写シートの剥離層
以下をカードに転写した。
【0067】この様にして製造されたカード(画像形成
体)は、鮮明な画像パターンと、その上にホログラムパ
ターンを有していた。
【0068】(実施例2) {被転写シートの製造} 剥離層塗料の組成 ポリメチルメタアクリレート(Tg:105℃) 10重量部 (三菱レイヨン(株)製 BR−80) テフロンパウダー 1 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0069】 ホログラム形成層塗料の組成 アクリルポリオール樹脂 25重量部 (TG:75℃,OH価:130) ニトロセルロース樹脂 5〃 (窒素含有率:12%,平均重合度:45,粘度:1/2) キシレンジイソシアナート 5〃 トルエン/2ーブタノン(25/20) 45〃 酢酸イソブチレン 20〃
【0070】 受像・接着層塗料の組成 塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(Tg;65℃)10重量部 (積水化学工業(株)製 エストックA) 炭酸カルシウム 3 〃 2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール 2.5 〃 トルエン/2−ブタノン(2/1) 40 〃
【0071】厚さ25μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上に、グラビアコーターを用いて、上記剥離
層塗料を乾燥重量2.0g/m2 になるように塗布乾燥
して剥離層(12)を形成した。その層上に上記ホログ
ラム形成層塗料をグラビアコータで乾燥重量が0.9g
/m2 になるように塗布乾燥してホログラム形成層(1
3)を形成し、60℃、72時間エイジングをおこなっ
た後、プレス機にてホログラム形成層とスタンパーのホ
ログラムパターン形成面を重ね合わせ、エンボス加工を
160℃、40kg/cmの加熱、加圧条件にて行いホ
ログラム形成面へホログラムパターンを形成した。次に
該ホログラム形成面に約500Åの厚みにZnS蒸着を
して透明薄膜層(14)を形成した。更に、上記受像・
接着層塗料をグラビアコーターで乾燥重量が1.5g/
2 になるように塗布乾燥して受像・接着層(16)を
形成し、被転写シートを製造した。
【0072】前記により得られた被転写シートを用い、
実施例1と同様な条件でカードを製造した。
【0073】(実施例3) {被転写シートの製造} 剥離層塗料の組成 エポキシ樹脂(軟化点148℃) 10重量部 (油化シエル(株)製エピエート1009) ポリエチレンパウダー 0.5 〃 トルエン/2−ブタノン(1/2) 40 〃
【0074】 ホログラム形成層塗料の組成 アクリルポリオール樹脂 25重量部 (TG:75℃,OH価:100) ニトロセルロース樹脂 5〃 (窒素含有率:12%,平均重合度:45,粘度:1/2) キシレンジイソシアナート 5〃 トルエン/2ーブタノン(25/20) 45〃 酢酸イソブチレン 20〃
【0075】 プライマー層塗料の組成 ポリウレタンアイオノマー水性ディスパージョン 100重量部 (DIC社製 ハイドランAP40,NV:20重量%)
【0076】 受像・接着層塗料の組成 線状飽和ポリエステル樹脂(Tg;65℃) 10重量部 (ユニチカ(株)製 UE−3200) ポリテトラフロロエチレン(軟化点320℃) 1 〃 (ダイキン工業(株)製 ルブロンLD1) 2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン 6 〃 トルエン/2−ブタノン(1/1) 40 〃
【0077】厚さ25μmのポリエチレンテレフタレー
トフィルム上に、グラビアコーターを用いて、上記剥離
層塗料を乾燥重量2.0g/m2 になるように塗布乾燥
して剥離層(12)を形成した。その層上に上記ホログ
ラム形成層塗料をグラビアコータで乾燥重量が0.9g
/m2 になるように塗布乾燥してホログラム形成層(1
3)を形成し、60℃、72時間エイジングをおこなっ
た後、プレス機にてホログラム形成層とスタンパーのホ
ログラムパターン形成面を重ね合わせ、エンボス加工を
160℃、40kg/cmの加熱、加圧条件にて行いホ
ログラム形成面へホログラムパターンを形成した。次に
該ホログラム形成面に約500Åの厚みにZnS蒸着を
して透明薄膜層(14)を形成した。その層上に、上記
プライマー層塗料をグラビアコータを用いて、乾燥重量
が1.0g/m2 になるように塗布乾燥してプライマー
層(15)を形成した。更に、上記受像・接着層塗料を
グラビアコーターで乾燥重量が1.5g/m2 になるよ
うに塗布乾燥して受像・接着層(16)を形成し、被転
写シートを製造した。
【0078】前記により得られた被転写シートを用い、
実施例1と同様な条件でカードを製造した。
【0079】(実施例4、5) {被転写シートの製造}熱可塑性樹脂と耐摩擦剤の合計
量100重量部に対し、剥離改善剤として線状飽和ポリ
エステル樹脂(東洋紡績(株)製バイロン300)を2
重量部添加した剥離層を使用した外は実施例2、3と同
様に被転写シートを製造した。
【0080】前記により得られた被転写シートを用い、
実施例1と同様な条件でカードを製造した。
【0081】実施例1〜5により製造されたカード(画
像形成体)の耐スクラッチ性、耐摩耗性、耐溶剤性、耐
熱性、改ざん防止性、耐光性を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】なお、各データは以下の方法により試験し
たものである。
【0084】接着性…セロテープ剥離試験(JIS K
5400−1990/碁盤目テープ法)で変化の無いも
のを○、一部とれるものを△、全部とれるものを×。
【0085】耐スクラッチ性…Hの鉛筆により鉛筆試験
機を用いて表面をひっかき、強度を測定。傷が付かない
ものを○、傷が付いたものを×。
【0086】耐摩耗性…学振式堅牢度試験機(摩擦材と
して金属を使用)にてカード表面を2000回こすり、
表面(細紋)の変化を観察。変化のないものを○、変化
のあるものを×。
【0087】耐可塑剤性…軟質ポリ塩化ビニルシートを
カード表面に接触させて、荷重200g/cm2 をか
け、40℃、90%R.H.の環境下に24時間、48
時間及び100時間各々保存し、画像の色の変化色及び
褪色、にじみ等を観察。変化しないものを○、多少の変
褪色やにじみのあるものを△、変褪色やにじみのあるも
のを×。
【0088】耐溶剤性…フレオン、エタノール、ガソリ
ンを綿棒にしみこませ、カード表面をこすり、変化を観
察。全く変化の無いものを○、一度でも変化したものを
×。
【0089】耐熱性…50℃、90%R.H.の環境下
に48時間保存し、画像の変褪色を観察。変化無いもの
を○、変褪色のあるものを×。
【0090】改ざん防止性…ホログラムパターンが鮮明
に認識できるものを、ホログラムパターンが認識出来な
いものを×、ホログラムパターンが鮮明でないものを
△。
【0091】耐光性…フェードメーターにて紫外線を4
0時間照射後、画像の反射濃度の減少率を測定。
【0092】
【発明の効果】以上のように、本発明に係わる被転写シ
ートは、受像・接着層中にフィラーを有しているので、
例え受像・接着層中の熱可塑性樹脂の熱溶融温度が低い
ものであっても、画像パターンを形成工程において、受
像・接着層が染料フィルム側に転写してしまうことはな
く、受像・接着層の画像形成体への接着性も良好であ
る。また、受像・接着層中の熱可塑性樹脂はガラス転移
点50℃以上であるので、熱による画像変化を生じな
い。
【0093】さらに、ホログラム形成層および透明薄膜
層は、受像・接着層より下層にあるため、画像パターン
の形成の際に影響を及ぼさない。また、透明薄膜層は無
機化合物であるので、画像パターンを形成する昇華性染
料の外部(ホログラム形成層および剥離層)への拡散を
防ぐことができる。
【0094】よって、被転写シートの受像・接着層に昇
華性染料からなる画像パターンを形成後、プラスチック
材料等からなる画像形成体表面に転写することにより、
画像パターンの化学的及び機械的損傷を防止でき、かつ
光による変褪色を防止できるとともに、ホログラム形成
による改ざん防止可能な画像形成体を製造できる。
【0095】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係わる断面図である。
【図3】図1の被転写シートをカード本体に転写した後
の断面図である。
【図4】本発明の被転写シートを使用し画像形成体を製
造する装置の説明図である。
【符号の説明】
1 被転写シート 2 カード本体 2a 画像パターン 3a ホログラムパターン 11 ベースフィルム 12 剥離層 13 ホログラム形成層 14 透明薄膜層 15 プライマー層 16 受像・接着層 20 昇華転写部 21 ドラム 22 サーマルヘッド 23 染料フィルム 24 搬送ローラ 30 転写部 31 転写ロール 32 画像形成体

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】耐熱性ベースフィルム上に、このベースフ
    ィルムから剥離容易な剥離層、ホログラム形成層、該ホ
    ログラム形成層よりも屈折率の大きい透明薄膜層および
    ガラス転移点が50℃以上の熱可塑性樹脂とフィラーか
    らなる受像・接着層を順次積層してなり、該フィラーが
    熱溶融温度200℃以上の無機または有機フィラーであ
    ることを特徴とする被転写シート。
  2. 【請求項2】受像・接着層がさらに紫外線吸収剤を含有
    することを特徴とする請求項1に記載の被転写シート。
  3. 【請求項3】剥離層が耐摩擦剤と熱可塑性樹脂から成
    り、その熱可塑性樹脂がポリメチルメタアクリレート、
    またはエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又
    は2のいずれかに記載の被転写シート。
  4. 【請求項4】ホログラム形成層が2液反応型ウレタン樹
    脂を主成分とし、該樹脂のポリオール成分が、ガラス転
    移点70℃から150℃の範囲でかつOH価が50から
    150の範囲にあるアクリルポリオール樹脂であること
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被転写
    シート。
  5. 【請求項5】透明薄膜層と受像・接着層間にプライマー
    層を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか
    記載の被転写シート。
  6. 【請求項6】プライマー層がウレタン樹脂であることを
    特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の被転写シ
    ート。
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