JP2929815B2 - 炭化物粉末の製造方法 - Google Patents

炭化物粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属炭化物粉末、珪素
炭化物粉末、ホウ素炭化物粉末である炭化物粉末の製造
方法に係り、特に、炭化水素と酸素の混合ガスを燃焼し
て得られる還元性燃焼炎を利用する炭化物粉末の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】化物粉末、例えば、炭化珪素粉末は、
高温での強度や耐蝕性に優れた構造用セラミックスとし
て工業的に重要な材料であり、1例として、その高い硬
度を利用して研削或は研磨用の砥粒として使われてい
る。
【0003】このような炭化物粉末を合成する方法とし
ては、金属粉末をプラズマ中に注入し発生した金属蒸気
とメタンなどの炭素含有ガスとを気相反応させて炭化物
を合成する方法が知られている。この方法はプラズマを
使うため容易に高温が得られる反面、設備費が高くまた
運転に大きな電力が必要であることなどに経済的に不利
な点が多い。
【0004】そこで、工業的には、金属と炭素あるいは
金属の酸化物と炭素を混合し、坩堝などの耐熱容器に入
れ電気炉などで高温で長時間反応させる方法が用いられ
ているが、この方法では粉砕、分級等の後処理に相当な
設備と労力が必要で簡便な方法とは言い難くコストも非
高くつく。
【0005】他に、金属炭化物を合成する方法として
は、化学炎を利用することが考えられるが、従来、化学
炎の雰囲気は酸化性雰囲気であって酸化物を合成するの
は容易であるが、炭化物に応用することは難しい。
【0006】化学炎を用いて粉末を合成する方法として
は、例えば、「化学工学」46、524(1982)に
示されているように、H−O炎やC−O
に揮発性金属ハロゲン化物を供給し酸化物超微粒子を合
成する例などがある。このような化学炎を用いる方法
は、設備のためのイニシャルコストが小さく量産が容易
であるなど工業的に有利な点が多いが、化学炎は単に高
温の酸化性雰囲気としてしか扱われておらず、炭化水素
に対して酸素を理論混合比以上に混合した完全燃焼状態
の炎が用いられているので、この方法では酸化物しか合
成できない。
【0007】また、特開昭60−255602公報には
バーナー中に金属粉末を投入に酸化物超微粒子を製造す
る方法が提案されているが、この場合、バーナーは反応
を促進させるための補助熱源でしかなく、超微粒子は金
属粉末の酸素雰囲気下における自己燃焼反応によって合
成されるのでやはり酸化物しか合成することができな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、従来の化学炎法では合成が困難とされていた炭化物
粉末について化学炎法を応用した新規な合成方法を用
い、これにより、工業的に連続的にしかも簡便かつ安価
に製造できる炭化物粉末の製造方法を提供することにあ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、炭化水素
ガスと、該炭化水素ガスに対し、一酸化炭素ガスと水素
ガスと炭素及び/又は炭化水素の炭素源ラジカルとを発
生する還元性燃焼反応の生起する酸素ガスとを混合する
ことにより、還元性燃焼炎を形成させ、次いで該還元性
燃焼炎中に、該還元性燃焼炎の作用で容易に金属蒸気を
発生させる金属酸化物若しくは金属のいずれか又は両者
の粉末からなる原料粉末を不活性キャリアガスと共に噴
霧し、上記炭素源ラジカルと金属蒸気とを気相反応させ
て金属炭化物を得ることを特徴とする炭化物粉末の製造
方法により、解決される。さらに、本発明の請求項2の
方法は、炭化水素ガスと、該炭化水素ガスに対し、一酸
化炭素ガスと水素ガスと炭素及び/又は炭化水素の炭素
源ラジカルとを発生する還元性燃焼反応の生起する酸素
ガスとを混合することにより、還元性燃焼炎を形成さ
せ、次いで該還元性燃焼炎中に、該還元性燃焼炎の作用
で容易に珪素蒸気を発生させる珪素酸化物若しくは珪素
のいずれか又は両者の粉末からなる原料粉末を不活性キ
ャリアガスと共に噴霧し、上記炭素源ラジカルと珪素蒸
気とを気相反応させて珪素炭化物を得ることを特徴とす
る炭化物粉末の製造方法である さらにまた、本発明の
請求項3の方法は、炭化水素ガスと、該炭化水素ガスに
対し、一酸化炭素ガスと水素ガスと炭素及び/又は炭化
水素の炭素源ラジカルとを発生する還元性燃焼反応の生
起する酸素ガスとを混合することにより、還元性燃焼炎
を形成させ、次いで該還元性燃焼炎中に、該還元性燃焼
炎の作用で容易にホウ素蒸気を発生させるホウ素酸化物
若しくはホウ素のいずれか又は両者の粉末からなる原料
粉末を不活性キャリアガスと共に噴霧し、上記炭素源ラ
ジカルとホウ素蒸気とを気相反応させてホウ素炭化物を
得ることを特徴とする炭化物粉末の製造方法である。
【0010】好適には、上記還元性燃焼炎は、周囲に酸
素を含む気体と接触しない状態で形成され、上記金属炭
化物は還元性燃焼炎から排出された後、急冷されて燃焼
排ガス流と共に輸送されて回収される。
【0011】例えば、上記炭化水素ガスがアセチレンガ
スであって、上記酸素ガスはアセチレン1モルに対し
0.5モル以上0.95モル以下の割合の流量で混合さ
れ、上記原料粉末が珪素金属である。
【0012】
【作用】本発明における還元性燃焼炎中の気相反応は、
還元性燃焼炎の作用により発生した原料粉末の気化物又
は熱分解生成物と、炭化水素ガスの還元性燃焼で発生し
た炭素ラジカル又は炭化水素ラジカル等の炭素源とが高
温下で反応して炭化物ができる反応であり、この炭化物
は気相中で急冷されて微細な炭化物粉末になる。
【0013】本発明の製造方法で得られる炭化物粉末と
しては、チタン等の金属、珪素、ホウ素の炭化物粉末を
挙げることができる。これら製造用原料としては、それ
れ酸化物粉末もしくは粉末を使用することができる。
例えば、炭化珪素(SiC)を合成する場合には、二酸
化珪素粉末(SiO)又は金属シリコン粉末(Si)
を用いることができる。
【0014】これらの原料粉末は還元性燃焼炎の熱で容
易にその温度が上がるように、煙霧化して炎の中へ吹き
込まれる。煙霧化は、原料粉末をキャリアガス中に均一
に分散させる操作であり、これは内部に撹拌羽とテーブ
ルフィーダおよび分散ノズルを有する粉体供給器によっ
て行われる。撹拌羽によって細かくほぐされた原料粉末
は、テーブルフィーダによって少量ずつ定量的に分散ノ
ズルへ送られ、分散ノズルから高圧高速で吹き出してい
るキャリアガスによって煙霧状態にされる。煙霧化され
た原料粉末は輸送管を介してバーナまで圧送されバーナ
の中央部から還元性燃焼炎の中へ噴出される。この時、
原料粉末の粒径が小さすぎると粉末が互いに凝集し大き
なかたまりとなりやすく、還元性燃焼炎の中で十分に温
度が上がらなかったり輸送管内で詰まったりするなど運
転上不都合なことが生じる。また逆に、粒径が大きすぎ
ると熱容量が大きく炎の中で十分に温度が上がらない。
この理由から原料粉末の粒径が制約されるため、3〜1
0(μm)の範囲に調整するのが好ましい。
【0015】一方、キャリアガスの種類としては、還元
性燃焼炎中の酸素濃度に影響を与えないこと、高温で金
、珪素、ホウ素と反応しないこと、熱容量が小さく炎
の温度を低下させないことなどからアルゴンのような不
活性ガスを使うのが好ましい。キャリアガスの流量は、
多いほど粉の煙霧化や輸送管内の輸送が容易であるが、
多すぎると還元性燃焼炎の状態に影響を与えるので好ま
しくない。流量としては、バーナに供給される炭化水素
の流量ガス以下に調整するのが好ましく、さらに好まし
くは1/2以下に調整する。また、できるだけ少流量の
ガスで煙霧化や輸送が行えるよう、分散ノズルのオリフ
ィス面積は総和で0.1(mm)以下にすることが好
ましい。
【0016】本発明において使用される炭化水素ガスと
しては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレ
ン、プロピレン、アセチレン等が使用可能である。これ
らの中でも火炎温度の高いアセチレンが最も好ましい。
これは次のような理由による。通常、炎の外周部は内部
に比べて温度が低くなるため、還元性燃焼させた時には
外周部はすすが発生しやすい状態になり、発生したすす
が生成粉末中に混入し不純物となってしまう恐れがあ
る。従って、アセチレンのような燃焼温度が高いガスを
使用すればすすの発生が抑えられ有利である。
【0017】本発明は、炭化水素ガスと酸素ガスとを混
合することにより、還元性燃焼炎を形成するので、本発
明における還元性燃焼炎について、例えば、炭化水素ガ
スとしてアセチレアセチレンガスを使用する例で説明す
ると、 1)完全燃焼の場合 2C+5O→4CO+2HO 2)中性燃焼の場合 C+O→2CO+H 3)還元性燃焼の場合 C+mO→C+2m・CO+H+2(1−m)・C (0<m<1) と3つの場合分けによって表される還元性燃焼を指して
いる。
【0018】従って、炭化水素としてアセチレンガスを
用いる場合、酸素ガスの混合比がアセチレン1モルに対
し1モルより少なければ、炭素源の炭素ラジカルが発生
し、混合比が小さ過ぎると、炎の温度が急激に下がり、
炎中の炭素源の濃度が過剰になり反応生成物、即ち炭
物の中にすすが混入することになる。
【0019】上述の場合には、炭化水素ガスとして好ま
しいアセチレンガスについて説明したが、一般式として
で表される炭化水素ガスについて酸素ガスの混
合比mについて、上述のアセチレンガスと同様な中性焼
炎は、 C+(X/2)・O→ X・CO+(Y/2)・H で表されることから、還元性燃焼を得るためには、m<
X/2としなければならない。本発明においては、酸素
ガスの混合比mは、 0.5・(X/2)<m<0.95・(X/2)・・・(A) の範囲に調整される。
【0020】酸素ガスの混合比mの値を(A)式の範囲
内に調整するのは、X/2=1のアセチレンガスの場合
と同様に、混合比mが大きくなるにつれ本発明の反応に
直接係わる炭素ラジカル、炭化水素ラジカル等の炭素源
の発生量が急激に減少し、X/2以上では完全になくな
ってしまうためである。
【0021】一方、酸素ガスの混合比mが小さ過ぎる
と、炎の温度が急激に下がり炎中の炭素源の濃度が過剰
になり反応生成物中にすすとして混入するようになる。
したがって混合比mは上記(A)式の範囲内に調整する
ことが好ましい。
【0022】さらに重要なことには、酸素ガスの混合比
mの値によって反応の収率も変わりうるので、高い収率
を得るためには、合成しようとする炭化物の種類や用い
る原料の種類によって上記(A)式の範囲内で細かく調
整されることが好ましい。
【0023】例えば、珪素の炭化物粉末を製造する際に
原料として用いられる二酸化珪素を珪素と比べた場合、
二酸化珪素には酸素が含まれているので珪素よりも混合
比mを小さくして還元性を強めたほうが収率が上がる。
【0024】本発明においては原料粉末を還元性燃焼炎
の中で気化あるいは熱分解させることが必要であるの
で、炎の温度は原料粉末の気化あるいは熱分解温度以上
になるよう調整される。使用する炭化水素の種類や酸素
の混合比によっては、発熱量が小さくて気化あるいは熱
分解温度以上にならない場合もありうる。このような場
合には、外部ヒータにより補助加熱を行い炎の温度を気
化あるいは熱分解温度以上まで上げてやるとよい。
【0025】本発明において、還元性燃焼炎中に供給さ
れる原料粉末の供給量は粉体供給器内のテーブルフィー
ダによって調整されるが、その量が多すぎると炎の温度
や収率に影響を与えるので、使用する炭化水素の種類と
流量、酸素の混合比、原料粉末の熱容量、キャリアガス
の流量、気相反応にともなって出入りする熱の量、補助
加熱の有無などを考慮して気相反応が十分進行するよう
に最適の量が容易に決定される。
【0026】本発明においては、重要ことには、還元性
燃焼炎は、酸素を含まない雰囲気中で形成される。これ
は、大気中など酸素を含む雰囲気中で燃焼させると、炎
は中心部の非酸化性の内炎と外気が拡散・混合してきて
酸化性の外炎からなる二重構造をとるため、内炎ででき
た炭化物が外炎を通る間に酸化されてしまうという不都
合が起こることによる。酸素を含まない雰囲気は、例え
ば、外気から遮断された反応容器の一端にバーナー取り
付け他の一端から容器内のガスを排気するような装置構
成によって容易に作ることができる。
【0027】炎の中の気相反応によってできた炭化物
は、炎も外へ出ると急速に冷却されて粉末となる。この
粉末は、燃焼排ガスと共に反応容器の排気側に付設した
サイクロン、バグフィルタ等の集塵機に導かれ排ガスと
分離され製品として回収される。
【0028】換言すれば、本発明は、酸素を含まない雰
囲気中で形成させた炭化水素の還元性燃焼炎中のガス
と、炎の熱でガス化した原料粉末の蒸気との気相反応を
利用して金属、珪素、ホウ素の炭化物粉末を製造する方
法であり、珪素を原料にして珪素の炭化物粉末を合成す
る場合を例にとると、次のようなプロセスを経て粉末が
合成される。まず、原料の珪素粉末は粉体供給器内で煙
霧化されキャリアガスとともに炎の中に吹き込まれる。
煙霧化された珪素は炎の熱と温度で容易に気化し、ただ
ちに還元性燃焼中の炭素ラジカルや炭化水素ラジカルな
どの炭素源と反応して珪素の炭化物粉末すなわち炭化珪
素となる。これを集塵機で回収して製品にできる。
【0029】
【実施例】まず、本発明に係る粉末炭化物の製造装置に
ついて説明する。この製造装置は、原料粉体を供給する
ための粉体供給器部2と、この粉体供給器部2に接続さ
れると共に炭化水素ガス及び酸素ガスを供給するバーナ
部4と、バーナ部4から連続した反応容器部6と、反応
容器部6から順次連続して接続されて後処理をするため
のサイクロン部8、バグフィルター部10及び排気用ブ
ロア部12とから成っている。これら粉体供給器部2、
バーナ部4、反応容器部6、サイクロン部8、バグフィ
ルター部10及び排気用ブロア部12は互いに気密に接
続されて1つの系を成している。
【0030】粉体供給器部2は、粉体原料貯留用のホッ
パ22と、このホッパ22内で粉体原料を撹拌するため
の撹拌羽24と、撹拌された粉体原料を連続して供給す
るためのテーブルフィーダ26と、粉体原料を分散さす
分散ノズル28とから成っている。また、ホッパ22の
外側には、撹拌羽24とターンテーブルフィーダ26と
を駆動するためのモータ30が設けられている。そし
て、分散ノズル28にはキャリアガス供給配管32が組
み込まれており、このキャリアガス供給配管32を介し
て不活性の高圧キャリアガス、例えば、アルゴンガスが
分散ノズル28に供給される。分散ノズル28は原料粉
末輸送管34に接続されている。図2及び図3には、分
散ノズル28の拡大図が示されており、図2及び図3か
ら明かなように、分散ノズル28はターンテーブルフィ
ーダ26の周辺に沿って所定間隔だけ隔てて複数個、図
示の場合、12個からなっており、図2中、矢印aで示
される方向にキャリアガス供給配管32からの高圧キャ
リアガスが噴出され、図2中の符号bで示されるよう
に、原料粉体が煙霧化される。
【0031】原料粉末輸送管34の他端はバーナ部4に
接続されており、バーナ部4はバーナ本体42を有して
おり、このバーナ本体42の一端には原料粉末輸送管3
4と共に炭化水素供給配管44及び酸素供給配管46が
接続されており、これらの原料粉末輸送管34、炭化水
素供給配管44及び酸素供給配管46には、図示しない
流量制御器がそれぞれ取付けられている。一方、バーナ
本体42の他端はノズルとなっており、反応容器部6に
気密に接続されている。
【0032】反応容器部6は鉛直方向に保持された円筒
形の反応容器62を有しており、この反応容器62の上
部には、上記バーナ本体62のノズル側の端を気密に組
み込むための開口と、この開口と同心円状に設けられた
置換ガス供給口64とを有している。また、稼働時のバ
ーナ部4からの火炎の長さにほぼ相当した反応容器62
の部位の外周には補助加熱用の外部ヒータ66が取付け
られており、火花放電式の着火装置68も組み込まれて
いる。反応容器62の下部は、火炎から受ける高熱に耐
えるように水冷二重管になっている。そして、この反応
容器62は輸送管68に接続されており、この輸送管7
0には、希釈ガスを噴出するため希釈ガス噴出ノズル7
2が反応容器62の下の位置で挿入されている。
【0033】輸送管68の他端は、合成した化物粉末
を捕集するためのサイクロン部8に接続されており、こ
のサイクロン部8は、反応容器62の下部と同様に水冷
二重管になってガスの冷却器の役割も兼ねている。サイ
クロンの下流部には微粉末捕集用のバグフィルタ部10
が輸送管を介して接続されており、バグフィルタ部10
の下流には排気用の高圧ブロア部12が連結されてい
る。
【0034】次に、このように構成された炭化物の製造
装置の作動についてのべる。
【0035】まず、置換ガス供給口64から反応容器6
2内にアルゴンガス等の不活性ガスが流し込まれ、同時
に希釈ガス供給ノズル72から空気もしくは窒素等の希
釈ガスが輸送管70内に流し込まれ、排気用の高圧ブロ
ア部12によって反応容器部6からサイクロン部8、バ
グフィルタ部10にいたるまでの系内のガスが排気さ
れ、これにより、系内のガスが徐々に不活性ガスに置換
される。
【0036】続いて、炭化水素供給配管44及び酸素供
給配管46から炭化水素ガスと酸素ガスがそれぞれバー
ナ部4に供給され、内部バーナ部4の内部で予混合され
た後反応容器62内に噴出される。運転中、それぞれ
の、ガスの流量と混合比は、常にあらかじめ設定した値
に保たれるようマスフローコントローラによって正確に
制御される。反応容器62内に噴出された混合ガスは、
噴出後すぐに着火装置68によって着火され還元性燃焼
炎が反応容器62内に形成される。補助加熱が必要な場
合は、ガスの供給に先立ち外部ヒータ66に所定の電力
が投入される。
【0037】この還元性燃焼炎の働きにより、反応容器
62内に残留している酸素は次第に消費されていき、一
定時間の後には、反応容器62内は、着火によって混合
ガスから生じた還元性燃焼ガスと置換用ガスとからのみ
なる還元性雰囲気に完全に置き変えられる。
【0038】尚、置換ガス供給口64からの置換ガスの
供給は、運転中、反応容器62及び輸送管70の管壁を
熱から保護するため、継続され、また、希釈ガス噴出ノ
ズル72からの希釈ガスの噴出も継続され、これによ
り、ガスの滞留しやすいサイクロン部8、バグフィルタ
部10内での爆発が起こらないように還元性燃焼ガスの
希釈が行われる。その流量は流量計で制御され、還元性
燃焼で生じた可燃性ガスの濃度がその爆発範囲外になる
ように調整される。
【0039】このようにして反応容器62内のガスが置
換された後、粉体供給器部2から煙霧化された原料粉末
が原料粉末輸送管34を介して還元性燃焼炎内に供給さ
れる。粉体供給器部2においては、ホッパ22内に充填
された原料粉末は、内部の撹拌羽24によってほぐされ
ながらテーブルフィーダ26により少量ずつ定量的に分
散ノズル28の吹き出し口に供給された後、分散ノズル
28から吹き出す高圧高速のキャリアガスによって粉末
は非常に細かく分散され煙霧化される。
【0040】煙霧化された原料粉末が還元性燃焼炎中へ
吹き込まれると、原料粉末は炎の熱で気化あるいは熱分
解し、炎中のガスと気相反応して炭化物粉末ができる。
【0041】その後、炭化物粉末は輸送管70を経てガ
スと共にサイクロン部8に送られ、ここでガスと分離・
捕集される。サイクロン部8で分離できなかった残余の
微粒子は、後段のバグフィルタ部12で完全にガスと分
離され回収される。分離されたガスは、排気用の高圧ブ
ロア部12を経て系外に排出される。
【0042】以下、このような炭化物粉末製造装置を用
いて炭化物粉末を製造する具体的な実施例について説明
する。
【0043】(実施例1) 炭化水素ガスとしてアセチレンを用いて還元性燃焼炎を
形成し、原料粉末として硅素粉末から硅素炭化物粉末を
合成した例を以下に示す。まず、置換ガス供給口64か
らアルゴンガスを50(1分間当りの標準状態換算の流
量、リットル、即ち、以下「N1/分」と記す)の流量
で反応容器62内に吹き込み、一方、希釈ガス噴出ノズ
ル72からは空気を1000(N1/分)の流量で噴出
させ、これにより、系内のガス置換を行った。
【0044】続いてアセチレンガスと酸素ガスをそれぞ
れを20.9(N1/分)、17.8(N1/分)の流
量でバーナ部4に供給し、還元性燃焼炎を反応容器62
内に形成させた。このとき、上述の(A)式における酸
素ガスの混合比はm=0.85であるので、炎中にはア
セチレンの還元性燃焼によって炭素ラジカル、炭化水素
ラジカルが生成し、炎は還元性の状態である。
【0045】原料粉末の珪素には平均粒径3.5ミクロ
ン(μm)の粉末を用い、アルゴンのキャリアガスを9
(平方センチ当りのキログラム・フォース、即ち、kg
f/cm)の圧力、9(N1/分)の流量で分散ノズ
ル28より噴出させて、3(g/分)の割合でバーナ部
4へ供給した。
【0046】この時火炎温度は、熱平衡計算によれば2
800(℃)である。この温度は、硅素の気化温度23
60(℃)より高く硅素は容易に気化する。生成した珪
素炭化物粉末は、サイクロン部8とバグフィルタ部10
でガスと分離し回収した。
【0047】このようにして合成した珪素炭化物粉末
を、透過型電子顕微鏡写真観察、BET法による吸着比
表面積測定、X線回折、EDS分析及び化学分析により
評価した。
【0048】図4には、得られた珪素炭化物粉末の電子
顕微鏡写真を示す。この写真及び吸着比表面積測定か
ら、得られた珪素炭化物粉末は、平均粒径を50ナノメ
ータ(nm)、比表面積を100m/gとする微細な
球状の粉末であった。
【0049】図5には、得られた珪素炭化物粉末のX線
回折図を示す。図5の回折パターンから明らかに、得ら
れた珪素炭化物粉末がβ形の結晶形をもつ炭化硅素であ
ることが判る。
【0050】次に、化学分析の結果を下記に示す。尚、
比較のため、原料粉末の測定値をカッコ内に示す。 Fe 320ppm (610ppm) Co 3ppm未満( 3ppm未満) Ni 41ppm ( 68ppm) Cr 75ppm (160ppm) Mn 10ppm ( 15ppm) Ti 1ppm未満( 2ppm) Zr 1ppm未満( 1ppm未満) このように、得られた珪素炭化物の不純物は原料粉末よ
りも少なく、純度が上がっていることが判る。
【0051】(実施例2) ホウ素粉末からホウ素炭化物粉末を合成した例を示す。
【0052】ホウ素の炭化物はBCの化学式で表さ
れ、上述した実施例1の炭化硅素に比べると炭素の比率
が小さいので、酸素ガスの混合比は、上述した実施例1
の場合より大きくすること必要であり、混合比はm=
0.92とした。又、ホウ素の気化温度は2550℃で
あって、アセチレン炎のみの加熱で十分反応が進むので
補助加熱は行わなかった。回収された粉末は、粒径50
〜100ナノメータの微細な球形粉末であり、X線回折
によりBCの化学式で表されるホウ素の炭化物である
ことが判った。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、炭化水素の還元燃焼炎中の炭化源と、この還元性
燃焼炎による熱でガス化した原料粉末の金属、珪素、ホ
ウ素等のラジカルとの気相反応によって、金属酸化物、
珪素酸化物、ホウ素酸化物粉末又は、金属粉末、珪素粉
末、ホウ素粉末から炭化物粉末を非常に単純な行程で連
続的にしかも簡便かつ安価に製造することができる炭
物粉末の製造方法を提案でき、従来の大型雰囲気炉を使
う方法に比べると、本発明の方法によれば、設備を極め
て簡便にでき、しかも、圧倒的にイニシャルコストを低
くすることができる。また、本発明の方法によれば、原
料粉末を一度ガス化して気相反応させる方法を取るの
で、反応が均一に進み、粉砕工程を経ることなく微粉末
が得られ、しかも、合成された粉末の純度が高いなどの
利点がある。さらにまた、安価な炭化水素ガスの燃焼熱
を主な熱源とするので運転費は非常に小さくて済むこと
等、工業的にメリットが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる粉末炭化物の製造装置を示す概
略系統図である。
【図2】図1の粉体供給器部の分散ノズルの付近を拡大
して模式的に示す概略模式図である。
【図3】図2の分散ノズルを下方方向から示す概略模式
図である。
【図4】本発明の一実施例により得られた珪素炭化物粉
末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真図である。
【図5】図4り得られた珪素炭化物粉末のX線回折を
示すグラフ図である。
【符号の説明】
2 粉体供給器部 4 バーナ部 6 反応容器部 8 サイクロン部 10 バグフィルタ部 12 高圧ブロア部 28 分散ノズル 32 キャリアガス供給配管 34 粉末輸送管 44 炭化水素供給配管 46 酸素供給配管 72 希釈ガス噴出ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C01B 31/30 - 31/36 C04B 35/56

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化水素ガスと、該炭化水素ガスに対
    し、一酸化炭素ガスと水素ガスと炭素及び/又は炭化水
    素の炭素源ラジカルとを発生する還元性燃焼炎反応を生
    起する割合で酸素ガスとを混合して点火することによ
    り、還元性燃焼炎を形成させ、次いで該還元性燃焼炎中
    に、該還元性燃焼炎の作用で容易に金属蒸気を発生させ
    る金属酸化物若しくは金属のいずれか又は両者の粉末か
    らなる原料粉末を不活性キャリアガスと共に噴霧し、上
    記炭素源ラジカルと金属蒸気とを気相反応させて金属炭
    化物を得ることを特徴とする炭化物粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭化水素ガスと、該炭化水素ガスに対
    し、一酸化炭素ガスと水素ガスと炭素及び/又は炭化水
    素の炭素源ラジカルとを発生する還元性燃焼炎反応を生
    起する割合で酸素ガスとを混合して点火することによ
    り、還元性燃焼炎を形成させ、次いで該還元性燃焼炎中
    に、該還元性燃焼炎の作用で容易に珪素蒸気を発生させ
    る珪素酸化物若しくは珪素のいずれか又は両者の粉末か
    らなる原料粉末を不活性キャリアガスと共に噴霧し、上
    記炭素源ラジカルと珪素蒸気とを気相反応させて珪素炭
    化物を得ることを特徴とする炭化物粉末の製造方法。
  3. 【請求項3】 炭化水素ガスと、該炭化水素ガスに対
    し、一酸化炭素ガスと水素ガスと炭素及び/又は炭化水
    素の炭素源ラジカルとを発生する還元性燃焼炎反応を生
    起する割合で酸素ガスとを混合して点火することによ
    り、還元性燃焼炎を形成させ、次いで該還元性燃焼炎中
    に、該還元性燃焼炎の作用で容易にホウ素蒸気を発生さ
    せるホウ素酸化物若しくはホウ素のいずれか又は両者の
    粉末からなる原料粉末を不活性キャリアガスと共に噴霧
    し、上記炭素源ラジカルとホウ素蒸気とを気相反応させ
    てホウ素炭化物を得ることを特徴とする炭化物粉末の製
    造方法。
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