JP2915240B2 - ポリエーテルエステルブロック共重合体及び該共重合体からなる弾性糸 - Google Patents

ポリエーテルエステルブロック共重合体及び該共重合体からなる弾性糸

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JP2915240B2 JP5063293A JP5063293A JP2915240B2 JP 2915240 B2 JP2915240 B2 JP 2915240B2 JP 5063293 A JP5063293 A JP 5063293A JP 5063293 A JP5063293 A JP 5063293A JP 2915240 B2 JP2915240 B2 JP 2915240B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はポリエーテルエステルブ
ロック共重合体及びそれからなる弾性糸に関する。
【0002】さらに詳しくは、伸長回復能に優れる新規
なポリエーテルエステルブロック共重合体及びそれから
なる弾性糸に関する。
【0003】
【従来の技術】従来から弾性糸としてはゴム、ポリウレ
タン等が使用されているが、これらは弾性回復率という
点では優れた特性を示す反面、耐熱性に問題がある。
【0004】一方、近年ポリエーテルエステルブロック
共重合体タイプの弾性糸が使用されだした。このポリマ
ーは、糸にした場合、伸長回復率に於てはポリウレタン
に及ばないが、低伸張下に於て比較的良好な回復性を示
し、また溶融紡糸できるというメリットもある。ポリエ
ーテルエステルブロック共重合タイプの弾性糸として代
表的なものに、ポリブチレンテレフタレートをハードセ
グメントとし、ポリテトラメチレングリコールをソフト
セグメントとするエラストマーがある。これは、ポリウ
レタンと比較すると、ブロック共重合体中におけるハー
ドセグメントの含有量が多く、そのため永久歪が大きか
ったり、弾性的性能が劣る、伸長応力が大きいなどとい
う欠点がある。
【0005】かかる欠点を改善するため、弾性糸の性能
を向上させる方法としては、例えば結晶核剤を配合して
結晶化度を高める方法(特開昭59―45349号公
報、同59―45350号公報)が提案されている。し
かし、このような方法では弾性糸の性能が大きく改良す
ることはできず、弾性糸として使用するためには依然と
して性能が不十分である。
【0006】また、ポリエーテルエステルブロック共重
合体のハードセグメントの酸成分として2,6―ナフタ
レンジカルボン酸または4,4′―ジフェニルジカルボ
ン酸を用いたブロック共重合体弾性糸について報告され
ている((特開平4―370219号公報)が、性能は
まだ十分ではない。このようなことから、弾性的性能が
改良された、溶融紡糸可能な弾性糸が要望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のポリ
エーテルエステルブロック共重合体より伸長回復能が改
良されたポリエーテルエステルブロック共重合体及び該
共重合体からなる弾性糸を提供することを目的とするも
のである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる目的
を達成する鋭意検討した結果、ポリエーテルエステルブ
ロック共重合体のハードセグメントを、下記式(1)で
示されるジカルボン酸を主成分とする酸成分残基から
【0009】
【化2】
【0010】なるポリエステルとし、ソフトセグメント
成分であるポリ(アルキレンオキシド)グリコール残基
の含有量を特定の範囲に設定したとき、弾性的性能に優
れた弾性糸を与えるポリエーテルエステルブロック共重
合体が得られることを見いだした。
【0011】即ち、本発明は、実質的に(a)下記式
(I)で表わされる単位、(b)下記式(II)で表わさ
る単位及び(c)下記式(III)で表わされる単位か
らなる数平均分子量が1500〜3000のポリ(アル
キレンオキシド)グリコール残基からなり、かつ共重合
体中の該ポリ(アルキレンオキシド)グリコール残基の
含有量が55〜85重量%である。固有粘度0.6以上
5.0以下のポリエーテルエステルブロック共重合体で
ある。
【0012】
【化3】
【0013】式(II)中のR1 は炭素数2〜8の脂肪族
基である。好ましくは、炭素数2〜8のアルキレン基で
ある。アルキレン基としてエチレン、プロピレン、ブチ
レン、ペンチレン、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0014】式(III)中のnは2,3又は4であり、m
は20〜68である。式(III)で表わされる単位からな
る数平均分子量が1500〜3000のポリ(アルキレ
ンオキシド)グリコール残基は、共重合体の繰返し単位
中に、55〜85重量%の割合で存在する。好ましく
は、60〜80重量%である。
【0015】本発明の共重合体は、下記式(1)で示す
ジカルボン酸を主たる酸成分として用い製造する。
【0016】
【化4】
【0017】上記式(1)で表わされるジカルボン酸又
はそのエステルは、従来公知の方法、例えば、キシリレ
ンジハライドとP―ヒドロキシ安息香酸(またはP―ヒ
ドロキシ安息香酸エステル)とのウィリアムソン合成に
よって得られる。
【0018】すなわち、本発明の共重合体は、(a)上
記式で表わされるジカルボン酸及び/又はそのエステル
形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分、(b)
低分子量グリコール及び(c)数平均分子量が1500
〜3000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール
を、(c)該ポリ(アルキレンオキシド)グリコール残
基の含有量が上記(a),(b),及び(c)の合計量
に対して55〜85重量%の割合とし重縮合せしめ固有
粘度0.6以上5.0以下のポリエーテルエステルブロ
ック共重合体を生成しめることによって製造される。
【0019】より具体的には、本発明の共重合体はジカ
ルボン酸成分の好ましくは80モル%以上、より好まし
くは90モル%以上を上記式(1)で示されるジカルボ
ン酸及び/又はそのエステル形成性誘導体とし、これに
低分子量グリコール成分、及び数平均分子量約1500
〜3000のポリ(アルキレンオキシド)グリコールを
重縮合反応させることによって得られる。
【0020】上記式(1)で示されるジカルボン酸は、
その構造が剛直なため、非常に結晶性のよいポリエステ
ルを構成することができる。そのため、ハードセグメン
トを形成するポリエステル成分の含有量を減らすことが
でき、弾性的性能の優れた共重合体を得ることができ
る。上記式(1)で示されるジカルボン酸及び/または
そのエステル形成性誘導体の酸成分全体に対する割合が
80モル%以下の場合、永久歪が大きくなり、満足のい
く弾性回復能は示さない。
【0021】また、上記式(1)で示されるジカルボン
酸のエステル形成性誘導体としては、メチル、エチル、
n―プロピル、イソプロピル、ブチルなどの低級脂肪族
エステルや、フェニル、p―トリル、ナフチル、p―ク
ロロフェニル等のアリールエステルが挙げられる。
【0022】20モル%未満の量で使用される他の酸成
分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、
2,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレン
ジカルボン酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸、ビ
ス(p―カルボキシフェニル)メタン等の芳香族ジカル
ボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデ
カン二酸等の脂肪族ジカルボン酸及び1,4―シクロヘ
キサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸並びにそれ
らのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0023】また、低分子量グリコール成分としては、
エチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,5
―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、ジエ
チレングリコール、1,4―シクロヘキサンジメタノー
ル等が挙げられ、1,4―ブタンジオールが好ましい。
【0024】ポリ(アルキレンオキシド)グリコールと
しては、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンオ
キシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)
グリコール等が挙げられ、好ましくはポリ(テトラメチ
レンオキシド)グリコールの単独重合体、または前記単
独重合体を構成する反復単位の2種以上がランダムまた
はブロック状に共重合したランダム共重合体またはブロ
ック共重合体、さらには前記単独重合体または共重合体
の2種以上が混合された混合重合体が使用される。ここ
で用いるポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平
均分子量は約1500〜3000である。数平均分子量
が1500未満では、得られるポリエーテルエステルブ
ロック共重合体のブロック性が低下するために弾性性能
に劣る。一方、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール
の数平均分子量が3000を超える場合では、生成ポリ
マーが相分離してブロック共重合体となり難く、弾性的
性能に劣るため好ましくない。
【0025】ポリエーテルエステルブロック共重合体中
のポリ(アルキレンオキシド)グリコール残基の含有量
は55〜85重量%の範囲にあることが必要であり、好
ましくは60〜80重量%範囲にあることがより好まし
い。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの含有量が
90重量%を超えると、該共重合体の融点が低くなりす
ぎるため耐熱性が劣り、実用に耐える弾性糸を得ること
ができない。また、60重量%未満では永久歪が大きく
弾性回復能に劣る弾性糸しか得られない。
【0026】本発明にかかる前記ポリエーテルエステル
ブロック共重合体は、(a)上記式(I)で示されるジ
カルボン酸及び/またはそのエステル形成性誘導体を主
成分とするジカルボン酸成分と、(b)低分子量グリコ
ール成分及び(c)ポリ(アルキレンオキシド)グリコ
ールを反応器に入れ、触媒の存在下または非存在下でエ
ステル交換反応あるいはエステル化の反応を行い、更に
触媒の存在下、高真空で重縮合反応を行って所望の重合
度まで上げる方法で好適に製造される。
【0027】好ましくは用いられる重縮合触媒として
は、チタン、錫、ニオブ、ゲルマニウム、アンチモンな
どの化合物が例示されるが、特にチタン化合物が好まし
い。
【0028】また、弾性体を構成するポリエーテルエス
テルブロック共重合体の固有粘度は、0.6以上5.0
以下であることが必要であり、特に1.0以上4.0以
下であることが伸長回復性能向上の面で特に好ましい。
固有粘度が0.6未満の場合には、弾性糸としたとき永
久歪が大きく伸長回復率が小さいなど性能に劣るものと
なり易い。一方、固有粘度が5.0を超えると弾性糸と
したとき、成形性が低下して、弾性糸としての本来の伸
びる機能が低下する。尚、ここで言う固有粘度とは、フ
ェノール/テトラクロロエタン(1,1,2,2,―テ
トラクロロエタン)=60/40(重量比)の混合溶媒
10mlに対して試料120mgを溶解させ、35℃で
測定した溶液粘度より算出した値である。
【0029】本発明のポリエーテルエステルブロック共
重合体は、上記各成分を加熱溶融反応せしめることによ
り製造される。重合反応の初期は常圧下で、反応温度は
好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以
上、特に好ましくは180℃以上とし、反応の進行とと
もに昇温するのが好ましい。この場合の上限は300
℃、好ましくは280℃程度である。この常圧反応の際
には、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下とする
ことが好ましい。200℃以上300℃以下、好ましく
は220℃以上280℃以下とした後減圧し、反応の結
果生じる水やアルコール及び必要に応じて過剰に用いた
低分子量グリコールを強制的に反応系外に除去すること
が好ましい。反応時間は固有粘度が0.6以上に達する
に足る時間であればよく、またこの時間は反応条件によ
っても異なるが、30分〜10時間程度である。
【0030】本発明の弾性糸を構成するポリエーテルエ
ステルブロック共重合体には、通常のポリエステルと同
じく、艶消し剤、顔料(例えはカーボンブラックな
ど)、酸化防止剤(例えばヒンダードフェノール系化合
物、ヒンダードアミン系化合物)、紫外線吸収剤(例え
ばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合
物、サリチレート系化合物)等を含んでいても何ら差し
支えない。
【0031】以上に説明したポリエーテルエステルブロ
ック共重合体は、特別の手段を要することなくきわめて
容易に溶融紡糸できるので、一般の熱可塑性重合体の溶
融紡糸法に準じて紡糸することができる。すなわち、本
発明の弾性体は、本発明のポリエーテルエステルブロッ
ク共重合体を溶融紡糸することにより製造される。例え
ば、エクストルーダ型溶融紡糸装置を用い、共重合体の
融点より10から80℃高い温度で溶融し、紡糸口金か
ら吐出し、冷却固化したのち、ローラを介して未延伸糸
を捲き取る。即ち、ポリウレタン弾性糸とは異なり、通
常のポリエステル繊維と同様に、糸条及び単糸デニール
を任意に設定できる。
【0032】上記のブロック共重合体を溶融紡糸して得
られた糸はそのままでも十分な弾性性能を有するが、弾
性糸の使用目的にあわせて更に延伸及び/または熱処理
を施してもよく、熱処理は伸長熱処理、定長熱処理、弛
緩熱処理のいずれであってもよい。
【0033】
【発明の効果】以上に説明したように、下記式(1)を
酸成分とした用いたポリエステル成分の結晶性が
【0034】
【化5】
【0035】非常に良いため、ハードセグメントを形成
するポリエステル成分の含有量が少なくてすむ。そのた
め、本発明によれば、構成するポリエーテルエステルブ
ロック共重合体として、ポリエステル成分が上記式
(1)を主とする酸成分からの残基と低分子量グリコー
ル成分からの残基からなり、前記ポリ(アルキレンオキ
シド)グリコール成分からの残基の含有量が全ポリマー
の55〜85重量パーセントである特定のポリエーテル
エステルブロック共重合体を用いることにより、弾性的
性質、特に伸長回復率に優れた弾性糸を提供することが
できる。
【0036】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明
する。実施例に於て、「部」はすべて重量部を示す。
尚、ポリエーテルエステルブロック共重合体の特性は、
下記方法によって測定した。
【0037】1.固有粘度(IV) フェノール/テトラクロロエタン(1,1,2,2,―
テトラクロロエタン)=60/40(重量比)の混合溶
媒10mlに対して試料120mgを溶解させ、35℃
で測定した溶液粘度より算出した。
【0038】2.強度、伸度 試長5cm、引張速度5cm/分で伸長し、破断時の強
度、伸度を測定した。
【0039】3.100%荷重 試長5cm、引張速度5cm/分で伸長し、100%伸
長時の荷重を測定した。
【0040】4.伸長回復率 試長5cm、引張速度5cm/分で100%伸長し、つ
いで5cm/分で試料を元に戻した後の試料の長さ
(L′)を測定し、次式により算出した。 伸長回復率={1−(L′−5)/5}×100(%)
【0041】5.融点 共重合体の融点は、DSCを用い、10℃/分の昇温速
度で測定した。
【0042】
【実施例1】攪拌装置、窒素ガス導入口及び留出口を備
えた三つ口フラスコ中に下記式(2)で
【0043】
【化6】
【0044】示されるジカルボン酸ジエステル86.9
部、1,4―ブタンジオール27.0部、ポリテトラメ
チレングリコール(数平均分子量2000)170部、
及びテトラブチルチタネート0.03部をいれ、よく窒
素置換した後、窒素ガスを緩やかに流しながら200℃
に加熱溶融攪拌した。約90分後反応温度を220℃に
上昇せしめた。それから約30分後、反応温度を250
℃に上昇させた。1時間後系内を徐々に減圧にし、約4
0分を要して約0.5mmHgの圧力にし、更に30分
重合を続けた。
【0045】生成したポリエーテルエステルブロック共
重合体をペレット化した後、ペレットを乾燥後、高化式
フローテスターにより215℃で溶融し、直径0.5m
mのホールをもつノズルを用い、30kgの荷重で押し
出した。このポリマーを20m/2分の速度で捲き取
り、弾性糸を得た。この弾性糸の特性及び性能を表1に
示す。
【0046】
【実施例2】ポリテトラメチレングリコール(数平均分
子量2000)を143部にした以外は実施例1と同様
にして、重合した。そして、溶融温度を225℃にした
以外は実施例1と同様にして紡糸した。この結果を表1
にあわせて示す。
【0047】
【比較例1】ジメチルテレフタレート135部、1,4
―ブタンジオール94部、ポリテトラメチレングリコー
ル(数平均分子量2000)250部、及びテトラブチ
ルチタネート0.12部を実施例1と同様に仕込み、同
様に重合した。また、実施例1と同様にして紡糸した。
この結果を表1にあわせて示す。
【0048】
【表1】
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08G 63/00 - 63/91 D01F 6/86

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に(a)下記式(I)で表わされ
    る単位、(b)下記式(II)で表わされる単位及び
    (c)下記式(III)で表わされる単位からなる数平均
    分子量が1500〜3000のポリ(アルキレンオキシ
    ド)グリコール残基からなり、かつ共重合体中の該ポリ
    (アルキレンオキシド)グリコール残基の含有量が55
    〜85重量%である、固有粘度0.6以上5.0以下の
    ポリエーテルエステルブロック共重合体。 【化1】 [但し、式(II)中のR1は炭素数2〜8の脂肪族基で
    ある。式(III)中のnは2,3または4であり、mは
    20〜68である。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のポリエーテルエステルブ
    ロック共重合体からなる弾性糸。
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