JP2912427B2 - 水素吸蔵合金粉末の製造方法とNi―水素電池用陰極 - Google Patents

水素吸蔵合金粉末の製造方法とNi―水素電池用陰極

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、水素吸蔵合金粉末の製造方法とそれを利用
した耐食性にすぐれたNi−水素電池用陰極、特にNi−水
素電池の性能向上に寄与する陰極に関する。
(従来の技術) 今日、ビデオムービー、ウォークマン等のAV機器のよ
うに小型軽量化が求められる電気製品には、より高容量
で小型軽量の2次電池の開発が求められている。
ところで、現在、AV機器、コンピューターのメモリー
バックアップに用いる二次電池は、Ni−Cd電池が主流で
ある。しかしながら、Cdの公害問題、Cdが亜鉛精練の副
産物という資源的問題、そしてより高電気容量の二次電
池の開発といった観点から、Cdのかわりに水素吸蔵合金
を陰極材料に用いた二次電池の開発が進められ、Ni−水
素電池の実用化が進められようとしている。
ここに、「Ni−水素電池」とは、Ni−水素化物電池と
も称され、セパレータを介して陽極、陰極を対向させて
設置したうえでそれらを電解液で含浸させた二次電池で
あり、陰極における水素貯蔵体として水素吸蔵合金を使
用するものである。
しかしながら、Ni−水素電池を量産化しようとするに
あたり新しい問題点が発生してきた。
すなわち、小型試作、サンプル試作のように使用する
陰極材料の量が少なく小型の溶解炉で少量溶製した場合
と、大量に溶製した場合とでは、同じ合金組成といえど
も、前者は目的の性能が得られるものの、後者の場合に
は得られた二次電池の容量のバラツキが多かったり、繰
り返し充放電試験テストで早期に容量低下が生じたり、
あるいは電池内部抵抗が上昇したりして目的の性能が得
られなかった。雑誌「工業レアメタル」No.100,1990,p.
92参照。
従来にあって、このように量産化をするに際して発生
した問題点を解決するためにとられた手段は、溶製した
合金を真空中、あるいはAr雰囲気中で1000℃近傍の高温
にて7〜8時間という長時間熱処理して均質化した後、
凝固した材料をボールミルを使用するなどして機械的に
粉砕して粉末として陰極材料とするという方法であっ
た。特開昭63−146354号、特開昭62−15760号参照。
かかる熱処理によって大量の溶製材を用いる際の問題
点はある程度解決されたが、少量の溶製材を用いる際に
得られる電池性能に比べると明らかにまだ劣っており、
今後、Ni−水素二次電池の安定量産のためにはこの問題
は解決しておかなくてはならない。
(発明が解決しようとする課題) 本発明の目的は、前述のような今日的ニーズに答える
べく登場したNi−水素二次電池に対して、充放電繰り返
し寿命が長く、電池容量のバラツキの少ない陰極および
それを製作するための水素吸蔵合金粉末の製造方法を提
供することである。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは、これまでの開発過程で次のような知見
を得た。
Ni−水素電池の陰極材料に用いる水素吸蔵合金に、一
度に大量に溶製した合金を用いた際には、二次電池の性
能が劣る。つまり、繰り返し充放電回数の減少、電池容
量のバラツキが見られる。
上記の問題点を解決するために、従来にあっては、
溶製した合金を真空あるいは不活性ガス雰囲気下で高温
(950〜1250℃)に長時間保持する熱処理を行い合金の
均質化、性能改善といったプロセスがとられる。しかし
ながらこの手段は雰囲気制御した上での長時間の高温熱
処理ということでコストがかかる上に、その効果は十分
満足のいくレベルのものではなかった。
そこで、本発明者らは、Ni−水素電池の陰極用水素吸
蔵合金を均質な組織を持ちなおかつ大量に溶製する手法
を種々検討したところ、以下に示す基本的な考え方を得
た。
均質な組織の水素吸蔵合金を得るためには、冷却速度
の速い溶製手段が有効と考え、ガスアトマイズおよびPR
EP(回転電極法)による粉末製造を実施したところ、PR
EP法、ガスアトマイズ法によって得られた水素吸蔵合金
は均質な組織が得られた。
上記水素吸蔵合金の粉末を50℃で6mol KOH水溶液中で
の耐食試験を行ったところ従来の溶製法材より得た粉末
のそれに比較して耐食性が良好であった。
これらの事実より、PREP法およびガスアトマイズ法で
得られた水素吸蔵合金粉末をNi−水素電池の陰極用材料
として用いて二次電池を構成したところ、繰り返し充放
電寿命が長い良好な性能が得られた。
なお、酸化・窒化が少なく、また機械的粉砕のような
不純分の混入が少ないということで従来のガスアトマイ
ズ法は清浄な合金粉末を作る方法として利用されてお
り、できあがった粉末が結果として鋳造偏析が少ないこ
とは知られていたが、それが機能として利用されること
はなかった。
ここに、本発明の要旨とするところは、水素吸蔵合金
の溶湯を少なくとも凝固するまで102K/S以上、104K/S未
満の冷却速度で冷却し、その冷却過程においてあるいは
冷却後に粉末化することを特徴とする水素吸蔵合金粉末
の製造方法である。
本発明の好適態様によれば、前記冷却過程における粉
末化手段としては、前記溶湯のガスアトマイズ法もしく
は回転電極法がある。
かくして得られた水素吸蔵合金粉末は、陰極形状に適
宜成形することにより、充放電寿命が長く、安定した放
電容量のNi-水素電池用陰極を構成することができる。
このように、本発明の好適態様によれば、溶湯の状態
から102k/sec以上の冷却速度にて直接大量に粉末を作る
手段(例えばPREP法、ガスアトマイズ法)を適用するこ
とにより、粉末の金属組織が均質である水素吸蔵合金粉
末が得られるのであり、それらは繰り返し充放電寿命か
長いなど良好な性能が得られることからNi-水素電池用
陰極材料として好適である。
(作用) 次に、本発明において製造条件を上述のように限定し
た理由を具体的に詳述する。
本発明の中で溶湯状態から少なくとも凝固するまで10
2K/S以上、104K/S未満で冷却する必要があると限定した
理由は、冷却中に凝固偏析をできるだけ生じさせず、二
次電池用陰極材料として使う際に熱処理等による均質化
処理をする必要がないようにするためである。溶湯状態
からの凝固の過程での冷却速度が100k/secより遅い場合
には上述のような効果が十分に発揮されない恐れがあ
る。
かかる溶湯状態から102K/S以上、104K/S未満という冷
却速度は、慣用のガスアトマイズ法あるいは回転電極
法、その他極く少量(約50g/ch)を水冷銅モールドにて
Arアーク溶解する方法によって容易に実現できる。な
お、通常の水冷鋳込時の冷却速度は、0.5〜80k/sec程度
である。
本発明において凝固後の冷却速度については特に制限
はない。
粉末化は、溶湯の状態で行ってもよく、あるいは一旦
凝固させてからボールミル、メカニカル・グラインディ
ング、ジョークラッシャーなどの適宜粉砕手段によって
粉末化させてもよい。急速冷却によって凝固組織は非常
に均質化されているため、それを機械的に粉砕しても得
られた粉末は、従来の長時間高温熱処理および機械粉砕
された粉末に比較して飛躍的に均質化されている。しか
し、かかる粉末化は、好ましくは、ガスアトマイズ法お
よび回転電極法(PREP法ともいう)によって行う。
ここに、ガスアトマイズ法は、慣用のものであればよ
く、それ自体は特に制限されないが、通常はArガスを溶
湯に噴霧させて溶湯の粉末化を図る方法である。具体的
操作条件は目的とする粉末の寸法によって適宜変更すれ
ばよく、それらについてはすでに当業者には以上の説明
からも明らかであろう。
また、回転電極法は、通常の鋳造方法にて電極形状の
鋳塊を作り、Ar、He等の不活性ガス雰囲気でこの鋳塊電
極をアーク溶解あるいは高周波誘導加熱溶解しながら高
速で回転させ融液を飛散させることで高い冷却速度で粉
末にする方法である。
本発明により製造される粉末は、通常は平均粒径45〜
100μmであれば十分であるが、場合によっては150μm
程度であってもよい。
このようにして製造された水素吸蔵合金粉末は、適宜
バインダーを配合してから、所定形状に成形されてNi-
水素電池用の陰極として使用される。陰極への成形手段
としては、冷間プレス、ホットプレスなどが考えられ
る。しかし、成形手段は特定のものに制限されるもので
はない。
次いで、このようにして得られた陰極は、Ni−水素電
池を構成すべく組立てられるが、その場合の組立操作な
どは従来法に準じて行えばよく、特に制限されるもので
はない。
本発明において使用できる水素吸蔵合金としては、各
種のものが例示されるが、これまで述べてきたように、
いわゆるNi−水素電池の陰極用に使用できる程度の水素
吸蔵特性を示すものであればよく、例えば後述する実施
例において使用される種類のものが挙げられる。
次に、実施例によって本発明をさらに具体的に説明す
る。
実施例1 第1表に示す成分組成の4種類の水素吸蔵合金を第2
表に示した5つの方法で粉末化した。なお、表中、Mm
(ミッシュメタル)は、La20〜30wt%、Ce40〜60wt%、
Nd10〜20wt%、Pr2〜10wt%を含む希土類混合合金であ
る。本発明例の場合には溶湯から凝固までの平均冷却速
度は粉末粒径にて異なるが、103〜104k/secであった。
従来例である粉末製造法No.1〜3の例にあっては、いず
れも水冷鉄モールドへの鋳込を行っており、そのときの
冷却速度は約5k/secであった。
次に、得られた各粉末のうち平均粒径45μm以下のも
のを集めて、5gの粉末に10wt%のテフロン系バインダー
(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン
共重合体)を加え冷間プレスにより加圧成型し、引き続
き300℃で5ton/cm2の加圧下でのホットプレスを1分間
行い試験のための陰極を製作した。
二次電極用負極としての評価のために、市販の焼結式
ニッケル電極を正極に選び、ポリアミド不織布をセパレ
ータとして介在させて上記正極および負極を対向させて
組立て、次いでこれに比重1.30の苛性カリ水溶液に水酸
化リチウムを20g/l加えた溶液を電解液として含浸さ
せ、Ni−水素二次電池を構成し、それらについて500mA
×4hrの充電および250mAでの放電を繰り返し、そのとき
の充電電気容量および充放電寿命を評価した。
それらの特性を、初期の充電容量およびその初期容量
に対して80%の放電容量となる繰り返し回数でまとめ、
その結果を第3表に示す。
これらの結果からも明らかなように、粉末製法No.4,5
の本発明方法によって溶製し、粉末化した合金を用いた
二次電池は粉末製法No.1〜3の従来法に比べて放電容量
が大きいことがわかる。特に、合金4に関しては従来法
では、わずかな容量しか得られないのに対して本発明方
法ではいずれの場合も200mAh/g以上の放電容量が得られ
る。
次に、繰り返し充放電による電池容量の劣化に関して
は、熱処理を行わない従来法の粉末製法No.1が最も劣化
が早く、これは粉末製法No.2、3が示すように熱処理を
行うことで改善される。
これに対して本発明方法ではいずれも600回以上充放
電を繰り返しても初期容量の80%を維持しており、本発
明方法で得られた合金粉末を二次電池の陰極に用いた際
には従来にも増して繰り返し放電寿命の長い電池が得ら
れることが分かる。
第1図は、合金1を例にとって上述の関係をグラフで
示す。
実施例2 第1表に示す合金1を用い、実施例1に準じ、第2表
の各粉末製造法に従って製造された5種類の合金粉末を
用意した。これらを用いて同じく実施例1で作製したと
同様の電極を100ヶ作製し、その放電容量の平均値と標
準偏差を求めた。ここで用いた容量は15サイクル目の放
電容量であった。
結果を第4表に示す。
本発明による粉末を使用した場合は、従来法のそれを
使用した場合に比べて放電容量の平均値が高いとともに
標準偏差が小さく電池を構成した際の容量バラツキが小
さいことが分かる。これは本発明によれば、溶湯から速
い冷却速度で冷却するため凝固組織が均一で偏析が少な
いためと考えられる。
実施例3 第5表に示す2種類の合金を用いて、融液からの凝固
速度を種々変化させた試料を作製した。
第6表に溶製方法とその冷却速度を示す。表中、粉末
製法No.6は従来法、同No.7、8は冷却速度の影響を調査
するためのAr雰囲気のボタン溶製で溶製量を変化させる
ことで冷却速度を変化させた比較例である。同No.9、10
が本発明方法である。
これら粉末製法No.6〜10で得られた合金のうちNo.6〜
8は機械的に粉砕して粉末とした。同No.9、10は冷却段
階ですでに粉末状態である。
次に、このようにして得られた粉末のうち平均粒径45
μm以下のものを集めて、5gの粉末に10wt%のテフロン
系バインダー(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオ
ロプロピレン共重合体)を加え、実施例1と同様にして
冷間プレスにより加圧成型し、引き続き300℃、5ton/cm
2のホットプレスを1分間行い試験のための陰極を得
た。
次に、実施例1におけると同様の繰り返し充放電寿命
テストを行った。
初期の容量(15サイクル目)および初期容量に対して
80%の放電容量となる繰り返し回数を第7表に示す。
冷却速度が102k/sec以上である粉末製法No.9、10の場
合、初期の放電容量に対して80%の放電容量となる繰り
返し充放電回数が500回以上であり、電池仕様とされて
いる初期容量に対して80%の放電容量を満足して実用レ
ベルに達している。これに対してNo.8も500回以上の充
電放電繰り返し可能回数を有するが、これは比較用のも
ので、50g/個の溶製手段では生産性の観点から実現でき
る手段ではない。さらに驚くべきことに本発明例では10
00回を超えた寿命を有するものも得られた。従来から冷
却速度が速い、少量溶製材(ボタン溶製材等)は500回
程度の繰り返し充放電寿命を有していることが知られて
いたが、本発明が冷却速度がほゞ80k/secというそのよ
うな従来法と比較しても、大量に溶製が可能でなおか
つ、1000回以上の繰り返し充放電が可能であることで、
従来法に比べて本発明が優位であることがわかる。
本発明の優位性をさらに詳細に調査するために、合金
5を用いて繰り返し充電・放電寿命を調査した際の200
サイクル目における電解液{KOH,+水酸化リチウム液}
を採取してその電解液中のMn2+のイオン濃度を原子吸充
分析にて調査した。溶解時の凝固速度と溶出したMn2+
オンとの関係を第2図にグラフで示す。凝固時の冷却速
度が100k/sec未満ではMnの溶出量が多く、このことが寿
命を短くする原因の1つと考えられる。凝固時の冷却速
度を早くし、均質な組成を得ることは電池の充電放電の
繰り返し寿命を向上させる手段と考えられ、工業的に大
量生産が可能かつ、凝固組織が均質である合金を得る手
段として本発明が有効であることがわかる。
〔発明の効果〕 以上、詳述してきたように、Ni−水素電池陰極用の水
素吸蔵合金に本発明方法で溶製した粉末を用いること
で、繰り返し充放電寿命が長く、放電容量のバラツキの
少ないNi−水素二次電池を得ることができるのであっ
て、多量合金の溶製が行えることから、その優れた特性
と相挨って、経済的にも利益のある発明である。
本発明方法を利用することで性能の安定したNi−水素
電池の供給を可能としてNi−水素電池の利用拡大に貢献
する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明方法による溶製合金を用いた電池と従
来方法で溶製した合金を用いた際の電池寿命(放電容量
劣化)の比較を示したグラフ;および 第2図は、冷却速度と電解液中へのMn2+の溶出濃度の関
係を調べたグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 審査官 刑部 俊 (56)参考文献 特開 平3−223408(JP,A) 特開 平3−188236(JP,A) 特開 平2−253558(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B22F 9/08 B22F 9/10 B22F 9/04 H61M 4/38

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水素吸蔵合金の溶湯を少なくとも凝固する
    まで102K/S以上、104K/S未満の冷却速度で冷却し、その
    冷却過程においてあるいは冷却後に粉末化することを特
    徴とする水素吸蔵合金粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】前記冷却過程においてガスアトマイズ法も
    しくは回転電極法を用いて前記溶湯を粉末化することを
    特徴とする請求項1記載の水素吸蔵合金粉末の製造方
    法。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の方法により得られ
    た水素吸蔵合金粉末を陰極形状に成形して成る、充放電
    寿命が長く、安定した放電容量のNi−水素電池用陰極。
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