JP2911186B2 - 複合酸化物薄膜 - Google Patents

複合酸化物薄膜

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) この発明は、複合酸化物薄膜に関するものである。さ
らに詳しくは、この発明は、電気化学反応および水熱反
応により形成させてなる複合酸化物薄膜に関するもので
ある。
(従来の技術とその課題) 複合酸化物薄膜は、様々な用途の電子材料として注目
されているものであり、すでにこれまでにも誘導体、セ
ンサー、光材料、磁気材料、さらには超電導材料等とし
て実用化や試作が多様に行われてきているものである。
従来、このような複合酸化物の薄膜としては、スパッ
タリングに代表される物理的蒸着法によって形成したも
のや、CVD、MOCVDなどに代表される化学蒸着法によって
形成したものなどがよく知られているが、これらの従来
の気相合成による薄膜の場合には、いくつかの改善すべ
き課題があった。
すなわち、これらの気相法による場合には、複合酸化
物薄膜の成長速度が遅く、多大なエネルギーを消費する
という欠点がある。また、これらの方法によると不均一
な蒸着も起こりやすいばかりか、低酸素分圧下での反応
であるため、多量の酸素欠陥も生じやすい。そのために
半導体化する可能性があることから、成膜後に焼鈍しな
ければならない。しかしながら、この焼鈍においては基
板と複合酸化物薄膜が反応したり、あるいは剥離が生じ
たりする。
さらには、複合酸化物の膜厚に対して絶縁破壊電圧が
低いという問題もある。
また、CVD法の場合には、蒸発しやすい原料を用いな
ければならないが、これらの原料は一般に不安定で取扱
いがめんどうであり、しかもコストが著しく高いという
欠点がある。
これらの気相法とともに、液相法による薄膜形成もい
くつか知られている。たとえば、バリウム塩またはスト
ロンチウム塩の溶融塩中にチタンまたはジルコニウムを
浸漬して電気化学反応を起し、誘電膜を生成させる方法
(特公昭43−2650号公報)、溶融塩中にチタンを浸漬す
る方法(特公昭44−13455号公報)、さらには、バリウ
ムの強アルカリ性水溶液中で化成処理してBaTiO3被膜を
生成させる方法(特開昭60−116119号公報)等が知られ
ている。
しかしながら、溶融塩を使用する方法においては、か
なりの高温度や高価な反応容器を使用しなければなら
ず、容器からのコンタミネーションが避けられず、しか
も精密な膜厚制御が困難である。
また、化成処理法の場合には、成長速度が遅く、同様
に膜厚制御が困難で、しかも、Na、Kなどの鉱化剤から
のコンタミネーションも懸念されるという欠点があっ
た。また、これらとは別に、有機金属塗布方法も知られ
ているが、この方法の場合には、基板に塗布した有機金
属化合物を所定の温度で焼成して熱分解するために、焼
成工程で大きな収縮が生じ、複合酸化物薄膜にクラック
が発生したり、有機成分の蒸発、燃焼により緻密な焼結
体が得られにくいという欠点がある。また、焼成時の基
板との反応も問題となっていた。
この発明は、以上の通りの事情に鑑みなされたもので
あり、従来の薄膜の欠点を解消し、従来の製法よりもよ
り低温で合成することができ、しかも均一、かつ結晶性
に優れ、しかも大面積膜であっても製造容易な新しい複
合酸化物薄膜を提供することを目的としている。
(課題を解決するための手段) この発明は、上記の課題を解決するものとして、反応
成分を含有する溶液中に浸漬した作用電極と対向電極と
に通電し、溶液中の反応成分と作用電極との反応により
薄膜を形成させてなることを特徴とする複合酸化物薄膜
を提供する。
すなわち、この発明は、水熱条件下での電気化学的反
応により形成した複合酸化物薄膜を提供する。
作用電極は、金属、合金、金属間化合物、無機物等の
反応活性組成からなるものを使用する。この場合、作用
電極は、単体でもよいし、複合物、多層物でもよい。ま
たその形状にも限定はない。すなわち、空洞を有するな
どの異形形状のものでもよく、この外表面あるいは内表
面に複合酸化物薄膜を形成できることもこの発明の特徴
の一つである。さらに、作用電極をガラスやプラスチッ
クスなどの基板上に形成させれば、これらの基板上に複
合酸化物薄膜を形成することもできる。
対向電極も任意のものとしてよい。
反応成分含有の溶液も、様々な組成のものが採用でき
る。
一般的には、通電は、耐圧容器中において加圧および
加熱条件下に行うのが好ましい。たとえば、この発明の
薄膜製造は、第1図に示した装置により行うことができ
る。
この例においては、オートクレーブ(1)の外容器
(2)の周囲にヒーター(3)を、また、その内部には
テフロン製等の内容器(4)を設けた装置において、反
応成分を含有する溶液(5)中に作用電極(6)と対向
電極(7)とを浸漬している。外容器(2)の上部には
蓋体(8)を設け、外容器(2)内部を密閉している。
たとえばこのような装置において、作用電極(6)に
Tiを、対向電極(7)にPtを用い、各々陽極、陰極と
し、水酸化バリウム溶液中で通電することによりTi表面
にBaTiO3の薄膜を形成することができる。Tiのほかに、
Al、Nb、Zr、Hf、Pb、Ta、Feなどの任意の金属、あるい
は合金や無機物を用いることができる。溶液(5)とし
ては、作用電極(6)と反応しえる任意の反応成分を含
有した溶液とすることができる。水酸化バリウム、水酸
化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウ
ム、その他のものが例示される。
上記のように作用電極(6)を陽極として、しかも金
属を用いると、この作用電極(6)の金属は陽極酸化状
態となって酸化物を形成するか、あるいは一部が溶液中
に溶解し、溶液(5)中の反応成分と反応し、複合酸化
物が薄膜として形成されると考えられる。
なお、この薄膜形成にあたっての温度、圧力、印加電
流(直流または交流)は、反応系によって相違するが、
これらは適宜定めることができる。たとえば温度につい
ては50℃〜水の臨界点(374.2℃)までの範囲とし、圧
力は、飽和蒸気圧以上とすることができる。低温の場合
には耐圧容器を使用しなくともよい。
以下、実施例を示してさらに詳しくこの発明について
説明する。
実施例1 第1図に示した装置を用い、次の条件において薄膜形
成する。
溶 液:0.5N−Ba(OH)・8H2O 作用電極:Ti(純度99.9%) 対向電極:Pt 温 度:200℃ 圧 力:飽和蒸気圧2.0MPa 電 流:100mA/cm2(直流) 通電直後から、作用電極表面にBaTiO3が生成しはじめ
た。
印加される電圧と処理時間との関係をみると、初期に
電圧は急激に立ち上がり、直ちに一定の電圧を示すよう
になる。その後大きな変化は見られない。このことは、
薄膜の合成反応における膜の成長と溶解とが同時進行す
ることによって、その速度が平衡しているためと考えら
れる。
得られた薄膜のX線回折の結果を示したものが第2図
である。生成したBaTiO3は単一相で、結晶性は良好であ
った。
実施例2 反応温度100℃とし、実施例1と同様にして薄膜形成
を行った。得られたBaTiO3薄膜のX線回折の結果を示し
たものが第3図である。
実施例3〜5 溶液の濃度を0.25Nとし、温度を200℃、150℃、100℃
に変更し、かつ電流密度を50mA/cm2として実施例1と同
様に薄膜形成した。
この場合のBaTiO3の薄膜形成にともなう30分後の作用
電極の重量変化の割合は、 200℃〜4.6×10-6g/(cm2・分) 150℃〜4.3×10-6g/(cm2・分) 100℃〜2.5×10-6g/(cm2・分) であった。
実施例6 次の条件のみ変更し、厚さ1.0mmTi板にBaTiO3薄膜を
形成した。
溶 液:0.25N−Ba(OH)・8H2O 温 度:150℃ 電 流:13mA/cm2 時 間:80分 得られたBaTiO3薄膜表面にAg電極を蒸着し、誘電率特
性を評価した。
容量は、約70nF、tanδ=15%、ε=300(d0.1μ
mと仮定)であった。
実施例7 第1図に示した装置を用い、 溶 液:0.5N−Ba(OH)・8H2O 電 極:作用電極、対向電極ともに金属チタン 温 度:200℃ 圧 力:飽和蒸気圧 2MPa 電 圧:交流−定電圧 20V、50Hz の条件で処理した。
約10分後には両電極表面にBaTiO3が生成していた。得
られた薄膜のX線回折パターンは第2図と同様であり、
単一相で、かつ結晶性に優れたものであることが確認さ
れた。
実施例8 パイレックスガラス基板上に高周波スパッタ法により
金属チタンを蒸着し、これを作用電極として実施例1お
よび2と同様の条件で薄膜形成を行った。
生成したBaTiO3薄膜は緻密で光沢があり、処理条件に
よって青、紫、金色などの色を呈した。膜と基板の密着
性は極めて良好であり、鋭利な刃物で傷をつけても剥離
などは観察されなかった。
実施例9 ポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム上に高
周波スパッタ法により金属チタンを蒸着し、これを用い
て実施例1および2と同様の条件下で薄膜を形成させ
た。100〜180℃の条件下でBaTiO3の薄膜が生成された。
実施例10 次の条件のみを変更し、厚さ0.2mmのTi板上にSrTiO3
薄膜を形成した。
溶 液:1N−Sr(OH)・8H2O 温 度:200℃ 電 流:50mA/cm2 時 間:60分 結晶性の良好なBrTiO3薄膜が得られた。
実施例11 反応溶液を0.5N−Sr(OH)・8H2Oと0.5N−Ba(O
H2)・8H2Oとの混合溶液とし、実施例8と同様の条件下
で薄膜を形成した。
得られた薄膜のX線回折結果を示したものが第4図で
ある。
BaTiO3とSrTiO3とが別々でない、均一な(Ba,Sr)TiO
3固溶体膜であることが確認された。
実施例12 以下に示した条件でLiNbO3膜を形成した。
反応溶液:1N−LiOH 作用電極:Nb(純度99.9%) 温 度:200℃ 圧 力:1.8MPa 電 流:68mA/cm2 約18分後には作用電極表面にLiNbO3が生成していた。
実施例13 作用電極にFe板を用いて膜形成を行った。
条件は次の通りとした。
溶液:0.5N−Ba(OH)−NaOH 作用電極:Fe(純度99.9%) 対向電極:Pt 温度:200℃ 圧力:飽和蒸気圧 電流密度:18mA/cm2 結晶性の良好なBaFeO2.9の生成が第5図に示したX線
回折パターンより確認された。
通電しない場合にはBaFeO2.9は生成しなかった。
(発明の効果) 以上詳しく説明したように、この発明によれば、従来
の薄膜合成方法に比べて、水熱条件の使用により、結晶
性の促進効果が得られ、しかも比較的低温で均一かつ結
晶性に優れた複合酸化物薄膜が直接得られる。また、大
面積の膜の製造が簡便に可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の薄膜を形成する際に使用すること
のできるオートクレーブ反応装置の一例を示した断面図
である。 第2図および第3図は、この発明のBaTiO3薄膜の一例に
ついてのX線回析結果を示したチャート図である。 第4図は、この発明の(Ba,Sr)TiO3固溶体薄膜の例に
ついてのX線回折結果を示したチャート図である。 第5図は、この発明のBaFeO2.9薄膜の例についてのX線
回折結果を示したチャート図である。 1……オートクレーブ 2……外容器 3……ヒーター 4……内容器 5……溶液 6……作用電極 7……対向電極 8……蓋体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C25D 9/00 - 9/12 C25B 1/00 - 9/04 C25B 13/00 - 15/08 C25D 11/00,11/26 JICSTファイル

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反応成分を含有する溶液中に浸漬した作用
    電極と対向電極とに通電し、溶液中の反応成分と作用電
    極との反応により薄膜を形成させてなることを特徴とす
    る複合酸化物薄膜。
  2. 【請求項2】耐圧容器内で飽和水蒸気圧以上および加熱
    の条件下に通電してなる請求項(1)記載の複合酸化物
    薄膜。
  3. 【請求項3】50℃〜水の臨界点(374.2℃)の加熱条件
    下に通電してなる請求項(1)または(2)記載の複合
    酸化物薄膜。
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