JP2910902B2 - 感光性樹脂印刷版用粘着防止層およびその組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は柔軟性のある感光性樹脂
印刷版、特に水系処理液で現像可能なフレキソ印刷版に
適した粘着防止層およびその組成物に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】通常、感光性樹脂を印刷版にする工程
で、該感光性樹脂原版の感光層の上に原図フイルムを真
空密着させて活性光線で露光する方法が主として用いら
れている。また近年、ビジネスフォーム印刷分野でゴム
状の柔軟な感光性樹脂凸版の需要が増し、感光性樹脂原
版がより柔くなる傾向があり、原版の硬度が低くなる
と、感光層表面が粘着性を帯びてくることが多い。とこ
ろで、粘着性が強いと、原図フイルムを密着させる際に
均一な密着ができず、従って画像の再現性が悪くなる。
又、露光後に原図フイルムを原版が剥離する時に両者の
粘着により剥離不良となり、両者とも損傷が生じるとい
う問題がある。このような問題を解決するために、最も
一般的に行なわれている方法は、感光性樹脂表面に粘着
性の少いポリマーの薄膜を塗布する技術である。例えば
特開昭５１−４９８０３号公報（ケン化度９０％以上の
ポリビニルアルコール）、特開昭５２−１１００１０号
公報（重合度８００以上、ケン化度７０％〜９０％のポ
リビニルアルコール）、特開昭５４−６８２２４号公報
（水溶性ポリマー）、特開昭５６−１１０９４１号公報
（可溶性ポリアミド）等が知られている。

【０００３】また感光性樹脂組成物がフレキソ印刷版用
の場合、その感光性樹脂がより柔軟であり、粘着性が強
いために非粘着性塗膜層の要求度が高く、特に小ジワ発
生の問題が起こりやすい。そこでフレキソ印刷版用とし
て、離型層をさらに設けた技術が特開昭５７−２０８５
５６号公報に、またシワ防止としてポリビニルアルコー
ルに可塑剤を配合した技術が特開平２−１１３２５４号
公報にそれぞれ開示されている。さらに本発明者らは先
にポリビニルアルコールおよび全組成物に対して４重量
％以上８重量％未満のグリセリンを含有したフレキソ印
刷版用粘着防止層組成物を出願した（特開平４−１３０
３２５号）。

【０００４】前者の離型剤の塗布は製造工程が増えるの
みならず、更に離型剤の上に非粘着性塗布層を塗布する
ことはコート欠陥が生じ易く、高度の塗布技術が要求さ
れる。一方、特開平２−１１３２５４号公報記載の可塑
剤を含むポリビニルアルコールとは、剥離組成物の全重
量に対して少なくとも８％の低分子量ポリエチレングリ
コールを配合したものとなっているが、湿度の影響を受
け易く、高湿度下で吸湿による塗布層の粘着を生じて本
来の非粘着性の目的が失なわれる欠点がある。又、特開
平４−１３０３２５号記載の発明ではグリセリンの含有
量を限定された組成物であり、本来の目的であるシワ防
止には効果が認められるものの、その製造過程に於いて
ミスト（結露）が発生し、生産装置を汚染する。またコ
ート湿度等が変動すると、グリセリンの含有率が変動し
て一定品質のものが得られにくいなど生産面・品質面に
問題があった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記のように従来技術
では、水現像性で柔軟性のある感光性樹脂版用の粘着防
止剤としてまだ適切なものが無いのが現状である。例え
ば、グリセリンを配合した場合、防シワ効果があるもの
のミスト発生による生産機汚染の問題があり、生産性向
上及び環境保護の面からも解決しなければならないとい
う課題がある。一方、品質面からは、シワ発生の問題を
解決しなければならない課題があり、例えばカバーフイ
ルムの剥離を一度中断した後に、剥離を再開すると、中
断した個所に線状のスジ状シワが生じるので、一般には
カバーフイルムの剥離は中断せずに一機に剥離すること
が要求されているが、剥離の操作ミスなどで剥離を中断
する機会があり、スジ状シワの発生を完全に防止するこ
とは難しい。又、カバーフイルムを通常の平坦な所で剥
離した時、感光性樹脂表面の粘着防止層にすでにシワが
発生したり、感光性樹脂版を凹又は凸状に変形させた場
合、通常の平坦に戻すとその粘着防止層にシワが発生し
回復しないという問題もある。カバーフイルム剥離後の
感光性樹脂積層体は、そのため移動させることを極力避
けることで対処しているが止むを得ず移動させなければ
ならないことがあり、感光性樹脂積層体の曲げ変形を避
けた移動は容易でない。従って本発明では、水系処理液
で現像でき、カバー剥離後、シワの発生がない粘着防止
層を得ることを第一課題とし、さらにその製造に於いて
ミストの発生がなく、非粘着性で同時に湿度の影響を受
けない粘着防止層組成物を得ることを第二課題としてい
る。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者らは粘着防止層
およびその組成物について、前記課題を解決するため鋭
意検討した結果、遂に本発明を完成するに到った。すな
わち本発明は、水系処理液で現像可能な感光性樹脂印刷
版用の粘着防止層であって、該層の厚さ１μｍ当たりの
１１４０ｃｍ^-1における吸収の吸光度が０．０１０以上
０．０６０以下であることを特徴とする感光性樹脂印刷
版用粘着防止層および該粘着防止層を形成する組成物で
あって、該組成物がポリビニルアルコールおよび水に可
溶で沸点が１２０℃〜２４０℃の有機化合物が含有され
ていることを特徴とする感光性樹脂印刷版用粘着防止層
組成物である。

【０００７】本発明粘着防止層は主としてポリビニルア
ルコールから形成され、該ポリビニルアルコールは、合
成法の如何にかかわらずポリビニルアルコール類のエス
テル化物をケン化することによって得られる。ケン化度
は水系溶剤に可溶であれば良いが、７０％以上が好まし
く、特に９８％以上が望ましい。また、本発明におい
て、厚さ１μｍ当たりの１１４０ｃｍ^-1における吸収の
吸光度が０．０１０以上０．０６０以下であるというこ
とは、１１４０ｃｍ^-1付近の吸収がポリビニルアルコー
ルの結晶性バンドを示すことから、該層がある程度結晶
化していることを意味している。なお吸光度の測定は以
下の方法によった。吸光度測定方法：まず粘着防止層を
感光性樹脂層から剥離し、ＫＢｒ板間に挟んで下記条件
により透過法でＩＲスペクトルを測定する。次に得られ
たスペクトルより１１６０ｃｍ^-1付近の吸収の谷と９５
０ｃｍ^-1付近の吸収の谷を結ぶラインを引き、そのライ
ンに平行に１１３０ｃｍ^-1付近の吸収の谷を通るライン
を引き、該ラインを１１４０ｃｍ^-1の吸収のベースライ
ンとし、該ベースラインからの１１４０ｃｍ^-1の吸収の
高さを１１４０ｃｍ^-1の吸収の吸光度とした。 試料の面積 ：１５ｍｍ×１５ｍｍ 装置 ：ＦＴ−ＩＲ（ＴＧＳ検出器） 分解能 ：８ｃｍ^-1 積算回数 ：３００回 測定方法 ：透過法

【０００８】本発明粘着防止層は、印刷版用の感光性樹
脂積層体における粘着防止層として用いられるが、該積
層体としては少なくとも支持体上に接着層、感光性樹脂
層、粘着防止層およびカバーフイルムから構成され、そ
の製造法としてはカバーフイルムに予め、粘着防止層を
塗布し、一方支持体に予め接着層を塗布したものを準備
してから感光性樹脂組成物を中心に両層材料を熱プレ
ス、キャスト成形、カレンダー加工、コーティング法等
などの一般的な方法で所望の厚み、幅に積層する方法を
採用することができる。ここでカバーフイルムとしては
寸法安定性や耐熱性、機械的性能の上からポリエチレン
テレフタレートフイルムが最適であるが、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリスチレンその他の剥離可能な
材料であれば単一又は積層コートされたものを使用する
ことができる。又カバーフイルムの表面は平滑でも良い
が、表面粗度が５μ以下のいわゆるマット状であれば表
裏判別し易くより好ましい。

【０００９】本発明において、前記カバーフイルム上
に、本発明粘着防止層を塗布する際、ポリビニルアルコ
ールを１〜１５％、好ましくは２〜５％の水溶液とし、
そこに下記化合物（以下結晶化剤という）をポリビニル
アルコールに対して１０〜２００％配合するが、本発明
では配合した結晶化剤を塗布後、特定条件の乾燥工程で
除去（飛散）させることが好ましい。乾燥温度や乾燥用
空気量、乾燥速度等の塗工条件で粘着防止層の結晶化の
状態や、結晶化剤の除去（飛散）の割合は異なるが、乾
燥後の粘着防止層中の結晶化剤の残存量をできるだけ少
なくし、特に５％以下にすることが好ましい。因みに乾
燥温度は、１００℃以上２００℃未満であり、このまし
くは１００℃〜１４０℃である。なお本発明においては
ポリビニルアルコールと水に可溶な結晶化剤の他に、種
々の界面活性剤及び防腐剤等を少量配合しても良い。ま
た乾燥後の粘着防止層の厚みは０．１〜１０μｍ、好ま
しくは２〜５μｍである。

【００１０】なお本発明に使用される結晶化剤として
は、水に可溶で、低分子量のアルコール類、エーテル
類、ケトン類、エステル類、カルボン酸類、アミン類、
アミド類などの中から選ばれ、又更にイオウ、ハロゲ
ン、リンなどの各原子が共に含まれていても良い。なお
水に可溶とは、２０℃の水に少なくとも１重量％以上の
溶解度を示すものであれば良いが、５重量％以上がより
好しい。具体的にはシクロヘキサノール、ベンジルアル
コール、２‐エチルグチルアルコール、イソアミルアル
コールなどの１価のアルコール、エチレングリコール、
１，２−プロピレングリコール、１，３−プロピレング
リコール、ヘキシレングリコール、１，２−ブチレング
リコール、１，３−ブチレングリコール、グリセリン、
トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの多価アル
コールおよびこれらのモノアルキルエーテル類、ジメチ
ルアセトアミド、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、Ｎ−メチルピロリド
ン、シクロヘキシルアミン、アニリン、尿素、ピコリン
などの含窒素化合物、酪酸、乳酸エチル、リン酸トリエ
チルなどの有機酸およびそのエステル類、フルフラー
ル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、シクロ
ヘキサンなどのアルデヒド類、アセタール類、ケトン
類、およびジメチルスルホキサイドなどの含硫黄化合物
等が挙げられる。

【００１１】これ等の結晶化剤の中でミスト発生防止お
よび経時安定性等の観点から、沸点は１２０℃〜２４０
℃が好ましく、さらに温度１０５℃での蒸気圧が５トー
ル以上の有機化合物が好ましい。因に１，２−プロピレ
ングリコールは３０トール、１，３−プロピレングリコ
ールは１６トール、エチレングリコールは２０トール、
１，４−ブタンジオールは５．８トール、１，３−ブタ
ンジオールは１６トール、ジメチルアセトアミドは６０
トール、ジメチルスルホキサイドは１２０トールであ
る。また、これ等の結晶化剤の中で更に塗工性（レベリ
ング性）、経時安定性、防シワ性等のあらゆる観点か
ら、好ましい結晶化剤としては１，２−プロピレングリ
コール、１，３−プロピレングリコール、１，３−ブタ
ンジオール、１，４−ブタンジオール等が挙げられる。
これ等の結晶化剤は、ポリビニルアルコールを主成分と
するポリマーに対して実質的に粘着防止層中に有機化合
物が５％未満残存される。

【００１２】次に本発明粘着防止層が利用される感光性
樹脂積層体における感光性樹脂組成物は水又は水性媒体
で現像できる感光性樹脂層を有するものなら、何でも適
用できる。たとえば特開昭６０−２１１４５１号、特開
昭６０−１７３０５５号、特開昭６３−８６４８号、特
開平２−１７５７０２号、特開平１−１０８５４２号、
特開平４−３１６２号、特開平１−２１９７３５号、特
開平１−３１１９２号、特開平２−３０５８０５号、特
開平３−２２８０６０号などに記載されている感光性樹
脂組成物が挙げられる。

【００１３】

【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。なお実施例中、部とあるのは重量部を意味する。 実施例１ 純水９６４部にゴーセノールＡＨ−２６〔日本合成化学
工業（株）製、ケン化度９７．０〜９８．８％〕を２
５．０部添加し、９０℃で１時間撹拌した。次に室温ま
で冷却した後、この水溶液に１，２−プロピレングリコ
ール１０．７部とエパン７４０〔第１工業製薬（株）
製〕０．３部をゆっくり撹拌下に添加し、更に３０分間
撹拌した。次にこの溶液を毎分６ｍの速度で１２５μの
ポリエチレンテレフタレート（Ｅ−５００東洋紡績
（株）製）フイルム上にリバースロールでコートし、風
速０．５ｍ／Ｓの乾燥機で１０５℃×３分乾燥させた。
このようにして得られた粘着防止層は、１．９μの厚み
であった。次にこの粘着防止層を用いて、〔島津製作所
製（ＧＣ−７Ａ）〕によるガスクロ分析を実施した所、
１，２−プロピレングリコールの含有率が１．１％であ
った。又、乾燥機内にＥ−５００を貼り付け１，２−プ
ロピレングリコールが付着しているかどうか確認したと
ころ、附着がなく、目視観察でも乾燥機吹き出し出口に
ミストの発生もなく、乾燥機周辺の汚染もなかった。

【００１４】実施例２ 純粋９５８部にゴーセノールＡＨ２６を２５部添加し、
実施例１と同様な方法で溶解し水溶液を得た。次にこの
水溶液に１，２−プロピレングリコール１７部、エパン
７４０を０．３部添加した。この溶液を用いて実施例１
と同様な方法でコート及び乾燥処理した。得られた粘着
防止層は、２．０μの厚みであり、粘着防止層中の１，
２−プロピレングリコール含有率は２．５％であった。
又、実施例１と同様な方法でミスト有無を確認した所、
ミストの発生はなく、汚染もなかった。なお本実施例で
得られた粘着防止層のＩＲスペクトルを図１に示す。

【００１５】実施例３ 純水９５０部にゴーセノールＡＨ２６を２５部添加し、
実施例１と同様な方法で溶解し水溶液を得た。次にこの
水溶液に１，２−プロピレングリコール２５部、エパン
７４０を０．３部添加した。この溶液を用いて実施例１
と同様な方法でコート及び乾燥処理した。得られた粘着
防止層は、２．１μの厚みであり、粘着防止層中の１，
２−プロピレングリコール含有率は３．７％であった。
又、実施例１と同様な方法でミスト有無を確認した所、
ミストの発生はなく、汚染もなかった。

【００１６】参考例１ 感光性樹脂組成物を次に述べるような方法で作成した。
ヘキサメチレンジイソシアネート２１．８部、ジメチロ
ールプロピオン酸１５．４部、ポリテトラメチレングリ
コール（ＰＧ−１００ 日本ポリウレタン工業（株）
製）７．６部、およびジラウリン酸シ−ｎ−ブチルスズ
１．０部をテトラヒドロフラン３００部に溶解した溶液
を撹拌機の付いた１リットルフラスコに入れ、撹拌を続
けながらフラスコを６５℃に加熱し３時間反応を続け
た。別の容器で、末端アミノ基含有アクリロニトリル・
ブタジエンオリゴマー（Ｈｙｃａｒ ＡＴＢＮＸ １３
００×１６宇部興産（株）製）５５．３部をメチルエチ
ルケトン１００部に溶解して調整した溶液を上記のフラ
スコ内に室温下で撹拌しながら添加した。得られたポリ
マー溶液を減圧乾燥してテトラヒドロフラン、メチルエ
チルケトンを除去し、数平均分子量が２１０００のポリ
マーを得た。次に該ポリマー１００部をメチルエチルケ
トン１００部に溶解した溶液に、水酸化リチウム４．８
部をメチルアルコール１００部に溶解した溶液を室温下
で撹拌しながら添加し、さらに３０分間撹拌することに
よって親水性ポリマー〔Ｉ〕を得た。

【００１７】上記親水性ポリマー〔Ｉ〕１０部、疎水性
ポリマーとして、塩素化ポリエチレン（Ｈ−１３５ 大
阪曹達（株）製）４５部、スチレン・ブタジエンゴム
（ＪＳＲ１５０７ 日本合成ゴム（株）製）１５部、ブ
タジエンオリゴアクリレート（ＰＢ−Ａ 共栄社油脂
（株）製）２８．５部、ベンジルジメチルケタール（イ
ルガキュア６５１、チバガイギー（株）製）１部および
ハイドロキノンモノメチルエーテル０．５部をトルエン
４０部、水１０部に溶解、分散させ、加熱ニーダーを用
いて１０５℃で混練し溶解し脱泡後、感光性樹脂組成物
を得た。

【００１８】参考例２ 参考例１で得られた感光性樹脂組成物を用いて、ヒート
プレス機で１００℃、１５０Kg/cm²の圧力で、１２５μ
ｍ厚みのポリエステルフイルムと実施例２で得られた粘
着防止層を有するポリエステルフイルム間で、粘着防止
層が感光性樹脂と接するよう３０秒間加熱加圧して厚さ
２．０mmのシート（印刷厚版）を作成した。最上層のポ
リエステルフイルムを剥離して感光性樹脂層上に粘着防
止層を残してその表面を観察したところ、シワの発生は
認められず平滑で鏡面状の表面を示した。更にこの印刷
原版を凹凸状に変形させた後室温下、平坦な所で観察し
たところ、シワは消失し元の鏡面状の表面を示した。次
にこの版に画像を有するネガフイルムをその上に密着し
て水銀灯（大日本スクリーン社製）で、照度２５ｗ／ｍ
² 、５分間露光を行った。ネガフイルムを除いた後、ア
ルキルナフタレンスルホン酸ソーダ２重量％を含有する
中性水で４０℃１５分間、ブラシによる現像を行ったと
ころ、レリーフ（印刷版）の深度０．８mmの画像パター
ンが得られた。この画像パターンは使用したネガフイル
ムの画像を忠実に再現していた。また得られたレリーフ
は、インキの受理転移性もよく、鮮明な画像を示してい
た。

【００１９】比較例１ １，２−プロピレングリコールを加えない以外は、実施
例１と同様にして粘着防止層を有するカバーフイルムを
作成した。乾燥機処理による粘着防止層作成に於いて汚
染はなかった。このカバーフイルムを参考例２に記載さ
れた方法で感光性樹脂積層体を作成し、ポリエステルフ
イルムを剥離した時、その表面は人体皮フ表面様のシワ
が発生した。実施例４と同様にして露光・現像を行った
ところ、光効果した画像の表面はシワが残り、印刷物に
もインキの転移斑が認められた。又、ポリエステルフイ
ルムの剥離を中断した後に剥離した時には中断時の個所
に線状のシワが認められた。この状態で室温下に放置し
たが、１夜間放置してもその表面の人体皮フ状シワと線
状シワは残留して消失することがなく、正常な鏡面状の
表面は得ることができなかった。

【００２０】比較例３ 純水９７１部にゴーセノールＧＨ−２３〔日本合成化学
工業（株）製、ケン化度８６．５〜８９．０％〕を添加
し、９０℃１時間撹拌した。次にこの水溶液にポリエチ
レングリコール分子量１０００を４部添加し更に３０分
間撹拌した。この溶液を用いて実施例１と同様な方法で
１．９μの粘着防止層を得た。一方、参考例１で得られ
た感光性樹脂組成物を用いて、参考例２と同様な方法で
厚さ２．０mmのシート（印刷原版）を作成した。最上層
のポリエステルフイルムの剥離は容易でなかったが感光
樹脂層上に粘着防止層を残して剥離し、その表面を観察
した所、その表面は人体皮膚表面様のシワが発生した。
この状態で室温下に１夜間放置しておいてもその人体皮
フ表面様のシワは残留し、更に粘着防止層は、粘着性を
おびていた。人体皮フ表面様のシワが発生したことよ
り、レリーフの作成、印刷評価は中断した。

【００２１】実施例４ 実施例１で１，２−プロピレングリコールを１，４−ブ
タンジオールに代えた以外は、実施例１と同様な方法で
粘着防止層を作成した。得られた粘着防止層は２．０μ
の厚みであり、粘着防止層中の１，４−ブタンジオール
含有率は２．６％であった。ミストの発生もなく、汚染
もなかった。

【００２２】実施例５ 実施例２で１，２−プロピレングリコールを１，４−ブ
タンジオールに代えた以外は、実施例２と同様な方法で
粘着防止層を作成した。得られた粘着防止層は、２．０
μの厚みであり、粘着防止層中の１，４−ブタンジオー
ル含有率は４．９％であった。ミストの発生もなく、汚
染もなかった。

【００２３】実施例６ 実施例３で１，２−プロピレングリコールを１，４−ブ
タンジオールに代えた以外は、実施例３と同様な方法で
粘着防止層を作成した。得られた粘着防止層は、２．０
μの厚みであり、粘着防止層中の１，４−ブタンジオー
ル含有率は４．６％であった。ミストの発生もなく汚染
もなかった。

【００２４】実施例７ 参考例１で得られた感光性樹脂組成物を用いて実施例６
で得られた粘着防止層を参考例２と同様な方法で厚さ
２．０mmのシートを作成し、カバーフイルムを剥離し、
シワを観察した所、シワの発生は認められなかった。
又、参考例２と同様にレリーフを作成し印刷した所、イ
ンキの受理転移性は良かった。

【００２５】実施例８ 実施例１でポリエチレンフタレートのフイルムをケミカ
ルマットフイルム（東洋クロス（株）製ＴＣ−５００
２）厚み９５μを用いた以外は実施例１と同じ方法で粘
着防止層を作成した。得られた粘着防止層は２．１μの
厚みで１，２−プロピレングリコール含有率は１．２％
であった。このコートフイルムを用いて実施例４と同様
に感光性樹脂積層体を作成しケミカルマットフイルムを
剥離した所、シワの発生もなかった。

【００２６】実施例９〜１６、比較例２ 実施例１において１，２−プロピレングリコールの代わ
りに表１に示す結晶化剤を配合した以外は全て実施例１
と同様にした。その結果を表１に併記する。

【００２７】参考例３ 前記実施例１〜１６および比較例１〜３による結果を下
記表１に示す。

【００２８】

【表１】 表１に於いてミスト有無とは、乾燥機汚染の有無を示
し、コート性良悪とは、レベリング性の良悪を示し、経
時安定性は、室温約１カ月間放置の状態で、問題なしを
良とした。

【００２９】

【発明の効果】本発明の感光性積層体に用いられる粘着
防止層は、シワの発生が全くないので、取扱が容易で、
かつ原図フィルムの画像を忠実に再現することができ、
さらに配合する結晶化剤を選択することにより、粘着防
止層を有するカバー材を生産するに当り、ミストの発生
がないので生産機及び周辺装置を汚染することなく生産
後、多大な労力が必要であった掃除も不要となり、省力
化も計ることができる。しかも得られた粘着防止層は、
防シワ性もあり且つ経時安定性に優れ、温度、湿度など
の環境による影響を受けにくく、保存安定性に優れてい
るので産業界に寄与すること大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例２で得られた本発明粘着防止層のＩＲス
ペクトルを示す。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平４−359256（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−223747（ＪＰ，Ａ) 特開 昭54−12215（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−130325（ＪＰ，Ａ) 特開 昭63−247747（ＪＰ，Ａ) 特公 平２−29207（ＪＰ，Ｂ２) 特公 平３−19537（ＪＰ，Ｂ２) 特公 平４−21184（ＪＰ，Ｂ２) (58)調査した分野(Int.Cl.⁶，ＤＢ名) G03F 7/11 501

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】水系処理液で現像可能な感光性樹脂印刷版
   用の粘着防止層であって、該層の厚さ１μｍ当たりの１
   １４０ｃｍ^-1における吸収の吸光度が０．０１０以上
   ０．０６０以下であることを特徴とする感光性樹脂印刷
   版用粘着防止層。
2. 【請求項２】請求項１記載の粘着防止層を形成する組成
   物であって、該組成物がポリビニルアルコールおよび水
   に可溶で沸点が１２０℃〜２４０℃の結晶化剤が含有さ
   れていることを特徴とする感光性樹脂印刷版用粘着防止
   層組成物。