JP2906104B2 - 鉛を含まないクリスタルなガラス組成物 - Google Patents

鉛を含まないクリスタルなガラス組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、鉛（Ｐｂ）を含まない
にもかかわらずクリスタルなガラス組成物に関し、食器
等に使用するのに好適なものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、食器等に使用されるクリスタルガ
ラスとしては、一般に鉛含有クリスタルガラスが使用さ
れている。このガラスには多量の鉛が含まれており、そ
のガラス特性、つまり「重量感がある」、「光の屈折率
が高く分散が大きい」、「溶融が容易である」等の特性
は主にＰｂＯによってもたらされるものである。ＰｂＯ
の含有量は様々であるが、一般的には重量パーセントで
２４〜２６％程度である。
【０００３】ところが、鉛含有クリスタルガラスから人
体に特に有害である鉛が溶出してくることが最近問題に
なり、例えばアメリカ合衆国カリフォルニア州では、食
器やデカンタ等に供される鉛クリスタルガラスに、公的
機関が「鉛曝露に対する明白な警告を行っていない」と
のことで告訴されているほどで、同国のＦＤＡ（Ｆｏｏ
ｄ ａｎｄ Ｄｒｕｇ Ａｄｍｉｎｉｓｔｒａｔｉｏ
ｎ）規格では、鉛溶出量の規制値が厳しい値に改定され
ている。
【０００４】また、日本国内では、「食品衛生法厚生省
告示第８４号」において鉛含有クリスタルガラスの鉛溶
出量が規制されており、鉛含有クリスタルガラス品メー
カは、ＰｂＯ含有量が２４〜２６％内の鉛含有クリスタ
ルガラスであっても、規制値を越えないように製造して
いるが、その規制値が国内でもますます厳しくなること
が予想される。
【０００５】そこで、鉛含有クリスタルガラスからの鉛
の溶出を抑制するため、特開平３−２０５３２５号公報
に記載の技術では、鉛含有クリスタルガラス食器の表面
をケイ素酸化物を主成分とする保護膜で被覆している
が、ガラス加工後に更に二次的加工を必要とするため、
製造コストの上昇は避けられない。
【０００６】また、特開平２−１４１４３４号公報に
は、クリスタルガラス容器の表面を無鉛ガラス層で覆う
技術が開示されているが、二種のガラスを同時に溶融し
て吹きつけ成形するため、成形が非能率的でしかもプレ
ス成形できない等の問題がある。
【０００７】更に、特開平４−５０１３３号公報に記載
の技術では、ＰｂＯ、アルカリ土類金属及びＺｎＯの総
量に対するアルカリ金属の添加量を限定することによ
り、鉛溶出を少なくしているが、約１／２程度の減少に
とどまっている。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的
は、鉛を全く含まずに、鉛含有クリスタルガラスの持つ
「重量感がある」、「光の屈折率が高く分散が大き
い」、「溶融が容易である」等の特性を、従来の鉛含有
クリスタルガラスと同等又はそれ以上に発揮する新規な
ガラス組成物を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】本発明によるガラス組成
物は、重量パーセントにして、ＳｉＯ2を５０〜６０
％、Ｋ2Ｏを５〜１３％、ＴｉＯ2をガラスの屈折率を大
きくしアッベ数を小さくするために５〜８％、ＢａＯを
ガラスの密度を大きくするために１０〜１５％、ＺｎＯ
をガラスの化学的耐久性をよくするために５〜１０％、
Ｎａ2Ｏを１０％以下、ＣａＯを５％以下、Ｓｂ2Ｏ3を
ガラスの泡切れをよくするために０．３〜０．８％含有
し、鉛を含まないにも拘わらずクリスタルなガラス組成
となっている。
【００１０】必要に応じ、Ｌｉ2Ｏ、ＺｒＯ2、Ｂ2Ｏ3を
少量ずつ含ませても良い。表１に各成分の含有率をまと
めて示す。なお、以下の説明における％表記は全て重量
パーセントを示す。
【００１１】
【表１】
【００１２】
【作用】本発明では、ＰｂＯに代わる原料としてＴｉＯ
2 とＢａＯを使用し、ＴｉＯ2で光の屈折率及び分散を
大きくし、ＢａＯで密度及び屈折率を大きくする。
【００１３】ＴｉＯ2 は、屈折率を大きくかつ分散を大
きくする（アッベ数を小さくする）効果があり、本発明
ではＰｂＯに代わるものとして必要不可欠である。Ｔｉ
Ｏ2が５．０％未満では、屈折率、分散の目標を達成で
きない。また、８．０％を越えると黄色味を帯びる傾向
が強くなり、透明度を重視するクリスタルガラスにとっ
て好ましくない。
【００１４】ＳｉＯ2 は５０．０％未満では化学的耐久
性が劣り、６０．０％を越えると溶融温度を上げる必要
が生じ、また密度が低下する。アルカリ土類としてＢａ
ＯとＣａＯを併用するが、密度を大きくする点から、ま
た屈折率を大きくする点からもＢａＯが好ましい。Ｂａ
Ｏが１０．０％未満では密度２．９０％以上の目標を達
成できない。ＢａＯが１５．０％を越えると、脱泡がや
りにくく、また炉材の侵食が激しくなり、溶融が難しく
なる。ＣａＯは、高温での粘度を下げる効果があるが、
作業温度域での固化速度を速めるため、１．０〜５．０
％が適当である。
【００１５】アルカリ成分、すなわちＫ2 Ｏ、Ｎａ2
Ｏ、Ｌｉ2 Ｏは溶融温度を下げるために使用する。特
に、Ｋ2 Ｏはガラス中の不純物であるＦｅイオンの発色
を抑える効果があり、重要なものである。これが、５．
０％以下ではその効果が少なく、１３．０％を越えると
耐火物の侵食が激しくなる。Ｎａ2 Ｏは溶融温度を下げ
る効果を補うために少なくとも３．０％は必要である。
Ｋ2 ＯとＮａ2 Ｏの合計が１８．０％を越えると、ガラ
スの化学的耐久性が悪くなるため、１８．０％以下に抑
える必要がある。Ｌｉ2 Ｏは微量の添加によって溶融温
度を下げる効果が大きく、１．０％以下で充分である。
【００１６】ＺｎＯは、ガラスの硬度を上げずに化学的
耐久性を増大させ、粘性温度曲線を緩やかにし成形作業
性を容易にする効果がある。その添加量は５．０〜１
０．０％の範囲で充分である。
【００１７】Ｂ2 Ｏ3 は、少量の添加で熱膨張係数を上
げずに溶融温度を下げるのに効果的であるため、１．０
〜２．０％添加する。Ｓｂ2 Ｏ3 は、低温溶融の組成で
の脱泡剤として０．３〜０．８％の微量でも効果があ
る。ＺｒＯ2 は、化学的耐久性を上げる目的で添加する
ものであるが、ガラスの硬度を大きくするため、カット
や研磨加工を施すことが多いクリスタルガラスにとって
は好ましくないので、その添加量は最小限にしておく必
要がある。
【００１８】以上のような各成分の作用によって、 重量感を表す物性値としての密度が２．９０ｇ／ｃ
ｍ3 以上である。 屈折率Ｎｄが１．５５以上である。 分散を表す物性値としてのアッベ数が４７以下であ
る。 １３７０〜１３８０℃程度の低温で容易に溶融させ
ることができる。 食器として使用されることが多いことを考慮して、
熱膨張係数を１００×１０- 7／℃以下にできる。 などという、クリスタルガラスとしての要件を充分に満
足したガラス組成物が得られるものである。なお、酸化
クロム等の着色剤を微量添加して着色クリスタルガラス
を製造することも当然可能である。
【００１９】
【実施例】表２に示すようなガラス組成になるように調
合した例１から例７のサンプルをそれぞれ白金ルツボに
入れ、１３７５℃の温度で約６時間電気炉内で溶融し
た。その後、ルツボを取り出し、溶融ガラスを鋼板上に
流し出して徐冷炉にて徐冷した。そして、各測定用試料
を切出し、密度、屈折率、アッベ数、熱膨張係数を測定
した。その測定結果を表２中に示す。なお、従来の一般
的な鉛含有クリスタルガラスは、密度が２．９５〜３．
００ｇ／ｃｍ3 、屈折率Ｎｄが１．５５５〜１．５６
５、アッベ数が４５〜４７、熱膨張係数が９６〜１００
×１０- 7／℃である。
【００２０】
【表２】
【００２１】
【発明の効果】本発明によれば、鉛を全く含まなくと
も、従来の鉛含有クリスタルガラスと同等又はそれ以上
の密度、屈折率、分散値を持つクリスタルなガラスを得
ることができる。また、原料も比較的安価であるに加
え、比較的低温で溶融可能であるため、経済的である。
【００２２】鉛に対する規制は、単にガラス製品からの
溶出の問題にとどまらず、原料の調合から溶融炉までの
粉塵、フュームの飛散による作業環境及び公害の点で
も、ますます厳しくなることが予想されることを考える
と、極めて毒性の強い鉛を全く含まないということの利
点は多大なものがある。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−256939（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−155040（ＪＰ，Ａ)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】重量パーセントにして、ＳｉＯ2を５０〜
    ６０％、Ｋ2Ｏを５〜１３％、ＴｉＯ2をガラスの屈折率
    を大きくしアッベ数を小さくするために５〜８％、Ｂａ
    Ｏをガラスの密度を大きくするために１０〜１５％、Ｚ
    ｎＯをガラスの化学的耐久性をよくするために５〜１０
    ％、Ｎａ2Ｏを１０％以下、ＣａＯを５％以下、Ｓｂ2Ｏ
    3をガラスの泡切れをよくするために０．３〜０．８％
    含有したことを特徴とする、鉛を含まないクリスタルな
    ガラス組成物。
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