JP2903566B2 - ポリオキシメチレン樹脂組成物 - Google Patents

ポリオキシメチレン樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は機械物性と耐熱エージング性に優れたポリオ
キシメチレン樹脂組成物に関するものである。
更に詳しくは、結晶化速度が速く成形歪が小さいため
機械物性や耐熱エージング性が優れた主として放出成形
用ポリオキシメチレン樹脂組成物に関するものである。
<従来の技術> ポリオキシメチレン樹脂は機械的強度と耐衝撃性のバ
ランスのとれたエンジニアリングプラスチックとして知
られ、自動車部品、電子機器用部品として広範な分野に
おいて使用されている。
しかしながら、ポリオキシメチレン樹脂は極めて高い
結晶性を有し、その結果、特に熱処理した場合に著しく
成長した球晶構造は亀裂や内部歪を生じさせることによ
り、樹脂の機械的強度を低下させる。ポリオキシメチレ
ン樹脂の結晶構造を微細化、均質化する方法として従来
より、様々な無機化合物、有機化合物、高分子化合物か
らなる核発生化剤をポリオキシメチレン樹脂に配合する
ことが行なわれている。例えば、無機核発生化剤とし
て、タルクを添加したポリオキシメチレン樹脂組成物
(特公昭48−8254号公報)や、分枝を有するまたは網状
化したポリオキシメチレンを核発生化剤として用いたポ
リオキシメチレン樹脂組成物が知られている(特公昭55
−19942号公報)。更に、分岐または網状化したポリオ
キシメチレンと軟化点がポリオキシメチレン以下の平均
分子量1000〜1000000なる重合体の組成物も知られてい
る(特公昭56−42623号公報)。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、上記特公昭48−8254号公報、特公昭55
−19942号公報、特公昭56−42623号公報に記載された樹
脂組成物は得られた成形品の結晶構造の微細化、均質化
が不十分で、また内部歪の緩和が不十分であるため、熱
処理時の機械的強度の低下が問題となり、電気・電子機
器用品、自動車部品等の用途に要求されるさらに高い耐
久性を満足するものではない。
<課題を解決するための手段> 本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結
果、ポリオキシメチレン樹脂に対して脂肪族ポリエーテ
ルおよび/または脂肪族ポリエステルを配合してなる樹
脂組成物が極めて微細で均質な結晶構造を有し、内部歪
が緩和された機械的強度、表面外観および耐熱エージン
グ性に優れた成型品が得られることを見いだし、本発明
に到達した。
即ち、本発明は、(a)トリオキサンと(b)エチレ
ンオキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、
1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカンから選
ばれた少なくとも1種の環状エーテル化合物および
(c)フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジ
ルエーテルから選ばれた少なくとも1種の化合物を共重
合して得られるポリオキシメチレン樹脂[I]100重量
部に対して、脂肪族ポリエーテル[II]および/または
脂肪族ポリエステル[III]0.01〜20重量部を含有して
なるポリオキシメチレン樹脂組成物を提供するものであ
る。
本発明はまた、(a)トリオキサンと(b)エチレン
オキシド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、1,
3,5−トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカンから選ば
れた少なくとも1種の環状エーテル化合物および(c)
フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエー
テルから選ばれた少なくとも1種の化合物を共重合して
得られるポリオキシメチレン樹脂[I]100重量部に対
して、脂肪族ポリエーテル[II]および/または脂肪族
ポリエステル[III]0.01から20重量部を溶融混合する
ことを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物の製造
方法を提供するものである。
本発明のポリオキシメチレン樹脂[I]の製造方法は
特に限定されない。例えば(a)成分のトリオキサンと
(b)成分のエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、
1,3−ジオキセパン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−
トリオキソカンから選ばれた少なくとも1種の環状エー
テル化合物及び(c)成分のフェニルグリシジルエーテ
ル、ナフチルグリシジルエーテルから選ばれた少なくと
も1種の化合物をシクロヘキサンのような有機溶媒中に
溶解、あるいは懸濁した後、ルイス酸触媒を添加して重
合し、不安定末端を分解除去して製造することができ
る。好ましくは溶媒を全く使用せずにセルフクリーニン
グ型撹拌機を使用して塊状重合し、ヒンダードアミン化
合物で触媒失活させた後、不安定末端を分解除去して製
造する方法が挙げられる。ルイス酸触媒としては、三フ
ッ化ホウ素、三フッ化ホウ素水和物および酸素または硫
黄原子を有する有機化合物と三フッ化ホウ素との配位化
合物が好ましく使用される。ルイス酸触媒の添加量は、
トリオキサン100重量部に対して0.001〜0.1重量部の範
囲が好ましく、特に好ましくは0.005〜0.05重量部の範
囲である。また、塊状重合反応温度は60〜120℃の範囲
が好ましく、特に60〜90℃の範囲が好ましい。触媒を失
活させるヒンダードアミン化合物とは、ビス(1,2,2,6,
6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビ
ス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケ
ート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル
−2,2,6,6テトラメチルピペリジン重縮合物、1−[2
−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3.
5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピ
オニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンな
どのような分子中にヒンダードアミン骨格を有する化合
物を意味し、その添加量は、触媒のホウ素原子1個に対
してヒンダードアミン化合物中の窒素原子0.1〜20個に
相当する量を添加するのが好ましい。
本発明のポリオキシメチレン樹脂[I]における
(b)成分のエチレンオキシド、1,3−ジオキソラン、
1,3−ジオキセパン、1,3,5−トリオキセパン、1,3,6−
トリオキソカンから選ばれた少なくとも1種の環状エー
テル化合物の共重合量は、(a)成分のトリオキサン10
0重量部に対して0.01〜20重量部であり、好ましくは0.1
〜7重量部である。0.01重量部以下では熱安定性が低下
し、20重量部以上では、機械的強度の優れたポリマを得
ることが困難であるため好ましくない。
本発明のポリオキシメチレン樹脂[I]における
(c)成分のフェニルグリシジルエーテル、ナフチルグ
リシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種の化合物
の共重合量は、(a)成分のトリオキサン100重量部に
対して0.001〜10重量部が好ましく、特に好ましくは0.0
1〜5重量部の範囲である。0.001重量部未満では成形歪
緩和の改良効果が小さく、10重量部を越えると衝撃強度
が低下するため好ましくない。
本発明のポリオキシメチレン樹脂[I]の重合度は、
80℃の熱風オーブン中で3時間乾燥したペレットを用
い、ASTM D1238に従って、温度190℃、荷重2190gで測
定したMI値で、1〜60g/分の範囲にあることが好まし
い。MI値が1g/分より小さいと射出成形時の流動性が低
下し、薄肉成形品が成形できないため好ましくない。ま
た、60g/分を越えると重合度が低いため、衝撃強度が問
題となるため好ましくない。
本発明で使用される脂肪族ポリエーテル[II]とは、
ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレ
ンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシ
ド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド/プロピレン
オキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド/テト
ラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオ
キシド)グリコールのエチレンオキシド付加物およびこ
れらの誘導体が挙げられる。
上記脂肪族ポリエーテル[II]の平均分子量は、100
〜50000の範囲にあるのが好ましく、特に好ましくは100
0〜30000の範囲である。平均分子量が100未満の場合に
は、脂肪族ポリエーテルが成型品表面にブリードして商
品価値を低下するため好ましくない。また、50000以上
の場合には、成型歪の緩和が小さく、機械的強度低下が
大きいため使用されない。
また、本発明で使用される脂肪族ポリエステル[II
I]とは、炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸と炭素数
2〜10の脂肪族ジオールからなるポリエステル、ラクト
ン類を開環重合して得られるポリエステルを意味し、具
体的にはポリ(エチレンアジペート)、ポリ(ブチレン
アジペート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(ブ
チレンセバケート)、ポリ(ε−カプロラクトン)など
が挙げられる。
上記脂肪族ポリエステル[III]の平均分子量は、100
〜50000の範囲にあるのが好ましく、特に好ましくは100
0〜30000の範囲である。平均分子量が100未満の場合に
は、脂肪族ポリエステルが成型品表面にブリードして商
品価値を低下するため好ましくない。また、50000を越
える場合には、成型歪の緩和が小さく、機械的強度低下
が大きいために使用されない。
本発明においては、ポリオキシメチレン樹脂に脂肪族
ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルを添加
することにより初めて、成型歪が緩和され、表面外観、
結晶性、機械的強度、耐熱エージング性に優れたポリオ
キシメチレン樹脂が得られるものである。脂肪族ポリエ
ーテル[II]および/または脂肪族ポリエステル[II
I]を添加することが重要であり、脂肪族ポリエーテル
[II]および/または脂肪族ポリエステル[III]の添
加量は、ポリオキシメチレン樹脂[I]100重量部に対
して0.01〜20重量部であり、好ましくは0.05〜10重量部
である。0.01重量部未満では成型歪の改良効果が小さ
く、20重量部を越えると引張強度に代表される機械的強
度が低下するため好ましくない。
本発明のポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法と
しては、通常公知の方法が採用できる。例えば、ポリオ
キシメチレン樹脂[I]の重合ないしは安定化工程で、
脂肪族ポリエーテル[II]および/または脂肪族ポリエ
ステル[III]を添加する方法、ポリオキシメチレン樹
脂[I]、脂肪族ポリエーテル[II]および/または脂
肪族ポリエステル[III]をペレット状、粉状、または
粒状で混合し、このまま溶融加工してもよいが、バンバ
リーミキサー、ロール、押出機等により溶融混合する方
法も採用できる。特に好ましくは1軸ないしは2軸の押
出機を使用して、150〜250℃の温度で溶融混合する方法
が好ましい。
また、本発明の組成物には本発明の効果を損なわない
範囲で炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、酸化チ
タン、酸化珪素、マイカ粉末、ガラスビーズのような充
填剤、炭素繊維、ガラス繊維セラミック繊維、アラミド
繊維、チタン酸カリ繊維のような補強剤、着色剤(顔
料、染料)、核剤可塑剤、エチレンビスステアロアミ
ド、ポリエチレンワックスのような離型剤、カーボンブ
ラックのような導電剤、ヒンダードフェノール化合物、
チオエーテル系化合物、ホスファイト系化合物のような
酸化防止剤、ヒンダードアミン化合物、ベンゾフェノン
系化合物、ベンゾトリアゾール化合物のような光安定
剤、メラミン、グアニジン、ナイロン、ジシアンジアミ
ドのようなホルムアルデヒド捕捉剤、粘着剤、滑剤、耐
加水分解改良剤、接着助剤などの添加剤を任意に含有さ
せることができる。
<実施例> 以下に実施例によって本発明を説明する。なお、実施
例中の%及び部はすべて重量基準である。
また、実施例及び比較例中に示される成形品の機械物
性、MI値、ポリマ融点、結晶化温度および耐熱エージン
グ性は次のようにして測定した。
・射出成形:5オンスの射出能力を有する射出成形機を用
いて、シリンダ温度190℃、金型温度65℃、成形サイク
ル50秒に設定して、ASTM1号ダンベル試験片とアイゾッ
ト衝撃試験片を射出成形した。この際、ASTM1号ダンベ
ル試験片の外観を目視で観察した。
・機械物性:上記射出成形で得られたASTM1号ダンベル
試験片を用い、ASTM−D638法に準じて引張強度を、また
アイゾット衝撃試験片を用い、ASTM D−256法に準じ
て衝撃強度を測定した。
・MI値:80℃の熱風オーブン中で3時間乾燥したペレッ
トを用い、ASTM−D1238に従って、温度190℃、荷重2190
グラムで測定した。
・融点(Tm)、結晶化温度(Tc):差動走査熱量計(DS
C)を使用して窒素雰囲気下、80℃から10℃/分の速度
で220℃まで昇温し5分間220℃で保持したのち、10℃/
分の速度で降温し、結晶化温度を測定した。更に、110
℃まで冷却後再び10℃/分の速度で昇温して、融点を測
定した。
・耐熱エージング性:上記射出成型で得られたASTM1号
ダンベルを150℃に設定したオーブン中に静置し、所定
時間後とりだしてASTM−D638法に従って引張強度を測定
した。
参考例 実施例および比較例に使用したポリオキシメチレン樹
脂[I]は次のような方法で製造した。
100mmφ、シリンダー長さ(L)/シリンダー径
(D)=10の2軸の連続型混合機(栗本鉄工所製“KRC
ニーダ"S−4型)にトリオキサン、(b)成分の化合
物、(c)成分の化合物、およびトリオキサンに対して
100ppmの三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(2.5%
ベンゼン溶液)、重合度調節剤のメチラールをそれぞれ
供給し、連続重合を行なった。重合温度は外部ジャケッ
ト温度を温水で60℃にコントロールし、回転数は60rpm
で行った。分子量調節剤としてのメチラールは、トリオ
キサン中に溶解した。又、(b)成分の化合物と触媒溶
液は、ニーダーへ供給する直前に予備混合されるように
予備混合ゾーンを設けた。重合体は白色微粉末として得
られた。
この様にして得られた微粉末10kgに対して、27gのビ
ス(1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバ
ケートを200mlのベンゼンに溶解した溶液を添加して触
媒失活を行った後、更にステアリン酸カルシウム10g、
1,6−ヘキサンジオール−ビス−〔3−(3,5−ジ−t−
ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕
[チバ・ガイギー(Ciba−Geigy)社製“イルガノック
ス(Irganox)"245]50gを添加してヘンシェルミキサー
中で10分間撹拌した。得られた混合物を35mmφ、L/D=3
0のベント付2軸押出機を使用して、シリンダー温度230
℃、ベントの真空度5Torrの条件で溶融安定化を行った
後、水中に吐出しカッティングを行ってペレット状のポ
リオキシメチレン樹脂を得た。
・実施例1〜9および比較例1〜2 参考例に従って製造したポリオキシメチレン樹脂
[I]、および脂肪族ポリエーテル[II]、脂肪族ポリ
エステル[III]をドライブレンドし、45mmφL/D=31.5
のベント付き2軸押出機で220℃で溶融混練し、水中に
吐出カッティングしてペレットを得た。
表1.〜表2.に使用したポリオキシメチレン樹脂
[I]、および脂肪族ポリエーテル[II]、脂肪族ポリ
エステル[III]の種類と配合比、また得られた物性を
示した。表1.〜表2.の結果から本発明の組成物が優れた
表面外観、融点(Tm)と結晶化温度(Tc)の差が小さい
ことから結晶性に優れ、また機械的強度や耐熱エージン
グ性に優れていることが明かである。
<発明の効果> 本発明の組成物は、結晶性、成形品の表面外観や耐熱
エージング性に優れているため、押出成形や射出成形、
特に射出成形により電気・電子部品や自動車部品などに
広範囲に使用することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−209217(JP,A) 特開 昭57−128740(JP,A) 特公 昭48−25408(JP,B1) 特公 昭44−864(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C08L 59/00 - 59/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)トリオキサンと(b)エチレンオキ
    シド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、1,3,5
    −トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカンから選ばれ
    た少なくとも1種の環状エーテル化合物および(c)フ
    ェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテ
    ルから選ばれた少なくとも1種の化合物を共重合して得
    られるポリオキシメチレン樹脂[I]100重量部に対し
    て、脂肪族ポリエーテル[II]および/または脂肪族ポ
    リエステル[III]0.01〜20重量部を含有してなるポリ
    オキシメチレン樹脂組成物。
  2. 【請求項2】(a)トリオキサンと(b)エチレンオキ
    シド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキセパン、1,3,5
    −トリオキセパン、1,3,6−トリオキソカンから選ばれ
    た少なくとも1種の環状エーテル化合物および(c)フ
    ェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテ
    ルから選ばれた少なくとも1種の化合物を共重合して得
    られるポリオキシメチレン樹脂[I]100重量部に対し
    て、脂肪族ポリエーテル[II]および/または脂肪族ポ
    リエステル[III]0.01から20重量部を溶融混合するこ
    とを特徴とするポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方
    法。
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JP2007204649A (ja) * 2006-02-03 2007-08-16 Mitsubishi Chemicals Corp 熱可塑性樹脂組成物および樹脂成形品

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