JP2894240B2 - 鋼板の打ち抜き加工方法 - Google Patents

鋼板の打ち抜き加工方法

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Description

【発明の詳細な説明】

【0001】

【産業上の利用分野】本発明は鋼板の打ち抜き加工方法
に関し、詳しくは複数枚積層された鋼板をポンチで打ち
抜く鋼板の打ち抜き加工方法に関する。

【0002】

【従来の技術】鋼板のプレス加工において、局部的に鋼
板の板厚以上の肉厚が必要となる部位の成形手段とし
て、図10に示すように鋼板を曲げ密着して重ねる密着
曲げ等の方法が採用されている。この鋼板の密着曲げ部
位を打ち抜き加工する場合、積層された2枚の鋼板を一
度に打ち抜く2枚打ち抜き加工となる。

【0003】従来、鋼板の2枚打ち抜き加工は、1枚の
鋼板の打ち抜き加工と同様、剪断加工により行われてい
る。この剪断加工による2枚打ち抜き加工は、図11に
示すように、一対の下側ダイス81と一対の上側押さえ
型82とで鋼板83a、83bを挟持し、一対の上側押
さえ型82間から挿入されたポンチ84により2枚の鋼
板83a、83bを一度に打ち抜くものである。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のよ
うに剪断加工により2枚打ち抜き加工した場合、十分な
打ち抜き精度が得られないとか、打ち抜かれ面の良好な
面性状が得られないといった問題があった。すなわち、
図11に示すように、ポンチ84と反対側(下側)の2
枚目の鋼板83bが打ち抜かれる際に2枚の鋼板83
a、83bの間Cにポンチ84が存在しないため、2枚
目の鋼板83bはポンチ側(上側)の1枚目の鋼板83
aをポンチとして打ち抜かれることになり、このため2
枚目の鋼板83bが引きちぎられてしまう。その結果、
図12に示すように、2枚目の鋼板83bの打ち抜かれ
面の上方部は引きちぎれ面となって剪断面をもたない面
性状となり、また打ち抜き寸法bも1枚目の鋼板83a
の打ち抜き寸法aより大きくなる。また、2枚目の鋼板
83bに発生するダレやバリが大きくなる。

【0005】なお、ダレやバリの対策として、抜きのク
リアランス(ポンチ外周面とダイス内周面との間のクリ
アランス)を小さく、具体的には鋼板2枚分の板厚に対
し5%程度と小さくして、打抜き時の曲げモーメントを
減少させる事によりダレやバリの発生を抑えることがで
きるが、一方で、一枚目の鋼板83aの打ち抜き片と2
枚目の鋼板83bの打ち抜かれ面との間に擦れが発生し
易くなって、2枚目の鋼板83bの打ち抜かれ面に糸バ
リが発生し易くなるという新たな問題が生じてしまう。

【0006】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、複数枚積層された鋼板をポンチで一度に打ち抜く
場合においても、十分な打ち抜き精度を得ることがで
き、しかも打ち抜かれ面の良好な面性状を得ることので
きる鋼板の打ち抜き加工方法を提供することを解決すべ
き技術課題とするものである。

【0007】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求
項1記載の鋼板の打ち抜き加工方法は、複数枚積層され
た鋼板をポンチで一度に打ち抜く鋼板の打ち抜き加工方
法において、上記積層された鋼板のうち少なくともポン
チ側に位置する鋼板の打ち抜かれる部分の内側域に、打
ち抜かれた鋼板の打ち抜き片が内側へ移動して逃げるこ
とを可能にする切欠部を予め設けておくことを特徴とす
るものである。

【0008】

【0009】

【作用】請求項1記載の鋼板の打ち抜き加工方法では、
積層された鋼板のうち少なくともポンチ側に位置する鋼
板の打ち抜かれる部分の内側域に、打ち抜かれた鋼板の
打ち抜き片が内側へ移動して逃げることを可能にする切
欠部を予め設けておく。これにより、最初の一枚目の鋼
板がポンチにより打ち抜かれると、この鋼板の打ち抜き
片は内側に移動して逃げるため、ポンチの打ち抜き先端
面の外周端縁が直接次の2枚目の鋼板に当接することが
可能となる。このため、この2枚目の鋼板も1枚目の鋼
板と同様に直接ポンチにより打ち抜くことができる。し
たがって、2枚目の鋼板も、1枚目の鋼板と同様の打ち
抜き精度及び打ち抜かれ面の面性状を維持することがで
きる。

【0010】また、1枚目の鋼板の打ち抜き片が移動し
て逃げることから、該打ち抜き片が2枚目の鋼板の打ち
抜かれ面と擦れることがなくなり、2枚目の鋼板の打ち
抜かれ面での糸バリの発生がなくなる。これにより、抜
きのクリアランスを小さくすることが可能となり、した
がってバリやダレの発生も良好に抑えることが可能とな
る。

【0011】

【0012】なお、請求項1記載の打ち抜き加工方法に
おいて、鋼板積層数が3枚以上であっても、3枚目以
降の鋼板も上記2枚目の鋼板と同様に、打ち抜き精度及
び打ち抜かれ面の面性状を維持することができるととも
に、打ち抜かれ面における糸バリ、バリやダレの発生を
抑えることができる。

【0013】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (実施例1)図1の模式断面図に示す本実施例に係る鋼
板の打ち抜き装置は、一対の上側押さえ型1、1と、ポ
ンチ2と、一対の下側ダイス3、3とから構成されてい
る。各上側押さえ型1は、所定の付勢手段11で下側ダ
イス3側へ付勢されることにより、下側ダイス3との間
で被加工物4を挟持可能とされている。また、ポンチ2
は図示しない型本体に接続され、所定の打ち抜き荷重で
被加工物4を打ち抜き加工可能とされている。

【0014】本実施例は、板厚:t=2.3mmの2枚
の鋼板4a、4bを積層したものを被加工物4とし、こ
の被加工物4の所定部位を、図4に示すように、U字形
状に打ち抜く例である。なお、この打ち抜き部分の寸法
は、幅:D=9mm、長さ:L=25mmである。ま
た、ポンチ2の外周形状も同一寸法形状のU字形状をな
す。また、抜きのクリアランス(ポンチ2の外周面とダ
イス内周面との間のクリアランス)は0.23mmであ
る。

【0015】まず、図2に示すように、被加工物4の打
ち抜き部分の内側域に、打ち抜き形状と対応したU字形
状のスリット(切欠部)41を打抜くことにより設け
た。なお、このスリット4aの寸法は、幅:d=7m
m、長さ:l=24mmである。また、図2の斜線で示
す部分が、ポンチにより実際に打ち抜かれる部分とな
る。そして、被加工物4を一対の下側ダイス3、3と一
対の上側押さえ型1、1とで挟持した状態で、図示しな
いプレス機を作動させてポンチ2で被加工物4をU字形
状に打ち抜いた。

【0016】本実施例方法では、積層された2枚の鋼板
4a、4b双方の打ち抜かれる部分の内側域に、スリッ
ト41が予め設けられている。これにより、最初の一枚
目の鋼板4aがポンチ2により打ち抜かれると、図3に
示すように、この鋼板4aの打ち抜き片41aは内側に
移動して逃げるため、ポンチ2の打ち抜き先端面2aの
外周端縁が直接2枚目の鋼板4bに当接することが可能
となる。このため、この2枚目の鋼板4bも1枚目の鋼
板4aと同様に直接ポンチ2により打ち抜くことができ
る。したがって、2枚目の鋼板4bも、1枚目の鋼板4
aと同様の打ち抜き精度及び打ち抜かれ面の面性状を維
持することができる。すなわち、図5に示すように、1
枚目の鋼板4aの打ち抜き寸法aと、2枚目の鋼板4b
の打ち抜き寸法bとが同一寸法となる。また1枚目の鋼
板4aの打ち抜き面及び2枚目の鋼板4bの打ち抜かれ
面は、ともに上方部に剪断面、下方部に破断面をもつ正
常な面性状となる。

【0017】また、1枚目の鋼板4aの打ち抜き片41
aが移動して逃げることから、打ち抜き片41aが2枚
目の鋼板4bの打ち抜かれ面と擦れることがなくなり、
2枚目の鋼板4bの打ち抜かれ面での糸バリの発生がな
くなる。これにより、本実施例では抜きのクリアランス
を0.23mmと小さくすることが可能となり、したが
ってバリやダレの発生も良好に抑えることが可能とな
る。

【0018】また、上記実施例において、スリット41
の幅:dを大きくして、抜き代:e(図2参照)を、鋼
板4a(4b)の板厚:tの40%以下にすることによ
り、シェービング効果(切削剪断による打抜きという効
果)を得ることができる。このため、ポンチ2による加
工力の低減や鋼板4a、4bの打ち抜かれ面におけるダ
レ発生の低減を図ったり、剪断面の多い面性状としたり
することができる。

【0019】(実施例2) 本実施例は、図6に示すように、打ち抜き形状を真円形
状とすること以外は、上記実施例1と同様である。すな
わち、本実施例は、上記実施例1と同様の2枚の鋼板を
積層したものを被加工物4とし、この被加工物4の所定
部位を、図6に示すように、真円形状に打ち抜く例であ
る。なお、この打ち抜き部分の寸法は、直径:=9m
mである。また、ポンチ2の外周形状も同一直径の真円
形状をなす。

【0020】まず、被加工物4の打ち抜き部分の内側域
に、打ち抜き形状と対応した同心状の真円形状の円形穴
(切欠部)42を予め設けた。なお、この円形穴42
は、直径r=7mmである。また、図6の斜線で示す部
分が、ポンチにより実際に打ち抜かれる部分となる。そ
して、上記実施例1と同様に、被加工物4を一対の下側
ダイス3、3と一対の上側押さえ型1、1とで挟持し、
ポンチ2で被加工物4を真円形状に打ち抜いた。

【0021】本実施例2においても、上記実施例1と同
様、打ち抜き精度及び打ち抜かれ面の面性状が良好であ
った。なお、上記実施例1、2では、2枚の鋼板4a、
4bの双方にスリット41、円形穴42を設ける例につ
いて説明したが、積層された鋼板4a、4bのうち少な
くともポンチ2側に位置する鋼板4aのみにスリット4
1や円形穴42を設けた場合も同様の効果を得ることが
できる。

【0022】(参考例) 図7から図9に示す参考例は、ポンチ2の打ち抜き先端
面2aに、打ち抜かれた鋼板の打ち抜き片が内側へ移動
して逃げることを可能にする凹部21を設けたものであ
り、上記実施例1と同様、2枚の鋼板4a、4bを積層
したものを被加工物4とし、この被加工物4の所定部位
をU字形状に打ち抜く例である。

【0023】すなわち、このポンチ2の打ち抜き先端面
2aには、その外周縁形状と対応した形状で、断面略半
円形状の凹部21が設けられている。そして、上記実施
例1と同様の2枚の鋼板4a、4bを積層した被加工物
4を、そのまま一対の下側ダイス3、3と一対の上側押
さえ型1、1とで挟持し、ポンチ2で被加工物4をU字
形状に打ち抜いた。

【0024】この参考例では、ポンチ2の打ち抜き先端
面2aに、打ち抜かれた鋼板の打ち抜き片が内側へ移動
して逃げることを可能にする凹部21が設けられてい
る。これにより、一枚目の鋼板4aがポンチ2により打
ち抜かれると、この鋼板4aの打ち抜き片は内側に移動
してポンチ2の凹部21内に逃げるため、ポンチ2の打
ち抜き先端面2aの外周端縁が直接2枚目の鋼板4bに
当接することが可能となる。このため、この2枚目の鋼
板4bも1枚目の鋼板4aと同様に直接ポンチ2により
打ち抜くことができる。したがって、2枚目の鋼板4b
も、1枚目の鋼板4aと同様の打ち抜き精度及び打ち抜
かれ面の面性状を維持することができる。

【0025】なお、上述の実施例では鋼板を2枚積層す
る2枚打ち抜きの例について説明したが、鋼板を3枚以
上積層する場合であっても同様に、打ち抜き精度及び打
ち抜かれ面の面性状を維持することができるとともに、
打ち抜かれ面における糸バリ、バリやダレの発生を抑え
ることができる。

【0026】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る鋼板
の打ち抜き加工方法は、先に打ち抜かれた鋼板の打ち抜
き片を内側へ逃がしつつ、次の鋼板をポンチで直接打ち
抜くことができるので、2枚目以降の鋼板も1枚目の鋼
板と同様の打ち抜き精度及び打ち抜かれ面の面性状を維
持することができる。

【0027】また、打ち抜き片が打ち抜かれ面と擦れる
ことがなくなるので、抜きのクリアランスを減少させて
バリやダレの発生もより効果的に抑えることが可能とな
る。

【図面の簡単な説明】

【図1】 実施例1の打ち抜き加工装置の全体構成を模
式的に説明する断面図である。

【図2】 実施例1に係り、鋼板よりなる被加工物4に
スリット41を設けた状態を示す平面図である。

【図3】 実施例1の打ち抜き加工方法を模式的に説明
する部分断面図である。

【図4】 打ち抜き加工後の被加工物4の平面図であ
る。

【図5】 打ち抜き加工後の打ち抜かれ面の断面形状を
示す説明図である。

【図6】 実施例2に係り、鋼板よりなる被加工物4に
円形穴42を設けた状態を示す平面図である。

【図7】 参考例に係り、ポンチの底面図である。

【図8】 参考例に係り、ポンチの部分断面図である。

【図9】 参考例の打ち抜き加工方法を模式的に説明す
る部分断面図である。

【図10】 1枚の鋼板を密着曲げした状態を示す説明
図である。

【図11】 従来の打ち抜き加工方法を模式的に説明す
る部分断面図である。

【図12】 従来の打ち抜き加工後の打ち抜かれ面の断
面形状を示す説明図である。

【図13】 従来の打ち抜き加工方法で、打ち抜かれ面
に糸バリが発生する様子を示す説明図である。

【符号の説明】

1は上側押さえ型、2はポンチ、2aは打ち抜き先端
面、21は凹部、3は下側ダイス、4は被加工物、4
a、4bは鋼板、41はスリット(切欠部)、42は円
形穴(切欠部)である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B21D 28/02 B21D 28/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数枚積層された鋼板をポンチで一度に打
    ち抜く鋼板の打ち抜き加工方法において、 上記積層された鋼板のうち少なくともポンチ側に位置す
    る鋼板の打ち抜かれる部分の内側域に、打ち抜かれた鋼
    板の打ち抜き片が内側へ移動して逃げることを可能にす
    る切欠部を予め設けておくことを特徴とする鋼板の打ち
    抜き加工方法。
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