JP2891518B2 - 窒化アルミニウム多層配線板の製造方法 - Google Patents

窒化アルミニウム多層配線板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は半導体パッケージ等に使用する窒化アルミニ
ウムの多層配線板の製造方法に関する。
[従来の技術] 従来、アルミナ等のセラミックス粉末に炭素質バイン
ダーを配合してなる原料組成物によってグリーンシート
を成形し、このグリーンシートの表面やスルーホール形
成用孔内にタングステンペーストによって導体回路を形
成している。そして、このようなグリーンシートを複数
枚積層し、焼成を施すことによりセラミックス多層配線
板を製造している。
[発明が解決しようとする課題] 一般に、積層成形体の常圧焼結による収縮を極力低く
抑えるため、前記グリーンシートは高密度化される傾向
にある。特に、原料が窒化アルミニウムの場合、焼結に
よる収縮率が極めて大きいためにその傾向は顕著であ
り、窒化アルミニウムのグリーンシートでは、その窒化
アルミニウムの空間占有率が65%以上とかなり大きく設
定されている。
ところが、窒化アルミニウムの場合、非酸化性雰囲気
中にて焼成する必要があるため、炭素質バインダーが容
易に脱脂されないという事情に加えて、グリーンシート
における窒化アルミニウムの空間占有率が非常に高いた
めに、仮焼成時に発生する炭素質バインダーの分解生成
物を、グリーンシート中から十分に放出することができ
なかった。そのため、導体回路を構成するタングステン
粒子が、本焼成時に残留炭素質と反応してタングステン
カーバイト(WC,W2C)を生成し、多層配線板シート抵
抗を増大させるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたものであ
り、その目的は、製造時におけるタングステンカーバイ
トの生成を抑制することにより、シート抵抗の低い多層
配線板を確実に製造することができる窒化アルミニウム
多層配線板の製造方法を提供することにある。
[課題を解決するための手段及び作用] 上記課題を解決するために本発明は、窒化アルミニウ
ム粉末に炭素質物質を配合してなる原料組成物から、窒
化アルミニウムの空間占有率が57〜61%となるグリーン
シートを成形すると共に、このグリーンシートにタング
ステンを含有する導体回路を形成し、このグリーンシー
トを複数枚積層した状態で、非酸化性雰囲気中にて仮焼
成を施し、その後、常圧にて本焼成することにより窒化
アルミニウム多層配線板を製造している。
この方法によれば、グリーンシートの窒化アルミニウ
ムの空間占有率が非常に低く、グリーンシート中に開放
気孔が多く存在するため、仮焼成時に生成される炭素質
物質の分解生成物がグリーンシート内から容易に放出さ
れる。そのため、本焼成時におけるグリーンシート中の
残留炭素質が少なくなり、導体回路を構成するタングス
テンとの反応によって生ずるタングステンカーバイトの
生成が極力低く抑えられる。従って、多層配線板のシー
ト抵抗が従来よりも低減される。また、タングステンカ
ーバイトは非常に脆いものであるが、導体回路における
タングステンカーバイトの含有率が低くなることによ
り、導体回路の脆さが改善される。
前記グリーンシートは窒化アルミニウム粉末に炭素質
物質を配合してなる原料組成物を成形したものである。
窒化アルミニウムは、それが焼結された焼結体におい
て優れた電気絶縁性、熱伝導性、耐熱性、寸法安定性、
機械的強度を示し、配線基板用材料として優れた適性を
有する。
前記炭素質物質とは、例えばアクリル系の有機樹脂バ
インダーをいい、窒化アルミニウム粉末の結合剤として
使用される全ての含炭素物質をいう。また、前記原料組
成物には必要に応じて有機溶剤等が配合される。
前記グリーンシートは、窒化アルミニウムの空間占有
率が57〜61%となるように成形する必要がある。
この空間占有率が57%未満となると、タングステンカ
ーバイトの生成量が少なくなるものの、焼成後の基板の
寸法精度が極めて悪くなり、多層配線板として使用でき
なくなる。一方、空間占有率が61%を超えると、タング
ステンカーバイトの生成量が多くなり、シート抵抗の低
減を図れない。
グリーンシートを前記空間占有率の範囲内に設定する
方法としては、平均粒径が異なる数種類の窒化アルミニ
ウム粉末を混合する方法があげられる。
前記グリーンシートにタングステンを含有する導体回
路を形成する方法としては、例えば、タングステンペー
ストをスクリーン印刷する方法があげられる。このタン
グステンペーストは、タングステン微粒子にアクリル系
バインダー、エーテル系の溶剤、ブチラール、グリコー
ル等の分岐溶媒等を配合してなるものである。
さて、前記グリーンシートは、それらを複数枚積層し
た状態で、非酸化性雰囲気中にて仮焼成を施した後、常
圧にて本焼成される。
前記仮焼成は1200〜1600℃の温度にて1〜10時間施さ
れることが好ましい。
この温度が1200℃未満では、グリーンシート中の炭素
質物質を十分に分解することができず、1600℃を超える
と、炭素質物質の分解のみならず、分解生成物とタング
ステンとの反応を併発し、タングステンカーバイトの生
成を誘発する。
また、前記仮焼成時間が1時間未満では、グリーンシ
ートに含有される量の炭素質物質を十分に分解すること
ができない。一方、10時間を超えても、それ以上の効果
は得られない。
本焼成は、窒化アルミニウムの一般的な焼成温度であ
る1600〜2200℃の温度にてなされる。
以下に、本発明を具体化した実施例1及び2、並びに
比較例1及び2について説明する。
[実施例1] (グリーンシートの作製) 平均粒径が1.4μm、粒子の100%が粒径0.1〜20μm
の範囲に存在し、粒子の80%が粒径0.1〜5.0μmの範囲
に存在する窒化アルミニウム粉末(以下、「粒度分布の
広いAlN粉末」という)70重量部、平均粒径が1.1μm、
粒子の100%が粒径0〜4.0μmの範囲に存在し、粒子の
80%が粒径の0〜1.5μmの範囲に存在する窒化アルミ
ニウム粉末(以下、「粒度分布の狭いAlN粉末」とい
う)30重量部に、平均粒径が2〜3μmの酸化イットリ
ウム(Y2O3)を5重量部、アクリル系バインダーを11重
量部、及びトルエン等を配合し、ボールミルにて24〜48
時間混練して原料組成物を調製した後、シートキスティ
ング法によって複数枚のグリーンシートを作製した。こ
のグリーンシートにおける窒化アルミニウムの空間占有
率は57.5%である。
(導体回路の形成) 次に、平均粒径が1.0〜1.5μmのタングステン微粒子
100重量部に、10重量%のアクリル系バインダーが配合
されたエーテル系の溶剤からなる混合溶媒を5〜10重量
部と、ひまし油0.1〜0.5重量部とを配合し、これを三本
ロール混合機にて約1時間混練することによりタングス
テンペーストを調製した。
そして、前記各グリーンシートに対し、必要に応じて
パンチング加工によるスルーホール形成用孔を形成した
後、前記タングステンペーストによるスクリーン印刷を
施して、各グリーンシートの表面及びスルーホール形成
用孔内に導体回路を形成した。
(多層配線基板の作製) 次に、上記グリーンシートを複数枚積層し、これに加
熱乾燥を施して積層成形体中の溶剤を乾燥除去した後、
常圧窒素ガス雰囲気中にて1350℃で4時間仮焼成を施し
た。続いて、1750℃で2時間本焼成を施して窒化アルミ
ニウム多層配線板を得た。
このようにして得られた多層配線板の平面寸法を測定
したところ、長さ及び幅方向への平均収縮率は15.7%で
あった。また、使用した全タングステンに対するタング
ステンカーバイトへの転化率は60%であり、シート抵抗
は40mΩ/cm2という低い値を示した。尚、前記シート抵
抗は、多層配線板に形成された導体回路の両端部間の抵
抗を測定した値である。
[実施例2] 粒度分布の広いAlN粉末80重量部、粒度分布の狭いAlN
粉末20重量部を使用し、前記実施例1と同様にして窒化
アルミニウムの空間占有率が60.0%のグリーンシートを
作製した。このグリーンシートを使用して、前記実施例
1と同様にして導体回路を形成すると共に、同じ条件で
仮焼成及び本焼成を施して窒化アルミニウム多層配線板
を得た。
このようにして得られた多層配線板の平面寸法を測定
したところ、長さ及び幅方向への平均収縮率は14.2%で
あった。また、使用した全タングステンに対するタング
ステンカーバイトへの転化率は65%であり、シート抵抗
は43mΩ/cm2という低い値を示した。
[比較例1] 粒度分布の広いAlN粉末100重量部を使用し、前記実施
例1と同様にして窒化アルミニウムの空間占有率が66.0
%のグリーンシートを作製した。このグリーンシートを
使用して、前記実施例1と同様にして導体回路を形成す
ると共に、同じ条件で仮焼成及び本焼成を施して窒化ア
ルミニウム多層配線板を得た。
このようにして得られた多層配線板の平面寸法を測定
したところ、長さ及び幅方向への平均収縮率は11.5%で
あった。しかし、使用した全タングステンに対するタン
グステンカーバイトへの転化率は80%であり、シート抵
抗も60mΩ/cm2という高い値を示した。
[比較例2] 粒度分布の広いAlN粉末50重量部、粒度分布の狭いAlN
粉末50重量部を使用し、前記実施例1と同様にして窒化
アルミニウムの空間占有率が54.0%のグリーンシートを
作製した。このグリーンシートを使用して、前記実施例
1と同様にして導体回路を形成すると共に、同じ条件で
仮焼成及び本焼成を施して窒化アルミニウム多層配線板
を得た。
このようにして得られた多層配線板の平面寸法を測定
したところ、長さ及び幅方向への平均収縮率は17.5%で
あった。尚、使用した全タングステンに対するタングス
テンカーバイトへの転化率は57%であり、シート抵抗も
35mΩ/cm2という低い値であったが、寸法精度が極めて
悪く、実用に供することができなかった。
[発明の効果] 以上詳述したように本発明によれば、製造時における
タングステンカーバイトの生成を抑制して、シート抵抗
の低い窒化アルミニウム多層配線板を確実に製造するこ
とができるという優れた効果を奏する。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】窒化アルミニウム粉末に炭素質物質を配合
    してなる原料組成物から、窒化アルミニウムの空間占有
    率が57〜61%となるグリーンシートを成形すると共に、
    このグリーンシートにタングステンを含有する導体回路
    を形成し、 このグリーンシートを複数枚積層した状態で、非酸化性
    雰囲気中にて仮焼成を施し、その後、常圧にて本焼成す
    ることを特徴とする窒化アルミニウム多層配線板の製造
    方法。
  2. 【請求項2】前記仮焼成は、1200〜1600℃の温度にて1
    〜10時間施されることを特徴とする請求項1に記載の窒
    化アルミニウム多層配線板の製造方法。
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