JP2666744B2 - アルミナ多層配線基板とその製造方法、及びアルミナ焼結体の製造方法 - Google Patents

アルミナ多層配線基板とその製造方法、及びアルミナ焼結体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特に低誘電損失を要求
されるマイクロ波集積回路に用いられるセラミックス多
層配線基板とその製造方法、及び低温焼結基板として好
適に用いられるアルミナ焼結体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セラミックス多層配線基板は、容易に多
層化が可能であることから広範囲の分野に応用されてき
た。特にアルミナは、誘電率、誘電損失、熱膨張係数、
強度等のバランスがよいことから、従来からセラミック
ス基板の代表的な材料の一つであった。アルミナは高周
波領域における誘電損失が小さいことから、高周波集積
回路(MIC)用の配線基板等にも応用される。しかし
ながら、アルミナの焼結温度は通常1600℃以上と高
いため、同時焼成による内層配線を低抵抗ではあるが低
融点でもあるAu、Ag、Cu等とすることが出来ない
という欠点があった。従来、アルミナ多層配線基板はW
等の高融点金属を配線材料として使用することが知られ
ている。
【0003】アルミナを低温で焼結しようとした試みと
してアルミナ−ガラス複合化によって焼成温度を100
0°以下とした例や、平均粒径が3μm 以下のアルミナ
原料粉末を用いて1460℃程度で焼成した例(特開平
4−106994号公報)が報告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】小型化、高信頼性化が
要求される基板材料の中にあってアルミナは前述した通
り、バランスのとれた材料である。特に誘電損失の点で
は非常に優れているため、高周波モジュールへの応用が
期待されるが、前述の通り高い焼成温度の為に内装可能
な配線材料に制限がある。この欠点は、アルミナの焼成
温度をAu、Ag、Cu、Ag−Pd等の融点以下の温
度域まで下げることを可能にすることにより解決でき
る。しかし、前述の開示されている方法ではアルミナに
ガラス等を多量に混合するため、誘電損失が損なわれる
と言う問題があった。また、アルミナの重量%を100
%に近づけると、焼結温度は1500℃付近になってし
まうため低融点金属は使用できなかった。
【0005】本発明の目的は、アルミナの低温焼成を可
能にすることで、低誘電損失を特徴とする多層配線基板
とその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によるアルミナ焼
結体は、平均粒径5〜50nmのアルミナ微粉末70〜1
00重量%、平均粒径0.5〜3.0μm であるアルミ
ナ粉末0〜20重量%及びアルカリ土類金属化合物の添
加剤0〜10重量%の成形体を作製し、これを分圧にし
て0.005気圧以上0.85気圧以下の水蒸気を含む
雰囲気中にて900〜1200℃の温度域で焼成するこ
とによって得られる。
【0007】ここで、平均粒径が5nm未満のアルミナ粉
末を得ることは困難である。また、平均粒径が50nm以
上であると1200℃以下での焼結性が著しく低下す
る。この為原料粉末のアルミナ微粉末の粒径は5〜50
nmの範囲にある必要がある。さらに好適には5〜20nm
の範囲がよい。
【0008】アルカリ土類金属化合物の添加は焼結の進
行を促す効果が認められる。添加剤を添加しない場合に
比較して、同等の密度に達するまでの焼成時間は短くな
る。ここで添加量は10重量%以上とすることは望まし
くない。副成分が多くなることにより焼結体の誘電損率
は大きくなるからであり、従来のアルミナのもつ誘電特
性と遜色ない特性は添加量が10重量%以下のときに達
成される。
【0009】焼成雰囲気中の水蒸気含有量の増大に従い
焼結性は向上する。分圧にして0.005気圧以下では
その効果は全く認められない。一方、0.85気圧以上
含有する雰囲気を得ることは困難である。したがって、
水蒸気量は分圧にして0.005気圧以上0.85気圧
以下が望ましい。更に好適には0.3〜0.7気圧の範
囲が容易に得られ、効果も十分確認されたことから望ま
しい範囲である。以上の条件下で焼成を行うことによ
り、焼成温度を900〜1200℃としてアルミナ焼結
体を得ることが出来る。また、アルミナ成分として0.
5〜3.0μm の粒径をもつアルミナ粉末を0〜20重
量%加えることができる。この添加は焼成によって起こ
る収縮量を制御するのに有効である。しかし、粒径が
0.5μm 以下のアルミナ粉末を添加することは収縮の
制御に関しては効果が認められない。粒径が0.5μm
以上のアルミナ粉末を原料粉末に加えることは焼結性の
低下を招くが、粒径3.0μm 以下のアルミナ粉末20
重量%以下までの添加量ならば焼結性を著しく低下させ
ることはない。
【0010】多層配線基板を製造する場合には、グリー
ンシートを作製し、これに配線及びヴィア配線を形成し
た後積層し、次いで積層体を焼成することにより一体化
して多層配線基板を得ることが出来る。ここで配線材料
はAu、Ag、Ag−Pd、Cuのうち少なくとも1種
類以上より選択することが望ましい。これは、これらの
金属が特に高周波特性が良好であるためである。
【0011】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実
施例に限定されるものではない。
【0012】(実施例1)平均粒径が5nmであるアルミ
ナ微粉末90重量%とマグネシア10重量%を秤量(図
1点b)、混合を行い、原料となる混合粉末を作製し
た。エチルセロソルブを主成分とする溶剤に前述の混合
粉末とバインダーとしてポリビニルブチラールを加えて
混合を行い、粘度が3000〜10000cpsである
スラリーを作製した。これをスリップキャスティング成
膜法により50μm から200μm の厚みになるように
グリーンシート化する。作製したグリーンシートを熱プ
レスすることにより生積層体を得た。この生積層体を分
圧にして0.7気圧の水蒸気を含む雰囲気中900℃2
5時間及び1200℃10時間焼成を行った。
【0013】得られた焼結体の到達密度はそれぞれ9
8.0%、99.0%であった。また、空洞共振器法に
より各焼成体の誘電損失を測定したところ、ともにta
nδ=1.0×10-4であった。また、添加剤としてマ
グネシアの他に、カルシア、炭酸カルシウム、炭酸スト
ロンチウム等を用いてもほぼ同様の結果が得られた。
【0014】(実施例2)平均粒径が50nmであるアル
ミナ微粉末90重量%とマグネシア10重量%を秤量
(図2点f)、混合を行い、原料となる混合粉末を作製
した。この混合粉末を用い、実施例1と同様のプロセス
により生積層体を作製した。この生積層体を分圧にして
0.7気圧の水蒸気を含む雰囲気中、1200℃にて2
0時間焼成を行った。
【0015】こうして得られたアルミナ焼結体の相対密
度は98.5%であった。また、このアルミナ焼結体の
破断面を走査型電子顕微鏡により観察を行ったところ、
1μm 以下の空孔が若干存在することが観察されたが、
十分に緻密な焼結体であることが確認された。
【0016】(実施例3)原料粉末として平均粒径5nm
であるアルミナ微粉末を用い(図1点a)、実施例1と
同様のプロセスにて生積層体を作製した。この生積層体
を分圧にして0.7気圧の水蒸気を含む雰囲気中、90
0℃50時間及び1200℃20時間の焼成を行った。
【0017】こうして得られたアルミナ焼結体の密度は
それぞれ98.5%、99.0%に達していた。また、
実施例2と同様の破断面観察により、緻密な焼結体であ
ることが確認された。
【0018】(実施例4)実施例1と同様のプロセスに
て作製した生積層体を焼成温度を1000℃として焼成
を行った。この際、焼成雰囲気に含有する水蒸気量を
0.005気圧としたところ、焼成時間が30時間とな
ったところで焼結体密度が98.0%に達した。また、
水蒸気量を0.85気圧まで高めて焼成を行ったとこ
ろ、焼成時間が10時間のときに焼結体密度が98.0
%に達した。
【0019】これらのアルミナ焼結体の破断面を走査型
電子顕微鏡にて観察したところ、緻密な焼結体であるこ
とが観察され、水蒸気量は0.005気圧以上で効果が
あることが確認された。
【0020】(実施例5)平均粒径が5nmであるアルミ
ナ微粉末70重量%、平均粒径が3.0μm であるアル
ミナ粉末20重量%、及びマグネシア10重量%を秤量
(図1点c)、混合を行い、原料となる混合粉末を作製
した。この混合粉末にバインダーとしてポリビニルアル
コールを添加して造粒を行った後、一軸プレス成形によ
り圧粉体を作製した。この圧粉体を分圧にして0.7気
圧の水蒸気を含む雰囲気中、900℃25時間及び12
00℃10時間焼成を行った。得られたアルミナ焼結体
は、それぞれ98.0%、98.5%の密度に達してい
た。
【0021】(実施例6)実施例1と同様のプロセスに
て、厚みが100μm であるグリーンシートを作製し
た。このグリーンシートに直径200μm のヴィアホー
ルを形成し、Cuペーストを埋め込んだ。また、このグ
リーンシート上にCuペーストにより配線パターンをス
クリーン印刷法により印刷を行った。こうして作製され
たグリーンシート20枚を積層し、熱プレスを行うこと
により生積層体を得た。この生積層体を分圧にして0.
7気圧の水蒸気を含む雰囲気中、1000℃の焼成温度
にして20時間焼成を行った。
【0022】こうして得られた多層配線基板の絶縁層で
あるアルミナ焼結体は破断面を観察することにより、緻
密な焼結体であることが確認された。
【0023】また、Cu導体の比抵抗を測定したとこ
ろ、3μΩ・cmであり、低抵抗導体として良好である
ことが確認された。
【0024】(比較例1)実施例1と同様のプロセスに
て作製した生積層体を水蒸気が分圧にして0.003気
圧以下の焼成雰囲気中、1000℃50時間焼成を行っ
た。得られた焼成対は密度が95%以下であり、十分な
焼結には至らなかったことが判った。水蒸気が少ない場
合、十分なアルミナ焼結体は得られないことが判明し
た。
【0025】(比較例2)平均粒径50nmのアルミナ微
粉末70重量%、平均粒径0.5μm のアルミナ粉末2
5重量%、マグネシア5重量%を秤量(図2点i)、混
合を行い、原料混合粉末とした。この原料混合粉末を用
い、実施例1と同様の方法により作製した生積層体を1
200℃の焼成温度にて、分圧にして0.7気圧の水蒸
気を含む焼成雰囲気中50時間焼成を行った。しかしな
がら、得られた焼成体の密度は96.0%であり、十分
緻密な焼結体ではなかった。
【0026】以上の焼成条件をまとめて表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】以上述べた様に、本発明によれば、誘電
損失の小さい多層配線基板及びアルミナ焼結体を得るこ
とができる。また、焼成温度が、1200℃以下である
ことから、低抵抗導体を内装することが容易であり、低
誘電損失な多層配線基板を作製することが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の試料組成を表す図である。
【図2】実施例の試料組成を表す図である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】絶縁層がアルミナ90.0重量%以上より
    なり、かつ前記絶縁層中の内層配線が、同時焼成にて形
    成される融点900〜1200℃の金属よりなることを
    特徴とするアルミナ多層配線基板。
  2. 【請求項2】配線材料がAu,Ag,Ag/Pd及びC
    uより選ばれた1種以上の材料よりなることを特徴とす
    る請求項1記載のアルミナ多層配線基板。
  3. 【請求項3】平均粒径が5〜50nmであるアルミナの微
    粉末70〜100重量%、平均粒径が0.5〜3.0μ
    m であるアルミナの粉末0〜20重量%及びアルカリ土
    類金属化合物の添加剤0〜10重量%をあわせて100
    重量%となるように調製し、バインダー・溶剤と共に混
    合したスラリーを用いてグリーンシートを作製し、この
    グリーンシート上に融点900〜1200℃の金属より
    なる導体層を形成した複数のシート、もしくは該シート
    とグリーンシートにヴィア導体を形成したシートとを積
    層、プレス成形した後、分圧にして0.005気圧以上
    0.85気圧以下の水蒸気を含む雰囲気中、900〜1
    200℃にて焼成することを特徴とする請求項1記載の
    多層配線基板の製造方法。
  4. 【請求項4】平均粒径が5〜50nmであるアルミナの微
    粉末70〜100重量%、平均粒径が0.5〜3.0μ
    m であるアルミナの粉末0〜20重量%及びアルカリ土
    類金属化合物の添加剤0〜10重量%をあわせて100
    重量%となるように調製し、バインダー・溶剤と共に混
    合してスラリーとし、これを成形した後分圧にして0.
    005気圧以上0.85気圧以下の水蒸気を含む雰囲気
    中900〜1200℃にて焼成することを特徴とするア
    ルミナ焼結体の製造方法。
  5. 【請求項5】平均粒径が5〜50nmであるアルミナの微
    粉末70〜100重量%、平均粒径が0.5〜3.0μ
    m であるアルミナの粉末0〜20重量%及びアルカリ土
    類金属化合物の添加剤0〜10重量%をあわせて100
    重量%とした混合物をプレス成形した後、分圧にして
    0.005気圧以上0.85気圧以下の水蒸気を含む雰
    囲気中900〜1200℃にて焼成することを特徴とす
    るアルミナ焼結体の製造方法。
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