JP2888296B2 - フイブリル化型複合繊維およびその製造方法 - Google Patents

フイブリル化型複合繊維およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 {産業上の利用分野} 本発明は、特別な薬剤を使用することなく、沸騰水に
よってフイブリル化することのできるフイブル化型複合
フイラメント糸およびその製造方法に関するものであ
り、さらにソフトでスパンライクな外観と風合の高級感
に富む複合糸を得るのに適したフイブル化型複合フイラ
メント糸およびその製造方法に関するものである。
{従来の技術} 従来、高密度織物用の素材として、綿の高級番手糸が
実用に供せられていたが、かかる高級番手糸は高価であ
ることや、製品については地厚感があるなどの欠点を有
していた。
そこで、合成長繊維糸の製糸技術開発が行なわれ、極
細のフイラメント糸が提案されてきたが、製品において
は風合がペーパーライクでかつ光沢等の表面品位に欠け
る問題があって、商品化のネックになっていた。
一方、このような問題を少しでも改善せんとして、特
開昭57-117647号公報、特開昭58-76569号公報等では、
横断面形状で特定形状をもつフイブリル化型複合フイラ
メント糸を用いて特別な薬剤処理を施すことにより、フ
イブリル化させる方法が提案されている。
しかしながら、上記の複合フイラメント糸は、特別な
薬剤処理を用いるので、薬剤の取扱いによる人体の安全
性、薬剤使用によるコスト高、廃液処理の回収、廃水処
理などの設備面でのコスト問題がある。
さらにまた、フイブリル化したフイラメント糸は、製
品にした場合、極細フイラメント糸使いに比べると、若
干改善されるものの、依然その表面が嵩高性の乏しいフ
イラメント糸で覆われるので、生糸様の「ヌメリ感」や
「冷感」のあるペーパーライクな風合は大幅に改善され
ず、しかも品格に乏しい深みのない光沢となり、綿の細
番手糸を使用した本来の高密度織物等の特徴であるソフ
トでしなやかな嵩高性のある風合、およびナチュラルな
表面光沢や外観という点ではいまだ及ばなく、高級なイ
メージが損われてしまうという問題が残っているもので
あった。
{発明が解決しようとする課題} 本発明の目的は、上記したような点に鑑み、特別な薬
剤を用いることなく、フイブリル化することができ、か
つソフトなスパンライク風合と外観を有するフイブリル
化型複合フイラメント糸およびその製造方法を提供せん
とするものである。
{課題を解決するための手段} 上記の目的を達成するための本発明の構成は、紡糸速
度2500m/分以上で高速紡糸され、かつ沸騰水中での急激
熱処理により、収縮差が10%以上生じる高収縮成分と低
収縮成分とから構成されたフイブリル化型複合フイラメ
ント糸からなり、該フイラメント糸が嵩高加工されてい
ることを特徴とするフイブリル化型複合フイラメント糸
である。
上記の構成において、高収縮成分はポリエステルから
なり、低収縮成分はポリアミドからなることが好まし
い。また、低収縮成分のフイブリル化後の単繊維デニー
ルは0.5d以下であることが好ましい。
上記の本発明のフイブリル化型複合フイラメント糸
は、延伸加工や延伸撚糸加工を行なうが、さらに嵩高加
工が施されているものである。例えば、該嵩高加工は、
仮撚捲縮加工によって得られるループやコイルを有する
仮撚加工糸や、流体処理加工によって得られるループヤ
ーンなどの嵩高加工であることが好ましい。
上記のフイブリル化型複合フイラメント糸を得るため
の好ましい製造方法は、紡糸速度2500m/分以上で高速紡
糸したTg温度が異なるポリマーにより構成された高配向
フイブリル化型複合フイラメント未延伸糸または不完全
延伸糸を、Tg温度の高い側のポリマーのTg温度以下、Tg
温度の低い側のポリマーのTg温度以上の温度で延伸しな
がら、もしくは延伸後、嵩高加工を行うことを特徴とす
るフイブリル化型複合フイラメント糸の製造方法であ
る。
上記の製造方法において、延伸中に仮撚加工を行なっ
たり、また、延伸仮ヨリ加工後、空気処理によってルー
プヤーンとすることもできる。
以下、さらに詳しく本発明のフイブリル化型複合フイ
ラメント糸について説明する。
本発明において、沸騰水中での急激熱処理とは、沸騰
水中に繊維を瞬時に入れて処理することを意味し、沸騰
水に浸漬する前に湯気などに当てながら徐々に昇温して
処理する場合は除外される。
沸騰水に代えて乾熱の処理を施してもかまわないが、
処理効果は若干小さくなる。また、沸騰水温度、つまり
98℃より低い温度では処理効果が小さくなるので好まし
くはないが、急激熱処理の作業性や、得られる製品の風
合、布帛表面のシワの調整から、熱処理を2段階以上で
行なうことが実用的である。
急激熱処理による高収縮成分と低収縮成分の収縮差が
10%以下では、フイブリル化が生じにくくいので、収縮
差は大きいほど好ましく、特に嵩高加工がフイブリル化
糸に施されていることによって、フイブリル化後の嵩高
化になお一層の効果が生じるのである。なお、収縮差の
程度を調べる方法としては、両成分を分解し、残留伸度
または繊度増加率の測定によって知ることができる。
次に、複合フイラメント糸を構成する高収縮成分と低
収縮成分の組合せとしては、ポリエステルとポリアミ
ド、ポリブチレンテレフタレートとポリアミド、イソフ
タール酸共重合等の高収縮型ポリエステルとポリアミ
ド、あるいはレギュラー型ポリエステル等が好ましく用
いられる。
高収縮成分と低収縮成分との接合比率は、0.05〜0.95
の範囲とするのがよく、通常両者成分の性質の差によっ
て容易にフイブリル化し得る横断面形状であって、例え
ば少なくとも2方向に放射状に延びた形状の一方の成分
と他方の成分とからなり、該セグメント間を接合するセ
グメントから構成されるものが好ましい。このモデル構
造例を第1図に示す。
第1図(イ)〜(ニ)は、本発明に係るフイブリル化
型複合フイラメント糸の構造態様4例を示したモデル横
断面図であり、第2図(イ)〜(ニ)は、第1図におけ
る本発明に係るフイブリル化型複合フイラメント糸のフ
イブリル化後の構造態様4例を示したモデル横断面図で
あり、Aは高収縮成分、Bは低収縮成分である。
高収縮成分Aと低収縮成分Bの配置が逆転していても
かまわないが、本発明の効果は小さくなる。
フイブリル化後の低収縮成分の単繊維デニールは、0.
5d以下であることが好ましく、0.1d以下であることがさ
らに好ましい。このような極細糸とすることによって、
ピーチスキンタッチのソフトなスパンライク風合の複合
嵩高糸を得ることができる。
嵩高加工としては仮撚捲縮加工あるいは流体乱流処理
加工が施されていることである。ストレッチ性を必要と
するならば、後者が適している。なお、若干の「ふくら
み」感を必要とするならば、インターレースの交絡処理
加工が施されていることが適している。
次に、本発明のフイブリル化型複合フイラメント糸の
製造方法について説明する。
本発明の複合フイラメント糸の製造方法は、まず、紡
糸速度2500m/分以上で高速紡糸した高配向フイブリル型
複合フイラメント未延伸糸または不完全延伸糸を使用す
る。紡糸速度は複合成分の組合せによって異なるが、例
えばポリエステルとポリアミドの場合では、2500m/分以
下になると、ポリアミド成分の膨潤による巻取り不良が
起こりやすく、また、8000m/分以上の超高速紡糸では、
ポリエステル成分の収縮不足が起こりやすくなるので、
製糸条件に留意を要する。なお、未延伸糸または不完全
延伸糸とは、通常、UY、POYと呼ばれてる原糸である。
延伸温度は、たとえばガラス転移点Tg温度が室温以下
のポリアミドとTg温度が70〜90℃のポリエステルを組合
せた場合は、70℃前後が最適であり、90℃以上になる
と、高収縮成分のポリエステルの収縮率が低下するので
好ましくない。一方、室温に近くなると、ポリアミドの
セット効果が低くなるので室温の変化を受けやすくな
り、一定の収縮差を得る点では好ましくない。
Tg温度の高い側のポリマーのTg温度以下の温度で延伸
することにより、繊維の配向度は高くなるので、急激に
沸騰水中に浸漬することにより結晶化が進むまでに収縮
するため、高いフイブリル化特性が得られる。徐々に浸
漬すると結晶化が先に進むので収縮が起こりにくく低い
フイブリル化特性になる。
上記の延伸温度は、仮撚加工を延伸と同時に行なう場
合の仮撚熱セット温度を兼ねる。
延伸倍率は、ポリエステルを高収縮化させるため、高
いほど好ましく、これも紡糸速度によって異なるが、例
えば3500m/分の紡速糸では1.8〜2.0倍の延伸倍率が適し
ている。延伸倍率が低くなるほどフイブリル化の効果は
小さい。
上記の延伸倍率は、仮撚加工を同時に行なう場合にも
適用され、そして上記の延伸倍率は通常の延伸中仮撚加
工で実施される倍率に相当するものである。
なお、仮撚加工における仮撚数は、特に制限なく、通
常の、延伸仮撚加工で実施される仮撚数、例えば75デニ
ールであれば3300〜3600T/mが適している。
仮撚加工以外の嵩高加工方法として、空気処理を行な
うことによって実施することができる。これは空気処理
前に紡糸速度2500m/分以上で高速紡糸した高配向フイブ
リル化型複合フイラメント未延伸糸または不完全延伸糸
を、Tg温度の高い側ポリマーのTg温度以下、Tg温度の低
い側ポリマーのTg温度以上のセット温度でいったん延伸
加工を行ない、その後、流体乱流処理あるいはインター
レースの交絡処理を施し、環やたるみを有するいわゆる
“タスラン”糸あるいは交絡糸と呼ばれる嵩高加工を行
なうことである。
流体乱流処理はいわゆる“タスラン”型のノズルであ
って、乱流圧力も通常使用されるる3〜8kg/cm2の条件
が適している。
本発明の複合フイラメント糸は、上記の如く、フイラ
メント糸の状態で嵩高加工を施し、嵩高糸となし、これ
を織物に使用すれば高密度織物とすることができる。こ
の高密度織物は、織物表面に突出している無数のコイル
やループによってソフトな風合を有するスパンライクな
ものとなる。
また、風合は嵩高性に富み、ドレープ性、張り、腰
感、やわらかさがあって、織物表面がスパンタッチで、
しかもフイブリル化型複合フイラメント糸はフイブリル
化後、一般に単繊維デニールが0.5デニール以下となる
ので、綿ライクな感触を与えるものである。また、外観
は、従来のフイラメントライクのように、「てかり」や
「ロウ」状の品格に欠けるような光沢はなく、マイルド
で深みのある自然な光沢となり、高級品のイメージを十
分に与え得るものである。
また、織物の密度において、従来は高密度織物とする
ために、タテ、ヨコの密度を多くすることが当然であっ
たが、本発明によれば、フイブリル化後収縮と嵩高発現
によって製織密度を必ずしも高くとらなくても高密度織
物を得ることができるので、特別な製織条件をとる必要
もなく、織設計、製織作業が容易なものである。
本発明の応用例としてしては、スパンライクな高密度
布帛の特徴を生かして、ダウン充填素材やコート、ジャ
ケット、ブルゾンなどの各種アウターウエアや、スキー
ウエア、ゴルフウエアなどの各種スポーツウエア用途、
あるいは建寝装資材などに幅広く使用することができ
る。
以下、実施例により本発明のフイブリル化型複合フイ
ラメント糸およびその製造方法の具体的構成、効果につ
いて説明する。
実施例1 ナイロン70%(急激昇温処理による収縮は8%)、ポ
リエステル30%(急激昇温処理による収縮は60%)のフ
イブリル化型複合フイラメント糸100デニール、48フイ
ラメント(放射状6分割)のPOY(3500m/minの紡速によ
って得たもの)を用いて下記条件で仮撚加工し、フイブ
リル化型複合フイラメント糸を製造した。
加工速度 400m/分 延伸倍率 1.9倍 仮撚数 3400T/m セット温度 70℃ 得られた嵩高糸の伸縮復元率は24.3%、98℃の沸騰水
中での急激熱処理による収縮率は51%であった。
フイブリル化したポリアミド繊維は三角断面に近い形
状であった。
なお、仮撚加工上がりの嵩高糸を、タテ糸がポリアミ
ドの70デニール、34フイラメント糸のヨコ糸に使用し、
平織物としたところ、ヨコ方向に32%の収縮を示し、平
織物の表面にはフイブリル化したポリアミド繊維の捲縮
が多数存在する良好なかつ若干のストレッチを有したス
パンライクな風合のものであった。
実施例2 実施例1と同一のPOYを用いて下記条件で流体乱流処
理をし、嵩高複合フイラメント糸を製造した。
加工速度 300m/分 延伸倍率 1.8倍 セット温度 70℃ オーバーフイード率 +10% ノズル ヘバーライン社製(T-311型) 流体乱流圧力 8kg/cm2 実施例1と同様に製織および沸騰水中でフイブリル化
処理を行なった。
なお、この織物において、織物の収縮率はヨコ方向3
0.4%であった。織物断面は、織物内層には収縮したポ
リエステル繊維を主として、その外側には三角断面のポ
リアミド繊維を主として、これら両成分がフイブリル化
して存在してなるものであり、織物の最外表面にはポリ
アミドの環やたるみが多数存在する良好なスパンライク
なものであった。
{発明の効果} 本発明は、従来のように、特別な薬剤、例えばベンジ
ルアルコール、β−フエニルエチルアルコール、フエノ
ール、m−クレゾール、酢酸、苛性ソーダ、ソーダ灰等
を用いる必要がないので、薬剤の取扱いによる人体への
安全性、薬剤使用によるコスト高、廃液処理の回収、廃
水装置などの設備面でのコスト高の問題が解消される。
そして、本発明は、沸騰水を使用できるため、通常の染
色加工装置を何ら改造することなく、そのまま使用する
ことができるため、商品開発をスムースに進めることが
できる。
低収縮成分としてポリアミドを使用すれば、該ポリア
ミド繊維が鞘となるため、ソフトでしっとりとしたタッ
チとなり、発色性や摩擦に対して優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
第1図(イ)〜(ニ)は、本発明に係るフイブリル化型
複合フイラメント糸の構造態様4例を示したモデル横断
面図であり、第2図(イ)〜(ニ)は、第1図における
本発明に係るフイブリル化型複合フイラメント糸のフイ
ブリル化後の構造態様4例を示したモデル横断面図であ
り、Aは高収縮成分、Bは低収縮成分である。 A:高収縮成分 B:低収縮成分

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】紡糸速度2500m/分以上で高速紡糸され、か
    つ沸騰水中での急激熱処理により、収縮差が10%以上生
    じる高収縮成分と低収縮成分とから構成されたフイブリ
    ル化型複合フイラメント糸からなり、該フイラメント糸
    が嵩高加工されていることを特徴とするフイブリル化型
    複合フイラメント糸。
  2. 【請求項2】高収縮成分がポリエステルからなり、低収
    縮成分がポリアミドからなることを特徴とする請求項1
    記載のフイブリル化型複合フイラメント糸。
  3. 【請求項3】紡糸速度2500m/分以上で高速紡糸したTg温
    度が異なるポリマーにより構成された高配向フイブリル
    化型複合フイラメント未延伸糸または不完全延伸糸を、
    Tg温度の高い側のポリマーのTg温度以下、Tg温度の低い
    側のポリマーのTg温度以上の温度で延伸しながら、もし
    くは延伸後、嵩高加工を行うことを特徴とするフイブリ
    ル化型複合フイラメント糸の製造方法。
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