JP2888064B2 - プレキャストコンクリート部材の接続方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、壁や柱などの構造体
となるプレキャストコンクリート部材（以下ＰＣ部材と
する）を建設現場で他のコンクリート部材と接続する方
法の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】よく知られているように、ＰＣ部材を用
いて建物を構築する場合、ＰＣ部材を現場に建て付けて
他のコンクリート部材と一体的に接続する。そのための
接続構造として、ＰＣ部材の接続端面には一般の差筋に
相当する鉄筋が予め突設されている。また、ＰＣ部材よ
り先に現場に設置されている他のコンクリート部材（場
所打ちコンクリート部材あるいは別のＰＣ部材）の接続
部位にも差筋に相当する鉄筋が突設されている。

【０００３】そして、ＰＣ部材を所定位置に建て付け
て、その接続端面と他のコンクリート部材の接続部位と
を所定間隔をおいて対向させ、両者から突出している前
記鉄筋を互いに重ね合わせて結束し（必要に応じてスタ
ーラップ筋などを付加する）、その重ね継手部分を囲う
ように型枠を設置し、その型枠内にコンクリートを打設
して重ね継手部分を埋設する。以上が重ね継手により従
来の代表的なＰＣ部材の接続構造および工法である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ＰＣ部材を用いる建築
工法は、現場での鉄筋工事や型枠工事の削減を意図して
いるが、前記のようにＰＣ部材と他のコンクリート部材
との間に型枠を設置してコンクリートを打設するという
接続方法では、接続工事に伴って型枠の設置と撤去の作
業が依然として必要であり、接続箇所が多いと施工性が
低下する。そこで現場作業をさらに向上させるために、
ＰＣ部材の接続方法の改良が望まれている。

【０００５】この発明は前述した従来の問題点に鑑みな
されたもので、その目的は、型枠工事を必要といない簡
単な現場作業でＰＣ部材と他のコンクリート部材を接続
することができるようにしたＰＣ部材の接続方法を提供
することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そこでこの発明では、Ｐ
Ｃ部材を建設現場に建て付けて、接続対象である他のコ
ンクリート部材の接続面に対して当該ＰＣ部材の接続面
を所定間隔をおいて対向させ、前記他のコンクリート部
材の接続面から突出している鉄筋と前記ＰＣ部材の接続
面から突出している鉄筋とを重ね合わせて仮止し、これ
ら鉄筋の重ね合わせ継手部分を包含する２つの前記接続
面の対向空間に吹き付け面となる適宜な部材を設置し、
その吹き付け面に向けてコンクリートあるいはモルタル
を吹き付けて前記対向空間をそのコンクリートあるいは
モルタルで埋めるようにした。

【０００７】また、前記吹き付け面となる部材としてラ
スメタル或いはリブラスを使用し、前記対向空間の中央
部分にラスメタルを設置するようにした。

【０００８】さらに、前記吹き付け面となる部材が、前
記プレキャストコンクリート部材と一体に連続したプレ
キャストコンクリート製の薄肉状突出部であることを特
徴とするものである。

【０００９】

【作用】前記ＰＣ部材の接続面と前記他のコンクリート
部材の接続面との対向空間（前記鉄筋の重ね合わせ継手
部分が含まれている）をコンクリートあるいはモルタル
で埋める工事を吹き付け工法にて行う。その際の吹き付
け面となるのは、前記対向空間に設置したラスメタル或
いはリブラスなどの適宜な部材であり、または前記ＰＣ
部材と一体に連続した前記薄肉板状突出部ある。

【００１０】

【実施例】この発明の一実施例を図１に示している。図
１において、１は場所打ちコンクリートにより先に構築
されている床スラブであり、２は床スラブ１上に建て付
けようとしているＰＣ柱である。ＰＣ柱２の下端面（床
スラブ１との接続面）には差筋に相当する複数の鉄筋３
が工場生産段階で突設されており、床スラブ１の柱接続
面には複数の鉄筋４（差筋）が上方に突設されている。

【００１１】ＰＣ柱２を床スラブ１上の所定位置に建て
付けて仮止し、床スラブ１側の突出鉄筋４とＰＣ柱２側
の突出鉄筋３とを重ね合わせて結束する。また、これら
鉄筋３と４で囲まれた空間の中央部分にラスメタル５を
スクリーンのように縦に設置し、さらに鉄筋３および４
にスターラップ筋６を付設する。

【００１２】そして図示していないが、鉄筋３と４の重
ね合わせ継手部分の中央に設置したラスメタル５を吹き
付け面とし、コンクリート（あるいはモルタル）を周囲
から吹き付ける。吹き付けられたコンクリートはラスメ
タル５の周囲に徐々に太っていき、鉄筋３、４、スター
ラップ筋６を内部に包含し、ＰＣ柱２の下端面と床スラ
ブ１の上面との間の空間を埋めることになる。これでＰ
Ｃ柱２の床スラブ１への接続工事がほぼ完了する。な
お、ラスメタル５に限らずリブラス等の他の適宜な部材
を吹き付け面形成用に使用してもよい。

【００１３】この発明の他の実施例を図２に示してい
る。図２において、７は場所打ちコンクリートにより先
に構築されている梁であり、８は梁７上に建て付けよう
としているＰＣパネルである。ＰＣパネル８の下端面
（梁７との接続面）には差筋に相当する多数の鉄筋３が
工場製造段階で突設されている。またＰＣパネル８下端
部には工場製造段階で薄肉板８ａ（薄肉状突出部）が一
体に突設されている。薄肉板８ａはＰＣパネル８の片面
に連続しており、前記突設鉄筋３群の一側部にあってこ
れらに寄り添うように形成されたパネル本体と一体の薄
肉のＰＣ製のパネルである。もちろん、梁７の上面のパ
ネル接続面には多数の鉄筋（差筋）４が所定の配列で上
方に突設されている。

【００１４】ＰＣパネル８を梁７上の所定位置に建て付
けて仮止し、ＰＣパネル８側の突出鉄筋３と梁７側の突
出鉄筋４とを重ね合わせて結束するとともに、これら鉄
筋３、４に横筋９などを付加する。この状態では、鉄筋
の重ね合わせ継手部分の片側に前記薄肉板８ａが縦に設
置された配置関係になっており、この薄肉板８ａを吹き
付け面としてコンクリート（あるいはモルタル）を吹き
付ける。吹き付けられたコンクリートは徐々に太って鉄
筋３、４、横筋９を包含し、ＰＣパネル８と梁７との対
向空間を埋めることになる。これでＰＣパネル８の梁７
への接続工事がほぼ完了する。薄肉板８ａの吹き付け面
にラスメタルなどを設置した方がよいことはいうまでも
ない。なお、ＰＣパネル８の下端部をはつることによっ
て前記のような薄肉板８ａを形成することも可能であ
る。

【００１５】また、この実施例では薄肉板８ａをＰＣパ
ネル８の片面と連続するように形成したが、ＰＣパネル
８の幅方向中央部に長手通し状に形成してもよいことは
勿論である。この場合、当該薄肉板の表裏面両方にラス
メタルなどを設置することが好ましい。

【００１６】

【発明の効果】以上詳細に説明したように、この発明で
は、ＰＣ部材と他のコンクリート部材との接続部の空間
にコンクリートあるいはモルタルの吹き付け、両部材の
鉄筋の重ね合わせ継手部分を吹き付けたコンクリートあ
るいはモルタル中に埋め込むようにしたので、従来のよ
うに接続部にコンクリート型枠を設置して再び撤去する
という面倒な型枠工事がなくなり、ＰＣ部材の接続工事
が従来よりはるかに簡単になる。これによって、建設現
場でのコンクリート工事をできるだけ少なくするという
プレキャストコンクリート工法の本来の目的により近づ
けることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す概略構成図である。

【図２】このの発明の他の実施例を示す概略構成図であ
る。

【符号の説明】

１ 床スラブ ２ ＰＣ柱 ３ 突出鉄筋 ４ 突出鉄筋 ５ ラスメタル ６ スターラップ筋 ７ 梁 ８ ＰＣパネル ８ａ 薄肉板 ９ 横筋

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プレキャストコンクリート部材を建設現
   場に建て付けて、接続対象である他のコンクリート部材
   の接続面に対して当該プレキャストコンクリート部材の
   接続面を所定間隔をおいて対向させ、前記他のコンクリ
   ート部材の接続面から突出している鉄筋と前記プレキャ
   ストコンクリート部材の接続面から突出している鉄筋と
   を重ね合わせて仮止し、これら鉄筋の重ね合わせ継手部
   分を包含する２つの前記接続面の対向空間に吹き付け面
   となる適宜な部材を設置し、その吹き付け面に向けてコ
   ンクリートあるいはモルタルを吹き付けて前記対向空間
   をそのコンクリートあるいはモルタルで埋めることを特
   徴とするプレキャストコンクリート部材の接続方法。
2. 【請求項２】 前記吹き付け面となる部材としてラスメ
   タル或いはリブラスを使用し、前記対向空間にラスメタ
   ルを設置することを特徴とする請求項１に記載のプレキ
   ャストコンクリート部材の接続方法。
3. 【請求項３】 前記吹き付け面となる部材が、前記プレ
   キャストコンクリート部材と一体に連続したプレキャス
   トコンクリート製の薄肉状突出部であることを特徴とす
   る請求項１に記載のプレキャストコンクリート部材の接
   続方法。