JP2881152B2 - 内燃機関用ピストンの製造方法 - Google Patents

内燃機関用ピストンの製造方法

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は内燃機関用ピストンの製造方法に係り、とく
に可溶性中子を用いて内部に冷却用空洞を形成するよう
にしたピストンの製造方法に関する。
〔発明の概要〕
冷却用空洞を形成するための塩中子等の可溶性中子を
トップリング溝、燃焼室の周縁部等の所要の部位を補強
するための例えばセラミックファイバから成るプリフォ
ーム上に載置し、しかも金型によって保持されている多
孔性材料の形成体、例えばニッケルセルメット等の金属
発泡体の支持リングによって可溶性中子が鋳造中に移動
しないように保持し、この状態において金型内にアルミ
ニウム合金の溶湯を注入して加圧鋳造を行なうようにし
たものであって、金型側に可溶性中子を押えるための支
持ピンを設けないで鋳造を行なうようにしたものであ
る。
〔従来の技術〕
例えば特開昭62−10457号公報に開示されているよう
に、直噴型ディーゼルエンジンのシリンダ内に組込まれ
るピストンは、その内部であって頂部側の部分に冷却用
空洞を備えるようにしている。このような冷却用空洞に
は下方からオイルが噴射され、冷却用空洞内を循環する
ことによって熱を奪うようにしている。すなわち高い熱
的な負荷を受けるとくにピストンの頂面側の部分を冷却
用空洞内を循環するオイルによって冷却するようにして
いる。
このようなピストンを鋳造する場合には、従来は第10
図に示すようにリング状の可溶性中子1を複合強化用プ
リフォーム5上にセットし、この可溶性中子1が鋳造時
に溶湯の浮力によって浮いたり移動しないようにパンチ
型3に固定した支持ピン2によって保持していた。そし
てこの金型4のキャビティ内にアルミニウム合金の溶湯
を注入して加圧することにより、高圧鋳造の方法によっ
てピストンが成形されるようになっていた。
あるいはまたピストンの頂面に形成される燃焼室の縁
部を補強するプリフォーム上に可溶性中子を載置するよ
うにしていた。すなわち第11図に示すように、ピストン
を成形するための金型4の底部の突部の周縁部にセット
されているプリフォーム5上に可溶性中子1を載置する
ようにし、この可溶性中子1を上方からパンチ型3によ
って支持ピン2を介して押えるようにしていた。そして
この場合においても金型4のキャビティ内にアルミニウ
ム合金の溶湯を注入して加圧することにより、ピストン
が鋳造されるようになっていた。このようなピストン
は、鋳造後に支持ピン2を抜いた後に形成される穴をド
リル加工し、この穴を通してピストン内に水を注入する
ことにより、上記可溶性中子1を溶解して冷却溶空洞を
形成するようにしていた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来のこのような冷却用空洞を有するピストンの製造
方法によれば、可溶性中子1を支持する支持ピン2が加
圧鋳造の際における溶湯の圧力と溶湯の凝固収縮に伴っ
て生ずる曲げ応力を繰返し受けるために破損することが
あった。このような破損を防止するためには、支持ピン
2を必要以上に太くしなければならなかった。また支持
ピン2の位置が悪いと、パンチ型3の製作に工数がかか
る欠点があった。
また第10図あるいは第11図に示すような金型によって
鋳造されたピストン6は、その下面に臨む凹部7に第9
図に示すような支持ピン2を受ける支持座8が形成され
るとともに、支持座8にはそれぞれ支持ピン2を抜去っ
た後のピン穴9が形成されることになる。第9図の例は
2本の支持ピン2を用いたピストンであって、この場合
には中心に対して互いに対称な位置にある一対のピン穴
がドリル加工されて円形孔10、11が形成されるようにし
ている。これらの円形孔10、11がそれぞれオイル入口孔
およびオイル出口孔を構成することになる。ところが支
持ピン2を抜いた後に残る2本のピン穴9については、
このまま放置するとオイルが漏れて冷却効果を損うこと
になる。そこで鋳造後にこのようなピン穴9をプラグに
よって塞ぐようにしていた。従ってプラグを必要とする
ばかりでなく、加工工数が増大する欠点があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであ
って、金型内において補強用のプリフォーム上に載置さ
れた可溶性中子を押えるための支持ピンを必要とせず、
また支持ピンを受けるための支持座やピン穴が残らない
ようにした内燃機関用ピストンの製造方法を提供するこ
とを目的とするものである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、所定の部位を補強するためのプリフォーム
上に可溶性中子を載置して金型内に配し、溶湯を前記金
型内に注入して前記プリフォームを加圧鋳造により複合
するとともに、鋳造後に鋳包まれた前記可溶性中子を溶
解して内部に冷却用空洞を形成するようにした方法にお
いて、パンチ型から独立であって前記金型の内周部によ
って保持される例えば発泡金属成形体から成る支持リン
グ等の支持手段を設け、前記プリフォーム上に載置され
ている前記可溶性中子が溶湯が金型内に注入されたとき
に浮力によって浮いたり移動しないように前記プリフォ
ームと前記支持手段とによって互いにほぼ反対方向から
挟着保持しながら加圧鋳造し、鋳造後に上記支持手段が
ピストン材料と一体的に複合されるようにしたものであ
る。
〔作用〕
従って可溶性中子を金型内に配置されているプリフォ
ーム上に載置するとともに、この可溶性中子を上から支
持手段によって支持して保持することが可能になり、金
型側に可溶性中子を押えるための支持ピンを必要としな
くなる。この支持手段は例えば多孔材料から構成され、
その空孔部に溶湯が加圧により浸透するためにピストン
本体と一体的に複合されることになり、ピストンの運転
中に脱落することがない。また支持ピンを使用ないため
に、余分な穴があかなくなるので後でこの穴を塞ぐ必要
もなくなり、ピストンの潤滑油による冷却効果も高ま
る。
〔実施例〕
第1図は本発明の一実施例に係る内燃機関用ピストン
の製造方法に用いられる金型を示すものであって、この
金型は下型15と、この下型15上に重ねて配置される筒型
16と、筒型16内に挿入され、ピストンの内部に凹部を形
成するためのパンチ型17とを備えている。下型15の内側
の中央部には突部18が形成されており、この突部18によ
ってピストンの頂面に燃焼室を形成するようにしてい
る。
このような金型を用いて冷却用空洞を内部に備えるピ
ストンを加圧鋳造する場合には、下型15の内側の周縁部
にプリフォーム19を配する。プリフォーム19は多孔性金
属焼結体をリング状に成形したものであって、例えばト
ップリング溝の部分を補強するためのものである。この
プリフォーム19は内側に可溶性中子を受ける凹み部23を
設け、ここに可溶性中子を嵌込む。この食塩から成る可
溶性中子20の後から水で溶解すると、ピストンの内部に
冷却用空洞が形成されるようになっている。
そして可溶性中子20の上に支持リング21を配置し、下
型15と筒型16によって固定する。押圧リング21は第6図
に示すように多孔性材料の形成体で、例えば住友電工株
式会社製のニッケルセルメットから構成されるととも
に、中心側の開口部に突出するように4個の支持片34を
備えるようになっており、これらの支持片34によって可
溶性中子20が上方に移動しないよう保持するようにして
いる。すなわち可溶性中子20はプリフォーム19の凹み部
23と支持リング21とにより上下左右の移動が阻止される
ため、鋳造中の溶湯の流動や浮力によってその位置が変
らなくなる。なお支持リング21は第1図に示すように、
下型15の上側の段部22に保持されるようになっている。
このように金型内にプリフォーム19と可溶性中子20と
を配置するとともに、可溶性中子20を支持リング21によ
って押えた状態において、金型のキャビティ内にアルミ
ニウム合金を溶湯を注入する。そして図外の加圧手段に
よってアルミニウム合金を加圧しながら固化させること
により、第4図および第5図に示すようなピストン26が
得られることになる。ピストン26は上記金型の突部18に
よってその頂部に燃焼室27が形成されている。またピス
トン26は鋳造後に機械加工によって外周面に3本のリン
グ溝28、29、30が形成されるようになっている。そして
1番上側のトップリング溝28については、上記プリフォ
ーム19によって補強されるようになっている。
しかもピストン26は、その鋳造後に第5図に示すよう
に、下側から軸線方向とほぼ平行に一対の円形孔31、32
を形成する。これらの円形孔31、32は上記可溶性中子20
に至る深さとする。そしてこれらの円形孔31、32を通し
て内部に水を噴射して注入する。すると水によって可溶
性中子20が溶解され、第4図に示すように燃焼室27の外
周側に位置するように冷却溶空洞33が内部に形成される
ことになる。このようなピストン26がエンジンに組込ま
れると、上記円形孔31、32がそれぞれ冷却油注入口およ
び冷却油注出口を構成することになり、これらの注入口
31および注出口32を通して冷却用空洞33内に冷却油が循
環することになる。従ってとくにピストン26の頂面側の
部分がオイルで冷却されることになる。
このようなピストン26によれば、とくにその冷却用空
洞33を形成するための可溶性中子20が金型内においてプ
リフォーム19上に載置されるとともに支持リング21によ
って押えられるようになっている。従って可溶性中子20
を押えるための支持ピンが必要でなくなり、これによっ
て圧力に耐えられずに支持ピンが破損する事故を防止す
ることが可能になる。また支持ピンが不要になることか
ら、ピストン側に支持座や支持穴を設ける必要がなくな
る。また支持ピンを用いないために、金型から取外され
たピストンには、ピン穴が残らない。従ってピン穴をプ
ラグによって塞ぐ必要がなくなり、部品および工数の点
で有利になり、ピストンのコストの削減を図ることが可
能になる。
ピンに代えて可溶性中子20を押えるための支持リング
21は最終的にピストン26に鋳包まれた状態でピストン26
内に残ることになる。すなわちこの支持リング21の無数
の孔の部分にアルミニウム合金の溶油が注入されて複合
されることになる。この支持リング21は無機繊維や多孔
質金属であってもよいが、多孔率を大きくしても可溶性
中子20を保持する十分な強度を有する発泡金属成形体が
好ましい。またその体積率はアルミニウム合金母材との
複合を良好にし、複合後におけるその部分のアルミニウ
ム合金の母材との材質の差を小さくするため7%以下で
あることが好ましい。また支持リング21の内周面の所定
の位置、例えばその円周方向の4箇所にそれぞれ支持片
34を設けておくことによって、支持リング21の半径方向
の寸法を小さくすることが可能になり、使用する発泡金
属の量も少なくなる。
第2図は変形例に係るピストンの製造方法を示すもの
であって、この変形例においては、トップリング溝28の
部分を補強するプリフォーム19の高さ方向の寸法を小さ
くするとともに、ピストン26の肩部に達しない寸法とし
ている。そしてこのようなプリフォーム19を下型15の下
側の段部37上にセットし、その上に可溶性中子20を載置
するとともに、この可溶性中子20を支持リング21によっ
て押えるようにしている。このような金型によって鋳造
されるピストンにおいても、その鋳造時に可溶性中子20
を押えるために支持ピンを必要としなくなる。従ってこ
のようなピストンにおいても、上記実施例と同様の作用
効果を奏することが可能になる。
第3図は別の変形例のピストンの製造のための金型を
示すものであって、この金型においては、その下型15の
内側の中央部に形成されている突部18の周囲にプリフォ
ーム19を配するようにしている。プリフォーム19はSiC
ウイスカから成り、ピストン26の燃焼室27の周縁部を補
強するようにピストン26に複合されることになる。そし
てこのプリフォーム19上に可溶性中子20を載置するとと
もに、可溶性中子20を支持リング21によって押えるよう
にしている。従ってこの変形例においては、可溶性中子
20は燃焼室27の縁部を補強するプリフォーム19と金型に
よって保持される支持リング21とによって挟着保持され
ことになる。そしてこの場合においても支持ピンが不要
になることから、上記実施例と同様の作用効果を奏する
ことが可能になる。
なお支持リング21の形状は第6図の形状に限定される
ことなく、第7図および第8図に示す形状、あるいはこ
れに類似する形状であってもよい。
〔発明の効果〕
以上のように本発明は、パンチ型から独立であって金
型の内周部によって保持される支持手段を設け、プリフ
ォーム上に載置されている可溶性中子を該プリフォーム
と支持手段とによって互いにほぼ反対方向から挟着保持
しながら加圧鋳造するようにしたものである。従ってこ
のような構成によれば、金型のパンチ型に支持ピンを設
け、この支持ピンによって可溶性中子の浮きを防止する
ことが不要になる。従って溶湯の圧力によって支持ピン
が折れる事故を防止することが可能になるとともに、支
持ピンを抜いた後にできる穴もなくなることから、穴を
プラグで塞ぐ必要もなくなる。
また第2の発明は、支持手段を多孔性材料の成形体か
ら成る支持リングとし、また第3の発明は発泡金属成形
体によって支持リングを構成するとともに、この押圧リ
ングをピストンに鋳包まれるようにしたものである。従
ってこの支持リングの孔の部分に溶湯が注入されて確実
に複合されることになり、後から支持リングを取外す必
要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係る製造方法に用いられる
金型の縦断面図、第2図および3図は変形例の製造方法
に用いられる金型の縦断面図、第4図は第1図に示す金
型によって鋳造されたピストンの縦断面図、第5図は同
底面図、第6図は可溶性中子を押える支持リングの外観
斜視図、第第7図は変形例の支持リングの外観斜視図、
第8図は同縦断面図、9図は従来の方法によって製造さ
れたピストンの横断面図、第10図および第1I図は従来の
ピストンの製造方法を示す金型の縦断面図である。 また図面中の主要な部分の名称はつぎの通りである。 15……下型 16……筒型 17……パンチ型 19……プリフォーム 20……可溶性中子 21……支持リング 22……段部 25……アルミニウム合金の溶湯 26……ピストン 27……燃焼室 28……トップリング溝 31……冷却油注入口(円形孔) 32……冷却油注出口(円形孔) 33……冷却用空洞 34……支持片

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の部位を補強するためのプリフォーム
    上に可溶性中子を載置して金型内に配し、溶湯を前記金
    型内に注入して前記プリフォームを加圧鋳造により複合
    するとともに、鋳造後に鋳包まれた前記可溶性中子を溶
    解して内部に冷却用空洞を形成するようにした方法にお
    いて、 前記可溶性中子をパンチ型から独立であって前記金型の
    内周部によって保持される支持手段と前記プリフォーム
    とによって互いにほぼ反対方向から挟着保持しながら加
    圧鋳造することを特徴とする内燃機関用ピストンの製造
    方法。
  2. 【請求項2】前記支持手段が多孔性材料の成形体から成
    る支持リングであって、このリングの空孔部に鋳造時に
    溶湯を浸透させ、ピストン中に一体に複合させるように
    したことを特徴とする請求項第1項に記載の内燃機関用
    ピストンの製造方法。
  3. 【請求項3】前記多孔性材料が発泡金属であることを特
    徴とする請求項第2項に記載の内燃機関用ピストンの製
    造方法。
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