JPH0221904B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、金属繊維の補強部材を鋳込む式の内
燃機関用ピストンの溶湯鍛造用金型に関するもの
である。

（従来の技術） 内燃機関のエンジンを構成するピストン、コン
ロツド等の製造法として、一般に溶湯鍛造法が活
用されており、特にピストン等の製造において
は、キヤビテイ内に予め金属繊維からなる補強部
材が装入セツトされ、ピストンリング溝部の強化
が図られている。

この種の技術として従来特開昭55−14187号が
開示されており、この技術は金型を中子部を備え
る上型と、凹状の下型に分けてこの間にピストン
鋳造用キヤビテイを形成し、上型と凹状下型の型
合せ面で下型面に補強部材を嵌装する環状溝を形
成し、上型の型合せ面には環状溝の天井をなす段
部を形成し、上型、下型を型開した状態で下型の
環状溝の補強部材を嵌装セツトし、上型との型合
せ状態下で補強部材上縁を段部で押える。溶湯は
下型の中央部に縦設した湯道からキヤビテイ内に
供給される。

（発明が解決しようとする課題） 以上の従来技術は、補強部材入りのピストンの
製造方法に係り、溶湯の注入圧力に主眼がおか
れ、従つて開示された金型は模式的であり、かか
る技術では下型に縦設された湯道より溶湯を供給
するので多数個取りができない。

即ち、この種ピストンを一つの金型で多数個取
りしようとした場合、複数のキヤビテイを有する
下型の各キヤビテイに枝状の湯道により貯湯部か
ら溶湯を供給する必要があるが、湯道が下型内に
貫設されているのでは鋳造凝固後の非製品部分の
除去が不可能で、従つて開示された従来技術では
縦設した湯道直下に貯湯部を設ける必要がある。
従つて開示された従来技術は補強部材入りのピス
トンの鋳造の原理を示すに止まるものといわざる
を得ない。

本発明は以上に鑑みてなされたもので、その目
的とする処は、補強部材入りのピストンを複数個
取りを可能としつつ補強部材を正確にセツト位置
に保持し溶湯鍛造し得るようにした金型を得せし
めるにある。

（課題を解決するための手段） 以上の技術課題を解決するための手段は、上型
及び下型により画成されたキヤビテイと、下型に
設けられ、注湯口からの溶湯の貯湯を自在とした
貯湯空間部と、前記キヤビテイ下側部と貯湯空間
部上部とを連通する湯道を備え、前記貯湯空間部
に嵌装された加圧プランジヤーの上動により溶湯
をキヤビテイへ充填し、静水的高圧力下で加圧凝
固して内燃機関用ピストンを成形するようにした
溶湯鍛造用金型において、キヤビテイの内周面で
且つキヤビテイの下部にリング状に成形された金
属織物から成る補強部材を係止する環状凹溝を上
型と下型の合せ面にわたつて形成し、下型に設け
られた貯湯空間部とキヤビテイ下部とをつなぐ湯
道を上型と下型の合せ面に臨んで下型に設け、該
湯道のキヤビテイに臨む部分の上型下型に前記合
せ面よりも下方に突出させ前記環状凹溝の一部を
構成する突部を設けて前記凹溝の内周面を連続状
に形成したことである。

（上記手段による作用） 上記手段によれば、型合せ面に臨むように下型
にキヤビテイへ溶湯を供給する湯道を設け、補強
部材を係止保持する環状凹溝を型合せ面に設けつ
つ湯道のキヤビテイに臨む部分に下方への突部を
設けて凹溝と連続するようにしたので、補強部材
は一部が湯道に臨みつつ溶湯圧力が作用するも確
実に係止保持され、又型合せ面に湯道があるので
溶湯凝固後の排製品部の除去が容易になされ、従
つて金型に上記キヤビテイを多数設け、一つの貯
湯空間部から溶湯を各キヤビテイに湯道から分配
供給する所謂多数個取りが補強部材鋳込みピスト
ンでも可能となる。

（実施例） 以下に本発明の好適一実施例を添付図面を参照
しつつ詳述する。

第１図は補強部材が装入セツトされた金型の断
面図、第２図は第１図−線断面図を示す。

１は上型、２は下型で、上型１と下型２は合せ
面３，４を係合し型締めされている。

前記下型２には、貯湯空間部用孔５が上下方向
に貫設され、貯湯空間部用孔５の適宜箇所には、
注湯プランジヤー６を嵌装する注湯スリーブ７下
端が開口され、貯湯空間部用孔５に摺動自在に嵌
装された加圧プランジヤー８上面と、貯湯空間部
用孔５のプランジヤー８上面と、合せ面３と連続
状の上型下面９とで貯湯空間部１１が構成されて
いる。

前記下型２の上面には、前記貯湯空間部１１の
上部と製品キヤビテイ１２の下部とを連通するよ
う凹部１３が欠設され、該凹部１３と上型下面９
とで湯道１４が構成され、該湯道１４を構成する
上型下面９のキヤビテイ１２寄り部位には、キヤ
ビテイ１２に近ずくにつれて漸次下方へ突出する
下向きの傾斜面を有する突部１５が形成されてい
る。

前記キヤビテイ１２は、上型１に貫設したキヤ
ビテイ用孔２１と、キヤビテイ用孔２１に吊下さ
れるインサート部材２２と、断面形状を前記キヤ
ビテイ用孔２１に合致させて下型２に陥設された
キヤビテイ用凹部２３とで構成されている。

前記湯道１４は、キヤビテイ用凹部２３の内周
面２４下部に開口され、キヤビテイ用凹部２３の
中心には、上下方向に貫設された摺動孔２５が開
口され、摺動孔２５には、装入セツトされる補強
部材３１の内径よりも小径状の外径を有する２次
加圧プランジヤー３２が嵌装されている。

前記キヤビテイ１２の内周面２４下部には、補
強部材３１係止用の環状凹溝３３が形成されてい
る。

前記環状凹溝３３は、凹溝３３の上下方向中間
部に、上型１及び下型２の合せ面３，４が位置す
るように形成され、内周溝面３４は周方向に連続
し、前記突部１５の傾斜面の下端と内周溝面３４
下端とは合致するか、或いは略合致し、而して突
部１５は環状凹溝３３の一部を構成し、後述する
補強部材３１の湯道１４先端に臨む部分の下部を
保持する。

前記環状凹溝３３の内周溝面３４には、斜め上
方へ延出し外気と連通するエア抜き孔３５の下端
が開口され、エア抜き孔３５はキヤビテイ１２の
周方向に適宜間隔をおいて複数本設けられてい
る。

本発明は、前記のように構成するので、強化ピ
ストンを成形する場合には、まず型開きの状態
で、分割された下型２の凹溝３３にあらかじめ接
着剤等によりリング状に成形された金属繊維から
なる補強部材３１を載置し、次いで上型１と下型
２とを型締めする。

上型１と下型２の型締めにより、補強部材３１
は凹溝３３で係止支持され、キヤビテイ１２内に
装入セツトされる。

従つて、キヤビテイ１２内への補強部材３１の
装入セツトは、補強部材３１の略下半部のみを凹
溝３３内へ載置することによりなされるので、補
強部材３１の装入作業は、従来に較べより簡易、
迅速になすことができる。

次いで、注湯プランジヤー６を上方部位へ、加
圧プランジヤー８を下方部位へ、２次加圧プラン
ジヤー３２を適宜下方部位へ位置せしめ、所定量
のアルミニウムの溶湯を注湯スリーブ７から貯湯
空間部１１へ供給する。

溶湯を貯湯空間部１１へ所定量供給後、注湯プ
ランジヤー６を下降せしめて注湯スリーブ７を閉
塞し、次いで加圧プランジヤー８を所定の緩速度
で上昇させる。

加圧プランジヤー８の上昇に伴つて、貯湯空間
部１１に貯湯された溶湯は、湯道１４を経てキヤ
ビテイ１２へ流れ込む。このさい、キヤビテイ１
２内へ注湯することで高熱で接着剤を燃焼せし
め、且つ凹溝３３内の空気を金型の合せ面からエ
ア抜き孔３５により排出せしめるために溶湯が金
属繊維間に確実に浸透することができる。

この場合、補強部材３１は凹溝３３で係止支持
され、且つ補強部材３１の外周周面３１ａは全て
凹溝３３の内周溝面３４で覆われているので、キ
ヤビテイ１２へ流れ込む溶湯によつて補強部材３
１の位置ずれや、変形等は防止され、更に、突部
１５の傾斜面によつて溶湯はキヤビテイ１２へ円
滑に流れ込む。

特に補強部材３１の下部の一部は湯道１４に臨
むが、この部分は突部で係止保持され、従つて溶
湯注入充填時、加圧時の係止保持が確実になされ
る。

キヤビテイ１２へ溶湯充填後、２次加圧プラン
ジヤ３２を上昇して加圧し、この状態で溶湯を凝
固させる。

加圧凝固後、環状凹溝３３は上型１と下型２の
合せ面３，４を含んだ部分に形成され、且つ凹溝
３３にはエア抜き孔３５が開口されているので、
金属繊維からなる補強部材を用いた場合でも補強
部材３１中の空気はエア抜き孔３５から容易にキ
ヤビテイ１２外へ排出され、繊維中に湯が含浸し
易く、従つて溶湯と補強部材３１との結合一体化
がより確実になされ、また割型面におけるバリの
発生が可及的に防止される。

一定時間経過後型開きし、図示しないノツクア
ウトカバーにより形成されたピストンを取り出
し、補強部材３１が結合一体化された強化ピスト
ンを得る。

ピストンの取り出しは上型１、下型２を開離し
て行うが、ピストン部以外の湯道部は型合せ面に
露出し、ピストン部をこの部分から取り外す。と
ころで湯道部は型合せ面に残ることから下型から
容易に取り出せ、従つて貯湯空間部を中心にして
キヤビテイ１２を放射状に複数個設けた場合でも
各湯道部は型合せ面に放射状に露出して残り、こ
の部分は金型から容易に除去できる。即ち多数個
取りが可能となる。

第３図に示すものは、本発明の第２実施例で、
第２実施例では、注湯空間部１１の上面及び湯道
１４の上面を構成する上型１の下面９を、環状凹
溝３３の内周溝面３４下端まで一律に下方へ突出
形成した点が前記第１実施例と異なり、補強部材
３１の装入作業の容易性、キヤビテイ１２への溶
湯充填時、補強部材３１のずれ、変形等を防止す
る作用、効果等は前記第１実施例と同様である。

（発明の効果） 以上の説明で明らかなように本発明によれば、
金型の型合せ面に補強部材を係止保持し、これの
金型への装入、セツトを容易化しつつ型合せ面に
湯道を設けて補強部材の一部と湯道とが干渉する
ように構成しても、溶湯の活入、充填、そして加
圧時の補強部材の係止、保持が確実になされ、溶
湯圧力による位置ズレ等が一切無く、又補強部材
の変形がなく、補強部材の鋳込位置精度の良い優
れた補強部材入りのピストンが得られる。

又補強部材を一体に鋳込みつつ湯道を型合せ面
に設けることにより下型に設けた一つの貯湯空間
部から複数のキヤビテイを溶湯を供給する多数個
取りが可能となり、補強部材入りのピストンの量
産化上極めて有利である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る金型の断面図、第２図は
第１図−線断面図、第３図は同第２実施例の
断面図である。 尚図面中、６は注湯プランジヤー、８は加圧プ
ランジヤー、１１は貯湯空間部、１２はキヤビテ
イ、１４は湯道、１５は突部、３１は補強部材、
３２は加圧プランジヤー、３３は環状凹溝であ
る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 上型及び下型により画成されたキヤビテイ
   と、下型に設けられ、注湯口からの溶湯の貯湯を
   自在とした貯湯空間部と、前記キヤビテイ下側部
   と貯湯空間部上部とを連通する湯道を備え、前記
   貯湯空間部に嵌装された加圧プランジヤーの上動
   により溶湯をキヤビテイへ充填し、静水的高圧力
   下で加圧凝固して内燃機関用ピストンを成形する
   ようにした溶湯鍛造用金型において、キヤビテイ
   の内周面で且つキヤビテイの下部にリング状に成
   形された金属織物から成る補強部材を係止する環
   状凹溝を上型と下型の合せ面にわたつて形成し、
   下型に設けられた貯湯空間部とキヤビテイ下部と
   をつなぐ湯道を上型と下型の合せ面に臨んで下型
   に設け、該湯道のキヤビテイに臨む部分の上型下
   型に前記合せ面よりも下方に突出させ前記環状凹
   溝の一部を構成する傾斜面を有する突部を設けて
   前記凹溝の内周面を連続状に形成したことを特徴
   とする内燃機関用ピストンの溶湯鍛造金型。