JP2878467B2 - 長尺薄板用プラズマ発生方法及び装置 - Google Patents

長尺薄板用プラズマ発生方法及び装置

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JP2878467B2
JP2878467B2 JP7216991A JP7216991A JP2878467B2 JP 2878467 B2 JP2878467 B2 JP 2878467B2 JP 7216991 A JP7216991 A JP 7216991A JP 7216991 A JP7216991 A JP 7216991A JP 2878467 B2 JP2878467 B2 JP 2878467B2
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康 福居
忠昭 三尾野
一成 中本
紹泰 吉井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コイルから払い出され
る金属ストリップ等の長尺薄板を連続的にプラズマエッ
チングするのに適したプラズマ発生方法及び装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】金属をエッチングする方法として、従来
の化学エッチング,電解エッチング等に代わえてプラズ
マエッチングを採用することが検討されている。このプ
ラズマエッチングに使用されるプラズマを発生させるた
め、直流放電,高周波放電,マイクロ波放電等が従来か
ら使用されている。
【0003】高周波放電を使用するとき、被エッチング
物が大きなものになるに従って、エッチング速度が低下
する。また、高周波発生装置やマイクロ波発生装置は、
大型になるほど設備費が高くなる。そのため、長尺薄板
のように大型部材を対象とするエッチングにあっては、
直流放電により発生させたプラズマが使用されている。
【0004】直流波放電によってプラズマを発生させる
とき、通常は、被エッチング物にのみ負の電圧を印加
し、被エッチング物にプラズマを集中させることによ
り、エッチングの効率を上昇させる。この場合、プラズ
マ発生空間に磁界を加えマグネトロン放電等を併用する
ことによって、プラズマ密度を高くし、エッチング速度
を向上させることも知られている(1990年11月2
6日 産業技術サービスセンター発行「実用真空技術総
覧」第621頁)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】コイルから払い出され
る金属ストリップのような長尺の薄板をエッチングする
場合、長尺の薄板がロール等の装置構成物に接触して搬
送される。そのため、長尺の薄板のみに負の電圧を印加
することが困難である。仮に、負の電圧を印加すること
ができたとしても、ロール等に対する絶縁が必要とされ
るため、装置構成が複雑になり、設備費の負担が増大す
る。また、真空槽の外面にも数百V以上の高電圧が印加
されることから、安全上にも問題がある。
【0006】そこで、長尺薄板を大地電位に維持し、そ
の対極として正の電圧を印加した電極との間にプラズマ
を発生させることが考えられる。しかし、長尺薄板は、
接地することにより真空槽及び装置構成物と同じ大地電
位となる。その結果、プラズマが広範囲に広がり、長尺
薄板だけでなく真空槽や装置構成物もエッチングされ、
損傷の原因となる。また、プラズマの拡がりに伴ってエ
ッチング速度が遅くなるので、プラズマ発生に必要な電
力を大きくしてエッチング速度を回復することが必要に
なる。
【0007】或いは、低下したエッチング速度を回復さ
せるため、電界に直交し且つ長尺薄板に平行な磁界を印
加することにより、マグネトロン放電による強いプラズ
マを発生させることも考えられる。しかし、この場合に
も、プラズマの拡散があるため、大きな効果が得られな
い。
【0008】本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、方向が異なる第2の磁界及び絶縁
箱によってプラズマを長尺薄板の表面近傍に絞り込み、
電力及び原料ガスの消費量を少なくし、高速度で且つ安
全に長尺薄板をエッチングすることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のプラズマ発生方
法は、その目的を達成するため、大地電位に維持された
長尺薄板を連続的に走行させ、前記長尺薄板の走行方向
に対し平行に配置された正電極と前記長尺薄板の表面と
の間のプラズマ発生空間を絶縁箱で取り囲み、大地から
絶縁された磁界発生手段によって前記プラズマ発生空間
に前記走行方向と平行な第1の磁界を発生させ、更に前
記走行方向に関して前記第1の磁界の上流側及び下流側
に前記第1の磁界とは反対方向の磁界を発生させなが
ら、Arガスを前記プラズマ発生空間に導入することを
特徴とする。
【0010】また、プラズマ発生装置は、大地電位に維
持された長尺薄板の表面にプラズマ発生空間を介して対
向する正電極と、前記長尺薄板と前記正電極との間の前
記プラズマ発生空間を取り囲む絶縁箱と、前記プラズマ
発生空間に原料ガスを導入するガス供給手段と、前記長
尺薄板の走行方向と平行な第1の磁界を前記長尺薄板と
前記正電極との間の前記プラズマ発生空間に加える磁界
発生手段と、前記走行方向に関して前記第1の磁界の上
流側及び下流側に前記第1の磁界とは反対方向に第2の
磁界を発生させる磁界発生手段とを備えており、前記正
電極と前記長尺薄板との間で発生したプラズマは、前記
第2の磁界によって前記プラズマ発生空間に閉じ込めら
れることを特徴とする。
【0011】ここで、正電極は、長尺薄板の両面に対向
して配置することができる。また、長尺薄板の走行方向
に沿ってプラズマ発生装置を多段に配置しても良い。こ
のプラズマ発生装置をたとえば鋼板の表面処理ラインに
組み込むとき、プラズマ発生装置が設置された真空槽及
びその構成物が大地から絶縁することが好ましい。
【0012】以下、図面を参照しながら、本発明を具体
的に説明する。本発明のプラズマ発生装置は、たとえば
図1の(a)及び(b)に示すように大地から絶縁され
た絶縁箱10を、接地された金属ストリップ等の長尺薄
板Sに対向させている。絶縁箱10には正電極11が内
蔵されており、正電極11と長尺薄板Sとの間のプラズ
マ発生空間12が絶縁箱10の器壁で取り囲まれてい
る。図1では、長尺薄板Sの両面をエッチングするた
め、両側に正電極11を配置している。しかし、正電極
11の配置はこれに限ったものではなく、長尺薄板Sの
片側だけに配置することも可能である。
【0013】正電極11は中空状になっており、その内
部空間を経てプラズマ発生用の原料ガス13がプラズマ
発生空間12に送り込まれる。或いは、別途のガス供給
管をプラズマ発生空間12に臨ませ、原料ガス13を導
入することもできる。プラズマ発生用の原料ガス13の
導入によってプラズマ発生空間12のみをプラズマ発生
に適したガス分圧に保持する。他方、その他の空間は、
プラズマ発生に不適当な雰囲気に維持する。
【0014】この条件下で、エッチング力の大きい密度
の高いプラズマを発生させるため、電界に直交し且つ長
尺薄板Sの長手方向に対して平行に、長尺薄板Sと正電
極11の間のプラズマ発生空間12に磁界を加える。そ
こで、プラズマ発生空間12の周囲に、長尺薄板Sに平
行な第1の磁界をプラズマ発生空間12に印加する磁石
14,15が配置されている。なお、磁石14及び15
を相互に連結するヨークは、図示を省略している。この
プラズマ発生機構は、長尺薄板Sの表面から剥れ落ちる
蒸着物が付着することがないように、幅方向を垂直に維
持した状態で走行する長尺薄板Sに側方から対向して配
置することが好ましい。
【0015】更に、長尺薄板Sの走行方向に関して上流
側及び下流側、すなわちプラズマ発生装置の入側及び出
側に、第2の磁界を発生させる小磁石16,17が設け
られている。これら小磁石16,17によって、長尺薄
板Sが通過するスリット状の孔18の部分に、磁石1
4,15で発生した第1の磁界とは反対方向の第2の磁
界が加えられる。第1の磁界によってエッチング力が強
められたプラズマは、第2の磁界によってプラズマ発生
空間12に閉じ込められ、長尺薄板Sに集中される。
【0016】正電極11に印加される電圧は、エッチン
グ力の強化を図り、アーク放電を防止する上から100
〜2000Vに維持することが好ましい。また、エッチ
ング力の強いプラズマが漏洩することを防止するため、
磁界強度は、長尺薄板Sの表面近傍で200エルステッ
ド以上にすることが好ましい。
【0017】長尺薄板Sを挟んで配置された一対のプラ
ズマ発生機構の正電極11及び長尺薄板Sを取り囲む絶
縁箱10は、二つのプラズマ発生機構間で連結される。
そして、長尺薄板Sは、両側の絶縁箱10の間に形成さ
れたスリット状の孔18を通って走行することができ
る。これによって、プラズマ発生機構間を通過する長尺
薄板Sの両面は、強いエッチング力をもつプラズマによ
り同時にエッチングされる。プラズマ発生機構を長尺薄
板Sの両側に配置しているので、磁界強度が大きくな
り、よりエッチング力の大きなプラズマを発生させるこ
とができる。また、長尺薄板Sの両面を同時にエッチン
グすることも可能となる。
【0018】プラズマ発生機構は、図2に示すように、
長尺薄板Sの走行方向に関して複数段にわたって配置す
ることができる。この場合、各段のプラズマ発生機構の
間に、第2の磁界を発生させる小磁石16,17が配置
される。そして、各段のプラズマ発生機構の入側器壁1
9及び出側器壁20を長尺薄板Sの走行方向に関してそ
れぞれ上流側及び下流側に向けて突出させ、これら器壁
19,20の間にスリット状の孔18を設ける。第1の
磁界を発生させる磁石14,15は、傾斜した入側器壁
19及び出側器壁20に長尺薄板10の走行方向と斜交
して配置することにより、スリット状の孔18の箇所で
磁界強度が大きくなり、その部分からプラズマが漏れる
ことが防止される。このプラズマ発生機構の多段配置に
よって、通過する長尺薄板Sに高速エッチングを施すこ
とができる。たとえば、図2の場合にはプラズマ発生機
構が3段に配置されているので、エッチング速度はほぼ
3倍になる。
【0019】このプラズマ発生装置は、たとえば図3に
示すように、鋼板の前処理装置として巻取り式蒸着装置
に組み込まれる。長尺薄板としての鋼帯30は、ペイオ
フリール31から送り出され、真空シール部32を経由
して真空槽33に搬入される。真空槽33の内部でプラ
ズマ発生装置が設置されている部分は、絶縁体34で大
地から絶縁されている。また、絶縁シール35によっ
て、正電極11から絶縁されている。
【0020】プラズマ発生空間12には、正電極11の
中空部を介してArガス36が導入される。鋼帯30の
表面は、プラズマ発生装置を通過する間に、Arプラズ
マによってエッチングされ、表面酸化皮膜が除去され活
性化される。
【0021】次いで、活性化された鋼帯30は、蒸着ゾ
ーン37に導かれる。蒸着ゾーン37には、蒸着材料3
8が収容されたルツボ39が配置されている。蒸着材料
38は、適宜の加熱手段によって加熱・蒸発し、活性化
された鋼帯30の表面に析出する。蒸着後の鋼帯30
は、真空シール部40を経由して搬出され、巻取りリー
ル41に巻き取られ製品となる。
【0022】
【作 用】磁石14,15による第1の磁界は、正電極
11と長尺薄板Sとの間に発生したプラズマのエッチン
グ力を高める。また、第1の磁界と反対方向に第2の磁
界が小磁石16,17及び絶縁箱によって、プラズマ発
生空間12からのプラズマの漏洩が防止される。そのた
め、プラズマは、長尺薄板Sを挟む二つの正電極11の
間に閉じ込められ、長尺薄板Sに集中的に作用する。し
たがって、プラズマを発生させるために必要な電力及び
原料ガスの供給量を低減させても、所定のエッチングを
高速で行うことができる。しかも、長尺薄板Sが大地電
位に保たれているので、プラズマ発生部以外の真空槽や
ロール等の真空構成物を絶縁する必要がなく、設備の簡
略化及び設備費の節減が図られる。更に、長尺薄板Sが
大地電位であるため、作業者が触れ易い真空槽の器壁等
に高電圧が印加されることがなく、安全性も向上する。
【0023】
【実施例】板厚0.5mm,板幅100mmの低炭素鋼
鋼帯を脱脂した後、図3に概略を示したエッチング−蒸
着ラインで処理した。なお、プラズマ発生は、合計電力
6kWで正電極に350Vの電圧を印加し、プラズマ発
生空間に流量90sccmでArガスを導入しながら行
った。次いで、鋼帯を加熱することなく、Cuを蒸着さ
せた。
【0024】鋼帯表面に形成された蒸着層の厚み及び密
着性を、ライン速度との関係で表1に示す。なお、表1
には、プラズマエッチングを行わない場合を比較例とし
て示している。この場合、Arガスを供給せず、真空槽
33を真空度1×10-5トールの減圧雰囲気に維持し
た。また、密着性は、蒸着後の鋼帯を180度折り曲げ
て、折り曲げた部分に粘着テープを貼り付け、粘着テー
プを剥したときに全くCu蒸着層が剥離しないものを
○,剥離したものを×で評価した。
【0025】
【表1】
【0026】表1から明らかなように、少ない電力及び
Arガス流量で、密着性に優れた蒸着層が形成されてい
ることが判る。このことから、第1及び第2の磁界によ
りプラズマが外部に拡散することなく鋼帯の表面近傍に
拘束され、強いエッチング力で鋼板表面に作用している
ことが判る。しかも、得られた蒸着層は、ラインスピー
ドを50m/分に上昇させたときにも、密着性を低下す
ることはない。これは、プラズマエッチングによって鋼
帯表面が十分に活性化され、Cu層との間で強固な結合
が生じたことを示すものである。
【0027】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、エッチングされる長尺薄板の表面近傍の空間にエッ
チング力の大きなプラズマを閉じ込めている。そのた
め、少ない電力及びArガス流量であっても、十分に高
速のエッチングが可能となり、ランニングコストを少な
くすることができる。また、長尺薄板が大地電位に維持
されているため、真空設備が簡素となり、設備費を低減
することができると共に、作業者に対する安全性も高ま
る。このプラズマエッチングは、特に表面処理鋼板の活
性化前処理方法として非常に有効であり、また金属蒸
着,セラミックス被覆,溶融めっき等の前処理として採
用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 長尺薄板の両側にプラズマ発生装置を配置し
た場合の上面図(a)及び断面図(b)
【図2】 図1のプラズマ発生装置を長尺薄板の走行方
向に沿って3段に配置した場合の断面図
【図3】 巻取り式真空蒸着装置に組み込まれたプラズ
マ発生装置を示す。
【符号の説明】
S 長尺薄板 10 絶縁箱
11 正電極 12 プラズマ発生空間 13 原料ガス
14,15 磁石 16,17 小磁石 18 スリット状の孔 30 鋼帯 32,40 真空シール部
33 真空槽
フロントページの続き (72)発明者 吉井 紹泰 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株 式会社鉄鋼研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−226029(JP,A) 特開 昭63−114962(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23F 4/00 C23C 2/02,14/02,16/02

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 大地電位に維持された長尺薄板を連続的
    に走行させ、前記長尺薄板の走行方向に対し平行に配置
    された正電極と前記長尺薄板の表面との間のプラズマ発
    生空間を絶縁箱で取り囲み、大地から絶縁された磁界発
    生手段によって前記プラズマ発生空間に前記走行方向と
    平行な第1の磁界を発生させ、更に前記走行方向に関し
    て前記第1の磁界の上流側及び下流側に前記第1の磁界
    とは反対方向の磁界を発生させながら、Arガスを前記
    プラズマ発生空間に導入することを特徴とする長尺薄板
    用プラズマ発生方法。
  2. 【請求項2】 大地電位に維持された長尺薄板の表面に
    プラズマ発生空間を介して対向する正電極と、前記長尺
    薄板と前記正電極との間の前記プラズマ発生空間を取り
    囲む絶縁箱と、前記プラズマ発生空間に原料ガスを導入
    するガス供給手段と、前記長尺薄板の走行方向と平行な
    第1の磁界を前記長尺薄板と前記正電極との間の前記プ
    ラズマ発生空間に加える磁界発生手段と、前記走行方向
    に関して前記第1の磁界の上流側及び下流側に前記第1
    の磁界とは反対方向に第2の磁界を発生させる磁界発生
    手段とを備えており、前記正電極と前記長尺薄板との間
    で発生したプラズマは、前記第2の磁界によって前記プ
    ラズマ発生空間に閉じ込められることを特徴とする長尺
    薄板用プラズマ発生装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の正電極は、長尺薄板の両
    面に対向して配置されていることを特徴とする長尺薄板
    用プラズマ発生装置。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載のプラズマ発生装置
    は、長尺薄板の走行方向に沿って多段に配置されている
    ことを特徴とする長尺薄板用プラズマ発生装置。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4の何れかに記載のプラズマ
    発生装置が真空槽の内部に設置されており、該真空槽及
    びその構成物が大地から絶縁されていることを特徴とす
    る長尺薄板用プラズマ発生装置。
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