JP2911102B2 - 銅、アルミニウムまたはその合金からなる薄板の成膜前処理方法 - Google Patents

銅、アルミニウムまたはその合金からなる薄板の成膜前処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、連続的に搬送される
銅、アルミニウムまたはその合金からなる薄板の成膜前
処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、PVD法あるいはCVD法により
被成膜材の表面に成膜する際、膜の密着力および膜質の
向上を図るため、被成膜材の成膜側表面に前処理すなわ
ち、基板表面の付着物の除去、基板表面の酸化層の除去
および基板表面に微小な凹凸を形成することが行われ
る。この前処理装置として、例えば、特開平5−932
59号公報等が提案されている。上記前処理装置は、中
空ロール内に磁石を配設し、上記磁石によって形成され
た磁場によりマグネトロン放電を上記磁石部分に集中さ
せることで、上記中空ロールに巻回された被成膜材であ
る金属ストリップの成膜側面をイオンボンバードにより
エッチングするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、イオンボン
バードによる成膜前処理で前処理効率を向上させるに
は、Arイオンまたは原子の単位時間及び単位処理面積
あたりの衝突数を増加させる必要がある。この場合、A
rイオンまたは原子の運動エネルギの一部が熱に変換さ
れ、被成膜材の温度が上昇する。この傾向は、被成膜材
の厚さが薄く単位処理面積あたりの熱容量が小さい被成
膜材において顕著となる。例えば、0.6w/cm2
電力投入密度にて0.2mm厚さの銅合金表面に約40
0Åのエッチング量を処理したところ、銅合金の温度は
350°C以上となる。なお、アルミニウム合金の場合
は、銅合金よりも熱容量が小さく、しかもイオンボンバ
ード効率も悪いため、さらなる温度上昇が生じる。した
がって、上記前処理装置で銅、アルミニウムあるいはそ
の合金をイオンボンバードにより前処理を施すと、再結
晶温度が低い銅合金等では、被成膜材自体の材料特性が
変化するという問題があった。
【0004】また、成膜前処理であるイオンボンバード
によるエッチング量が過少であれば、表面付着異物の除
去及び表面酸化層の除去が不十分となり、膜の密着力あ
るいは膜質が低下し、一方、過多であれば、表面の凹凸
が過多となり膜質が低下することになる。そのため、所
望の成膜を得るには所定エッチング量を確保しなければ
ならない。
【0005】さらに、上記成膜前処理によってエッチン
グされた金属ストリップの表面には、成膜処理されるま
での間に再度異物が付着したり、酸化層が形成されるの
で、成膜効率、膜の純度が低下するという問題点があっ
た。
【0006】本発明は、上記した問題点に鑑みてなされ
たもので、連続的に搬送される銅、アルミニウムまたは
その合金からなる例えば、厚さが略1mm以下の薄板を
成膜前処理する方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1に係る発明では、銅、アルミニウムまたは
その合金からなる薄板を冷却ロールに巻回して搬送する
とともに、上記冷却ロールにより上記薄板を150°C
以下に維持してイオンボンバードによりその表面を10
0〜600Åのエッチング量に調整することを特徴とし
ている。
【0008】また、請求項2に係る本発明では、請求項
1に記載の成膜前処理に引き続き、成膜領域に近接した
位置で、再度イオンボンバードによりエッチング処理す
ることを特徴としている。
【0009】
【実施例】以下、添付図面を参照して本発明の実施例に
ついて説明する。成膜装置1は、連続的に搬送される
銅、アルミニウムまたはその合金からなる厚さ1mm以
下の薄板Sの成膜前処理に引き続き、成膜処理するもの
で、装置1内は所定の圧力に真空排気され、Ar等の放
電ガスが封入されるとともに、ケーシング3はアースに
接地されている。また、装置1内には上記薄板Sの送り
出しロール5、複数の搬送ロール6〜8、冷却ロール
9、複数の搬送ロール10〜12及び巻き取りロール1
3を配置してある。
【0010】上記冷却ロール9は、直流電源V1に接続
したイオンガン14とともに前処理部4を構成してい
る。また、上記イオンガン14の下流側にはマイナスの
直流電源V2に接続されたターゲット16が配置され、
マグネトロンスパッタ方式の成膜部を構成している。
【0011】上記水冷ロール9は、図2に示すように、
大略、水冷ロール本体20と中子30からなる二重管構
造で、上記水冷ロール本体20の軸部22,24に冷却
水給排手段を設けている。
【0012】上記水冷ロール本体20は、一方側中央に
設けた第1軸部22と、他方側中央に設けた第2軸部2
4とからなり、上記第1,第2軸部22,24は、ケー
シング3内に設けた支持台17,17′に軸受18,1
8′により回転自在に支持されている。上記第2軸部2
4は上記水冷ロール本体20内に突出した突出部25を
有するとともに、ベローズ27を備えた回転シール装置
28を介してケーシング3の外方に突出している。ま
た、上記第2軸部24には一端が上記突出部25の側方
に開口26aを有するL形通路26が設けられている。
【0013】上記中子30は中空円筒体からなり、上記
第2軸部24の突出部25に取り付けられ、その外面に
設けたリブ31により水冷ロール本体20の胴部21内
面に当接している。
【0014】32は冷却水供給管で、上記L形通路26
内を通って突出部25および中子30の一側を貫通し、
上記第1軸部22の凹部23内に開口する。さらに、上
記第2軸部24のケーシングから突出した端部には公知
のロータリジョイント34が設けられ、また上記L形通
路26と冷却水供給管32との間隙で冷却水排出通路2
6bを形成する。
【0015】したがって、冷却水は上記冷却水供給管3
2内を通って凹部23内へ噴出し、上記中子30と水冷
ロール本体20との隙間を通過して開口26aから冷却
水排出通路26bへと至る。このように、冷却水がロー
ル本体20の内部を循環することで、冷却ロール9は所
定温度に冷却されるとともに、この冷却ロール9に巻回
される薄板Sも所定温度に冷却される。
【0016】上記構成からなる成膜装置1では、例え
ば、送り出しロール5に厚さ0.1mmの銅合金からな
る薄板Sをセットして清浄等の前処理に引き続き成膜処
理を行う。送り出しロール5から送り出された薄板S
は、複数の搬送ロール6〜8、冷却ロール9及び複数の
搬送ロール10〜12により搬送されて巻き取りロール
13に巻き取られる。冷却ロール9に巻回された薄板S
は、その温度が150°C以下に維持されるとともに、
成膜面S1(イオンガン14に対向する面)は、その表
面状態に応じて、イオンガン14によるイオンボンバー
ドで深さ100〜600Åの範囲内でエッチングされ
る。
【0017】薄板Sの温度を150°C以下としたの
は、銅、アルミニウムまたはその合金の場合、再結晶に
よる材料特性の変質が約200°Cから開始するからで
ある。このように、薄板Sの温度を150°C以下に維
持すれば、材料特性が変化することを確実に防止でき
る。
【0018】また、エッチング量を100〜600Åの
範囲としたのは、前処理直前に清浄処理を施さない材料
(以下「A材」という)及び前処理直前に清浄処理を施
した材料(以下「B材」という)のいずれの材料に対し
て良好な膜を得ることができることによる。すなわち、
前処理条件(エッチング量)をパラメータとして、薄板
Sの温度を150°C以下に保持してPVD法により金
属膜を作成し、膜の密着性および膜質等を基準に評価し
たところ、50Åのエッチング量では、A材は全て不
良、B材は不良と良好の混在となり、100Åの場合で
は、A材は一部良好、B材は全て良好となり、150〜
500Åの場合では、A材は不良と良好の混在、B材は
全て良好、600Åの場合では、A材及びB材とも全て
良好であった。
【0019】このことから、酸化層の悪影響の回避のみ
を目的とした場合、エッチング量は50〜100Å程度
で充分であるが、A材の場合は酸化層以外の表面付着物
の影響によりエッチング量を600Åにする必要があ
る。
【0020】そして、前処理された薄板Sは、ターゲッ
ト16部に搬送され、ここでターゲット16から叩きだ
された原子によってスパッタ法により成膜される。成膜
された薄板Sは、搬送ロール10〜12で搬送された
後、巻き取りロール13で巻き取られる。なお、成膜処
理はスパッタ処理等のPVD法に替えてCVD法により
行うようにしてもよい。
【0021】上記成膜装置1では、冷却ロール9とイオ
ンガン14とで前処理部4を構成したが、図3に示すよ
うに、ケーシング3内の冷却ロール9の下方にアース2
に接地した放電板38を設け、冷却ロール9にマイナス
の直流電源V4を接続して清浄等の前処理を直流電源に
よる逆スパッタ(DC逆スパッタ)で行うようにしても
よい。なお、上記構成のように逆スパッタを直流電源に
より行えば、高周波電源による逆スパッタに比較して一
定の負電位をカソードに印加し続けられるのでスパッタ
効率が向上する。
【0022】また、図4に示すように、冷却ロール9の
内部の中子30に複数の永久磁石40を設け、この永久
磁石40によって形成される磁場により電子をトラップ
して前処理を行えば、前処理効率を向上させることがで
きる。
【0023】さらに、図5に示した成膜装置45では、
前処理部4とターゲット16を配設する成膜部との間に
仕切り壁46を設け、上記仕切り壁46と上記ターゲッ
ト16との間で、かつ上記ターゲット16の近傍に、マ
イナスの直流電源V5に接続され、複数の永久磁石47
を有するカソード48を設けて第2の清浄等の前処理部
50を構成している。また、上記カソード48は、薄板
Sの成膜面S1と反対側の面S2側に配置される。な
お、上記成膜装置45について、上記成膜装置1と同一
部材については同一符号を付して構成及び動作の説明を
省略する。
【0024】上記構成からなる成膜装置45では、前処
理部4で100〜600Åの深さにエッチングされた薄
板Sが仕切り壁46の通過口49を通過して第2の前処
理部50に搬送され、再度、DC逆スパッタにより成膜
前処理される。これにより、前処理部4で成膜前処理さ
れた後に搬送途中で薄板Sに付着した異物及び薄板Sの
表面に生成した酸化層が除去される。
【0025】次に、再度前処理が施された薄板Sは、タ
ーゲット16部に搬送され、ここでターゲット16から
叩きだされた原子によってスパッタ法により成膜され
る。この際、ターゲット16は上記カソード48の近傍
に配置してあることから、薄板Sは第2の前処理と成膜
処理とが重なり合った領域を通過する。したがって、薄
板Sには異物が付着したり酸化層が生成することなく純
度の高い良質な膜が形成される。
【0026】また、第2の前処理部50では再付着した
異物や表面に形成された酸化層を除去するために行われ
るので、前処理部4で負荷するような高電圧を必要とし
ない。したがって、薄板Sの温度は上昇することはな
く、薄板Sを冷却する構成を必要としない。
【0027】上記構成の成膜装置45では、ケーシング
3を仕切り壁46で仕切ることにより、薄板Sから成膜
前処理された際に飛び出した異物等が第2の前処理部5
0に飛散することを防止している。このため、第2の前
処理部でのカソード48に印加する電圧を仕切り壁46
のない場合に比較して小さくすることができる。なお、
第2の前処理部50は、カソード47に替えてイオンガ
ンで構成してもよい。
【0028】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係る銅、アルミニウムまたはその合金からなる薄板の
成膜前処理方法は冷却ロールにより薄板を150℃以下
に維持してイオンボンバードによりその表面に100〜
600Åのエッチングを施すので、薄板は冷却されつつ
前処理されることになり、薄板の材料特性変化が無い。
【0029】また、上記薄板は、その表面状態に応じて
100〜600Åの範囲でエッチングして付着物・酸化
層の除去等が行われるので、その後に行なわれる成膜処
理が確実に行なわれるとともに、密着力および膜質が向
上する。
【0030】さらに、請求項2に記載の本発明では、成
膜領域に近接した位置で、上記成膜前処理後に付着した
異物および生成した酸化層をイオンボンバードで再度エ
ッチング前処理するため、その後の成膜処理で、良質な
膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る成膜装置の側面図である。
【図2】 冷却ロールの断面図である。
【図3】 前処理部の変形例を示す側面図である。
【図4】 前処理部の変形例を示す側面図である。
【図5】 第2の前処理部を備えた本発明に係る成膜装
置の側面図である。
【符号の説明】
1…成膜装置、3…ケーシング、4…前処理部、9…冷
却ロール、14…イオンガン、16…ターゲット、38
…放電板、40…永久磁石、50…第2の前処理部、S
…薄板。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅、アルミニウムまたはその合金からな
    る薄板を冷却ロールに巻回して搬送するとともに、上記
    冷却ロールにより上記薄板を150°C以下に維持して
    イオンボンバードによりその表面を100〜600Åの
    エッチング量に調整することを特徴とする銅、アルミニ
    ウムまたはその合金からなる薄板の成膜前処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の成膜前処理に引き続
    き、成膜領域に近接した位置で、再度イオンボンバード
    によりエッチング処理することを特徴とする銅、アルミ
    ニウムまたはその合金からなる薄板の成膜前処理方法。
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